説明

廃棄物のガス化溶融装置

【課題】有価金属の回収効率を高め、且つ、廃棄物のガス化溶融装置を連続運転している状態で連絡ダクトに堆積したダストを除去する廃棄物のガス化溶融装置を提供する。
【解決手段】 銅滓を実質的に含む廃棄物Aを投入し、廃棄物Aの一部を流動媒体の循環流中で熱分解ガス化し高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を排出する内部循環流動層ガス化炉11と、高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を導入して1次燃焼室35の内部に旋回流34を形成し、灰分をスラグ化し溶融スラグを生成する旋回溶融炉21と、高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を旋回溶融炉21へ導く連絡ダクト38と、連絡ダクト83の側壁に穿設された開口部39に挿入配置され、連絡ダクト38の内壁に延在する略水平領域40に向けてクリーニングガスを噴射するガス噴射ノズル42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化溶融装置に係り、特に、各種産業から生ずる銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、鉄(Fe)等の有価金属を含む金属滓と自動車、電機製品等から生ずる有価金属を含むシュレッダーダスト、廃プラスチック等の産業廃棄物を原料としてガス化炉で熱分解ガスを生成し、この熱分解ガスを連絡ダクトを通じて溶融炉へ移送しスラグ化させる廃棄物のガス化溶融装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属滓として銅滓と有価金属及びプラスチックを含有する産業廃棄物を原料として、有害物質の発生を抑制し、かつ金属酸化を防止し、また、高融点で蒸気圧が低いため回収の困難な銅、鉄の有価金属及び低融点で蒸気圧の高い亜鉛、鉛等の有価金属を同時に回収し、さらに、汚泥、廃液等の廃棄物を同時に焼却処理する有価金属を回収するガス化炉と溶融炉とを連絡ダクトにより結合した有価金属の回収装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−302748号公報(段落番号0010、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の如く、従来のガス化炉と溶融炉とを連絡ダクトにより結合した有価金属の回収装置では、熱分解ガス中のダストが連絡ダクトの水平部分に堆積し連絡ダクトを閉塞するという不具合が生じ有価金属の回収効率を低下させていた。また、このダストを定期的に除去するために廃棄物のガス化溶融装置を一時的に停止させ煩雑なメンテナンス作業をする必要もあった。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、有価金属の回収効率を高め、且つ、廃棄物のガス化溶融装置を連続運転している状態でも連絡ダクトに堆積したダストを除去する廃棄物のガス化溶融装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明による廃棄物のガス化溶融装置は、例えば、図2に示すように、銅滓を実質的に含む廃棄物Aを投入し、底部から質量速度の大きい流動化空気と質量速度の小さい流動化空気を吹き込み流動媒体の循環流を形成して廃棄物Aの一部を流動媒体の循環流中で熱分解ガス化し高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を排出口32から排出する内部循環流動層ガス化炉11と、高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を旋回導入口33より導入して1次燃焼室35の内部に旋回流34を形成し、灰分をスラグ化し溶融スラグを生成する旋回溶融炉21と、排出口32と旋回導入口33とを接続し、高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を旋回溶融炉21へ導く連絡ダクト38と、連絡ダクト38の側壁に穿設された開口部39に挿入配置され、連絡ダクト38の内壁に延在する略水平領域40に向けてクリーニングガスを噴射するガス噴射ノズル42と、を備える。
【0007】
ここで、請求項1に記載のクリーニングガスは、例えば、圧縮空気を用いることができる。
