説明

廃トナーの処理方法

【課題】 廃トナーを安定したペレット(固形物)とすることにより、廃トナーの粉塵発生の問題、そして可燃性粉塵による爆発の問題を解決し、作業環境を改善し、安全で作業しやすく、しかも経済的な廃トナーの処理方法を提供する。
【解決手段】 所定の混合比となるように廃トナーと廃グリスを計量し、ミキサーで混合した後、造粒機でペレット状に造粒する。前記廃トナーが単色または各色混合の廃トナーであり、前記所定の混合比が廃トナー1に対して廃グリス0.25〜0.55の重量混合比である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃トナーの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃トナー等の粉体の処理方法としては、例えば、貴金属を含んだ粉体ダストを画像処理装置から回収した廃トナー粉を混和した後、圧縮成形して圧縮時の摩擦熱でペレット状に造粒し、同造粒ペレットをキューポラ等の金属溶解炉に原料として供給し、金属回収するとともに燃料としても利用する貴金属を含んだ粉体ダストの処理方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、別の処理方法として、樹脂及び疎水性カーボンからなる廃トナーと、前記樹脂の軟化温度以上の熱水とを攪拌混合して、前記廃トナーを凝集固化する事を特徴とする廃トナーの凝集固化物の製造方法が知られており、当該凝集固化物を燃料として利用する廃トナーの凝集固化物の利用方法も知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−70900号公報
【特許文献2】特開2001−134010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記粉体ダストの処理方法は、スクリュー圧縮式造粒装置で粉体ダストと廃トナー粉との混合物をスクリューで圧縮した場合、これらの粉体粒子間に摩擦熱が発生し、この摩擦熱により廃トナー粉に含まれた加熱溶融バインダーが溶融し、同加熱溶融バインダーにより粉体ダスト及び廃トナー粉がペレット状になり、放冷によりペレット状造粒物が得られるが、時間が経過するとペレット状造粒物の水分が蒸発し、もろく、崩れたときに再び飛散しやすい粉体になりやすい。
【0005】
また、上記廃トナーの凝集固化物の製造方法は、熱水により廃トナーに含まれている樹脂を軟化させて、凝集固化物が得られるが、この凝集固化物も時間が経過すると凝集固化物の水分が蒸発し、もろく、崩れたときに再び飛散しやすい粉体になりやすい。
【0006】
本発明の廃トナーの処理方法は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、廃トナーを安定したペレット(固形物)とすることにより、廃トナーの粉塵発生の問題、そして可燃性粉塵による爆発の問題を解決し、作業環境を改善し、安全で作業しやすく、しかも経済的な廃トナーの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の廃棄粉の処理方法は、所定の混合比となるように廃棄粉と廃棄油を計量し、ミキサーで混合した後、造粒機でペレット状に造粒することを特徴とする。また本発明の廃トナーの処理方法は、所定の混合比となるように廃トナーと廃グリスを計量し、ミキサーで混合した後、造粒機でペレット状に造粒することを特徴とする。
ここで、前記混合比が、重量混合比であることが好ましく、前記廃トナーが単色または各色混合の廃トナーである場合は、前記所定の混合比が廃トナー1に対して廃グリス0.25〜0.55の重量混合比であることが好ましい。なお、「廃グリス」には使用済のグリスの他に、未使用のグリスも含むものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の廃棄粉または廃トナーの処理方法は上記の工程であり、廃棄油または廃グリスを添加し造粒機が圧力をかけることで固化するようにしたので、出来上がったペレットは安定した強度が保持される。廃棄油または廃グリスは、蒸発することも無く、たとえペレットの形が崩れて粉体に戻ったとしても飛散することは無い。
また、実験により得られた所定の混合比で廃棄油または廃グリスを添加するので、廃トナーが作業中に舞うことがない。そして、添加する廃グリスは固形化した廃トナーの燃料としての価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施例について、図表を参照して詳細に説明する。図1のフロー図に示すように、廃棄粉の代表例として廃トナー、廃棄油の代表例として廃グリスとした場合の実施例である。
【0010】
