説明

床暖房システム

【課題】床暖房パネルを多数設置した場合でも各床暖房パネルに温水を十分に循環流通させることができる床暖房システムを提供する。
【解決手段】
熱源機1の往口9からの温水が温水配管10、ヘッダー11、各温水配管20、各室内別置ヘッダー22、各温水配管25、各床暖房パネル30、温水配管28、室内別置ヘッダー27、温水配管26、ヘッダー12、温水配管13、補助ポンプ14の順に流れる。この補助ポンプ14から吐出した戻温水の一部は、温水配管15、戻口2、配管3、循環ポンプ4、熱交換器5、配管7、往口9、温水配管10の順に流れる。戻温水の残部は、バイパスライン16を介して直に温水配管10に流れ込み、往口9からの温水と合流してヘッダー11へ向って流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ等の熱源機からの温水を床暖房パネルに流通させて床暖房を行う床暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
床暖房システムにあっては、一般に、温水の加熱手段、温水の往口及び温水の戻口を有した熱源機と、該熱源機の温水の往口及び戻口に連なり、熱源機を介して温水を循環するための温水配管と、該温水配管が蛇行状に配設された床暖房パネルと、それらの熱源機、温水配管、及び床暖房パネルに温水を循環するための循環ポンプとを備え、その温水配管によって床暖房パネルに温水を流通させるようにしている。
【0003】
この種の床暖房システムの従来技術の一例として特許文献1に記載の給湯暖房システム、特許文献2に記載の温水暖房装置、特許文献3に記載の床暖房システムなどが挙げられる。
【0004】
特許文献1では、循環ポンプによって温水を熱源機に供給し、該熱源機からの温水を往ラインによって床暖房パネルに供給し、床暖房パネルからの温水を戻ラインと前記循環ポンプとを介して熱源機に戻している。この戻ラインの循環ポンプよりも床暖房パネル側と往ラインとが熱交換器の1次側伝熱管とそれに連なる配管を介して連通している。
【0005】
この配管と往ラインとの接続部には三方弁が設けられている。この三方弁は、熱源機からの温水を床暖房パネルに流すか伝熱管に流すか二者択一的に切り替え制御される。また、この1次側伝熱管は戻ラインのポンプよりも上流側を往ラインに接続している。
【0006】
特許文献2では、温水タンク内の温水を循環ポンプで床暖房パネルに循環流通させると共に、この循環ポンプの吐出温水の一部を分取して熱交換器にて加熱し、温水タンクに戻すようにしている。
【0007】
特許文献3では、循環ポンプ内蔵型の給湯器に給湯ヘッダと返湯ヘッダを取り付け、各ヘッダから給湯往管及び戻管を介して複数の床暖房パネルに温水を流通させるよう構成している。
【特許文献1】特開2002−257365号公報
【特許文献2】特開平5−272764号公報
【特許文献3】特開平10−170005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱源機からの温水を温水配管を介して床暖房パネルに循環させる床暖房システムにおいて、床暖房パネルの枚数が多い場合、熱源機に設けられた循環ポンプだけでは十分に温水を各床暖房パネルに供給できないので、温水配管に補助用の循環ポンプを設けることがある。
【0009】
しかしながら、このように補助用の循環ポンプを設けても、熱源機自体の水の流通抵抗が大きいために、床暖房パネルへの供給流量を十分に増大させることができないことがある。
【0010】
本発明は、床暖房パネルを多数設置した場合でも各床暖房パネルに温水を十分に循環流通させることができる床暖房システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の床暖房システムは、温水の加熱手段、温水の往口及び温水の戻口を有した熱源機と、該熱源機の温水の往口及び戻口に連なり、熱源機を介して温水を循環するための温水配管と、該温水配管が蛇行状に配設された床暖房パネルと、それらの熱源機、温水配管、及び床暖房パネルに温水を循環するための循環ポンプとを備えた床暖房システムであって、前記温水配管には、前記熱源機の温水の往口に連なる温水配管と戻口に連なる温水配管との間に、前記熱源機を介さずに温水を循環するためのバイパスラインを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
このバイパスラインは、熱源機に設けられることがあるミニマムフローラインとは別個のものである。
【0013】
