説明

床用断熱材とそれを用いた床断熱構造

【課題】異なったモジュールの床構造に対して、1種類の床用断熱材のみで、隣接する根太同士の間および際根太と隣接する根太との間の双方に、断熱材を挿入できる床用断熱材を提供する。
【解決手段】土台の横幅YがY1及びY2、根太および際根太の横幅DがD1及びD2(>D1)である異なる4つの態様の床構造で使用できる合成樹脂発泡製の床用断熱材10で、矩形形状をなす中央部分10aと、V字状をなす割溝S1、S2を介して接続した第1の側方部分10bと第2の側方部分10とを有する。S1の中央部分10a側の位置は、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で第1の側方部分10bの側方端面11から土台の横幅Y1と根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離だけ内側に入った位置とし、割溝S2の中央部分10a側の位置は、第2の側方部分10cの側方端面12から土台の横幅と根太の横幅との和の半分の距離だけ内側に入った位置とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸組木造建築物における床部分を断熱するための床用断熱材とそれを用いた床断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸組工法で組み立てられる木造建築物において、床構造は、通常、布基礎の上に土台が固定され、該土台に平行に適数の大引が配置され、該大引の上に大引と直交するように適数の根太が配置された構成とされている。そして、当該床構造に断熱性を持たせるために、配置した根太と根太の間に合成樹脂発泡体である断熱材を挿入する断熱工法も行われる。特許文献1および特許文献2には、そのような断熱工法とそこで用いる断熱材の例が記載されている。
【0003】
特許文献1には、軸組木造建築物における床において、根太間一般部での標準根太間距離と、際根太とそれに隣接する根太との間の際根太間距離とは相違することに鑑みて、標準根太間距離の横幅を持つ合成樹脂発泡体製の断熱材に、その一方側縁から所定距離の位置に側縁に平行に幅のない切り込みを形成しておき、根太間一般部では断熱材をそのままで挿入し、前記際根太とそれに隣接する根太の間には、施工現場で前記切り込みを利用して一部を除去することで幅の狭くなった断熱材を挿入することが記載されている。これによれば、一種類の断熱材を用意するだけで、根太間一般部と際根太部分の双方に容易に断熱材を配置することが可能となる。また、軸組工法において、一般に、横幅の異なる2種類の根太が採用されているが、それに対しては、距離の異なる位置に前記切り込みを形成した2種類の断熱材を用意することで、それぞれに対処するようにしている。
【0004】
また、特許文献2には、長方形である合成樹脂発泡体製の断熱材を、側縁に沿って形成した2本の割溝によって中央部分と2つの側方部分とに区分けするとともに、該側方部分の側面を5°〜20°の範囲で斜め下方に傾斜させるようにした断熱材が記載されている。この断熱材を隣接する根太間に挿入し、その後、上から押し付けることで、断熱材は根太間にしっかりと挿入された状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−217014号公報
【特許文献2】特開平10−110483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、軸組木造建築物の床部では、根太として横幅の異なる2種類の角材が選択的に用いられ、また、土台にも横幅の異なる2種類の角材が選択的に用いられる。具体的には、土台には105mmの角材と120mmの角材が用いられ、根太には40mmの角材と45mmの角材が用いられる。特許文献1に記載の床用断熱材では、明確には記載されないが、土台として105mmの角材を用いることを前提に、40mm角の根太を用いる床構造には、断熱材の側縁から72.5mmの位置に切り込みを入れた第1の断熱材を用い、45mm角の根太を用いる床構造には、断熱材の側縁から75.0mmの位置に切り込みを入れた第2の断熱材を用いるようにしていると考えられる。
【0007】
前記したように、軸組工法における床構造においては、2種類の寸法の土台と2種類の寸法の根太とが適宜選択されて施工されるものであるところ、特許文献1に記載の床用断熱材は1種類の寸法の土台のみに対応したものであり、2種類の寸法の土台に対する考察はなされていない。また、1種類の土台寸法に対しても、2種類の根太寸法に応じた2種の床用断熱材を用いるようにしており、もし、2種類の土台寸法に対して適用しようとすると、計4種類の床用断熱材を用いることとなる。そのために、施工業者あるいは断熱材メーカーは、需要に適切に対応するために、2種類または4種類の床用断熱材を常時用意しておく必要があり、在庫管理、製品管理など観点からは、さらに改善すべき点がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、軸組木造建築物の床部に標準として採用されている2種類の寸法の土台および2種類の寸法の根太とがどのように組み合わされて床構造が造られている場合でも、1種類の床用断熱材を用意するのみで、すべての根太一般部(隣接する根太同士の間)および際根太部(際根太と該際根太に隣接する根太との間)に適切にかつ容易に挿入することのできる床用断熱材を提供することを課題とする。