説明

床材の敷設方法および床材の敷設方法に用いる床材ズレ防止具

【課題】出入口から一歩化粧床面へ足を踏み入れた際の床材のずれ動きを防止することができる施工が容易な床材の敷設方法およびこの床材の敷設方法に用いる床材ズレ防止具を提供することを目的としている。
【解決手段】床材本体と、この床材本体から下方に延出し、床材本体と敷設面との間に隙間を形成する脚部とを備える複数枚の床材を、連結手段を介して隣接する床材と連結された状態で建物の出入口に隣接する敷設面に敷き並べる床材の敷設方法において、床材本体直下前記敷設面に固定される固定面と、この固定面を敷設面に固定した状態で、前記隙間内に入り込む高さの床材係止部とを有する床材ズレ防止具を、前記床材係止部が、前記床材のうち、前記出入口に隣接する部分に敷設される床材の脚部の出入口と逆側の面に接するように、敷設面に固定することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材の敷設方法およびこの床材の敷設方法に用いる床材ズレ防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、タイル等の化粧板材200を樹脂製枠材300で支持した床材100が上市されている。
この床材100は、樹脂製枠材300が、枠材本体310と、枠材本体310の下面から延出する多数の脚部(図示せず)と、枠材本体310の隣接する2辺あるいは対向する2辺に沿って所定ピッチで設けられた脚部を兼ねる雄型嵌合部320と、枠材本体310の雄型嵌合部320が形成されていない2辺に沿って雄型嵌合部320と同じピッチで設けられた雌型嵌合部330とを備えている。
すなわち、この床材100は、雄型嵌合部320(あるいは雌型嵌合部330)と、隣接して敷設される床材100の雌型嵌合部330(あるいは雄型嵌合部320)とをつぎつぎに嵌合させて連結状態として敷設面であるベランダやバルコニー等のコンクリート製床面などに敷詰められて、コンクリート製床面上に化粧床を形成できるようになっている。また、化粧板材200と枠材本体310とからなる床材本体110が、床材本体110から下方に延出する脚部によってコンクリート製床面に支持されるので、床材本体110とコンクリート製床面との間に雨水の排水空間が確保できるようになっている。
【0003】
しかし、従来の床材の敷設構造では、建物の出入口からベランダやバルコニーへ出る際、1歩化粧床面に踏み出した時の位置ずれ発生が発生し、歩行感に支障をきたしている。又、位置ずれ発生によって美観が悪くなり、施工後の維持管理が煩雑であった。
すなわち、建物の掃き出し口等の出入口からベランダやバルコニーへ出る際には、室内側と化粧床面との間に少し段差があったり、かまち部分の跨ぎ込みを行わなければならないことが多いが、このように段差があったり、跨ぎ込みを行なった場合、出入口から一歩化粧床面へ足を踏み入れる際に、どうしても床材に垂直方向に完全に体重がかかるまでに水平方向に力がかかるが、上記のようなユニット式の床材の場合、床材本体110が脚部を介して敷設面に直接載置されるだけであるので、上記のように水平方向に大きな力が床材に加わると、その方向にずれ動きやすい。
【0004】
一方、このような床材100においては、強風などが吹くと、化粧床の外縁部側から床材本体110と敷設面との隙間に風が入り込んで、床材100が捲くれ上がるという問題がある。
そこで、この問題を解決するために、縦断面形状がコの字型のカバー材を化粧床の外縁部に位置する床材100に縦断面形状がコの字型のアルミニウムやステンレス鋼で形成されたカバー材を取り付けるとともに、このカバー材を敷設面に接着剤や釘等で固定した敷設構造が既に提案されている(特許文献1参照)。
すなわち、この敷設構造では、カバー材によって化粧床の外縁部から床材本体と敷設面との隙間に風が吹き込むことを防止し、床材の捲くれ上がりを防止している。
【0005】
しかしながら、上記のような敷設構造においても、床材の水平方向の動きは完全に固定されていないので、上記のように出入口から一歩ベランダやバルコニーへ足を踏み入れる際のずれを抑えきれない。
