説明

床面用紫外線硬化型塗料施工装置

【課題】塗装するユニットと、乾燥・硬化させるユニットとを一体化し、これら2つの工程をワンステップで実施できる床面用紫外線硬化型塗料施工装置を提供する。
【解決手段】UV塗料施工装置100は、自装置を支持し、記床面の上を移動する移動部110と、UV塗料を収容する容器TNKを支持する容器支持部120と、容器から供給されたUV塗料を床面に塗布する塗布部130と、移動部による進行方向において、塗布部よりも後ろ側に配置され、床面に塗布されたUV塗料に、紫外線を照射して硬化させる紫外線照射部140とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面用紫外線硬化型塗料施工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型塗料(略して「UV塗料」と称することがある。)は、施工後の塗膜が厚く耐久性が高く、さらに、高級感、硬度、透明性に優れているため、住宅のフローリング床(木製の床)、店舗のプラスチックタイル床(Pタイル床)に多く利用されている。UV塗料は、被塗物である床面にコートされた後、紫外線照射ランプ(UV照射ランプ)による極めて短時間の照射により、重合開始剤が励起されラジカル種に変化し、ラジカル重合反応が起こり、流動性がある液体から硬化膜に急激に変化する。UV塗料でコーティングされた床面は、基本的にワックス不要になるため、清掃やメインテナンスが簡便になるため、UV塗料による床面処理は、従来のワックス処理よりも格段に優れた床面の処理方法である。
【0003】
従来のUV塗料の塗布装置や器具としては、手塗りの刷毛、塗装用ローラ、圧縮空気により塗料を噴霧する塗装ガンなどがある。しかし、従来の床面用のUV塗料は、粘度が高かったため、刷毛や塗装用ローラなどの手塗用の器具が使用されることが多かった。また、UV塗料の乾燥・硬化処理工程用のUV照射器具もあったが、ほとんどは簡易なハンディタイプの照射器具であった。床面用のUV塗装器具ではないが、塗布装置も乾燥・硬化処理工程用のUV照射器具も、塗装なら塗装、硬化処理なら硬化処理といった単機能のものが開発されてきた。例えば、特許文献1のUV塗料用の乾燥装置である。これは、小型のワーク(被塗物)を自在に動かす治具を具えた乾燥装置であるが、床面用には活用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-168363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多くのUV塗料には、レベリング剤などの表面調整剤が含まれており、塗膜の平滑性(表面粗さ)を向上させている。しかしながら、従来の床面用のUV塗料は、粘性が非常に高い液状混合物であるため、たとえレベリング剤を含んでいても、塗布後に、塗膜がレベリング(平滑化)するまで長時間(数分から数十分程度)かかる。即ち、塗布した直後は、塗布手段が、ローラであれ、刷毛であれ、スプレーガンであれ、塗膜の表面は、凹凸が多数あり、その時点で硬化させたのでは、塗布条件や塗布手段に起因する塗膜の凹凸がそのまま硬化してしまい、デコボコした塗膜となって美観が損なわれたり、薄い膜の部分の塗膜耐久性が劣ったりするなどの問題があった。
【0006】
上述したように、UV塗装装置による塗装工程と、UV照射装置による乾燥・硬化工程との間で、数分〜数十分程度のタイムラグを要するため、これらの工程を連携して処理する装置の開発は、一見簡単なようで、このようなUV塗料の高粘度に基づくレベリング問題という開発阻害要因があるため、事実上困難であった。即ち、従来技術では、塗装工程と、乾燥・硬化工程という2段階の工程が必須であり、それぞれ別個の器具や装置により行われていた。また、UV塗料の粘度が高すぎるため、塗料の装置内の搬送でのパイプ詰まり、ノズルでの詰まりなどが起こるため、床面用のUV塗装の単機能を持つ装置の開発も、同様に困難であった。
【0007】
しかしながら、最近、UV塗料に、非常に大きな技術的な革新があり、極めて低粘度のUV塗料が開発された。この新開発のUV塗料は、低粘度であるため、細い径のパイプで搬送可能であり、さらに、インクジェット装置のような極めて小さいノズルからの塗布も容易であり、塗布後のレベリングも僅かな時間で可能であるといった種々の素晴らしい特性を持つ。そこで、本願発明者は、このような新開発のUV塗料の諸特性に鑑み、低粘度のUV塗料を塗装するユニットと、乾燥・硬化させるユニットとを一体化し、これら2つの工程をほぼ同時にワンステップで実施できる塗装施工装置に想到した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、塗装するユニットと、乾燥・硬化させるユニットとを一体化し、これら2つの工程をワンステップで実施できる床面用紫外線硬化型塗料施工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
