説明

床暖房装置

【課題】低温の温水により安全で、間欠運転でも効率良い床暖房を実現できる。
【解決手段】外周にコンクリート製の布基礎1を形成し(a)、布基礎1の内方に石材層7を形成する(b)。石材層7で、内方土台18の設置位置の下方に、溝9を形成する。布基礎1上に木製の外周土台14を固定し、柱の位置に対応させてH形鋼の内方土台18を架設する。石材層7の上面に樹脂フィルム13を覆る。補強鉄筋23、23を配置するとともに、床暖房用の温水パイプ25を配置する(c)。続いて、石材層7上にコンクリートを打設し、温水パイプ25が埋設された下地コンクリート層27を構築する。続いて、下地コンクリート層27上に床仕上げ板31を敷設し、床構造33を構築する。温水パイプに40〜50℃の温水を流せば、下地コンクリート層27、石材層7に蓄熱されながら、床暖房を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリート層内に加熱手段を埋設してなる床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中の蓄熱を直接利用して、地中の蓄熱を直接床に伝える為に、砂利床に、床下地としてコンクリートを打設し、この下地コンクリートの上面に直接に床板を貼る試みも提案されている。例えば、建築家・坂本鹿名夫氏の提唱する「砂利床冷暖房」(昭和55年1月30日付け『日本経済新聞』24面、昭和55年2月22日付け『毎日新聞』15面など)などである。発明者は、この工法を実行する上でのいくつかの発明を提案し(特許文献1、2)、出願人はこの工法の普及に努め、砂利床の蓄熱成果を実証している。
【0003】
床暖房工法又は床暖房の構造であって、このような砂利層の上にコンクリート層を設けた基礎構造で、床暖房用の配管をコンクリート層内に埋設すること、砂利層の下方に予め給排水衛生設備用のサヤ管を予め埋設しておき、コンクリート層の上方に開口させておく工法が提案されている(特許文献3)。また、蓄熱部材(コンクリート)の上方に温水管を配置した床暖房構造が提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】特許第3051850号
【特許文献2】特許第3331466号
【特許文献3】特開2004−92037
【特許文献4】特開2005−300014
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の技術の床暖房工法又は構造の内、前者のものは、サヤ管の配置に特徴がある発明で、温水管とコンクリート層、温水管と砂利層については一切記載されていない。また、後者の技術は、根太16の厚さ内に配置する構造であり、充分な蓄熱層の厚さを確保できず、また材料をコンクリートとしているので、蓄熱効果は期待ができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
然るにこの発明は、床暖房用の加熱手段を埋設した下地コンクリート層を形成し、下地コンクリート層の下方に防湿層及び石材層を形成したので、前記問題点を解決した。
【0006】
即ちこの発明は、以下の構成としたことを特徴とした床暖房装置である。
(1) 建造物の外周の土台位置に対応させてコンクリート製の基礎を形成し、該基礎の内方で床構築位置に、石材を敷き詰め石材層を形成する。
(2) 前記石材層上に防湿層を介して、下地コンクリート層を形成し、該下地コンクリート層の上に床仕上げ部材を敷設する。
(3) 前記下地コンクリート層内に、床暖房用の加熱手段が埋設されている。
【0007】
また、前記において、以下のように、構成したことを特徴とする請求項1記載の床暖房装置である。
(1) 基礎上に外周土台を構築する。
(2) 前記外周土台間で内方土台形成予定位置に沿って、上縁を前記外周土台と同一となるように形成した内方土台を架設する。
(3) 内方土台の下方に床暖房用の温水パイプを配置する。
(4) 前記両土台の上縁に沿って、下地コンクリートを打設し、該下地コンクリートの固化後に、前記下地コンクリートの上面に、床仕上げ部材を敷設する。
【0008】
前記における外周土台とは、構造上重要な位置を占める土台で、通常は建物の外周に配置される。ただし、床面積が多い場合や大きな鉛直荷重を支える位置等には、内側であっても配置される場合もある。通常は通し柱を支える土台を外周土台として、外周土台の下方には、コンクリート製の基礎を直接に位置させる。
【0009】
また、前記における内方土台は、外周土台以外の土台である。
【0010】
