説明

廃タイヤ油化装置

【課題】大気汚染を有効防止できる廃タイヤ分解炉装置を提供する。
【解決手段】排ガス処理装置32を備え、この排ガス処理装置32は、熱分解炉から発生する排ガス33を燃焼させる燃焼炉35を有し、さらに、熱分解時に発生するオフガス61もこの燃焼炉35にて同時に燃焼させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤ油化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃タイヤを加熱して、発生する熱分解ガスを冷却して油化する廃タイヤ油化装置として、特許文献1及び特許文献2に記載されたような技術が公知である。
【特許文献1】特開2007− 63408号公報
【特許文献2】特開2004− 67844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の上記技術では、熱分解及び冷却油化あるいは残渣処理を効率良く行う装置又は方法が提案されているが、熱分解炉から発生する排ガスを、そのまま大気に放出していた。
即ち、従来の廃タイヤ油化装置では、大気汚染に対する対策が不十分であるという問題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明に係る廃タイヤ油化装置は、廃タイヤを投入して密封状態で加熱して油分抽出を行う熱分解炉装置から発生する排ガスを処理する排ガス処理装置を具備している。
また、上記排ガス処理装置は、上記排ガスを燃焼させる燃焼炉を備え、熱分解時に発生するオフガスを該燃焼炉にて同時に燃焼させるように構成した。
また、上記排ガス処理装置は、熱分解時に発生するオフガスと、上記排ガスを、燃焼させる燃焼炉を備え、さらに、該燃焼炉に廃熱ボイラを連通連結して、該燃焼炉の排気の余熱を回収するように構成されているものである。
【0005】
また、上記熱分解炉装置から冷却油化ラインへ熱分解ガスを送る熱分解ガス流路には、逆流防止のための逆止弁が介設されている。
また、上記冷却油化ラインは、途中から、重質油採取ライン及び軽質油採取ラインに分岐形成し、重質油と軽質油とを別々に採取するように構成されている。
【0006】
また、上記熱分解炉装置から送られてくる熱分解ガスを油化する冷却油化ラインを備え、該冷却油化ラインは、重質油採取ライン及び軽質油採取ラインに途中から分岐形成され、重質油と軽質油とを別々に採取するように構成し、さらに、分岐する前の共通ラインは、一次冷却器に連通連結され、かつ、上記軽質油採取ラインには二次冷却器を設け、上記廃熱ボイラにて回収した上記余熱によって温めた湯を、上記一次冷却器の冷却水として使用する配管を付設したものである。
【0007】
また、上記熱分解炉装置は、定位置に設けられる熱分解炉本体と、該熱分解炉本体に順次装入される複数の廃タイヤ投入用のカートリッジとを、備え、上記カートリッジの廃タイヤ投入位置・待機位置、及び、上記熱分解炉本体の上記定位置、さらに、上記排ガス処理装置と冷却油化ラインを、平面視一直線状に配設した。
また、上記一直線状に沿って、クレーン架台を配設し、上記カートリッジを昇降可能にチェーンブロックにて吊持して、該クレーン架台に沿って縦走させると共にこれと直交方向に横走させる天井クレーンを、上記クレーン架台に取付けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る廃タイヤ油化装置によれば、大気汚染を有効防止できる。かつ、回収した排気の余熱を有効に再利用可能となる。さらに、得られる再生油は、品質が優れ、安定している。かつ、得られる軽質油の割合(率)も多い。また、必要な工場用地面積が少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
【0010】
図1〜図12は、本発明に係る廃タイヤ油化装置をほぼ工程順に説明するための図であり、図13, 図14, 図15は、上記図1〜図3の前工程を除いた、その後の工程に、用いられる廃タイヤ油化装置の正面図、平面図、簡略要部側面図である。
【0011】
原料としてのドーナツ状の廃タイヤ1を図1のように短期間だけストックし、又は、ほとんどストックせずに次々とトラック等で送って、図2(A)に示す裁断機2に投入して、図2(B)に示す如く、一点鎖線の裁断線3にて8個〜32個に分割する。裁断線3は廃タイヤ1の軸心点O1 を通る放射線(ラジアル線)に該当する。