自装置を支持し、前記床面の上を移動する移動部と、
紫外線硬化型塗料を収容する容器を支持する容器支持部と、
前記容器から供給された前記紫外線硬化型塗料を前記床面に塗布する塗布部と、
前記移動部による進行方向において、前記塗布部よりも後ろ側に配置され、前記床面に塗布された紫外線硬化型塗料に、紫外線を照射して硬化させる紫外線照射部と、
を有する。
【0010】
また、第2の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
前記移動部による移動速度を調整する速度制御部、
をさらに有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、第3の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
前記塗布部による塗布量を調整する塗布量制御部、
をさらに有する、ことを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
前記塗布部が、塗布用ローラ、噴霧ユニット、インクジェット吐出ユニット、刷毛の少なくとも1つを有する、
ことを特徴とする。
【0013】
また、第5の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
前記移動部が、オペレータ用の座席を有する自走式台車である、
ことを特徴とする。
【0014】
また、第6の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
前記移動部が、人力による駆動力によって駆動される複数の車輪である、
ことを特徴とする。
【0015】
また、第7の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
前記床面用紫外線硬化型塗料施工装置が、
通信制御部および通信部をさらに有し、
前記床面用紫外線硬化型塗料施工装置が、
外部の遠隔制御装置により無線リンクまた有線リンクにて接続され、遠隔制御される、
ことを特徴とする。
【0016】
また、第8の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
前記塗布部と、前記床面との距離を調整する(例えば、鉛直方向に移動させるなど)床面距離調整ユニット、
をさらに有する、ことを特徴とする。
【0017】
また、第9の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
紫外線硬化型塗料の属性情報(名称、名称を示す記号(番号、アルファベット、文字)、粘度、硬化速度、レベリング特性、レベリングに必要な時間、適正な塗膜の厚さのレンジなど)と、該属性情報に関連付けられた、塗布量または自装置の移動速度を含む塗装条件情報とからなる塗装設定テーブルを格納する記憶部と、
オペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付ける入力受付部と、
前記受け付けられた属性情報に基づき、前記塗装設定テーブルを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、該塗装条件情報に基づき、前記速度制御部を制御して、前記移動部による移動速度を調整する、第1の塗装条件制御部と、
をさらに有する、ことを特徴とする。
【0018】
また、第10の発明による床面用紫外線硬化型塗料施工装置は、
紫外線硬化型塗料の属性情報(名称、名称を示す記号(番号、アルファベット、文字)、粘度、硬化速度、レベリング特性、レベリングに必要な時間、適正な塗膜の厚さのレンジなど)と、該属性情報に関連付けられた、塗布量または自装置の移動速度を含む塗装条件情報とからなる塗装設定テーブルを格納する記憶部と、
オペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付ける入力受付部と、
前記受け付けられた属性情報に基づき、前記塗装設定テーブルを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、該塗装条件情報に基づき、前記塗布量制御部を制御して、前記塗布部による塗布量を調整する、第2の塗装条件制御部と、
をさらに有する、ことを特徴とする。
