説明

座屈拘束ブレース、これを用いた耐力フレーム及び座屈拘束ブレースの製造方法

【課題】簡易な構造で生産性を高めるとともに音鳴りを低減させた座屈拘束ブレースを提供する。
【解決手段】構造用部材として軸力を負担する長尺かつ板状のブレース芯材2と、このブレース芯材2に外挿されかつ該ブレース芯材2の座屈を抑制する略筒状の補剛材3とを具えた座屈拘束ブレース1である。前記補剛材3は、前記ブレース芯材2の幅方向の左右両側から該ブレース芯材2に挿入可能な一対の分割片7からなる。前記補剛材3は、該分割片7を一体に溶接することにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構造で生産性を高めるとともに音鳴りを低減させた座屈拘束ブレース、これを用いた耐力フレーム及び座屈拘束ブレースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10(a)、(b)に示されるような座屈拘束ブレースd1が提案されている。該座屈拘束ブレースd1は、構造用部材として軸力を負担する長尺なブレース芯材bと、このブレース芯材bに外挿されることにより該ブレース芯材bの面外座屈を拘束する略筒状の補剛材hとから構成される。
【0003】
前記ブレース芯材bは、長尺かつ板状のブレース本体b1と、該ブレース本体b1の幅方向の両端に固着される一対のフランジ片b2、b2とで形成される。これにより、ブレース芯材bの長手方向の両端部は、断面略H型状をなす。
【0004】
前記補剛材hは、一対の溝型状の鋼材h1を互いに突き合わせかつ溶接することにより略筒状に形成されている。また、図10(a)に示されるように、鋼材h1は、前記ブレース本体b1に沿ってのびることにより、ブレース本体b1の面外座屈を防止する座屈防止片eを有する。
【0005】
このような座屈拘束ブレースd1は、ブレース芯材bに圧縮の軸力が作用した場合、該ブレース芯材bの面外座屈が補剛材hの座屈防止片eで抑制される。関連する技術として次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−75281号公報
【特許文献2】特開2008−255654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような座屈拘束ブレースd1は、ブレース芯材bの両端部が断面略H型状をなす。このため、このようなブレースd1を製造する際には、図10(b)に示されるように、先ず、鋼材h1を互いに溶接固着して補剛材hを形成し、その後、該補剛材hにブレース芯材bを、その長手方向から挿入する方法が採用されていた。このため、座屈防止片eとブレース本体b1との間には、ブレース本体b1を円滑に差し込むための隙間tが必要であった。しかしながら、座屈拘束ブレースd1の組立後においては、このような隙間tは、振動や荷重によって、ブレース本体b1と座屈防止片eとが接触・離間することで生じる音鳴りの原因になる。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、軸力を負担するブレース芯材と座屈を抑制する補剛材との構造を改善することを基本とし、簡易な構造で製造コストを抑制しかつ音鳴りを抑制した座屈拘束ブレースを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のうち請求項1記載の発明は、構造用部材として軸力を負担する長尺かつ板状のブレース芯材と、このブレース芯材に外挿されかつ該ブレース芯材の座屈を抑制する略筒状の補剛材とを具えた座屈拘束ブレースであって、前記補剛材は、前記ブレース芯材の幅方向の左右両側から該ブレース芯材に挿入可能な一対の分割片からなり、該分割片を一体に溶接することにより形成されることを特徴とする。
【0010】
また請求項2記載の発明は、前記ブレース芯材は、前記補剛材よりも長尺をなしかつ該補剛材の両端からそれぞれ外方にはみ出すはみ出し部と、このはみ出し部の間をなす被拘束部とを有する板状のブレース本体と、前記被拘束部と前記はみ出し部とに跨って配されかつ前記ブレース本体とで断面略十字状をなすことにより前記分割片で挟まれる一対の補強リブと、該ブレース本体の両側のはみ出し部それぞれに固着されかつ前記ブレース本体とでブレース芯材の断面を略H型に形成する一対のフランジ片とからなる請求項1記載の座屈拘束ブレースである。
【0011】
また請求項3記載の発明は、前記補剛材の前記各分割片は、横断面において、前記ブレース本体の幅方向の端縁よりも外側を該ブレース本体の板厚方向にのびる基片と、該基片の両端からそれぞれ略90度で折れ曲がってブレース本体の幅中心近傍までのびる一対の側片と、各側片の端部でそれぞれブレース本体側に折れ曲がりかつ該ブレース本体に接触して終端することにより前記ブレース芯材の面外座屈を抑制する座屈防止片とを含む鋼材により形成されたことを特徴とする請求項2記載の座屈拘束ブレースである。
