説明

廃トナーの処理方法及びその処理プラント並びに廃トナーを用いた固形化燃料の製造方法及びその製造プラント

【課題】トナーを確実に結合状態にして微粒子の飛散を確実に防止でき、また、トナー及びカートリッジを効率良く処理することができる廃トナーの処理方法と、安価に固形燃料を製造できる固形燃料の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
不織布で形成された袋15に、使用済みのトナーカートリッジ16を収容して密封する。袋15に収容されたトナーカートリッジ16を、ホットプレス機1のプレス部11,11で加熱しながら加圧して、塊体17を形成する。塊体17を破砕装置2で破砕し、破砕物から第1磁力選別機3及び非鉄金属選別機4で金属を分別除去して、粉砕装置5で粉砕する。粉砕物に古紙及び廃プラスチックを添加し、成形装置6で混練圧縮して棒状の固形燃料を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレーザプリンタや電子写真式複写機等で使用された廃トナーの処理方法及び処理プラントと、廃トナーを用いた固形化燃料の製造方法及び製造プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタや電子写真式複写機で使用されるトナーは、一般的に合成樹脂が主成分であって粒径が数ミクロンの微粒子であり、カートリッジに充填された状態で流通している。使用済みのトナーカートリッジが廃棄されると、産業廃棄物として埋め立て処理や焼却処理が行われるが、カートリッジ内に残留する廃トナーによって種々の問題が生じる。
【0003】
すなわち、埋め立て処理が行われる場合、カートリッジの破壊や劣化に伴って内部のトナーが漏出し、漏出したトナーで周辺環境が汚染されるという問題がある。また、焼却処分が行われる場合、焼却炉内に微粒子のトナーが充満して粉塵爆発を招くおそれがある。また、微粒子が焼却炉内で飛散し、炉壁に広範囲にわたって付着して溶融するので、焼却炉のメンテナンスの手間が増大し、また、焼却炉の寿命の短縮を招くという問題がある。
【0004】
一方、使用済みのトナーカートリッジを人手で分解し、カートリッジとトナーとに分別して夫々処理を行う処理方法が存在するが、この場合、分解の際に飛散するトナーの微粒子によって作業員が健康被害を受けるおそれがある。また、人手による分解作業に手間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、従来、廃トナーの処理方法として、トナーをカートリッジごと加熱して溶融させ、冷却装置で冷却してトナーを結合状態にした後、この結合状態のトナーとカートリッジを破砕する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この処理方法では、カートリッジの加熱温度を、トナーの溶融温度よりも高く、かつ、カートリッジ材料の溶融温度より低い温度に設定することにより、カートリッジは溶融させないでトナーのみを溶融させるようにしている。これにより、カートリッジを保形して、加熱工程や冷却工程においてカートリッジ単位の運搬を可能にしている。結合状態のトナーとカートリッジを破砕して得た破砕物は、手作業により、カートリッジ由来の樹脂、金属及びゴムや、廃トナー由来の樹脂等に分別している。
【特許文献1】特開2005−131610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の廃トナーの処理方法は、トナーをカートリッジ内に収容したまま加熱をするので、トナーが微粒子の状態で残留しやすい。したがって、破砕工程で残留していたトナーの微粒子が飛散して、周辺環境の汚染や、作業員の健康被害を招くおそれがある。
【0007】
また、トナーの溶融温度よりも高く、かつ、カートリッジ材料の溶融温度より低い温度で加熱をするので、温度管理が難しいという問題がある。このような加熱温度は、トナーの溶融温度を多少越える温度である場合が多く、トナーの溶融温度を下回りやすく、したがって、トナーが微粒子のまま残留しやすいという問題がある。
【0008】
