説明

廃棄物処置装置および廃棄物処理方法

【課題】電気的失陥によって廃棄物処理装置の運転が停止した場合でも、加熱炉内で継続的に発生し得る可燃性ガスを適切に処理する。
【解決手段】廃棄物処理装置100は、有機性廃棄物を加熱することによって燃料化する加熱炉101と、加熱炉101内で発生した可燃性ガスを供給可能なように供給路110を介して加熱炉101に接続され、供給された可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉102と、電気的に駆動されて燃焼炉102内に空気を供給する送気ファン106と、を有する。加熱炉101とセメント製造装置とは排出路120を介して接続される。供給路110には、電気的失陥時に供給路110を遮断する遮断弁111が設けられ、排出路120には、電気的失陥時に排出路120を開放する開放弁121が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物をセメント製造設備における燃料として利用できるように処理する廃棄物処置装置および廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全の観点から、廃棄物エネルギー化技術が盛んに研究されている。例えば、特許文献1、2には、バイオマス原料などの有機性廃棄物を加熱炉内で熱分解することによって発生する熱分解ガスから可燃性ガスを得ることが開示されている。得られた可燃性ガスは、発電設備あるいは種々の製造設備に供給され、燃料として利用することができる。
【0003】
このような廃棄物処理装置は、セメント製造設備においても利用されている。廃棄物処理装置では加熱炉内に固形物が生成されるが、この固形物は、セメント原料またはセメント製造工程における固体燃料として利用することができる。よって、セメント製造設備において廃棄物処理装置を利用することによって、廃棄物をより有効に活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−132785号公報
【特許文献2】特開2009−209300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の廃棄物処理装置では、廃棄物を安定して処理し、他の設備へ可燃性ガスを安定して供給するため、加熱炉への廃棄物の供給量、加熱炉の温度、および加熱炉で発生した可燃性ガスの他の設備への供給量などが制御されるのが一般的である。これらの制御のため、廃棄物処理装置は、電磁弁や各種電気的センサを有し、その駆動には商用電源等が用いられる。
【0006】
そのため、停電などによって商用電源等から廃棄物処理装置への電力供給が停止した場合は、電磁弁や電気的センサが動作せず、廃棄物処理装置は正常に運転できなくなってしまう。その一方で、上記のような電気的失陥時に加熱炉の加熱が停止される場合であっても、加熱炉内では余熱によって可燃性ガスが継続して発生するおそれが高く、場合によっては爆発のおそれもある。また、電気的失陥時に加熱炉の加熱が停止されない場合も同様の問題が発生する。
【0007】
そこで本発明は、商用電源等からの電力供給の停止によって廃棄物処理装置の運転が停止した場合でも、継続的に発生する可燃性ガスを適切に処理することのできる廃棄物処理装置および廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の廃棄物処理装置は、有機性廃棄物を加熱することによって燃料化する加熱炉と、
前記加熱炉内で発生した可燃性ガスが供給可能なように供給路を介して前記加熱炉に接続され、供給された可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、
電気的に駆動されて前記燃焼炉内に空気を供給する送気ファンと、
を有する廃棄物処理装置であって、
前記加熱炉内で発生した可燃性ガスをセメント製造装置に排出可能なように前記加熱炉と前記セメント製造装置とを接続する排出路と、
前記排出路に設けられ、電気的失陥時に前記排出路を開放する開放弁と、
前記供給路に設けられ、電気的失陥時に前記供給路を遮断する遮断弁と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は廃棄物処理方法を提供し、その方法は、
有機性廃棄物を加熱炉で加熱することによって燃料化し、
前記加熱炉で発生した可燃性ガスを燃焼炉に供給し、
前記燃焼炉に供給された可燃性ガスを、電気的に駆動される送気ファンを用いて前記燃焼炉内に空気を供給しつつ、前記燃焼炉内で燃焼させる廃棄物処理方法において、