【0012】
また請求項4記載の発明は、前記座屈防止片は、前記基片側に向かって傾斜してのびる傾斜部を有することにより、前記補強リブに接触することなく設けられる請求項3記載の座屈拘束ブレースである。
【0013】
また請求項5記載の発明は、前記座屈防止片は、前記傾斜部のブレース本体側に、該ブレース本体と近接しかつ平行にのびる小長さの添設部を有する請求項3又は4記載の座屈拘束ブレースである。
【0014】
また請求項6記載の発明は、前記座屈防止片は、前記基片と平行にのびる平行部を有する請求項3、4又は5に記載の座屈拘束ブレースである。
【0015】
また請求項7記載の発明は、前記座屈防止片は、前記平行部のブレース本体側に、該ブレース本体と接触して平行に基片側にのびて終端する小長さの添設部を有する請求項6記載の座屈拘束ブレースである。
【0016】
また請求項8記載の発明は、前記補剛材は、前記分割片の向き合う側片間が溶接されることにより固着される請求項1乃至7のいずれかに記載の座屈拘束ブレースである。
【0017】
また請求項9記載の発明は、前記補剛材の長さ方向の一端側のみが前記ブレース芯材と溶接されてなる請求項1乃至8のいずれかに記載の座屈拘束ブレースである。
【0018】
また請求項10記載の発明は、請求項1乃至9のいずれかに記載された座屈拘束ブレースを斜材として用いたことを特徴とする耐力フレームである。
【0019】
また請求項11記載の発明は、構造用部材として軸力を負担する長尺かつ板状のブレース芯材と、このブレース芯材に外挿されかつ該ブレース芯材の座屈を抑制する略筒状の補剛材とを具えた座屈拘束ブレースの製造方法であって、前記補剛材を、前記ブレース芯材の幅方向の左右両側から該ブレース芯材に挿入可能な一対の分割片として準備する工程と、前記分割片を、前記ブレース芯材の幅方向の左右両側から該ブレース芯材に挿入する工程と、前記分割片を一体に溶接する工程とを含むことを特徴とする座屈拘束ブレースの製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の座屈拘束ブレースは、構造用部材として軸力を負担する長尺かつ板状のブレース芯材と、このブレース芯材に外挿されかつブレース芯材の座屈を抑制する略筒状の補剛材とを具える。そして、前記補剛材は、前記ブレース芯材の幅方向の左右両側から該ブレース芯材に挿入可能な一対の分割片からなる。このような座屈拘束ブレースでは、従来のように、予め筒状とした補剛材に、ブレース芯材をその長手方向で挿入する必要がない。従って、本発明の座屈拘束ブレースは、補剛材とブレース芯材との間の隙間を無くすことが可能になる。従って、本発明の座屈拘束ブレースは、振動や荷重負荷時の音鳴りを抑制することが可能になる。また、本発明の座屈拘束ブレースは、分割片をブレース芯材の幅方向の両側から挿入して溶接することにより一体に形成されるため、簡単な構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の座屈拘束ブレースを示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1の側面図、(b)は、そのX−X断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、図2(b)のA、C部の断面図である。
【図4】図2(b)のB部の断面図である。
【図5】(a)乃至(c)は、本実施形態の座屈拘束ブレースの製造方法を説明する概略斜視図である。
【図6】(a)乃至(c)は、座屈拘束ブレースの他の実施形態の断面図である。
【図7】(a)は、他の実施形態の座屈拘束ブレース側面図、(b)は、(a)のD部の断面図である。
【図8】本発明の座屈拘束ブレースを用いた耐力フレームを説明する正面概略図である。
【図9】(a)及び(b)は、ブレース接合部を説明する側面図である。
【図10】(a)は、従来の座屈拘束ブレースの横断面、(b)は、(a)の座屈拘束ブレースの製造方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1に示されるように、本実施形態の座屈拘束ブレース1は、構造用部材として長手方向に作用する引張、圧縮両方向の軸力を負担するブレース芯材2と、このブレース芯材2に外挿されかつ前記ブレース芯材2の座屈を抑制する略筒状の補剛材3とを具え、好ましくは家屋等の建築物の垂直構面ないし水平構面のブレース材(筋交い)として利用される。
