説明

廃棄物処理方法及び設備

【課題】高分子化合物に含まれているハロゲンを確実に脱離できるようにする。
【解決手段】ハロゲンと無機系充填材を含んでいる高分子化合物を主成分とした廃棄物Pを、硫酸並びに水蒸気が共存する低酸素濃度または無酸素の雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱し得る処理器2を備えている。
つまり、廃棄物Pに含まれている無機系充填材が硫酸と反応し、炭化物を主成分とした残渣Rに硫酸塩が滞留した状態となるので、残渣Rを原材料や燃料に用いてもハロゲンに起因する支障が発生することがなく、廃棄物Pを有効に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物処理方法及び設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリ塩化ビニルやフッ素樹脂などのような高分子化合物(含ハロゲンポリマ)が主成分である廃棄物を加熱してハロゲンを離脱させ、その残渣を炭素系原材料、あるいは燃料として再利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−151932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが特許文献1に基づき、例えばポリ塩化ビニルの処理を行なった場合、ポリ塩化ビニルの生成過程で充填材として添加してある炭酸カルシウムが、脱離した塩素と反応し、塩素化合物(ハロゲン化合物)が残渣に滞留した状態になる。
【0004】
つまり、含ハロゲンポリマを加熱することにより得た残渣を原材料に用いると、製品にハロゲンが不純物として混じり、当該残渣を燃料に用いると、ハロゲンによって燃焼器が腐食してしまう。
【0005】
本発明は上述した実情に鑑みてなしたもので、高分子化合物に含まれているハロゲンを確実に脱離できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ハロゲンと無機系充填材を含んでいる高分子化合物を硫酸が共存する低酸素濃度または無酸素雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱してハロゲンを脱離させるとともに充填材を硫酸塩に転化させたうえ、残渣を回収する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、無機系充填材を組成要素としたハロゲン化合物を含んでいる高分子化合物の残渣を硫酸が共存する低酸素濃度または無酸素雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱してハロゲン化合物を硫酸塩に転化させたうえ、残渣を回収する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、ハロゲンと無機系充填材を含んでいる高分子化合物、あるいは無機系充填材を組成要素としたハロゲン化合物を含んでいる高分子化合物の残渣を硫酸が共存する低酸素濃度または無酸素雰囲気で加熱し得る処理器を備えている。
【0009】
請求項1に記載の発明においては、高分子化合物に含まれている無機系充填材が硫酸と反応し、残渣に硫酸塩が滞留した状態となる。
【0010】
請求項2に記載の発明においては、高分子化合物の残渣が含んでいるハロゲン化合物の組成要素の無機系充填材が硫酸と反応し、残渣に硫酸塩が滞留した状態となる。
【0011】
請求項3に記載の発明においては、処理器に入れた高分子化合物に含まれている無機系充填材、あるいは処理器に入れた高分子化合物の残渣が含んでいるハロゲン化合物の組成要素の無機系充填材が硫酸と反応し、残渣に硫酸塩が滞留した状態となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃棄物処理方法及び設備によれば、下記のような優れた効果を奏し得る。
【0013】
(1)請求項1及び請求項3に記載の発明のいずれにおいても、高分子化合物に含まれている無機系充填材が硫酸と反応し、炭化物を主成分とした残渣に硫酸塩が滞留した状態となるので、当該残渣を原材料や燃料に用いてもハロゲンに起因する支障が発生することがなく、廃棄物を有効に利用できる。
【0014】
(2)請求項2及び請求項3に記載の発明のいずれにおいても、ハロゲン化合物の組成要素の無機系充填材が硫酸と反応し、炭化物を主成分とした残渣に硫酸塩が滞留した状態となるので、当該残渣を原材料や燃料に用いてもハロゲンに起因する支障が発生することがなく、廃棄物を有効に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図示例とともに説明する。
【0016】
図1は本発明の廃棄物処理設備の実施の形態の第1の例を示すものであり、洗浄済みの含ハロゲンポリマを主成分とした廃棄物Pを砕く破砕機1と、破砕機1を経た廃棄物Pを硫酸並びに水蒸気が共存する低酸素濃度または無酸素の雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱し得る処理器2を備え、該処理器2には、窒素(不活性ガス)、水蒸気、及び硫酸が供給されるようになっている。
【0017】
例えば、廃棄物Pの主成分がポリ塩化ビニルである場合に、処理器2において廃棄物Pを上記の雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱すると、ポリ塩化ビニルの組成要素である塩素が脱離し、ポリ塩化ビニルに添加してある無機系充填材が硫酸と反応することにより硫酸カルシウムなどの硫酸塩に転化され、炭化物を主成分とした残渣Rに当該硫酸塩が滞留した状態になる。
【0018】