本発明では、このバイパスラインには、熱源機を流れる流量以上の温水が流れるように構成するのが好ましく、特にバイパスラインの流量が熱源機の流量以上、10倍以下となるようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、熱源機の温水の往口に連なる温水配管と戻口に連なる温水配管との間に、前記熱源機を介さずに温水を循環するためのバイパスラインが設けられており、床暖房パネルから戻ってきた温水の一部がこのバイパスラインを介して、熱源機を経ることなく往口に連なる温水配管に送り出される。このため、熱源機内の循環ポンプの吐出流量とバイパスラインを流れる流量とが重畳して床暖房パネルに向って温水配管を流れることになる。従って、床暖房パネルの数が多くても、各床暖房パネルに十分に温水を流通させることができる。
【0015】
本発明では、バイパスラインを通過する流量を熱源機を通過する流量と同量以上、好ましくは1〜10倍とすることにより、各床暖房パネルに十分に温水を流通させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明するが、以下に説明するものは本発明の実施形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り、以下の説明に何ら限定されるものではない。第1図は実施の形態に係る床暖房システムの系統図である。
【0017】
この実施の形態に係る床暖房システムにあっては、建物の複数個(m個)の室の各々に複数枚(n枚)の床暖房パネルが敷設施工されており、循環ポンプ4を備えた熱源機1から温水を配管及び補助用の循環ポンプ14を介して循環流通させるように構成している。
【0018】
熱源機1は、戻口2からの戻温水を配管3、循環ポンプ4、熱交換器5、配管7、往口9の順に流通させ、この熱交換器5においてバーナ6からの熱によって温水を加温するよう構成されている。
【0019】
配管3,7はミニマムフローライン8によって連通されている。このミニマムフローライン8は、熱源機1内に設けられており、後述の弁21のすべてが閉とされた無負荷状態で循環ポンプ4が作動したときでも、水を配管3,7及び該ミニマムフローラインを介して循環流通させるためのものである。
【0020】
この往口9には、温水配管10を介して往側のヘッダー11が連なっている。このヘッダー11と並列して戻側のヘッダー12が設置されている。このヘッダー12は、温水配管13、補助用の循環ポンプ14及び温水配管15を介して戻口2に連なっている。この補助用の循環ポンプ14と戻口2を繋ぐ温水配管15と、上記往側の温水配管10とがバイパスライン16を介して連通している。
【0021】
この実施の形態では、バイパスライン16は、直管又は少なくとも一部が緩く湾曲した曲管よりなる。このバイパスライン16には流量調節弁や開閉弁などの弁は一切設けられておらず、戻側温水配管15から往側温水配管10へ流れる温水の流通抵抗が小さなものとなるように構成されている。
【0022】
この実施の形態では、この往側の温水配管10が往メインライン(主配管)を構成している。また、戻側の温水配管13,15が戻メインラインを構成している。
【0023】
前記往側のヘッダー11には複数本(m本)の往側の各温水配管20の上流端が接続されている。また、戻側のヘッダー12には、該温水配管20と同数本(m本)の戻側の各温水配管26の下流端が接続されている。通常、建物の室の個数(m個)は1〜10個、好ましくは1〜5個である。なお、図中では、温水配管20,26がそれぞれm本であることを示すために、符号20,26に(1)、(m)が添記してある。これらの温水配管20,26は例えば銅管、アルミ複合管、架橋ポリエチレン管などよりなり、建物の天井や床下に引き回される。なお、配管の材質はこれに限定されない。
【0024】
各温水配管20の下流端及び各温水配管26の上流端は、建物の各室毎に設置された室内別置ヘッダー22,27にそれぞれ接続されている。
【0025】
この建物の各室にはそれぞれ複数枚(n枚)の床暖房パネル30(30(1)〜30(n))が設置されており、各床暖房パネル30(1)〜30(n)がそれぞれ往側の温水配管25と戻側の温水配管28を介して各室内別置ヘッダー22,27に接続されている。1室あたりの床暖房パネルの枚数(n)は室の大きさにもよるが、通常1〜10枚、好ましくは2〜6枚である。これらの温水配管25,28は架橋ポリエチレン管などよりなるが、材質はこれに限定されない。
【0026】
この実施の形態では、温水配管20,26が第1のブランチライン(分岐配管)であり、配管25,28が第2のブランチライン(分岐配管)である。
【0027】