【0023】
本実施形態のブレース芯材2は、前記補剛材3よりも長尺をなすブレース本体4と、該ブレース本体4に固着されて断面略十字状をなす一対の補強リブ5、5と、前記ブレース本体4に固着されてブレース芯材2の断面を略H型に形成する一対のフランジ片6、6とを含んで構成される。
【0024】
前記ブレース本体4は、図2に示されるように、例えば、幅W1が20〜100mm程度(本実施形態では43mm)、厚さT1が3〜15mm程度(本実施形態では3.2mm)に形成された板材からなる。また、ブレース本体4の長さL1は、ブレース芯材2を取り付ける構造体のサイズに応じて適宜設定されるが、例えば500〜2000mm程度が好ましい。本実施形態では1300mmのものが示される。
【0025】
また、図1及び2に示されるように、ブレース本体4と補剛材3とは、各々の長さ方向の中間位置を略揃えて組立てられる。このため、ブレース本体4は、補剛材3の両端からそれぞれ外方に略等しい長さではみ出すはみ出し部8と、このはみ出し部8、8の間をなしかつ補剛材3によって拘束される被拘束部9とを具える。
【0026】
はみ出し部8の長さL2も、ブレース芯材2のサイズ等に応じて適宜設定される。なお、前記「中間位置を略揃えて」とは、ブレース本体4と補剛材3との各中間位置が完全に一致する場合のみならず、ブレース本体4の長さの10%の範囲で中間位置がずれている態様を少なくとも含む。
【0027】
前記補強リブ5は、小長さL3を有した矩形状の板材からなり、例えば、厚さT3が3〜15mm程度(本実施形態では4.5mm)に形成されている。
【0028】
また、本実施形態の補強リブ5は、ブレース本体4の端部近傍に位置(本実施形態ではブレース本体4の長さ方向の端部4eよりも内側に位置)する外端5gと、補剛材3内に挿入されて終端する内端5nとを具える。即ち、図2(b)に示されるように、補強リブ5は、被拘束部9とはみ出し部8に跨って小長さで配されている。これにより、ブレース本体4のはみ出し部8の剛性が高められ、その面外座屈が効果的に抑制される。なお、補剛材3の外端3eと補強リブ5の内端5nとの長さである補強リブ挿入長さL4は、ブレース芯材2のサイズに応じて適宜設定される。
【0029】
なお、ブレース本体4は、その断面形状に基づき、面内方向の座屈は生じにくいので、補強リブ5をブレース本体4の全長さに亘って連続して配置する必要はない。
【0030】
本実施形態において、前記フランジ片6は、小長さL5を有した台形状の板材からなり、例えば、厚さT5が3〜15mm程度(本実施形態では9mm)に形成されている。また、フランジ片6は、補剛材3の長さ方向の外端3eよりも外側かつブレース本体4のはみ出し部8の幅方向の側面8s、8sそれぞれに、該フランジ片6の幅中心を略揃えて溶接により固着される。このようなフランジ片6は、例えば架構体等に固着される。従って、本実施形態のブレース芯材2は、補剛材3で覆われないはみ出し部8の曲げ剛性を簡単な構成で高め、該はみ出し部8での面外座屈を確実に抑制するとともに、簡易な構造で架構体等に固着される。
【0031】
以上のようなブレース芯材2には、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼などの鉄鋼材料が好適に用いられ、とりわけメッキ仕上げが施されるのが望ましい。このようなメッキ層は、ブレース芯材2が補剛材3に対して相対移動する際、接触部での摩擦を減じ、滑らかな相対移動を生じさせ、水平力等の吸収効果を高める点で好ましい。
【0032】
図1乃至4に示されるように、本発明の補剛材3は、ブレース芯材2の幅方向の左右両側から該ブレース芯材2に挿入可能な一対の分割片7からなり、該分割片7、7を一体に溶接することにより形成されている。本実施形態の補剛材3は、全体としてほぼ4つの面板部Mに囲まれた角筒状で構成されている。
【0033】
図4に良く示されるように、各分割片7は、その長手方向と直角な横断面において、ブレース本体4の幅方向の端縁4tよりも外側を該ブレース本体4の板厚方向にのびる基片10と、該基片10の両端10e、10eで略90度で折れ曲がってブレース本体4の幅中心Zの近傍までのびる一対の側片11、11と、各側片11の端部11eでそれぞれブレース本体4側に折れ曲がってのびかつ該ブレース本体4に接触して終端する座屈防止片12とを含む開断面形状(即ち、前記一対の座屈防止片12、12は、ブレース本体4によって互いに離間している。)をなす。このような分割片7は、塑性加工が容易に行える金属材料、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、合金鋼を含む鉄鋼材料が好適に用いられる。