裁断機2は、図2に示すように、放射状に取付盤4の下面に固着された8枚〜32枚の切断刃5を有し、この取付盤4を昇降作動させる油圧シリンダ等のアクチュエータ6を備える。さらに、まな板部材(受け盤)7を有し、エンドレス状送り装置8にて、間欠的に送られてくる廃タイヤ1を、このまな板部材7の上面に載った位置にて(間欠的に)停止させ、まな板部材7の上方から取付盤4を下降させて、切断刃5によって、図2(B)の裁断線3に沿って切断(分割)して、分割タイヤ片9とする。
【0012】
10はプラスチック製のフレキシブルコンテナを示し、切断刃5(取付盤4)を上昇させて後に、再起動させた送り装置8にて、分割タイヤ片9を下流(図2(A)の右方向)へ送って、フレキシブルコンテナ10へ投入して収納する。
このフレキシブルコンテナ10は、例えば、PE,PP等のプラスチックから製作され、廃タイヤ1を加熱して油化処理する際に、同時に油化可能である材質とする。即ち、フレキシブルコンテナ10も油化原料となる。その形状は、吊紐を有する袋型や籠型である。
【0013】
図2で述べた多数の分割タイヤ片9をフレキシブルコンテナ10に詰めることで、廃タイヤ1の容積が著しく減少し、図3に示すように、ストックヤード11に分割タイヤ片9を収納(収容)したフレキシブルコンテナ10を多数個積上げ状に保管できる。フレキシブルコンテナ10と、その内部に収納した分割タイヤ片9とを合わせて収納ユニットUと呼ぶとすれば、収納ユニットUの個数を算えることで処理量の把握と管理が容易となる。
【0014】
図16と図17は、カートリッジ(熱分解釜)12の断面図及び簡略平面図を示し、図4に示すカートリッジ原料投入場13に予め設置したカートリッジ12内へ次々と収納ユニットUを投入する。
所定個数の収納ユニットUをカートリッジ12へ投入して満杯になると、図4に示すような天井クレーン15にて吊上げて、図4の左方向へ移動(横走)させ、隣りの天蓋セット位置14に於て、カートリッジ天蓋16を施蓋する。
【0015】
図5に於て、2個の熱分解炉装置20, 20を示す。分割タイヤ片9とフレキシブルコンテナ10とを一体状に投入して密封状態とした、カートリッジ(熱分解釜)12と天蓋16を備えたカートリッジ組立体17と、このカートリッジ組立体17のカートリッジ12を上方から収容してカートリッジ12を保護するマッフル(カートリッジ保護缶)18と、耐火材を内張りした熱分解炉本体19と、バーナー21等から、熱分解炉装置20が構成されている。しかも、1個の炉本体19に対して、複数個のカートリッジ組立体17、又は、分離状態の複数のカートリッジ12と複数の天蓋16が、対応して、1個の炉本体19に対して交換自在に、順次、カートリッジ組立体17を上方から降下させて組付けられる。この熱分解炉装置20によって、カートリッジ組立体17内の分割タイヤ片9とコンテナ10を加熱し、油分抽出を行う。
【0016】
また、カートリッジ天蓋16には、バネ式安全弁等の爆発緩衝装置22, 22が2個ずつ付設される。図5と図6、及び、図16と図17に示すように、カートリッジ天蓋16の外周端縁部16a、及び、カートリッジ12の上端外周端縁部12aには、各々、2個の被ガイド孔23, 23が設けられている。さらに、マッフル18の上端外周端縁部18aにも、2個の被ガイド孔23, 23が設けられている。各被ガイド孔23は下方拡径状テーパ部を有している。
24, 24は、熱分解炉本体19側の固定部位25, 25に設けられた鉛直ガイド杆であって、平面視 180°対称位置に配設され、固定部位25からの上方突出状の長さは、1500mm以上に設定される。上方先端部24aは先細テーパ状に形成され、上記被ガイド孔23に先端(上端)から挿通される。特に、天蓋16の一対の被ガイド孔23, 23に一対のガイド杆24, 24が挿通され、万一の爆発事故時に、天蓋16を水平状に保ちつつ炉本体19の真上方向へ上昇するように、ガイドして、周辺の作業者の存在する危険な区域等に、天蓋16が飛び込むことを、防止している。
【0017】
このように、ガイド杆24に対して、天蓋16の被ガイド孔23の内周面は、摺動可能に嵌合している。上記1500mm未満であると、爆発事故時に、鉛直ガイド杆24の上方先端部24aを越えて、周辺域へ飛ぶ危険性を生ずる。
