説明

廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法

【課題】微粉炭と廃棄プラスチックを混合し、加圧成形して得られる塊成炭と粗粒炭をコークス炉に装入し、乾留して高炉用コークスを製造する際に、コークスの品質低下を抑制しつつ、廃棄プラスチックの処理量を増加させる。
【解決手段】配合炭を、乾燥した後、または、乾燥と同時に、微粉炭と粗粒炭とに分級し、120℃以上の温度を有する微粉炭に、破砕および篩により、最大厚みが0.8mm以下、最大長さが15mm以下のサイズにした一般廃棄プラスチックを添加、混合し、熱間加圧成形して塊成炭とした後、該塊成炭と前記粗粒炭を混合し、コークス炉に装入して乾留する廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉を用いた廃棄プラスチックの処理方法に関し、特に、製鉄業における高炉用コークスの製造プロセスにおいて、廃棄プラスチックを有効に再利用するための廃棄プラスチックの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業廃棄物、一般廃棄物として排出される廃棄プラスチックの大部分は、埋め立て処理され、また、一部は、焼却処理がなされている。しかし、廃棄プラスチックの埋め立て処理においては、土中の細菌やバクテリアで分解されず、また、焼却処理では、発熱量が大きいために、焼却炉がダメージを受けることに加え、一般廃棄物に付着する塩分や、ポリ塩化ビニル等の含塩素廃棄プラスチックから発生する排ガス中の塩素による腐食が問題となっている。
【0003】
また、このような処理方法は、埋め立て処分場が、将来不足することが予想されること、また、排ガス処理や環境問題の観点から、廃棄プラスチックの有効再利用が望まれている。
【0004】
上記処理方法の問題点に鑑みて、廃棄プラスチックを有効に利用する方法として、コークス炉に、廃棄プラスチックを、石炭とともに装入し再利用することが行われている。
【0005】
例えば、コークス炉で廃棄プラスチックを再利用する際に、廃棄プラスチックを圧縮成形して、見掛密度が0.40〜0.95kg/リットル、粒径が5〜80mmのプラスチック粒状化物とした後、石炭に対して、5質量%以下の比率で混合し、コークス炉で乾留することにより、廃棄プラスチックにより、コークス強度および成品歩留の低下を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1、参照)。
【0006】
また、コークス炉に廃棄プラスチックを石炭と混合して装入し、乾留する際に、廃棄プラスチックの乾留により生成する残渣の拡散に起因するコークス強度の低下を抑制するために、廃棄プラスチックの平均粒径を、石炭の10倍以上とし、かつ、石炭の平均粒径を0.6〜2.0mmとする方法が提案されている(例えば、特許文献2、参照)。
【0007】
これらの方法は、平均粒径が3mm以下または平均粒径が0.6〜2.0mmの粉砕した石炭と廃棄プラスチックを混合して、コークス炉で乾留する際のコークス強度低下を抑制するために、粉砕した石炭の平均粒径に対して、廃棄プラスチックの粒度を最適化したり、圧縮成形により、廃棄プラスチックの見掛密度を最適化するものである。
【0008】
しかし、通常の容器包装リサイクル法で集荷される一般廃棄プラスチックは、フラフ状の薄いものが多く、これらの方法により、一般廃棄プラスチックの平均粒径や見掛け密度を調整するためには、予め、一般廃棄プラスチックをせん断し、減容成形等により、大粒径化する必要があることから、廃棄プラスチックのハンドリング性が低下し、作業性が低下する問題がある。
【0009】
また、粉砕した石炭と廃棄プラスチックを混合して、コークス炉で乾留する場合は、石炭粒子と廃棄プラスチックが接触している状態で乾留されるため、上記の廃棄プラスチックの平均粒径や見掛け密度の最適化だけでは、廃棄プラスチックのガス化や残渣により、乾留時の軟化溶融した石炭粒子同士の接着を阻害することを十分に抑制することは困難である。
【0010】
このため、コークス強度の低下を抑制するために、石炭に対する廃棄プラスチックの配合割合を制限せざるを得ない。
【0011】
また、これらの粉砕した石炭と廃棄プラスチックを混合してコークス炉で乾留する方法における、廃棄プラスチックのハンドリング性の低下や、乾留時の軟化溶融した石炭粒子同士の接着の阻害によるコークス強度低下の問題を改善する方法として、石炭を粉砕した後の微粉炭と廃棄プラスチックを混合し、成形する方法も提案されている。