【0019】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、塗装するユニットと、乾燥・硬化させるユニットとを一体化し、これら2つの工程をほぼ同時にワンステップで実施できる床面用紫外線硬化型塗料施工装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施態様によるUV塗料施工装置の概要を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1のUV塗料施工装置による作業状況の模式図である。
【図3】図3は、本発明の一実施態様によるUV塗料施工装置の概要を示すブロック図である。
【図4】図4は、図3のUV塗料施工装置による作業状況の模式図である。
【図5】図5は、塗装設定テーブルの一例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の一実施態様によるUV塗料施工装置の概要を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施態様によるUV塗料施工装置の概要を示すブロック図である。図に示すように、UV塗料施工装置(UVPC)100は、自装置を支持し、床面(被塗物)の上を移動する移動部110と、紫外線硬化型塗料を収容する容器TNKを支持する容器支持部120と、容器TNKから供給されたUV塗料を床面FLRに塗布する塗布部130と、移動部110による進行方向において、塗布部130よりも後ろ側に配置され、床面FLRに塗布されたUV塗料(液状であるため液状UV塗料UV−lqdと称する。)に、紫外線UVを照射して硬化させる紫外線照射部140とを有する。UV塗料施工装置100は、さらに、制御部(プロセッサ)150と、記憶部160と、表示部170を有する。この図は、模式的に表した機能ブロック図であるため、構成要素、床面、塗膜などの配置や寸法などは作図の便宜上、不正確なものが含まれることに留意されたい。特に、塗膜の凹凸は、分かり易くするために、激しく凹凸させてあるが、実際の凹凸は遥かに少ないものであり、美観上や耐久性上で問題があるといったレベルのものである。
【0024】
紫外線照射部140は、紫外線の照射が不必要な箇所への散乱を防止し、狙った場所のみへ紫外線が照射されるように光の方向を制限するガイドGDを有する。紫外線UVを照射された液状UV塗料UV−lqdは、ラジカル重合が急速に進み、硬化したUV塗料である硬化塗膜UV−sldに変化する。このようにして、本装置によれば、1つの装置によって1つの処理をあたかもワンステップで実施することで、UV塗料施工を終了することが可能となる。紫外線照射部140は、少なくとも1つの紫外線ランプを有するが、むらなく広範囲に紫外線を照射して、塗布されたUV塗料を完全に硬化させるためには、複数の紫外線ランプをアレイ状に配置することが好適である。
【0025】
制御部150は、オペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付けたり、オペレータによる、発進(走行開始)指示、停止(走行停止)指示、減速指示、方向指示や速度指示などオペレータによる様々な入力操作を受け付けたりする入力受付部151(キーボード、アクセルペダル、ハンドル、塗布量指示ダイヤルなどで構成させてもよい)と、移動部による移動速度を調整する速度制御部152と、塗布部による塗布量を調整する塗布量制御部153を有する。オペレータによる各操作は、入力受付部151を介しても良いが、例えば、入力受付部151を介さずに、装置の方向指示などは、直接、移動部110に作用させてもよい。また、塗布部130は、噴霧ユニットであるが、塗布用ローラ、噴霧ユニット、インクジェット吐出ユニット、刷毛のいずれかに置換してもよい。或いは、これらの2つ以上を組み合わせて使用してもよい。また、塗布用ローラ、噴霧ユニット、インクジェット吐出ユニット、刷毛は、各自をアレイ状に複数個のユニットで構成してもよい。例えば、インクジェット吐出ユニットを、進行方向に対して垂直をなすライン上に配置されるように6ユニットで構成し、これらで塗布される領域に十分に対応するように、紫外線硬化ランプも進行方向に対して垂直をなすライン上に配置されるように複数個(例えば6個)で構成させてもよい。移動部120は、架台、車輪、オペレータ(運転者)用の座席STなどからなる自走式台車(例えば、排気ガスを出さない屋内使用のための電気駆動カートなど)とすることが好適である。或いは、移動部110は、人力による駆動力によって駆動される複数の車輪と、歩いているオペレータが把持するハンドルやスティックとで構成させてもよい。
【0026】
塗布部130と、床面FLRとの距離を調整する(例えば鉛直方向に移動させる)床面距離調整ユニットAJUをさらに有する。これは、塗布量制御部153と連動させて、塗布量が多いときは、床面との距離を離し、少ないときは距離を近づけるなどの操作をすることが好適である。