電気的失陥が発生した際、前記加熱炉から前記燃焼炉への前記可燃性ガスの供給を遮断するとともに、前記加熱炉で発生した前記可燃性ガスをセメント製造装置に排出すること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気的失陥が発生した際に、加熱炉で発生した可燃性ガスを、送気ファンの停止によって還元雰囲気となるおそれのある燃焼炉へ供給するのではなく、セメント製造装置に排出するようにするように構成することで、加熱炉で発生した可燃性ガスを高温酸化雰囲気のセメント製造装置で処理することが可能となり、燃焼炉の爆発を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるセメント製造システムの概略図である。
【図2】図1に示す廃棄物処理装置の概略図である。
【図3】図2に示す廃棄物処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示すセメント製造システムの一変形例を示す概略図である。
【図5】図1に示すセメント製造システムの他の変形例を示す概略図である。
【図6】図1に示すセメント製造システムのさらに他の変形例を示す概略図である。
【図7】図1に示すセメント製造システムのさらに他の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、セメント製造装置10と廃棄物処理装置100とを有する、本発明の一実施形態によるセメント製造システムが示されている。セメント製造装置10および廃棄物処理装置100は、商用電源等により外部から電力が供給され、その電力で運転される。
【0013】
セメント製造装置10は、セメント原料からクリンカを焼成するまでの工程を受け持ち、セメント原料を予熱する予熱装置と、予熱されたセメント原料を仮焼成する仮焼炉12と、仮焼成されたセメント原料を焼成するロータリーキルン14と、ロータリーキルン14による焼成で得られたクリンカを冷却空気により冷却するクリンカクーラー15とを備えている。予熱装置としては、複数のプレヒータサイクロン11aを有するサスペンションプレヒータ11を用いることができる。仮焼炉12には、加熱用の仮焼炉バーナー20が設置されている。
【0014】
予熱装置およびクリンカクーラー15は、それぞれロータリーキルン14の原料供給側(窯尻13側)およびクリンカ排出側(窯前側)に接続されている。また、クリンカクーラー15と仮焼炉12とはダクト16によって接続され、クリンカクーラー15から排出される熱空気が仮焼炉12に導入されるように構成されている。この熱空気はさらに、各プレヒータサイクロン11aを通って上昇し、サスペンションプレヒータ11の最上段に接続されたダクトを通じて排気ファン17により排出される。
【0015】
廃棄物処理装置100は、廃棄物を加熱して固形物を生成し、生成された固形物をロータリーキルン14でのクリンカの焼成用燃料として供給する。そのために、廃棄物処理装置100は、ロータリーキルン14の窯前に設置された窯前バーナー19に接続された燃料供給路130を有し、生成された固形物を窯前バーナー19に供給できるように構成されている。
【0016】
一方、廃棄物処理装置100では、廃棄物を加熱することによって、熱分解により可燃性ガスが発生する。発生した可燃性ガスは、通常は廃棄物処理装置100内で処理されるが、停電などの緊急時には、可燃性ガスはセメント製造装置10に排出されるように、廃棄物処理装置100は、排出路120を介してセメント製造装置10と接続されている。
【0017】
セメント原料投入口18から投入されたセメント原料は、複数のプレヒータサイクロン11aで順次予熱された後、仮焼炉12に導入されて仮焼反応が行なわれる。その後、セメント原料は、窯尻13からロータリーキルン14内に導入され、そこで焼成されてクリンカが得られる。ロータリーキルン14の窯前から排出されたクリンカは、クリンカクーラー15で急冷される。冷却されたクリンカは、石膏等と混合された後、不図示の仕上げミルで所定の粒径に粉砕され、これによってセメントが得られる。
【0018】
以上のように、セメント製造装置10で用いる燃料の一部として、廃棄物処理装置100によって得られた固形物を使用することで、エネルギーを有効利用することができるとともに、廃棄物の減容にも貢献する。
【0019】
ここで、廃棄物処理装置100について図2を参照して説明する。
【0020】
廃棄物処理装置100は、加熱炉101と、燃焼炉102と、減温塔103と、吸収塔104と、送気ファン106とを有する。
【0021】
