説明

床材

【課題】カーペットのような温感性やスリップ防止性、触感などがありながら、水や汚れに対する清掃性に優れ、ルームシューズ歩行、杖歩行、歩行器歩行、車椅子歩行などに対する耐摩耗性が十分に備わった床材を提供する。
【解決手段】床材10は、基材層1、合成樹脂層2、意匠層3、透明樹脂層4、静電植毛層6を含むものであって、静電植毛層6は、径が2〜15μm、長さが100〜600μmのパイルを、透明樹脂層4上に、目付け量が20〜50g/m2となるように静電植毛したものであることを特徴とする。このとき、パイルがナイロンまたはポリエステルであり、透明樹脂層4が塩化ビニル系樹脂からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペットのような温かさや触感がありながら、水や汚れに対する清掃性に優れ、耐摩耗性も十分に備わった床材に関する。
【背景技術】
【0002】
日本住宅の家庭用の床材としては、例えば、畳、カーペット(絨毯)、フローリング、クッションフロアなどがある。
カーペットや畳は、温感性(冷たく感じない)には優れているものの、こぼれ落ちた水や調味料が滲みやすく、その後水拭きしても染みとして残りやすいので、フローリングやクッションフロアに比して清掃性に劣る欠点があった。
一方、温感性に劣るフローリングやクッションフロアは、寒い冬季などに、その表面に触れると「冷たい」と感じることから、床暖房の設置やホットカーペットあるいは布製マット(ラグ)を敷く、などの対策が取られることが多い。
【0003】
本発明者は、先に、カーペットのような温感性とフローリングやクッションフロアのような清掃性との機能を併せ持ち、かつ、バックスキンやスエードのようなソフトな触感を有する床材等に好適な装飾シートを提案している(特許文献1参照)。
ところが、昨今では、アレルゲンであるハウスダストやダニが繁殖しやすい畳やカーペットの使用を避け、床面積のほとんどをフローリングが占める家庭が多い。このため、床暖房の設置がない限り、スリッパや健康サンダル、ルームブーツなど室内履き(以下、これら室内履きを「ルームシューズ」とも言う)が多用される傾向にあり、台所等の水周りに敷かれた上記先提案の装飾シートがいくら優れた温感性を有していたとしても、忙しく立ち回る主婦がいちいちその装飾シート上に乗るときだけルームシューズを脱ぐことは少ない。また、前記先提案の装飾シートは、その優れた清掃性と温感性ゆえ、家庭だけでなく、介護施設やリハビリ施設、医療機関の待合室、保育施設などに使用されるケースも多く、そのような場所では、より一層(ナースサンダル、上履きなどの)ルームシューズを着用したまま歩かれたり、杖や歩行器あるいは車椅子などで歩行されることもあり、床材用途としての耐摩耗性の向上が要求されていた。
【0004】
他方、ポリプロピレンリサイクル品等の合成樹脂や木材、織物などの表面に、静電植毛を施して、柔らかい触感性と高い摩耗強度を有する自動車内装用植毛品が提案されている(特許文献2参照)。
この植毛品では、接着剤として、芳香族系、脂肪族系、エステル系、ケトン系などから選択される溶剤系のものが挙げられているが、溶剤系接着剤には、残留溶剤の問題があり、使用環境でのVOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)が懸念されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2009−195251
【特許文献2】特開2007−290158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カーペットのような温感性やスリップ防止性、触感などがありながら、水や汚れに対する清掃性に優れ、ルームシューズ歩行、杖・歩行器・車椅子歩行などに対する耐摩耗性が十分に備わった床材の提供を課題とする。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために検討を重ねたところ、床材としての用途は耐摩耗性の面から従来難しいとされていた静電植毛技術に着目し、特定のパイルを透明樹脂の表面に特定の目付け量にて静電植毛することで、意外にも、パイルの目付け量が抑えられ、下の意匠性を損なわずに、カーペットのような温感性と触感ばかりか、優れた清掃性と耐摩耗性をも有する床材が得られるとの知見を得た。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような知見の下でなし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)基材層、合成樹脂層、意匠層、透明樹脂層、静電植毛層を含む床材であって、静電植毛層は、径が2〜15μm、長さが100〜600μmのパイルを、透明樹脂層上に、目付け量が20〜50g/m2となるように静電植毛したものであることを特徴とする床材。