【0034】
前記横断面において、基片10は、分割片7の中で最も大きい辺長さW2を有し、側片11の辺長さW9は、前記辺長さW2のほぼ半分の長さで形成される。そして、基片10と側片11とで、断面略溝型状の部分が形成される。従って、分割片7は、ブレース本体4の面外座屈に対して、その強軸回りの断面性能で抵抗できる。
【0035】
また、前記座屈防止片12は、本実施形態では、側片11の端部11eから基片10側に向かう傾斜で小長さにのびる傾斜部13と、該傾斜部13のブレース本体4側に連設されかつ該ブレース本体4に近接しかつブレース本体4と平行にのびる小長さの添設部14と、前記傾斜部13と該添設部14との間を接続しかつ基片10と平行にのびる平行部15とを有する。なお、添設部14と平行部15とは、滑らかに屈曲した屈曲部Pを介して接続されるのが望ましい。このような座屈防止片12は、ブレース本体4の軸中心Zに配される補強リブ5と十分な隙間をもって配置され得る。
【0036】
また、座屈防止片12の添設部14は、ブレース本体4と接触して平行にのびている。このような座屈防止片12は、ブレース本体4の面外座屈を効果的に防止するのに役立つ。また、図5に示されるように、ブレース芯材2への挿入前の状態において、分割片7の一対の添設部14、14間は、互いにほぼ平行にのびかつ一定の隙間14sを有する。この隙間14sは、例えば、ブレース本体4の板厚よりもわずかに小さく形成されても良い。この場合、分割片7の添設部14、14は、ブレース本体4を押圧した状態で狭着し、前記音鳴りをより確実に抑制することができる。
【0037】
また、添設部14は、ブレース本体4の幅中心Zよりも幅方向の外側(合計4箇所設けることができる)に配置される。しかも、座屈防止片12は、補剛材3の長さ方向に連続している。従って、このような補剛材3は、ブレース芯材2の面外座屈を効果的に抑制する。本実施形態では、傾斜部13の基片10に対する角度α1は約30°であるが、これに限定されるものではない。また、添設部14の長さL6は、面外座屈をさらに効果的に抑制するため、ブレース本体4の厚さT1(図2に示す)よりも大きいのが望ましい。
【0038】
本実施形態では、基片10とブレース本体4の端縁4tとの間には、例えば隙間部dが形成される。上で述べたように、ブレース本体4には面内座屈は生じにくいため、このような隙間部dがあっても音鳴り原因になるおそれは少ない。ただし、前記隙間部dが大きくなると、前記添設部14とブレース本体4とが接触できずブレース芯材2の面外座屈を抑制できないおそれがあるので、前記隙間部dは、好ましくは6mm以下程度が望ましい。なお、隙間部dが設けられない(基片10とブレース本体4とが接触する)態様も採用しうる。
【0039】
本実施形態の座屈拘束ブレース1は、例えば図5(a)乃至(c)に示されるように、補剛材3を、上述のように、ブレース芯材2に挿入可能な一対の分割片7として準備する準備工程S1と、該分割片7をブレース芯材2に挿入する挿入工程S2と、分割片7を一体に溶接する溶接工程S3とを含んで製造される。
【0040】
本実施形態では、準備工程S1の前段階として、ブレース芯材2を組み立てる組立工程が行われる。該ブレース芯材2は、前記ブレース本体4に、補強リブ5及びフランジ片6をそれぞれ溶接固着して組み立てられる。
【0041】
次に、図5(a)に示されるように、本実施形態の準備工程S1では、ブレース芯材2の幅方向の左右両側に、一対の分割片7a、7bが配され、同図(b)に示されるように、前記分割片7aが、ブレース芯材2の幅方向の一方側から該ブレース芯材2に挿入される。この際、本実施形態では、ブレース芯材2が、分割片7aの添設部14、14の間で狭着保持される。また、本実施形態のように、添設部14と平行部15とが、滑らかに湾曲している屈曲部Pを介して接続されているため、ブレース芯材2への挿入が容易に行える。
【0042】
本実施形態では、一対の分割片7aがブレース芯材2に挿入されると、該分割片7aとブレース芯材2とがスポット的に溶接される。このような溶接(溶接ビードk1)は、分割片7の全長さに亘って行われる必要はなく、両部材の位置ずれ防止のためであり、通常、分割片7aの略中央部(図3(b)に示される)に5〜10cm程度の小範囲で足りる。なお、ブレース芯材2と分割片7aとが確実に固定されているため、この溶接作業も、別途固定治具などを用いることなく安定して行うことができ、生産性が向上する。
【0043】
次に、図5(c)に示されるように、他方側の分割片7bが、ブレース芯材2の幅方向の他方側から該ブレース芯材2に挿入される。
【0044】
