説明

床用ポリマーセメントモルタル

【課題】乾燥によるひび割れが起こり難く、下地との接着性が高く、かつ平滑な表面が得やすい床用ポリマーセメントモルタルを提供する。
【解決手段】セメント100重量部に対して、骨材を100〜400重量部、ポリマーを固形分換算で10〜30重量部、収縮低減剤を0.2〜5重量部、ガラス繊維を0.2〜5重量部含有することを特徴とする床用ポリマーセメントモルタルであり、好ましくは、粒径0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70重量%以上であり、長さ変化率が0.08%以下、静弾性係数が20000N/mm2以下、付着強度0.8N/mm2以上である床用ポリマーセメントモルタル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用ポリマーセメントモルタルに関し、詳しくは、ひび割れが発生し難く、かつ平坦な表面が得られる床用ポリマーセメントモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物や土木構造物において、床を形成する場合に、コンクリート床版、鋼製床版又は合成床版等の床版(スラブ)の上面にモルタル層を形成させることがある。このモルタル層は、床版の凹凸調整(不陸調整)の目的、下地となる床版を保護する目的、床版の補修の目的、防水性・耐酸性・遮音性等の性能を床版に付加する又は向上させる目的等のために、床版の上面に形成される。このモルタル層の表面が最終的な仕上げ面となることもあるが、このモルタル層の上に、更に仕上げ層を形成することも多い。この仕上げ層を形成する材料としては、例えば塗料、別なモルタル、タイル、樹脂シート、アスファルトモルタル、アスファルトコンクリート、絨毯等が例示できる。
【0003】
床版の上面に形成されたモルタル層は、乾燥によるひび割れの抑制、床版との接着性向上、床版への応力分散性の向上のため、ポリマーを含有するポリマーセメントモルタルにより形成される(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。しかしながら、従来の床用ポリマーセメントモルタルは、寸法安定性、ひび割れの抑制性能、床版との接着性等の点で、性能が不充分であった。
【0004】
また、下地となる床版は、スロープ、軌道床版、道路床版等では、傾斜があることが多い。ひび割れの抑制性能や床版との接着性等を向上するために、単にポリマーセメントモルタル中のポリマーの含有量を増やしても、傾斜している下地の上面にこのポリマーセメントモルタルによりモルタル層を形成した場合、このモルタル層は均一な厚み且つ平滑な表面とすることができないといった点で問題がある。
【特許文献1】特許第2534572号公報
【特許文献2】特許第3367996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、床用ポリマーセメントモルタルの従来の上記問題を解決したものであり、乾燥によるひび割れが起こり難く、下地との接着性が高く、かつ平滑な表面が得易い床用ポリマーセメントモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す構成を有することによって上記問題を解決した床用ポリマーセメントモルタルに関する。
(1)セメント100重量部に対して、骨材を100〜400重量部、ポリマーを固形分換算で10〜30重量部、収縮低減剤を0.2〜5重量部、ガラス繊維を0.2〜5重量部含有することを特徴とする床用ポリマーセメントモルタル。
(2)セメントが急硬性セメントである上記(1)に記載する床用ポリマーセメントモルタル。
(3)セメント100重量部に対し、ポリマーの含有量が固形分換算で15〜25重量部、収縮低減剤の含有量が0.5〜4重量部であり、ガラス繊維が繊維長10〜30mmの耐アルカリガラス繊維である上記(1)または上記(2)に記載する床用ポリマーセメントモルタル。
(4)粒径0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70重量%以上である上記(1)〜上記(3)の何れかに記載する床用ポリマーセメントモルタル。
(5)上記(1)〜上記(4)の何れかに記載する材料配合からなり、長さ変化率が0.08%以下、静弾性係数が20000N/mm2以下、付着強度0.8N/mm2以上である床用ポリマーセメントモルタル。
【発明の効果】
【0007】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルは、乾燥によるひび割れが起こり難く、下地との接着性が高く、かつ平滑な表面を得ることができる。また、本発明の床用ポリマーセメントモルタルは下地が傾斜している場合であっても、乾燥によるひび割れが起こり難く、下地との接着性が高く、かつ平滑な表面を得ることができる。
