説明

廃棄物の流れを処理するための装置

使用済みの苛性物質などの廃棄物の流れを処理するための一体型のユニットの動作が、混合領域2、沈降領域3、および物質移動領域4という少なくとも3つの別々の領域を有している単一の縦型容器1においてもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの廃棄物の流れ(特に、石油精製または石油化学プロセスにおいて回収される使用済みの苛性物質の流れ)を処理するための新規な設備の設計に関する。従来の処理プロセスとは対照的に、本発明は、いくつかの別々の容器を使用する深い中和(deep neutralization)または深い酸性化(deep acidification)のプロセスであり、本発明は、混合領域、沈降領域、および物質移動領域という少なくとも3つの別個の領域に分割された1つの縦型カラムを使用する。
【背景技術】
【0002】
石油精製および石油化学プロセスにおいて、炭化水素変換製品が、多くの場合に苛性溶液によってスクラブされる。例えば、石油化学プロセスにおいて、そのようなスクラブによって、硫化水素および二酸化炭素が、主として硫化ナトリウム、炭酸ナトリウム、および重炭酸ナトリウムとして取り除かれ、より高分子量の炭化水素成分の一部も取り除かれる。苛性溶液は、ナフテン酸および他の有機酸ならびに他の硫黄化合物を、分解された石油製品および石油蒸留物から取り除くために使用され得る。しかしながら、苛性溶液は有機組織にとってきわめて有害であるため、水路、河川、地下水の層などを保護するために、使用済みの苛性溶液の使用および廃棄には最大の注意を払わなければならない。そのような使用済みの苛性溶液は、pHが高く、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、および全有機体炭素(TOC)のレベルが高すぎるなどの要因ゆえに、多くの場合に生物学的廃水処理プラントでの直接的な処理には適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
使用済みの苛性物質の廃棄のために、いくつかの方法が提案されている。とりわけ、湿潤空気酸化、化学酸化、および灰化が挙げられる。これらの公知のプロセスの各々において、処理プロセスを完了させるために、多数の設備が必要である。そのようなプロセスは、必要とされる個別のプロセス容器の数ゆえに、大きな資本を必要とする。同様に、そのようなプロセスは、多数の個々の設備の場所を確保するために、広い土地が要求される。本発明は、処理プロセスを、少なくとも3つの処理領域に分割されたただ1つの縦型カラムにおいて実行することによって、これらの問題を解決した。そのような装置および関連のプロセスは、廃棄物の流れ(特に、使用済みの苛性物質)のきわめて経済的な処理方法を呈し、結果として、投資および運転のコストを最小限にする。これらの利点および他の利点が、以下の本発明のさらに詳細な説明から、明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、廃棄物の流れを処理するための一体型の処理容器であって、内部が少なくとも混合領域、沈降領域、および物質移動領域に分割されている縦型カラムを組み合わせて備えている処理容器に関する。廃棄物の流れの入り口が、廃棄物の流れ(使用済みの苛性物質など)を混合領域へと導入するためにカラムへと接続されており、混合領域において、廃棄物の流れが中和剤(例えば、硫酸等の強酸)と混合される。中和剤を、廃棄物の流れへと直接的に直列に、前記入り口の上流において添加しても、あるいは廃棄物の流れとは別に混合領域へと添加してもよい。N2、H2S、RSH、軽質炭化水素を排気するために、オフガス出口が容器に存在し、混合領域に流体連通している。沈降領域に液体連通する有機物の流れの出口が、ナフテン酸、DSO、クレゾール酸などの分離された酸性油、および混入した炭化水素を取り除くために必要である。液体輸送配管が、沈降領域を物質移動領域に接続しており、蒸気配管が、物質移動領域を沈降領域へと接続している。不活性ガス導入部が、存在する酸性ガスを取り除くために、物質移動領域に流体連通している。最後に、処理済みの廃棄物が、物質移動領域の底部に液体連通している出口から取り出される。
【0005】
本発明は、配管部品、独立した容器の数、器具類、およびユニットの納期を最小限にすることによって、資本コストを下げることを特徴とする。本発明のこれらの態様および他の態様が、以下に含まれる好ましい実施形態についての詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】添付の図は、本発明の廃棄物の流れの装置について考えられる一実施形態を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上述のように、本発明は、廃棄物の流れの処理に使用され、好ましくは使用済みの苛性物質の中和に使用される単一の装置に関する。そのような装置の一実施形態が、添付の図に示されている。