また、前記における発熱手段は、温水供給手段(ボイラーに)に接続された温水パイプが、熱的・コスト的にも最適であるが、蒸気、各種気体をはじめ電気的な発熱手段(ヒーター類)など他の発熱手段を使用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、石材層上に防湿層を介して、下地コンクリート層を形成し、下地コンクリート層内に、床暖房用の加熱手段を埋設したので、加熱手段で下地コンクリート層の上方の床面を暖め、床暖房を実現できる。また、この際、加熱手段の熱は、下地コンクリート層及び石材層に蓄熱されるので、加熱手段の動作を止めた後でも、床暖房を継続できる効果がある。
【0012】
また、加熱手段を作動させない場合であっても、地中の熱を石材層に蓄えて、下地コンクリート層の温度を15℃前後(外気温による変化が少なく)とすることができるので、この温度から加熱手段を作用させるので、所望の温度に至る加熱手段の必要熱量を大幅に軽減できる。
【0013】
従って、加熱手段の運転時間を少なくして、石材層への地盤からの熱の蓄熱との効果を併せて、効率的な床暖房を実現できる。また、加熱手段を低温にできるので、低温やけど等を防止して安全な床暖房を実現できる。
【0014】
また、加熱手段として温水パイプを使用した場合には特に安価に床暖房装置を実現できる。この場合、内方土台の下方に温水パイプを配置する場合には、土台を貫通しないので、土台の強度が低下することなく、自由に温水パイプを配置できる効果がある。従って、部屋毎のゾーニングが容易に設定できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(1)床構造33の構築
【0016】
建造物の外周にコンクリート製の布基礎1を形成する(図3(a))。布基礎1の内側の土面5は、高さHだけ外側の地面6より高く形成する。
【0017】
続いて、布基礎1の内方の床構築位置に、石材を敷き詰め石材層7を形成する(図3(b))。石材層7で、内方土台18の設置位置の下方に、溝9を形成する。
【0018】
続いて、布基礎1上に外周土台14を載置し、埋設したアンカーボルト等で布基礎1と外周土台14とを固定する(図3(c))。また、外周土台14の内側で、従来の土台設置位置(柱35を立てる位置)に対応させて内方土台18を架設する。内方土台18の両端は、外周土台14の側面16又は他の内方土台18の側面22に固定する。通常、外周土台14、内方土台18は在来の木製又はH形鋼などの鋼材を使用する(図3(c))。
【0019】
続いて、石材層7上面を、防湿層として樹脂フィルム13で覆う(図3(c))。石材層7の上方に必要な補強鉄筋23、23を配置するとともに、所定の平面位置及び深さに床暖房用の温水パイプ25、25を配置する(図3(c))。
【0020】
続いて、石材層7(樹脂フィルム13)上にコンクリートを打設する。この際、外周土台14及び内方土台18の上縁を定規として、打設したコンクリートの上面を均一に均す。コンクリートが固化発現したならば、下地コンクリート層27が完了する(図3(d))。下地コンクリート層27は、溝9部分に下方突出部29が形成され、上方に位置する内方土台18に対して基礎梁と同様の効果を奏する。
【0021】
続いて、下地コンクリート層27上に床仕上げ板31を敷設する。また、温水パイプ25、25を温水供給装置(ボイラー等)に接続する。以上のようにしてここの発明の床構造33を構築する。この場合、温水パイプ25を使用する場合には、下地コンクリート層27の上面28とL(=60mm程度)の深さに埋設する(図2)。
【0022】
続いて、内方土台18の上フランジ19、外周土台14の上面15に柱35、35を立設して(図2)、必要な構造体及び内外装を構築して、建造物を仕上げる。
【0023】
(2)床暖房システム
【0024】
下地コンクリート層27に埋め込んだ温水パイプ25、25に温度40〜50℃程度の低温の温水を流す。温水の熱は、下地コンクリート層27の上方を暖め床仕上げ板31表面から放熱される。また、温水の熱は下地コンクリート27及び石材層7の石材及び石材間の空気に蓄熱される。即ち、床仕上げ材31の表面の温度を上げ、その低温輻射熱を暖房に利用して、床暖房を実現できる。また、低温であるので、使用する樹脂フィルム13に影響を与えることがなく、樹脂フィルム13の選択の幅を広げることができる。
【0025】
また、従来のファンコンベクターなどを利用する対流式の直接暖房に比べて、下記の特徴があり床から天井まで温度差の少ない理想的な暖房を実現できる。