上記挿入工程S2の後、一対の分割片7a、7bが溶接にて固着される。本実施形態では、分割片7の長さ方向の略中央部であって、分割片7の向き合う側片11の端部間11e、11eが溶接される。分割片7、7を一体化する溶接ビードk2の長さも、補剛材3の全長さに亘る必要はなく間欠的で良い。従って、本発明の座屈拘束ブレース1は、生産性に優れる。なお、図1に示されるように、分割片7の長さ方向の両端も溶接にて固着されても良い。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の座屈拘束ブレース1は、補剛材3をブレース芯材2の幅方向両側から挿入するようにしてブレース芯材2に嵌め込むことにより、挿入時の両者の相対移動量が大幅に減じられる。このため、従来のように、座屈防止片とブレース芯材2との間の隙間を無くしても何ら生産性を損ねることがない。換言すれば、補剛材3の座屈防止片とブレース芯材2との間の隙間を無くすことができる。従って、本発明の座屈拘束ブレース1は、このような隙間に基づいて生じうる音鳴りを確実に抑制することができる。また、補剛材3は、分割片7を一体に溶接することにより形成されるため、本発明の座屈拘束ブレース1は、簡易な構造とすることができる。
【0046】
また、本実施形態の座屈拘束ブレース1は、何ら複雑な部材や工程を用いることなく形成できるため、熟練を要することなく単純作業で製造できる。また、補剛材3を構成する分割片7は、例えばロール成形で効率よく連続製造することができる。従って、高い工業生産性が得られるとともに、座屈拘束ブレース1の品質がばらつくのも防止できる。
【0047】
図6には、本発明の他の実施形態の座屈拘束ブレース1の断面図が示される。
図6(a)の実施形態では、座屈防止片12が、傾斜部13と添設部14とからなる。このような実施形態では、平行部15が削減されるため、分割片7を加工成形する際のコストがより一層削減される。また、添設部14と傾斜部13とを接続する屈曲部Pが、さらに滑らかになるため、挿入工程S2がスムーズに進行する。このように、補剛材3の断面形状は、種々の態様に変形して実施できる。
【0048】
また、図6(b)の実施形態では、ブレース本体4の厚さ方向の両側面4a、4aが薄いゴムやエラストマーのような粘弾性体からなる防振材で覆われている。このような実施形態は、さらに確実に音鳴りを抑制できるため効果的である。また、図6(c)の実施形態では、座屈防止片12が、ブレース本体4までのびる傾斜部13と、該傾斜部13に接続されかつ傾斜部13とは逆向きに小長さでのびる小傾斜部Sとからなる。この実施形態では、ブレース本体4と接触する面積を小さくすることができるため、さらに挿入工程S2がスムーズに進行する。
【0049】
また、図7(a)には、さらに他の座屈拘束ブレース1の実施形態が示される。この実施形態では、補剛材3の長さ方向の中央部分と両端部分とが、一対の補強片16で補強されている。該補強片16は、前記横断面において、略コ字状をなす鋼材にて形成される。本実施形態では、図7(b)に示されるように、補強片16の幅広の中央面16aが、分割片7の側片11と接する態様で取り付けられ、例えば、ビスB等によって固着されている。このような座屈拘束ブレース1は、一対の分割片7を固着する前記溶接を省略することもできる。
【0050】
図8及び図9(a)、(b)には、本実施形態の座屈拘束ブレース1を構成部材として含む耐力フレーム17が示される。該耐力フレーム17は、矩形状の外周枠18と、この外周枠18の内側に張り出して設けられた取付プレート19とを含んで構成され、家屋等の建築物の架構体に取付けられることにより、水平力を負担してその耐震強度を向上する。
【0051】
前記外周枠18は、例えば上水平に配される上枠18U及び、この上枠18Uの左右両端部間を繋ぐ垂直な竪枠18V、18Vとからなり、各枠材端部相互が固着され、縦長の矩形状をなす。各々の枠材は、例えば断面正方形の角筒状の鋼管が用いられる。
【0052】
竪枠18Vの上端部と上枠18Uの側端部とは、双方の枠材端部に形成したスリットに上プレート20を嵌合しかつ溶接により固着されている。また、竪枠18Vの下部は取付金物21を介して基礎22上に立設されている。ただし、外周枠18等の形状は、種々変更しうるのは言うまでもなく、階上に設置される場合もある。また、一方の竪枠18Vの略中間高さ位置には、外周枠の内側に向く縦長のブレース取付金具23が溶着されている。
【0053】
本実施形態では、外周枠18の内側に略く字状に一対の座屈拘束ブレース1が配置される。具体的には、他方の竪枠18Vの上部とブレース取付金具24との間、及びブレース取付金具24と他方の竪枠18Vの下部との間にそれぞれ斜材として座屈拘束ブレース1が架け渡される。各座屈拘束ブレース1は、フランジ片6が、竪枠18V及びブレース取付金具24に溶接又はボルト等によって固着される。なお、本図から理解されるように、フランジ片6の形状は、台形状に限られるものではなく、取付箇所の態様によって、種々の形状が採用される。