搬入されたドラム缶入りの廃グリスは、受入タンクとしての廃グリスタンクに投入される。ドラム缶から廃グリスタンクへは、例えばドラム缶を保温しつつ、ポンプで吸引して廃グリスタンクへ投入する。また、ドラム缶用汲み上げ圧送ポンプにより、ドラム缶から廃グリスを汲み上げ圧送して廃グリスタンクへ投入しても良い。ドラム缶用汲み上げ圧送ポンプとしては、高粘度、超高粘度材料の吐出に適したパイルスジャパン株式会社製のパイルス流体圧送ポンプ700シリーズ(ドラム缶タイプ)を使用するのが好ましい。なお、廃グリスタンクの有効容積は、廃グリスの1日の使用量以上とするのが好ましい。
【0011】
搬入された廃トナーは受入タンクとしての廃トナータンクに投入される。廃トナーは通常、トンパックに封入されて搬入されるか、またはタンクローリーにより搬入される。廃トナータンクの有効容積は、廃トナーの1日の使用量以上とするのが好ましい。また、廃トナータンクにはエア抜きバグフィルターを設けるのが好ましい。
【0012】
廃グリスタンクに受け入れられた廃グリスは、計量供給装置により計量されて、ミキサー(混合装置)に供給される。計量供給装置は、少なくともポンプ、ロードセル、計量ホッパから成る。
【0013】
廃トナータンクに受け入れられた廃トナーは、別の計量供給装置により計量されて、前記ミキサー(混合装置)に供給される。別の計量供給装置は、少なくともスクリューフィーダー(又はロータリーフィーダー)、ロードセル、計量ホッパから成る。
【0014】
廃トナー処理設備を設計するに際して、アイリッヒ社製のアイリッヒテストミキサーにて混合試験を行った。混合は、廃グリスから投入し、次に廃トナーを入れるようにすると良い。この順番でミキサーに投入することにより、短時間で均一な混合が可能になる。混合工程は、始めに高速回転で攪拌を行い、顆粒状になったのを確認してから、低速回転で造粒を行う。ミキサーでの混合時間は、廃グリス添加量にもよるが、高速回転、低速回転それぞれ1分程度で十分である。
【0015】
なお、ミキサー(混合装置)は、原料を容器(パン)ごと回転させるパン型ミキサー、2軸型ミキサー、または1軸リボン型ミキサーを使用するのが好ましい。アイリッヒ社製のパン型ミキサーは、逆流式高速ミキサーであり、原料を容器(パン)ごと回転させ、これに対し偏心位置で逆方向回転するアジテータが、原料への高い剪断力を発生させ、またスクレーパーによりパン壁や底に留まろうとする原料を絶えず引き剥がし、アジテータ部に送り込み、緻密かつ均一な混合が実現される。
【0016】
ミキサーにより混合された廃トナーと廃グリスの混合物は、造粒機によりペレット状に造粒される。造粒機としては、株式会社チヨダマシナリー製のプレス・ペレッター(商品名)を使用するのが好ましい。
【0017】
プレス・ペレッターは、2〜4個の円錐状の特殊ローラーが、ダイス上を公転しながら自転し原料をかき込み、ダイスの中に強制的に押し込むことにより造粒され、また、円錐状ローラーには半球状の穴加工が施されていて原料をしっかり捉えることができるとともに、ローラーが円錐状なのでダイスとのスリップがなく原料を均一な圧力で押し出し、カッターで一定の長さにカットされペレット(固形物)として排出される。
【0018】
造粒機より排出されたペレットは排出製品ホッパに投入され、ローラーコンベア等を経由して、トンパック等に袋詰めされて顧客に出荷される。
【0019】
廃トナーの計量供給装置と廃グリスの計量供給装置により、所定の重量混合比となるように廃トナーと廃グリスがそれぞれ計量され、ミキサーに供給されことになるが、最適な重量混合比を割り出すために、種々の試験を実施した。
【0020】
図2に示すのは、固化テストに使用するサンプルリストである。縦の項目に、上から順に「赤」「青」「黄色」「黒」「赤・青・黄・黒を同等の比で混合」とあるのは、それぞれ赤色単色の廃トナー、青色単色の廃トナー、黄色単色の廃トナー、赤色・青色・黄色・黒色を同等の比で混合した廃トナーを意味する。
【0021】
横の項目に左から順に、「0.13」「0.2」「0.3」「0.4」「0.5」とあるのは、廃トナー1に対して廃グリスの添加量が、それぞれ0.13、0.2、0.3、0.4、0.5の重量比混合比であることを意味する。
【0022】
図3に示すのは、図2の重量混合比での固化テスト結果を示す表である。縦の項目に、上から順に「グリス添加量」「ダイス」「回転速度」「電流値(A)」「成形量(kg)」「ペレット温度(℃)」「発塵の有無」とあるのは、それぞれ前記プレス・ペレッター(造粒機)でペレット状に造粒し固化する際の、廃トナー1に対する廃グリスの割合(重量混合比)、プレス・ペレッターのダイス径(「0416」はダイス径が4mmのダイスを意味する),プレス・ペレッターの回転速度、プレス・ペレッターの電流値、プレス・ペレッターの成形量、プレス・ペレッターの成形時間、プレス・ペレッターから排出されたペレットの温度、プレス・ペレッター作業時における発塵の有無を意味する。
【0023】