【0008】
このように構成すると、連絡ダクト38の内壁に延在する略水平領域40に向けてクリーニングガスを噴射するガス噴射ノズル42を備えるため、略水平領域40に堆積するダストを吹き払い連絡ダクト38の閉塞を防止することができる。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2にかかる発明による請求項1に記載の廃棄物のガス化溶融装置は、例えば、図1及び図2に示すように、クリーニングガスを圧縮貯蔵するガスタンク29とガス噴射ノズル42との間に挿入配置され、間欠的にクリーニングガスをガス噴射ノズル42へ供給するガス供給バルブ30をさらに備える。
【0010】
このように構成することで、間欠的にクリーニングガスをガス噴射ノズルへ供給するガス供給バルブ30を備えるため、略水平領域40に堆積するダストを吹き払い連絡ダクト38の閉塞を防止することができる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3にかかる発明による請求項1又は請求項2に記載の廃棄物のガス化溶融装置は、例えば、図2に示すように、連絡ダクト38に排出口32と旋回導入口33との高低差を調整する傾斜領域43を設け、傾斜領域43にガス噴射ノズル42を配置し連絡ダクト38の内壁に延在する略水平領域40に向けてクリーニングガスを噴射するように構成する。
【0012】
このように構成すると、傾斜領域43にガス噴射ノズル42を配置し連絡ダクト38の内壁に延在する略水平領域40に向けてクリーニングガスを噴射するため、略水平領域40に堆積するダストを吹き払い連絡ダクト38の閉塞を防止することができる。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項4にかかる発明による請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の廃棄物のガス化溶融装置は、例えば、図2に示すように、ガス噴射ノズル42は、旋回導入口33に向けて少なくとも3箇所に配置する。
【0014】
このように構成すると、略水平領域40に堆積するダストを吹き払い連絡ダクト38の閉塞を防止することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項5にかかる発明による請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の廃棄物のガス化溶融装置は、例えば、図2に示すように、ガス噴射ノズル42から、クリーニングガスを約2から5kg/cmの圧力で、0.1から1秒間に亘り噴射するクリーニング処理を、15から60分間隔で繰り返すように制御する。
【0016】
このように構成すると、略水平領域40に堆積するダストを吹き払い連絡ダクト38の閉塞を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように本発明の請求項1から5に記載の廃棄物のガス化溶融装置によれば、有価金属の回収効率を高め、且つ、連続運転をしている状態で連絡ダクト内のダストの堆積物を除去する廃棄物のガス化溶融装置を提供する、という優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1から図4は発明を実施する形態の一例であって、図中、図と同一または類似の符号を付した部分は同一物または相当物を表わし、重複した説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明による第1の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の模式的な系統図である。ガス化溶融装置は、銅滓A1を貯蔵する第1の貯蔵所1と、金属を含む産業廃棄物A2等を貯蔵する別の第2の貯蔵所2と、この第1と第2の貯蔵所からコンベア3により搬送される銅滓A1と産業廃棄物A2等を受容する供給フィーダー4と、供給フィーダー4の下流に接続され原料Aとしての銅滓A1と産業廃棄物A2等を側壁から導入する内部循環流動層ガス化炉11と、この内部循環流動層ガス化炉11の下流に接続され内部循環流動層ガス化炉11からガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を含む熱分解ガスEを通過させる連絡ダクトと、この連絡ダクトを通じて旋回導入口から熱分解ガスEを導入する旋回溶融炉21と、を備える。
