説明

廃プラスチックの取扱方法及び処理方法

【課題】発泡ウレタン等の廃プラスチックを破砕、粉砕する際に粉塵爆発の危険性を低下させ、その後の処理における爆発、火災の発生を回避し、安全に廃プラスチックを取り扱い、処理する。
【解決手段】発泡ウレタン等を過熱蒸気の雰囲気の下で破砕又は粉砕する。過熱蒸気の雰囲気の下で破砕又粉砕することで、雰囲気の酸素濃度を低下させるとともに、破砕又粉砕されたプラスチック粒子の表面に水分子が吸着し、比表面積の増大に伴うプラスチックの急激な酸化を抑制することとなるため、破砕又は粉砕の際の粉塵爆発の危険性を低下させることができる。発泡ウレタン等を破砕又は粉砕した直後に過熱蒸気の雰囲気に晒してもよい。このようにして得られた発泡ウレタン等の破砕物又は粉砕物を燃料として、セメント焼成用燃料としてセメントキルンに窯前から吹き込むことで、発泡ウレタン等を安全に有効利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫等で断熱材として用いられている発泡ウレタン等の廃プラスチックを取り扱う方法、及び該方法を用いて廃プラスチックを処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成13年4月に特定家庭用機器再商品化法(以下、「家電リサイクル法」という)が施行され、製造業者等が廃家電を小売業者等から引き取り、再商品化等を実施している。廃冷蔵庫については、破砕機で破砕し、断熱材に含まれるフロン、又は代替フロンとしてのシクロペンタン等を回収し、破砕物を鉄、銅やアルミニウム等の非鉄金属及びプラスチックに分別した後、断熱材としての発泡ウレタンを再利用する。また、この際、発泡ウレタンを減容化するため、又は発泡ウレタンの後工程での処理を容易にするため、発泡ウレタンを破砕又は粉砕している(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
上述のように、発泡ウレタンを断熱材として再利用するには、ウレタンを発泡させるために用いたフロン等を除去する必要があり、その際、爆発、着火等の虞のない安全性の高い回収方法が求められる。そこで、例えば、特許文献3には、フロンガスを含む所定サイズの断熱材に所定温度の過熱蒸気を所定時間吹きつけ、過熱蒸気によりフロンガスを断熱材から押し出し、フロンガスを過熱蒸気とともに回収する方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−140794号公報
【特許文献2】特開2003−286497号公報
【特許文献3】特開2005−306776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発泡ウレタンを再利用するには、フロン等を除去するとともに、上記のように、減容化等のため破砕又は粉砕する必要があり、その際、破砕又は粉砕した発泡ウレタンそのものによる粉塵爆発の危険性があるとともに、その後の処理においても取扱いを慎重に行わないと、爆発、火災が発生する虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、発泡ウレタン等の廃プラスチックを破砕、粉砕する際に粉塵爆発の危険性を低下させ、その後の処理における爆発、火災の発生を回避し、安全に廃プラスチックを取り扱い、処理することのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、廃プラスチックの取扱方法であって、廃プラスチックを過熱蒸気の雰囲気の下で破砕又は粉砕することを特徴とする。本発明によれば、過熱蒸気の雰囲気の下で廃プラスチックを破砕又は粉砕することにより、雰囲気の酸素濃度を低下させるとともに、粉砕されたプラスチック粒子の表面に水分子が吸着することにより、比表面積の増大に伴うプラスチックの急激な酸化を抑制することとなるため、発泡ウレタン等の廃プラスチックを破砕又は粉砕する際の粉塵爆発の危険性を低下させることができる。
【0008】
また、本発明は、廃プラスチックの取扱方法であって、廃プラスチックを破砕又は粉砕した直後に過熱蒸気の雰囲気に晒すことを特徴とする。本発明によれば、破砕又は粉砕した直後に廃プラスチックの破砕物又は粉砕物を過熱蒸気の雰囲気に晒すことにより、雰囲気の酸素濃度を低下させるとともに、粉砕されたプラスチック粒子の表面に水分子が吸着し、比表面積の増大に伴うプラスチックの急激な酸化を抑制することとなるため、発泡ウレタン等の廃プラスチックを取り扱う際の粉塵爆発の危険性を低下させることができる。