【0027】
記憶部160は、紫外線硬化型塗料の属性情報(名称、名称を示す記号(番号、アルファベット、文字)、粘度、硬化速度、レベリング特性、レベリングに必要な時間、適正な塗膜の厚さのレンジなど)と、その属性情報に関連付けられた、塗布量または自装置の移動速度を含む塗装条件情報とからなるセットA,Bなどを複数含む塗装設定テーブルPSTを格納する。入力受付部151が、オペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付ける(例えば、使用する塗料に割り当てた番号など)。制御部150は、塗装条件制御部154をさらに有し、塗装条件制御部154は、受け付けられた属性情報に基づき、塗装設定テーブルPSTを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、その塗装条件情報(例えば、図のB)に基づき、速度制御部152を制御して、移動部120による移動速度を調整する。或いは、塗装条件制御部154は、受け付けられた属性情報に基づき、塗装設定テーブルPSTを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、その塗装条件情報(例えば図のA)に基づき、塗布部130を制御して、塗布部130による塗布量を調整する。もちろん、塗装条件制御部154は、塗布量と移動速度の双方を調整してもよい。移動速度を速めることで塗布量を調整することもできるが、塗料のレベリング時間によって、移動速度には上限がある。表示部170は、入力された属性情報や、その属性情報によって検索され設定された塗装条件情報を表示する。なお、オペレータは、設定された塗装条件情報を手動で変更することが可能であり、場合によっては、属性情報を入力せずに、直接、塗装条件情報を手入力で設定してもよい。
【0028】
図2は、図1のUV塗料施工装置による作業状況の模式図である。図に示すように、自走式台車形式のUV塗料施工装置100は、例えば、大規模店舗の広大な床面FLDをUV塗料施工していく。即ち、図に示すように、塗装、硬化をさせながらUV塗料施工装置100を走行させるだけで、塗装終了時の床面FLD―endのように、施工し、完全に硬化した塗膜を全ての床面に施すことが可能となる。このように、本装置を使用すれば、極めて短時間かつ低コストで広大な面積の床面にUV塗料施工を行うことが可能となる。
【0029】
図3は、本発明の一実施態様によるUV塗料施工装置の概要を示すブロック図である。図に示すように、UV塗料施工装置(UVPC)200は、自装置を支持し、床面(被塗物)の上を移動する移動部210と、紫外線硬化型塗料を収容する容器TNKを支持する容器支持部210と、容器TNKから供給されたUV塗料を床面FLRに塗布する塗布部230と、移動部220による進行方向において、塗布部230よりも後ろ側に配置され、床面FLRに塗布されたUV塗料(液状であるため液状UV塗料UV−lqdと称する。)に、紫外線UVを照射して硬化させる紫外線照射部240とを有する。UV塗料施工装置200は、さらに、制御部(プロセッサ)250と、記憶部260と、表示部270を有する。この図は、模式的に表した機能ブロック図であるため、構成要素、床面、塗膜などの配置や寸法などは作図の便宜上、不正確なものが含まれることに留意されたい。特に、塗膜の凹凸は、分かり易くするために、激しく凹凸させてあるが、実際の凹凸は遥かに少ないものであり、美観上や耐久性上で問題があるといったレベルのものである。
【0030】
紫外線照射部240は、紫外線の照射が不必要な箇所への散乱を防止し、狙った場所のみへ紫外線が照射されるように光の方向を制限するガイドGDを有する。紫外線UVを照射された液状UV塗料UV−lqdは、ラジカル重合が急速に進み、硬化したUV塗料である硬化塗膜UV−sldに変化する。このようにして、本装置によれば、1つの装置によって、塗布および硬化という2つの処理をあたかもワンステップで実施することで、UV塗料施工を終了することが可能となる。紫外線照射部240は、少なくとも1つの紫外線ランプを有するが、むらなく広範囲に紫外線を照射して、塗布されたUV塗料を完全に硬化させるためには、複数の紫外線ランプをアレイ状に配置することが好適である。
【0031】
制御部250は、入力受付部251と、移動部による移動速度を調整する速度制御部252と、塗布部による塗布量を調整する塗布量制御部253と、塗装条件制御部254を有する。また、塗布部230は、インクジェット吐出ユニットであるが、他の塗布手段に置換し得える。移動部220は、架台、車輪、オペレータ(運転者)用の座席STなどからなる自走式台車(例えば、排気ガスを出さない屋内使用のための電気駆動カートなど)とすることが好適である。或いは、移動部220は、人力による駆動力によって駆動される複数の車輪と、歩いているオペレータが把持するハンドルやスティックとで構成させてもよい。
