説明

床反力計測システム及び方法

【課題】
被験者がフォースプレート上の任意の場所に杖を突きながらフォースプレート上で運動した時に被験者の足に作用する反力を取得する。
【解決手段】
フォースプレートと、先端に荷重センサを備えた杖と、杖の位置および姿勢を取得する手段と、被験者が杖を突きながら1枚の踏み板上で運動した時の床反力F1(F1、F1、F1)及び位置P1(x,y)を取得する手段と、杖に作用する反力F2(F2、F2、F2)及び位置P2(x,y)を取得する手段と、床反力F1(F1、F1、F1)と杖の反力F2(F2、F2、F2)とから、被験者の足に作用する反力F3(F3、F3、F3)を取得する手段と、床反力F1及び位置P1、杖の反力F2及び位置P2、及び足の反力F3とから、足の反力F3が作用する踏み板上の位置P3(x,y)を取得する手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床反力計測システム及び方法に係り、被験者が杖を使用して運動(典型的には歩行)した時に被験者の足に作用する反力を計測するシステム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杖は代表的な歩行補助具の1つである。従来から、患者の歩行機能回復のためのリハビリや歩行機能回復までの間の移動時に杖を使用して歩行することが行われている。また、筋力が衰えた高齢者等においては、杖を使用して歩行することで、筋力の衰え等を補完することができる。
【0003】
被験者の歩行等の動作解析には、従来から、フォースプレート(床反力計)が用いられている。フォースプレートは典型的には平面視方形状であるが、その他の形状、例えば平面視三角形状のフォースプレートもある(特許文献1)。
ここで、被験者が杖を突きながらフォースプレートの踏み板上を歩行した時には、被験者の足からの荷重のみならず杖の先端からの荷重が踏み板に作用することになるため、フォースプレートで取得される反力は被験者に作用する力を正確に表すものではない。
したがって、従来は、杖を用いた動作を計測する際にフォースプレートに杖を突かないようにして計測を行っている。より具体的には、杖を突くための床反力計と足を載せるための床反力計を別個用意し、それぞれ床反力を計測したり(特許文献2)、フォースプレートの踏み板に杖が載らないように踏み板の上に別の板を渡したり、フォースプレートの踏み板の外側に杖を突くようにして計測している。
【0004】
しかしながら、杖を突く場所を指定して歩行等の動作をすると、杖を突く場所を意識しなければならず、不自然な動作になってしまう。杖を突く位置を意識せずに動作を行えることが望ましい。
【0005】
フォースプレートとモーションキャプチャシステムとを組み合わせた三次元動作解析システム(特許文献3)も提案されているが、三次元動作解析でフォースプレートとカメラを併用して歩行解析を行う際には杖を使う患者が多いのが実情であり、上述の課題がある。
【0006】
本出願人は、杖にかかる直角座標の3方向の荷重と杖の傾きとを検出できる医療用杖(特許文献4)を提案しているが、この杖では杖の力が作用する位置を特定することができないため、この杖を、被験者の足に作用する反力を計測するシステムに適用することはできない。
【0007】
本出願人は、反力の分布形状を測定するシートを備えた床反力計測装置(特許文献5)を提案しており、杖の力が作用する位置を特定することはできる。しかしながら、杖に作用する力の向きを検出することはできず、しかも、杖に作用する力を正確に測定することはできないため、この床反力計測装置を、被験者の足に作用する反力を計測するシステムに適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−277013
【特許文献2】特開2003−319980
【特許文献3】特開2007−319347
【特許文献4】特公平6−96031
【特許文献5】特開2001−29329
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、被験者がフォースプレート上の任意の場所に杖を突きながらフォースプレート上で運動した時であっても、被験者の足に作用する反力を取得することを可能とする床反力計測システム及び方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が採用した第1の技術手段は、
