説明

床蓋付き開口部用安全柵

【課題】 作業性が良好で且つ製作が容易な床蓋付き開口部用安全柵を提供することである。
【解決手段】 本発明の床蓋付き開口部用安全柵は、開口部の四辺を囲むようにそれぞれ配置された安全柵構造体を備え、各安全柵構造体が、複数の支柱と、開口部の周囲の各支柱の下端付近にそれぞれ固定されたブラケットと、各ブラケットに設けられた孔に通され、一端が一方の端の支柱の下端に固定され、他端が他方の端の支柱の下端に固定されたロッドとを有し、各支柱が、ロッドの長さ方向軸線を中心として回転するようになっており、各安全柵構造体には、支柱を倒すとロッドに捩じりが付与されるように構成された捩じり付与機構が配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、床蓋付き開口部用安全柵に関する。より詳細には、本発明は、作業性が良好で且つ製作が容易な床蓋付き開口部用安全柵に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設等の多層階建造物においては、各階の床に機器の搬入・搬出用の開口部が設けられている。このような開口部は通常、複数枚の床蓋によって閉鎖され、通路として有効利用されている。また、このような開口部は、躓きを防止すべく、床面と均一になるように設置されており、通常は手摺などの安全設備を必要としない。
【0003】
一方、開口部を使用して機器の搬入・搬出を行う場合には、複数類に分割された床蓋を2名の作業員で1枚ずつ取り外さなければならないが、このような際に、作業員が開口部から墜落したり床蓋などを落下させたりするおそれがあり、非常に危険な作業となるため、床蓋を取り外す前に開口部の周囲に手摺等を設置する方法が一般的である。しかし、このような方法は、手摺の外側から手を延ばす不自然な作業となる、床蓋を手摺りの外側に出さなければならず床蓋を開口部から落下させるおそれがある、手摺等の安全設備の搬入・搬出や組立・解体作業を必要とするので作業が非効率である、等の種々の不都合があるため、開口部を養生するための種々の方法が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、端部を平坦にした棒材を横桟のスリットに対して嵌めるようにし、棒材の端部がスリットに内向きに設けられた対向挟持片によって挟持され横桟に保持されるようになった安全柵が開示されている。また、特許文献2には、ハッチの広さを有効に利用でき、天井の低い場所における機器類の搬入・搬出を可能にし、ハッチ内への作業者の立入りを可能にし、狭いハッチにおいても十分な高さを有するハッチ安全柵が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−193705号公報
【特許文献2】特開平9−256658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された安全柵では、作業の都度、手摺の組立・解体を行う必要があるため、作業に手間がかかり非常に非効率的であるという課題がある。また、特許文献2に記載された安全柵では、既存施設を改造する場合には、床面開口部周囲の梁構造体をはつる必要性があるため、建築構造物の強度不足を招来するという課題がある。このように、従来の開口部用安全柵には、満足すべきものが見当たらないのが現状である。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みて案出されたものであって、作業性が良好で且つ製作が容易な床蓋付き開口部用安全柵を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の床蓋付き開口部用安全柵は、前記開口部の四辺を囲むようにそれぞれ配置された安全柵構造体を備え、各安全柵構造体が、複数の支柱と、前記開口部の周囲の各支柱の下端付近にそれぞれ固定されたブラケットと、前記各ブラケットに設けられた孔に通され、一端が一方の端の支柱の下端に固定され、他端が他方の端の支柱の下端に固定されたロッドとを有し、各支柱が、前記ロッドの長さ方向軸線を中心として回転するようになっており、各安全柵構造体には、前記支柱を倒すと前記ロッドに捩じりが付与されるように構成された捩じり付与機構が配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項2に記載の床蓋付き開口部用安全柵は、前記請求項1の安全柵において、前記捩じり付与機構が、前記支柱の直立状態において前記ブラケットのいずれかと前記ロッドの所定箇所とが一体化され、これにより前記支柱を倒すと前記ロッドに捩じりが付与されるように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、既存の床蓋付き開口部設備において床蓋箇所に安全柵が提供されるので、作業時に作業員や床蓋の墜落・落下などの被害を防止することができる。