説明

廃プラスチック複合材の分別回収方法、ならびに分別回収プラスチック、再生プラスチックおよび再生プラスチック製品

【課題】 耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収できる廃プラスチック複合材の分別回収方法、ならびに分別回収プラスチック、再生プラスチックおよび再生プラスチック製品を提供する。
【解決手段】 1種類以上のプラスチックを含有する廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収する方法であって、廃プラスチック複合材に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度で廃プラスチック複合材を破砕して、得られた破砕片1をその粒度の粗細に分ける工程と、粒度の粗い破砕粗片2を選択的に回収する工程とを含む廃プラスチック複合材の分別回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃家庭用電気製品またはその部品、廃自動車製品または部品などの廃プラスチック複合材を破砕してプラスチックを分別回収する廃プラスチック複合材の分別回収方法、ならびに分別回収プラスチック、再生プラスチックおよび再生プラスチック製品に関する。特に、廃プラスチック複合材から耐衝撃性の低いプラスチックを分別除去する廃プラスチック複合材の分別回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の有効利用のための廃棄プラスチックのリサイクルとして、熱回収、電気回収のための燃料としてプラスチックを用いるサーマルリサイクル、廃プラスチック複合材を化学的に処理してプラスチックの原料として用いるケミカルリサイクル、廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収してプラスチック製品として再生するマテリアルリサイクルなどがある。
【0003】
ここで、マテリアルリサイクルの一方法として、廃プラスチック複合材を破砕した後、破砕片から磁力や渦電流を利用して金属系破砕片の分離を行った後、比重の異なるプラスチック片の混合物を気体流による比重選別により、粉体化したプラスチックや発泡プラスチックなどの軽量プラスチック片の混合物と、重量プラスチック片の混合物とに分離し、さらに上記の重量プラスチック片の混合物を液体媒体による比重選別により、沈降物と浮遊物に分離し単一素材のプラスチックを回収する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この分別回収方法により回収された回収プラスチックには、ほぼ1種類のプラスチックから形成されているが、紫外線照射もしくは大気中における空気酸化などにより劣化して割れやすくなったプラスチック、または最初から割れやすいプラスチック(以下、割れやすいプラスチックという)などが含まれており、このような回収プラスチックを再生処理した再生プラスチックの耐衝撃性が小さくなるという問題があった。
【0005】
また、廃プラスチック複合材に含有されているプラスチックの脆化温度以下で破砕を行い、破砕片をその粒度により分級することにより1種類のプラスチックから形成されるプラスチックを取り出す方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。しかし、この方法においても、1種類のプラスチックから形成される回収プラスチックは得られるが、割れやすいプラスチックを除去することができないため、回収プラスチックを再生処理した再生プラスチックの耐衝撃性が小さくなるという問題があった。
【0006】
また、上記回収方法により分別回収された回収プラスチックには、そのプラスチックと比重が同じ異物が混入し、バージンのプラスチックと同様の物性が出ないという問題もあった。たとえば、液体媒体による比重選別において、丸まって空気や発泡剤を抱き込んでいるアルミ箔、発泡倍率が小さい発泡ウレタン、発泡ウレタンが張り付いたプラスチックなどの異物が、分別回収されるべきプラスチックといっしょに液体媒体に浮遊するため、これらの異物と分別回収されるべきプラスチックとを分離することができなかった。
【0007】
そのため、手による選別または機械による選別により、異物を除去する必要があるが、廃プラスチック複合材を破砕した破砕片には小さなものが多く含まれ、手による選別に多くの時間が必要であった。
【特許文献1】特許3457619号明細書
【特許文献2】特開平6−226241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記状況に鑑みて、本発明は、耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収できる廃プラスチック複合材の分別回収方法、ならびに分別回収プラスチック、再生プラスチックおよび再生プラスチック製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、1種類以上のプラスチックを含有する廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収する方法であって、廃プラスチック複合材に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度で廃プラスチック複合材を破砕する工程と、得られた破砕片をその粒度の粗細に分ける工程と、粒度の粗い破砕粗片を選択的に回収する工程とを含む廃プラスチック複合材の分別回収方法である。