また、トナーをカートリッジ内に収容したまま加熱をするので、冷却して得られる結合状態のトナーは密度が低い。また、加熱工程でカートリッジを保形するので、破砕工程に至るまでカートリッジを個別に扱う必要がある。したがって、破砕工程までの各工程でトナー及びカートリッジが嵩張ることとなり、処理効率が悪いという問題がある。
【0009】
また、破砕物の分別工程では、人手によって樹脂、金属及びゴム等に分別するので手間がかかり、処理費用が上昇する問題がある。したがって、分別後の材料を用いて固形燃料を製造すると、固形燃料のコスト上昇を招いてしまう。
【0010】
そこで、本発明の課題は、トナーを確実に結合状態にして微粒子の飛散を確実に防止でき、また、トナー及びカートリッジを効率良く処理することができる廃トナーの処理方法と、この処理方法によって得た材料を用いて安価に固形燃料を製造できる固形燃料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の廃トナーの処理方法は、トナーを含んだ容器を、不織布で形成された袋に収容する工程と、
上記袋に収容されたトナー及び容器を加熱すると共に加圧して塊体を形成する工程と
を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、トナー及び容器を、不織布で形成された袋に収容した状態で加熱すると共に加圧するので、トナーを袋の外に漏出させることなく結合状態にして、塊体を形成することができる。したがって、トナー微粒子の飛散による周辺環境の悪化を防止することができる。また、トナー及び容器を加熱すると共に加圧するので、高密度の塊体が得られる。したがって、後の工程においてトナー及び容器の取り扱いが簡易になるので、処理効率を向上できる。
【0013】
ここにおいて、上記袋に収容されたトナー及び容器を加熱する温度は、少なくともトナーが溶融する温度であればよい。これにより、加熱温度の管理を容易にできる。
【0014】
一実施形態の廃トナーの処理方法は、上記不織布は、上記トナーの透過を実質的に阻止する一方、空気を透過させることを特徴としている。
【0015】
上記実施形態によれば、トナー及び容器を加圧する際、袋内の空気を効果的に排出しながら加熱及び加圧できるので、空隙の少ない高密度の塊体を形成することができる。
【0016】
一実施形態の廃トナーの処理方法は、上記不織布は、塩素を含まない熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴としている。
【0017】
上記実施形態によれば、上記不織布を含む塊体を焼却処分したり、固形燃料の材料として用いた場合に、ダイオキシンの発生を防止することができる。
【0018】
一実施形態の廃トナーの処理方法は、上記袋に収容されたトナー及び容器を、上記トナーの融点よりも高い温度で加熱することを特徴としている。
【0019】
上記実施形態によれば、トナーを溶融することにより確実に結合状態にできる。
【0020】
一実施形態の廃トナーの処理方法は、上記袋に、上記トナーを含んだ容器と共に、発泡スチロール片を収容することを特徴としている。
【0021】
上記実施形態によれば、例えば容器内の空気が比較的多い場合、加圧に伴う破裂によってトナーが空気と共に噴出し、上記不織布の袋が破れる場合がある。ここで、発泡スチロール片を収容することにより、容器の破裂に伴う噴出空気の勢いを低減できる。したがって、上記不織布の袋が破れる不都合を防止できる。また、トナーの融点よりも低い融点を有する発泡スチロールを用いることにより、加熱に伴って溶融状態となった発泡スチロールで、加圧に伴って噴出した微粒子を効果的に捕獲することができる。したがって、トナー微粒子の飛散を防止できる。ここで、上記発泡スチロール片は、5mm〜10mmの寸法を有するのが好ましい。
【0022】
本発明の廃トナーの処理プラントは、トナーを含んだ容器を収容すると共に不織布で形成された袋を加熱すると共に加圧する加熱加圧装置を備えることを特徴としている。
【0023】
上記構成によれば、上記加熱加圧装置により、不織布で形成された袋に収容されたトナー及び容器を加熱すると共に加圧して塊体を形成するので、トナーを漏出することなく結合状態にして高密度の塊体が得られる。したがって、トナー微粒子の飛散による環境悪化を防止することができ、また、トナー及び容器の取り扱いを簡易にして処理効率を向上できる。
【0024】
ここにおいて、上記袋に収容されたトナー及び容器を加熱する温度は、少なくともトナーが溶融する温度であればよい。
