説明

床材

【課題】化粧溝における塗膜の浮き上がりを抑制することのできる床材を提供すること。
【解決手段】合板2の上に配設された木粉樹脂複合材3の上に表面化粧材4が配設され、表面化粧材の表面から木粉樹脂複合材に達する化粧溝6が形成され、表面が塗装仕上げされている床材1であって、化粧溝が、合板における木粉樹脂複合材に直近の最上層21の木目方向22に対して直交する方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅などの建物の床面を形成する床材に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、これまでに特許文献1に記載した床材を提案している。
【0003】
特許文献1に記載した床材は、合板などの基材の表面側に木粉樹脂複合材を介して表面化粧材を積層一体化し、表面化粧材から木粉樹脂複合材に達する化粧溝が形成されたものである。
【0004】
木粉樹脂複合材は、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂に木粉を20−70wt%前後配合し、必要に応じて無機フィラー、強化材などを添加し、混練して得られる複合材であり、本出願人は、ウッドプラスチックと称して、たとえば、小西 悟他,「ウッドプラスチックボード」応用薄型リフォーム用建材,松下電工技報,2004年5月に紹介している。
【0005】
上記文献にも記載したように、ウッドプラスチックボードは、混練した木粉樹脂複合材を押出成形して作製することができ、作製されたウッドプラスチックボードは、ポリプロピレン樹脂の場合で、合板やMDFと比較して曲げ強度が高く、冬場の低湿度および夏場の高湿度を想定した条件での寸法変化の評価では、吸湿膨張が小さいため、熱膨張を合わせると、合板の1/2程度の寸法変化であり、また、MDFに比べ十分小さい。一般に、木材の場合は、0.3〜0.4%程度の収縮率であるのに対し、ウッドプラスチックの場合の収縮率は、木材の1/10程度に抑えることができる。
【0006】
このような木粉樹脂複合材を表層に用いることによって、上記床材は、表面の平滑性を保つことができるとともに、耐クラック性、耐傷性が向上し、キャスター付き家具の使用や物の落下などの衝撃による傷付きおよび凹みの発生が生じにくくなり、しかも、表面化粧材の吸湿による突き上げ、反り、さらに、乾燥による目隙、表面化粧材のクラック発生などが抑制される。
【0007】
また、上記床材は、化粧溝が基材まで達していないので、木質板に形成するときに起こりやすい毛羽立ちがなく、ストッキングや靴下の引っ掛かりが少なく、良好な歩行感を実現することができる。
【特許文献1】特開2000−064569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように耐クラック性、耐傷性、寸法安定性などの各種の特性に優れた上記床材ではあるが、その後の検討により解決しなければならない課題が見出された。
【0009】
床材の表面には、一般に、表面の保護および外観の維持や表面をさらに美麗に仕上げるなどの目的で塗装が施される。上記床材では、溝加工によって化粧溝が表面化粧材から木粉樹脂複合材に達するまで形成されている。化粧溝の深さが浅いと意匠上アクセントの弱い表面となるため、意匠性の向上のためには化粧溝の深さはある程度深くすることが必要であり、したがって、上記床材では、化粧溝は木粉樹脂複合材まで形成されている。このように溝加工された床材の表面を塗装仕上げすると、塗料は、化粧溝において露出している木粉樹脂複合材に付着する。木粉樹脂複合材の主成分は、上記の通り、樹脂であり、熱伸縮の割合が必ずしも塗料の配合成分に一致しないため、寒熱の繰り返しによって塗膜が、木粉樹脂複合材の伸縮に追随することができず、化粧溝の底部から剥がれて表面側に浮き上がることがある。特に床暖房システムにおいては、寒熱の繰り返しにおける温度差が大きく、床材に加わる熱ストレスは大きい。このため、上記のような塗膜の浮き上がりは起こりやすくなっている。
【0010】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、化粧溝における塗膜の浮き上がりを抑制することのできる床材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、合板の上に配設された木粉樹脂複合材の上に表面化粧材が配設され、表面化粧材の表面から木粉樹脂複合材に達する化粧溝が形成され、表面が塗装仕上げされている床材であって、化粧溝が、合板における木粉樹脂複合材に直近の最上層の木目方向に対して直交する方向に延びていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、化粧溝が、合板における木粉樹脂複合材に直近の最上層の木目方向に対して直交する方向に延びているため、寒熱の繰り返しによる木粉樹脂複合材の伸縮が抑えられ、塗装仕上げにより形成された表面の塗膜は木粉樹脂複合材の伸縮に追随しやすくなり、化粧溝における塗膜の浮き上がりが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の床材の一実施形態を示した斜視図および部分断面図である。
【0014】
平面視略長方形の形状を有する床材1は、合板2、板状の木粉樹脂複合材3および表面化粧材4としての化粧シート5が、下から上に順次積層され、一体化されて形成されている。
【0015】