【0009】
さらに、本発明は、廃プラスチックの処理方法であって、上述の方法によって得られた廃プラスチックの破砕物又は粉砕物を燃料として利用することを特徴とする。これによって、発泡ウレタン等の廃プラスチックの破砕物又は粉砕物を安全に処理し、有効利用することができる。
【0010】
上記廃プラスチックの処理方法において、前記燃料をセメント焼成用燃料としてセメントキルンに窯前から吹き込み、セメント焼成に有効利用することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、発泡ウレタン等の廃プラスチックを破砕、粉砕する際に粉塵爆発の危険性を低下させ、その後の処理における爆発、火災の発生を回避し、安全に廃プラスチックを取り扱い、処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる廃プラスチックの取扱方法及び処理方法を実施するための装置の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明にかかる廃プラスチックの取扱方法及び処理方法を実施するための装置構成例を示し、本発明にかかる廃プラスチックの取扱方法を適用した破砕システム1と、破砕システム1で得られた廃プラスチックの破砕物を用いた廃プラスチックの処理システム21とを例示している。尚、以下の説明においては、廃冷蔵庫等から得られた発泡ウレタンを取り扱い、処理する場合を例にとって説明する。
【0015】
破砕システム1は、発泡ウレタンUを貯留するホッパ2と、ホッパ2内の発泡ウレタンUを破砕装置4に供給する供給装置3と、供給装置3によって供給された発泡ウレタンUを破砕する破砕装置4と、破砕装置4を設置した破砕室6に過熱蒸気Sを供給するための過熱蒸気発生装置5と、破砕装置4による破砕物Cを回収する固気分離装置8と、破砕物Cをバラ車15によって輸送するため、バラ車15に破砕物Cを積み込むための積込装置9と、破砕室6内の過熱蒸気S及び固気分離装置8で分離された気体を搬送するファン11とで構成される。
【0016】
破砕装置4は、回転刃、スクリュー等を有するクラッシャ等であって、過熱蒸気発生装置5からの過熱蒸気Sが供給される破砕室6に設置される。破砕室6に過熱蒸気Sを供給するのは、発泡ウレタンUを過熱蒸気Sの雰囲気の下で破砕することで、雰囲気の酸素濃度を低下させるとともに、破砕された発泡ウレタンUの表面に水分子を吸着させ、比表面積の増大に伴う発泡ウレタンUの急激な酸化を抑制し、発泡ウレタンUを破砕する際の粉塵爆発の危険性を低下させるためである。
【0017】
破砕室6には、上記破砕装置4が設置されるとともに、過熱蒸気発生装置5から供給配管5aを介して過熱蒸気Sが供給される。さらに、破砕室6には、供給装置3からの発泡ウレタンUの供給路3a、破砕装置4による破砕物Cの搬送路4a等が配置され、破砕物Cは、破砕室6内の過熱蒸気S及び空気とともに固気分離装置8に搬送される。
【0018】
固気分離装置8は、破砕装置4から供給された破砕物C、過熱蒸気S及び空気を固液分離するために備えられ、風力分離機、サイクロン等が用いられる。固気分離装置8の下方には、破砕物Cをバラ車15に積み込むための積込装置9が付設される。
【0019】
ファン11は、破砕室6から使用済みの過熱蒸気S、及び固気分離装置8で分離された気体を系外に排出するために備えられる。
【0020】
一方、処理システム21は、バラ車15によって搬送された発泡ウレタンUの破砕物Cを貯留する貯留装置24と、貯留装置24内の破砕物Cを搬送路29に供給する供給装置26と、搬送路29に供給された破砕物Cをバーナ23に搬送するファン27と、破砕物Cをセメントキルン22内に吹き込むためのバーナ23と、貯留装置24の脱気を行うためのファン28とで構成される。
【0021】
供給装置26には、貯留装置24内の破砕物Cを安定して搬送路29に供給可能なようにシール性のよいロータリフィーダ等が用いられる。また、供給装置26の下方の搬送路29にエゼクタを設けて、貯留装置24内の破砕物Cを搬送路29に吸引して搬送するようにしてもよい。
【0022】