横の項目にある、「赤0.2」「4種混合0.3」はそれぞれ、図2のサンプルリストで○が付されている赤色単色の廃トナー1に対して廃グリスを0.2の重量混合比のサンプル、赤色・青色・黄色・黒色を同等の比で混合した廃トナー1に対して廃グリスを0.3の重量混合比のサンプルであることを意味する。
【0024】
図2のサンプルリスト及び図3の固化テスト結果から分かったことは、廃トナー1に対して廃グリス0.5の重量混合比で、廃トナーに廃グリスを混合すれば、プレス・ペレッターから排出されるペレット(固形物)から粉塵が発生することはなく、状態良く固化することができる。
【0025】
廃トナー各色(青、赤、黄、黒)を混合したものであれば、廃トナー1に対して廃グリス0.3の重量混合比で、粉塵が発生しなくなる。これは、各色が混ざっている廃トナーは、黒色トナーや青色トナーが混ざっている割合が高いため、各色混合の廃トナーであれば、上記割合で粉塵の発生を防止することができる。
【0026】
したがって、計量時の誤差等を考慮すると、最適な重量混合比は、廃トナー(単色または各色混合の廃トナー)1に対して廃グリス0.25〜0.55であることが分かった。なお、図2のサンプルリストの「各色説明」の欄に記載されているとおり、黄色の単色トナーは非常に舞いやすく、グリス添加量を同等比にしても、攪拌工程で舞ってしまう。粘土状になるまで舞い続けるので、攪拌が困難であることが分かっている。
【0027】
また、赤色、青色、黒色の単色トナーは、廃トナー1に対して0.5のグリスを添加することで舞わない状態となる。赤色トナーは、青色トナーより比較的サラサラの状態である。注意すべきは、廃グリスの添加量をあまり下げすぎると、粉体が舞うので粉塵爆発等の危険がある。その下限は、上記のとおり廃トナー1に対して0.25であることが分かった。
【0028】
図4は、トナー固化長時間成形テストの結果を示す表である。プレス・ペレッターから排出されてくるペレット(固形物)について、10分ごとにペレット温度、ペレットのかさ比重、及びプレス・ペレッターの電流値を測定した。プレス・ペレッターが設置された室温は14℃、原料である廃トナーと廃グリスをミキサーで混合した混合物のかさ比重は0.38、廃トナーと廃グリスの重量混合比は1:0.3であり、ダイス径4mm(ダイス番号:0416)のダイスを使用した。
【0029】
この表から分かるように、1時間を通して電流値が10Aとほぼ安定し、ペレット温度が安定し、一定のかさ比重のペレットを得ることができた。このことから、プレス・ペレッターを長時間運転しても、廃トナーと廃グリスの重量混合比は1:0.3であれば問題ない。このテストでは、1時間で84kgの原料(廃トナーと廃グリスを重量混合比は1:0.3ミキサーで混合した混合物)を処理した。これは、1日7時間プレス・ペレッターを稼働できたとして、588kg/日処理できる計算になる。
【0030】
なお、上記長時間成形テストにおいてプレス・ペレッター(ダイス径4mm)から排出されるペレット(固形物)は、直径約4mm,高さ約10mmの円柱状のペレットである。ペレットの燃料としても価値を確認するため、熱量を熱量計により分析したところ、約7000cal/gであった。これは石炭の代替燃料として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例に係る廃トナーの処理方法のフロー図である。
【図2】固化テストに使用するサンプルリストである。
【図3】図2の重量混合比での固化テスト結果を示す表である。
【図4】トナー固化長時間成形テストの結果を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の混合比となるように廃棄粉と廃棄油を計量し、ミキサーで混合した後、造粒機でペレット状に造粒することを特徴とする廃棄粉の処理方法。
【請求項2】
所定の混合比となるように廃トナーと廃グリスを計量し、ミキサーで混合した後、造粒機でペレット状に造粒することを特徴とする廃トナーの処理方法。
【請求項3】
前記混合比が、重量混合比である請求項1記載の廃棄粉の処理方法。
【請求項4】
前記混合比が、重量混合比である請求項2記載の廃トナーの処理方法。
【請求項5】
前記廃トナーが単色または各色混合の廃トナーであり、前記所定の混合比が廃トナー1に対して廃グリス0.25〜0.55の重量混合比である請求項2記載の廃トナーの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−264743(P2008−264743A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115314(P2007−115314)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(591284003)株式会社エコ計画 (8)
【Fターム(参考)】