【0012】
微粉炭と廃棄プラスチックを混合し、成形して塊成炭とし、塊成炭とその他の粗粒炭をコークス炉で乾留する場合には、塊成炭内で廃棄プラスチックのガス化や残渣が生成し、塊成炭同士または塊成炭と粗粒炭との軟化溶融による接着を阻害することを抑制することができる。
【0013】
例えば、石炭を粉砕した後の0.3mm以下の微粉炭に、廃棄プラスチックとタールバインダーとを添加し、混合した後、加圧成形して塊成炭とし、その他の0.3mmより大きい粗粒炭と混合した後、コークス炉にて乾留する際に、廃棄プラスチックによるコークス強度の低下を抑制するために、微粉炭と混合する廃棄プラスチックの粒度が0.8mm以下の粒状および/または厚さ0.8mm以下のフィルム状とし、好ましくはフィルム状の廃棄プラスチックの長さを15mm以下とする方法が提案されている(例えば、特許文献3、参照)。
【0014】
しかし、この方法では、微粉炭と廃棄プラスチックとの混合物は室温で加圧成形するため、成形する際に塊成炭内の廃棄プラスチックとその周辺の石炭粒子間との間にスプリングバックによる空隙が生じ、塊成炭の見掛密度を低下させる問題がある。
【0015】
成形する際の塊成炭の空隙の生成は、乾留時に塊成炭内の廃棄プラスチックのガス化により生成する空隙とともに、コークス強度低下の原因となる。また、塊成炭の見掛密度の低下は、塊成炭とその他の粗粒炭をコークス炉に装入する際に嵩密度を低下させ、コークス強度を十分に向上することを困難にする。
【0016】
一方、石炭に粒状の廃棄プラスチックとバインダーを混合し、加圧成形して成形炭を製造する際に、成形炭の成形率、冷間強度を向上させるために、石炭、廃棄プラスチック、および、バインダーを、廃棄プラスチックの軟化温度以上で融点より低い温度、具体的には、80〜100℃の温度で加熱・混練し、この温度で加圧成形する方法が提案されている(例えば、特許文献4、参照)。
【0017】
この方法を用いて、容器包装リサイクル法で集荷された一般廃棄プラスチックを処理する場合には、一般廃棄プラスチック中には、主要成分として、融点が100〜120℃と低いポリエチレンを含まれるため、加熱温度は、高くても120℃以下に制限される。
【0018】
しかし、この温度では、一般廃棄プラスチック中のその他の主成分、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレンは、軟化温度より低いので、成形する際の塊成炭内の廃棄プラスチックとその周辺の石炭粒子間との間のスプリングバックによる空隙の発生、および、これによる塊成炭の見掛密度の低下を十分に抑制することはできない。
【0019】
したがって、この方法により得られる塊成炭とその他の粗粒炭を乾留して得られるコークス強度は、十分に向上することができなかった。
【0020】
【特許文献1】特開2001−49261号公報
【特許文献2】特開2001−49263号公報
【特許文献3】特開2003−238967号公報
【特許文献4】特開2000−319674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、上記従来技術の現状を踏まえ、微粉炭と廃棄プラスチックを混合し、加圧成形して得られる塊成炭と粗粒炭をコークス炉に装入し、乾留して高炉用コークスを製造する際に、コークス強度の低下を抑制しつつ、廃棄プラスチックの処理量を増加することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0023】
(1)配合炭を、乾燥した後、または、乾燥と同時に、微粉炭と粗粒炭とに分級し、120℃以上の温度を有する微粉炭に、破砕および篩により、最大厚みが0.8mm以下、最大長さが15mm以下のサイズにした一般廃棄プラスチックを添加、混合し、熱間加圧成形して塊成炭とした後、該塊成炭と前記粗粒炭を混合し、コークス炉に装入して乾留することを特徴とする廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【0024】
(2)前記微粉炭の温度を150℃以上とすることを特徴とする(1)に記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【0025】