【0008】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルは、床版等の下地の凹凸調整(不陸調整)、下地の保護、下地の補修、並びに、防水性等の性能を下地に付加する又は向上させることが容易にできる。このため、本発明の床用ポリマーセメントモルタルを用いた床は、凹凸が無く、防水性の高い床を得ることができる。また、本発明の床用ポリマーセメントモルタルを用いた床は、防水性が高いので、酸性の水も通し難く、耐酸性にも優れた床を得ることができる。
【0009】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルは、静弾性係数が小さいので、該モルタル上面に掛かる応力・衝撃を分散して下地に伝えることができる。また、本発明の床用ポリマーセメントモルタルは、静弾性係数が小さいので、遮音性も優れた床を得られる。
【0010】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルを用いた床は、乾燥によるひび割れが起こり難く、下地との接着性が高く、防水性も高いこと等から、耐久性の高い床となる。また、耐久性の高い床が、容易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施例形態に従って具体的には説明する。
本発明の床用ポリマーセメントモルタルは、セメント100重量部に対して、骨材を100〜400重量部、ポリマーを固形分換算で10〜30重量部、収縮低減剤を0.2〜5重量部、ガラス繊維を0.2〜5重量部含有することを特徴とする床用ポリマーセメントモルタルである。
【0012】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルに用いるセメントは、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメント、急硬性セメント、超速硬セメント、あるいは都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰等の廃棄物を原料として利用したエコセメント等が挙げられ、これらの一種または二種以上を使用することができる。供用中の構造物の床に用いる場合や緊急の補修工事に用いる場合においては、急硬性セメントを用いることが好ましい。急硬性セメントとしては、ポルトランドセメント又はエコセメントから選ばれる一種または二種以上のセメントに、カルシウムアルミネート等の急硬材(材)を含む急結剤(材)を添加したもの、「ジェットセメント」や「スーパージェットセメント」等の商品名で市販されている超速硬セメント等が挙げられる。
【0013】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルに用いるポリマーは、セメント、モルタル、コンクリートに添加し使用できるものならばポリマーディスパージョン(ポリマーエマルション)または再乳化型粉末樹脂の何れのものでもよい。
ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルション)としては、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体及びメチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等のゴムラテックス、ポリプロピレン、ポリクロロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレン・アクリル共重合体、オールアクリル共重合体、酢酸ビニル・アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニルビニルバーサテート共重合体、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂及びエポキシ樹脂等の合成樹脂、アスファルト、ゴムアスファルト及びパラフィン等の瀝青質等のエマルションが挙げられ、これらの2種以上を混合して用いることもできる。
再乳化型粉末樹脂としては、これらポリマーディスパージョン(ポリマーエマルション)の1種または2種以上を粉末状にした再乳化型粉末樹脂であってもよい。
【0014】
ポリマーの配合量はセメント100重量部に対しポリマー固形分換算で10〜30重量部である。この量が10重量部未満では、乾燥によるひび割れが起こりやすく、下地との接着性が不充分であり、更に防水性や下地の保護も不充分である。また、30重量部を超えると、モルタルが高粘性化し、かつ硬化時間が遅れ、平滑な表面を得るのが難く、施工性が低下する。好ましいポリマーの配合量はポリマー固形分換算で15重量部〜25重量部である。