【0025】
本発明の廃トナーを用いた固形化燃料の製造方法は、
トナーを含んだ容器を、不織布で形成された袋に収容する工程と、
上記袋に収容された容器を加熱すると共に加圧して塊体を形成する工程と、
上記塊体を破砕して破砕物を形成する工程と、
上記破砕物から金属を除去する工程と、
上記金属が除去された破砕物を粉砕して粉砕物を形成する工程と、
上記粉砕物を含む材料を成形する工程と
を備えることを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、不織布で形成された袋に収容されたトナー及び容器を加熱すると共に加圧して塊体を形成するので、トナー微粒子を飛散させることなく、環境悪化を防止しながら、高密度の塊体が得られる。この塊体を破砕することにより、保形性が良くて粒径が比較的均一な破砕物が得られるので、金属の除去効率を向上できる。また、金属が除去された破砕物を粉砕する粉砕工程において、さらに小さい粒径の粉砕物を、効率良く比較的均一な粒径に形成することができる。したがって、この粉砕物を含む材料を成形してなる固形燃料を、高密度で熱量が高く、また、構成材料の粒径が均一で燃焼むらの少ない高品質なものにできる。
【0027】
ここにおいて、上記袋に収容されたトナー及び容器を加熱する温度は、少なくともトナーが溶融する温度であればよい。これにより、加熱温度の管理を容易にできる。
【0028】
また、上記袋には、上記トナーを含んだ容器と共に、発泡スチロール片を収容してもよく、この場合、加圧に伴う容器の破裂によって噴出する空気の勢いを低減できる。したがって、上記不織布の袋が破れる不都合を防止できる。また、加熱に伴って溶融状態となった発泡スチロールにより、加圧に伴って噴出した微粒子を効果的に捕獲することができる。したがって、トナー微粒子の飛散を防止できる。ここで、上記発泡スチロール片は、5mm〜10mmの寸法を有するのが好ましい。
【0029】
本発明の廃トナーを用いた固形化燃料の製造プラントは、
トナーを含んだ容器を収容すると共に不織布で形成された袋を加熱すると共に加圧して塊体を形成する加熱加圧装置と、
上記塊体を破砕して破砕物を形成する破砕装置と、
上記破砕物から金属を除去する金属除去装置と、
上記金属が除去された破砕物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕装置と、
上記粉砕物を含む材料を成形する成形装置と
を備えることを特徴としている。
【0030】
上記構成によれば、上記加熱加圧装置によって、不織布で形成された袋に収容されたトナー及び容器を加熱すると共に加圧して塊体を形成するので、トナー微粒子を飛散させることなく、環境悪化を防止しながら、高密度の塊体が得られる。この塊体を破砕装置で破砕することにより、保形性が良くて粒径が比較的均一な破砕物が得られるので、金属除去装置による金属の除去効率を向上できる。さらに、粒径が比較的均一な破砕物から、粉砕装置によって、さらに小さい粒径の粉砕物を効率良く形成できる。この粉砕物を含む材料を成形装置で成形することにより、高密度で熱量が高く、また、構成材料の粒径が均一で燃焼むらの少ない高品質な固形燃料を製造できる。
【0031】
ここにおいて、上記袋に収容されたトナー及び容器を加熱する温度は、少なくともトナーが溶融する温度であればよい。これにより、加熱温度の管理を容易にできる。
【0032】
また、上記袋は、上記トナーを含んだ容器と共に、発泡スチロール片を収容してもよく、この場合、加圧に伴う容器の破裂によって噴出する空気の勢いを低減できる。したがって、上記不織布の袋が破れる不都合を防止できる。また、加熱に伴って溶融状態となった発泡スチロールにより、加圧に伴って噴出した微粒子を効果的に捕獲することができる。したがって、トナー微粒子の飛散を防止できる。ここで、上記発泡スチロール片は、5mm〜10mmの寸法を有するのが好ましい。
【0033】