【0020】
ガス化溶融装置に用いる内部循環流動層ガス化炉11は、銅滓A1を実質的に含む廃棄物Aを側壁から投入し、底部から空気Cを送入して平面から見て質量速度の大きい流動化空気を外周部から吹き込み、質量速度の小さい流動化空気を平面から見て中心部から吹き込むことにより、内部循環流動層ガス化炉11の底部に位置する流動媒体の循環流を形成して廃棄物Aの一部を流動媒体の循環流中で熱分解ガス化しガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を上部の排出口から排出する。
【0021】
ガス化溶解装置に用いる旋回溶融炉21は、内部循環流動層ガス化炉11から排出されるガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を側壁に設けた旋回導入口から導入すると共に、燃焼ガスを平面から見たときの軸方向に対し接線方向に導入して1次燃焼室の内部に旋回流を形成し、不燃成分をスラグ化し溶融スラグを生成する。
【0022】
また、ガス化溶解装置は、旋回溶融炉21の炉底部の下部に位置し、旋回溶融炉21から排出される溶融スラグGを排出するスラグシュートと、スラグシュートから導入された溶融スラグGから銅Iを回収する還元炉31を備えている。さらに、内部循環流動層ガス化炉11と旋回溶融炉21との間に挿入配置した連絡ダクトは、熱分解ガスEを通過させる経路が形成され、外部からクリーニングガスを供給するガス噴射ノズル(不図示)が設けられ、このガス噴射ノズルにバルブ30を介して接続するガスタンク29と、このガスタンク29にバルブ28を介して接続する空気ブロアー27が設けられている。
【0023】
上述したガスタンク29は、空気ブロアー27から吹き込まれる空気を約2から5kg/cmの圧力で圧縮貯蔵する。好ましくは、約3.5kg/cmの圧力で圧縮貯蔵することが望ましい。このガスタンク29の下流に接続されたバルブは、例えば、複数の電磁バルブ30を用いることができ、コンピュータにより制御された1回の開放制御により約50リットルの空気を0.1から1秒間に亘りガス噴射ノズルへ供給することができる。このガス噴射ノズルによるクリーニング処理を、約15分から30分間隔で繰り返すようにコンピュータにより制御する。好ましくは、クリーニングガスを20分間隔で0.5秒間に亘り上述した50リットルの空気を複数の電磁バルブ30を経由して通過させるとよい。
【0024】
空気ブロアー27は、コンピュータにより制御され、ガスタンク29から電磁バルブ30を通じて圧縮空気が噴射ノズルへ供給されている期間、又は圧縮空気が噴射ノズルへ供給されていない期間に、電磁バルブ28を通じて圧縮空気をガスタンク29へ供給し、ガスタンク29内の圧力が所定圧力に達した段階で空気の吹き込みを停止する。この場合、ガスタンク29から空気が逆流しないようにコンピュータにより電磁バルブ28は閉制御される。
【0025】
上記第1の貯蔵所1には、同時に他の品位が低い鉱石、例えば含銅黄鉄鉱、黄銅鉱等の硫化鉱、酸化鉱を貯蔵することができる。銅滓としては真鍮伸銅工場、青銅工場から発生するスラグ、ダスト、削り粉さらには化学工場から発生する水酸化銅、沈殿銅がある。
【0026】
また、第1の貯蔵所1には、中和処理等により発生した汚泥を同時に貯蔵することができる。
【0027】
ここで、図1の系統図を参照して、溶融炉付着物の溶解除去装置の動作を説明する。溶融炉付着物の溶解除去装置は、第1の貯蔵所1から銅滓A1等を破砕機(不図示)に掛けて細かく粉砕し、粉砕した産業廃棄物A2等と伴に供給コンベア3により上方へ搬送し、コンベア3の終端から銅滓A1と産業廃棄物A2等を供給フィーダー4に投入する。
【0028】
次に、供給フィーダー4から一定量の銅滓A1と産業廃棄物A2等を原料Aとして内部循環流動層ガス化炉11に投入する。ここで、汚泥Bを、銅滓A1等とは別に供給フィーダー(不図示)により内部循環流動層ガス化炉11に投入することができる。汚泥Bには、一般下水で発生する下水汚泥、し尿汚泥、排水処理から発生する中和汚泥などがある。
【0029】
ここで銅滓A1は、銅品位が20から80%含有する滓が好ましい。銅品位20%以下では変動費コストが多大となり、銅品位が80%以上では何らかの手段で固型化して銅製錬の転炉工場へ投入した方が有利となるからである。前記理由から銅品位が30から50%の範囲がさらに好ましい。また、産業廃棄物A2には、自動車、家庭電化製品等をシュレッダーで処理した有価金属とプラスチックを含むシュレッダーダスト、家庭用と工業用の廃プラスチックが含まれる。