なお、各温水配管20にはそれぞれ流量調節弁21が設けられており、各室に設けられた床暖房温度調節用の室内リモコン24によって流量調節されるよう構成されている。この室内リモコン24は、室の数(m個)と同数個設けられている。
【0028】
このように構成された床暖房システムにおいて、図示しない床暖房運転スイッチをONとすると、循環ポンプ4、補助用の循環ポンプ14及びバーナ6が作動し、往口9からの温水が主配管たる温水配管10、ヘッダー11、第1の分岐配管たる各温水配管20、各室内別置ヘッダー22、第2の分岐配管たる各温水配管25、各床暖房パネル30、第2の分岐配管たる温水配管28、室内別置ヘッダー27、第1の分岐配管たる温水配管26、ヘッダー12、主配管たる温水配管13、補助用の循環ポンプ14の順に流れる。
【0029】
この補助用の循環ポンプ14から吐出した戻温水の一部は、主配管たる温水配管15、戻口2、配管3、循環ポンプ4、熱交換器5、配管7、往口9、主配管たる温水配管10の順に流れる。補助用の循環ポンプ14から吐出した戻温水の残部は、バイパスライン16を介して直に主配管たる温水配管10に流れ込み、往口9からの温水と合流してヘッダー11へ向って流れる。
【0030】
このように補助用の循環ポンプ14を設けると共に、主配管たる温水配管15,10をバイパスライン16で連通しており、主配管たる温水配管13を介して戻ってきた戻温水の一部を該バイパスライン16から直に主配管たる温水配管10に流通させるので、温水配管10からヘッダー11に向う給湯流量を多くし、各床暖房パネル30に十分な量の温水を流通させることが可能となる。
【0031】
なお、床暖房パネル30及びその周囲の床がほぼ十分に暖まって床暖房システムが定常運転状態となっているときにあっては、戻口2に戻ってくる温水の温度は55〜60℃程度である。この戻温水が熱交換器5で加温され、往口9から70〜75℃程度の温水となって送り出される。
【0032】
従って、補助用の循環ポンプ14から吐出した戻温水の一部を、加温することなくバイパスライン16から温水配管10へ合流させる場合でも、温水配管10からヘッダー11等を経て床暖房パネル30に供給される温水の温度は60〜70℃程度と十分に高いものとなる。
【0033】
なお、仮にバイパスライン16を省略した場合には、たとえ補助用の循環ポンプ14を設けてあっても、熱源機1内の特に熱交換器5の流通抵抗が大きく、温水配管10から送り出される温水流量を増加させることはできず、大型の床暖房システムにおける床暖房パネルへ充分な温水を供給することができない。
【0034】
なお、主配管たる温水配管10,13,15の管内径は通常16〜30mmであり、第1の分岐配管たる温水配管20,26の管内径は通常13〜20mmであり、第2の分岐配管たる温水配管25,28の管内径は通常7〜10mmである。そして、バイパスライン16の管内径は、主配管たる温水配管10,13,15の管内径の1.0〜2.0倍とするのが好ましく、また、ミニマムフローラインの管内径は、主配管たる温水配管10,13,15の管内径の0.1〜0.6倍とするのが好ましい。
【0035】
本発明では、前記、床暖房システムが定常運転状態においては、バイパスライン16内を流れる流量(体積流量)が、熱源機1内の配管3、熱交換器5、配管7の流量(熱源機の流量)に対し、1倍以上、10倍以下、特に1〜3倍となるようにバイパスライン16の長さや管径を設定するのが好ましい。ミニマムフローラインの管内径は通常3〜10mm、好ましくは3〜5mmであり、バイパスラインの管内径は通常10〜30mm、好ましくは15〜25mmである。バイパスラインの管内径は、ミニマムフローラインの管内径に対して、通常2〜8倍、好ましくは4〜7倍である。また、このようにバイパスライン16の流量を多くするために、バイパスライン16としては直管状又は少なくとも一部が緩く湾曲した曲管よりなり、且つ流通抵抗となる弁などが設けられていないことが望ましい。ただし、バイパスライン16、または、主配管たる温水配管15、10とバイパスライン16との分岐部に、流量調節弁や開閉弁が設けられてもよい(図示せず)。バイパスライン16に流量調節弁を設けると、温水配管15の温水流量を、バイパスライン16と熱源機1に適宜、分配することができる。
【0036】
循環ポンプ4を設ける箇所は、第1図に示す箇所に限定されない。例えば、第1図において、補助用の循環ポンプ14を設けた箇所に循環ポンプ4を設けても良い。この様な場合でも、前記の流量調節弁や開閉弁を設けることにより、バイパスライン16の流量を調節することができる。
【0037】
なお、上記の床暖房パネル30としては、例えば、発泡合成樹脂等よりなる板状の断熱材の上面に溝が設けられ、この溝内に温水チューブが引き回され、このベースの上面にアルミ等の伝熱シートと、仕上げ用表面材が設けられたものを用いることができるが、これに限定されない。