上記各発明において、上記トナーとは、レーザプリンタや、電子写真式複写機や、ファクシミリ装置等で画像形成に用いられて顔料と合成樹脂を主成分とする粉状体をいう。また、上記容器とは、プリンターや複写機に着脱されるトナーカートリッジや、プリンターや複写機に設けられて廃トナーが集められる廃トナーボトルや、トナーの製造過程で生じた廃トナーを収容した容器等をいい、トナーを内部に含む容器が広く該当する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の廃トナーの処理方法によれば、トナーを含んだ容器を、不織布で形成された袋に収容し、加熱すると共に加圧して塊体を形成することにより、トナーを漏出することなく結合状態にして高密度の塊体が得られるので、トナー微粒子による周辺環境の悪化を防止でき、また、処理効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施形態としての廃トナーの処理方法を示すフローチャートである。本実施形態の処理方法は、廃棄されたトナーカートリッジを、トナー微粒子の飛散を防止しつつ処理するものである。
【0037】
トナーは、電子写真装置の現像に用いられるものであり、主に顔料と合成樹脂で形成された微粒子であって、粒径は数μmから数十μmの範囲である。一般的なトナーの例では、カーボンブラックが5%〜20%、スチレンアクリル樹脂が70%〜90%、粒径が1μm〜20μmであるが、合成樹脂、顔料及び粒径は、これに限られない。例えば、合成樹脂として、ポリエステルやポリエチレン、顔料として磁性粉や黒色以外の着色剤を用いたものもある。また、トナーには、離形剤や帯電制御剤が含まれる。トナーの樹脂成分は、概ね90℃〜200℃で溶融する。
【0038】
トナーを収容する容器としてのカートリッジは、レーザプリンタやコピー機等に装着して用いられるものであり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテフタレート等の樹脂を含む。カートリッジの樹脂部分は、概ね90℃〜300℃で溶融する。また、カートリッジは、駆動軸等を構成する鋼、アルミニウム及び銅等の金属を含む。
【0039】
本実施形態の処理方法は、まず、トナーを内部に含む容器としてのトナーカートリッジを、不織布で形成された袋に収容する(ステップS1)。袋を形成する不織布は、溶融温度がトナーの溶融温度よりも高く、また、カートリッジの溶融温度と同程度の材料が好ましい。また、目の粗さは、空気は透過させるがトナー粒子は透過させないものを用いる。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン及びアクリル等で形成され、溶融温度が90℃〜300℃のものを用いることができる。このような不織布として、バグフィルター用の不織布がある。トナーカートリッジを収容した後、袋の開口部を閉じて密封する(ステップS2)。
【0040】
続いて、トナーカートリッジを収容した袋を加熱加圧装置のプレス部に配置し(ステップS3)、プレス部を動作させて、所定の加熱温度で加熱しつつ加圧を行う。これにより、不織布でトナー微粒子の漏れを防止しつつ袋内の空気を排出して減容すると共に、トナー、カートリッジ及び不織布を溶融させて、薄板状の塊体を形成する(ステップS4)。その結果、トナー粒子の漏れによる環境汚染を生じることなく、トナーを効果的に結合状態にして、空隙の少ない高密度の塊体を得ることができる。なお、加熱加圧工程では、トナーのみを溶融してもよく、不織布及びカートリッジは軟化すればよい。少なくともトナーが溶融する温度に加熱すればよいので、加熱温度の管理を容易にできる。
【0041】
加熱加圧装置としては、公知のホットプレス機を用いることができる。加熱加圧装置のプレス部の加熱動作は、過熱蒸気や油等の熱媒体で行ってもよく、また、ジュール熱を生成する電気抵抗体で行ってもよい。プレス部による加熱温度は、90℃〜300℃であるのが好ましく、トナーの溶融温度以上とする。また、ホットプレス機のプレス部は、接離駆動される一対の板状のものが好ましいが、金型とパンチで構成されたものを用いることができる。金型及びパンチ状のプレス部を用いることにより、所定形状を有する高密度の塊体を得ることができる。
【0042】
この後、自然冷却に伴って固化した塊体をプレス部から搬出し(ステップS5)、塊体に他の処理工程を行う(ステップS6)。塊体の固化は、加熱加圧装置のプレス部に例えば水冷式の冷却装置を内蔵し、この冷却装置で強制冷却して行ってもよい。塊体に行う他の処理工程としては、例えば燃料の製造工程、プラスチック材料の製造工程、顔料の材料工程、焼却焼却及び埋め立て工程等があり、最終処分や再利用に幅広く利用することができる。埋め立てにより最終処分を行う場合、トナー微粒子の飛散を防止して環境汚染を防止することができる。また、焼却による最終処分を行う場合、炉内での粉塵爆発や、炉壁への付着等の不都合を防止できる。また、各種材料の再利用を行う場合、後の工程における取り扱いを容易にして処理効率を高めることができる。