【0030】
内部循環流動層ガス化炉11は、内部循環流動層ガス化炉11の側壁から投入された産業廃棄物A2と銅滓等A1が、内部循環流動層ガス化炉11内部の流動床に空気Cを吹き込み、分岐する質量速度の大きい流動化空気(外周部)と質量速度の小さい流動化空気(中心部)により内部循環流動層ガス化炉11内で流動媒体の循環流を形成して廃棄物としての産業廃棄物A2と銅滓等A1の一部を流動媒体の循環流の中で熱分解ガス化し、このガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を排出する。
【0031】
内部循環流動層ガス化炉11内は、約450から600℃の温度に設定し、空気比を約0.1から0.3の還元性雰囲気を作り出すことにより産業廃棄物A2中の廃プラスチックの燃焼を防止しながら、廃プラスチックを熱分解しガス化する。この場合、内部循環流動層ガス化炉11内では有価金属である銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)の酸化を防止し、銅滓の主体である酸化第一銅(CuO)が還元されるという効果も期待できる。
【0032】
内部循環流動層ガス化炉11内の温度が約450℃以下では、廃プラスッチクがガス化しにくく、約600℃以上では燃焼する。さらに好ましくは内部循環流動層ガス化炉11内の温度が約500から550℃が望ましい。廃プラスチックのガス化、有価金属の酸化防止に適するからである。
【0033】
内部循環流動層ガス化炉11内で細粒化されない銅滓と蒸気圧が低いCu、Fe、Al等の有価金属を含む不燃物Dは流動床の脇から内部循環流動層ガス化炉11外に吐出され回収される。
【0034】
さらに、内部循環流動層ガス化炉11内で生成された熱分解ガスE、粉砕されたCuOを含む約100から250マイクロメータの直径の銅滓と廃プラスチックから分離した蒸気圧の高い有価金属を含む不燃物が内部循環流動層ガス化炉11の上部に設けた排出口から連絡通路を経由して下流の旋回溶融炉21に移送される。
【0035】
旋回溶融炉21は、熱分解ガスE等が旋回導入口を経由して内部で旋回するように導入すると同時に、外部から空気を供給し空気比約0.9から1.3に調整して第1燃焼室の雰囲気を酸化性にし熱分解ガスEを燃焼させる。この燃焼は、約1200から1500℃の温度で行う。燃焼温度が約1200℃以下では溶融スラグの流動性が悪化し、約1500℃以上では旋回溶融炉21の内壁耐火物等を損傷する場合があるからである。好ましくは、約1300から1400℃の温度範囲が好ましい。
【0036】
旋回溶融炉21内の燃焼温度は、廃プラスチック等の産業廃棄物A2、汚泥Bの供給量や、空気の投入量で調整することができる。燃焼用空気は、鉛直方向に立設された略円筒状の旋回溶融炉21を上面から見て中心軸方向に対し接線方向に導入し、旋回溶融炉21内部に形成される旋回流を加速させることができる。
【0037】
熱分解ガスEは、旋回溶融炉21内部で燃焼して排ガスFとなり、旋回溶融炉21の下流に立設した廃液分解塔26の上部に設けた排ガス排出口から排出する。さらに、不燃物中のZn、Pbは酸化されて飛灰Hとなり排ガスFと共に排ガス排出口から排出される。銅滓等は高温で溶融しスラグ化しながら旋回流の中で接触し大きくなり、重力により下部に落下する。
【0038】
また、銅滓等は高温で溶融しスラグ化しながら旋回流の遠心力により旋回溶融炉21の側壁に当たり、一部は側壁に衝突して溶融付着し成長する。その他は底部へ落下する。落下した溶融スラグGは、旋回溶融炉21の炉底部に設けたスラグ回収口に集められ、スラグシュートを経由し外部で回収する。回収された溶融スラグGにはCuOが多く含まれる。このように、CuOの品位の低い銅滓からCuOの品位の高い溶融スラグGをスラグ回収口から回収することができる。
【0039】
次に、旋回溶融炉21から排出された排ガスFは、廃液分解塔26を上昇し噴霧する廃液Lと接触する。さらに排ガスFは、廃液分解塔26の下流に設けた急冷塔41へ移動し噴霧される冷却水に接触して排ガスFが冷却される。この急冷塔41により排ガスFを大気中に放出できるまでの温度に冷却することができる。
【0040】