床材1の表面には、短辺側の側端に平行で床材1の短手方向に延び、長辺側の側端間を横断する化粧溝6が2本、間隔を隔てて形成されている。化粧溝6は、化粧シート5の表面から木粉樹脂複合材3に達する深さを有しており、木粉樹脂複合材3を貫通せず、合板2までは達していない。化粧溝6は、断面V字形状を有しているが、断面形状はU字状などとすることもできる。化粧溝6は、意匠上の効果を考慮して本数、長さ、断面形状などを適宜に設定することができる。
【0016】
また、化粧溝6は、床材1において、木粉樹脂複合材3に直近の合板2の最上層21の木目方向22に対して直交する方向に延びている。
【0017】
そして、床材1は、表面が塗装により仕上げられている。化粧シート5を構成するオレフィンシートなどの表面には、たとえばプライマー処理などを施しておくことができ、各種の塗料は、良好な付着性をもって床材1の表面、すなわち、化粧シート5の表面に塗装される。
【0018】
このような床材1は、たとえば次のようにして製造することができる。
【0019】
板状の木粉樹脂複合材3の上に、木質感などの所望の外観を付与することのできる化粧シート5を、各々の素材の性質を考慮し、たとえばSBR系接着剤、メラミン系接着剤などの接着剤によって接着して表層材を作製する。この表層材を合板2の上に、木粉樹脂複合材3が下側に配置されるようにして最上層21に重ね合わせ、合板2と木粉樹脂複合材3との間においてたとえばウレタン変性ビニル樹脂接着剤などの接着剤によって接着する。その後、溝加工によって化粧溝6を表層材の表面に上記の通りの深さで形成し、次いで、化粧溝6を含め、表面全体をウレタン塗装仕上げなどの塗装により仕上げる。
【0020】
合板2には汎用のものが用いられる。木粉樹脂複合材3は、上記の通りのものであり、板状に成形された「ウッドプラスチックボード」を使用することができる。
【0021】
床材1は、先に提案している上記床材と同様に、木粉樹脂複合材3を表層材に含んでいるため、表面の平滑性を保つことができるとともに、耐クラック性、耐傷性が向上し、キャスター付き家具の使用や物の落下などの衝撃による傷付きおよび凹みの発生が生じにくくなり、また、化粧シート5の吸湿による突き上げ、反り、さらに、乾燥による目隙などが抑制される。しかも、化粧溝6が基材まで達していないので、木質板に形成するときに起こりやすい毛羽立ちがなく、ストッキングや靴下の引っ掛かりが少なく、良好な歩行感を実現することができる。さらに、木粉樹脂複合材3に達する化粧溝6によって、床材1は、意匠上のアクセントの付いた立体感などが現出する良好な外観を有している。
【0022】
そして床材1では、上記の通り、化粧溝6が、合板2における木粉樹脂複合材3に直近の最上層21の木目方向22に対して直交する方向に延びているので、寒熱の繰り返しにともなう木粉樹脂複合材3の化粧溝6の幅方向の伸縮が緩和され、抑制される。このため、化粧溝6の形成後に化粧溝6において露出する木粉樹脂複合材3に塗装により塗料が付着しても、形成された塗膜7は、木粉樹脂複合材3の伸縮に追随して伸縮することができ、塗膜7が化粧溝6の底部から剥がれて表面側に浮き上がるのが抑制される。したがって、床材1は、寒熱の繰り返しにおける温度差が大きく、加わる熱ストレスの大きい床暖房システムにおいても、塗膜7の浮き上がりが十分抑制される。床面は品質の良好な状態に保持可能となる。
【0023】
なお、本発明は、合板2、木粉樹脂複合材3、表面化粧材4および塗膜7の厚さについて特に制限するものではなく、従来技術を考慮して適宜なものに設定することができ、また、それらを構成する材料や積層一体化に使用する接着剤の種類などについても特に制限しない。
【0024】
また、化粧溝6が延びる方向は、図1に示した床材1のように、床材1の短手方向に制限されることはなく、合板2の最上層21の木目方向22に対して直交する方向である限り、木目方向22を調整することにより、床材1の長手方向に延びるように形成することができ、また、床材1の長手方向に延びるものと短手方向に延びるものとを組み合わせて化粧溝6として形成することもできる。また、化粧溝6の長さも適宜設定することができる。図1に示した床材1のように、床材1の長手方向または短手方向の側端間にわたって形成することができる他、各々の方向において床材1に部分的に形成することもできる。外観に応じて長さ調整が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の床材の一実施形態を示した斜視図および部分断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 床材
2 合板
3 木粉樹脂複合材
4 表面化粧材
5 化粧シート
6 化粧溝
7 塗膜
21 最上層
22 木目方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合板の上に配設された木粉樹脂複合材の上に表面化粧材が配設され、表面化粧材の表面から木粉樹脂複合材に達する化粧溝が形成され、表面が塗装仕上げされている床材であって、化粧溝が、合板における木粉樹脂複合材に直近の最上層の木目方向に対して直交する方向に延びていることを特徴とする床材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−7276(P2010−7276A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165313(P2008−165313)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】