【0010】
本発明にかかる廃プラスチック複合材の分別回収方法において、破砕片または破砕粗片を比重差によって分別する工程をさらに含むことができ、破砕片から金属系破砕片を選別除去する工程および破砕片または破砕粗片を比重差によって分別する工程をさらに含むことができる。ここで、破砕片または破砕粗片を比重差によって分別する工程を、風力分別方法および液体比重分別方法の少なくともいずれかの方法により破砕片または破砕粗片を分別する工程とすることができる。さらに、破砕片または破砕粗片を比重差によって分別する工程により、1種類のプラスチック毎に分別することができる。
【0011】
また、本発明にかかる廃プラスチック複合材の分別回収方法において、破砕片を粒度の粗細に分ける工程において篩を用い、篩の篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片を選択的に回収する工程を含むことができる。ここで、篩を振動篩とすること、篩の篩目幅を破砕における破砕目幅の3分の1以上とすること、篩の篩目幅を7mm以上とすることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかる廃プラスチック複合材の分別回収方法において、破砕粗片を選択的に回収する工程の後に、破砕粗片に含まれる異物粗片を選別除去する工程を含むことができる。
【0013】
本発明は、上記に記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法により回収された分別回収プラスチックである。また、本発明は、上記に記載の分別回収プラスチックを再生処理した再生プラスチックである。さらに、本発明は、上記に記載の再生プラスチックを使用した再生プラスチック製品である。
【発明の効果】
【0014】
上記のように、本発明によれば、耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収できる廃プラスチック複合材の分別回収方法、ならびに分別回収プラスチック、再生プラスチックおよび再生プラスチック製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかる廃プラスチック複合材の分別回収方法は、図1および図2を参照して、1種類以上のプラスチックを含有する廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収する方法であって、廃プラスチック複合材に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度で廃プラスチック複合材を破砕する工程と、得られた破砕片1をその粒度の粗細に分ける工程と、粒度の粗い破砕粗片2を選択的に回収する工程とを含む。
【0016】
廃プラスチック複合材に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度で破砕することにより、そのプラスチックの種類にかかわらず、割れやすいプラスチックは細かく破砕され、割れにくいプラスチックは粗く破砕される。得られた破砕片1をその粒度の粗細により分けることにより、割れやすいプラスチックと割れにくいプラスチックとを分けることができる。次いで、粒度の粗い破砕粗片を選択的に回収することにより、割れにくいプラスチックすなわち耐衝撃性の高いプラスチックを選択的に回収することができる。
【0017】
ここで、廃プラスチック複合材に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度とは、特に制限はないが、好ましくは0℃より高い温度、より好ましくは5℃より高い温度、さらに好ましくは10℃より高い温度をいう。廃家庭用電気製品、廃自動車製品およびそれらの部品などの廃プラスチック複合材には、ポリプロピレン(脆化温度:0℃)、ポリエチレン(脆化温度:−100℃)などのように脆化温度が−100℃〜0℃程度のプラスチックが多く含まれているからである。
【0018】
本発明にかかる廃プラスチック複合材の分別回収方法において、図2を参照して、破砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程をさらに含むことができる。破砕片1などを比重差によって分別することにより、1種類のプラスチック毎に耐衝撃性の高いプラスチックを得ることができる。ここで、破砕片または破砕粗片を比重差によって分別する方法には、特に制限はないが、図2を参照して、風力分別装置30を用いる風力分別方法、液体比重分別装置40を用いる液体比重分別方法などが好ましく挙げられる。なお、破砕片または破砕粗片を比重差によって分別する工程は、破砕片1をその粒度の粗細に分ける工程、粒度の粗い破砕粗片2を選択的に回収する工程、いずれの工程の前後において行なうことができる。
【0019】
本発明にかかる廃プラスチック複合材の分別回収方法において、図2を参照して、破砕片1から金属系破砕片1cを選別除去する工程をさらに含むことができる。破砕片1から金属系破砕片1cを選別除去することにより、金属系異物のないプラスチックを回収することができ、回収プラスチックの耐衝撃性を高めることができる。