また、その床用断熱材を用いた床面の断熱構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による床用断熱材は、対向して平行に位置する2本の土台におけるそれぞれの幅方向中心間の距離Sを等間隔Xに区分する位置に適数の根太が取り付けられ、各土台に接する位置には前記根太と同寸法の際根太が取り付けられている構造を備えた床構造を断熱するために前記際根太と該際根太に隣接する根太の間および隣接する根太同士の間に挿入するのに用いられる合成樹脂発泡体製の床用断熱材10であって、前記床用断熱材は、土台の横幅YがY1およびY2(>Y1)、根太および際根太の横幅D(<Y)がD1およびD2(>D1)である異なる4つの態様の前記床構造で用いることが予定されているものであり、前記床用断熱材は、平板状で矩形形状をなす中央部分10aと、該中央部分の長手方向の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝S1、S2を介して斜め下方に傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みを持ちかつほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分10b、10cとを有し、前記各側方部分の長手方向に沿った側方端面11、12は、その上縁がその下縁よりも外方に位置する傾斜面とされており、前記双方の側方部分10b、10cの長手方向に沿った側方端面11、12の下縁間の距離P1は、前記隣接する根太間の距離よりやや狭いものとされ、上縁間の距離P2は前記隣接する根太間の距離よりも広くされており、前記第1の割溝S1の前記中央部分10a側の位置は、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分10bの側方端面11から前記土台の横幅Y1と根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、前記第2の割溝S2の前記中央部分10a側の位置は、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分10cの側方端面12から前記土台の横幅Y2と根太の横幅D2との和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、前記第1の割溝S1と第2の割溝の上端の開口幅Wはそれぞれの側方部分側に向けてほぼ1.5(D2−D1)以上の距離とされていることを特徴とする。
【0010】
上記の床用断熱材は、基本構成として、中央部分10aと、その両側にほぼV字状をなす割溝S1、S2を介して斜め下方に傾斜したほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分10b、10cとを備える。そして、前記各側方部分10b、10cの長手方向に沿った側方端面11、12は、その上縁がその下縁よりも外方に位置する傾斜面とされ、さらに、前記双方の側方端面11、12の下縁間の距離P1は前記隣接する根太間の距離Taよりやや狭く、上縁間の距離P2は前記隣接する根太間の距離Taよりも広くされている。
【0011】
したがって、根太一般部すなわち隣接する根太と根太の間では、上記床用断熱材をそのままの姿勢で裏面側から容易に挿入することができる。挿入後にさらに上から押し付けることで、床用断熱材は、双方の側方部分10b、10cが前記V字状をなす割溝S1、S2の幅を次第に狭くする方向に回動しながら下方に向けて移動していき、最後には、全体が平板状の姿勢となって根太と根太との間に隙間のない状態で嵌め込まれる。それにより、根太一般部には、合成樹脂発泡体製の床用断熱材10による断熱層が形成される。
【0012】
次に、際根太と該際根太に隣接する根太との間に、本発明による床用断熱材を挿入する場合を説明する。軸組工法による床構造において、根太一般部での根太間の距離Taは前記距離X−距離Dであり、際根太とそこに隣接する根太の壁間の距離Tbは前記Ta−1/2(距離Y+距離D)となる。
【0013】
したがって、本発明による床用断熱材において、前記のように第1の割溝S1と第2の割溝S2とを形成し、第1の割溝S1の前記中央部分10a側の位置を、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で第1の側方部分10bの側方端面11から土台の横幅Y1と根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とし、第2の割溝S2の前記中央部分10a側の位置を、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で第2の側方部分10cの側方端面12から土台の横幅Y2と根太の横幅D2との和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置としている。
【0014】
そのために、横幅Y1の土台を用いた床構造に対しては、割溝S1を利用して前記第1の側方部分を除去した床用断熱材、すなわち前記中央部分10aと第2の側方部分10cとからなる床用断熱材を用いることで、際根太とそこに隣接する根太との間に容易に床用断熱材を挿入することができる。また、横幅Y2の土台を用いた床構造に対しては、割溝S2を利用して前記第2の側方部分を除去した床用断熱材、すなわち第1の側方部分10bと中央部分10aとからなる床用断熱材を用いることで、際根太とそこに隣接する根太との間に容易に床用断熱材を挿入することができる。
【0015】
横幅Y1の土台を用いた床構造において、横幅D1および横幅D2の根太が用いられるケースがある。また、横幅Y2の土台を用いた床構造においても、横幅D1および横幅D2の根太が用いられるケースもある。それに対処するために、すなわち根太寸法の違いに対処するために、本発明による床用断熱材は、前記第1の割溝S1と第2の割溝の上端の開口幅Wはそれぞれの側方部分側に向けてほぼ1.5(D2−D1)以上の距離とされている構成を備える。いずれか一方の側方部分を除去した状態の床用断熱材においても、他方の側方部分と中央部分との間には依然としてして割溝(S1またはS2)が残っているので、際根太とそこに隣接する根太との間に床用断熱材を挿入するときに、残っている側の割溝がその幅を次第に狭くすることで、根太の横幅の違いに伴う前記際根太とそこに隣接する根太の壁間の距離Tbの差を吸収することができる。
【0016】
上記のように、本発明による床用断熱材を用いることにより、軸組木造建築物の床部に標準として採用されている2種類の寸法の土台および2種類の寸法の根太とがどのように組み合わされて床構造が造られている場合でも、そのすべてに対して、根太一般部(隣接する根太同士の間)および際根太部(際根太と該際根太ら隣接する根太との間)の双方に適切にかつ容易に断熱材を挿入することができるようになる。そのために、床用断熱材の在庫管理や製品管理も容易となる。
【0017】