(2)パイルがナイロンまたはポリエステルであり、透明樹脂層が塩化ビニル系樹脂からなることを特徴とする前記(1)に記載の床材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床材によれば、次のような効果を奏することができる。
(i)カーペットなどの表面が繊維である床材と同程度の温感性が得られるので、床暖房やホットカーペットを必要とせず、エネルギー使用量の削減(エコ)につながる。
(ii)カーペットのような触感を呈するので、クッションフロアに比べてスリップ防止性に優れるうえ、万が一その上で転倒しても痛さ(ダメージ)が少なくて済む。
(iii)耐摩耗性に優れているので、ルームシューズ歩行でも繊維離脱などが無く、杖歩行、歩行器歩行、車椅子歩行などに対しても復元性があり、跡が目立たない。
(iv)特定のパイルを、特定の目付け量で静電植毛することで、意匠層の意匠が視認されやすい。
(v)こぼれ落ちた直後は毛細管現象のため水や調味料が滲みやすいが、その後水拭きにより除去でき、染みになりにくく、清掃性に優れている。撥水・防汚処理を施せばさらに汚れ除去が容易になる。
また、消臭、防虫、防ダニなどの機能を植毛パイルに付与すれば、表面積が大きくなるので、クッションフロアよりも効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の装飾シートの一実施形態例の断面を概念的に示す図である。
【図2】帯電列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の装飾シートの実施形態を、図1に示す概念図により説明する。
図1において、床材10は、基材層1、合成樹脂層2、意匠層3、透明樹脂層4、静電植毛層6を含み、静電植毛層6は、径が2〜15μm、長さが100〜600μmのパイルを、透明樹脂層4上に、目付け量が20〜50g/m2となるように静電植毛したものである。
上記目付け量は、パイルの種類や形状によっても左右されるが、少なすぎると、本発明が目的の一つとする所望の効果(温感性やスリップ防止性)が十分に得られず、多すぎれば、下層にある意匠層3の意匠を視認しづらいうえ、こぼれ落ちた水や調味料が取れ難くなり汚れ(染み)として残りやすいばかりか、接着剤5の塗布量を増やす必要がでてくるので、20〜50g/m2とし、好ましくは30〜40g/m2程度である。
【0012】
静電植毛されるパイルの径は、小さすぎると、本発明が目的の一つとする所望の効果(温感性やスリップ防止性)が十分に得られないばかりか、使用時にパイル切れが起こりやすい。また、大きすぎると、意匠層3の意匠を視認しづらくなるので、2.0〜15μmとし、好ましくは2.0〜10μm程度である。
パイルの長さは、短すぎると、温感性に劣り冷たく感じやすいものとなり、長すぎると、汚れがパイル(繊維)間に残りやすくなってしまい、汚れを拭き取った跡がムラになりやすいうえ、埃を吸着しやすかったり、ダニの温床となりやすく衛生的に好ましくないので、100〜600μmとし、好ましくは200〜400μm程度である。
パイル径に対するパイル長さの比率は、パイル径:パイル長さ=1:50以下が好ましく、パイル径1に対して、パイルの長さが50を超えると、静電植毛操作(作業)に困難をきたす虞がある。
【0013】
このようなパイルの素材については、ナイロン、アクリル、コットン(木綿)、ポリエステル、レーヨン、羊毛、絹、麻などの繊維が使用でき、中でも、後述するように透明樹脂層の樹脂と帯電列表の位置関係が離れていること、接着剤5との強い密着(固着)性が得られやすいこと、清掃性にも優れること等を考慮すると、ナイロン、ポリエステルが好ましい。なお、清掃性に優れるとは、パイル自体が汚れなどを吸収しにくいものであり、例えばコットンやレーヨンなどの植物由来の素材は、ナイロンやポリエステルなどの化繊と比較して、汚れなどを吸収しやすいものであるので、汚れによっては、拭き取っても汚れの跡が残る場合がある。