・従来の暖房方式と異なり、床からの輻射で天井及び壁に熱が伝わり、さらに暖められた天井及び壁から輻射が生じるので、室内の温度分布がほぼ均一で穏やかに暖め、かつ足下から暖まるため、快適な暖房を得ることができる。
・一般の温水式床暖房では、60〜80℃の温水が必要なのに対し、この発明では50℃以下の温水で充分であるので、低温やけどの心配もなく安全である。
・下地コンクリート層27に埋め込んだ温水パイプ25、25から放射された熱が、熱容量の大きいコンクリート(下地コンクリート層27)、石材(石材層7)などの床材に吸収蓄熱されるために、ボイラーなどを停止した後も暖房効果を維持できる。
・床温度表面の温度が、他の暖房方式よりも低温でよいために、室内で発生する対流もなく、室内の過乾燥を防ぎ、塵埃が上昇気流と一緒に立ち上がることもなく室内を清潔に保つことができる。
・上記の効果から、総体として、ランニングコストを抑えることが可能である。
・また、一般の床暖房と違い、部屋毎の設備ではなく、1階床全面を暖房できるので、部屋間の温度差も少なくなる。
・また、逆に部屋毎の暖房を希望する場合には、部屋毎にルートを違えて温水パイプを埋設すれば良いので、部屋毎の暖房も容易に設定できる。この際、部屋毎を区切る内方土台18の下方に布基礎が無いので、内方土台18の下方に温水パイプを配置して任意の区分けが容易にできる効果がある。
【0026】
(3)実験結果
【0027】
図4〜6に基づきこの発明の実験例を説明する。図4に示すように、
・カーペット層32 厚さt=10mm程度
・床仕上げ板31 厚さt=下地合板12mm+フロア材15mm
・下地コンクリート層27 厚さL=150mm程度
・石材層7 厚さL=200mm程度
の構造の実験住居内での温度変化を測定した。
【0028】
まず図5に、間欠運転をした場合の石材層7の温度変化を示す。一日の気温の変化を「外気温」で示し、このとき、床暖房をしない場合の石材層7の温度変化を「石材層7(暖房無し)」のグラフで示す。このときの石材層7の温度はほぼ15℃で一定である。これは、地中の熱により石材層7が暖められているからであり、この床構造の本来的な効果による。
【0029】
また、3時から8時、16時から22時に限ってボイラーを運転し、温水パイプに設定温度43℃で温水を流した。このときの温水の送りの温度を「温水送り」に、戻りを「温水戻り」に表す。このときの石材層7の温度を「石材層7(暖房有り)」に示す。石材層7は、運転にあわせて温度上昇多少の上下はあるが、30℃程度でほぼ一定になっている。尚、このデータは3時から8時、16時から22時にタイマー設定をして、数日経過して安定した後の1日のデータである。
【0030】
次ぎに、図6に、ある日の午前9時にボイラーの運転を開始し、以降連続運転をした場合の1週間の各部の温度変化を表す。
【0031】
石材層7、コンクリート下地層27が暖まるで時間がかかるので、下地コンクリート層27の上面18の温度は、温水送り温度の上昇に合わせて緩やかに上昇して、32〜33℃を保つ。この際、床仕上げ板31の上面31aでは、外気温に影響を受けて上下するが、20℃前後でほぼ安定する。
【実施例1】
【0032】
図1〜図3に基づきこの発明の実施例を説明する。この実施例は、外周土台14を木製の材料から構成した例である。
【0033】
(1) 従来公知の方法により、所定の成型型枠を組み、コンクリートを打設して、外周部分の布基礎1、外周部分の布基礎1を補強する内側の布基礎1a、土間等を構築する(図3(a))。一般の工法では、外周部分等の布基礎1の内方であって、床構築位置の土面(土壌)5に防蟻処理を施すが、本工法では、防蟻処理を不要とすることができる。また、ここで、土面5は周辺(外周の布基礎1の外周)の地面6よりも高さHだけ高く形成する(図2)。ここで高さHは、50mm程度以上が望ましい。ただし、高さHは、求める基礎の性能や地盤の土質や床構築位置の面積などにより決定される。
【0034】
(2) 続いて、布基礎1の内方の床構築位置に布基礎1、1aのほぼ上面2まで、石材を敷き詰め、厚さL(=300mm程度)の石材層7を形成する(図3(b))。石材層7は、上面8が略水平に形成され、床構築位置で、土台(内方土台18、18)を形成する予定位置の下方に、石材層7の上面8から深さL(=90mm程度)の溝9、9を形成し、溝9は側壁を斜めに形成して斜面11、11とした台形に形成してある。また、溝9の深さLは地盤の耐圧などにより適宜選択して設定し、また形状も断面正方形、長方形、逆三角形、半円形など適宜選択することもできる。
【0035】
また、石材層7は、布基礎1、1aと近接する部分を低く形成し、布基礎1、1aの側面3が最も低い三角形の周辺溝12、12を形成する。
