説明

床材固設構造

【課題】床材の施工において床材同士を不陸調整材を利用して連結でき、かつ床材の敷設作業に時間的ロスの発生をなくして迅速な施工を実現できる床材固設構造を提供する。
【解決手段】床材固設構造は、ロール状に巻かれた不陸調整材20を引き出して床下地1上に敷設し、その敷設された不陸調整材20の上に床材10を固着してなる床材固設構造であって、床材10には下方に突出する嵌合突起11が形成され、不陸調整材20の表面20aには複数の溝部21が形成されており、この溝部21に嵌合突起11が嵌合係止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材を不陸調整材を介して床に固設した床材固設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の床材固設構造として、床下地の不陸を吸収するために不陸調整材を床材の裏面側に設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この不陸調整材は発泡ポリエチレン等の柔軟な素材で形成してあり、持ち運びや保管の利便性を考慮して、ロール状に巻かれた状態で現場に搬入できるものが一般に使用されている。
【0004】
一方、床材は矩形状をなし、下地上に配設された不陸調整材の上に1枚ずつ敷設されるようになっており、その両側端部には、施工される際に隣接する床材同士を連結接合するための実部が形成されていることが通例となっている。この実部としては、相隣設される床材同士を雌雄(嵌合)結合できるように、一方の側端部には雄実部が形成され、他方の側端部には雌実部が形成されており、実部同士の嵌合により床材同士を強力に連結できるようになっている。
【0005】
また、雄実部の基端部には下方に向けて釘打ちされて、床材は不陸調整材さらには床下地に対して固定され、その釘頭は隣接する床材の雌実部によって隠される。つまり、実部は床材同士の連結のみならず、不陸調整材との連結を補完する機能(釘頭隠し機能)も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公開実用昭和63−86246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような実部を有した床材は当然に左右非対称であり、方向を配慮しながら敷設しなければならないため、敷設作業には方向判別による時間的なロスが多く発生していた。そのため、多数の床材の敷設作業を要する施工には、想定以上に多大なる時間を要していた。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、床材の施工において床材同士を不陸調整材を利用して連結でき、床材を不陸調整材にも簡易に固定でき、かつ床材の敷設作業に時間的ロスの発生をなくして迅速な施工を実現できる床材固設構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の床材固設構造は、ロール状に巻かれた不陸調整材を引き出して床下地上に敷設し、その敷設された不陸調整材の上に床材を固着してなる床材固設構造であって、床材には下方に突出する嵌合突起が形成され、不陸調整材の表面には複数の溝部が形成されており、この溝部に嵌合突起が嵌合係止されていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、溝部が不陸調整材の巻回方向に沿って形成されたものとしてもよい。
【0011】
また、本発明においては、不陸調整材が溝部を内面側にしてロール状に巻かれたものとしてもよい。
【0012】
また、本発明においては、嵌合突起は床材の両側端部に形成され、不陸調整材の溝部には、隣設される両床材の相隣接する両嵌合突起が嵌合係止される構造としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床材固設構造によれば、上述のような構成としたことで、床材同士を不陸調整材を利用して連結でき、床材を不陸調整材にも簡易に固定でき、かつ床材の敷設作業に時間的ロスの発生をなくして迅速な施工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示した斜視図および要部拡大縦断面図である。
【図2】床材の不陸調整材への固設手順を示した縦断面図である。
【図3】床材の嵌合突起の他例を示す要部縦断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示した床材固設構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態の床材固設構造は、図1に示すように、ロール状に巻かれた不陸調整材20を引き出しながら床下地1上に敷設し、その不陸調整材20の上に床材10を固設するようにしたものである。
【0017】
本実施形態で使用される不陸調整材20は、柔軟な合成樹脂素材よりなる。不陸調整材20の素材としては例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンなどの合成樹脂の他に、不織布、ゴムシート、アスファルトシートなどが挙げられる。
【0018】
なお、不陸調整材20は床下地1に対して、接着剤、釘等の固定具によって固着される。
【0019】
このような柔軟な不陸調整材20を床下地1上に敷設することで、床下地1の凹凸を吸収することができる。