パイルの色については、下に設けた意匠層3の意匠性を阻害しない、ないしは意匠性を向上させる色、例えば、透明、半透明、乳白色、茶色が良く、ラメや金、銀、あるいはホログラム効果を発生させるもの等をアクセントとして混合すると、意匠性特性が付与できて良い。濃度の高い着色パイルでは、意匠層3の意匠を阻害してしまう虞がある。
【0014】
パイルは、直毛に限らず、カールパイルやベンディングパイルを使用することもできる。このような曲線形状のパイルでは、少ない目付け量でもカーペットのような温感や触感が十分に発現するので、意匠層3の意匠がより視認されやすいものとなり、意匠性のみならず風合いの向上にも寄与し、接着剤量の低減化、床材全体の軽量化なども達成できる。
パイルの断面形状は、円形に限らず、パイル製造時に使用する押出しノズルの形状により、三角形、四角形、テトラ形、中空形などとしてもよい。
【0015】
透明樹脂層4は、その下層にある意匠層3の意匠を視認できるものであれば、透明な樹脂に限定されず、半透明な樹脂であってもよく、顔料や染料によって着色したものであってもよい。透明樹脂層4の厚さは、通常0.05〜0.50mm程度である。
透明樹脂層4を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系共重合樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂等が挙げられ、これら熱可塑性樹脂は、溶剤タイプであってもよいが、使用環境でのVOC発生の虞などを考慮すると水性エマルジョンタイプまたはカレンダーやペースト加工に使用されるプラスチゾルタイプが好ましい。
本発明では、図2に示すような帯電列(不導体を接触させたりこすり合わせたりしたときにプラスに帯電しやすいものを左側(上位)に、マイナスに帯電しやすいものを右側(下位)に並べた序列)という電荷の帯び易さを考慮し、パイル素材のうちナイロンやレーヨン、木綿、羊毛、絹、麻はプラスに帯電しやすいことから、最もマイナスに帯電しやすいとされる塩化ビニル系樹脂で透明樹脂層4を構成することで、プラスとマイナスが引かれ合い、より整然とした配列状態で植毛されやすい(帯電が同極の場合反発が起こり、植毛が困難になる傾向がある)。
なお、製造後の床材10の表面に折りしわが付くことを防止したり、意匠性を付与することを目的として透明樹脂層4の表面上に、植毛加工前にロータリースクリーンプリント(RSP)やメカニカルエンボスなどで凹凸を設けておくこともできる。
【0016】
基材層1は、床材10の最下層に設けられる。
基材層1としては、床材の基材として一般的に使用されているものであれば特に限定されず、例えば、繊維に合成樹脂を含浸硬化させたものなどが挙げられる。具体的には、合成繊維、天然繊維、無機繊維の少なくとも1種以上からなる不織布、編布または織布、あるいは、合成樹脂バインダーと各種繊維、パルプ素材とを混抄した混抄紙とすることができる。合成樹脂バインダーとしては、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。
基材層1は、複数の層から構成されても良く、例えば、合成繊維の織布または不織布と、ガラス繊維の不織布とを積層させてもよい。
【0017】
合成樹脂層2としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)、エチレンアクリル系共重合樹脂(EMA、EMMA、EEAなど)などのポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル酸エステル系共重合樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂の少なくとも1種以上からなる熱可塑性樹脂を発泡させたもの、或いは上記に挙げた熱可塑性樹脂を用いて、非発泡の合成樹脂層としてもよい。
発泡方法としては、機械発泡でもよく、発泡剤を用いたケミカル発泡でもよい。ケミカル発泡に使用される発泡剤としては、マイクロカプセル等の熱膨張型発泡剤、アゾジカルボン酸(ADCA)、ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン(DPI)、オキシビスベンゼン・スルホニルヒドラジド(OBSH)等の熱分解型発泡剤のいずれも使用できる。合成樹脂層2の発泡時の加熱温度や加熱時間は、選択される製造方法や樹脂等の材質により適宜選択され得る。