【0036】
石材層7を構成する石材は、外径40mm程度の砕石を使用することが望ましいが、石材間に空隙(空気層)を形成でき、砕石と同程度の破壊強度を有すれば材質大きさは任意であり、外径100mm以下であれば可能である。また、材形も砂利、砂、等粒状、塊状、砂状、粉状など可能であり、また材質も自然の砕石等の他、廃棄コンクリートやゴミ焼却施設の焼却残渣を加工して同様の形状を構成することもできる。
【0037】
(3) 続いて、石材層7の上面8を厚さ0.1mm程度の樹脂(ポリエチレンなど)フィルム13で覆う(図3(c))。溝9、12部分では、溝9、12の形状に沿って樹脂フィルムを付設する。樹脂フィルム13は下方からの水分が上方(室内側)へ透過することを防止する為に設けたものであり、このような性質がある材質であれば、任意である。
【0038】
(4) (2)(3)に前後して、布基礎1上に、従来の木製の材料からなる外周土台14、14を載置し、従来と同様に、布基礎1、1aに埋設したアンカーボルト(図示していない)の先端部を外周土台14に定着し、外周土台14を布基礎1、1aに一体に固定する(図3(c))。
【0039】
(5) 続いて、外周土台14、14間で、柱設置位置その他必要な位置に、H形鋼(上下フランジ19、21、ウエブ20)からなる内方土台18、18を架設する(図3(c))。
【0040】
ここで、内方土台18の上フランジ19の管柱立設位置には、予め透孔を穿設し、上フランジ19の下面からボルトを上方に向けて突設し、ボルトが落下しないように、ボルトの軸にナットを緊結しておく(図示していない)。また、筋交い固定金物を取付ける場合には、上フランジに取付用の貫通孔を予め穿設しておく(図示していない)。
【0041】
また、この際、内方土台18の上フランジ19の上面を所定高さに保つ為に、内方土台18の下面と、布基礎1aの上面や石材層7(樹脂フィルム13)の上面8との間に、介在物(コンクリート片、石片、金属片など)37を介在させる(図3(c))。
【0042】
(6) (5)の内方土台18、18の配置に前後して、石材層7の上方で、内方土台18、18間に補強鉄筋23、23を配置し、必要ならば、内方土台18の透孔に挿通させる。また、必要ならば、内方土台18の下方の溝9、11内に打設されるコンクリートと内方土台18とが一体に形成されるように、溝9、11内にも鉄筋篭その他の補強鉄筋23、23を配置する(図2)。
【0043】
(7) 補強鉄筋23、23の配置と同時に又は前後して、温水式の床暖房用の温水パイプ25、25を、床暖房システムのゾーン(ここでは2系列)に対応させて配置する(図1)。この際、配置した温水パイプ25、25は、結束線などにより、補強鉄筋25、25に止めれば、コンクリート打設時に位置がずれるおそれがない。
【0044】
また、この際、温水パイプ25が内方土台18を横切る場合には、内方土台18の下方、即ち、溝9を通過させる(図2)。従って、内方土台18を貫通する必要が無いので、内方土台18に貫通穴を設けることや、更にその補強処理をする必要がない。
【0045】
また、温水パイプ25、25は、ヘッダー38の設置位置に対応させて、温水パイプ25の先端を外周土台14(内方土台18)の上方に突出させておく。尚、温水パイプ25、25の設置高さ(深さ)は、構築予定の下地コンクリート層27の上面28から、温水パイプ25の上面までの距離L(=60mm程度)となるように温水パイプ25、25を設置する(図2)。温水パイプ25は例えば、三菱化学製のヒシパイプPB(登録商標。例えば外径17mm、内径13mm程度)等を使用する。
【0046】
(8) 続いて、石材層7の上面8(樹脂フィルム13の上面)で外周土台14、14内(床構築位置内)に、コンクリート(下地コンクリート)を打設する(図3(d))。この際、土台14、18の上縁間に、直線を有する均し棒(板でも可。図示していない)を架設当接し、均し棒を外周土台14、内方土台18の上面に沿ってずらしながら移動し、未だ固まらないコンクリートの上面を削り、水平で均一に均す。
【0047】
この際、内方土台18及び/又は外周土台14とで区画された部分毎に均し作業ができるので、操作する均し棒の長さを短くでき、作業が容易で、かつ同時に複数箇所を均すことができるので、作業効率を高めることができる。また、狭い区画を一度に、均し棒などで均すことができるので、施工精度を高め、誤差±1mm前後のコンクリート面を構築できる。
【0048】