【0015】
本発明において使用する収縮低減剤としては、モルタルの硬化体中の水分が蒸発する際に発生する応力を低下させる機能を有する物質であれば良く、例えば、ポリオキシアルキレン化合物、ポリエーテル系化合物あるいはアルキレンオキシド化合物等を用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレン・アルキルアリルエーテル、ポリプロピレングリコール、低級アルコールアルキレンオキシド付加物、グリコールエーテル・アミノアルコール誘導体、ポリエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、エチレンオキシドメタノール付加物、エチレンオキシド・プロピレンオキシド重合体、フェニル・エチレンオキシド重合体、シクロアルキレン・エチレンオキシド重合体あるいはジメチルアミン・エチレンオキシド重合体等が例示される。これらは一種または二種以上を併用することができる。
【0016】
上記収縮低減剤は、モルタルの硬化体中の水分が蒸発する際に発生する応力を低下させることによってモルタル硬化体の乾燥収縮を低減させる性質を有し、より詳しくは、収縮を支配する毛細管空隙の水に溶解して表面張力を低下させ、その結果、乾燥時の毛細管張力を小さくして収縮を低減させる。特に、収縮低減剤が低級アルコールアルキレンオキシド付加物を有効成分とするものは、水への溶解性が高く硬化体の乾燥収縮低減効果が高いので好ましい。
【0017】
低級アルコールアルキレンオキシド付加物としては、例えば下記式(1)で表される化合物がある。
RO(AO)nH (1)
(式中、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数5〜6のシクロアルキル基、Aは炭素数2〜3の1種または2種のアルキレン基、nは1〜100の数)
【0018】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルには市販の収縮低減剤を用いることもできる。この収縮低減剤としては、例えば、テトラガード、ヒビダン、レオソルブ703B、デンカエスケーガード、ヒビガードなどの商品名で市販されているものが挙げられる。
【0019】
上記収縮低減剤の配合量は、セメント100重量部に対して0.2〜5重量部である。この量が0.2重量部未満では硬化後のモルタルに乾燥収縮によるひび割れが発生し易い。一方、5重量部を超えるとモルタルへのエアの巻込みが多くなり、圧縮強度および付着強度が低下して不充分になる。また、5重量部を超えると、防水性・耐酸性の低下を招くとともに、硬化時間が遅れ、平滑な表面を得るのが難しく、施工性が低下する。好ましい収縮低減剤の配合量は、モルタルへのエアの巻き込みが少ないことから圧縮強度及び付着強度が高く且つ硬化体にひび割れが発生する虞が少ないことから、0.5重量部〜4重量部である。
【0020】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルに用いるガラス繊維は、耐久性が高く、ひび割れの発生を抑える効果が高いことから、耐アルカリガラス繊維が好ましい。また繊維長が10〜30mmのものが、モルタルのひび割れが起こり難く、かつ表面を平滑にし易いため好ましい。
【0021】
上記ガラス繊維の配合量は、セメント100重量部に対して0.2〜5重量部である。この量が0.2重量部未満では耐ひび割れ性能、寸法安定性、応力分散性能が低下する。また5重量部を超えると、下地にセメントが入り込み難くなるので下地との接着力が低下し、また流動性、施工性が低下する。
【0022】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルに用いる骨材は、モルタルに使用可能な骨材であれば特に限定されずに使用できる。例えば、珪砂、石灰石、寒水石、砕砂などが例示できる。
【0023】
上記骨材の配合量は、セメント100重量部に対して100〜400重量部である。この量が100重量部未満では単位体積あたりのセメント量が多くなるため、ひび割れが発生しやすくなる。また、400重量部を超えると単位体積あたりのセメント量が少なくなるため、圧縮強度及び付着強度が不足する。
【0024】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルに用いる骨材は、粒径0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70重量%以上であるものが好ましい。ここで、粒径0.3〜1.2mmの骨材とは、公称呼び寸法0.3mmの篩に留まり、かつ公称呼び寸法1.2mmの篩を通過する粒径の骨材を云う。上記粒径の骨材が骨材全体の70重量%以上であると、モルタルに振動を加えて流動性向上させた時に充填性が向上し、施工上、振動を止めた時に形状を保持するために傾斜面などの施工に好ましい。