上記した床用断熱材は、2種類の寸法の土台および2種類の寸法の根太で造られる4種類の床構造のすべてに対して対応できるようにしたものであり、そのために、前記第1の割溝S1と第2の割溝S2の上端の開口幅Wは、1.5(D2−D1)以上の距離とする必要がある。床構造の種類によっては、床用断熱材を根太間に挿入した状態で、前記V字状の割溝は依然として断熱性能上での有意な隙間を残していることも起こりうる。それを回避することのできる床用断熱材として、本発明は、土台幅YがY1およびY2と異なるが、用いる根太の横幅はDの一種のみである2態様の床構造に用いるのに適した第2の床用断熱材と、土台幅はYの一種であるが、用いる根太の横幅DがD1およびD2と異なる2態様の床構造に用いるのに適した第3の床用断熱材も開示する。
【0018】
前記第2の床用断熱材では、前記第1の割溝S1の前記中央部分10a側の位置は、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分10bの側方端面11から前記土台の横幅Y1と根太の横幅Dの和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、前記第2の割溝S2の前記中央部分10a側の位置は、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分10cの側方端面12から前記土台の横幅Y2と根太の横幅Dとの和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、前記第1の割溝S1と第2の割溝の上端の開口幅Wはそれぞれの側方部分10b、10c側に向けて少なくとも前記双方の側方部分の側方端面11、12の上縁間の距離P2と下縁間の距離P1の差に等しいかよりも広い距離とされている点で、4態様で使用可能な前記床用断熱材と構成を異にする。
【0019】
前記第3の床用断熱材では、前記第1の割溝S1の前記中央部分10a側の位置は、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分10bの側方端面11から前記土台の横幅Yと根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、前記第2の割溝S2の前記中央部分10a側の位置は、床用断熱材10を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分10cの側方端面12から前記土台の横幅Yと根太の横幅D2との和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、前記第1の割溝S1と第2の割溝の上端の開口幅Wはそれぞれの側方部分10b、10c側に向けて少なくとも前記双方の側方部分の側方端面11、12の上縁間の距離P2と下縁間の距離P1の差に等しいかよりも広い距離とされているで、4態様で使用可能な前記床用断熱材と構成を異にする。
【0020】
第2の床用断熱材においては、土台の横幅が異なる2種類の床構造に用いる場合に、それぞれいずれか一方の側方部分10b、10cを除去することで、際根太と該際根太に隣接する根太の間に挿入する床用断熱材とする。また、第3の床用断熱材においては、根太の横幅が異なる2種類の床構造に用いる場合に、それぞれいずれか一方の側方部分10b、10cを除去することで、際根太と該際根太に隣接する根太の間に挿入する床用断熱材とする。根太一般部すなわち隣接する根太間には第2の床用断熱材または第3の床用断熱材をそのまま挿入する。
【0021】
第2および第3の床用断熱材において、割溝S1、S2は、基本的に、根太間あるいは際根太と根太間に床用断熱材を挿入するときに、側方部分が前記上縁間の距離P2と下縁間の距離P1の差分だけ回動することができるように設けられる。したがって、割溝S1、S2の上端側の距離Wは狭いものでよく、断熱性が破壊される可能性を極力小さくすることができる利点がある。もちろん、前記上縁間の距離P2と下縁間の距離P1の差分よりも少し(2〜3mm程度)広くしておくことで、際根太を含む根太設置の施工誤差にも対応可能となる。
【0022】
なお、本発明において、前記並行して走る根太の中心間の間隔Xの値、根太の横幅Dの値、土台の横幅Yの値に特に制限はないが、現在の軸組工法を参照すれば、前記隣接する根太の中心間距離Xは303mm前後か455mm前後であり、D1が40mm前後、D2が45mm前後、Y1が105mm前後、Y2が120mm前後の値が選択される。そして、根太の中心間距離Xが303mm前後または455mm前後のいずれであっても、前記した距離Z1、Z2の値は同じである。より具体的には、本発明による床用断熱材において、前記Yが105mm前後または120mm前後、Dが40mm前後または45mm前後である軸組木造建築物の根太間に挿入される場合には、当該断熱材の幅方向の一方の側縁から略72.5〜75.0mmの距離Z1に前記第1の割溝S1が形成され、幅方向の他方の側縁から略80.0〜82.5mmの距離Z2に前記第2の割溝S2が形成される。そして、この場合、前記第1の割溝S1と第2の割溝の上端の開口幅Wはほぼ7.5mmとなる。
【0023】
本発明は、また、上記した床用断熱材の複数枚が幅方向に間隔を置いて配置されており、隣接する該床用断熱材の群は可撓性を有する帯材によって互いに連接されていることを特徴とする軸組木造建築物用の床用断熱材ユニットをも開示する。好ましくは、前記床用断熱材ユニットにおいて、各床用断熱材は、前記中央部分10aの領域において前記帯材と一体に接合されている。
【0024】
上記の床用断熱材ユニットは、複数の床用断熱材が可撓性を有する帯材によって互いに連接されているので、根太間への挿入作業が容易となるとともに、不用意に根太の間から落下してしまうのを防止することができる。また、中央部分において帯材と一体に接合しておくことにより、必要時に行う側方部分の分離作業も容易に行うことができる。
【0025】