【0043】
図2は、本発明の実施形態としての固形燃料の製造プラントを示す模式図である。本実施形態のプラントは、使用済みのトナーカートリッジから樹脂成分を分別してRPF(廃紙・廃プラスチック燃料)を製造するものである。
【0044】
このプラントは、加熱加圧装置としてのホットプレス機1と、破砕装置2と、金属除去装置としての第1磁力選別機3及び非鉄金属選別機4と、粉砕装置5と、成形装置6とで大略構成されている。
【0045】
ホットプレス機1は、一対の板状のプレス部11,11と、プレス部11の一方を駆動する油圧駆動装置と、各プレス部11に内蔵されて過熱蒸気が供給されるジャケット12と、過熱蒸気を生成するボイラ13を備える。上記一対のプレス部11,11の間に、トナー及びカートリッジを収容した袋が配置された状態で、油圧駆動装置で一方のプレス部11を他方のプレス部に向かって矢印Pで示す方向に駆動する。これと共に、ボイラ13から各プレス部11に過熱蒸気Sを供給する。プレス部11で加熱を行った蒸気Vはボイラ13に戻して再加熱して過熱蒸気Sを生成する。これにより、トナー、カートリッジ及び袋を加熱すると共に加圧して、塊体を形成するようになっている。プレス部11による加熱温度は、少なくともトナーが溶融する温度である。加熱温度は、トナー、トナーカートリッジ16及び袋15を構成する不織布の材料に応じて90℃〜300℃の温度に設定する。被処理物の搬入及び搬出の容易のため、プレス部11は板状であるのが好ましいが、一対のプレス部を凹形状の金型と凸形状のパンチとで構成してもよい。これにより、トナー、カートリッジ及び袋をいっそう高密度に、かつ、所定形状にプレスすることができる。
【0046】
また、加熱加圧装置としては、図3の模式図に示すような多段型ホットプレス機101を用いることができる。この多段型ホットプレス機101は、本体フレーム102と、本体フレーム102の上部に支持された油圧シリンダ103と、本体フレーム102内に配置されて鉛直方向に延びるガイドレール104,104と、このガイドレール104,104に沿って上下方向に駆動される複数の移動プレス部105,105,・・・を備える。最上段の移動プレス部105に、油圧シリンダ103のロッド103aが連結されている。移動プレス部105の下側には、最下段の移動プレス部105を受け止める固定プレス部106が設置されている。移動プレス部105及び固定プレス部106には、ジュール熱により加熱を行う電熱装置が夫々内蔵されている。なお、移動プレス部105及び固定プレス部106は、熱媒体が供給されるジャケットを夫々内蔵してもよい。
【0047】
この多段型ホットプレス機101を用いた場合、まず、図3(a)に示すように、固定プレス106と、最上段以外の移動プレス105,105・・・の上に、トナー容器を収容した袋15を夫々配置する。続いて、油圧シリンダ103を作動させてロッド103aを突出駆動する。これと共に、移動プレス部105及び固定プレス部106の電熱装置に電力を供給して、所定温度で加熱を開始する。最上段の移動プレス部105を油圧シリンダ103で下方に駆動することにより、複数の移動プレス部105,105,・・・が下方に駆動される。これに伴い、図3(b)に示すように各プレス部104,105間の距離が狭まって、隣り合う各プレス部104,105の間の複数のトナー容器入り袋が加熱及び加圧される。こうして、各プレス部104,105による加熱及び加圧動作を同時に行って、複数の塊体を高効率に形成することができる。
【0048】