一方、敷設面に接する下板の開放された他端に小突起が形成され、床材のはずれを防止するようにしたカバー材も提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
このカバー材の場合、小突起に脚部が係止されるので、下板を敷設面に固定しておけば、出入口から一歩ベランダやバルコニーへ足を踏み入れる際のずれを抑えることが可能となる。
しかしながら、カバー材によって上記ずれを防止できたとしても、下板上の化粧床外縁部の床材の脚部が受けられるため、下板の厚み分、床材が浮き上がり、ガタツキが発生する恐れがあるとともに、小突起があるため、床材の端部を下板と上板との間に挿入する作業が煩雑となる。また、風の入り込みによる浮き上がりの問題が無い場合には、上板が床材の上を覆うため外観が悪いという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−343722号公報
【特許文献2】特開2000−248721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、出入口から一歩化粧床面へ足を踏み入れた際の床材のずれ動きを防止することができる施工が容易な床材の敷設方法およびこの床材の敷設方法に用いる床材ズレ防止具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明にかかる床材の敷設方法は、床材本体と、この床材本体から下方に延出し、床材本体と敷設面との間に隙間を形成する脚部とを備える複数枚の床材を、連結手段を介して隣接する床材と連結された状態で建物の出入口に隣接する敷設面に敷き並べる床材の敷設方法において、床材本体直下前記敷設面に固定される固定面と、この固定面を敷設面に固定した状態で、前記隙間内に入り込む高さの床材係止部とを有する床材ズレ防止具を、前記床材係止部が、前記床材のうち、前記出入口に隣接する部分に敷設される床材の脚部の出入口と逆側の面に接するように、敷設面に固定することを特徴としている。
【0010】
そして、上記床材ズレ防止具としては、固定面と床材係止部とを備えるとともに、床材本体と敷設面との隙間に挿入できる大きさであれば、特に限定されないが、例えば、断面略L字形、断面直角三角形、断面直角三角形をしたものが挙げられ、材料コストを考慮すると、断面略L字形のものが好ましい。
なお、実用的には、床材ズレ防止具の幅は5〜10mm、床材ズレ防止具の高さ(固定面から床材係止部の先端までの長さ)は3〜10mm、長手方向寸法は50〜1500mmの範囲が好ましい。
【0011】
また、床材ズレ防止具が長尺である場合、集中豪雨下でも排水が可能であるように、床材係止部の係止面から他方の面に貫通する排水孔を一部に備えていることが好ましい。
排水孔の幅は20〜100mmの範囲、排水孔の高さは2〜7mmの範囲とすることが好ましい。
なお、床材ズレ防止具の長手寸法が300mm以下の短尺の場合、上記排水孔を設けなくても、20mm以上の間隔を開けて間欠的に配置することで排水を確保できる。
【0012】
また、固定面を敷設面に固定する方法としては、特に限定されないが、たとえば、接着剤、両面粘着テープ、ビス、釘あるいはアンカーボルト等が挙げられ、施工性を考慮すれば、両面粘着テープが好ましい。
なお、両面粘着テープを固定手段として用いる場合には、床材ズレ防止具の固定面を凹凸面としておくことが好ましい。
【0013】
床材ズレ防止具の材質は、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属材料、木質材料、合成樹脂材料等、特に問わないが、施工性を考慮すると合成樹脂材料が好ましい。
上記合成樹脂材料としては、塑性変形を防止する為、強度の強いアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)等が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明にかかる床材の敷設方法は、床材本体と、この床材本体から下方に延出し、床材本体と敷設面との間に隙間を形成する脚部とを備える複数枚の床材を、連結手段を介して隣接する床材と連結された状態で建物の出入口に隣接する敷設面に敷き並べる床材の敷設方法において、床材本体直下前記敷設面に固定される固定面と、この固定面を敷設面に固定した状態で、前記隙間内に入り込む高さの床材係止部とを有する床材ズレ防止具を、前記床材係止部が、前記床材のうち、前記出入口に隣接する部分に敷設される床材の脚部の出入口と逆側の面に接するように、敷設面に固定するので、一歩化粧床面へ足を踏み入れた際の床材のずれ動きを防止することができるとともに、以下のような優れた効果を備えている。