固定部位25は、図例では、上方開口状筒型受け金具を、炉本体19の上端外周面に設けることで構成され、この上方開口状筒型受け金具に上方から、ガイド杆24の下端を挿入して、鉛直状に保持し、かつ、図示省略のボルト等の固着具にて固定する。
【0018】
図4と図14に示した天蓋セット位置14、又は、図14に示したカートリッジ組立体17待機位置26から、天井クレーン15にてカートリッジ組立体17を、図5の(図示省略の)右側又は左側の上方位置にまで搬送して後、降下させる際、被ガイド孔23, 23に鉛直ガイド杆24, 24が挿入され、下方に固設されていた熱分解炉本体19に対する(左右前後方向及び回転方向の)位置決めが自動的に行われる。言い換えると、そのような位置決めのガイド部材に、前記鉛直ガイド杆24, 24が兼用されている。
【0019】
このように、炉本体19側の固定部位25に立設された一対の平行な鉛直ガイド杆24, 24は、カートリッジ組立体17の少なくとも天蓋16の被ガイド孔23, 23に挿通されて、万一の爆発事故時の周辺飛び防止による安全ガイド機能、及び、図5のように、炉本体19に対するカートリッジ組立体17の位置決め機能とを、兼備していることとなる。
なお、一対の鉛直ガイド杆24, 24の高さ(長さ)寸法を僅かに相違させている。これによって、上方位置から天井クレーン15にて降下させつつカートリッジ組立体17の被ガイド孔23, 23の一個のみにまず挿入し、その直後に、他方の一個に挿入することで、スムースな鉛直ガイド杆24, 24の挿通作業を実現している。ところで、前記1500mm以上のガイド杆長さとは、短い方の鉛直ガイド杆24について計測した寸法と定義する。
【0020】
図16と図17に示すように、カートリッジ12は、上方開口状有底円形容器であり、底壁から天井壁付の中筒胴部27が内部へ突入するように、設けられている。また、90はタイヤ片9を受ける受け棚であり、図17では図示省略している。
上述の被ガイド孔23は、吊り金具28に設けられ、一対の吊り金具28, 28を、カートリッジ12の外鍔状の外周端縁部12aに下方から引掛け状として、かつ、着脱可能として、取着する。この吊り金具28は、天井クレーン15のフック15a(図5参照)が引掛自在な吊り輪部28aを一体に有する。
【0021】
また、図18に示すように、マッフル18は、上方開口状有底円形容器であり、底壁から天井壁付の中筒胴部29が内部へ突入するように設けられており、その内径寸法D18は、図16に示すカートリッジ12の外径寸法D12よりも大きく設定し、図5と図6に示すように、外周面から底面にわたって、所定クリアランス30が形成するように、相互に組立てられる。また、マッフル18の外鍔状の外周端縁部18aに対して、図17と図18に示した吊り金具28と略同一形状・寸法のものが、着脱自在に取着される。なお、図18では、その吊り金具を省略しているが、図6では、マッフル18にも吊り金具28が取着されている状態を図示している。
【0022】
次に、排ガス処理装置32が、図19及び図11と図12に示すように、設けられている。図11の配管31と図12の配管31とは、連通連結され、★12と★12は、相互に接続されているが、図面を描く上で図11と図12に分けて図示している。また、図19の全体構成説明図に於て、排ガス処理装置32を示し、★11と★11とは相互に接続されている。
【0023】
廃タイヤ1を投入して密封状態で加熱して油分抽出を行う熱分解炉装置20から発生する(矢印で示す)排ガス33は、煙道34を通って、排ガス処理装置32(の二次燃焼炉35)へ送られる。
また、排ガス処理装置32は、2個の前記二次燃焼炉35, 35と、2個の廃熱ボイラ36, 36と、配管31と、耐熱バグフィルタ37と、排ガス誘引ファン38と、配管39、及び、配管31の途中に配設された開閉切換弁40等を、備えている。
【0024】
図5と図14に示すように、熱分解炉装置20, 20が2個配設されており、択一的、又は、同時に、熱分解作動を行えるように、各装置20に対応して、図11のように2個の二次燃焼炉35, 35と2個の廃熱ボイラ36, 36を設け、配管31の途中で合流して、1個の耐熱バグフィルタ37へ排気が送られている。
【0025】