(3)前記微粉炭の温度を250℃以下とすることを特徴とする(1)または(2)に記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【0026】
(4)前記廃棄プラスチックの添加は、微粉炭に対する質量%で、10質量%以下とすることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【0027】
(5)前記塊成炭の全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計量)に対する質量%は、30質量%以下とすることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、廃棄プラスチックをコークス炉にて処理する際のコークス生産性の低下を抑制することが可能であり、コークス生産量への悪影響を抑制しつつ、廃棄プラスチック添加率を増加することができる廃棄プラスチックのコークス炉での処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の詳細について説明する。
【0030】
図1を用いて、本発明の実施形態の一例を説明する。
【0031】
破砕された原料炭1は、乾燥・分級装置2にて加熱、乾燥されるとともに、粒径が0.5mm超の粗粒炭3と、粒径が0.5mm以下の微粉炭4に分級される。
【0032】
一方、一般廃棄プラスチック10は、事前に破砕機11で、所定のサイズに破砕されるとともに、15mmの篩目で篩い、最大厚みが0.8mm以下、最大長さが15mm以下のサイズの、一般廃棄プラスチック12とされる。
【0033】
上記サイズの一般廃棄プラスチック12を、120〜250℃の温度を有する微粉炭4に添加し、混練機5を用いて廃棄プラスチック12と微粉炭4を混合し、その後、成形機6を用いて成形し、塊成炭7とする。成形方法は、特に限定されるものではないが、例えば、線圧4トン/cmの平ロール型塊成機を用いることにより、厚さ10mm程度の平板状の塊成炭を製造することができる。
【0034】
この塊成炭7は、前記粗粒炭3と混合されて、コークス炉9に装入され、塊成炭7および粗粒炭3からなる全装入物8が、コークス炉9で乾留されて、コークスが製造される。
【0035】
上記所定サイズの一般廃棄プラスチック12を微粉炭4と混合し、塊成炭7とした後、粗粒炭3とともにコークス炉で乾留する場合は、一般廃棄プラスチック12を、直接、微粉炭4と粗粒炭3に混合し、コークス炉で乾留する場合に比べて、一般廃棄プラスチック12から発生するガスや残渣が、微粉炭4および/または塊成炭7の石炭粒子間の融着を阻害し、コークス強度を低下する現象を抑制することができる。
【0036】
また、本発明者らの検討によれば、乾留時の一般廃棄プラスチックによる石炭粒子間の融着阻害を抑制し、コークス強度を十分に向上するためには、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、成形する際の微粉炭の温度、一般廃棄プラスチックのサイズ、一般廃棄プラスチックの微粉炭に対する質量%、さらには、一般廃棄プラスチックの配合炭(微粉炭と粗粒炭の合計量)に対する質量%を、以下の理由から、適正範囲にする必要がある。
【0037】
以下に、これらの条件および限定理由について説明する。
【0038】
成形する際の一般廃棄プラスチックのサイズ
通常、容器包装リサイクル法の下で集荷される一般廃棄プラスチックは、種々のサイズのプラスチックボトルやプラスチックバッグなどからなり、例えば、厚みが0.3〜10mm程度、長さが5〜50cm程度の、厚みや長さが異なる廃棄プラスチックが含まれている。
【0039】
本発明では、このような一般廃棄プラスチックを用いて、微粉炭と混合し、成形する前に、以下の理由から、一般廃棄プラスチックを、最大厚みが0.8mm以下で、最大長さが15mm以下のサイズに破砕する。
【0040】
図3に、破砕した後の一般廃棄プラスチックの最大厚みと、塊成炭の見掛密度との関係を示す。
【0041】
図3は、120℃の温度の微粉炭に、最大長さが20mmで、最大厚みが異なる一般廃棄プラスチックを、微粉炭に対する配合割合で10%添加し、混合、成形し、得られた塊成炭の見掛密度を測定した結果を示すものである。なお、同じ条件で微粉炭のみを成形した場合の塊成炭の見掛密度は、約1.1〜1.2(g/cm3)であった。
【0042】