(1)床材ズレ防止具が長尺品であっても施工が簡単。
(2)床材ズレ防止具が床材で隠れる為、美観が良い。
(3)納まり調整の寸法に制約が無い(床材をどこで切断しても取付可能)。
(4)掃き出し口の出入口に隣接する部分の施工でも良く、部材のコストが安い。
(5)床材の脚部が敷設面に直接受けられるので、隣接床材同士間に段差ができず、ガタツキが発生しない。
【0015】
また、床材ずれ防止具を、固定面が凹凸面に形成されている構成とすれば、床材ずれ防止具を両面粘着テープで敷設面であるコンクリート床に固定した場合、両面粘着テープの粘着剤が凹部に食い込み、床材ずれ防止具がずれ両面粘着テープからずれ動きにくくなる。
さらに、床材ずれ防止具を、床材係止部の係止面から他方の面に貫通する排水孔を一部に備えている構成とすれば、集中豪雨下でも、床材ずれ防止具と建物側の立上壁との隙間に雨水がたまらず、スムーズに排水され、オーバーフロー等による階下への漏水を防止することができる。
床材としては、特に限定されないが、たとえば、積水化学工業社製の商品名クレガーレ、商品名リファーレEX(ジョイントデッキ)等の市販品を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0017】
本発明にかかる床材の敷設方法は、たとえば、以下の手順で行われる。
(1)図1に示すように、両面粘着テープ1を用いて床材ずれ防止具2の固定部21を建物3のコンクリート製のベランダ床31の建物3の掃きだし口32に沿って固定する。
【0018】
すなわち、床材ずれ防止具2は、図1〜図3に示すように、固定面21aを有する固定部21と、固定部21の幅方向の一端縁から垂直に立ち上がる床材係止部22とを備え、断面略L字形をしていて、ABS樹脂の押出成形品である。
固定面21aは、固定面21aの長手方向に連続する複数の溝21bを備えた凹凸形状に形成されている。したがって、両面粘着テープ1を用いてベランダ床31に固定すると、両面粘着テープ1の粘着剤層が溝21b内に食い込むので、床材ずれ防止具2に溝21bに直交する方向に大きな力が加わっても床材ずれ防止具2のずれを防止できる。
【0019】
また、床材係止部22は、図3に示すように、床材係止面から他方の面に向かって貫通する4つの排水孔23を長手方向に間隔が開けて備えている。
したがって、後述するように、床材4をベランダ床31に敷き詰めた状態で、集中豪雨等で建物3の掃きだし口32側の壁と床材係止部22との隙間に雨水が多量に流れ込んでも、この排水孔23から床材本体4aとベランダ床31との間を通り、ベランダ床31に沿って設けられた排水溝21bに流れ込み、床材表面側に溢れることがない。
【0020】
(2)図4に示すように、掃きだし口32に隣接して配置される床材4を、その掃きだし口32に一番近い脚部42bあるいは脚部兼用の雄型嵌合部42cが床材係止部22と掃きだし口32との間に入り込むようにベランダ床31上に敷設する。
なお、この実施の形態の床材4は、図4に示すように、合成樹脂に木粉が分散された樹脂組成物を押出成形した押し出し方向に連続する複数の中空部41aを備えた化粧板材41と、合成樹脂製の支持部材42とを備え、化粧板材41と支持部材42とがビス止めされていて、切断により寸法を調整できるようになっている。
【0021】
支持部材42は、板状をした支持部材本体42aと、支持部材本体42aの下面から延出する多数の脚部42bと、支持部材本体42aの隣接する2辺あるいは対向する2辺に沿って所定ピッチで設けられた脚部を兼ねる雄型嵌合部42cと、支持部材本体42aの雄型嵌合部42cが形成されていない2辺に沿って雄型嵌合部42cと同じピッチで設けられた雌型嵌合部42dとを備えている。
【0022】