【0008】
図は、少なくとも3つの別々の処理領域を有している縦型のカラムである容器1を示している。領域2は、処理対象の廃棄物の流れが十分に中和剤と混合される混合領域である。上述のように、本発明において使用される好ましいプロセスは、1つ以上の精製または石油化学のプロセスからの使用済みの苛性物質の処理または中和である。この実施形態の以下の説明は、この種の処理プロセスを、例として使用する。使用済みの苛性物質の流れが、入り口5を通って混合領域2に入ることで容器1に入る。使用済みの苛性物質は、典型的には、1〜10重量%のNaOHと、0〜4重量%の硫化物および二硫化物と、硫黄としての0〜4重量%のメルカプチドと、CO3としての0〜4重量%の炭酸塩と、0〜5重量%のクレゾール酸とで構成される。さらに、中和剤が、好ましくは入り口5の上流において廃棄物の流れへと直接的に加えられることによって、混合領域2へと加えられる。随意により、苛性物質および中和剤を前もって混合するために、直列の静的ミキサなどの混合装置(図示せず)を使用することができる。加えられる中和剤の量は、当分野において公知の任意の手段によって制御することができるが、好都合な方法は、図に示されているように、混合領域2の溶液のpHを測定して、沈降領域3の溶液のpHと比較するために、pH監視装置12を使用することである。pHが所望よりも高い場合、より多くの中和剤が混合領域2へと加えられる。
【0009】
混合領域2の内部に、廃棄物の流れと中和剤とを十分に混合するための少なくとも1つの手段が存在する。使用済みの苛性物質が、処理すべき廃棄物の流れである場合、好ましい中和剤は、硫酸などの強酸であるが、塩酸などの他の酸も使用可能である。廃棄物の流れと混合される中和剤の量は、物理的な手段による不純物の除去を容易にすべく溶液のPhを大きく下げるように選択される。好ましくは、硫酸が使用される場合には、硫酸が入り口5の上流で使用済みの苛性物質の流れへと直接的に加えられる。図に示されているように、インペラ式のミキサが、好ましい混合手段であるが、例えばガススパージャなど、当分野において公知の他の混合手段も、使用することが可能である。混合領域2における滞留時間は、Phが一様になり、必要な反応が100%達成されるように、指定の酸が適切に混合されるように選択される。任意の揮発性の炭化水素または他の気体化合物が、廃棄物の流れに存在する限りにおいて、それらは、後述のようにスイープガスを使用してオフガス出口21を介して取り除かれる。
【0010】
領域2からの混合物の一部が、下降管8を介して連続的に取り去られ、沈降領域3へと送られる。この領域は、例えば図に示されているバッフルなど、任意の公知の機械的な分離装置を使用し、水性の成分からの有機物の分離を可能にする。有機相は水相よりも密度が低いため、有機相は上澄みとして容器1から有機物出口9を介して取り去ることが可能である。使用済みの苛性物質が、処理すべき廃棄物の流れである場合には、有機相は、主として、ナフテン酸、DSO、クレゾール酸などの酸性油、または混入した炭化水素からなっている。沈降領域3の水相は、主として、ナトリウム塩を含有している酸性の塩水からなり、配管10を介して取り除かれて、物質移動領域4の上部へと導入され、物質移動領域4において、酸性ガスが窒素などの不活性ガスによって塩水から取り除かれる。物質移動領域4は、水溶液からの酸性の塩水の除去を助けるために、いくつかあるトレイの任意の公知のパッキン材料または設計を含むことができる。窒素などの不活性ガスが、入り口18を介して物質移動領域4の下部へと加えられ、水相に逆流して流れる。不活性ガスは、水相からH2S、CO2、および他のガスを取り除くために使用され、その後に配管19によって取り除かれ、沈降領域3の上部においてスイープガスとして使用された後に、配管20によって取り除かれる。配管20のスイープガスは、混合領域1の上部へと導入され、最終的にオフガス出口21を介して容器1から取り除かれる。
【0011】
酸性ガスが除去された後に、水相は、配管11を介して容器1から取り除かれ、最終的に配管14を介してプロセスから運び去られ、公知の方法を使用して廃棄することができる。あるいは、図に示されているように、配管11の水相の一部が、ポンプ13の助けによって配管15を介して再び物質移動領域4へと再利用される。水相の一部が再利用される場合には、図に示されているように、配管16を介してNaOHまたはKOHなどの第2の中和剤を加え、その後に混合手段(直列の静的ミキサ17など)において接触させることが望ましい。第2の中和剤の添加を制御するために、直列のpHメータを使用して、配管11を介して物質移動領域4から出る水相のpHを監視し、混合手段17の下流の再利用の流れのpHと比較することができる。
