説明

廃棄物の燃料化方法および装置

【課題】燃焼時に炉壁を高温腐食させる原因物質の溶融塩アルカリ金属の発生を抑制できる廃棄物の燃料化方法および装置を提供する。
【解決手段】反応装置21に原料20として有機塩素化合物を含む有機性廃棄物を供給するとともに、蒸気発生装置41から過熱蒸気を供給して水熱反応の熱変性処理により原料中の有機化合物を低分子化し、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去し、その生成物を蒸気発生装置41の燃料として過熱蒸気を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の燃料化方法および装置に関し、塩素を含む廃棄物を加水分解させて低分子化すると共に、塩素を排ガス側に移行させて、加水分解による生成物の燃料的な価値を向上させる技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術には、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、生ゴミとプラスチック廃棄物を含む有機廃棄物から粉末燃料を製造する装置であり、廃棄物を収容して水中で処理する処理容器と、処理容器の内部に水を供給して内部の圧力を1.55MPa以上の処理圧力に、温度を200℃以上の処理温度に制御する温度圧力制御手段と、廃棄物及び水を撹拌する撹拌手段とを備えるものである。
【0003】
また、特許文献2には、ダイオキシン等の有害な物質を発生させずに、燃料として使用するのに適した性状に変換処理する燃料製造方法が記載されており、これは廃棄物が投入された処理容器内に高圧水蒸気を注入することによって、処理容器内の圧力を1.96MPa以上に保持するとともに昇温し、処理容器内の下方における材料部温度が処理容器内の上方における空隙部温度に一致したときに高圧水蒸気の注入を停止するものである。
【0004】
また、特許文献3には、有機塩素化合物を含む廃棄物を再資源化して利用する方法が記載されている。これは、有機塩素化合物を含む廃棄物を熱水処理により脱塩素化して、有機塩素化合物をアルコール、有機酸類、無機塩として回収し、有機塩素化合物を除去した廃棄物を燃料として回収して利用するものである。
【0005】
また、特許文献4には、高濃度のアルカリ性物質に対する耐アルカリ性、耐熱性溶剤で難分解性有機ハロゲン化合物の分解処理を促進する方法が記載されている。これは、難分解性有機ハロゲン化合物を、反応溶剤中で強アルカリ性物質及び水素供給源化合物と反応させて分解する方法であって、反応温度が160℃以上260℃以下であり、反応溶剤がポリエチレングリコールジメチルエーテル類であり、水素供給源化合物が水素添加芳香族化合物類、ナフテン系高沸点鉱油及びこれらの2以上の混合物からなる群から選ばれるものである。
【特許文献1】特開2007−112880号公報
【特許文献2】特開2006−28272号公報
【特許文献3】特開2006−327987号公報
【特許文献4】特開2007−197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プラスチックを含む産業廃棄物、一般廃棄物は、所定の高温高圧処理することにより燃焼に容易な粉末状の生成物となる。しかしながら、廃棄物中の塩素分は生成物中に残存するので、その燃焼時の排ガスの性状は、廃棄物を直接焼却する場合と変わらない。つまり、生成物に含まれた塩素が焼却時に排ガス中に移行し、有害成分であるDXN等や、高温腐食の原因物質である溶融塩アルカリ金属のNACL、KCL等を生じる。その結果、ハロゲンによる腐食が発生する問題がある。
【0007】
反応装置に投入する蒸気の温度を高めて過熱蒸気とすることにより有機塩素の除去が可能である。しかし、過熱蒸気を発生させるには、設備費、ランニングコストが大幅に増加する。また、過熱蒸気を発生させる蒸気発生装置の燃料として反応装置での生成物を使用し、その燃焼排ガスから熱回収して過熱蒸気を発生させる場合には、上述したように、高温腐食が生じる問題がある。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するものであり、燃焼時に炉壁を高温腐食させる原因物質の溶融塩アルカリ金属の発生を抑制できる廃棄物の燃料化方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の廃棄物の燃料化方法は、反応装置に原料として有機塩素化合物を含む有機性廃棄物を供給するとともに、蒸気発生装置から過熱蒸気を供給して水熱反応の熱変性処理により原料中の有機化合物を低分子化し、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去し、その生成物を蒸気発生装置の燃料として前記過熱蒸気を得ることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の廃棄物の燃料化方法において、反応装置から燃料を取り出すのに際して、反応装置から排ガスを排出して後に燃料を排出することを特徴とする。
本発明の廃棄物の燃料は、反応装置に原料として有機塩素化合物を含む有機性廃棄物を供給するとともに、蒸気発生装置から過熱蒸気を供給して水熱反応の熱変性処理により原料中の有機化合物を低分子化し、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去してなることを特徴とする。
【0011】
本発明の廃棄物の燃料化装置は、水熱反応の熱変性処理により原料中の有機化合物を低分子化し、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去する反応装置と、その生成物を燃料として前記過熱蒸気を発生させ、反応装置に前記過熱蒸気を供給する蒸気発生装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、製造した燃料中の塩素濃度は低減されているので、燃料の燃焼に際して高温腐食させる原因物質の溶融塩アルカリ金属の発生を抑制でき、炉壁の腐食を抑制できる。このため、過熱蒸気を発生させる蒸気発生装置の燃料として反応装置での生成物を使用することができ、その燃焼排ガスから熱回収して過熱蒸気を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、反応装置21は、固形状の有機性廃棄物の処理を行うものであり、外套容器(ジャケット)22と外套容器22の内部に格納した反応容器23とからなる二重構造をなす。蒸気発生装置41は反応装置21へ飽和蒸気および過熱蒸気を供給するものである。