そして、この床材4は、雄型嵌合部42c(あるいは雌型嵌合部42d)と、隣接して敷設される床材4の雌型嵌合部42d(あるいは雄型嵌合部42c)とをつぎつぎに嵌合させて連結状態にできるようになっている。
すなわち、この床材4は、化粧板材41と支持部材本体42aとによって床材本体4aが構成され、床材本体4aの下面から脚部42bが延出した状態になっている。また、脚部42bの高さは、上記の床材係止部22の高さより少し高くなっている。
【0023】
(3)掃きだし口32に隣接する部分の床材4の敷設が完了後、図4に示すように、一方の床材4の雌型嵌合部42dに他方の床材4の雄型嵌合部42cを嵌合させて隣接する床材4同士を連結しながら図5に示すように、床材4をベランダ床31上に敷詰めて化粧床5を形成する。
【0024】
以上のように、この敷設方法によれば、よって得られた化粧床5は、掃きだし口32から一歩踏み出す際に床材4に掃きだし口32から遠ざかる方向に力が大きく加わっても、掃きだし口32に隣接した床材4の脚部42bが床材係止部22によって係止されているので、力の加わった方向にずれ動くことがない。
また、床材ずれ防止具2が床材本体4aとベランダ床31との間に完全に収まっているので、外部からは見えず、見栄えのよいものとすることができる。
【0025】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、化粧板材は、上記のような板状押出成形品だけでなく、図6に示すようなタイルや、木質板でも構わない。
上記の実施の形態では、支持部材本体42aに脚部42bが一体成形されていたが、化粧板材に脚部を直接設けるようにしても構わない。
上記の実施の形態では、化粧板材41と支持部材42とがビス止めされていたが、接着固定されていても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる床材の敷設方法の1つの実施の形態であって、その床材ずれ防止具の固定方法を説明する断面図である。
【図2】図1の固定部を拡大してあらわす断面図である。
【図3】図1の床材ずれ防止具の斜視図である。
【図4】本発明にかかる床材の敷設方法の床材の敷設工程を説明する断面図である。
【図5】本発明にかかる床材の敷設方法で得られた化粧床の断面図である。
【図6】公知の床材の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
2 床材ズレ防止具
21 固定部
21a 固定面
21b 溝
22 床材係止部
23 排水孔
3 建物
31 ベランダ床(敷設面)
32 掃きだし部(出入口)
4 床材
4a 床材本体
41 化粧板材
42 支持部材
42a 支持部材本体
42b 脚部
42c 雄型嵌合部(連結手段)
42d 雌型嵌合部(連結手段)
5 化粧床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材本体と、この床材本体から下方に延出し、床材本体と敷設面との間に隙間を形成する脚部とを備える複数枚の床材を、連結手段を介して隣接する床材と連結された状態で建物の出入口に隣接する敷設面に敷き並べる床材の敷設方法において、
床材本体直下前記敷設面に固定される固定面と、この固定面を敷設面に固定した状態で、前記隙間内に入り込む高さの床材係止部とを有する床材ズレ防止具を、前記床材係止部が、前記床材のうち、前記出入口に隣接する部分に敷設される床材の脚部の出入口と逆側の面に接するように、敷設面に固定することを特徴とする床材の敷設方法。
【請求項2】
固定面が凹凸面に形成されていることを特徴とする請求項1の床材の敷設方法に用いる床材ズレ防止具。
【請求項3】
床材係止部の係止面から他方の面に貫通する排水孔を一部に備えている請求項1の床材の敷設方法に用いる床材ズレ防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−114802(P2009−114802A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291577(P2007−291577)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】