【0032】
UV塗料施工装置200は、塗布部230と、床面FLRとの距離を調整し(例えば鉛直方向に移動させる)、使用時に、上から見て自装置の外側に塗布部230を移動させるアームARM1と、紫外線照射部240を、使用時に、上から見て自装置の外側に塗布部230を移動させるアームARM2とをさらに有する。アームARM1、アームARM2を使うことによって、施工後の塗膜の上を走行することがなくなるため、硬化直後の塗膜に車輪などでダメージを与えることを効果的に防止する。他の構成要素の機能は、特に言及がないものは図1のものと同様のものである。
【0033】
図4は、図3のUV塗料施工装置による作業状況の模式図である。図に示すように、自走式台車形式のUV塗料施工装置200は、施工した塗膜の上を走行することがないため、硬化直後の塗膜に車輪などでダメージを与えることを効果的に防止することが可能となる。
【0034】
図5は、塗装設定テーブルの一例を示す図である。図に示すように、塗装設定テーブルPST10は、紫外線硬化型塗料の属性情報(名称、名称を示す記号(番号、アルファベット、文字)、粘度、硬化速度、レベリング特性、レベリングに必要な時間、適正な塗膜の厚さのレンジなど)と、該属性情報に関連付けられた、塗布量や自装置の移動速度や、照射時間などを含む塗装条件情報とを含む。オペレータは、属性情報を入力するだけで、本装置が適正な塗装条件を自動的に設定して、その条件で塗布するため、従来は職人による出来不出来があったが、どのようなオペレータ、例えば、未熟練者によっても適正な厚さの秀逸な塗膜を得ることが可能となる。
【0035】
図6は、本発明の一実施態様によるUV塗料施工装置の概要を示すブロック図である。図に示すように、UV塗料施工装置(UVPC)300は、自装置を支持し、床面(被塗物)の上を移動する移動部310と、紫外線硬化型塗料を収容する容器TNKを支持する容器支持部320と、容器TNKから供給されたUV塗料を床面FLRに塗布する塗布部330と、移動部310による進行方向において、塗布部330よりも後ろ側に配置され、床面FLRに塗布されたUV塗料(液状であるため液状UV塗料UV−lqdと称する。)に、紫外線UVを照射して硬化させる紫外線照射部340とを有する。UV塗料施工装置300は、さらに、制御部(プロセッサ)350と、記憶部360を有する。この図は、模式的に表した機能ブロック図であるため、構成要素、床面、塗膜などの配置や寸法などは作図の便宜上、不正確なものが含まれることに留意されたい。特に、塗膜の凹凸は、分かり易くするために、激しく凹凸させてあるが、実際の凹凸は遥かに少ないものであり、美観上や耐久性上で問題があるといったレベルのものである。
【0036】
紫外線照射部340は、紫外線の照射が不必要な箇所への散乱を防止し、狙った場所のみへ紫外線が照射されるように光の方向を制限するガイドGDを有する。紫外線UVを照射された液状UV塗料UV−lqdは、ラジカル重合が急速に進み、硬化したUV塗料である硬化塗膜UV−sldに変化する。このようにして、本装置によれば、1つの装置によって1つの処理をあたかもワンステップで実施することで、UV塗料施工を終了することが可能となる。紫外線照射部340は、少なくとも1つの紫外線ランプを有するが、むらなく広範囲に紫外線を照射して、塗布されたUV塗料を完全に硬化させるためには、複数の紫外線ランプをアレイ状に配置することが好適である。
【0037】
制御部350は、オペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付けたり、オペレータによる方向指示や速度指示などオペレータによる様々な入力操作を受け付けたりする入力受付部351と、移動部による移動速度を調整する速度制御部352と、塗布部による塗布量を調整する塗布量制御部353、塗装条件制御部354を有する。また、塗布部330は、噴霧ユニットであるが、塗布用ローラ、噴霧ユニット、インクジェット吐出ユニット、刷毛のいずれかに置換してもよい。或いは、これらの2つ以上を組み合わせて使用してもよい。移動部310は、架台、車輪などからなる自走式台車(例えば、排気ガスを出さない屋内使用のための無人電気駆動カートなど)とすることが好適である。即ち、本装置300は、無線部COM、通信制御部355をさらに有し、装置から離れた遠隔制御装置RC、表示部RCDIS、オペレータによる各種の入力(発進、停止、速度増加、減速、方向指示などを含む移動指示、塗布開始、塗布停止、塗布量増加、塗布量減少などの塗装条件指示など)を受け付ける入力部、入力を本体側(装置300)に有線リンクまたは無線リンクを介して送信する通信部RCCOMと有する。