破砕装置2は、上部に開口21を有するケーシング20と、このケーシング20内に収容されて回転駆動される一軸の回転体22と、この回転体22の下方に設けられたスクリーン23とを備える。回転体22は、回転軸22aと、この回転軸22aと同心に軸線方向に配列された複数の円盤22bと、この複数の円盤22bの外縁の近傍に揺動自在に枢着された複数のハンマー22cとを有する。回転体22の回転駆動に伴い、揺動かつ回転するハンマー22cによって、塊体に衝撃を与えて切断及び粉砕する。所定の径よりも小さい粉砕物は、スクリーン23を通過して、ケーシング20の下部から排出される。排出された破砕物は、ベルトコンベヤ24上に載置されて、金属の分別工程に送られるようになっている。この破砕装置2により、塊体が30mm〜75mm程度の寸法に破砕される。なお、破砕装置2は、後述する粉砕装置5と同様の螺旋体を有するスクリュー式の破砕装置であってもよい。
【0049】
第1磁力選別機3は、磁力を利用してベルトコンベヤ25上の破砕物から鉄等の強磁性金属を分別除去するものである。この第1磁力選別機3は、ベルトコンベヤ25の搬送面に近接して吊り下げられた吊り下げ式の磁力選別機であり、3つのプーリに概ね三角形状に巻き回された搬送ベルト31と、搬送ベルト31の底面近傍に設けられた電磁石32とを備える。ベルトコンベヤ25上の強磁性金属が電磁石32によって吸引され、搬送ベルト31でベルトコンベヤ25外に排出される。排出された鉄等の強磁性金属は、鉄類サイロに送られて、再生資源としての利用に供される。なお、第1磁力選別機3は、電磁石32に替えて永久磁石を備えてもよい。また、吊り下げ式に限られず、ベルトコンベヤ内蔵型等の他の形式であってもよい。
【0050】
非鉄金属選別機4は、破砕物を搬送するベルトコンベヤ25の終端に設けられており、永久磁石式ドラムを備える。このドラムが高速回転することにより、ドラムに近接したアルミニウム等の非鉄金属片に、電磁誘導現象によって渦電流を発生させる。この渦電流と、高速回転するドラムによって生成される交流磁界との間に生じる反発力によって、非鉄金属片をドラムから弾き飛ばすようになっている。
【0051】
ベルトコンベヤ25の終端近傍には、ベルトコンベヤ25の下方であって終端プーリよりも斜め下方に位置する鉄類収集ホッパ27aと、終端プーリの概ね下方に位置する樹脂収集ホッパ27bと、非鉄金属選別機4から所定距離だけ遠ざかった位置にある非鉄金属収集ホッパ27cとが配置されている。ベルトコンベヤ25の終端には、鉄類収集ホッパ27aに向かって斜め下方に延びた第2磁力選別機26が接続されている。この第2磁力選別機26により、吊り下げ式の第1磁力選別機3で収集されなかった小径の強磁性金属が選別され、鉄類収集ホッパ27aに収集される。鉄類収集ホッパ27aに収集された強磁性金属は、鉄類サイロに送られる(矢印F)。第2磁力選別機26及び非鉄金属選別機4のいずれの作用も受けない樹脂成分は、ベルトコンベヤ25の終端から下方に落下して樹脂収集ホッパ27bに収集される。非鉄金属選別機4によって弾き飛ばされた非鉄金属は、非鉄金属収集ホッパ27cによって収集され、非鉄金属サイロに送られる(矢印A)。
【0052】
樹脂収集ホッパ27bで収集された破砕物の樹脂成分は、粉砕装置5に送られる。
【0053】
粉砕装置5は、上部に開口51を有するケーシング50と、このケーシング50内に収容されて回転駆動される一対の螺旋体52,52を備える。一対の螺旋体52,52の回転による噛み込み圧壊作用と、螺旋体52の外側縁に設けられた回転刃と、ケーシング50内に設けらた固定刃とのせん断作用とで、破砕物を30mm以下に粉砕して排出口53から排出するようになっている。排出口53から排出された粉砕物は、下方のベルトコンベヤ54上に載置されて、定量供給機9に導かれる。なお、粉砕装置5の螺旋体52は一軸であってもよい。
【0054】
成形装置6は、上部に投入口61を有するケーシング60内に収容された一対の螺旋軸62と、この螺旋軸62を駆動するモータ63とを備える。一対の螺旋軸62は、周面に互いに逆回りの螺旋羽根が設けられており、この螺旋羽が噛み合った状態で互いに逆回りに回転駆動される。これにより、投入口61から投入された粉砕物等が、混練及び圧縮され、ケーシング60の端面に設けられた排出孔から押し出されて、棒状の固形燃料を製造するようになっている。なお、成形装置6の螺旋軸62は一軸であってもよい。また、成形装置としては、所謂ペレットミルを用いてもよい。ペレットミルの一例には、ダイ孔が胴部に設けられた回転円筒体内に、胴部の内側面に沿って転動する転動輪を配置し、この転動輪によって回転円筒体内に供給される破砕物等を圧縮してダイ孔から押し出すようにしたものがある。
【0055】