【0020】
不陸調整材20の表面20a側には、巻回方向に沿った複数の溝部21が巻回方向に直交する方向に一定間隔で形成されている。不陸調整材20のロール体25は、この溝部21を内面側にしてロール状に巻かれており、溝部21はロール体25から引き出しながら床下地1上に展延したときに展延方向に沿って表面に表われる。
【0021】
このように、溝部21は巻回方向に沿って形成されているので、ロール状に巻かれていても溝部21の開口21aが狭まったり、広がったりすることがなく、後述する床材10の施工作業を問題なく行うことができる。なお、溝部が巻回方向に直交する方向に形成されていれば、巻回された状態では開口が狭まり、あるいは広がるため、展延したときに開口が元の状態に戻らないおそれがあるため、溝部21は巻回方向に沿って形成することが望ましい。また、溝部21がロール体25の内面側に形成されているので、ロール体25を転がすようにして床下地1上に展延することができる。
【0022】
この溝部21は、開口21aの幅寸法よりも底部21bの幅寸法が大きな、溝空間の断面が左右対称の台形状(あり溝形状)をなしている。また、隣接する溝部21間のピッチは、不陸調整材20の上に固着する床材10の幅寸法と略同一となっている。
【0023】
一方、床材10は、図1に示すように略長方形状とされ、その幅寸法を不陸調整材20に形成された溝部21間のピッチと略同一寸法としたものであり、相対向する幅方向の両側端部10c、10cには、下方に突出する突起(凸条)が形成されている。この突起が不陸調整材20の溝部21に嵌合する嵌合突起11を構成する。
【0024】
この嵌合突起11は、下方に突出形成されているとともに、両突起間で相対向する方向に係止突起12が突出している。この係止突起12は、不陸調整材20の溝部21の底部21bと側壁部21cをなす角度θと略同じ程度の鋭角的形状をなしている。
【0025】
すなわち、図2に示すように、嵌合突起11は溝部21の一方の側壁部21cと底部21bで形成された凹部に嵌まり込み、隣設された床材10の嵌合突起11と隣接し、隙間なく溝部21に嵌合する形状となっている。
【0026】
床材10は、図1の要部拡大縦断面図および図2に示すように、基材10aの表面および両側面に化粧材10bが形成されている。
【0027】
基材10aは、合成樹脂系材料を主材とする材料で成形されており、合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木質・プラスチック複合材(WPC)を加工して形成された複合基材とされている。
【0028】
上記合成樹脂系材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、アクリロニトリルスチレン、アクリルなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0029】
上記木粉としては、例えば、製材工場等で排出される製材屑や、廃木材を破砕、粉砕して得られたもの、合板、MDF、パーティクルボード等のサンダー粉等を用いるようにしてもよい。このような木粉としては、成形性及び分散性の観点から、その平均粒径が、10〜150メッシュ程度のものとしてもよい。
【0030】
上記無機フィラーとしては、アスペクト比(粒子状無機物の直径を厚みで除した値)が10以上の鱗片状の微粒子としてもよく、無機物の種類としては、マイカ、アルミナ、タルク等としてもよい。
【0031】
上記相溶化剤としては、上記熱可塑性樹脂や上記無機フィラー等の物性に応じて、適宜、選択可能であるが、オレフィン系の熱可塑性樹脂を採用した場合には、マレイン酸変性オレフィン樹脂としてもよい。例えば、ポリプロピレン樹脂を採用した場合には、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂としてもよい。
【0032】
基材10aは、上記各種の材料を混練して、押出成形によって形成するようにしてもよい。その成形方法としては、例えば、公知の二軸混練押出機を用いて、混練と押出しとを同時に行う押出成形によって成形するようにしてもよく、混練した後に、押出成形によって成形するようにしてもよい。または、カレンダー加工により基材10aを成形するようにしてもよく、さらには、射出成形によって成形するようにしてもよい。
【0033】
この基材10aの厚さ寸法は数mm程度とされ、嵌合突起を含む高さ寸法は6mm〜10mm程度とされている。
【0034】
また、基材10aの表面には、化粧材10bとして樹脂化粧シートが貼着されている。化粧材10bとしては例えば、突板、板紙化粧シート等の化粧材を貼着して形成してもよく、または印刷(転写)や塗装を施すことで形成してもよい。なお、基材10aと化粧材10bとを2色成形にて形成してもよい。
【0035】
また、基材10aとしては、WPC複合材に限られず、合板等の木質材で形成してもよく、その場合には、嵌合突起11は切削加工によって形成すればよい。
【0036】
このような床材10は1枚ずつ、不陸調整材20の上に接着剤(不図示)を用いて固着される。特に幅方向に隣設される床材10は、図2に示すように、1つの溝部21に対して2枚の床材10を順次嵌合していけばよい。
【0037】
