説明

座布団

【課題】 スポーツスタジアムなどで屋外観戦座布団としての使用中、不意の降雨時にレインコートや防寒着としても使用することのできる座布団を提供する。
【解決手段】 クッション用素材とクッション用素材を内包するカバー10とを備える。カバー10が、展開折畳み可能なカバー素材11と、カバー素材11を折り畳んだときにその合わせ縁部を閉じ合わせるファスナー14と、を備える。クッション用素材は、カバー素材11に折り重ね状態で収容されてクッション性を発揮する柔軟な生地素材30でなる。生地素材30はレインコートや防寒着などの衣服の形状に作られている。カバー素材11は、シート素材30aを着用したときの着用者の臀部に対応する箇所に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座布団、詳しくは、スポーツスタジアムなどで屋外観戦をするときや屋外の公園で座るときなどに利用される座布団に関する。特に、座布団に用いられているクッション用素材を、雨除けのためのレインコート、或いは防寒着として使用することができるようにした座布団に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座布団にベルトを設けておき、そのベルトを腰に巻いて座布団を臀部に当てがうようにして携行する携帯座布団が提案されていた(たとえば、特許文献1参照)。また、注入口より空気を吹き込んで膨らませると、口当て部を備えるメガホンが形成され、注入口から空気を排出することにより小さく折り畳むことのできるメガホンも提案されていた(たとえば、特許文献2参照)。そして、この特許文献2によって提案されているメガホンは、膨らんでメガホンの形状に保形されている状態から、空気を抜かずに偏平に押し潰すことによって座布団として使用することが可能であるとされている。
【0003】
ところで、野球やサッカーなどの種々のスポーツをスタジアムで観戦するとき、スタジアムに設置されている椅子はプラスチック製や木製であり、長時間に亘って座っていると、臀部が痛くなりやすかったり疲れやすかったりする。そのため、観戦者は、持参した座布団を椅子に敷いて使うことがある。
【0004】
また、スポーツなどをスタジアムで観戦中に、雨に降られることは多々起こり得ることである。そのため、観戦者は、折畳み傘やレインコートを持参して不意の降雨に備えていることがある。
【0005】
さらに、スポーツなどをスタジアムで観戦中に、春先など急激に気温が下がるときがあり、そのため、スポーツなどをスタジアムで観戦する観戦者は、予め防寒着を持参して気温の急激な変化に備えていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−187350号公報
【特許文献2】特開2001−282248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、観戦者が、スポーツ観戦に際して折畳み傘やレインコート、或いは防寒着を持参したり、座布団を持参したりすることは煩わしい。また、それらを持参すると、観戦者にとっての持ち物の数が多くなり、それだけ置き忘れてしまうという懸念も増大する。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、座布団としての使用中に不意の降雨時にレインコートとして使用することのできる対策を講じた座布団を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、座布団としての使用中に防寒着としても使用することのできる対策を講じた座布団を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、不意の降雨時にレインコートとして使用、或いは防寒着として使用するときにおいても、座布団としての機能も発揮できる対策を講じた座布団を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る座布団は、クッション用素材とこのクッション用素材を内包するカバーとを備えている。そして、上記カバーが、平坦形状と二つ折り形状との間で展開折畳み可能に形成されたカバー素材と、このカバー素材を二つ折り形状に折り畳んだときにその合わせ縁部を閉じ合わせ、その折畳み状態から平坦形状に展開するときにその合わせ縁部を開放するための開閉用部材と、を備えている。また、上記クッション用素材が、折畳み状態の上記カバー素材に折り重ね状態で収容されてクッション性を発揮し、展開状態の上記カバー素材から引き出されて展開されることにより衣服として着用可能な柔軟な生地素材でなる。
【0012】
このように構成された座布団は、二つ折り形状に折り畳んだカバー素材の間に折り重ね状態の柔軟な生地素材を挟み込んだ状態に収容させて、そのカバー素材の合わせ縁部を開閉用部材によって閉じ合わせておくと、本来の用途である座布団として使用することが可能である。そして、使用に際しては、カバー素材に折り重ね状態で収容されている柔軟な生地素材がクッション用素材として機能するので、座布団に要求されるクッション性も得られる。
【0013】
その一方で、開閉用部材によってカバー素材の合わせ縁部を開放してそのカバー素材を平坦形状に展開することとを併せて、クッション用素材としての柔軟な生地素材を、展開状態のカバー素材から引き出して展開すると、衣服として着用することが可能になる。
【0014】
本発明において、上記カバー素材は、上記生地素材を衣服として着用したときの着用者の臀部に対応する箇所に、平坦形状に展開された状態で接合されていることが望ましい。このように構成しておくと、生地素材を衣服として着用したときでも、カバー素材が着用者の臀部を覆うように位置することになる。そのため、着用者は、その衣服を着用したままカバー素材の上に座ることができるようになる。