少なくとも1枚の踏み板と、当該踏み板の所定の複数箇所に設けた荷重検出手段と、を備えたフォースプレートと、
先端に荷重センサを備えた杖と、
被験者が杖を突きながら1枚の踏み板上で運動した時の床反力F1の3軸方向の成分F1、F1、F1を取得する手段と、
被験者の運動時の杖の姿勢を取得する手段と、
被験者が杖を突いた時の前記荷重センサで検出した荷重情報及び取得された杖の姿勢から杖に作用する反力F2の3軸方向の成分F2、F2、F2を取得する手段と、
床反力F1の3軸方向の成分F1、F1、F1と杖の反力F2の3軸方向の成分F2、F2、F2とから、被験者の足に作用する反力F3の3軸方向の成分F3、F3、F3を取得する手段と、
を備えた床反力計測システム、である。
1つの態様では、前記システムは、さらに、
床反力F1が作用する踏み板上の荷重中心位置P1(x,y)を取得する手段と、
被験者の運動時の杖の位置を取得し、杖の反力F2が作用する踏み板上の位置P2(x,y)を取得する手段と、
床反力F1及び位置P1、杖の反力F2及び位置P2、及び足の反力F3とから、足の反力F3が作用する踏み板上の位置P3(x,y)を取得する手段と、
を備えている。
本発明の床反力計測システムによって、フォースプレートに加わる力F1と位置(荷重中心)P1を、杖の力F2と位置P2、及び人に加わる力F3と位置P3に分解することができる。
【0011】
1つの態様では、前記杖の姿勢を取得する手段、杖の位置を取得する手段は、共にモーションキャプチャ手段から構成される。すなわち、モーションキャプチャ手段が杖の姿勢・位置を取得する手段を構成する。
1つの態様では、前記モーションキャプチャ手段は、光学式モーションキャプチャであり、
前記杖の長さ方向に離間させて設けた少なくとも2つのマーカーと、
被験者が杖を突きながら運動する時に杖を撮影する複数のカメラと、
各カメラで取得された画像からマーカーの三次元位置を求めて、杖の位置及び姿勢を取得する手段と、
を備えている。
本発明に適用し得るモーションキャプチャは、光学式モーションキャプチャに限定されるものではなく、杖の位置及び姿勢を取得できるものであれば他の方式のモーションキャプチャでもよい。
【0012】
1つの態様では。被験者にも複数のマーカーを設けることで、三次元動作解析装置を構成して、床反力と同時に被験者及び杖の運動データを取得する。こうすることで、従来の三次元運動解析システムに対して、荷重センサとマーカーを備えた杖を用意すればよいので、既存にシステムに対する最小の変更で本発明の床反力計測システムを構成することができる。
【0013】
本発明が採用した第2の技術手段は、
被験者がフォースプレートの踏み板上で杖を突きながら運動した時に当該被験者の足に作用する反力を取得する方法であって、
被験者の運動時の床反力F1(F1、F1、F1)をフォースプレートによって取得し、
杖の先端に荷重センサを設けると共に、被験者の運動時の杖の姿勢を取得することで、前記荷重センサにより得られた杖の軸方向の力と杖の姿勢とから被験者が杖を突いた時に当該杖に作用する反力F2(F2、F2、F2)を取得し、
床反力F1(F1、F1、F1)から杖の反力F2(F2、F2、F2)を差し引くことで、被験者の足に作用する反力F3(F3、F3、F3)取得する、
床反力計測方法、である。
1つの態様では、前記方法は、さらに、
床反力F1の荷重中心位置P1(x,y)をフォースプレートによって取得し、
被験者の運動時の杖の位置を取得することで、杖の反力F2が作用する踏み板上の位置P2(x,y)を取得し、
床反力F1及び位置P1、杖の反力F2及び位置P2、及び足の反力F3とから、足の反力F3が作用する踏み板上の位置P3(x,y)を取得するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る床反力計測システム及び方法では、杖を突く位置を制限することなく、被験者の足に作用する反力を計測することができるので、生体のごく自然な杖歩行または杖を使った他の動作を計測することができる。
【0015】
本発明をモーションキャプチャシステムを備えた三次元動作装置に適用することで、杖用にマーカーと荷重センサを追加するだけで、杖を突きながら運動(歩行)する被験者の足に作用する反力を被験者の運動データと共に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る床反力計測システムの概略図である。