図3に示すように、一般廃棄プラスチックの厚みが0.8mmを超える場合には、成形炭の見掛密度が大きく低下する。これは、廃棄プラスチックの厚みが0.8mmを超える場合には、熱容量が大きくなり、廃棄プラスチックを120℃に加熱した場合に、一般廃棄プラスチックが十分に軟化し、溶融し難くなるため、溶融した部分が減少し、成形加工時のスプリングバックが大きくなり、その結果、塊成炭中の微粉炭粒子と廃棄プラスチック間に間隙が生じたためと考えられる。
【0043】
一方、一般廃棄プラスチックの厚みが0.8mm以下の場合には、一般廃棄プラスチックの主要成分の溶融部分が増加し、軟化も促進されるため、成形加工時のスプリングバックが小さくなり、微粉炭と一般廃棄プラスチックとの密着性が向上し、微粉炭のみの塊成炭とほぼ同等の見掛密度を得ることができる。
【0044】
なお、図3は、一般廃棄プラスチックの最大長さが20mmの条件での塊成炭の見掛密度を示すものであり、図3から、一般廃棄プラスチックの長さが15mmを超えても、厚みが適正範囲(0.8mm以下)であれば、塊成炭の見掛密度は低下せず、微粉炭のみの塊成炭とほぼ同等の見掛密度を得ることができることが解る。
【0045】
図4に、長さの異なる一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、加圧成形して得られた塊成炭を、粗粒炭に配合し、コークス炉に装入した場合の、一般廃棄プラスチックの長さと全装入物(塊成炭と粗粒炭)の嵩密度との関係を示す。
【0046】
なお、一般廃棄プラスチックの最大厚みは0.8mm(一定)とし、微粉炭に対する一般廃棄プラスチックの配合割合は10質量%、混合、成形する際の微粉炭の温度は120℃、全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計)における塊成炭の配合比率は、30質量%とした。
【0047】
前述したように、一般廃棄プラスチックの長さによる塊成炭の見掛密度の影響は小さいが、図4に示すように、一般廃棄プラスチックの長さが15mmを超えると、装入炭(塊成炭と粗粒炭の合計)の嵩密度は大きく低下する。
【0048】
これは、一般廃棄プラスチックの長さが15mmを超えると、塊成炭の外側に廃棄プラスチックが露出する割合が増え、この露出した一般廃棄プラスチックが、装入炭(塊成炭と粗粒炭の合計)の嵩密度低下させたものと考えられる。この装入炭(塊成炭と粗粒炭の合計)の嵩密度の低下は、コークス強度の低下をもたらす原因となる。
【0049】
また、一般廃棄プラスチックの長さの増加とともに、塊成炭の外側に露出した一般廃棄プラスチックの部分が増加すると、コークス炉で乾留する際に、露出した部分の一般廃棄プラスチックから生成したガスまたは残渣によって、塊成炭同士、または、塊成炭と粗粒炭の軟化融着が阻害され、コークス強度が低下するので好ましくない。
【0050】
以上の結果を踏まえ、本発明においては、コークス強度の低下を抑制するために、微粉炭と混合し、成形する前に、一般廃棄プラスチックを、最大厚みが0.8mm以下で、最大長さが15mm以下のサイズに破砕する。
【0051】
なお、本発明において、最大長さが15mm以下の一般廃棄プラスチックとは、一般廃棄プラスチックを破砕後、15mmの篩目の篩を用いて篩った場合の篩下の一般廃棄プラスチックを意味する。
【0052】
成形する際の微粉炭の温度
通常、容器包装リサイクル法の下で集荷される一般廃棄プラスチックは、種々の主要成分からなるプラスチックボトルやプラスチックバッグなどからなる。
【0053】
一般廃棄プラスチックの主要成分の一例を、図2に示す。
【0054】
なお、図2に示したプラスチックの各主要成分の融点は、主成分以外の添加成分や分子量などにより変わるので、図2には、各主要成分の融点の最低温度から最高温度までの融点の範囲を示した。
【0055】
図2に示すように、一般廃棄プラスチックの主要成分によって、融点は大きく異なる。例えば、ポリエチレン(PE)の融点は120〜150℃、ポリプロピレン(PP)の融点は130〜180℃、ポリスチレン(PS)の融点は220〜260℃、ポリエチレンテレフタレート(PET)の融点は210〜280℃、ポリ塩化ビニル(PVC)の融点は180〜290℃である。
【0056】
また、一般廃棄プラスチックの主要成分の含有割合は、集荷によって変動するが、平均すると、大凡、ポリエチレン(PE):約30%、ポリプロピレン(PP):約20%、ポリスチレン(PS):約25%、ポリエチレンテレフタレート(PET):約10%、ポリ塩化ビニル(PVC):約5%、その他:10%である。