【0020】
本発明にかかる廃プラスチック複合材の分別回収方法において、図1および図2を参照して、得られた破砕片を粒度の粗細に分ける工程において篩14を用い、篩目幅14w以上に粒度の粗い破砕粗片2を選択的に回収する工程を含むことができる。篩14を用いることにより破砕片を粒度の粗細に分けることが容易となる。以下、篩14を用いて破砕片1をその粒度の粗細に分ける工程を含む実施形態について説明する。
【0021】
(実施形態1)
本発明にかかる一の廃プラスチック複合材の分別回収方法は、図1および図2を参照して、廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収する方法であって、廃プラスチック複合材9に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度で廃プラスチック複合材9を破砕する工程と、篩14を用いて破砕片1をその粒度の粗細に分ける工程と、篩目幅14w以上に粒度の粗い破砕粗片2を選択的に回収する工程とを含む。廃プラスチック複合材に含まれる耐衝撃性の低い(すなわち割れやすい)プラスチックは、破砕により細かい破砕片(破砕細片という、以下同じ)となる。したがって、廃プラスチック複合材の破砕片を篩にかけて、篩目幅より粒度の細かい破砕細片を除去し、篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片を選択的に回収することにより、耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収することができる。なお、篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片とはその篩目幅の篩を通らない破砕片をいい、篩目幅より粒度の細かい破砕細片とはその篩目幅の篩を通る破砕片をいう。
【0022】
本分別回収方法において、上記篩が振動篩であることが好ましい。篩が振動することにより、篩目幅より細かい破砕細片を除去し、篩目幅以上に粗い破砕粗片を選択的に回収することが容易になる。
【0023】
また、本分別回収方法において、図1を参照して、上記破砕粗片2を選択的に回収する工程の後に、破砕粗片2に含まれる異物粗片2cを選別除去する工程を含むことが好ましい。破砕粗片2から異物粗片2cを選別除去することにより、耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収することができる。また、異物片の選別除去工程の前に、破砕片の中の破砕細片を除去しておくことにより、異物片の選別除去が容易になる。ここで、異物粗片2cを選別除去する方法には、特に制限はなく、人の手による手選別方法、異物選別装置20(図示せず)を用いて選別する機械選別方法などがある。
【0024】
ここで、本分別方法における好ましい実施形態を、図1を参照して、以下に説明する。廃プラスチック複合材を粉砕して得られた破砕片1がホッパー11に貯えられており、ホッパー11の開口部11aから出た破砕片1は、振動モータ15により斜め45°方向に振動(図1において右上から左下への往復振動)する篩14によって、破砕細片3が分別除去され細片回収容器16に回収され、篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片3が篩14上で一層になりながら、コンベア12方向に進んで、コンベア12上に落下する。コンベア12上で、上記の手選別または機械選別による方法で、破砕粗片2中の異物粗片2cを選別除去することにより、耐衝撃性の高いプラスチックからなる破砕粗片2を粗片回収容器13に分別回収する。
【0025】
(実施形態2)
本発明にかかる別の廃プラスチック複合材の分別回収方法は、図2を参照して、廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収する方法であって、廃プラスチック複合材9に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度で廃プラスチック複合材9を破砕する工程と、破砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程とを含み、廃プラスチック複合材を破砕する工程後に、篩14を用いて破砕片1をその粒度の粗細に分ける工程と、篩目幅14w以上に粒度の粗い破砕粗片2を選択的に回収する工程とを含む。
【0026】
本分別回収方法は、廃プラスチック複合材に、プラスチック以外の異物が少なく、比重の異なる2種類以上のプラスチックが含まれている場合に適したものである。すなわち、破砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程と、実施形態1における破砕片1中から篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片2を分別回収する工程とを組み合わせることによって、比重毎に耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収することができる。
【0027】