次に、熱分解炉装置20から送り出される熱分解ガス51を油化する冷却油化ラインについて以下説明する。図19、及び、図6,図7,図8に於て、41は一次冷却器であり、逆止弁42を有する配管43にて熱分解炉装置20に連通連結され、油化ガスを一次冷却器41へ送って、重質油の油化を行って、重質油用油水分離器44にて油水分離を行って重質油用サージタンク45に送り込み、次に、図6の★7と図7の★7とが接続された配管46にて、重質油用油水分離槽47へ送り込んで、油と水とを分離した後、重質油用中継タンク48及び一時貯溜タンク49に重質油を貯蔵し、図7のように、この一時貯溜タンク49からA重油タンクローリ50にて搬出してゆく。
なお、図7では、上記中継タンク48を図示省略した。さらに、図19では、上記一時貯溜タンク49を図示省略した。なお、図19と図7に於て、Pはポンプを示す。
【0026】
上述した一次冷却器41の一部、重質油用油水分離器44、重質油用サージタンク45、重質油用油水分離槽47、タンク48, 49及びポンプPと配管等によって、重質油採取ラインLV を構成している。
【0027】
他方、一次冷却器41の上部からは別の配管52にて二次冷却器55へ軽質油用油化ガスを送って、二次冷却器55にて軽質油の油化を行って、軽質油用油水分離器54にて油水分離を行って軽質油用サージタンク53に送り込み、次に、図6の★8と図8の★8とが接続された配管56にて、軽質油用油水分離槽57へ送り込み、油と水とを分離し、次に、軽質油用中継タンク58及び一時貯溜タンク59に軽質油を貯蔵し、図8のように、この一時貯溜タンク59から軽油タンクローリ60にて、搬出してゆく。
なお、図8では、上記中継タンク58を図示省略した。さらに、図19では、一時貯溜タンク59を図示した。なお、図19と図8に於て、P′はポンプを示す。
【0028】
上述した一時冷却器41の一部、及び、配管52、二次冷却器55、軽質油用油水分離器54、軽質油用サージタンク53、軽質油用油水分離槽57、タンク58, 59及びポンプP′と配管等によって、軽質油採取ラインLt を構成している。
【0029】
図19、及び、図6と図7,図8に示したように、熱分解炉装置20から送られてくる熱分解ガス51を油化する冷却油化ラインL0 は、重質油採取ラインLV 及び軽質油採取ラインLt に、途中に於て───つまり一時冷却器41の内部に於て───分岐形成されており、重質油OV と軽質油Ot とを別々に採取するように、構成されている。さらに、分岐する前の共通ラインLm は前記配管43が相当しており、この共通ラインLm (配管43)は一次冷却器41に連通連結されている。
そして、既述の廃熱ボイラ36にて回収した余熱によって暖めた湯は、図示省略した配管によって、一次冷却器41に送って、この一次冷却器41の冷却水として使用する。このようにして、油化ガスの再生時に、廃熱ボイラ36よりの湯を使用することによって、軽質油の油化を少しでも遅らせ、重質油と軽質油との混ざり込みを減らし、再生油の品質を向上維持できる。
【0030】
ところで、図19及び図6と図11に示すように、熱分解時に発生するオフガス61を、二次冷却器55から取り出して、オフガス用配管62によって、(二次)燃焼炉35へ供給し、(既述した)排ガス33と共に、オフガス61を同時に燃焼させるように構成している。
繰り返して説明すると、排ガス処理装置32は、熱分解時に発生する(二次冷却器55からの)オフガス61と、熱分解炉装置20からの排ガス33を、重質油63と共に二次燃焼炉35にて燃焼させる。かつ、燃焼炉35に廃熱ボイラ36を連通連結して、燃焼炉35の排気の余熱を回収している。
【0031】
また、図19に於て、重質油少量タンク64を設けて、前記中継タンク48内の重質油Ov を配管65にて送って、重質油少量タンク64で貯溜し、ここから二次燃焼炉35の燃料として送る構成とする。さらに、分岐点66から分岐した配管67にて熱分解炉装置20のバーナー20Aへも(矢印68のように)送って、このバーナー20Aの燃料としても再利用する。
また、図6と図19に示すように、熱分解炉装置20から冷却油化ラインL0 へ熱分解ガス51を送る熱分解ガス流路(共通ラインLm としての配管43)には、逆流防止のための逆止弁42が、介設される。
【0032】
次に、図9はカートリッジ冷却ゾーン69を示す。熱分解炉本体19に装入されたカートリッジ12内の分割タイヤ片9とフレキシブルコンテナ10が熱分解を完了すると、そのカートリッジ12を冷却ゾーン69に搬送して、所定時間空冷させる。支持枠70が床に立設され、天井クレーン15にて上方から降下させて、熱いカートリッジ12を保持して、工場扇風機71等にて空冷させる。