入力受付部351は、遠隔制御装置RCから無線リンクまたは有線リンク、本体側の通信部COM,通信制御部355を経て取得した情報をそのまま受け付けることが可能である。遠隔制御装置RCは、本体側(300)から各種の情報を受信して、自装置自体が持つ情報を含めて、表示部RCDISに表示することが可能である。このようにして、本体に乗車せずに、遠隔制御装置RCを携行したオペレータが、本体や施工状況を目視で確認しながらUV塗装を行うことが可能である。また、遠隔無線装置RCは、何らかの通信手段を具えたスマートフォンや携帯電話端末で構成させてもよい。
【0038】
塗布部330と、床面FLRとの距離を調整する(例えば鉛直方向に移動させる)床面距離調整ユニットAJUをさらに有する。これは、塗布量制御部353と連動させて、塗布量が多いときは、床面との距離を離し、少ないときは距離を近づけるなどの操作をすることが好適である。
【0039】
記憶部360は、紫外線硬化型塗料の属性情報(名称、名称を示す記号(番号、アルファベット、文字)、粘度、硬化速度、レベリング特性、レベリングに必要な時間、適正な塗膜の厚さのレンジなど)と、その属性情報に関連付けられた、塗布量または自装置の移動速度を含む塗装条件情報とからなるセットA,Bなどを複数含む塗装設定テーブルPSTを格納する。入力受付部351が、通信部COMなどを介して、遠隔無線装置RCからのオペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付ける(例えば、使用する塗料に割り当てた番号など)。制御部350は、塗装条件制御部354をさらに有し、塗装条件制御部354は、受け付けられた属性情報に基づき、塗装設定テーブルPSTを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、その塗装条件情報(例えば、図のB)に基づき、速度制御部352を制御して、移動部310による移動速度を調整する。或いは、塗装条件制御部354は、受け付けられた属性情報に基づき、塗装設定テーブルPSTを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、その塗装条件情報(例えば図のA)に基づき、塗布部330を制御して、塗布部130による塗布量を調整する。もちろん、塗装条件制御部354は、塗布量と移動速度の双方を調整してもよい。移動速度を速めることで塗布量を調整することもできるが、塗料のレベリング時間によって、移動速度には上限がある。表示部RCDISは、入力された属性情報や、その属性情報によって検索され設定された塗装条件情報を表示する。なお、オペレータは、設定された塗装条件情報を手動で変更することが可能であり、場合によっては、属性情報を入力せずに、直接、塗装条件情報を手動で設定してもよい。また、通常は、遠隔制御装置RCで操作し、特別な場合には、オペレータが乗車して操作できるように、簡易なシートを本体に設置してもよい。ちなみに、図1、図3の装置100、200に通信部、通信制御部を設けて、遠隔制御装置RCで遠隔制御することも可能である。
【0040】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部、各ステップなどに含まれる処理や機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段/部やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。例えば、本体側の機能部や機能部の一部の機能を遠隔制御装置側に設けたり、遠隔制御装置側の各部で処理したりしてもよい。或いは、本発明による装置、方法、制御部の一部、プログラムなどの一部の構成要素、機能、処理、ステップなどを遠隔地のサーバなどに配置することも可能であることに注意されたい。
【符号の説明】
【0041】
100 UV塗料施工装置
110 移動部
110 制御部
110 移動部
120 容器支持部
130 塗布部
140 紫外線照射部
150 制御部
151 入力受付部
152 速度制御部
153 塗布量制御部
154 塗装条件制御部
160 記憶部
170 表示部
200 UV塗料施工装置
210 移動部
220 容器支持部
230 塗布部
240 紫外線照射部
250 制御部
251 入力受付部
252 速度制御部
253 塗布量制御部
254 塗装条件制御部
260 記憶部
270 表示部
AJU 床面距離調整ユニット
ARM1 アーム
ARM2 アーム
FLD 床面
FLR 床面
GD ガイド