ここで、破砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程と破砕片1中から破砕粗片2を分別回収する工程とは、いずれの工程から行なっても良い。すなわち、破砕片1を比重差によって分別した後破砕片1中から破砕粗片2を分別回収しても良いし、破砕片1中から破砕粗片2を分別回収した後破砕粗片2を比重差によって分別しても良い。
【0028】
本分別回収方法において、図2を参照して、破砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程は、風力分別方法および液体比重分別方法の少なくともいずれかの方法により破砕片1または破砕粗片2を分別する工程であることが好ましい。風力分別方法または液体比重分別方法により、破砕片または破砕粗片をその比重差により容易に分別することができる。
【0029】
本分別回収方法における上記比重差による分別工程において、たとえば、風力分別方法における風力の調節もしくは液体比重分別方法における分別用液体の比重調節および/または風力分別方法と液体比重分別方法との適切な組み合わせなどにより、1種類のプラスチック毎に分別回収することも可能となる。
【0030】
また、本分別回収方法において、実施形態1と同様に、上記篩が振動篩であること、上記破砕粗片2を選択的に回収する工程の後に破砕粗片2に含まれる異物粗片2cを選別除去する工程を含むことが好ましい。
【0031】
ここで、本分別回収方法における好ましい実施形態を、図2を参照して、以下に説明する。まず、廃プラスチック複合材9を破砕装置71により破砕して破砕片1とする。この破砕片1には、後の篩による分別において、篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片2と篩目幅より粒度の細かい破砕細片3とが含まれている。これらの破砕片1はホッパー31に貯えられる。
【0032】
ホッパー31に貯えられた破砕片1がコンベア32により風力分別装置30に供給される。風力分別装置30の送風ファン(図示せず)からの風33によって、上記破砕片1のうち軽量破砕片1a(軽量破砕粗片2aおよび軽量破砕細片3aを含む、以下同じ)は吹き飛ばされて軽量片回収容器35に収容され、残りの破砕片1(破砕粗片2および破砕細片2を含む、以下同じ)は液体比重分別装置40に送られる。
【0033】
液体比重分別装置40において、分別用液体41の比重より重い重量破砕片1b(重量破砕粗片2bおよび重量破砕細片3bを含む、以下同じ)は、分別用液体41内に沈降し、液体比重分別装置40の下部から取り出され、液切り部51および脱液体槽61を通る際に分別用液体が除去されて重量片回収容器45に収容される。分別用液体41の比重以下の比重を有する残りの破砕片1は、分別用液体41とともに液切り部52および脱液体槽62を通る際に分別用液体が除去されて回収容器であるホッパー11に収容される。なお、液切り部51,52および脱液体槽61,62で分離された分別用液体41は、下部に設けられた液体貯蔵層44に貯められ、ポンプ43によって液体比重分別装置40に循環される。
【0034】
ホッパー11に収容された破砕片1は、実施形態1と同様に、振動する篩14およびコンベア12を用いて破砕片1中から篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片2が分別回収され、さらに破砕粗片2から異物粗片2が手選別により選別除去されて、耐衝撃性の高いプラスチックからなる破砕粗片2が粗片回収容器13に分別回収される。
【0035】
本分別回収方法において、篩14の篩目幅14wが、破砕における破砕目幅71wの3分の1以上であることが好ましい。篩目幅を破砕目幅の3分の1以上とすることにより、篩により破砕目幅の3分の1以上に粒度が粗い破砕粗片を分別回収することができ、耐衝撃性の高いプラスチックが得られる。
【0036】
また、本文別回収方法において、篩14の篩目幅14wが7mm以上であることが好ましい。篩目幅を7mm以上とすることにより、7mm以上の粒径を有する破砕粗片を分別回収することができ耐衝撃性の高いプラスチックが得られるとともに、後工程における異物粗片の選別除去が容易となる。
【0037】
(実施形態3)
本発明にかかるさらに別の廃プラスチック複合材の分別回収方法は、図2を参照して、廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収する方法であって、廃プラスチック複合材9に含有されているプラスチックの脆化温度より高い温度で廃プラスチック複合材9を破砕する工程と、破砕片1から金属系破砕片1cを選別除去する工程と、破砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程とを含み、廃プラスチック複合材を破砕する工程後に、篩14を用いて破砕片1をその粒度の粗細に分ける工程と、篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片2を選択的に回収する工程とを含む。
【0038】