加熱炉101は、外熱で加熱する間接加熱炉であって、廃棄物を加熱して燃料化する。より詳しくは、加熱炉101は、廃棄物を加熱することによって固形物を生成し、その固形物を燃料としてセメント製造装置10の窯前バーナー19(図1参照)に供給できるように、燃料供給路130を通じて窯前バーナー19と接続されている。
【0022】
なお、廃棄物の中には塩素を含むものがあり、セメント製造装置10に燃料として供給する固形物が塩素を含んでいるとセメント製造装置10が悪影響を受ける。そこで、加熱炉101は、廃棄物を脱塩可能な温度、例えば250℃〜350℃、で運転され、得られる固形物が脱塩物であることが好ましい。
【0023】
加熱炉101としては、燃料化のために廃棄物を加熱することができる装置であれば任意の装置を用いることができる。本形態では、廃棄物を加熱することによって脱塩物を生成できるように、加熱炉101としてロータリーキルンを用いている。
【0024】
加熱炉101での廃棄物の加熱によって、熱分解ガスである可燃性ガスが発生する。燃焼炉102は、加熱炉101で発生した可燃性ガスを燃焼させる。加熱炉101で発生した可燃性ガスを燃焼炉102に供給するため、加熱炉101と燃焼炉102とは供給路110で接続されている。供給路110の中間には遮断弁111が配置されている。遮断弁111は、廃棄物処理装置100が正常に運転されている間は開いているが、緊急時に閉じられる。また、加熱炉101は、落雷等の電気的失陥時には加熱を停止するように設計されている。
【0025】
供給路110の、加熱炉101から燃焼炉102へ向かう可燃性ガスの流れ方向について遮断弁111よりも上流側では、セメント製造装置10のクリンカクーラー15(図1参照)に接続される排出路120が分岐している。排出路120の中間には開放弁121が配置されている。開放弁121は、廃棄物処理装置100が正常に運転されている間は閉じているが、緊急時に開かれる。
【0026】
遮断弁111および開放弁121としては、電気駆動弁や空気駆動弁を用いることができる。使用できる弁の型式は任意であり、例えば、ボール弁やスライドゲート弁などが挙げられる。
【0027】
以上のように遮断弁111および開放弁121を配置することにより、加熱炉101で発生した可燃性ガスは、廃棄物処理装置100が正常に運転されている間は燃焼炉102に供給されるが、緊急時にはセメント製造装置10に排出される。
【0028】
送気ファン106は、燃焼炉102内に空気を供給できるように設置され、商用電源からの電力によって駆動される。送気ファン106によって燃焼炉102内に空気を供給することによって、燃焼炉102内での可燃性ガスの燃焼効率が向上する。
【0029】
減温塔103は、燃焼炉102の排出側に接続され、燃焼後の可燃性ガスである排気ガスを急冷する。排気ガスを急冷することによって、ダイオキシンの発生が低減される。
【0030】
吸収塔104は、減温塔103の排出側に接続され、減温塔103で冷却された排気ガスから、塩素ガス等の有害成分を吸収する。有害成分が吸収された排気ガスは、最終的には大気中へ排出される。
【0031】
以上の、加熱炉101から、燃焼炉102、減温塔103および吸収塔104を経由して大気中へ廃棄されるガスの流れは、吸収塔104の排出側に設置された誘引ファン108によって生じさせることができる。また、誘引ファン108と吸収塔104との間には、遮断弁111から誘引ファン108までの間の経路を流れるガス中の酸素濃度を検出するO2センサ107が配置されている。したがって、O2センサ107は、この経路中であればどこに配置してもよい。
【0032】
遮断弁111、開放弁121、送気ファン106および誘引ファン108の駆動および停止の制御を含め、この廃棄物処理装置100の動作全般は制御装置105によって制御される。制御装置105は、電気系統に失陥が発生したこと、すなわち、落雷、送電線の断線あるいは発電所の事故などによって商用電源からの電力供給が停止したことを検出するために、商用電源からの電流を検出する電流検出部105aを備えている。制御装置105は、電流検出部105aでの検出結果に基づいて検出される電気系統の失陥の有無に基づいて、廃棄物処理装置100の運転の停止動作および再開動作を制御する。
【0033】
また、制御装置105は、予備バッテリー(不図示)をさらに備えている。電気系統に失陥が発生したことが電流検出部105aによって検出されると、制御装置105の動作のための電源が商用電源から予備バッテリーに切り換えられ、商用電源から電力が供給されなくても動作が可能となっている。ただし、制御装置105は、制御の対象となるデバイスの駆動および停止といった動作を制御するのであって、デバイスの駆動自体を行なうものではないので、予備バッテリーの容量は比較的小さくて構わない。
【0034】