【0014】
反応装置21では、投入、加温、反応、減圧、乾燥、排出の各工程を行う。原料20は有機塩素化合物を含む固形状の有機性廃棄物であり、可燃ごみ、生ごみ、プラスチックごみ、食品工場残渣、水産加工残渣、汚泥、家畜糞尿もしくはそれらの混合物である。
【0015】
投入工程では原料20を投入口24から反応容器23内に投入する。反応容器23の内部ではモータ26で回転駆動する攪拌羽根27が原料20を攪拌する。
加温工程では、第1蒸気供給口25aから外套容器22の内部に所定圧力で飽和水蒸気を供給し、反応容器23の容器体温度が所定温度になった時点で第2蒸気供給口25bから反応容器23に所定圧力、例えば3MPaで過熱水蒸気を供給する。過熱水蒸気は210℃から350℃内にある所定温度の過熱水蒸気であり、反応容器23の内部を所定温度、例えば210℃まで昇温させる。
【0016】
反応工程では、攪拌羽根27により原料20を攪拌し、反応容器23の内部温度を、例えば210〜220℃に5〜15分間保持し、水熱反応により有機性廃棄物を熱変性処理して原料性状を均質化し、原料中の有機化合物および有機塩素化合物を低分子化する。さらに、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去する。
【0017】
減圧工程では、蒸気の供給を停止し、排蒸気および排ガス28を排出口29から脱臭設備(図示省略)へ取り出す。
乾燥工程では、反応容器23の内部圧力が大気圧になった後に、ブロア30により外気32を反応容器23の内部へ供給し、乾燥とともに低分子有機塩素化合物の揮発を促進する。このとき、第1蒸気供給口25aから外套容器22に供給する飽和水蒸気により反応容器23を所定温度以上に保って蒸気間接加熱により乾燥粉末化させる。ブロア30による外気の供給に代えて、排出口29から脱臭設備へ至る排気ラインにファンを設けることでも外気の供給は実現できる。
【0018】
有機塩素化合物を含む排ガスは排出口29から脱臭設備(図示省略)へ取り出し、活性炭吸着装置により排ガス中から有機塩素化合物を除去する。排ガス中から有機塩素化合物を除去することにより、人体に影響の高い有機塩素化合物が大気中に拡散することを防止できる。排出工程では、取出口31を開放し、乾燥粉末化した原料20を取出口31から外部へ粉体燃料として取り出す。粉体燃料中の塩素濃度は低減されているので、燃料の燃焼に際して高温腐食させる原因物質の溶融塩アルカリ金属の発生を抑制でき、炉壁の腐食を抑制できる。粉体燃料は成形することにより、固形燃料とすることも可能である。
【0019】
このため、蒸気発生装置41の燃料として反応装置21で生成する粉体燃料を使用することができるので、取り出した粉体燃料の一部を蒸気発生装置41の燃料として供給し、蒸気発生装置41は粉体燃料を少なくとも燃料の一部として燃焼させ、その燃焼排ガスから熱回収して飽和水蒸気および過熱蒸気を発生させることが可能となる。
【0020】
つまり、蒸気発生装置41において過熱水蒸気を得るためには、ハロゲンによる高温腐食が発生する300℃以上の温度域で粉体燃料を燃焼させる必要がある。しかしながら、粉体燃料中の塩素濃度は低減されているので、粉体燃料は300℃以上の温度域での燃焼に際して高温腐食させる原因物質の溶融塩アルカリ金属の発生を抑制でき、炉壁の腐食を抑制できる。したがって、粉体燃料は蒸気発生装置41のみならず、他の高温腐食が懸念されるボイラー等においても有効な燃料となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態における反応装置を示す正面図
【符号の説明】
【0022】
21 反応装置
22 外套容器(ジャケット)
23 反応容器
24 投入口
25a 第1蒸気供給口
25b 第2蒸気供給口
26 モータ
27 攪拌羽根
28 排ガス
29 排出口
30 ブロア
31 取出口
41 蒸気発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応装置に原料として有機塩素化合物を含む有機性廃棄物を供給するとともに、蒸気発生装置から過熱蒸気を供給して水熱反応の熱変性処理により原料中の有機化合物を低分子化し、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去し、その生成物を蒸気発生装置の燃料として前記過熱蒸気を得ることを特徴とする廃棄物の燃料化方法。
【請求項2】
反応装置から燃料を取り出すのに際して、反応装置から排ガスを排出して後に燃料を排出することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の燃料化方法。
【請求項3】
反応装置に原料として有機塩素化合物を含む有機性廃棄物を供給するとともに、蒸気発生装置から過熱蒸気を供給して水熱反応の熱変性処理により原料中の有機化合物を低分子化し、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去してなることを特徴とする廃棄物の燃料。
【請求項4】
水熱反応の熱変性処理により原料中の有機化合物を低分子化し、過熱蒸気による求核置換反応により有機塩素化合物から塩素を脱離、揮発させて除去する反応装置と、その生成物を燃料として前記過熱蒸気を発生させ、反応装置に前記過熱蒸気を供給する蒸気発生装置とを備えることを特徴とする廃棄物の燃料化装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−106133(P2010−106133A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278969(P2008−278969)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(595011238)クボタ環境サ−ビス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】