【図2】本発明に係る杖を示す図である。
【図3】被験者の足に作用する反力および反力が作用する位置の計算を説明する図である。Y軸方向から見た図であり、X軸方向のみを示す。
【図4】位置P1、P2、P3の関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[A]床反力計測システム
本実施形態に係る床反力計測システムは、
1枚の踏み板と、当該踏み板の所定の複数箇所に設けた荷重検出手段と、を備えたフォースプレートと、
先端に荷重センサを備え、かつ、長さ方向に間隔を存して2つのマーカーを備えた杖と、
複数のマーカーが付着された被験者が杖を突きながら踏み板上で運動した時の被験者及び杖を撮影する複数のカメラと、
複数のカメラにより取得された画像情報から被験者及び杖の運動データ(被験者及び杖の位置および姿勢の時系列データ)を取得する手段と、
被験者が杖を突きながら1枚の踏み板上を歩行した時の床反力F1の3軸方向の成分F1、F1、F1及び床反力F1が作用する踏み板上の位置P1(x,y)を取得する手段と、
被験者が杖を突いた時の前記荷重センサの検出値及び杖の姿勢から杖に作用する反力F2の3軸方向の成分F2、F2、F2を取得する手段と、
取得された杖の位置から、杖の反力F2が作用する踏み板上の位置P2(x,y)を取得する手段と、
床反力F1の3軸方向の成分F1、F1、F1と杖の反力F2の3軸方向の成分F2、F2、F2とから、被験者の足に作用する反力F3の3軸方向の成分F3、F3、F3を取得する手段と、
床反力F1及び位置P1、杖の反力F2及び位置P2、及び足の反力F3とから、足の反力F3が作用する踏み板上の位置P3(x,y)を取得する手段と、
を備えている。
ここで、本明細書では、X軸、Y軸、Z軸は、X−Y平面を踏み板の面方向に取り、被験者の進行方向をX軸方向とし、このX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、X―Y平面に対して鉛直方向をZ軸方向とする。なお、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸の方向の取り方は、これには限定されないことが当業者に理解される。
【0018】
本実施形態に係る床反力計測システムは、医療分野等における被験者の動作をモーションキャプチャして解析する三次元動作解析システムを兼用している。
本実施形態に係る床反力計測システムは、フォースプレート(床反力計)と、被験者の動作及び杖の動作を取得するモーションキャプチャシステムと、計測された各種データを用いてデータ処理を行うコンピュータ(データを入力するための入力装置、処理されたデータを出力するための出力装置、主としてCPUから構成される演算装置、ROM、RAM等の記憶装置、これらを接続するバス、を備えている)と、から構成することができる。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0019】
[B]フォースプレート
1つの態様では、フォースプレートは、被験者が載るための略四角形状の踏み板と、踏み板の四隅部に配置した4つのロードセル(荷重計測手段)と、からなる。ここで、荷重計測手段(ロードセル)の数は、4個に限定されるものではなく、例えば、3個、あるいは5個以上でもよい。ロードセルは、力を電気信号に変換して出力するセンサであり、例えば、ひずみゲージ式のロードセルであれば、踏み板上に荷重が加わるとひずみゲージの抵抗値が変化し、電流値が変化するようになっており、その電流を増幅器により増幅させて荷重の出力として検出する。
【0020】
ロードセルは3分力センサで、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の荷重出力を検出する。すなわち、3分力ロードセルは、フォースプレートの踏み板に作用する反力のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3軸方向の分力(成分)を検出する各分力検出器を備えている。また、ロードセルは、直交するX軸、Y軸、Z軸の力(F、F、F)に加えて、それら3軸のモーメント(M、M、M)の6成分を計測できるものでもよい。フォースプレートに用いられるロードセルやその他の荷重計測手段は、当業者に周知なので、荷重計測手段の具体的な構成の説明は省略する。