【0038】
この床暖房パネル30としては、既に上市されている各種のものを用いることができる。通常の床暖房パネルにあっては、面積は0.8〜10m程度であり、チューブの内径は4〜7mm特に5〜6mm程度であり、チューブ長さは10〜70m特に20〜50m程度である。1枚の床暖房パネルに対し0.5〜1.5L/min例えば約1L/min程度の流量にて温水が流通される。この場合の1枚の床暖房パネルの通水圧損は20〜40KPa例えば約30KPa程度である。
【0039】
上記実施の形態では戻側の温水配管13に補助用の循環ポンプ14を設けているが、往側の温水配管10(ただし、バイパスライン16の接続地点よりもヘッダー11側)に補助用の循環ポンプ14を設置してもよい。ただし、この場合、補助用の循環ポンプ14の上流側となる熱源機1の配管や熱交換器5内に負圧が発生する可能性があるので、図のように戻側の温水配管13に設ける方が好ましい。温水配管13,10の双方に補助用の循環ポンプを設けてもよいが、コスト高となるので、温水配管13にのみ設けるのが好ましい。
【0040】
本発明の床暖房システムにより、1システム当たり25〜50L/分の温水を循環することが可能であり、うち、15〜40L/分を、熱源機を介さずに前記バンパスラインを介して床暖房パネルに温水を循環させる量とすることが可能であり、床暖房パネルの総面積で100〜400mを用いた床暖房が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施の形態に係る床暖房システムの系統図である。
【符号の説明】
【0042】
1 熱源機
2 温水の戻口
3 配管
4 循環ポンプ
5 熱交換器
6 バーナ
7 配管
8 ミニマムフローライン
9 温水の戻口
10 往メインラインを構成する温水配管
11,12 ヘッダー
13,15 戻メインラインを構成する温水配管
14 補助用の循環ポンプ
16 バイパスライン
20,25,26,28 ブランチラインを構成する温水配管
30 床暖房パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水の加熱手段、温水の往口及び温水の戻口を有した熱源機と、
該熱源機の温水の往口及び戻口に連なり、熱源機を介して温水を循環するための温水配管と、
該温水配管が蛇行状に配設された床暖房パネルと、
それらの熱源機、温水配管、及び床暖房パネルに温水を循環するための循環ポンプとを備えた床暖房システムであって、
前記温水配管には、前記熱源機の温水の往口に連なる温水配管と戻口に連なる温水配管との間に、前記熱源機を介さずに温水を循環するためのバイパスラインを備えてなることを特徴とする床暖房システム。
【請求項2】
熱源機内に、熱源機内の加熱手段より往口側の配管と戻口側の配管とを連通するミニマムフローラインを備えた請求項1に記載の床暖房システム。
【請求項3】
循環ポンプを、熱源機内に備えた請求項1又は2に記載の床暖房システム。
【請求項4】
熱源機の温水の戻口に連なるバイパスライン手前の温水配管に、更に循環ポンプを設けた請求項1乃至3のいずれかに記載の床暖房システム。
【請求項5】
循環ポンプを、熱源機の温水の戻口に連なるバイパスライン手前の温水配管に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の床暖房システム。
【請求項6】
温水配管が、主配管と、ヘッダを介して、床暖房する部屋数に応じて分岐させた複数の分岐配管を有し、該分岐配管が床暖房パネルに配設されている請求項1乃至5のいずれかに記載の床暖房システム。
【請求項7】
パイパスラインの管内径が、温水配管の主配管内径の1.0〜2.0倍である請求項6に記載の床暖房システム。
【請求項8】
パイパスラインの管内径が、ミニマムフローラインの管内径の2〜8倍である請求項2に記載の床暖房システム。
【請求項9】
バイパスラインの温水流量が熱源機内温水流量の1〜10倍となるように構成されている請求項1乃至8のいずれかに記載の床暖房システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−107080(P2008−107080A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247453(P2007−247453)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000236159)三菱化学産資株式会社 (101)
【Fターム(参考)】