【0057】
本発明では、このような主要成分の組成からなる一般廃棄プラスチックを用いて、破砕して、上記最適サイズにした一般廃棄プラスチックを、微粉炭と混合し、成形する際に、以下の理由から、微粉炭の温度を120℃以上とする。
【0058】
図5に、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、成形する際の微粉炭の温度と、塊成炭の見掛密度との関係を示す。
【0059】
なお、図5では、最大圧厚みが0.8mm、最大長さが15mmの一般廃棄プラスチックを、微粉炭に対する配合割合で10%添加した場合(●)と、一般廃棄プラスチック無添加(微粉炭のみ)の場合(○)とで、得られた塊成炭の見掛密度を測定し、両者を比較した結果を示す。
【0060】
室温(25℃)での微粉炭に、一般廃棄プラスチックを、微粉炭に対する配合割合で10%添加した場合(●)には、同じ条件で、一般廃棄プラスチック無添加(微粉炭のみ)の場合(○)に比べて、塊成炭の見掛密度は大幅に低下するが、微粉炭の温度が高くなるとともに、塊成炭の見掛密度は高くなる。
【0061】
この結果、微粉炭の温度が200℃以上の条件では、塊成炭の見掛密度は、一般廃棄プラスチック無添加(微粉炭のみ)の場合(○)と、ほぼ同等になる。
【0062】
これは、微粉炭の温度が高くなるとともに、図2に示すような一般廃棄プラスチックの主要成分のうち、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの比較的融点が低い主要成分が溶融し、その他の主要成分も十分に軟化するため、成形加工時のスプリングバックが小さくなり、微粉炭粒子と廃棄プラスチック間の間隙が減少するとともに、特に、溶融部分では、廃棄プラスチックと微粉炭粒子の密着性が高まって、塊成炭の見掛密度が向上したものと考えられる。
【0063】
図6に、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、成形する際の微粉炭の温度と、得られた塊成炭を粗粒炭と混合してコークス炉に装入する際の装入嵩密度との関係を示す。
【0064】
また、図7に、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、成形する際の微粉炭の温度と、得られた塊成炭を粗粒炭と混合してコークス炉に装入し、乾留して得られたコークスの強度DI15015との関係を示す。
【0065】
なお、図6および図7における一般廃棄プラスチックと微粉炭と混合、成形は、図5で説明した条件と同じ条件で行い、塊成炭の全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計量)に対する割合は、30質量%とした。
【0066】
図6に示すように、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、成形する際の微粉炭の温度が高くなるとともに、塊成炭の見掛密度が増加(図5、参照)するため、これとともに、装入嵩密度も高くなる。
【0067】
また、図7に示すように、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、成形する際の微粉炭の温度が高くなるとともに、塊成炭の見掛密度が増加し(図5、参照)、装入嵩密度が増加する(図6、参照)ため、これとともに、コークスの強度も高くなる。
【0068】
図5〜7に示す検討結果を踏まえ、一般廃棄プラスチックの主要成分のうち、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの比較的融点が低い主要成分(図2、参照)を溶融させ、その他の主要成分も十分に軟化させることにより、成形加工時のスプリングバックを低減し、微粉炭粒子と廃棄プラスチック間の間隙を減少させるとともに、廃棄プラスチックと微粉炭粒子の密着性を高めるために、上記最適サイズの一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合、加圧成形する際の微粉炭の温度を、120℃以上とする。
【0069】
これにより、廃棄プラスチックと微粉炭を塊成炭とし、粗粒炭と混合してコークス炉で乾留することにより、廃棄プラスチックから生成するガスおよび残渣が微粉炭と粗粒炭、または、粗粒炭同士の融着を阻害するのを抑制するという従来の効果に加えて、