その後、図10に示すように、カートリッジ反転装置72の位置まで空冷後のカートリッジ12を天井クレーンにて搬送して、炭化物73をローラー式解砕機74にて粉砕し、磁力選別コンベア75にて、金属スクラップ76と粉砕炭化物77に選別しつつ、金属スクラップ収容器78と粉砕炭化物収容器79に投入する。
【0033】
なお、前記カートリッジ冷却ゾーン69に於て、冷却された後、カートリッジ組立体17から天蓋16を取去り、次に、天井クレーンにてカートリッジ12とその中の炭化物73とを、カートリッジ反転装置72の位置まで搬送する(図13と図14参照)。
そして、図14及び図13, 図15に於て、熱分解炉装置20は、定位置Fに設けられた左右2個の熱分解炉本体19, 19と、この熱分解炉本体19, 19に順次装入される複数のカートリッジ12(カートリッジ組立体17)とを、一揃えとして備えている。そして、カートリッジ12の廃タイヤ投入位置80、待機位置26、及び、熱分解炉本体19の定位置F、さらに、排ガス処理装置32と前述の冷却油化ラインL0 を、平面視一直線状に配設した(図14参照)。
【0034】
図13〜図15に示すように、天井クレーン15のクレーン架台81は、上記一直線状に沿って、配設されている。即ち、このクレーン架台81は、平面視細長矩形状であって、縦部材82, 82と、その前端相互と後端相互を連結する横部材83, 83をもって矩形に枠組みされて、床面から十分高所に水平状に、多数本の柱84にて保持されている。この縦部材82にはレール85が固設され、このレール85上を転動する車輪を備えた天井クレーン15の移動枠86が、図13と図14の左右方向に、移動自在に設けられている(但し、図14では図示省略)。
【0035】
そして、図4と図5に示すように、移動枠86の長手方向に、移動可能として、電動チェーンブロック87を取付けて、各種吊下治具を介して、フック15a,15aにて、カートリッジ12又はカートリッジ組立体17等を、吊上げたり吊下げする。
要するに、クレーン架台81に沿って、カートリッジ12(カートリッジ組立体17)等を、縦走させ───図13と図14の左右方向へ走行させ───、さらに、これと直交する方向に横走させる天井クレーン15を、クレーン架台81に取付けられている。
【0036】
なお、図13と図14に於て、88, 89は冷水タンク,温水タンクを示しており、補助的な部品である。この図13〜図15でも明らかなように、反転装置72の一部、及び、ローラー式解砕機74、及び、コンベア75、収容器78, 79を除いて、主要部は、平面視、細長矩形状のクレーン架台81の内部に、配置されており、施設の各構成部(構成装置)を、直列に配置して、工場用地面積が極めて小さく済む。しかも、施設を直列に配置することで、作業者の動線が錯綜せず、最短距離の動きで済む。
【0037】
以上述べたように、図2に示したように廃タイヤ1を8〜32個に分割(裁断)することで、カートリッジ12への投入可能な容積率を著しく向上でき、特に、16分割が好ましく、従来は、カートリッジ1個当たり、 100本の廃タイヤ1の投入であったものが、 400本にまで増加できた。8個未満では、ほとんど上記容積率の増加が期待できなくなり、さらに、図3に示したストックヤード11の必要な空間が少なくて済む。逆に、16個を越すと、裁断作業に時間が掛かり、又は、大きな動力を要することとなる。
【0038】
また、図2〜図4に於て、フレキシブルコンテナ10への収納タイヤ本数は、約50本とする。そして、フレキシブルコンテナ10自身も、図6に示す熱分解炉装置20内で、廃タイヤと共に、油分抽出が同時に行われるので、その後の、処理(廃棄等の引出し作業)が省略できる。
そして、熱分解炉装置20から出る排ガス33を処理する排ガス処理装置32を付設したことで、大気汚染を最小限に抑制可能となった。特に、図12に示すように、排ガス処理装置32が、触媒担持の耐熱バグフィルタ37を備え、NOx,SOx等の酸化分解を促進して、一層、大気汚染防止について配慮している。そして、本発明によれば、日量1200本〜3600本もの廃タイヤ1の大量の処理が実現し、十分に事業採算が採れる。
【0039】
なお、図13と図14と図19等に於て、図示省略の発電機とディーゼルエンジンを付設すれば、図7のタンクローリ50による重質油Ov の搬出量を減らして、その重質油Ov を、上記発電機を駆動するディーゼルエンジンの燃料に(工場内にて)利用でき、電気代が無くなって、大幅なランニングコスト削減を図り得る。