【0054】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【符号の説明】
【0055】
1 座屈拘束ブレース
2 ブレース芯材
3 補剛材
7 分割片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用部材として軸力を負担する長尺かつ板状のブレース芯材と、このブレース芯材に外挿されかつ該ブレース芯材の座屈を抑制する略筒状の補剛材とを具えた座屈拘束ブレースであって、
前記補剛材は、前記ブレース芯材の幅方向の左右両側から該ブレース芯材に挿入可能な一対の分割片からなり、該分割片を一体に溶接することにより形成されることを特徴とする座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記ブレース芯材は、前記補剛材よりも長尺をなしかつ該補剛材の両端からそれぞれ外方にはみ出すはみ出し部と、このはみ出し部の間をなす被拘束部とを有する板状のブレース本体と、
前記被拘束部と前記はみ出し部とに跨って配されかつ前記ブレース本体とで断面略十字状をなすことにより前記分割片で挟まれる一対の補強リブと、
該ブレース本体の両側のはみ出し部それぞれに固着されかつ前記ブレース本体とでブレース芯材の断面を略H型に形成する一対のフランジ片とからなる請求項1記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記補剛材の前記各分割片は、横断面において、前記ブレース本体の幅方向の端縁よりも外側を該ブレース本体の板厚方向にのびる基片と、
該基片の両端からそれぞれ略90度で折れ曲がってブレース本体の幅中心近傍までのびる一対の側片と、
各側片の端部でそれぞれブレース本体側に折れ曲がりかつ該ブレース本体に接触して終端することにより前記ブレース芯材の面外座屈を抑制する座屈防止片とを含む鋼材により形成されたことを特徴とする請求項2記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記座屈防止片は、前記基片側に向かって傾斜してのびる傾斜部を有することにより、前記補強リブに接触することなく設けられる請求項3記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記座屈防止片は、前記傾斜部のブレース本体側に、該ブレース本体と近接しかつ平行にのびる小長さの添設部を有する請求項3又は4記載の座屈拘束ブレース。
【請求項6】
前記座屈防止片は、前記基片と平行にのびる平行部を有する請求項3、4又は5に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項7】
前記座屈防止片は、前記平行部のブレース本体側に、該ブレース本体と接触して平行に基片側にのびて終端する小長さの添設部を有する請求項6記載の座屈拘束ブレース。
【請求項8】
前記補剛材は、前記分割片の向き合う側片間が溶接されることにより固着される請求項1乃至7のいずれかに記載の座屈拘束ブレース。
【請求項9】
前記補剛材の長さ方向の一端側のみが前記ブレース芯材と溶接されてなる請求項1乃至8のいずれかに記載の座屈拘束ブレース。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載された座屈拘束ブレースを斜材として用いたことを特徴とする耐力フレーム。
【請求項11】
構造用部材として軸力を負担する長尺かつ板状のブレース芯材と、このブレース芯材に外挿されかつ該ブレース芯材の座屈を抑制する略筒状の補剛材とを具えた座屈拘束ブレースの製造方法であって、
前記補剛材を、前記ブレース芯材の幅方向の左右両側から該ブレース芯材に挿入可能な一対の分割片として準備する工程と、
前記分割片を、前記ブレース芯材の幅方向の左右両側から該ブレース芯材に挿入する工程と、
前記分割片を一体に溶接する工程とを含むことを特徴とする座屈拘束ブレースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−219437(P2012−219437A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82967(P2011−82967)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】