(a)塊成炭の見掛密度が高まるため、塊成炭と粗粒炭を混合しコークス炉に装入する際の装入嵩密度が向上すること、
(b)塊成炭中の一般廃棄プラスチックと微粉炭が密着し、微粉炭粒子間の平均間隔も短いため、この塊成炭が軟化溶融する際に、一般廃棄プラスチックから発生したガスにより、塊成炭の内圧上昇に起因して塊成炭が膨張し、塊成炭同士または塊成炭と粗粒炭粒子との融着が促進されること、
(c)塊成炭中の空隙の平均サイズが小さいため、軟化溶融時に、廃棄プラスチックがガス化した後の空隙に、その周囲の軟化溶融状態の微粉炭粒子が侵入する結果、コークス化後の塊成炭中の粗大気孔が減少すること、
などの相乗作用によって、軟化溶融時に、塊成炭同士、または、塊成炭と粗粒炭粒子が十分に融着し、より強度が高いコークスを得ることが可能となる。
【0070】
塊成炭の見掛密度が向上する。そして、この成形炭をコークス炉に装入する際の石炭嵩密度が増加し、乾留後のコークス強度も十分に向上することが可能となる。
【0071】
また、上記相乗効果をより高め、コークスの強度をより安定して向上するためには、一般廃棄プラスチックを、微粉炭と混合、加圧成形する際の微粉炭の温度は、150℃以上とするのが好ましく、さらに、200℃以上とするのが、より好ましい。
【0072】
一方、一般廃棄プラスチックを、微粉炭と混合、加圧成形する際の微粉炭の温度の上限は、コークス強度の向上する観点からは、特に、限定する必要はない。
【0073】
しかし、この微粉炭の温度が250℃を超える場合には、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合、加圧成形する際に、一般廃棄プラスチックの主要成分の1種であるポリ塩化ビニル(PVC)(図2、参照)の熱分解により、塩化水素ガスの発生量が増加し、設備の腐食の原因となるため、好ましくない。したがって、設備の腐食による劣化を抑制する目的から、一般廃棄プラスチックを、微粉炭と混合、加圧成形する際の微粉炭の温度は、250℃以下とすることが好ましい。
【0074】
以上説明したように、一般廃棄プラスチックを微粉炭と混合し、成形する際の微粉炭の温度、一般廃棄プラスチックのサイズを本発明で規定する範囲に限定することにより、コークス強度の向上することが可能となる。
【0075】
しかしながら、一般廃棄プラスチックの微粉炭に対する質量%が増加するとともに、成形が困難となり、成形炭の歩留が低下し、また、塊成炭の見掛密度が低下、コークス炉に装入する際の嵩密度が低下することにより、コークス強度が低下する。
【0076】
一般廃棄プラスチックの微粉炭に対する質量%が10質量%を超えると、成形炭の歩留が大きく低下し、装入嵩密度の低下により、高炉用コークスとして要求されるコークス強度を安定して確保することが困難となる。このため、一般廃棄プラスチックの微粉炭に対する質量%の上限を、10質量%とするのが好ましい。
【0077】
また、塊成炭の全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計量)に対する質量%が増加するとともに、コークス炉に装入する際の嵩密度が低下することにより、コークス強度が低下する。
【0078】
塊成炭の全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計量)に対する質量%が30質量%を超えると、装入嵩密度の低下し、高炉用コークスとして要求されるコークス強度を安定して確保することが困難となる。このため、塊成炭の全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計量)に対する質量%を、30質量%以下とする。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例により本発明の効果を実証する。
【0080】
表1に示す主要成分組成の一般廃棄プラスチックと、表2に示す石炭性状を有する石炭Aを用い、表3に示す一般廃棄プラスチックの破砕条件(一般廃棄プラスチックの最大厚みおよび最大長さ)、微粉炭との混合、成形条件(微粉炭の温度、一般廃棄プラスチックの微粉炭に対する質量%)、コークス炉装入条件(塊成炭の全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計量)に対する質量%)で、塊成炭、および、コークスを製造した。