【0021】
フォースプレートのロードセルは、増幅器を介してデータ処理装置と電気的に接続されており、被験者がフォースプレート上を歩行した時にロードセルにより測定された荷重情報を増幅器で増幅してデータ処理装置に出力する。データ処理装置は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータから構成される。
【0022】
各ロードセルの位置(X−Y座標値)、すなわち、各ロードセル間の距離は既知であり、フォースプレート上で床反力F1(F1、F1、F1)が作用する位置P1(x,y)は、X−Y座標上の4つのロードセルのZ軸方向の荷重から、垂直荷重の作用中心点を求め、これをX−Y座標上での重心位置とみなすことで決定することができる。
各ロードセルで取得される荷重情報を逐次コンピュータに送信し、コンピュータの演算手段で重心位置を逐次求めることで、位置P1(x,y)の時系列データを取得することができる。得られた位置P1(x,y)の時系列データ及び計算に用いた荷重情報は、取得時間と共に記憶装置に記憶され、測定開始時から測定終了時までの位置P1(x,y)、すなわち重心位置の経時的な移動軌跡を取得することができる。
【0023】
典型的には、得られた床反力情報や各種分析結果は、表示装置上の表示部に表示される。
また、床反力計測システムは、任意の構成要素としてのプリンタを備えていてもよく、表示装置に表示された内容を適宜必要に応じてプリンタから出力してもよい。
【0024】
[C]モーションキャプチャシステム
モーションキャプチャシステムについて説明する。モーションキャプチャシステムは、被験者の運動データを取得して三次元動作解析を行うことを目的として、医療、スポーツ、ロボティックス、コンピュータグラフィックス等の分野で広く用いられている。
本実施形態では、代表的なモーションキャプチャシステムの1つである光学式モーションキャプチャシステムを採用する。
【0025】
光学式モーションキャプチャシステムは、被験者の複数の所定部位(頭、首、肩、肘、手首等)に装着した複数の光学式マーカー(例えば、赤外線反射マーカー)と、光学式マーカーを装着した被験者の運動を複数角度から同時に撮影する複数台のカメラと、各カメラで取得したマーカーの画像情報中のマーカーの二次元位置を再構成して当該マーカーの三次元位置を計算し、光学式マーカーの三次元位置と身体の三次元モデルから身体の各部位の三次元位置(被験者の姿勢)を取得する処理部と、処理部の結果(被験者の姿勢の時系列データとして取得される運動データ)を表示する表示部と、からなる。
【0026】
モーションキャプチャシステムにおける各種計算はコンピュータによって実行される。具体的には、カメラによって取得された画像情報および画像処理部で計算された情報を記憶する記憶部、該画像情報や測定結果、分析結果を表示する表示部、該画像情報に対して画像処理を施すための画像処理部、マーカーの三次元位置の時系列データを計算する演算部を備えている。
【0027】
[D]杖
本実施形態の床反力計測システムは、荷重センサ及び複数のマーカーを備えた杖を含んでいる。荷重センサ、マーカーは杖に対して着脱可能としてもよい。
杖は長さ方向の2ヶ所にマーカーが装着されている。マーカーは、被験者に装着したマーカーと同様にモーションキャプチャシステムのカメラによって認識できる光学式マーカー(例えば、赤外線反射マーカー)である。床反力計測システムの記憶部には、杖の長さ、杖において2つのマーカーが設けられている位置情報(マーカーと杖先端との距離を含む)が記憶されている。位置情報は、例えば、杖の長軸(長さ方向)をZ´軸とする。
【0028】
杖の先端には荷重センサが設けてあり、マーカーと荷重センサとの距離も既知である。荷重センサは杖の長軸方向に作用する力と、長軸に直角な面内で互いに直交する2方向に作用する力とを3方向の力成分を検出することができる。このような荷重センサとしては、特許文献4に記載された荷重センサを用いることができる。
1つの態様では、荷重センサで検出された情報は、歩行時の床反力測定と同期させて、杖に搭載した記憶部に記憶され、当該記憶部からコンピュータ(データ処理装置)に入力される。
1つの態様では、荷重センサで検出された情報は、歩行時の床反力測定と同期させて、荷重センサからコンピュータ(データ処理装置)にリアルタイムで送信されて(歩行の妨げとならないように無線が望ましい)、コンピュータの記憶部に記憶される。