なお、一次冷却器41を冷却する水を利用して、作業者のシャワーに利用したり、洗車用温水として利用するも、望ましい。
【0040】
また、図10に示したカートリッジ反転装置72を設けたことにより、カーボンブラック等の炭化物73の排出を容易迅速に行うことが可能となり、その後、下部のローラー式解砕機(ローラークラッシャー)74によって、粉砕し、次に、磁力選別コンベア75にて、カーボンブラック(粉砕炭化物)77とワイヤ(金属)スクラップ76に、自動的に分別できる。しかも、粉砕したカーボンブラック77や金属スクラップ76は、搬出時の袋詰め作業も容易となる。
【0041】
そして、図13と図14に示したように、施設全体を一直線状(直列)に配置したことで、工場用地が少なくて済み、かつ、作業者の動線が錯綜せず、最短距離での作業が実現した。なお、図1,図2,図3に示した廃タイヤ1の前処理工程は、図13と図14とは、別の近接場所とするのが望ましく、廃タイヤ投入位置80へ各種搬入手段にて搬入(投入)する。
【0042】
本発明に係る廃タイヤ油化装置は、上述したように、廃タイヤ1をラジアル方向に裁断して8〜32個に分割する裁断機2と、該裁断機2にて裁断した分割タイヤ片9を収納するプラスチック製のフレキシブルコンテナ10と、該フレキシブルコンテナ10とその内部に収納した上記分割タイヤ片9とを一体状に投入して該コンテナ10及び分割タイヤ片9を密封状態で加熱して油分抽出を行う熱分解炉装置20とを、備えている構成であるので、熱分解炉装置20へ一度に投入可能な廃タイヤ1の本数が著しく増加可能となり、処理量を増加できる。さらに、分割タイヤ片9を収納したプラスチック製のフレキシブルコンテナ10は、狭い保管場所(ストックヤード)に保管可能となり、蚊の発生も減少でき、保管管理し易く、計量も容易となる。そして、熱分解炉装置20内でプラスチック製のフレキシブルコンテナ10はタイヤ片9と共に油分抽出され、その取出し作業が省略できる。
【0043】
また、廃タイヤ1をラジアル方向に裁断して8〜32個に分割する裁断機2と、該裁断機2にて裁断した分割タイヤ片9を収納するプラスチック製のフレキシブルコンテナ10と、該分割タイヤ片9を収納した該フレキシブルコンテナ10を保管するストックヤード11と、上記分割タイヤ片9を収納した状態の上記フレキシブルコンテナ10の所定数のものを上記ストックヤード11から搬出して投入されるカートリッジ12と、該カートリッジ12に施蓋されるカートリッジ天蓋16と、熱分解炉本体19と、を有し、上記カートリッジ12及びカートリッジ天蓋16によって上記コンテナ10及び分割タイヤ片9を密封状態として上記熱分解炉本体19にて加熱して油分抽出を行う熱分解炉装置20とを、備えているので、裁断機2による裁断(分割)が容易で小さなクズを発生しないで済み、さらに、一度に熱分解炉装置20へ投入できる廃タイヤの量を増加でき、能率良く油化処理を行い得る。さらに、ストックヤード11には整然と保管可能であり、蚊の発生も防止できる。そして、保管管理も容易となり、廃タイヤの投入量の計算も容易である。プラスチック製のフレキシブルコンテナ10は、タイヤ片9と共に乾留され、その後にコンテナ10から取出す作業が不要となる。
【0044】
また、上記カートリッジ天蓋16には、爆発緩衝装置22が付設されているので、万一の爆発事故の被害を防止できる。
また、上記カートリッジ天蓋16の外周端縁部16aには 180°対称位置に2個の被ガイド孔23,23が設けられ、かつ、上記熱分解炉本体19側の固定部位25には、上記被ガイド孔23に挿通されて爆発事故時に上記カートリッジ天蓋16を水平状に保ちつつ上昇させる1500mm以上の長さの鉛直ガイド杆24,24が上方突出状に、設けられている構成であるので、万一の爆発事故時に、カートリッジ天蓋16が思わぬ方向に飛び去ることを阻止して、水平状態で真上に上昇ガイドされて、被害の発生を最小に抑制できる。
【0045】
また、上記鉛直ガイド杆24は、上方先端部24aが先細テーパ状として、上記カートリッジ12に上記カートリッジ天蓋16を施蓋した施蓋ユニット状態のカートリッジ組立体17の上記被ガイド孔23,23に挿入され、上記熱分解炉本体19に対する位置決めのガイド部材に兼用されているので、上述の万一の爆発時の被害を抑制する鉛直ガイド杆24は、熱分解炉本体19に対してカートリッジ組立体17の組付けの位置決めを、容易に行うガイドの役目を、巧妙に兼ねており、構造が簡易でありながら、優れた熱分解炉装置であるといえる。