【0018】
意匠層3は、例えば、上記合成樹脂層2の表面上、または前記した透明樹脂層4の裏面に、インクジェットプリント、グラビアプリント、スクリーンプリント、オフセットプリント、フレキソプリントなどの一般的なプリント方法を用いて形成することができる。このとき使用されるインクは、酢酸ビニル系、アクリル系、ウレタン系など一般に使用される極性のあるインクを用いればよいが、意匠層3を形成させる層に対して接着性を有するインクであることが好ましい。このインクには、発泡剤を含有させ、意匠層3を発泡させることもできる。
あるいは、合成樹脂層2の表面、または透明樹脂層4の裏面に、染色を施したり、柄織布、柄編布などを積層したりすることで、意匠層3を構成してもよい。
【0019】
本発明では、必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、基材層1、合成樹脂層2、意匠層3、透明樹脂層4において、無機充填剤、安定剤、帯電防止剤、滑剤、抗菌剤、防虫剤、着色剤などの各種添加剤を適宜添加することができる。
これらの添加剤としては、通常の床材に配合する通常のものが使用できる。
【0020】
本発明の床材10の製造方法は、例えば、以下のような手順で行うことができる。
1)基材層1上に、発泡剤を含有した合成樹脂層2を塗布加熱形成(非発泡で)し、その上に意匠層3を設け、さらに透明樹脂層4を塗布加熱形成し、さらに合成樹脂層2を加熱発泡する。
2)続いて、(必要に応じて凹凸を設けた)透明樹脂層4上に、後述の接着剤5を塗布し、パイルを静電植毛後、過剰パイルをバキュームにて回収し、加熱オーブンにて接着剤5を硬化させてパイルを固着させ、静電植毛層6を形成する。
【0021】
接着剤5としては、酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタン等のバインダー樹脂成分を、水または有機溶剤等の溶媒に分散させたものが用いられる。特に、本発明では、使用環境でのVOCの問題を考慮し、残留溶剤の可能性が少ない、ノンホルマリンタイプの水系エマルジョン(固形分濃度が30〜70%程度)の使用が好ましい。
【0022】
接着剤5の乾燥後の塗膜厚みは、使用する接着剤の固形分濃度にもよるが、10〜100μm、好ましくは40〜80μmである。接着剤5の塗布量が少なすぎると、密着強固な植毛状態が得られず、使用時にパイルの離脱が起こりやすい。また、多すぎると、パイルの沈み込みが発生し起毛感が損なわれるばかりか、接着剤5が床材の表面に露呈し、製品を巻いて運搬・保管する際にブロッキング現象が起こったり、床材が表面に反ったりし、品質の低下を招く。
接着剤5の透明樹脂層4への塗布方法は、ドクターナイフコーティング、ロールコーティング、スプレー塗布(コーティング)など適宜選択され得る。
【0023】
パイルの静電植毛は、一般的な静電植毛技術にて行うことができるが、他の方法としては、例えば、先端に帯電させる電極をもったエアーガンにてパイルを吹き付ける手法などを用いて、パイルを透明樹脂層4の表面に対しランダムに傾斜させて植毛することもできる。この場合、垂直方向からパイルを植毛したときと比較して、ソフト感が向上するため、結果的に目付け量を抑えることができ、意匠層3の意匠性を阻害しないものとなる。
【0024】
本発明の床材10では、静電植毛層6の形成後に、表面処理を行ってもよい。
植毛したパイルに、撥水、防汚、消臭、防虫、防ダニなどの表面処理を行うと、クッションフロアよりも表面積(処理される面積)が大きいので、効果的である。具体的な撥水防汚加工としては、代表的にはフッ素系樹脂の塗布または噴霧が挙げられる。
【0025】
本発明の床材10の全厚さは、1.0〜5.0mm程度であり、好ましくは1.5〜3.0mmである。
【実施例】
【0026】
実施例1〜4
厚さ0.2mmのガラス混抄紙である基材層の上に、発泡剤(ADCA)を含んだ塩化ビニル樹脂ペースト(合成樹脂層)を積層し加熱ゲル化してシートを形成した。
続いて、その上にグラビアプリント機にて印刷を施すことで意匠層を形成し、さらに厚さ0.15mmの塩化ビニル系樹脂製の透明樹脂層を形成(ペースト加工にて)した後、合成樹脂層を加熱発泡した(第1工程品)。