廃棄物Pから脱離した塩素は水蒸気と反応して塩化水素を主体にするガスとなり、塩素が除去されることになるため、残渣Rを原材料や燃料に用いてもハロゲンに起因する支障は生じない。
【0019】
このとき、硫酸は蒸気、あるいはミストのいずれであってもよく、不活性ガスによって処理器2内部を5%以下の低酸素濃度、好ましくは無酸素の雰囲気に設定すれば、炭素の酸化が抑制されて高熱量の残渣Rを得ることができる。
【0020】
また、廃棄物Pなどを上記の温度範囲に加熱する手段としては、電気抵抗による外熱、高周波や低周波による電磁誘導加熱、あるいはマイクロ波照射による静電誘導加熱などが適用できる。
【0021】
この他に廃棄物処理設備には、処理器2で生成された塩化水素及び硫酸塩の生成に寄与しなかった残余の硫酸などを主成分としたガスを助燃料とともに燃焼させる燃焼器3と、該燃焼器3から送出されるガスに水を添加して塩化水素の回収を図るハロゲン化水素回収塔4と、該ハロゲン化水素回収塔4から送出されるガスが含んでいる二酸化硫黄成分を三酸化硫黄成分に酸化するSOx酸化塔5と、該SOx酸化塔5から送出されるガスが含んでいる三酸化硫黄成分から硫酸及び水を回収する硫酸回収塔6と、該硫酸回収塔6で得た硫酸成分を濃縮する濃縮器7とが付帯しており、該濃縮器7から処理器2へ硫酸が供給されるようになっている。
【0022】
ハロゲン化水素回収塔4で回収された塩化水素は、含ハロゲンポリマの組成要素として再利用することができる。
【0023】
図2は本発明の廃棄物処理設備の実施の形態の第2の例を示すものであり、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0024】
この廃棄物処理設備では、SOx酸化塔5の後段に脱硫装置8を組み込み、三酸化硫黄成分を石灰(炭酸カルシウム)と反応させて、石膏(硫酸カルシウム)を生成するようにしてある。
【0025】
また、処理器2において廃棄物Pからハロゲンを脱離させ且つ無機系添加物を硫酸塩に転化する点は先述した第1の例と同様であり、よって、残渣Rを原材料や燃料に用いてもハロゲンに起因する支障は生じない。
【0026】
図3は本発明の廃棄物処理設備の実施の形態の第3の例を示すものであり、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0027】
この廃棄物処理設備は、特許文献1などのような公知手段により脱塩素処理が完了済みの廃棄物残渣Qを対象として処理器2の後段に硫酸回収塔6を組み込んである。
【0028】
すなわち、塩素化合物などのハロゲン化合物が滞留した状態の廃棄物残渣Qを破砕機1で砕き、処理器2において廃棄物残渣Qを硫酸並びに水蒸気が共存する低酸素濃度または無酸素の雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱すると、前記ハロゲン化合物のハロゲンが脱離し、ハロゲン化合物の組成要素である無機系充填材が硫酸と反応することにより硫酸カルシウムなどの硫酸塩に転化され、当該硫酸塩が炭化物を主成分とした残渣Rに滞留した状態になるので、この残渣Rを原材料や燃料に用いてもハロゲンに起因する支障は生じない。
【0029】
また、硫酸回収塔6で得た硫酸成分は処理器2へ供給されるようになっている。
【0030】
なお、本発明の廃棄物処理方法及び設備は、上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の廃棄物処理方法及び装置は、ハロゲンを組成要素とした様々な高分子化合物にに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の廃棄物処理設備の実施の形態の第1の例を示す概念図である。
【図2】本発明の廃棄物処理設備の実施の形態の第2の例を示す概念図である。
【図3】本発明の廃棄物処理設備の実施の形態の第3の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0033】
2 処理器
P 廃棄物(ハロゲンと無機系充填材を含んでいる高分子化合物)
Q 廃棄物残渣(無機系充填材を組成要素としたハロゲン化合物を含んでいる高分子化合物の残渣)
R 残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンと無機系充填材を含んでいる高分子化合物を硫酸が共存する低酸素濃度または無酸素雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱してハロゲンを脱離させるとともに充填材を硫酸塩に転化させたうえ、残渣を回収することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項2】
無機系充填材を組成要素としたハロゲン化合物を含んでいる高分子化合物の残渣を硫酸が共存する低酸素濃度または無酸素雰囲気で250℃乃至600℃の温度範囲に加熱してハロゲン化合物を硫酸塩に転化させたうえ、残渣を回収することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項3】
ハロゲンと無機系充填材を含んでいる高分子化合物、あるいは無機系充填材を組成要素としたハロゲン化合物を含んでいる高分子化合物の残渣を硫酸が共存する低酸素濃度または無酸素雰囲気で加熱し得る処理器を備えてなることを特徴とする廃棄物処理設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−70162(P2006−70162A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255430(P2004−255430)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】