この廃液分解塔26で廃液Lを焼却処理する工程を組み合わせることができ、製錬で生ずる廃液には金属イオンや酸が含まれ、一般下水で生ずる廃液には、無機物、有機物等が残存する。これらは焼却処理することが望ましい。廃液Lを高温度に曝すことにより有機物等と酸等は分解し、無機物と金属イオン等は酸化物にして、急冷塔41の下流に設けたバグフィルター51で回収することができる。
【0041】
また、旋回溶融炉21の下方に設けた還元炉としての電気式保持炉31で生じた冷却した排ガスFは、二次燃焼炉(不図示)で燃焼して有害物質を分解し、急冷塔41で冷却水により同様に冷却する。この排ガスFを急冷するのは、排ガスFを約250から500℃の温度範囲に曝すと、ダイオキシン等の有害物質が再合成されるため、この温度範囲にある時間を少なくして有害物質の再度の生成を防止するためである。
【0042】
さらに、旋回溶融炉21から回収した溶融スラグGを電気式保持炉31内に投入し、上部から黒鉛製電極を挿入する。この電極間に電流を流し、溶融スラグGの抵抗熱で溶融する。
【0043】
電気式保持炉31には、還元用のコークスMを投入することができる。コークスMの成分である炭素Cが直接CuOを還元してCuとCOを生成する。ここで、還元剤としては、コークスM、微粉炭、LPG等を挙げることができるが、コークスMが好ましい。投入用の装置が単純で、操作が容易だからである。
【0044】
電気式保持炉31内は、約1250から1400℃の温度範囲が好ましい。これは、CuOの融点が約1230℃であり、銅の融点が約1080℃で少なくともCuOの融点以上にする必要があるためである。0.5から1.0時間精錬することにより銅品位が約70から80%の黒銅Iを得ることができる。
【0045】
また、廃スラグJは、金属をほとんど含まない、ケイ砂による均質なガラス質成分で構成されているため、路床等へのセメント材料として利用することができる。
【0046】
急冷塔41とバグフィルター51との間に設けた活性炭吹込装置52により、急冷した排ガスFをバグフィルター51に移送途中に活性炭Kを吹き込む。平均粒径が約10から20マイクロメータの活性炭Kを空気と共に、排ガス経路中に吹き込むことにより有害物質の除去処理を遂行する。
【0047】
また、急冷塔41とバグフィルター51の底部に接続した飛灰処理装置91は、急冷塔41とバグフィルター51からの飛灰を受容する。
【0048】
旋回溶融炉21の高温燃焼で、ダイオキシン等の発生は抑制されるが、常に完全に抑制することは困難である。そこで、排ガスFの排出途中に活性炭Kを吹き込むことにより有害物質を除去することができる。本実施の形態では、急冷塔41から排出された排ガスFには1ng/m以下のダイオキシンが含まれるが、活性炭Kを吹き付けることによりダイオキシン濃度を約0.1ng/m以下に低減させることができる。
【0049】
バグフィルター51の下流に設けた洗浄塔61は、ブロア移送した排ガスFを苛性ソーダ(NaOH)の水溶液でSOx、HCl等を中和した後に、さらに下流に設けたミストコットレル71へ排ガスFをブロア移送し、排ガスF中のミスト、ダストを除去してから排突81を通して外部に放出する。
【0050】
ミストコットレル71で回収したダストを含む廃液は再度旋回溶融炉21等へ投入して使用するか、又は飛灰処理装置91で受容した飛灰と共に排水処理装置82に投入し中和処理を施す排水処理後に放流することもできる。ここで、排ガスFは洗浄塔61で苛性ソーダ溶液を噴霧して、SOx等を中和してからミストコットレル71で回収し、最終的に排突81から大気中に放出する。
【0051】
以上の有価金属回収工程により、有価金属を効率良く回収することができる。
【0052】
以上の処理工程により、Cu、Zn、Pb、Alなどの有価金属を回収することができる。
【0053】
図2は、本発明による第1の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の一部破断斜視図である。ガス化溶融装置は、鉛直方向に立設する円筒の内部循環流動層ガス化炉11と、鉛直方向に立設する円筒の旋回溶融炉21と、内部循環流動層ガス化炉11の排出口32と旋回溶融炉21の旋回導入口33とを接続し、高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を含む熱分解ガスEを通過させ旋回溶融炉21へ導く連絡ダクト38とを備える。
【0054】
連絡ダクト38は、排出口32と旋回導入口33との高低差を調整する傾斜領域としての傾斜ダクト43と、傾斜ダクト43の下流に設けられた略水平領域としての水平ダクト40に連結されている。図中の排出口32は、旋回導入口33に対して高い位置に設定されている。したがって、傾斜ダクト43は、熱分解ガスEを上方から流入させ下方へ通過させている。