本発明はさらに、上記の床用断熱材または床用断熱材ユニットを用いる床断熱構造であって、床構造は対向して平行に位置する2本の土台におけるそれぞれの幅方向中心間の距離を等間隔に区分する位置に適数の根太が取り付けられ、各土台に接する位置には前記根太と同寸法の際根太が取り付けられている構造を備えた床構造であり、その床構造における前記際根太と該際根太に隣接する根太の間には、前記床用断熱材10から第1の側方部分10bまたは第2の側方部分10cのいずれか一方を前記割溝S1またはS2の部分から除去した後の床用断熱材が挿入されており、隣接する根太同士の間には、前記床用断熱材10がそのまま挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする床断熱構造をも開示する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、軸組木造建築物による異なったモジュールの床構造のすべてに対して、1種類の床用断熱材を用意するのみで、隣接する根太同士の間および際根太とそこに隣接する根太との間の双方に、適切にかつ容易に断熱材を挿入することが可能となる。それにより、断熱施工の容易性が得られるとともに、床用断熱材の在庫管理あるいは製品管理も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】軸組木造建築物の床部を説明する図。
【図2】本発明による床断熱構造の一例を示す断面図。
【図3】本発明による床断熱構造の具体例の板部を示す断面図。
【図4】本発明による床用断熱材の一例を説明するための短手方向の断面図。
【図5】床用断熱材の一具体例とその使用態様を説明する図。
【図6】図5に示した床用断熱材を用いた本発明による床断熱構造の一例を説明する図。
【図7】本発明による第2の床用断熱材の一例をその使用態様を説明する図。
【図8】第2の床用断熱材の他の例をその使用態様を説明する図。
【図9】本発明による床用断熱材ユニットの一例を示す斜視図。
【図10】V字状の割溝の詳細を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。
図1に斜視図、図2に床部の断面図を示すように、軸組工法における木造建築物の床部は、一般に、最初にコンクリートによる布基礎1が矩形状に作られ、その上に横幅Yの角材からなる土台2が固定される。土台2には柱3や間柱4が立設されるとともに、対向する土台2、2の間にやはり角材である適数の大引5が取り付けられ、該大引5の上に、横幅Dの角材からなる適数の根太6が配置される。
【0029】
軸組工法での標準では、図2に示すように、対向する土台2、2の中心間の距離Sが等距離Xに区分され、大引5における各区分点の上に中心が位置するようにして前記根太6が配置される。また、土台2には柱3や間柱4が立設されており、土台2の上に根太6を配置することができないので、大引5上の土台2に接する箇所に際根太7が配置される。根太6と際根太7は呼称が異なるのみで、ともに同じ横幅Dの角材である。
【0030】
床部の断熱を行うには、根太6と根太6の間、すなわち根太一般部には、対向する根太6、6の側面間の距離Ta(=X−D)にほぼ等しい横幅Aである合成樹脂発泡体製の床用断熱材10が挿入される。一方、前記際根太7と隣接する根太6の対向する側面間の距離Tbは、根太間一般部における根太6、6の側面間の距離Taより狭く、その距離Tbは、Ta−1/2(Y+D)となる。したがって、前記際根太7と隣接する根太6との間には、横幅BがほぼTbに等しい合成樹脂発泡体製の部分断熱材10sが挿入される。
【0031】
軸組工法において、現在、根太中心間の距離Xが303mmと455mmである2つの標準モジュールM1、M2が採用されており、各標準モジュールM1、M2において、土台2の横幅Yが105mm(Y1)と120mm(Y2)のもの、根太6(際根太7)の横幅Dが40mm(D1)と45mm(D2)のものとを選択組み合わせて施工するようにされている。
【0032】
下記の表1および図3に示すように、M1=303mmの標準モジュールにおいて、Y1とD1の組み合わせを取ると(選択1)、距離Taは(303−40)mm=263mm、距離Tbは(263−1/2(105+40))mm=190.5mmとなる(図3(a)参照)。同様に、Y1とD2の組み合わせを取ると(選択2)、距離Taは258mm、距離Tbは183mmとなる(図3(b)参照)。Y2とD1の組み合わせを取ると(選択3)、距離Taは263mm、距離Tbは183mmとなる(図3(c)参照)。D2とY2の組み合わせを取ると(選択4)、距離Taは(303−45)mm=258mm、距離Tbは(258−(60+22.5))mm=175.5mmとなる(図3(b)参照)。なお、表1で、Z(Z1、Z2)は、Ta−Tbの値である。
【0033】
【表1】

【0034】
本発明は、上記した4つのパターンの床構造における、根太6、6の間および際根太7と該際根太7に隣接する根太6の間に、容易に挿入することのできる合成樹脂発泡体製の床用断熱材10を提供するものである。
【0035】
なお、Y、Dが同じ場合、M2=455mmの標準モジュールでは表2に示す寸法となる。表2からわかるように、Z1、Z2(mm)の数値は、M1=303mmの標準モジュールの場合と同じとなる。したがって、以下の説明では、M1=303mmの標準モジュールの場合の数値を例として採用して説明するが、M2-=455mmの標準モジュールにおいて本発明を実施する場合には、関係する数値を読み替えることで、そのまま実施することができる。
【0036】
【表2】

【0037】
図4は、本発明による合成樹脂発泡体製の床用断熱材の一例を断面で示している。床用断熱材10は、基本的形態として、平板状で矩形形状をなす中央部分10aと、該中央部分の長手方向の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝S1、S2を介して斜め下方に傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みを持ちかつほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分10b、10cとを備える。そして、前記各側方部分10b、10cの長手方向に沿った側方端面11、12は、その上縁11a、12aがその下縁11b、12bよりも外方に位置する傾斜面とされており、さらに前記双方の側方端面11、12の下縁11b、12b間の距離P1は前記隣接する根太間の距離Taよりやや狭く、また、上縁11a、12a間の距離P2は前記隣接する根太間の距離Taよりも広くされている。床用断熱材10の厚みは根太6の高さとほぼ同じである。