【0029】
被験者が杖を突きながら踏み板上を歩行した時に被験者及び杖の動きを複数のカメラで撮影することで、被験者に装着したマーカーに加えて、各カメラで杖に装着した2つのマーカーの二次元画像の時系列データを取得することができる。上述のように、各カメラで取得した二次元画像のマーカーの位置情報を統合することで前記2つのマーカーの三次元位置の時系列データを取得することができる。
【0030】
杖に装着した2つのマーカーの三次元位置の時系列データと、杖の先端の荷重センサで取得した情報は同期しており、荷重センサで荷重が検出された時点の2つのマーカーの三次元位置の時系列データから杖が突かれた時の杖の長軸方向(傾き)を計算することができる。
杖を突いた時に荷重センサにより検出される長軸方向に作用する力を、杖の傾きを用いて、杖に作用する反力F2の3軸方向の成分F2、F2、F2に変換する。
【0031】
また、杖を突いた時の杖の先端の位置P2(x,y)は、杖に装着したマーカーの三次元位置と、杖の傾きと、マーカーと杖の先端との距離情報(既知)と、から取得することができる。
【0032】
[E]被験者の足に作用する反力の取得
被験者が杖を使用して歩行した時の人体にかかる床反力の計算について説明する。
被験者が杖を突きながら踏み板上を歩行する場合に、杖を突いた時には、フォースプレートで取得される床反力には、左右何れか一方の足に作用する反力と杖に作用する反力が含まれる。
一方、杖を突いていない時には、フォースプレートで取得される床反力は、被験者の足に作用する反力であり、通常の歩行動作の三次元動作解析を適用することができる。
以下に1枚の同じ踏み板上に人と杖が同時に載った時に、人の足に作用する力を取得する方法について説明する。
【0033】
踏み板に作用する力F1(F1、F1、F1)を、杖に作用する力F2(F2、F2、F2)と、被験者の足部に作用する力F3(F3、F3、F3)と、に分離すると共に、分離された力が作用する位置P2(x,y)、P3(x,y)を求める。
F1=FFP、F2=Fstick、F3=Fhumanとすると、フォースプレートの踏み板上に杖を突いた場合には、力のつり合いから力に関しての計算式は以下のとおりとなる。
【数1】

まとめると、
【数2】

となる。
【0034】
したがって、フォースプレートに作用する床反力FFP、杖に作用する反力Fstickの値がわかれば、被験者の足に作用する反力Fhumanを求めることができる。
床反力FFPは、フォースプレートの複数の荷重計測手段の荷重情報から取得することができる。
杖に作用する反力Fstickは、杖の先端に設けた荷重センサの荷重情報から取得することができる。より具体的には、杖に2つのマーカーを取り付けてモーションキャプチャステムで被験者が杖を突きながらフォースプレートの踏み板上を歩行した時の杖の運動データを取得することで、杖の姿勢の時系列データを取得し、杖の姿勢の時系列データから、杖を突いた時点の杖の長軸方向(杖の傾き)を取得することができ、杖の先端の荷重センサの荷重情報をX−Y-Z座標系に変換することができる。
【0035】
P1=PFP、P2=Pstick、P3=Phumanとすると、各反力が作用する位置(座標)については、モーメントのつり合いの関係から、
【数3】

となる。
これをPhumanについてまとめると、
【数4】

となる。
【0036】
したがって、フォースプレートに作用する床反力FFP及び床反力FFPが作用する位置PFP、杖に作用する反力Fstickの及び反力Fstickが作用する位置Pstick、被験者の足に作用する反力Fhumanを用いて、反力Fhumanが作用する位置Phumanを求めることができる。
床反力FFPが作用する位置PFP杖は、フォースプレートの複数の荷重計測手段の荷重情報及び荷重計測手段の位置情報から取得することができる。
反力Fstickが作用する位置Pstickは、杖に2つのマーカーを取り付けてモーションキャプチャステムで被験者が杖を突きながらフォースプレートの踏み板上を歩行した時の杖の運動データを取得することで、杖の位置及び姿勢の時系列データを取得し、杖を突いた時点のマーカーの三次元位置、及び、杖の長軸方向(杖の傾き)、マーカーと先端との距離情報から取得することができる。
【0037】