【0055】
上記傾斜ダクト43と水平ダクト40との連結部分近傍に複数のガス噴射ノズル42を熱分解ガスEが通過する方向に対して垂直方向に並設するように挿入配置する。例えば、連絡ダクトとしての傾斜ダクト43の下部側壁に穿設された3つの開口部39に各々ガス噴射ノズル42を挿入配置し、連絡ダクト内壁に延在する略水平領域としての水平ダクト40に向けてクリーニングガス(圧縮空気)を噴射する。
【0056】
クリーニングガスは、上述したように、例えば、3.5kg/cmの圧力で、0.5秒間に亘り50リットルの空気を噴射し、水平ダクト40の底部や側壁や頂部に堆積又は付着したダストを吹き払い、熱分解ガスEとともに旋回溶融炉21へ導かれる。
【0057】
複数のガス噴射ノズル42は、例えば、図中右端部のガス噴射ノズルから中間のガス噴射ノズル、左端部のガス噴射ノズルの順番にクリーニングガスを噴射するように複数(3個)の電磁バルブ(不図示)の開閉制御によりダストのクリーニング処理を遂行する。この場合、各ガス噴射ノズル42は1回のクリーニング処理の期間に3.5kg/cmの圧力で、0.5秒間に亘り空気を噴射し、3個のガス噴射ノズル42による空気噴射の総量は50リットルである。
【0058】
本実施の形態では、1回のクリーニング処理の順番を右端部、中間、左端部としたが、他のクリーニング処理の順番として、左端部、中間、右端部のガス噴射ノズル42の順に空気を1回噴射してもよく。中間のガス噴射ノズル42の空気噴射後に、左端部及び右端部のガス噴射ノズル42から同時に空気を1回噴射してもよい。
【0059】
要は、水平ダクト40内に堆積するダストを一定間隔毎にブローするクリーニングガスにより吹き払えればどのような順番で圧縮空気を噴射するように構成することができる。なお、吹き払うダストは、旋回溶融炉21で生成するスラグに類似する約150μm以下の粉状物である。
【0060】
廃棄物のガス化溶融装置は、上記クリーニング処理を20分の間隔で繰り返し、連絡ダクト内のダストの堆積物を吹き払うことにより、従来の装置で週に1回は連絡ダクトが閉塞していた問題を容易に解消することができる。
【0061】
旋回溶融炉21は、旋回導入口33からクリーニングガスと熱分解ガスEを1次燃焼室35へ導入し内部で旋回流34を形成させながら燃焼させ、2次燃焼室36を経由し3次燃焼室37にて排ガスFを次段の廃液分解塔26へ上昇させると共に、熱分解ガスEに含まれる銅滓等は1次燃焼室35内の高温で溶融しスラグ化しながら旋回流34の中で接触し大きくなり溶融スラグGとなり、重力により下部に落下し、2次燃焼室36を経由し3次燃焼室37の炉底部に設けたスラグ回収口23に集められる。集められた溶融スラグGは、スラグシュートを経由し外部で回収する。
【0062】
図3は、本発明による第2の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の一部破断斜視図である。ガス化溶融装置は、鉛直方向に立設する円筒の内部循環流動層ガス化炉11と、鉛直方向に立設する円筒の旋回溶融炉21と、内部循環流動層ガス化炉11の排出口32と旋回溶融炉21の旋回導入口33とを接続し、高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を含む熱分解ガスEを通過させ旋回溶融炉21へ導く連絡ダクト38とを備える。なお、内部循環流動層ガス化炉11及び旋回溶融炉21の構造は、上述した実施の形態と同等の部材を用いるため重複する説明を省略する。
【0063】
連絡ダクト38は、排出口32と旋回導入口33との高低差を調整する傾斜領域としての傾斜ダクト43が挿入配置されている。図中の排出口32は、旋回導入口33に対して低い位置に設定されている。したがって、傾斜ダクト43は、熱分解ガスEを下方から流入させ上方へ通過させている。
【0064】
上記傾斜ダクト43の連結出口近傍に複数のガス噴射ノズル42を熱分解ガスEが通過する方向に対して垂直方向に並設するように挿入配置する。例えば、連絡ダクト38の下部側壁に穿設された複数の開口部39に各々ガス噴射ノズル42を挿入配置し、連絡ダクト38の内壁に延在する略水平領域に向けてクリーニングガス(圧縮空気)を噴射する。
【0065】