【0027】
次に、第1工程品の表面(透明樹脂層側)に、溶剤系接着剤(DIC社製 商品名“クリスボンTA−205”)をドクターナイフコーターにて1.0mm塗布した。
続いて、表1に示すパイルをそれぞれ、表1に示す目付け量になるように静電植毛し、過剰パイルをバキュームにて回収後、加熱オーブンにて接着剤を硬化させてパイルを固着させ、厚さがおよそ2.0mmの床材を得た。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例5,6
接着剤として、アクリル樹脂とウレタン樹脂を混合したノンホルマリンタイプの水系エマルジョン(固形分濃度が60%程度)を使用すること以外、実施例1,3とそれぞれ同様にして得られた床材をそれぞれ実施例5,6とした。
【0030】
実施例7
実施例3で得られた床材の表面に、フッ素系撥水剤をグラビアコートで撥水処理を行ったものを実施例7とした。
なお、乾燥後の接着剤層の厚みは、実施例1〜7は、いずれも40〜80μmの範囲内であった。
【0031】
比較例1〜2
実施例1における第1工程品において、さらに透明樹脂層の上に塩化ビニル樹脂ペーストをロータリースクリーンプリントで塗布し、表面凹凸意匠を形成したものを比較例1とし、比較例1における表面凹凸意匠の形成を、ロータリースクリーンプリントではなくメカニカルエンボスにて施したものを比較例2とした。
【0032】
比較例3
実施例1における第1工程の表面(透明樹脂層側)に、溶剤系塗料(大日精化社製 商品名“ダイプラコート ワニス ESC−7397”)の固形分100重量部に対し熱膨張カプセル(同社製 商品名“ダイフォーム M430D”)を59重量部配合した固形分25%の処理液を、グラビアロールコーターにて、目付け量が10g/m2となるよう塗布した。
続いて、熱風乾燥機にて、加熱処理(160℃×45秒)を施し、処理液の溶媒を乾燥させつつ、熱膨張カプセルを膨らませ、第1工程品の表面に固着させ、比較例3(厚さ:およそ2.0mm)とした。
【0033】
比較例4〜11
パイルの種類及びその目付け量を、表2で示すものとしたこと以外は、実施例1と同様にして形成された床材(厚さ:およそ2.0mm)を得た。
【0034】
【表2】

【0035】
参考例1〜3
床材として一般的に用いられているフローリング(木質系)を参考例1、畳(イグサ製)を参考例2、カーペット(ポリエステル製のループパイル)を参考例3とした。
【0036】
実施例1〜7、比較例1〜11、参考例1〜3の床材について、(A)表面の触感、(B)温感性、(C)耐摩耗性、(D)清掃性(耐汚れ性)、(E)意匠性および(F)水周りでの使用適性を下記の評価方法で評価した。なお、参考例1〜3については、(C)及び(E)以外の評価を行った。結果を表3〜5に示す。
【0037】
(A)表面の触感については、以下の基準で手の触感により評価した。
柔らかさと、繊維製品のような風合いがあり、クッション性やスリップ防止性にも優れている:◎
柔らかく、クッション性はあるが、繊維製品のような風合いはない:△
硬い:×
【0038】
(B)温感性については、室温5℃の部屋の中で各々の表面上に素足で立ち、以下の基準で評価した。
冷たく感じない:◎
あまり冷たく感じない:○
やや冷たく感じる:△
冷たく感じる:×
【0039】
(C)耐摩耗性(学振型摩擦堅牢度試験)について;
学振型摩擦試験機の先端に、摩擦片として塩化ビニルレザー製スリッパを付け、各床材の表面を該スリッパの底にて摩擦片荷重300gで500回こすり、その表面変化を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
全く問題がない:◎
摩擦直後は若干摩擦跡が目視にて判別できるが、復元性があり(目立たなくなり)使用上問題はない:○
100回以上こすると、表面変化が生じ、実用に供し得ない:×
【0040】
(D)清掃性(耐汚れ性)について;
汚染源として、カレー、コーヒー、タバスコ、ソース、醤油、調理油(オリーブ油)の6種を各床材の表面におよそ小さじ1杯量ずつ落とした。
(D−1):落とした直後の様子を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
ほぼ全ての汚染源が拡がることなく、一定場所に溜まる:○