【0081】
なお、原料炭は、表2に示す石炭性状を有する石炭Aを粉砕し、粒径0.3mm以下の微粉炭と、粒径0.3mm超の粗粒炭(粒度:3mm篩下85質量%かつ0.3mm篩下をカット)に分級した。
【0082】
一般廃棄プラスチックと微粉炭の混合物の成形は、平ロール塊成機で、試料を線圧4トン/cmで加圧成形することにより行い、厚さ10mm程度の平板状の成形炭を作製し、その見掛密度を測定した。
【0083】
塊形炭と粗粒炭の全装入物の嵩密度は、ASTM D291−86に従って測定した。塊形炭と粗粒炭の乾留は、コークス試験炉(1チャージ当たりの石炭装入量 約80Kg)を用いて行い、得られコークスの冷間強度は、JISドラム試験機を用いて、150回転後の篩15mm以上の質量比(DI15015)により測定した。
【0084】
表3に、得られた塊成炭の見掛密度、コークス炉装入時の嵩密度、コークスの強度を測定した結果を示す。
【0085】
表3に示すように、一般廃棄プラスチックの最大厚みおよび最大長さ、混合、成形条件時の微粉炭の温度が本発明で規定する範囲を満足するNo.1〜4の発明例は、これらの条件が本発明の範囲から外れたNo.5〜8の比較例に比べて、DI15015で、84.9の優れた冷間強度が得られた。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す図である。
【図2】一般廃棄プラスチックの主要成分の一例を示す図である。
【図3】一般廃棄プラスチックの最大厚みと塊成炭の見掛密度の関係を示す図である。
【図4】一般廃棄プラスチックの最大長さと全装入物(塊成炭と粗粒炭)の嵩密度の関係を示す図である。
【図5】混合成形時の微粉炭の温度と一般廃棄プラスチックを含有する塊成炭の見掛密度との関係を示す図である。
【図6】混合成形時の微粉炭の温度と全装入物(塊成炭と粗粒炭)の嵩密度との関係を示す図である。
【図7】混合成形時の微粉炭の温度と全装入物(塊成炭と粗粒炭)の乾留により得られたコークスの冷間強度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 原料炭
2 乾燥・分級装置
3 粗粒炭
4 微粉炭
5 混練機
6 成形機
7 塊成炭
8 全装入物(塊成炭と粗粒炭)
9 コークス炉
10 一般廃棄プラスチック
11 破砕機
12 最大厚みが0.8mm以下、最大長さが15mm以下の一般廃棄プラスチック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合炭を、乾燥した後、または、乾燥と同時に、微粉炭と粗粒炭とに分級し、120℃以上の温度を有する微粉炭に、破砕および篩により、最大厚みが0.8mm以下、最大長さが15mm以下のサイズにした一般廃棄プラスチックを添加、混合し、熱間加圧成形して塊成炭とした後、該塊成炭と前記粗粒炭を混合し、コークス炉に装入して乾留することを特徴とする廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【請求項2】
前記微粉炭の温度を150℃以上とすることを特徴とする請求項1に記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【請求項3】
前記微粉炭の温度を250℃以下とすることを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【請求項4】
前記廃棄プラスチックの添加は、微粉炭に対する質量%で、10質量%以下とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。
【請求項5】
前記塊成炭の全装入物(塊成炭と粗粒炭の合計量)に対する質量%は、30質量%以下とすることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の廃棄プラスチックを用いた高炉用コークスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−266411(P2008−266411A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109278(P2007−109278)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】