図2に示すように、溝部21に対して1枚の床材10の嵌合突起11を嵌合した後は、溝部21の開口21a寸法は床材10の嵌合突起11の底部11aの幅寸法よりも小さくなる。しかし、不陸調整材20は柔軟な素材で形成されているため、床材10の嵌合突起11で、溝部21の上端の内向突起21dを下方に押し込んで弾性変形させることで、嵌合突起11を容易に装着することができる。また、固着済みの床材10を、図2中の白抜き矢印方向に押して溝部21の開口21aを広げた状態で、隣設する床材10の嵌合突起11を装着するようにしてもよい。さらには、白抜き矢印に直交する方向(溝部21の形成方向)から嵌合突起11をスライド挿入して装着することもできる。
【0038】
上記の構成によれば、隣設されている両床材10、10の相隣接する両嵌合突起11、11が不陸調整材20の溝部21に嵌合係止された構造となっているため、両床材10、10は不陸調整材20を介して間接的に結合された状態となる。そのため、床材10同士を連結するための雌雄の両実部を両側端部に設ける必要がなくなり、そのため床材10を左右対称に形成することができる。それによって、施工の際に床材の方向を考慮する必要がなくなり、その結果、左右非対称の床材の方向を判別する時間的ロスをなくして、床材の施工を迅速に行うことができる。
【0039】
もちろん、床材10と不陸調整材20とは、嵌合突起11と溝部21との嵌合によって連結固定されるので、床材10を不陸調整材20および床下地1に対して釘打ちする必要もない。また、不陸調整材20は床下地1に対して固着状態にあるので、床材10が床下地1に対してずれることもない。
【0040】
なお上記の実施形態において、不陸調整材20の溝部21の底部21bと側壁部21cをなす角度θ(図1参照)を、嵌合突起11の係止突起12の角度よりもさらに鋭角にしてもよい。そうすることで両者を圧着状態に嵌合でき、床材10の不陸調整材20への固着力を強固にできる。
【0041】
また、床材10の嵌合突起11を、溝部21へ嵌合しやすくするために弾性変形しやすい形状としてもよい。例えば図3に示すように、溝部21(図1参照)の形状に合致させた基材10aによる折曲板を形成して嵌合突起11を構成してもよい。このような床材10は、WPC複合材を材料として基材10aを押出成形により形成すれば、簡易に形成することができる。なお、図3における10bは化粧材である。
【0042】
以上の実施形態では、1つの溝部21に対して2枚の床材10のそれぞれの嵌合突起11を嵌合する構造を例示したが、1つの溝部21に1つの嵌合突起11を嵌合する構造であってもよい。
【0043】
例えば、図4に示した例では、床材10にはその裏面の中程に2つの嵌合突起11、11が形成され、不陸調整材20には、それぞれの嵌合突起11を嵌合係止できる溝部21が形成されている。なお図例のように、溝部11間の間隔が一定となるような適切な位置に嵌合突起11を設けることが望ましい。
【0044】
この図4の例に示した構造でも、床材10、10同士は不陸調整材20を介して間接的に結合された状態となり得る。実部による結合が不要であるため、図1、図2の例と同様、床材10を迅速に施工することができる。また、床材10と不陸調整材20とは嵌合係止状態となるため、床材10がずれるおそれもない。
【0045】
また、図4の例では床材10は、2つの嵌合突起11、11の係止突起12、12が1方向を向く左右非対称の形状となっているので、溝部21も同一形状のものを形成すればよく、溝部21の方向を判別する必要がないから施工作業を簡易にできる。もちろん、嵌合突起を左右対称に形成した床材と、それに合致する交互に形状を異ならせた溝部を有した不陸調整材とを用いてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 床材
11 嵌合突起
11a 底部
12 係止突起
10a 基材
10b 化粧材
10c 側端部
20 不陸調整材
20a 表面
21 溝部
21a 開口
21b 底部
21c 側壁部
21d 内向突起
1 床下地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれた不陸調整材を引き出して床下地上に敷設し、その敷設された不陸調整材の上に床材を固着してなる床材固設構造であって、
前記床材には下方に突出する嵌合突起が形成され、前記不陸調整材の表面には複数の溝部が形成されており、この溝部に前記嵌合突起が嵌合係止されていることを特徴とする床材固設構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記溝部は前記不陸調整材の巻回方向に沿って形成されていることを特徴とする床材固設構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記不陸調整材は前記溝部を内面側にしてロール状に巻かれていることを特徴とする床材固設構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記嵌合突起は前記床材の両側端部に形成されており、
前記不陸調整材の溝部には、隣設される両床材の相隣接する両嵌合突起が嵌合係止されていることを特徴とする床材固設構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−23861(P2013−23861A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158265(P2011−158265)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】