上記構成の固形燃料の製造プラントにおいて、以下のようにして固形燃料を製造する。
【0056】
まず、不織布で形成された袋15に、使用済みのトナーカートリッジ16を収容した後、袋15の開口部を閉じる。トナーカートリッジ16を収容した袋15を、ホットプレス機1の一対のプレス部11,11の間に配置し、プレス部11の一方を他方側に向けて矢印Pで示すように駆動する。このとき、プレス部11にボイラ13から過熱蒸気Sを供給して約250℃に加熱しておく。プレス部11の加圧により、袋15内のカートリッジ16が破壊されて減容する。ここで、袋15の不織布は、空気を通過させる一方トナーを通過させないので、トナー微粒子が漏れることなく効果的に減容する。また、プレス部11の加熱により、トナーが溶融し、また、カートリッジ16及び不織布が軟化して、トナーが効果的に結合状態となる。こうして、内部の空隙の少ない高密度の塊体17が得られる。
【0057】
塊体17が自然冷却により固化すると、塊体17をプレス部11上から搬出し、破砕装置2の開口21からケーシング20内に投入する。ケーシング20内で、揺動及び公転するハンマー22cの衝撃作用により、塊体17が切断及び粉砕されて、寸法が70mm程度の破砕物となる。破砕物は、ケーシング20の排出口23から排出され、ベルトコンベヤ24上に載置される。
【0058】
ベルトコンベヤ24で搬送される破砕物のうち、鉄等の強磁性金属の部品を、ベルトコンベヤ24の上方に吊り下げられた第1磁力選別機3によって収集する。第1磁力選別機3では大径の強磁性金属を収集し、収集した強磁性金属は鉄類サイロに貯留して、再生資源として利用する。
【0059】
強磁性金属の部品が除去された破砕物は、ベルトコンベヤ24の終端の非鉄金属選別機4により、非鉄金属と非金属に分別する。また、破砕物に残留している小径の強磁性金属を、第2の磁力選別機26で分別する。非鉄金属は、非鉄金属収集ホッパから導かれて非鉄金属サイロに貯留され、再生金属として利用される。非金属は、トナー、カートリッジ16の樹脂成分、及び、不織布に由来する樹脂の破砕物であり、樹脂収集ホッパ27bで収集して、粉砕装置5に送る。粉砕装置5で樹脂の破砕物を粉砕して、寸法が30mm以下の粉砕物を得る。粉砕物は、定量供給機9に送られる。
【0060】
定量供給機9では、トナー、カートリッジ16及び不織布に由来する樹脂の粉砕物を、古紙や木屑、及び、他の廃プラスチック等と混合して成形装置6に送る。成形装置6によって、樹脂の粉砕物、古紙や木屑、及び、他の廃プラスチック等を混練及び圧縮して、棒状の固形燃料65を製造する。
【0061】
本実施形態の固形燃料の製造プラントによれば、ホットプレス機1により、不織布の袋15に収容したトナーカートリッジ16を加熱すると共に加圧して塊体17を形成するので、トナー微粒子を飛散させることなく、環境悪化を防止しながら、高密度の塊体17を形成できる。また、プレス部11による加熱温度を、少なくともトナーが溶融する温度に設定すればよいので、温度管理を容易にできる。また、複数のトナーカートリッジ16をまとめて高密度の塊体17にするので、搬送作業を効率よく行うことができる。また、高密度の塊体17を破砕装置2で破砕することにより、保形性が良くて粒径が比較的均一な破砕物が得られるので、第1磁力選別機3や非鉄金属選別機4によって効率良く金属を除去できる。また、均一な粒径の破砕物は、粉砕装置5によって効率良く粉砕できて、比較的均一な粒径の粉砕物が得られる。この粉砕物を材料に用いることにより、高密度で熱量が高く、また、構成材料の粒径が均一で燃焼むらの無い高品質な固形燃料が得られる。また、人手によらず、樹脂材料と金属材料を分別するので、高効率に安価な固形燃料を製造できる。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、各実施形態において、トナーカートリッジに限られず、プリンターや複写機に設けられて廃トナーが集められる廃トナーボトル等のような種々の容器について処理を行うことができる。
【0063】