【0025】
公称呼び寸法(以下、目開きと云う)0.3mmの篩を通過する骨材の割合が目開き1.2mmの篩に留まる骨材の割合より多く、このため粒径0.3〜1.2mmの骨材の割合が骨材全体の70重量%未満であると、モルタルの流動性が悪く、振動を加えた場合でも平滑な表面を得るのが難しい。一方、目開き0.3mmの篩を通過する骨材の割合が目開き1.2mmの篩に留まる骨材の割合より少なく(粒径1.2mmより大きい骨材が多い)、このため粒径0.3〜1.2mmの骨材の割合が骨材全体の70重量%未満であると、モルタルの材料分離が生じやすくなり、付着力が不足し、ひび割れが生じやすく、かつ平滑な表面を得るのが難しくなる。
【0026】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルには、セメント、骨材、ポリマー、収縮低減剤およびガラス繊維に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、モルタルやコンクリートに使用できる混和材料を添加することができる。この混和材料としては、例えば、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤、減水剤、流動化剤を含むセメント分散剤、膨張材(剤)、急結剤(材)、急硬剤(材)、顔料、撥水剤、防水材、表面硬化剤、保水剤、粘度調整剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、遅延剤、硬化促進剤、潜在性水硬性物質、石炭灰やシリカヒューム等のポゾラン反応性物質等が挙げられる。
【0027】
また、本発明の床用ポリマーセメントモルタルにおいて、ポリマーとして、ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルション)を用いない場合や、ポリマーディスパージョン(ポリマーエマルション)に含まれる水が不足する場合は、本発明の床用ポリマーセメントモルタルに、本発明の効果を実質的に喪失させない範囲で、水を別途添加すると良い。
【0028】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルの製造方法は、特に限定されない。ミキサで混練することによって製造することができ、ミキサ混練によれば製造した床用ポリマーセメントモルタルの成分および物性が均一になるので好ましい。使用するミキサとしては、例えばハンドミキサ、グラウトミキサ、強制練りコンクリートミキサ、傾胴式コンクリートミキサ、左官ミキサが挙げられる。混練時に本発明の床用ポリマーセメントモルタルに含まれる各材料を一度にミキサで混合しても良いし、事前に材料の一部をミキサで混合しても良い。固形の材料は、事前に乾式混合しておく方が、混練時に短時間で均質に混合することができるので好ましい。
【0029】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルは、コンクリート床版、鋼製床版または合成床版等の下地の上面に適用し、モルタル層を形成させる。本発明の床用ポリマーセメントモルタルからなるモルタル層の表面が最終的な仕上げ面となることもあるが、このモルタル層の上に、更に仕上げ層を形成することもできる。この仕上げ層を形成する材料としては、例えば塗料、別なモルタル、タイル、樹脂シート、アスファルトモルタル、アスファルトコンクリート、絨毯等が例示できる。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明の実施例を比較例と共に示す。使用材料および記号を表1に示した。
〔実施例1〜8、比較例1〜7〕
表2に示す配合量に従ってポリマーセメントモルタルを製造した。ポリマー(スチレンブタジエン系ポリマーディスパージョン)および水以外の固形材料をあらかじめ均一に混合しておき、その混合物にポリマー(スチレンブタジエン系ポリマーディスパージョン)および水を加えて、モルタルミキサで均一に混練した。製造したポリマーセメントモルタルについて、以下に示す試験方法で評価し、長さ変化率、耐ひび割れ性、静弾性係数、付着強度、防水性、表面仕上げ性を調べた。その結果を配合と共に表2、表3に示した。
【0031】
[長さ変化率]
規格(JIS A 6916「建築用下地調整塗材」の長さ変化試験)に従って、長さ変化率を求めた。
○:長さ変化率0.08%以下(寸法安定性が良く、ひび割れが発生し難い)
×:長さ変化率0.08%超える(寸法安定が悪く、ひび割れが発生し易い)