【0015】
本発明において、上記生地素材がシート素材であると共に、上記衣服がレインコートであるとしても良い。その場合、スポーツ観戦に際して不意の降雨があってもそのシート素材をレインコートとして着用することができ、不意の降雨に備えることが可能になる。
【0016】
本発明において、上記生地素材がフリース素材であると共に、上記衣服が防寒着であるとしても良い。その場合、スポーツ観戦に際して急激に気温が下がってもそのフリース素材を防寒着として着用することができ、急激に気温の低下に備えることが可能になる。
【0017】
本発明において、上記カバー素材は、それ自体がクッション性を備えていることが望ましい。このように構成されていると、クッション用素材としての柔軟な生地素材を衣服して使用しているときでも、また、クッション用素材としての柔軟なシート素材をレインコートして使用しているときでも、また、クッション用素材としての柔軟なフリース素材を防寒着して使用しているときでも、カバー素材自体のクッション性を利用して座布団としての機能を発揮させることが可能である。
【0018】
本発明においては、上記開閉用部材がファスナーである、という構成を採用することが可能である。ここでいう「ファスナー」には、多数の係合爪同士をスライダーの操作により係合させたり係合解除させたりすることのできる機械的構造を備えた汎用的な所謂「チャック」と呼ばれるものが含まれることは勿論、繊維でなるループとそのループに係脱可能な繊維でなる鉤とを備える所謂「面状ファスナー」であってもよい。さらに、ホックやボタンを利用したものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る座布団は、クッション性を備えた座布団としての機能のみを利用することも、座布団としての機能と衣服、例えばレインコートや、防寒具としての機能とを同時に利用することも可能である。しかも、持ち運ぶときには、衣服として使用することのできる柔軟な生地素材をカバー素材にクッション用素材として収容しておくことが可能であるので、見掛け上の持ち運びの形態は座布団を持ち運ぶときのそれと同様にコンパクトな形態になるという利点がある。また、そのため、従来のように座布団や折畳み傘、レインコート、防寒具などを別々に持ち運ぶ煩わしさがなくなり、それだけ持ち物の数が少なく抑えられるようになる。また、持ち物の数が減って置き忘れの懸念も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る座布団の外観形状を例示した斜視図である。
【図2】生地素材に接合されたカバー素材を示す背面図である。
【図3】シート素材を展開することにより形作られたレインコートの背面図である。
【図4】使用状態説明図である。
【図5】シート素材をカバー素材に収容させる手順の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明に係る座布団の外観形状を例示した斜視図、図2はクッション用素材としての生地素材に接合されたカバー素材を示す背面図、図3はシート素材を展開することにより形作られたレインコートの背面図、図4は使用状態説明図である。また、図5はシート素材をカバー素材に収容させる手順の一例を示した説明図である。
【0022】
図1に示した座布団Aは、手提げカバンと同等の大きさに形作られていて、そのカバー10に手提げ用のベルト20が設けられている。
【0023】
図2のように、カバー10は、横長の略矩形に形作られたカバー素材11を有し、そのカバー素材11の外周囲が柔軟性に富む生地素材30に接合されている。この実施形態では、カバー素材11と生地素材30との接合を縫着によって行っているけれども、両者の接合は、粘着テープや接着剤などの他の手段によってもよい。
カバー素材11は、その2つの長辺部の中央部に凹み箇所12,12を具備させることによって、横長方向の中央部13で二つ折り形状に折り畳むことができるようになっている。また、カバー素材11には、ファスナー14でなる開閉用部材が縫着されている。図例のファスナー14は、カバー素材11の横長方向の中央部を境にしてその片側部分の外周囲に設けられた係合爪列14aと、その他側部分の外周囲に設けられた係合爪列と、それらの係合爪列14a,14b同士を係合させたり係合解除させたりするためのスライダー14cとを備えている。すなわち、図例のファスナー14は、機械的構造を備えた汎用的な所謂「チャック」と呼ばれるものである。
【0024】
生地素材30はクッション用部材として採用されている。この生地素材30は、折り重ね状態に折り畳んでそのサイズを小さくすることによって、二つ折り形状に折り畳んだカバー素材11の間に収容することができるようになっている。そして、図5のように、折り重ね状態に折り畳んだ生地素材30を、二つ折り形状に折り畳んだカバー素材11の間に収容した後、ファスナー14(図1、図2参照)のスライダー14cをスライド操作すると、生地素材30が折り重ね状態で二つ折り形状のカバー素材11の間に収容され、カバー素材11は図1のようにその合わせ縁部がファスナー14によって矢印で示したように閉じ合わされてカバー10が偏平に保形される。
【0025】
生地素材30を折り重ね状態にして二つ折り形状のカバー素材11の間に収容し、そのカバー素材11の合わせ縁部をファスナー14によって閉じ合わせると、図1によって類推することができるように、生地素材30でなるクッション用部材がカバー素材11に収容されてなる偏平な座布団Aが形作られる。この座布団Aでは、その内部の折り重ね状態の柔軟な生地素材30が弾性復元作用を発揮してクッション用部材として機能する。そのため、この座布団Aをスタジアムなどの椅子の上に敷いてその上に座ると、座布団Aによって発揮されるクッション性によって臀部の痛さや疲れが軽減される。
【0026】