【0046】
そして、本発明は上述のように、廃タイヤ1を投入して密封状態で加熱して油分抽出を行う熱分解炉装置20から発生する排ガス33を処理する排ガス処理装置32を具備するので、大気汚染を有効に防止できる。
また、上記排ガス処理装置32は、上記排ガス33を燃焼させる燃焼炉35を備え、熱分解時に発生するオフガス61を該燃焼炉35にて同時に燃焼させるように構成したので、排ガス33及びオフガス61を共に、燃焼によって無害化して、大気汚染を一層有効に防止する。
また、上記排ガス処理装置32は、熱分解時に発生するオフガス61と、上記排ガス33を、燃焼させる燃焼炉35を備え、さらに、該燃焼炉35に廃熱ボイラ36を連通連結して、該燃焼炉35の排気の余熱を回収するように構成されているので、廃熱ボイラ36にて燃焼炉35の排気の余熱を十分に回収でき、例えば、湯水を作業者のシャワーに用いたり、洗車に用いたり、あるいは、一次冷却器41を暖めることで、軽質油の油化を少し遅らせて、重質油と軽質油の混ざり込みを減少し、再生油の品質を向上できる。
【0047】
また、上記熱分解炉装置20から冷却油化ラインL0 へ熱分解ガス51を送る熱分解ガス流路には、逆流防止のための逆止弁42が介設されているので、万一、熱分解炉装置20のカートリッジ内が負圧となったとき、逆流を阻止して、空気侵入を堰き止めることができる。 また、上記冷却油化ラインL0 は、途中から、重質油採取ラインLv 及び軽質油採取ラインLt に分岐形成し、重質油Ov と軽質油Ot とを別々に採取するように構成されているので、得られる再生油の品質が安定し、再利用可能な優れた燃料が採取できる。
【0048】
また、上記熱分解炉装置20から送られてくる熱分解ガス51を油化する冷却油化ラインL0 を備え、該冷却油化ラインL0 は、重質油採取ラインLv 及び軽質油採取ラインLt に途中から分岐形成され、重質油Ov と軽質油Ot とを別々に採取するように構成し、さらに、分岐する前の共通ラインLm は、一次冷却器41に連通連結され、かつ、上記軽質油採取ラインLt には二次冷却器55を設け、上記廃熱ボイラ36にて回収した上記余熱によって温めた湯を、上記一次冷却器41の冷却水として使用する配管を付設したので、得られる再生油を最適の用途に使い分け可能となる。しかも、一次冷却器41の冷却水として廃熱ボイラ36からの湯を利用することにより、軽質湯Ot の油化を少しでも遅らせ、重質油と軽質油の混ざり込みを減らせ、再生油の品質を確保できる。
【0049】
また、上記熱分解炉装置20は、定位置Fに設けられる熱分解炉本体19と、該熱分解炉本体19に順次装入される複数の廃タイヤ投入用のカートリッジ12とを、備え、上記カートリッジ12の廃タイヤ投入位置80・待機位置26、及び、上記熱分解炉本体19の上記定位置F、さらに、上記排ガス処理装置32と冷却油化ラインL0 を、平面視一直線状に配設したので、工場への敷設必要面積を減少でき、さらに、作業者の動線が錯綜せず、スムースに作業が可能である。
また、上記一直線状に沿って、クレーン架台81を配設し、上記カートリッジ12を昇降可能にチェーンブロック87にて吊持して、該クレーン架台81に沿って縦走させると共にこれと直交方向に横走させる天井クレーン15を、上記クレーン架台81に取付けたので、重量の大きいカートリッジ組立体17やカートリッジ12を、必要な場所へ、スムーズかつ容易に搬送して、設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の一形態を説明するためのストックされた廃タイヤの正面図である。
【図2】廃タイヤの裁断を説明するための図であり(A)は要部正面図、(B)は平面説明図である。
【図3】ストックヤードの状態を示す正面図である。
【図4】要部正面図である。
【図5】要部断面正面図である。
【図6】要部構成説明図である。
【図7】要部構成説明図である。
【図8】要部構成説明図である。
【図9】要部構成説明図である。
【図10】要部構成説明図である。
【図11】要部構成説明図である。
【図12】要部構成説明図である。
【図13】全体正面図である。
【図14】全体平面図である。
【図15】要部側面説明図である。
【図16】カートリッジの一例を示す断面正面図である。
【図17】カートリッジの一例を示す平面図である。
【図18】マッフルの一例を示す断面正面図である。