本実施形態では、1つの踏み台を備えたフォースプレートに基づいて説明したが、本発明は、同じ踏み板上に足部と杖が載る場合に杖の力を分離するものであって、実際のアプリケーションでは、複数枚のフォースプレートから床反力計測を構成してもよいことが当業者に理解される。例えば、フォースプレートを進行方向に複数枚敷設したり(特許文献1)、左足用、右足用に左右別個にフォースプレートを設け、各フォースプレートにおいて杖にかかる力を分離可能としてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚の踏み板と、当該踏み板の所定の複数箇所に設けた荷重検出手段と、を備えたフォースプレートと、
先端に荷重センサを備えた杖と、
被験者が杖を突きながら1枚の踏み板上で運動した時の床反力F1の3軸方向の成分F1、F1、F1を取得する手段と、
被験者の運動時の杖の姿勢を取得する手段と、
被験者が杖を突いた時の前記荷重センサで検出した荷重情報及び取得された杖の姿勢から杖に作用する反力F2の3軸方向の成分F2、F2、F2を取得する手段と、
床反力F1の3軸方向の成分F1、F1、F1と杖の反力F2の3軸方向の成分F2、F2、F2とから、被験者の足に作用する反力F3の3軸方向の成分F3、F3、F3を取得する手段と、
を備えた床反力計測システム。
【請求項2】
前記システムは、さらに、
床反力F1が作用する踏み板上の荷重中心位置P1(x,y)を取得する手段と、
被験者の運動時の杖の位置を取得し、杖の反力F2が作用する踏み板上の位置P2(x,y)を取得する手段と、
床反力F1及び位置P1、杖の反力F2及び位置P2、及び足の反力F3とから、足の反力F3が作用する踏み板上の位置P3(x,y)を取得する手段と、
を備えている請求項1に記載の床反力計測システム。
【請求項3】
前記床反力計測システムは、モーションキャプチャシステムを備えており、当該モーションキャプチャシステムが、前記杖の姿勢を取得する手段及び前記杖の位置を取得する手段を兼用している、請求項1、2いずれかに記載の床反力計測システム。
【請求項4】
前記モーションキャプチャシステムは、光学式モーションキャプチャであり、
前記杖の長さ方向に離間させて設けた少なくとも2つのマーカーと、
被験者が杖を突きながら運動する時に杖を撮影する複数のカメラと、
各カメラで取得された画像からマーカーの三次元位置を求めて、杖の位置及び姿勢を取得する手段と、
を備えている、請求項3に記載の床反力計測システム。
【請求項5】
前記被験者には複数のマーカーが装着されており、フォースプレートによる床反力の計測、杖の先端の荷重センサによる荷重情報の検出と同期して、被験者及び杖の位置及び姿勢の時系列データを取得することで、三次元動作解析装置を構成する、請求項4に記載の床反力計測システム。
【請求項6】
被験者がフォースプレートの踏み板上で杖を突きながら運動した時に当該被験者の足に作用する反力を取得する方法であって、
被験者の運動時の床反力F1(F1、F1、F1)をフォースプレートによって取得し、
杖の先端に荷重センサを設けると共に、被験者の運動時の杖の姿勢を取得することで、前記荷重センサにより得られた杖の軸方向の力と杖の姿勢とから被験者が杖を突いた時に当該杖に作用する反力F2(F2、F2、F2)を取得し、
床反力F1(F1、F1、F1)から杖の反力F2(F2、F2、F2)を差し引くことで、被験者の足に作用する反力F3(F3、F3、F3)取得する、
床反力計測方法。
【請求項7】
前記方法は、さらに、
床反力F1の荷重中心位置P1(x,y)をフォースプレートによって取得し、
被験者の運動時の杖の位置を取得することで、杖の反力F2が作用する踏み板上の位置P2(x,y)を取得し、
床反力F1及び位置P1、杖の反力F2及び位置P2、及び足の反力F3とから、足の反力F3が作用する踏み板上の位置P3(x,y)を取得する、
請求項6に記載の床反力計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220908(P2011−220908A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91914(P2010−91914)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000101558)アニマ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】