【0038】
床用断熱材10の素材としての合成樹脂発泡体は、柔軟性を有し圧縮可能であり、反発弾性を有していて根太間に圧挿した場合に根太に断熱材の端部が密着する性質を有するものであるのが好ましい。具体的には、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂を、押出発泡成形あるいはビーズ発泡成形によって成形したものが好ましい。
【0039】
前記したように、床用断熱材10の厚みは、床構造での根太6の高さとほぼ同じである。もし、厚みが根太6の高さよりも薄い場合には、適宜の脚を底面に形成することで、根太上面と断熱材上面とを一致させることが好ましい。上記の構成を備えた床用断熱材10を床構造に取り付けるときに、根太一般部においては、そのままの形で根太6、6間に挿入される。際根太7とそれに隣接する根太6との間である際根太間においては、前記第1の側方部分10bまたは第2の側方部分10cのいずれか一方を施工現場で分離除去した後の部分断熱材10sが挿入される。以下、その具体例をさらに詳細に説明する。
【0040】
図5(a)は、床用断熱材10の一つの具体例における短手方向の断面を、実際の数値も入れて示している。この例において、中央部分10aの上面幅および下面幅はともに110.5mm、第1の側方部分10bの上面幅72.5mm、下面幅76.7mm、第2の側方部分10cの上面幅65.0mm、下面幅69.2mmであり、すべての厚みは40mmである。すべての下面の適所に5mmの脚13が適数形成されている。第1の側方部分10bと第2の側方部分10cは下方に向けて傾斜した姿勢とされており、第1の側方部分10bと中央部分10aとの間にはV字状の割溝S1が、また、中央部分10aと第2の側方部分10cとの間にはV字状の割溝S2が形成され、割溝S1および割溝S2の上端開口幅Wはともに17.2mmとされている。具体的には、第1の割溝S1は、中央部分10aの一方の側面と第1の側方部分10bの対向する側面によって形成され、また、第2の割溝S2は、中央部分10aの他方の側面と第2の側方部分10cの対向する側面によって形成されている。
【0041】
この姿勢にあるときの前記側方端面11、12の下縁11b、12b間の距離P1は、71.9mm+110.5mm+64.5mm=246.9mmであって、前記選択1〜4でのTa値の狭い方の値258mmよりも狭い。また、側方端面11、12の上縁11a、12a間の距離P2は、69mm+17.2mm+110.5mm+17.4mm+61.8mm=275.9mmであって、前記選択1〜4でのTa値の広い方の値263mmよりも広い。したがって、選択1〜4のいずれの組み合わせであっても、床用断熱材10は、図5(a)に示されるそのままの姿勢で隣接する根太6、6の間に容易に入り込むことができ、その後、押し下げて底面が大引5に接触して平板状の姿勢とされたときに、選択1と選択3の場合には、図5(b)に示すように、側方端面11、12のほぼ全面を左右の根太6、6に密接させ、かつV字状の割溝Sの上端幅をほぼ7.5mmにまで狭めた状態で根太間に挿入される。また、選択2と選択4の場合には、図5(c)に示すように、側方端面11、12のほぼ全面を左右の根太6、6に密接させ、かつV字状の割溝Sの上端幅をほぼ5mmにまで狭めた状態で根太間に挿入される。いずれの場合も、根太6、6間の断熱性はしっかりと確保される。
【0042】
次に、際根太7と該際根太7に隣接する根太間に、床用断熱材10を挿入する場合を説明する。最初に、土台2として横幅Y1=105mmを用いる場合を説明する。この場合、根太6および際根太7として横幅D1=40mmを用いる場合(前記選択1)には際根太7と根太6の間隔Tb=190.5mm、根太6および際根太7として横幅D2=45mmを用いる場合(前記選択2)には際根太7と根太6の間隔Tb=183.0mmとなる。それで、選択1および選択2の場合には、図5(a)に示した断熱材10から第2の側方部分10cを第2の割溝S2を利用して分離除去した後の第1部分断熱材10s1を用いる。
【0043】
図5(d)は第1部分断熱材10s1を示しており、その下方側の横幅は182.4mmであって、Tb値の狭い方の値183.0mmより狭い。また、上方側の横幅は196.8mmであって、Tb値の広い方の値190.5mmより広い。したがって、第1部分断熱材10s1は、選択1および選択2のいずれにおいても、図5(d)に示されるそのままの姿勢で際根太7と該際根太7に隣接する根太6の間に容易に入り込むことができる。その後、押し下げて底面が大引5に接触して平板状の姿勢とされたときに、第1の側方部分10bの側方端面11を際根太7の側面に、また中央部分10aの右方側面を根太6の側面にほぼ密接させた姿勢で、際根太7と根太6の間に挿入される。そのときに、前記選択1の場合は、図5(e)に示すように、V字状の第1の割溝S1の上端幅をほぼ7.5mmにまで狭められた状態となり、選択2の場合には、図5(f)に示すように、第1の割溝S1の上端幅が0、すなわち、第1の側方部分10bの右方側面と中央部分10aの左方側面とが密着した状態となる。図6(a)には、選択1での、根太間一般部および際根太と根太との間における断熱材10および第1部分断熱材10s1の状態が、また、図6(b)には、選択2での、根太間一般部および際根太と根太との間における断熱材10および第1部分断熱材10s1の状態が、それぞれ示されている。
【0044】
次に、土台2として横幅Y2=120mmを用いる場合を説明する。この場合、根太6および際根太7として横幅D1=40mmを用いる場合(前記選択3)には際根太7と根太6の間隔Tb=183.0mm、根太6および際根太7として横幅D2=45mmを用いる場合(前記選択4)には際根太7と根太6の間隔Tb=175.5mmとなる。それで、選択3および選択4の場合には、図5(a)に示した断熱材10から第1の側方部分10bを第1の割溝S1を利用して分離除去した後の第2部分断熱材10s2を用いる。
【0045】