【図19】略全体の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 廃タイヤ
2 裁断機
9 分割タイヤ片
10 フレキシブルコンテナ
11 ストックヤード
12 カートリッジ
12a 外周端縁部
15 天井クレーン
16 カートリッジ天蓋
16a 外周端縁部
17 カートリッジ組立体
19 熱分解炉本体
20 熱分解炉装置
22 爆発緩衝装置
23 被ガイド孔
24 鉛直ガイド杆
24a 上方先端部
25 固定部位
26 カートリッジ組立体待機位置
32 排ガス処理装置
33 排ガス
35 燃焼炉
36 廃熱ボイラ
41 一次冷却器
42 逆止弁
51 熱分解ガス
55 二次冷却器
61 オフガス
80 廃タイヤ投入位置
81 クレーン架台
87 (電動)チェーンブロック
0 冷却油化ライン
m 共通ライン
v 重質油採取ライン
t 軽質油採取ライン
v 重質油
t 軽質油
F 定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃タイヤ(1)を投入して密封状態で加熱して油分抽出を行う熱分解炉装置(20)から発生する排ガス(33)を処理する排ガス処理装置(32)を具備することを特徴とする廃タイヤ油化装置。
【請求項2】
上記排ガス処理装置(32)は、上記排ガス(33)を燃焼させる燃焼炉(35)を備え、熱分解時に発生するオフガス(61)を該燃焼炉(35)にて同時に燃焼させるように構成した請求項1記載の廃タイヤ油化装置。
【請求項3】
上記排ガス処理装置(32)は、熱分解時に発生するオフガス(61)と、上記排ガス(33)を、燃焼させる燃焼炉(35)を備え、さらに、該燃焼炉(35)に廃熱ボイラ(36)を連通連結して、該燃焼炉(35)の排気の余熱を回収するように構成されている請求項1記載の廃タイヤ油化装置。
【請求項4】
上記熱分解炉装置(20)から冷却油化ライン(L0 )へ熱分解ガス(51)を送る熱分解ガス流路には、逆流防止のための逆止弁(42)が介設されている請求項1,2又は3記載の廃タイヤ油化装置。
【請求項5】
上記冷却油化ライン(L0 )は、途中から、重質油採取ライン(Lv )及び軽質油採取ライン(Lt )に分岐形成し、重質油(Ov )と軽質油(Ot )とを別々に採取するように構成されている請求項4記載の廃タイヤ油化装置。
【請求項6】
上記熱分解炉装置(20)から送られてくる熱分解ガス(51)を油化する冷却油化ライン(L0 )を備え、該冷却油化ライン(L0 )は、重質油採取ライン(Lv )及び軽質油採取ライン(Lt )に途中から分岐形成され、重質油(Ov )と軽質油(Ot )とを別々に採取するように構成し、さらに、分岐する前の共通ライン(Lm )は、一次冷却器(41)に連通連結され、かつ、上記軽質油採取ライン(Lt )には二次冷却器(55)を設け、上記廃熱ボイラ(36)にて回収した上記余熱によって温めた湯を、上記一次冷却器(41)の冷却水として使用する配管を付設した請求項3記載の廃タイヤ油化装置。
【請求項7】
上記熱分解炉装置(20)は、定位置(F)に設けられる熱分解炉本体(19)と、該熱分解炉本体(19)に順次装入される複数の廃タイヤ投入用のカートリッジ(12)とを、備え、上記カートリッジ(12)の廃タイヤ投入位置(80)・待機位置(26)、及び、上記熱分解炉本体(19)の上記定位置(F)、さらに、上記排ガス処理装置(32)と冷却油化ライン(L0 )を、平面視一直線状に配設した請求項1,2,3,4,5又は6記載の廃タイヤ油化装置。
【請求項8】
上記一直線状に沿って、クレーン架台(81)を配設し、上記カートリッジ(12)を昇降可能にチェーンブロック(87)にて吊持して、該クレーン架台(81)に沿って縦走させると共にこれと直交方向に横走させる天井クレーン(15)を、上記クレーン架台(81)に取付けた請求項7記載の廃タイヤ油化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−138334(P2010−138334A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317876(P2008−317876)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000223377)
【Fターム(参考)】