本分別回収方法は、廃プラスチック複合材に、プラスチック以外の異物、特に金属系異物が含まれるとともに、比重の異なる2種類以上のプラスチックが含まれている場合に適したものである。すなわち、破砕片1から金属系破砕片1cを選別除去する工程と、実施形態2における破砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程および破砕片1中から篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片2を分別回収する工程との組み合わせにより、金属系破片を除去し比重毎に耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収することができる。
【0039】
ここで、金属系破砕片を選別除去する方法は、特に限定されないが、磁力または渦電流を用いる方法が好ましく挙げられる。また、破砕片1から金属系破砕片1cを選別除去する工程、砕片1または破砕粗片2を比重差によって分別する工程および1中から破砕粗片2を分別回収する工程とは、いずれの工程から行なっても良い。
【0040】
また、本分別回収方法において、実施形態1と同様に、上記篩が振動篩であること、上記破砕粗片2を選択的に回収する工程の後に破砕粗片2に含まれる異物粗片2cを選別除去する工程を含むことが好ましい。また、実施形態2と同様に、破砕における破砕目幅71wの3分の1以上であること、篩14の篩目幅が7mm以上であることが好ましい。
【0041】
さらに、本分別回収方法における上記比重差による分別工程おいて、実施形態2と同様に、たとえば、風力分別方法における風力の調節もしくは液体比重分別方法における分別用液体の比重調節および/または風力分別方法と液体比重分別方法との適切な組み合わせなどにより、1種類のプラスチック毎に分別回収することも可能となる。
【0042】
ここで、本分別回収方法における好ましい実施形態を、図2を参照して、以下に説明する。まず、廃プラスチック複合材9を破砕装置71により破砕して破砕片1とする(破砕工程)。この破砕片1には、後の篩による分別において、篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片2と篩目幅より粒度の細かい破砕細片3とが含まれている。これらの破砕片1から、磁力また渦電流を利用した金属系破砕片選別除去装置72を用いて、金属系破砕片1cを選別除去する。金属系破砕片が選別除去された破砕片1がホッパー31に貯えられる。
【0043】
その後は、実施形態2と同様にして、ホッパー31に貯えられた破砕片1を、比重差により分別回収し、篩により篩目幅以上に粒度が粗い破砕粗片2を分別回収し、破砕粗片2から異物粗片2を選別除去して、耐衝撃性の高いプラスチックからなる破砕粗片2を分別回収することができる。
【0044】
本発明にかかる分別回収プラスチックは、たとえば、上記の実施形態1から実施形態3のいずれかの廃プラスチック複合材の分別回収方法により回収されたプラスチックである。上記の廃プラスチック複合材の分別回収方法を用いることにより、耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収することができる。
【0045】
本発明にかかる再生プラスチックは、上記の分別回収プラスチックを再生処理した再生プラスチックである。上記の分別回収方法により回収された分別回収プラスチックを再生処理することにより、耐衝撃性の高い再生プラシチックが得られる。ここで、再生処理とは、廃プラスチック複合材から分別回収した分別回収プラスチックを溶融、混練、再成形する処理をいう。また、再生プラスチックとは、分別回収プラスチックを溶融、混練して成形用プラスチック原料として再生されたプラスチック、およびこの成形用プラスチック原料を成型してプラスチック成形品として再生されたプラスチックをいう。分別回収プラスチックを溶融、混練する方法および装置には特に制限はないが、押出成形法および押出成形機などが好ましく用いられる。また、成形用プラスチック材料を成形する方法および装置には特に制限はないが、射出成形法および射出成形機などが好ましく用いられる。また、分別回収プラスチックを溶融、混練および成形を連続的に行い、成形用プラスチック原料を一度取り出すことなく、直接プラスチック成形品を得ることもできる。
【0046】
本発明にかかる再生プラスチック製品は、上記の再生プラスチックを使用して、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家庭用電気製品または自動車製品などの耐衝撃性の高い再生プラスチック製品である。
【実施例】
【0047】
本発明の実施例として、廃家庭用電気製品(廃冷蔵庫、廃洗濯機、廃エアコン、廃テレビなど)を構成する廃プラスチック複合材からプラスチックとしてポリプロピレン(比重:0.9)およびポリエチレン(比重:0.9)を分別回収した例を以下に説明する。この廃プラスチック複合材には、上記ポリプロピレンおよびプリエチレン以外に、鉄(比重:7.9)、真鍮(比重:8.4)、銅(比重:9.0)、丸まって空気や発泡剤を巻き込んでいるアルミなどの金属箔(比重:0.9〜1.5)、発泡ウレタン(比重:0.04〜0.32)、発泡スチレン(比重:0.01〜0.2)、ホットメルト(比重:0.9;ホットメルトとは接着用プラスチックをいう、以下同じ)、銅線(比重:8.9)、ステンレス鋼製ビス(比重:約8)、塵などの異物の他に、微紛化プラスチック、ABS樹脂(比重:1.05)、ポリスチレン(比重:1.08)、ポリウレタン樹脂(比重:1.2)、ポリ塩化ビニル(比重:1.3)、ポリ塩化ビニリデン(比重:1.7)などの異種プラスチックが含まれているため、実施形態3にしたがって処理を行なった。