図5(g)は第2部分断熱材10s2を示しており、その下方側の横幅は175.0mmであって、Tb値の狭い方の値175.5mmより狭い。また、上方側の横幅は189.7mmであって、Tb値の広い方の値183.0mmより広い。したがって、第2部分断熱材10s2は、選択3および選択4のいずれにおいても、図5(g)に示されるそのままの姿勢で際根太7と該際根太7に隣接する根太6の間に容易に入り込むことができる。その後、押し下げて底面が大引5に接触して平板状の姿勢とされたときに、第2の側方部分10cの側方端面12を際根太7の側面に、また中央部分10aの左方側面を根太6の側面にほぼ密接させた姿勢で、際根太7と根太6の間に挿入される。そのときに、前記選択3の場合は、図5(h)に示すように、V字状の第2の割溝S2の上端幅をほぼ7.5mmにまで狭められた状態となり、選択4の場合には、図5(i)に示すように、第2の割溝S2の上端幅が0、すなわち、第2の側方部分10cの左方側面と中央部分10aの右方側面とが密着した状態となる。図6(c)には、選択3での、根太間一般部および際根太と根太との間における断熱材10および第2部分断熱材10s2の状態が、また、図6(d)には、選択4での、根太間一般部および際根太と根太との間における断熱材10および第2部分断熱材10s2の状態が、それぞれ示されている。
【0046】
次に、第2の床用断熱材10Xについて図7を参照して説明する。上記した床用断熱材10が前記選択1〜4の4つの態様に共用できるものであったのに対して、第2の床用断熱材10Xは、根太6(際根太7)の横幅Dは同じであり、土台2の横幅の横幅YがY1とY2の2種類である2つの態様の床構造に共用できるようにしたものである。以下に、第2の床用断熱材10Xの具体例を、前記表1に示した選択1と選択3の態様に共用できるものを例にとって説明する。
【0047】
第2の床用断熱材10Xの基本的な形状は、上記した床用断熱材10と同じであり、同じ部材には同じ符号を付し、説明は省略する。図7(a)に示す床用断熱材10Xにおいて、中央部分10aの上面幅および下面幅はともに110.5mm、第1の側方部分10bの上面幅78.0mm、下面幅78.4mm、第2の側方部分10cの上面幅70.5mm、下面幅71.0mmである。すべての厚みは40mmであり、下面の適所に5mmの脚13が適数形成されている。また、前記した第1の割溝S1および第2の割溝S2上端開口幅Wはともに5.0mmとされている。
【0048】
この姿勢にあるときの側方端面11、12の下縁11b、12b間の距離P1は、78.1mm+110.5mm+70.7mm=259.3mmであって、前記選択1、3でのTa値263mmよりも狭い。また、側方端面11、12の上縁11a、12a間の距離P2は、82.7mm+110.5mm+75.2mm=268.4mmであって、前記選択1、3でのTa値263mmよりも広い。したがって、選択1、3のいずれであっても、床用断熱材10Xは、図7(a)に示されるそのままの姿勢で隣接する根太6、6の間に容易に入り込むことができ、その後、押し下げて底面が大引5に接触して平板状の姿勢とされたときに、図7(b)に示すように、側方端面11、12のほぼ全面を左右の根太6、6に密接させ、かつV字状の割溝S1、S2の上端幅をほぼ2.0mmにまで狭めた状態で根太間に挿入される。その姿勢で、前記Z1は72.5mm、すなわち土台の横幅Y1=105mmと根太の横幅D=40mmの和のほぼ半分の距離であり、前記Z2は80.0mm、すなわち土台の横幅Y2=120mmと根太の横幅D=40mmの和のほぼ半分の距離である。そして、根太6、6間の断熱性はしっかりと確保される。
【0049】
次に、際根太7と該際根太7に隣接する根太間に床用断熱材10Xを挿入する場合を説明する。最初に、土台2として横幅Y1=105mmを用いる場合を説明する(前記選択1)。この場合、際根太7と根太6の間隔Tb=190.5mmとなるので、選択1の場合には、図7(a)に示した断熱材10Xから第2の側方部分10cを第2の割溝S2を利用して分離除去した後の第1部分断熱材10Xs1を用いる。図7(c)は前記第1部分断熱材10Xs1を示しており、その下方側の横幅は188.2mmであって、Tb値190.5mmより狭い。また、上方側の横幅は193.2mmであって、Tb値190.5mmより広い。したがって、第1部分断熱材10Xs1は、選択1において、図7(c)に示されるそのままの姿勢で際根太7と該際根太7に隣接する根太6の間に容易に入り込むことができる。その後、押し下げて底面が大引5に接触して平板状の姿勢とされたときに、第1の側方部分10bの側方端面11を際根太7の側面に、また中央部分10aの右方側面を根太6の側面にほぼ密接させた姿勢で、際根太7と根太6の間に挿入される。そのときに、図7(d)に示すように、V字状の第1の割溝S1の上端幅をほぼ2.0mmにまで狭められた状態となる。
【0050】
次に、前記床用断熱材10Xを、土台2として横幅Y2=120mmを用いる場合を説明する(前記選択3)。この場合、際根太7と根太6の間隔Tb=183.0mmとなる。それで、選択3の場合には、図7(a)に示した断熱材10Xから第1の側方部分10bを第1の割溝S1を利用して分離除去した後の第2部分断熱材10Xs2を用いる。図7(e)は前記第2部分断熱材10Xs2を示しており、その下方側の横幅は180.7mmであって、Tb値183.0mmより狭い。また、上方側の横幅は185.7mmであって、Tb値180.0mmより広い。したがって、第2部分断熱材10Xs2は、選択3において、図7(e)に示されるそのままの姿勢で際根太7と該際根太7に隣接する根太6の間に容易に入り込むことができる。その後、押し下げて底面が大引5に接触して平板状の姿勢とされたときに、第2の側方部分10cの側方端面12を際根太7の側面に、また中央部分10aの右方側面を根太6の側面にほぼ密接させた姿勢で、際根太7と根太6の間に挿入される。そのときに、図7(f)に示すように、V字状の第1の割溝S1の上端幅をほぼ2.0mmにまで狭められた状態となる。
【0051】
なお、上記では、根太6(際根太7)の横幅Dが、D1=40mmの場合を説明したが、D2=45mmの場合、すなわち、表1での前記選択2と選択4の2態様(土台横幅YがY1=105とY2=120のいずれかで、根太の横幅Dはともに45mmの場合)に共用できる床用断熱材10Xにおいても、それに合わせて前記Z1=75.0mm、Z2=82.5mmとなるように、また、全体の横幅をTa=258mmとなるように調整することで、同様に所期の目的を達成することができる床用断熱材10Xがえられる。図8は、その場合での床用断熱材10Xを示しており、図8(a)〜図8(f)は、具体的な寸法は異なっているが、それぞれ図7(a)〜図7(f)に相当している。図8についての詳細な説明は省略する。