(9) コンクリートが固化後に、溝9、12に対応して下方突出部29、周縁突出部30が形成された下地コンクリート層27を、外周土台14、内方土台18と一体にコンクリート層27が形成され、下地コンクリート層27は石材層7上に安定して配置される(図3(d)、図2)。
【0049】
(10) 続いて、下地コンクリート層27が脱水されたことを確認して、下地コンクリート層27の上面28に、直接又は床下地用の合板を介して、床仕上げ板31を敷設する(図3(d)、図2)。また、温水パイプ25、25をヘッダー38に接続し、ヘッダー38をボイラーなどの温水供給装置へ接続する(図示していない)。以上で床構造33の構築が完了する(図2、図3(d))。
【0050】
(11) また、外周土台14上に、従来と同様の方法で柱35(通柱、管柱)を立設して柱脚を固定する。また、内方土台18にも柱35を立設して。内方土台18に予め設置したボルトを利用して、各種接合金物を使用して、内方土台18に柱脚を接合する(図示していない)。従って、容易に柱35、35を取り付けできる。また、内方土台18の上フランジ19の縁部には突起物がないので、下地コンクリート27の打設及びその上面28の均し作業には、支障がない。
【0051】
また、内方土台18は、H型鋼から構成したので、柱35、35から伝達される荷重に対して、内方土台18は下地コンクリート層27、石材層7と一体となり、沈み込みに対しては上下フランジ19、21が、浮きに対しては下フランジ21が、夫々作用して従来に比して強固な建造物を構築できる。
【0052】
[3]他の実施例
【0053】
前記実施例において、温水パイプ25の配置は2系列にしたが、部屋毎の配置など任意であり、温水パイプ25を内方土台18の下方に配置することができるので、配置に制約が無く、従来に比して自由に配置することができる。
【0054】
また、前記実施例において、内方土台18の下方に溝9を形成したが、内方土台18が負担する上方の垂直荷重が少ない場合には、下地コンクリート層27で必要な厚さが確保できれば、溝9を形成する必要はない。
【0055】
また、前記実施例において、外周土台14、内方土台18の材料は任意である。
【0056】
また、前記実施例において、温水パイプ25、25の上面側及び/又は下面側に金網や格子鉄筋を設けることもできる(図示していない)。
【実施例2】
【0057】
図7に基づきこの発明の他の実施例を説明する。この実施例は、外周土台14、内方土台18を均しに使用しないで、下地コンクリート層を形成する実施例である。
【0058】
(1) 実施例1と同様に、成型型枠を組み、コンクリートを打設して、柱を立設する位置に合わせて(土台の位置に合わせて)建築物の外周部分に布基礎1、外周部分の布基礎1を補強する内側の布基礎1a、土間等を構築する(図7(a))。また、実施例1と同様に、土面5は周辺(外周の布基礎1の外周)の地面6よりも高さHだけ高く形成する(図7(a))。この場合、必要ならば、土台14、18を布基礎1、1aに固定するためのアンカーボルト41、41を埋設して、上端部を布基礎1、1aの上端から突出させておく(図7(a))。
【0059】
(2) 続いて、実施例1と同様に、布基礎1、1aの内方の床構築位置に、石材を敷き詰め、厚さL1の石材層7を形成する(図7(a))。この場合、形成予定のコンクリート下地層27の上面28を布基礎1、1aの上面2、2と面一に形成するので、石材層7の上面8の位置は、下地コンクリート層27の厚さL2だけ、布基礎1、1aの上面2、2より下方に位置させる。石材層7を構成する石材は、前記実施例1と同様である。
【0060】
(3) 続いて、実施例1と同様に、石材層7の上面8を樹脂フィルム13で覆い(図3(c)参照)、下地コンクリート層27用の補強鉄筋23、23を配置する(図2参照)。また、補強鉄筋23、23の配置と同時に又は前後して、温水式の床暖房用の温水パイプ25、25を配置する(図7(b)。図1参照)。
【0061】
(4) 続いて、実施例1と同様に、石材層7の上面8(樹脂フィルム13の上面)で外周土台14、14内(床構築位置内)に、コンクリート(下地コンクリート)を打設する(図7(c))。コンクリートが固化後に、下地コンクリート層27を形成し、下地コンクリート層27は石材層7上に安定して配置される(図7(c))。
【0062】
(5) 続いて、実施例1と同様に、下地コンクリート層27が脱水されたことを確認して、布基礎1、1aの上面2、2に土台14、18を載せてアンカーボルト41、41に固定する。
【0063】