また、発明の床蓋付き開口部用安全柵は、新設の設備においても使用することができる。また、本発明の安全柵では、捩じり付与機構が配置されているので、安全柵を容易に直立状態にすることができ、迅速な作業の実施が可能になる。さらに、本発明の安全柵は、構造が簡単であるため製作が容易であり、安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係る床蓋付き開口部用安全柵について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係る床蓋付き開口部用安全柵が直立している状態を示した斜視図である。図1において全体として参照符号10で示される床蓋付き開口部用安全柵は、矩形の開口部の四辺を囲むように配置された第1安全柵構造体12a、第2安全柵構造体12b、第3安全柵構造体12cおよび第4安全柵構造体12dとを有している。対向する第1および第2安全柵構造体12a、12bは実質的に同一の構造を有しており、対向する第3および第4安全柵構造体12c、12dは実質的に同一の構造を有している。
【0012】
まず、主として図2および図3を参照して、第1安全柵構造体12aについて説明する。第1安全柵構造体12aは、第1支柱14と、第2支柱16と、床Fの開口部の周囲の一辺の第1支柱14の下端付近に固定された第1ブラケット18と、床Fの開口部の周囲の一辺の第2支柱16の下端付近に固定された第2ブラケット20とを備えている。
【0013】
第1ブラケット18は、平面視でT形の形状を有している。すなわち、第1ブラケット18は、矩形のプレート状の第1部分18aと、第1部分18aのほぼ中央において第1部分18aに対してほぼ直交するように配置された第2部分18bとを有している。第1部分18aには、第1ブラケット18を開口部の周囲に固定する際に用いるボルト用孔18a1が設けられている。また、第2部分18bには、後述するロッドを通すための円形の孔18b1が設けられている。
【0014】
第2ブラケット20も、第1ブラケット18と同様に、平面視でT形の形状を有している。すなわち、第2ブラケット20は、矩形のプレート状の第1部分20aと、第1部分20aのほぼ中央において第1部分20aに対してほぼ直交するように配置された第2部分20bとを有している。第1部分20aには、第2ブラケット20を開口部の周囲に固定する際に用いるボルト用孔20a1が設けられている。また、第2部分20bには、後述するロッドを通すための円形の孔20b1が設けられている。
【0015】
第1安全柵構造体12aは又、第1ブラケット18の第2部分18bの孔18b1および第2ブラケット20の第2部分20bの孔20b1に通され、一端が第1支柱14の下端に固定され、他端が第2支柱16の下端に固定されたロッド22を備えている。ロッド22は矩形の横断面を有し、ロッド22が通される孔18b1および孔20b1はロッド22の横断面の対角線よりも僅かに大きな直径を有しており、これにより、第1支柱14および第2支柱16は、ロッド22の長さ方向軸線を中心として回転するようになっている。
【0016】
第1安全柵構造体12aは更に、ロッド22に捩じりを付与するための捩じり付与機構24を備えている。捩じり付与機構24は、ロッド22の第2ブラケット20に隣接する箇所に取り付けられた調整金具24aと、第2ブラケット20の第2部分20bに弧状をなすように設けられた一連の孔24b1,24b2,24b3,24b4,24b5とを有している。調整金具24aは、図4に最も良く示されるように、ロッド22の横断面寸法とほぼ同じ大きさをもつリング24a1と、リング24a1の周縁部の一部に設けられたタグ24a2と、タグ24a2に設けられた孔24a3とを有している。いま、図3において一点鎖線で示されるように、ボルト26が孔24a3と孔24b1に通され、調整金具24aと第2ブラケット20の第2部分20bが一体化しているものとする。すると、図3に示されるような第1および第2支柱14、16が直立している状態では、ロッド22に捩じりが付与されていないが、第1および第2支柱14、16を倒すと、ロッド22は第1ブラケット18の箇所で回転する一方、第2ブラケット20の箇所で固定されているため、捩じりが付与されることになる。したがって、第1および第2支柱14、16を一旦倒した後、手を離すと、捩じられているロッド22が元に戻ろうとする力により、第1および第2支柱14、16が容易に直立状態になろうとする。