【0052】
また、第2の床用断熱材10Xにおいて、割溝S1、S2は、根太6、6間あるいは際根太7と根太6間に床用断熱材10Xを挿入するときに、第1と第2の側方部分10b、10cが前記上縁間の距離P2と下縁間の距離P1の差分だけ回動することができるように設けられるものである。したがって、割溝S1、S2の上端側の距離はより狭いものでよく、その場合に、断熱性が破壊される可能性を極力小さくすることができる利点がある。もちろん、前記上縁間の距離P2と下縁間の距離P1の差分(図示の例では、9.1mm)よりも少し(2〜3mm程度)広くしておくことで、際根太を含む根太設置の施工後差にも対応可能となる。
【0053】
本発明による第3の床用断熱材は、土台2の横幅が一定値Yであり、根太6(際根太7)の横幅D(<Y)がD1およびD2(>D1)と異なる2つの態様の床構造に共用できる床用断熱材である。図示しないが、第3の床用断熱材の全体形状は、実質的に上記した床用断熱材10Xと同じである。ただ、前記第1の割溝S1の中央部分10a側の位置が、床用断熱材10Xを平板状の姿勢とした状態で第1の側方部分10bの側方端面11から土台の横幅Yと根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、また、第2の割溝S2の中央部分10a側の位置が、床用断熱材10Xを平板状の姿勢とした状態で第2の側方部分10cの側方端面12から土台の横幅Yと根太の横幅D2との和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされている出でのみ相違する。使用態様等は床用断熱材10Xと同じであり、説明は省略する。
【0054】
図9は、本発明による床用断熱材ユニットの一例を示す。床用断熱材ユニット50は、上記した床用断熱材10または床用断熱材10Xの複数個が幅方向に平行に、所要の間隔を置いて配置されており、各床用断熱材10(10X)の一部、好ましくは前記中央部分10aの個所が、可能性を有する帯状部材20によって互いに接合されている構成を備える。この形態の床用断熱材ユニット50は、複数個の床用断熱材10(10X)の取り扱いが容易となることに加え、不用意に一部の床用断熱材10(10X)が落下してしまうのを防止することができる。施工時に、いずれか一方の側方部分10b、10cを分離する作業が必要となるが、側方部分10b、10cは帯状部材20には接着一体化していないので、分離作業は支障なく行うことができる。
【0055】
図10は、前記V字状の割溝S2の溝底部形状のいくつかの例を示している。なお、図示の都合から、割溝S2について説明するが、割溝S1についても同様である。いずれの場合も、割溝S2の中央部分10a側の側面Sa、すなわち、図で中央部分10aの左側側面Saは垂直面とされ、他方の側面Sb、すなわち第2の側方部分10cの図で左側側面Sbは傾斜面とされている。また、割溝S2の底部Scは、分離作業が容易に行えるように、床用断熱材10(10X)の底面近傍まで達している。底部Scは、図10(a)に示す例では右上がりの傾斜面であり、図10(b)に示す例では水平面であり、図10(c)に示す例ではほぼ円弧状となっている。発泡樹脂の種類や全体の形状と寸法に応じて、分離面ができるだけ平坦な面となるように底部Scの形状を選定することが望ましい。
【符号の説明】
【0056】
2…土台、
5…大引、
6…根太、
7…際根太、
10、10X…合成樹脂発泡体製の床用断熱材、
10a…床用断熱材の中央部分、
10b…床用断熱材の第1の側方部分、
10c…床用断熱材の第2の側方部分、
10s(10s1、10s2)…部分断熱材、
11…第1の側方部分の側方端面、
12…第2の側方部分の側方端面、
P1…床用断熱材における2つの側方部分の下縁間の距離、
P2…床用断熱材における2つの側方部分の上縁間の距離、
S1…V字状をなす第1の割溝、
S2…V字状をなす第2の割溝、
W…割溝の開口幅、
Y(Y1、Y2)…土台の横幅、
D(D1、D2)…根太の横幅、
Ta…根太間の距離、
Tb…際根太と根太との間の距離、
Z1…土台の横幅Y1と根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離、
Z2…土台の横幅Y2と根太の横幅D2の和のほぼ半分の距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して平行に位置する2本の土台におけるそれぞれの幅方向中心間の距離を等間隔に区分する位置に適数の根太が取り付けられ、各土台に接する位置には前記根太と同寸法の際根太が取り付けられている構造を備えた床構造を断熱するために前記際根太と該際根太に隣接する根太の間および隣接する根太同士の間に挿入するのに用いられる合成樹脂発泡体製の床用断熱材であって、
前記床用断熱材は、土台の横幅YがY1およびY2(>Y1)、根太および際根太の横幅D(<Y)がD1およびD2(>D1)である異なる4つの態様の前記床構造で用いることが予定されているものであり、
前記床用断熱材は、平板状で矩形形状をなす中央部分と、該中央部分の長手方向の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝を介して斜め下方に傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みを持ちかつほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分とを有し、
前記各側方部分の長手方向に沿った側方端面は、その上縁がその下縁よりも外方に位置する傾斜面とされかつ前記双方の側方端面の下縁間の距離は前記隣接する根太間の距離よりやや狭く、上縁間の距離は前記隣接する根太間の距離よりも広くされており、
前記第1の割溝の前記中央部分側の位置は、床用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分の側方端面から前記土台の横幅Y1と根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、