クリーニングガスは、上述した実施の形態と同様に、例えば、3.5kg/cmの圧力で、0.5秒間に亘り50リットルの空気を噴射し、水平ダクト40の底部や側壁や頂部に堆積又は付着したダストを吹き払い、熱分解ガスEとともに旋回溶融炉21へ導かれる。
【0066】
複数のガス噴射ノズル42は、例えば、図中右端部のガス噴射ノズルから中間のガス噴射ノズル、不図示の左端部のガス噴射ノズルの順番にクリーニングガスを噴射するように複数(3個)の電磁バルブ(不図示)の開閉制御によりダストのクリーニング処理を遂行する。この場合、各ガス噴射ノズル42は1回のクリーニング処理の期間に3.5kg/cmの圧力で、0.5秒間に亘り空気を噴射し、3個のガス噴射ノズル42による空気噴射の総量は50リットルである。
【0067】
本実施の形態でも、1回のクリーニング処理の順番を右端部、中間、左端部としてもよく。左端部、中間、右端部のガス噴射ノズル42の順に空気を1回噴射してもよい。さらに、中間のガス噴射ノズル42の空気噴射後に、左端部及び右端部のガス噴射ノズル42から同時に空気を1回噴射してもよい。
【0068】
要は、水平ダクト40内に堆積するダストを一定間隔毎にビンブローするクリーニングガスにより吹き払えればどのような順番で圧縮空気を噴射するように構成することができる。なお、吹き払うダストは、旋回溶融炉21で生成するスラグに類似する約150μm以下の粉状物である。
【0069】
廃棄物のガス化溶融装置は、上記クリーニング処理を20分の間隔で繰り返し、連絡ダクト内のダストの堆積物を吹き払うことにより、従来の装置で週に1回は連絡ダクトが閉塞していた問題を容易に解消することができる。
【0070】
図4は、本発明による第3の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の一部破断斜視図である。ガス化溶融装置は、鉛直方向に立設する円筒の内部循環流動層ガス化炉11と、鉛直方向に立設する円筒の旋回溶融炉21と、内部循環流動層ガス化炉11の排出口32と旋回溶融炉21の旋回導入口33とを接続し、高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を含む熱分解ガスEを通過させ旋回溶融炉21へ導く連絡ダクト38とを備える。なお、内部循環流動層ガス化炉11及び旋回溶融炉21の構造は、上述した実施の形態と同等の部材を用いるため重複する説明を省略する。
【0071】
連絡ダクト38は、排出口32と旋回導入口33とを略水平方向に連通させ、内部循環流動層ガス化炉11から排気される熱分解ガスEを旋回溶融炉21へ導く手段である。
【0072】
上記連絡ダクト38の長手方向側壁の略中央部に複数のガス噴射ノズル42を熱分解ガスEが通過する方向に対して垂直方向に角度を持たせて並設するように挿入配置する。例えば、連絡ダクト38の底面側壁に斜めに穿設された3つの開口部39に各々ガス噴射ノズル42を挿入配置し、連絡ダクト38の内壁に延在する略水平領域近傍にクリーニングガス(圧縮空気)を噴射する。本実施形態では、角度を持たせて旋回溶融炉21の旋回導入口33に向けてクリーニングガスを噴射するように構成する。
【0073】
クリーニングガスは、上述した実施の形態と同様に、例えば、3.5kg/cmの圧力で、0.5秒間に亘り50リットルの空気を噴射し、連絡ダクト40の略中央から旋回導入口33までの範囲に亘る内壁に堆積又は付着したダストを吹き払い、熱分解ガスEとともに旋回溶融炉21へ導かれる。
【0074】
複数のガス噴射ノズル42は、例えば、図中右端部のガス噴射ノズルから中間のガス噴射ノズル、左端部のガス噴射ノズルの順番にクリーニングガスを噴射するように複数(3個)の電磁バルブ(不図示)の開閉制御によりダストのクリーニング処理を遂行する。この場合、各ガス噴射ノズル42は1回のクリーニング処理の期間に3.5kg/cmの圧力で、0.5秒間に亘り空気を噴射し、3個のガス噴射ノズル42による空気噴射の総量は50リットルである。
【0075】
本実施の形態でも、1回のクリーニング処理の順番を右端部、中間、左端部としてもよく。左端部、中間、右端部のガス噴射ノズル42の順に空気を1回噴射してもよい。さらに、中間のガス噴射ノズル42の空気噴射後に、左端部及び右端部のガス噴射ノズル42から同時に空気を1回噴射してもよい。
【0076】
要は、水平ダクト40内に堆積するダストを一定間隔毎にブローするクリーニングガスにより吹き払えればどのような順番で圧縮空気を噴射するように構成することができる。なお、吹き払うダストは、旋回溶融炉21で生成するスラグに類似する約150μm以下の粉状物である。