【0017】
なお、孔24b1以外の孔24b2,24b3,24b4,24b5のいずれかにボルト26を通すことにより、ロッド22に付与される捩じりの大きさが変えられるので、第1および第2支柱14、16が直立状態になろうとする際の復元力を調整することができる。
【0018】
第2安全柵構造体12bにも、第1安全柵構造体12aと同様に、捩じり付与機構が設けられている。
【0019】
次に、第3安全柵構造体12cについて説明する。第3安全柵構造体12cは、支柱の本数が3本である点を除いて、第1安全柵構造体12aと実質的に同一の構成を有している。主として図5および図6を参照して、より詳細に説明すると、第3安全柵構造体12cは、第3支柱30と、第4支柱32と、第3支柱30と第4支柱32との間に位置する第5支柱34と、床Fの開口部の周囲の一辺の第3支柱30の下端付近固定された第3ブラケット36と、床Fの開口部の周囲の一辺の第4支柱32の下端付近固定された第4ブラケット38と、床Fの開口部の周囲の一辺の第5支柱34の下端付近固定された第5ブラケット40とを備えている。
【0020】
第3ブラケット36および第4ブラケット38は、平面視でT形の形状を有している。すなわち、第3ブラケット36は、矩形のプレート状の第1部分36aと、第1部分36aのほぼ中央において第1部分36aに対してほぼ直交するように配置された第2部分36bとを有している。第1部分36aには、第1ブラケット36を開口部の周囲に固定する際に用いるボルト用孔36a1が設けられている。第2部分36bには、後述するロッドを通すための円形の孔36b1が設けられている。また、第4ブラケット38は、矩形のプレート状の第1部分38aと、第1部分38aのほぼ中央において第1部分38aに対してほぼ直交するように配置された第2部分38bとを有している。第1部分38aには、第1ブラケット38を開口部の周囲に固定する際に用いるボルト用孔38a1が設けられている。第2部分38bには、ロッドを通すための円形の孔38b1が設けられている。
【0021】
第5ブラケット40は、平面視でπ形の形状を有している。すなわち、第5ブラケット40は、矩形のプレート状の第1部分40aと、第1部分40aに対してほぼ直交するように配置された第2部分40bおよび第3部分40cとを有している。第1部分40aには、第5ブラケット40を開口部の周囲に固定する際に用いるボルト用孔40a1が設けられている。また、第2部分40bおよび第3部分40cには、ロッドを通すための円形の孔40b1、40c1がそれぞれ設けられている。
【0022】
第3安全柵構造体12cは又、第3ブラケット36の第2部分36bの孔36b1、第4ブラケット38の第2部分38bの孔38b1および第5ブラケット40の第2部分40bの孔40b1、第3部分40cの孔40c1に通され、一端が第3支柱30の下端に固定され、他端が第4支柱32の下端に固定されたロッド42を備えている。ロッド42は矩形の横断面を有し、ロッド42が通される孔36b1、孔38b1、孔40b1および孔40c1はロッド22の横断面の対角線よりも僅かに大きな直径を有しており、これにより、第3支柱30、第4支柱32および第5支柱34は、ロッド42の長さ方向軸線を中心として回転するようになっている。
【0023】
第3安全柵構造体12cは更に、ロッド42に捩じりを付与するための捩じり付与機構44を備えている。捩じり付与機構44は、ロッド42の第5ブラケット40に隣接する箇所に取り付けられた調整金具44aと、第5ブラケット40の第2部分40bに弧状をなすように設けられた一連の孔44b1,44b2,44b3,44b4,44b5とを有している。調整金具44aは、ロッド42の横断面寸法とほぼ同じ大きさをもつリング44a1と、リング44a1の周縁部の一部に設けられたタグ44a2と、タグ44a2に設けられた孔44a3とを有している。いま、ボルト46が孔44a3と孔44b1に通され、調整金具44aと第5ブラケット40の第2部分40bが一体化しているものとする。すると、第3、第4および第5支柱30、32、34が直立している状態では、ロッド42に捩じりが付与されていないが、第3、第4および第5支柱30、32、34を倒すと、ロッド42は第3ブラケット36および第4ブラケット38の箇所で回転する一方、第5ブラケット40の箇所で固定されているため、捩じりが付与されることになる。したがって、第3、第4および第5支柱30、32、34を一旦倒した後、手を離すと、第1安全柵構造体12aと同様に、捩じられているロッド42が元に戻ろうとする力により、第3、第4および第5支柱30、32、34が容易に直立状態になろうとする。