【0048】
図2を参照して、廃プラスチック複合材9を破砕目幅71wが35mmの破砕装置71を用いて20℃で破砕して破砕片1を得た。磁力または渦電流を利用した金属系破砕片選別除去装置1cを用いて、上記破砕片1から鉄、真鍮、銅などの金属系破砕片1cを選別除去し、ホッパー31に貯えた。
【0049】
次に、ホッパー31に貯えた破砕片1をコンベア32によって風力分別装置30に供給した。風力分別装置30において送風ファン(図示せず)からの風33によって、上記破砕片1のうち軽量破砕片1aである微紛化プラスチック片、発泡ウレタン片、発泡スチレン片、粉塵などが吹き飛ばされて軽量片回収容器35に収容され、残りの破砕片1は液体比重分別装置40に送られた。本実施例では、風力分別装置としてサイクロン式風力分別装置を用いた。
【0050】
破砕片1を分別するための分別用液体41として水を用いた液体比重分別装置40において、ABS樹脂片、ポリスチレン片、ポリウレタン樹脂片、ポリ塩化ビニル片、ポリ塩化ビニリデン片、銅線、ステンレス鋼製ビスなどの重量破砕片1bが沈降したため、液体比重分別装置40の下部から取り出され、液切り部51および脱液体槽61を通る際に脱水されて重量片回収容器45に収容された。分別用液体41としての水(比重:1.0)の比重以下の比重を有する残りの破砕片1は、分別用液体41である水とともに液切り部52および脱液体槽62を通る際に脱水されて回収容器であるホッパー11に収容された。ここで、ホッパー11に収容された破砕片1にはポリプロピレン片、ポリエチレン片の他に、丸まって空気や発泡剤を巻き込んでいるアルミなどの金属箔、発泡ウレタン、発泡スチレン、ホットメルトなどが含まれていた。
【0051】
次に、図1を参照して、ホッパー11に貯められた破砕片1から、振動モータ15により斜め45°方向に振動(図1において右上から左下への往復振動)する篩14によって、破砕細片3を分別除去した後、篩目幅以上に粗い破砕粗片2を篩14上で一層にさせながら、コンベア12上に落下させた。コンベア12上で、上記の手選別による方法で、破砕粗片2中に含まれる発泡ウレタン粗片、発泡スチレン粗片、ホットメルト粗片、空気や発泡剤を巻き込んだアルミなどの金属箔粗片などの異物粗片2cを選別除去して、耐衝撃性の高いプラスチックからなる破砕粗片2を粗片回収容器13に分別回収した。
【0052】
このとき、篩による破砕片からの破砕粗片の分別回収工程における篩目幅と、篩残存質量比(破砕粗片/破砕片)と、手選別による1kgの破砕片(すなわち、1×(残存質量比)kgの破砕粗片)からの異物粗片の選別に必要な時間との関係を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1より明らかなように、篩目幅が7mm以上の篩を用いることにより、分別回収される破砕粗片には細かい片が無く、また、選別の母集団である破砕片数および選別の対象となる異物粗片の数も少なくなるため、手選別の効率が大きく向上した。
【0055】
上記のようにして分別回収された回収プラスチックである破砕粗片(異物粗片を選別除去した後のもの)には、ポリプロピレンとポリエチレンとが質量比で99:1の割合で含まれていた。この質量比は、廃家庭用電気製品に含まれるポリプロピレンとポリエチレンとの質量比と同じであり、この程度の混合割合であれば、1種類のプラスチックとしてのポリプロピレン材料としてマテリアルリサイクルが可能である。
【0056】
なお、本実施において、重量物回収容器45に収容された重量破砕片1bを、さらに比重が1.1の分別用液体41を用いた液体比重分別装置40中に供給すると、比重が1.0〜1.1の間にある破砕片としてポリスチレン片、ABS樹脂片などを浮遊物として分別回収することができる。
【0057】
上記のようにして得られた分別回収プラスチックである破砕租片(異物租片を選別除去した後のもの)を、まず2軸押出成形機を用いて、220℃で溶融し、2軸のスクリュー(直径25mm)で混練して成形用プラスチック原料を得た。次に、この成形用プラスチック原料を、射出成形機を用いて、230℃で溶融し、射出1次圧200kg/cm2、射出2次圧150kg/cm2で、表面温度が40℃の金型に射出成形して、厚さ3.2mmのシート状の試験用プラスチック成形品を得た。このとき破砕目幅に対する篩目幅の比と、試験用プラスチック成形品の落錘衝撃試験(JIS K 7211に準拠)における50%破壊高さとの関係を表2に示した。ここで、本実施例における50%破壊高さとは、試験用プラスチック成形品に1kgの錘(JIS K 7211における球2型の重錘)を自由落下させて、試験用プラスチック成形品の試験片数の50%が破砕されるときの平均自由落下高さ(cm)をいう。なお、参考のために、表2にバージンプラスチックを用いた耐衝撃用プラスチック成形品の50%破壊高さの一般的な数値を示した。ここで、バージンプラスチックを用いた耐衝撃用プラスチック成形品の50%破壊高さは、対象となる製品によって異なる数値をとるが、ほぼ50cm〜200cmの範囲内にある。
【0058】
【表2】

【0059】
表2に示すように、篩目幅が破砕目幅の3分の1以上になると、落錘衝撃試験における50%破壊高さは56cm以上となり、バージンプラスチックを用いた耐衝撃用プラスチック成形品と同等以上の耐衝撃性を示した。
【0060】