前記第2の割溝の前記中央部分側の位置は、床用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分の側方端面から前記土台の横幅Y2と根太の横幅D2との和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、
前記第1の割溝と第2の割溝の上端の開口幅は1.5(D2−D1)以上の距離とされていることを特徴とする床用断熱材。
【請求項2】
対向して平行に位置する2本の土台におけるそれぞれの幅方向中心間の距離を等間隔に区分する位置に適数の根太が取り付けられ、各土台に接する位置には前記根太と同寸法の際根太が取り付けられている構造を備えた床構造を断熱するために前記際根太と該際根太に隣接する根太の間および隣接する根太同士の間に挿入するのに用いられる合成樹脂発泡体製の床用断熱材10であって、
前記床用断熱材は、土台の横幅YがY1およびY2(>Y1)、根太および際根太の横幅がD(<Y)である異なる2つの態様の前記床構造で用いることが予定されているものであり、
前記床用断熱材は、平板状で矩形形状をなす中央部分と、該中央部分の長手方向の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝を介して斜め下方に傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みを持ちかつほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分とを有し、
前記各側方部分の長手方向に沿った側方端面は、その上縁がその下縁よりも外方に位置する傾斜面とされかつ前記双方の側方端面の下縁間の距離は前記隣接する根太間の距離よりやや狭く、上縁間の距離は前記隣接する根太間の距離よりも広くされており、
前記第1の割溝の前記中央部分側の位置は、床用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分の側方端面から前記土台の横幅Y1と根太の横幅Dの和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、
前記第2の割溝の前記中央部分側の位置は、床用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分の側方端面から前記土台の横幅Y2と根太の横幅Dとの和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、
前記第1の割溝と第2の割溝の上端の開口幅は、少なくとも前記双方の側方部分の側方端面の上縁間の距離と下縁間の距離の差に等しいかよりも広い距離とされていることを特徴とする床用断熱材。
【請求項3】
対向して平行に位置する2本の土台におけるそれぞれの幅方向中心間の距離を等間隔に区分する位置に適数の根太が取り付けられ、各土台に接する位置には前記根太と同寸法の際根太が取り付けられている構造を備えた床構造を断熱するために前記際根太と該際根太に隣接する根太の間および隣接する根太同士の間に挿入するのに用いられる合成樹脂発泡体製の床用断熱材であって、
前記床用断熱材は、土台の横幅がY、根太および際根太の横幅D(<Y)がD1およびD2(>D1)であるである異なる2つの態様の前記床構造で用いることが予定されているものであり、
前記床用断熱材は、平板状で矩形形状をなす中央部分と、該中央部分の長手方向の一方および他方の側辺側からほぼV字状をなす第1および第2の割溝を介して斜め下方に傾斜した該中央部分と実質的に同じ厚みを持ちかつほぼ矩形形状をなす第1および第2の側方部分とを有し、
前記各側方部分の長手方向に沿った側方端面は、その上縁がその下縁よりも外方に位置する傾斜面とされかつ前記双方の側方端面の下縁間の距離は前記隣接する根太間の距離よりやや狭く、上縁間の距離は前記隣接する根太間の距離よりも広くされており、
前記第1の割溝の前記中央部分側の位置は、床用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第1の側方部分の側方端面から前記土台の横幅Yと根太の横幅D1の和のほぼ半分の距離Z1だけ内側に入った位置とされており、
前記第2の割溝の前記中央部分側の位置は、床用断熱材を平板状の姿勢とした状態で前記第2の側方部分の側方端面から前記土台の横幅Yと根太の横幅D2との和のほぼ半分の距離Z2だけ内側に入った位置とされており、
前記第1の割溝と第2の割溝の上端の開口幅は、少なくとも前記双方の側方部分の側方端面の上縁間の距離と下縁間の距離の差に等しいかよりも広い距離とされていることを特徴とする床用断熱材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の床用断熱材の複数枚が幅方向に間隔を置いて配置されており、隣接する該床用断熱材の群は可撓性を有する帯材によって互いに連接されていることを特徴とする床用断熱材ユニット。
【請求項5】
各床用断熱材は、前記中央部分の領域において前記帯材と一体に接合していることを特徴とする請求項4に記載の床用断熱材ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載された床用断熱材または請求項4または5に記載の床用断熱材ユニットを用いた床断熱構造であって、床構造は、対向して平行に位置する2本の土台におけるそれぞれの幅方向中心間の距離を等間隔に区分する位置に適数の根太が取り付けられ、各土台に接する位置には前記根太と同寸法の際根太が取り付けられている構造を備えた床構造であり、その床構造における前記際根太と該際根太に隣接する根太の間には、前記床用断熱材から第1の側方部分または第2の側方部分のいずれか一方を前記割溝の部分から除去した後の床用断熱材が挿入されており、隣接する根太同士の間には、前記床用断熱材がそのまま挿入されている構造を少なくとも備えることを特徴とする床断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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