また、上記各実施形態において、不織布で形成した袋に、トナーを収容した容器と共に発泡スチロール片を収容し、この後、袋に収容されたトナー、容器及び発泡スチロール片を加熱して加圧してもよい。これにより、容器内の空気が比較的多い場合、容器が加圧に伴って破裂しても、容器の破裂による噴出空気の勢いを低減できる。したがって、上記不織布の袋が破れる不都合を防止できる。また、処理対象のトナーの融点よりも低い融点の発泡スチロールを用いることにより、加熱に伴って先ず発泡スチロールを溶融状態とし、この溶融状態の発泡スチロールによって、加圧に伴って噴出した微粒子を効果的に捕獲することができる。したがって、トナー微粒子の飛散を防止できる。ここで、上記発泡スチロール片は、例えばEPS(膨張ポリスチレン)を5mm〜10mmの寸法に形成したものが好ましい。また、トナーの融点よりも低い融点を有すると共に、空気の噴流に対して緩衝作用を奏するものであれば、発泡スチロール以外の合成樹脂を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】廃トナーの処理方法を示すフローチャートである。
【図2】固形燃料の製造プラントを示す模式図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、多段型ホットプレス機によりトナー容器を収容した袋を加圧及び加熱する様子を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
1 ホットプレス機
2 破砕装置
3 第1磁力選別機
4 非鉄金属選別機
5 粉砕装置
6 成形装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを含んだ容器を、不織布で形成された袋に収容する工程と、
上記袋に収容されたトナー及び容器を加熱すると共に加圧して塊体を形成する工程と
を備えることを特徴とする廃トナーの処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の廃トナーの処理方法において、
上記不織布は、上記トナーの透過を実質的に阻止する一方、空気を透過させることを特徴とする廃トナーの処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載の廃トナーの処理方法において、
上記不織布は、塩素を含まない熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする廃トナーの処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載の廃トナーの処理方法において、
上記袋に収容されたトナー及び容器を、上記トナーの融点よりも高い温度で加熱することを特徴とする廃トナーの処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の廃トナーの処理方法において、
上記袋に、上記トナーを含んだ容器と共に、発泡スチロール片を収容することを特徴とする廃トナーの処理方法。
【請求項6】
トナーを含んだ容器を収容すると共に不織布で形成された袋を加熱すると共に加圧する加熱加圧装置を備えることを特徴とする廃トナーの処理プラント。
【請求項7】
トナーを含んだ容器を、不織布で形成された袋に収容する工程と、
上記袋に収容されたトナー及び容器を加熱すると共に加圧して塊体を形成する工程と、
上記塊体を破砕して破砕物を形成する工程と、
上記破砕物から金属を除去する工程と、
上記金属が除去された破砕物を粉砕して粉砕物を形成する工程と、
上記粉砕物を含む材料を成形する工程と
を備えることを特徴とする廃トナーを用いた固形化燃料の製造方法。
【請求項8】
トナーを含んだ容器を収容すると共に不織布で形成された袋を加熱すると共に加圧して塊体を形成する加熱加圧装置と、
上記塊体を破砕して破砕物を形成する破砕装置と、
上記破砕物から金属を除去する金属除去装置と、
上記金属が除去された破砕物を粉砕して粉砕物を形成する粉砕装置と、
上記粉砕物を含む材料を成形する成形装置と
を備えることを特徴とする廃トナーを用いた固形化燃料の製造プラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−216823(P2008−216823A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56458(P2007−56458)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【Fターム(参考)】