【0012】
容器1の動作温度は、約80℃〜約130℃の範囲であり、より好ましくは約90℃〜約110℃の範囲である。容器1の内圧は、約3気圧〜約10気圧(ゲージ圧)の範囲であってよい。
【0013】
具体的な実施形態についての以上の説明は、本発明者以外の者が、現在の知識を適用することによって、上述の具体的な実施形態を全体的な考え方から離れることなく容易に変更でき、さらには/あるいは種々の用途に適合させることができるように、充分に本発明の全体的な本質を明らかにするであろう。したがって、そのような適合および変更は、本明細書に開示の実施形態の均等物の意味および範囲に包含されるように意図される。本明細書における表現および用語が、説明を目的とするものであって、本発明を限定しようとするものではないことを、理解すべきである。
【0014】
本明細書に開示の種々の機能を実行するための手段、材料、および工程は、本発明から離れることなくさまざまな代案の形態をとることができるしたがって、上述の本明細書および以下の特許請求の範囲において見出され得る「・・・するための手段(means to ...)」および「・・・のための手段(means for ...)」という表現または方法の各工程の任意の言語は、機能についての記載が後続する場合に、上述の本明細書に開示された実施形態に対して正確に均等であるか否かにかかわらず、現時点または将来において存在でき、記載された機能を実行するあらゆる構造的、物理的、化学的、または電気的要素または構造、あるいはあらゆる方法の工程を定義および包含する。すなわち、同じ機能を実行するための他の手段または工程も、使用することが可能であり、上述のような表現には、以下の特許請求の範囲の用語の範囲において最も広い解釈が与えられなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の流れを処理するための一体型の処理容器であって、
a.内部が少なくとも混合領域、沈降領域、および物質移動領域に分割されている縦型カラム、
b.前記混合領域に液体連通している廃棄物の流れの入り口、
c.前記混合領域に連通しているオフガス出口、
d.前記沈降領域に液体連通している有機物の流れの出口、
e.前記沈降領域を前記物質移動領域に接続する液体輸送配管、
f.分留領域を前記沈降領域へと接続する蒸気配管、
g.前記物質移動領域に連通している不活性ガス導入部、および
h.前記物質移動領域に液体連通している処理済みの廃棄物の流れの出口
を組み合わせて備えている一体型の処理容器。
【請求項2】
前記廃棄物の流れの入り口が、中和配管に液体連通していることをさらに特徴とする請求項1に記載の一体型の処理容器。
【請求項3】
前記混合領域が、前記廃棄物の流れの入り口を通って該混合領域へと導入された液体を混合するための手段を有していることをさらに特徴とする請求項1に記載の一体型の処理容器。
【請求項4】
前記混合手段が、動力付きのインペラ、ガススパージャ、静的ミキサ、およびこれらの組み合わせで構成されるグループから選択されることをさらに特徴とする請求項3に記載の一体型の処理容器。
【請求項5】
前記沈降領域が、水相および有機相の分離を助けるための1つ以上のバッフルを有していることをさらに特徴とする請求項1に記載の一体型の処理容器。
【請求項6】
少なくとも1つのpHセンサが、前記中和配管を通じての前記廃棄物の流れの入り口への中和液の添加の制御を助けるために、前記混合領域および前記沈降領域に連通していることをさらに特徴とする請求項1に記載の一体型の処理容器。
【請求項7】
前記物質移動領域が、回収塔として構成されていることをさらに特徴とする請求項1に記載の一体型の処理容器。
【請求項8】
前記物質移動領域が、パッキン材料または1つ以上のトレイを備えていることをさらに特徴とする請求項1に記載の一体型の処理容器。
【請求項9】
前記物質移動領域が、前記処理済みの廃棄物の流れの出口から取り出される処理済みの廃棄物の後流を戻すことができるよう、再利用の流れの入り口を有していることをさらに特徴とする請求項1に記載の一体型の処理容器。

【図1】
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【公表番号】特表2012−509173(P2012−509173A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537563(P2011−537563)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/064912
【国際公開番号】WO2010/059670
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(503466820)メリケム カンパニー (5)
【Fターム(参考)】