汚染源の拡がりが2〜3種でみられる:△
ほぼ全ての汚染源が拡がりやすい(滲みやすい):×
(D−2):落としてから24時間後に、水拭きをし、それら汚れの除去性について、以下の基準で評価した。
汚染源のうち1種だけ汚れが取れないものがある:○
汚染源のうち2〜3種汚れが取れないものがある:△
4種以上汚れが取れない:×
【0041】
(E)意匠性について、以下の基準で評価した。
下層に設けた意匠層が問題なく視認できる:○
下層に設けた意匠層が視認し難い:△
下層に設けた意匠層が視認できない:×
【0042】
(F)水周りでの使用適性について、コップ1杯の水をこぼした直後の表面を雑巾で拭き、以下の基準で評価した。
こぼれた水が滲むことなく拭き取れる:◎
こぼれた水が滲むが、拭き取れる:○
こぼれた水が基材層まで浸透し、完全には拭き取れない:×
【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
表3〜5に示すとおり、実施例1〜7の床材は、(A)表面の触感と(B)温感性については全てカーペット(参考例3)と同等の「◎」の評価が得られ、かつ(D−2)24時間後の清掃性及び(F)水周りでの使用適正がカーペットより優れるものであった。
また、実施例1〜7の床材は、いずれも、比較例3より耐摩耗性に優れるものであり、床材としての使用に耐えうる耐久性を有するものであった。
なお、実施例1〜6の床材における(D−1)汚染直後の清掃性の結果については、パイルの毛細管現象により、一般的なクッションフロア(比較例1,2)よりも汚染源が拡がりやすいためと考えられる。
【0047】
表4に示すとおり、比較例5,7,8,10のように、繊維長が短いパイルを用いたり、目付け量が少なすぎると、(D−1)汚染直後の清掃性については汚染源の拡がりが実施例よりも抑えられる傾向があるものの、触感や温感性は劣るものとなった。また、比較例4,6,9,11のように、繊維径が大きく、繊維長が長いパイルを用いたり、目付け量が多すぎると、触感や温感性には優れるものの、清掃性や意匠性に劣るものとなった。
したがって、静電植毛されるパイルの繊維径、繊維長、さらに目付け量を本願発明が規定する範囲とすることで、触感や温感性に優れるとともに、十分な耐摩耗性を有し、かつ清掃性や意匠性も損なわれることのない床材が得られた。
【0048】
さらに、接着剤として、ノンホルマリン系接着剤を用いた実施例5,6においては、残留溶剤の問題を解決するものとなり、VOCの発生のない環境に配慮した床材が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の床材は、カーペットのような触感や温感性を有するうえ、清掃性が良好で、しかもルームシューズ歩行、杖歩行、歩行器歩行、車椅子歩行などに対する耐摩耗性に優れている。
このため、従来のクッションフロアのように台所、トイレ、洗面所等の水周りに使用できると共に、これまでカーペットやフローリングが占めいていた場所にも使いたくなるものであり、従来のクッションフロアより用途面積が広く、家庭だけでなく、介護施設やリハビリ施設、医療機関の待合室、保育施設など様々な箇所に置き敷くのに好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 基材層
2 合成樹脂層
3 意匠層
4 透明樹脂層
5 接着剤
6 静電植毛層
10 床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、合成樹脂層、意匠層、透明樹脂層、静電植毛層を含む床材であって、
静電植毛層は、径が2〜15μm、長さが100〜600μmのパイルを、透明樹脂層上に、目付け量が20〜50g/m2となるように静電植毛したものであることを特徴とする床材。
【請求項2】
パイルがナイロンまたはポリエステルであり、透明樹脂層が塩化ビニル系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−231539(P2011−231539A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103345(P2010−103345)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】