本実施例においてこのように得られた耐衝撃性の高い再生プラスチックを使用して、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家庭用電気製品または自動車製品などの耐衝撃性の高い再生プラスチック製品を作製することができる。このようにして、循環型マテリアルリサイクルを確立することができる。
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上記のように、本発明は、耐衝撃性の高いプラスチックを分別回収できる廃プラスチック複合材の分別回収方法、ならびに分別回収プラスチック、再生プラスチックおよび再生プラスチック製品に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明にかかる一の廃プラスチック複合材の分別回収方法を説明する模式図である。
【図2】本発明にかかる別の廃プラスチック複合材の分別回収方法を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 破砕片、1a 軽量破砕片、1b 重量破砕片、1c 金属系破砕片、2 破砕粗片、2a 軽量破砕粗片、2b 重量破砕粗片、2c 異物破砕粗片、3 破砕細片、3a 軽量破砕細片、3b 重量破砕細片、9 廃プラスチック複合材、11,31 ホッパー、12,32 コンベア、13 粗片回収容器、14 篩、14w 篩目幅、15 振動モータ、16 細片回収容器、30 風力分別装置、33 風、35 軽量片回収容器、40 液体比重分別装置、41 分別用液体、43 ポンプ、44 液体貯蔵層、45 重量片回収容器、51,52 液切り部、61,62 脱液体槽、71 破砕装置、71w 破砕目幅、72 金属系破砕片選別除去装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上のプラスチックを含有する廃プラスチック複合材からプラスチックを分別回収する方法であって、
前記廃プラスチック複合材に含有されている前記プラスチックの脆化温度より高い温度で前記廃プラスチック複合材を破砕する工程と、得られた破砕片をその粒度の粗細に分ける工程と、粒度の粗い破砕粗片を選択的に回収する工程とを含む廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項2】
前記破砕片または前記破砕粗片を比重差によって分別する工程をさらに含む請求項1に記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項3】
前記破砕片から金属系破砕片を選別除去する工程と、前記破砕片または前記破砕粗片を比重差によって分別する工程とをさらに含む請求項1に記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項4】
前記破砕片または前記破砕粗片を比重差によって分別する工程が、風力分別方法および液体比重分別方法の少なくともいずれかの方法により前記破砕片または破砕粗片を分別する工程である請求項2または請求項3に記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項5】
前記破砕片または前記破砕粗片を比重差によって分別する工程により、1種類のプラスチック毎に分別する請求項2から請求項4のいずれかに記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項6】
前記破砕片を粒度の粗細に分ける工程において篩を用い、前記篩の篩目幅以上に粒度の粗い破砕粗片を選択的に回収する工程を含む請求項1から請求項5のいずれかに記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項7】
前記篩が振動篩である請求項6に記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項8】
前記篩の篩目幅が、前記破砕における破砕目幅の3分の1以上である請求項6または請求項7に記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項9】
前記篩の篩目幅が7mm以上である請求項6から請求項8のいずれかに記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項10】
前記破砕粗片を選択的に回収する工程の後に、前記破砕粗片に含まれる異物粗片を選別除去する工程を含む請求項1から請求項9のいずれかに記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の廃プラスチック複合材の分別回収方法により回収された分別回収プラスチック。
【請求項12】
請求項11に記載の分別回収プラスチックを再生処理した再生プラスチック。
【請求項13】
請求項12に記載の再生プラスチックを使用した再生プラスチック製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−35574(P2006−35574A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217328(P2004−217328)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】