【0032】
[耐ひび割れ性]
作製したモルタルをコンクリート製床上に成形し(縦1m×横1m×厚み2cm)、屋外暴露28日後のひび割れ発生状況を観察した。
○:ひび割れなし
×:ひび割れあり
【0033】
[静弾性係数]
規格(JHS 307−1999 コンクリートの静弾性係数試験方法)に準じ、ポリマーセメントモルタルの静弾性係数を求めた。
○:20000N/mm2以下(微弾性体であるため応力分散や耐衝撃性に優れため、床構造物を保護することができる)
×:20000N/mm2を超える(応力を分散させずに衝撃を床構造物に伝えるため床構造物を保護できない。さらにポリマーセメントモルタルと床構造物が剥離したりする場合がある)
【0034】
[付着強度]
規格(JIS A 6916「建築用下地調整塗材」)の付着試験に準じて測定した。
○:0.8N/mm2以上(床構造物と一体化できる)
×:0.8N/mm2未満(付着強度が低いため衝撃や経年劣化などにより剥離する場合がある)
【0035】
[防水性]
規格(JIS A 6916「建築用下地調整塗材」)の透水試験に準じ、試験の際は含水させずに、乾燥状態のまま試験を行った。24時間後の透水の有無を確認した。
○:透水無し(モルタル中に水が浸透しないため、防水性があり、下地が劣化し難い)
×:透水有り(モルタル中に水が浸透するため劣化が起きやすく、防水性が低い。下地が劣化し易い。)
【0036】
[表面仕上げ性]
規格(JIS R5201「セメントの物理試験方法」)のフロー試験に準じて測定した。
(1)フローコーン引き抜き直後のフローコーンへのモルタルの付着状況
○:フローコーンにモルタルが付着していない。(粘性が低く、表面を平滑にしやすく、施工性がよい)
×:フローコーンにモルタルが付着している。(粘性が高く、表面を平滑にし難く、施工性が悪い)
(2)フローコーン引き抜き直後のフロー値(15回の落下運動前のフロー値)
○:130mm未満(形状保持するため、下地が傾斜している場合において、施工がしやすく、かつ表面を平滑にしやすい)
×:130mm以上(斜面などではモルタルが流動するため、施工し難い。)
(3)15回の落下運動後のフロー値(流動性の確認)
○:150mm以上(振動等の外力により流動性が向上し、表面を平滑にしやすい)
×:150mm未満又は材料分離がある(振動等の外力を与えても表面を平滑にし難い、または材料分離があると均一な物性が得られない)
【0037】
表2に示すように、本発明の実施例に係るポリマーセメントモルタルは何れも、長さ変化率が0.08%以下、静弾性係数が20000N/mm2以下、付着強度0.8N/mm2以上であり、ひび割れもなく、何れの性質も全て良好である。一方、比較例は上記性質のうち何れかが不良である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の床用ポリマーセメントモルタルは、建築構造物や土木構造物において、コンクリート床版、鋼製床版又は合成床版等の床版(スラブ)の上面にモルタル層を形成させ、床を形成する場合に、好適に用いることができる。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント100重量部に対して、骨材を100〜400重量部、ポリマーを固形分換算で10〜30重量部、収縮低減剤を0.2〜5重量部、ガラス繊維を0.2〜5重量部含有することを特徴とする床用ポリマーセメントモルタル。
【請求項2】
セメントが急硬性セメントである請求項1に記載する床用ポリマーセメントモルタル。
【請求項3】
セメント100重量部に対し、ポリマーの含有量が固形分換算で15〜25重量部、収縮低減剤の含有量が0.5〜4重量部であり、ガラス繊維が繊維長10〜30mmの耐アルカリガラス繊維である請求項1または請求項2に記載する床用ポリマーセメントモルタル。
【請求項4】
粒径0.3〜1.2mmの骨材が骨材全体の70重量%以上である請求項1〜請求項3の何れかに記載する床用ポリマーセメントモルタル。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載する材料配合からなり、長さ変化率が0.08%以下、静弾性係数が20000N/mm2以下、付着強度0.8N/mm2以上である床用ポリマーセメントモルタル。

【公開番号】特開2008−162838(P2008−162838A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353518(P2006−353518)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(501173461)太平洋マテリアル株式会社 (307)
【Fターム(参考)】