【0077】
廃棄物のガス化溶融装置は、上記クリーニング処理を20分の間隔で繰り返し、連絡ダクト内のダストの堆積物を吹き払うことにより、従来の装置で週に1回は連絡ダクトが閉塞していた問題を容易に解消することができる。
【0078】
尚、本発明の廃棄物のガス化溶融装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の模式的な系統図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の一部破断斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の一部破断斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態である廃棄物のガス化溶融装置の一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
11…内部循環流動層ガス化炉、21…旋回溶融炉、23…スラグ回収口、27…空気ブロアー、28…電磁バルブ、29…ガスタンク、30…電磁バルブ、32…排出口、33…旋回導入口、34…旋回流、35…1次燃焼室、36…2次燃焼室、37…3次燃焼室、38…連絡ダクト、39…開口部、40…水平ダクト、42…ガス噴射ノズル、43…傾斜ダクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅滓を実質的に含む廃棄物を投入し、底部から質量速度の大きい流動化空気と質量速度の小さい流動化空気を吹き込み流動媒体の循環流を形成して前記廃棄物の一部を該流動媒体の循環流中で熱分解ガス化し高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を排出口から排出する内部循環流動層ガス化炉と;
前記高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を旋回導入口より導入して1次燃焼室の内部に旋回流を形成し、灰分をスラグ化し溶融スラグを生成する旋回溶融炉と;
前記旋廻溶融炉から排出される溶融スラグを還元雰囲気下で溶融して黒銅を得る電気式保持炉と;
前記排出口と前記旋回導入口とを接続し、前記高温ガスと微粒子化されたチャー及び不燃成分を前記旋回溶融炉へ導く連絡ダクトと;
前記連絡ダクトの側壁に穿設された開口部に挿入配置され、前記連絡ダクトの内壁に延在する略水平領域に向けてクリーニングガスを噴射するガス噴射ノズルと;
を備える廃棄物のガス化溶融装置。
【請求項2】
前記クリーニングガスを圧縮貯蔵するガスタンクと前記ガス噴射ノズルとの間に挿入配置され、間欠的に前記クリーニングガスを前記ガス噴射ノズルへ供給するガス供給バルブをさらに備える請求項1に記載の廃棄物のガス化溶融装置。
【請求項3】
前記連絡ダクトに前記排出口と前記旋回導入口との高低差を調整する傾斜領域を設け、該傾斜領域に前記ガス噴射ノズルを配置し前記連絡ダクトの内壁に延在する略水平領域に向けてクリーニングガスを噴射する請求項1又は請求項2に記載の廃棄物のガス化溶融装置。
【請求項4】
前記ガス噴射ノズルは、前記旋回導入口に向けて少なくとも3箇所に配置する請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の廃棄物のガス化溶融装置。
【請求項5】
前記ガス噴射ノズルから、前記クリーニングガスを約2から5kg/cmの圧力で、0.1から1秒間に亘り噴射するクリーニング処理を、15から60分間隔で繰り返すように制御する請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の廃棄物のガス化溶融装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−207179(P2008−207179A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−59261(P2008−59261)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【分割の表示】特願2003−195510(P2003−195510)の分割
【原出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】