クッション用素材として利用されている柔軟な生地素材30は、柔軟なシート素材、或いは柔軟なフリース素材など、折畳み状態の上記カバー素材に折り重ね状態で収容されてクッション性を発揮し、展開状態の上記カバー素材から引き出されて展開されることにより衣服として着用可能な柔軟な生地素材30である。
図3又は図4においては、この柔軟な生地素材30をシート素材30aとしレインコートの形状に作られている。そのため、スライダー14cをスライド操作してファスナー14を開き、カバー素材11の合わせ縁部を開放してカバー素材11を平坦に展開し、その状態でカバー素材11からシート素材30aを引き出して展開することにより、シート素材30aを図3又は図4に示したようにレインコートとして使用することが可能になる。図例のシート素材30aによって製作されているレインコートは、着用者の胴体や上下肢を覆うコート本体部41や着用者の頭部を覆うフード部42を備えているけれども、シート素材30aによって製作されるレインコートの構成やデザインは図例に限定されないことは勿論である。
同様に、この柔軟なシート素材30a(生地素材30)をフリース素材とし防寒着として作ることも可能であり、フリース素材によって製作される防寒着の構成やデザインは限定されない。
【0027】
この実施形態において、カバー素材11は、それ自体がクッション性を備えている。このようなカバー素材11は、たとえばカバー素材11に表地と裏地とを具備させると共に、それらの表地と裏地との相互間に肉薄のクッション材を挟み込むことによって容易に得られる。また、カバー素材11を、厚手のクッション性を備えた素地で形成することによっても容易に得られる。
【0028】
また、この実施形態では、図3のように、カバー素材11が、シート素材30aをレインコートとして着用したときの着用者Mの臀部に対応する箇所の表側に、平坦形状に展開された状態で縫着その他の適宜手段を用いて接合されている。このようにしておくと、図4のように、カバー素材11を平坦に展開してシート素材30aをレインコートとして着用したまま、椅子Cの上で展開状態のカバー素材11を敷いて座ることが可能になる。したがって、着用者は、クッション性を発揮するカバー素材11自体の上に腰掛けて、不意の降雨に濡れることを避けられる。尚、本実施形態ではカバー素材11を、シート素材30aをレインコートとして着用したときの着用者Mの臀部に対応する箇所の表側に接合した例を挙げているが、カバー素材11を、シート素材30aをレインコートとして着用したときの着用者Mの臀部に対応する箇所の裏側に接合しても良く、その場合には、カバー素材11はレインコートの内側に位置することとなるから、シート素材30aをレインコートとして着用した状態において、他人からカバー素材11が見えることはないし、また、カバー素材11自体も雨に濡れることはない。
【0029】
さらに、この実施形態では、図3に示したように、カバー素材11にポケット51を具備させてある。このポケット51には、携帯カイロを入れておくことができる。そのため、気温の低いときには、その携帯カイロで使用者の身体が温められるという利点がある。このような使用形態は、シート素材30aをカバー素材11に内包させて座布団Aとして使用するときに限らず、図4に示したようなシート素材30aをレインコートとして使用して、展開したカバー素材11を座布団として使用するときにも有益である。
【0030】
上記実施形態において、シート素材30aには、レインコートに適した防水性又は撥水性を発揮する生地が用いられ、カバー素材11には防水処理が施されている。
【符号の説明】
【0031】
A 座布団
M レインコートの着用者
10 カバー
11 カバー素材
14 ファスナー(開閉用部材)
30 生地素材
30a シート素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション用素材とこのクッション用素材を内包するカバーとを備える座布団において、
上記カバーが、平坦形状と二つ折り形状との間で展開折畳み可能に形成されたカバー素材と、このカバー素材を二つ折り形状に折り畳んだときにその合わせ縁部を閉じ合わせ、その折畳み状態から平坦形状に展開するときにその合わせ縁部を開放するための開閉用部材と、を備え、
上記クッション用素材が、折畳み状態の上記カバー素材に折り重ね状態で収容されてクッション性を発揮し、展開状態の上記カバー素材から引き出されて展開されることにより衣服として着用可能な柔軟な生地素材でなることを特徴とする座布団。
【請求項2】
上記カバー素材は、上記生地素材を衣服として着用したときの着用者の臀部に対応する箇所に、平坦形状に展開された状態で接合されている請求項1に記載した座布団。
【請求項3】
上記生地素材がシート素材であると共に、上記衣服がレインコートである請求項1または請求項2に記載した座布団。
【請求項4】
上記生地素材がフリース素材であると共に、上記衣服が防寒着である請求項1または請求項2に記載した座布団。
【請求項5】
上記カバー素材は、それ自体がクッション性を備えている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した座布団。
【請求項6】
上記開閉用部材がファスナーである請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載した座布団。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245263(P2012−245263A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120899(P2011−120899)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(512101109)
【Fターム(参考)】