PST 塗装設定テーブル
ST 座席
TNK 容器
UV 紫外線
300 UV塗料施工装置
310 移動部
320 容器支持部
330 塗布部
340 紫外線照射部
350 制御部
351 入力受付部
352 速度制御部
353 塗布量制御部
354 塗装条件制御部
355 無線制御部
360 記憶部
COM 通信部
RC 遠隔制御装置
RCDIS 表示部
RCIO 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面用紫外線硬化型塗料施工装置であって、
自装置を支持し、前記床面の上を移動する移動部と、
紫外線硬化型塗料を収容する容器を支持する容器支持部と、
前記容器から供給された前記紫外線硬化型塗料を前記床面に塗布する塗布部と、
前記移動部による進行方向において、前記塗布部よりも後ろ側に配置され、前記床面に塗布された紫外線硬化型塗料に、紫外線を照射して硬化させる紫外線照射部と、
を有する床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
前記移動部による移動速度を調整する速度制御部、
をさらに有する、ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
前記塗布部による塗布量を調整する塗布量制御部、
をさらに有する、ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
前記塗布部が、塗布用ローラ、噴霧ユニット、インクジェット吐出ユニット、刷毛の少なくとも1つを有する、
ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
前記移動部が、オペレータ用の座席を有する自走式台車である、
ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
前記移動部が、人力による駆動力によって駆動される複数の車輪である、
ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
前記床面用紫外線硬化型塗料施工装置が、
通信制御部および通信部をさらに有し、
前記床面用紫外線硬化型塗料施工装置が、
外部の遠隔制御装置により無線リンクまた有線リンクにて接続され、遠隔制御される、
ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
前記塗布部と、前記床面との距離を調整する床面距離調整ユニット、
をさらに有する、ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
紫外線硬化型塗料の属性情報と、該属性情報に関連付けられた、塗布量または自装置の移動速度を含む塗装条件情報とからなる塗装設定テーブルを格納する記憶部と、
オペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付ける入力受付部と、
前記受け付けられた属性情報に基づき、前記塗装設定テーブルを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、該塗装条件情報に基づき、前記速度制御部を制御して、前記移動部による移動速度を調整する、第1の塗装条件制御部と、
をさらに有する、ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。
【請求項10】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の床面用紫外線硬化型塗料施工装置において、
紫外線硬化型塗料の属性情報と、該属性情報に関連付けられた、塗布量または自装置の移動速度を含む塗装条件情報とからなる塗装設定テーブルを格納する記憶部と、
オペレータによる紫外線硬化型塗料の属性情報の入力を受け付ける入力受付部と、
前記受け付けられた属性情報に基づき、前記塗装設定テーブルを検索して、マッチする塗装条件情報を取得し、該塗装条件情報に基づき、前記塗布量制御部を制御して、前記塗布部による塗布量を調整する、第2の塗装条件制御部と、
をさらに有する、ことを特徴とする床面用紫外線硬化型塗料施工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64228(P2013−64228A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201754(P2011−201754)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(511225479)株式会社コートテック (1)
【Fターム(参考)】