バーナ23は、セメントキルン22に主燃料の微粉炭を吹き込むバーナであって、セメント焼成用燃料の一部として破砕物Cを用いることができる。尚、微粉炭を吹き込むバーナ23とは別に、破砕物Cを吹き込むための専用のバーナを設け、破砕物Cをセメントキルン22内に吹き込むこともできる。
【0023】
次に、上記構成を有する破砕システム1及び処理システム21の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0024】
廃冷蔵庫等から回収された発泡ウレタンUを受け入れ、ホッパ2に投入して一時的に貯留する。過熱蒸気発生装置5及びファン11を運転し、過熱蒸気発生装置5で発生させた過熱蒸気Sを供給配管5aを介して破砕室6に供給し、破砕室6内を過熱蒸気雰囲気とした後、発泡ウレタンUをホッパ2から供給装置3を介して破砕装置4に投入する。破砕装置4で発泡ウレタンUを破砕し、破砕物Cを、破砕室6内の過熱蒸気S及び空気とともに固気分離装置8に空気搬送する。このように、過熱蒸気Sが導入された破砕室6で、破砕装置4によって発泡ウレタンを破砕するため、粉塵爆発の危険性を低下させることができる。
【0025】
固気分離装置8において、搬送物を、破砕物Cと、過熱蒸気S及び空気とに分離し、分離した破砕物Cを積込装置9を介してバラ車15に積み込み、処理システム21に搬送する。一方、固気分離装置8から排出された過熱蒸気S及び空気は、必要に応じて集塵した後、大気に開放する。
【0026】
破砕物Cを積載したバラ車15は、処理システム21に到着すると、破砕物Cを貯留装置24に空気輸送する。破砕物Cの空気輸送中は、ファン28によって貯留装置24の脱気を行う。この際、上述のように、破砕システム1において破砕物Cを過熱蒸気雰囲気下で破砕したため、破砕物Cが粉塵爆発を起こす危険性が低下し、安全に空気輸送を行うことができる。
【0027】
セメントキルン22の運転中に、貯留装置24に貯留した破砕物Cを、ファン27、搬送路29を介してバーナ23よりセメントキルン22内に吹き込む。セメントキルン22に吹き込まれた破砕物Cは、セメントキルン22内で燃焼し、セメントクリンカの生成に利用される。
【0028】
尚、上記実施の形態においては、発泡ウレタンを過熱蒸気雰囲気の下で破砕する場合について説明したが、発泡ウレタンをさらに細かく粉砕する場合にも、同様に過熱蒸気雰囲気下で粉砕し、発泡ウレタンの粉砕物による粉塵爆発の危険性を低下させることができる。
【0029】
また、発泡ウレタンを過熱蒸気雰囲気の下で破砕又は粉砕するのではなく、発泡ウレタンを破砕又は粉砕した直後に過熱蒸気の雰囲気に晒すことで、以降の粉塵爆発の危険性を低下させることもできる。
【0030】
さらに、本願発明は、発泡ウレタンに限らず、可燃性の廃プラスチックであって、破砕又は粉砕することで粉塵爆発の虞のあるものについて同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 破砕システム
2 ホッパ
3 供給装置
3a 供給路
4 破砕装置
4a 搬送路
5 過熱蒸気発生装置
5a 供給配管
6 破砕室
8 固気分離装置
9 積込装置
11 ファン
15 バラ車
21 処理システム
22 セメントキルン
23 バーナ
24 貯留装置
26 供給装置
27 ファン
28 ファン
29 搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを過熱蒸気の雰囲気の下で破砕又は粉砕することを特徴とする廃プラスチックの取扱方法。
【請求項2】
廃プラスチックを破砕又は粉砕した直後に過熱蒸気の雰囲気に晒すことを特徴とする廃プラスチックの取扱方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により得られた廃プラスチックの破砕物又は粉砕物を燃料として利用することを特徴とする廃プラスチックの処理方法。
【請求項4】
前記燃料をセメント焼成用燃料としてセメントキルンに窯前から吹き込むことを特徴とする請求項3に記載の廃プラスチックの処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−234700(P2010−234700A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86244(P2009−86244)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】