【0024】
なお、第1安全柵構造体12aにおいても、第3安全柵構造体12cにおいても、各支柱は、水平部材で互いに連結されている。
【0025】
次に、以上にように構成された床蓋付き開口部用安全柵がどのように使用されるかについて説明する。図7は、床蓋付き開口部用安全柵10の使用に関する一連の動作を示した図である。図7(a)は、床蓋付き開口部用安全柵10が倒されている状態を示した図である。床蓋を取り外そうとする場合には、まず、第3安全柵構造体12cを直立状態にし(図7(b)参照)、次いで、第4安全柵構造体12dを直立状態にし(図7(c)参照)、次いで、第1安全柵構造体12aを直立状態にし(図7(d)参照)、最後に、第2安全柵構造体12bを直立状態にする(図7(e)参照)。しかる後、床蓋を取り外す。取り外した床蓋を取り付ける場合には、上述の手順と逆の手順で作業を行う。
【0026】
なお、各安全柵構造体12a〜12dを倒した状態において各安全柵構造体がほぼ水平になるように、図8に示されるように、各安全柵構造体の取り付け高さをずらして配置するのが好ましい。
【0027】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0028】
例えば、前記実施の形態では、矩形のロッドの横断面寸法とほぼ同じ大きさをもつリングと、リングの周縁部の一部に設けられたタグと、タグに設けられた孔とを有する調整金具を配置し、タグの孔とブラケットの孔にボルトを通すことによって、調整金具とブラケットが一体化するようになっているが、支柱を倒すとロッドに捩じりが付与され、捩じられているロッドが元に戻ろうとする力により、支柱が容易に直立状態になろうとするようになっているものであれば、捩じり付与機構を他の構成にしてもよい。また、ブラケットの形状を前記実施の形態に示したものと異なる形状にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る床蓋付き開口部用安全柵が直立している状態を示した斜視図である。
【図2】第1安全柵構造体が配置されている状態を示した斜視図である。
【図3】図2の部分拡大斜視図である。
【図4】捩じり付与機構の調整金具を示した拡大斜視図である。
【図5】第3安全柵構造体が配置されている状態を示した斜視図である。
【図6】図5の部分拡大斜視図である。
【図7】床蓋付き開口部用安全柵の使用に関する一連の動作を示した図である。
【図8】各安全柵構造体の取り付け高さの一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0030】
10 床蓋付き開口部用安全柵
12a、12b、12c、12d 安全柵構造体
14、16、30、32、34 支柱
18、20、36、38、40 ブラケット
22、42 ロッド
24、44 捩じり付与機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床蓋付き開口部用安全柵であって、
前記開口部の四辺を囲むようにそれぞれ配置された安全柵構造体を備え、
各安全柵構造体が、複数の支柱と、前記開口部の周囲の各支柱の下端付近にそれぞれ固定されたブラケットと、前記各ブラケットに設けられた孔に通され、一端が一方の端の支柱の下端に固定され、他端が他方の端の支柱の下端に固定されたロッドとを有し、
各支柱が、前記ロッドの長さ方向軸線を中心として回転するようになっており、
各安全柵構造体には、前記支柱を倒すと前記ロッドに捩じりが付与されるように構成された捩じり付与機構が配置されていることを特徴とする安全柵。
【請求項2】
前記捩じり付与機構が、前記支柱の直立状態において前記ブラケットのいずれかと前記ロッドの所定箇所とが一体化され、これにより前記支柱を倒すと前記ロッドに捩じりが付与されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の安全柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−57145(P2008−57145A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232933(P2006−232933)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(506295148)株式会社道央機工 (1)
【Fターム(参考)】