下地コンクリート層27の上面28に、直接又は床下地用の合板を介して、床仕上げ板31を敷設すると共に温水パイプ25、25をヘッダー38に接続し(図1参照)、ヘッダー38をボイラーなどの温水供給装置へ接続する(図示していない)。以上で床構造33の構築が完了する(図7(c))。
【0064】
(6) また、外周土台14上に、従来と同様の方法で柱35(通柱、管柱)を立設して柱脚を固定する。また、内方土台18にも柱35を立設して。内方土台18に予め設置したボルトを利用して、各種接合金物を使用して、内方土台18に柱脚を接合する(図示していない)。従って、容易に柱35、35を取り付けできる。
【0065】
(7)他の実施例
前記実施例において、内方土台18の設置位置に基礎1aを使用しないで、基礎1のみを使用することもできる(図7(d))。この場合、下地コンクリート層27と内方土台18とを固定する為に、下地コンクリート層27にアンカーボルトなどの部材を埋設することもできる(図示していない)。
また、前記実施例において、外周土台14、内方土台18を使用したが、柱35の柱脚を固定し、床を取り付ける為の部材であれば、土台14、18に限らず、断面の小さな下枠材などを使用することもできる(図示していない)。
また、前記実施例において、布基礎1、1aを構築した後に、下地コンクリート層27を構築したが、布基礎1、1a、下地コンクリート層27用の型枠を組んで、一度にコンクリートを打設して構築することもできる(図示していない)。
また、前記実施例における他の実施例は、実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施例で、下地コンクリートを打設する前の概略した平面図である。
【図2】同じく、実施例で、床構造の拡大した縦断面図である。
【図3】(a)〜(d)は同じく、施工方法を説明する概略した縦断面図である。
【図4】実験例で、床構造を表す概略した縦断面図である。
【図5】実験例で、間欠運転をした場合の温度変化のグラフである。
【図6】同じく実験例で、ある時刻から連続運転をした場合の1週間の温度変化のグラフである。
【図7】この発明の他の実施例で、(a)〜(c)は施工方法を説明する概略した縦断面図で、(d)はさらに他の実施例の床構造を表す概略した縦断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 布基礎(外周)
1a 布基礎(内側)
2 布基礎の上面
3 布基礎の側面
5 土面
6 周辺の地面
7 石材層
8 石材層の上面
9 石材層の溝
12 石材層の周辺溝
13 樹脂フィルム
14 外周土台
15 外周土台の上面
16 外周土台の側面
18 内方土台
19 上フランジ(内方土台)
20 ウエブ(内方土台)
21 下フランジ(内方土台)
23 補強鉄筋
25 温水パイプ
27 下地コンクリート層
28 下地コンクリート層の上面
29 下地コンクリート層の下方突出部
30 下地コンクリート層の周縁突出部
31 床仕上げ板
31a 床仕上げ板の上面
32 カーペット
33 床構造
35 柱
37 介在物
38 ヘッダー
41 アンカーボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成としたことを特徴とした床暖房装置。
(1) 建造物の外周の土台位置に対応させてコンクリート製の基礎を形成し、該基礎の内方で床構築位置に、石材を敷き詰め石材層を形成する。
(2) 前記石材層上に防湿層を介して、下地コンクリート層を形成し、該下地コンクリート層の上に床仕上げ部材を敷設する。
(3) 前記下地コンクリート層内に、床暖房用の加熱手段が埋設されている。
【請求項2】
以下のように、構成したことを特徴とする請求項1記載の床暖房装置。
(1) 基礎上に外周土台を構築する。
(2) 前記外周土台間で内方土台形成予定位置に沿って、上縁を前記外周土台と同一となるように形成した内方土台を架設する。
(3) 内方土台の下方に床暖房用の温水パイプを配置する。
(4) 前記両土台の上縁に沿って、下地コンクリートを打設し、該下地コンクリートの固化後に、前記下地コンクリートの上面に、床仕上げ部材を敷設する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−198122(P2007−198122A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348251(P2006−348251)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(597013098)株式会社八洲 (3)
【Fターム(参考)】