次に、本形態の廃棄物処理装置100の動作について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0035】
制御装置105は、電流検出部105aからの検出結果に基づいて電気系統に失陥が発生したかどうかを判断する(S11)。具体的には、電流検出部105aが電流を検出していれば、失陥が発生していないことを意味し、電流を検出しなくなることによって、失陥が発生したと判断する。
【0036】
失陥が発生していなければ、廃棄物処理装置100は通常運転を行なう(S19)。通常運転では、加熱炉101によって廃棄物を間接加熱する。遮断弁111は開かれているとともに、開放弁121は閉じられている。また、送気ファン106および誘引ファン108も駆動されており、誘引ファン108の駆動により、加熱炉101から、供給路110、燃焼炉102、減温塔103および吸収塔104を順次通過して大気へ放出されるガスの流れが形成される。
【0037】
まず、加熱炉101で廃棄物を間接加熱することによって発生した可燃性ガスは、供給路110を通って燃焼炉102に導入され、送気ファン106によって供給された空気と混合されて燃焼される。その排ガスは減温塔103で冷却された後、吸収塔104で有害成分が吸収されて無害ガスとして大気へ放出される。一方、加熱炉101で生じた残渣は、セメント原料の焼成用等の燃料としてセメント製造装置10に供給される。
【0038】
以上ように、廃棄物処理装置100の通常運転では、廃棄物を加熱により燃料化してセメント製造装置10に供給し、加熱により生じた可燃性ガスを無害ガスとして大気中へ放出する。
【0039】
廃棄物処理装置100の通常運転中に電気系統に失陥が発生すると、商用電源等からの電力を駆動源とする送気ファン106および誘引ファン108は停止してしまう。その一方で、本形態のように電気的失陥時に加熱炉101の加熱が停止される場合であっても、加熱炉101では余熱によって廃棄物から可燃性ガスが継続して発生するおそれがある。発生した可燃性ガスは燃焼炉102に供給されるが、燃焼炉102では送気ファン106による空気の供給が停止しているため、燃焼炉102内が還元雰囲気となり燃焼炉102が爆発するおそれがある。そこで、本形態では、廃棄物処理装置100の電気系統に失陥が発生した場合、以下のような処理を行なう。
【0040】
すなわち、制御装置105は、電気系統に失陥が発生したと判断すると、加熱炉101の運転(加熱)を停止し(S12)、遮断弁111を閉じるとともに開放弁121を開く。これにより、加熱炉101で発生した可燃性ガスは、燃焼炉102へは供給されず、排出路120を通じてセメント製造装置10のクリンカクーラー15に供給される。クリンカクーラー15は、高温酸化雰囲気となっており、セメント製造装置10の中でも可燃性ガスを燃焼可能な領域の一つである。
【0041】
ところで、廃棄物処理装置100に電気系統の失陥が発生したとき、通常はセメント製造装置10においても電気系統の失陥が発生している。しかし、セメント製造装置10は、安定した品質でセメントを製造できるようにするため、電気系統に失陥が発生した場合はバックアップ電源に切り換えて、バックアップ電源によって所定の時間は運転を継続することができるようになっている。よって、廃棄物処理装置100に電気系統の失陥が発生した際に、加熱炉101で発生した可燃性ガスをクリンカクーラー15に排出することによって、可燃性ガスをクリンカクーラー15内で燃焼させることができる。これによって、可燃性ガスを安全かつ適切に処理することができる。
【0042】
商用電源が復旧すると、商用電源からの電流が電流検出部105aで検出され、これによって、制御装置105は電気系統が復帰したと判断する(S14)。制御装置105が、電気系統が復帰したと判断すると、送気ファン106および誘引ファン108は駆動できる状態となる(S15)。送気ファン106を駆動すると、燃焼炉102内に空気が供給され、また、燃焼炉102から減温塔103および吸収塔104を経由して大気開放側へ空気が吸引される。
【0043】
2センサ107は、燃焼炉102から誘引ファン108までの間の経路を流れるガスの酸素濃度を常時検出している。O2センサ107によって検出された酸素濃度の値が予め定められた所定の値以上となると(S16)、制御装置105は、遮断弁111を開くとともに、開放弁121を閉じる。これにより、加熱炉101の排出側のガス経路は、排出路120から供給路110へ切り換えられる。ここで、ガス経路を切り換えるための条件である、O2センサ107で検出される酸素濃度は、燃焼炉102内が酸化雰囲気となる酸素濃度であり、例えば18%以上とすることができる。
【0044】
上記のようにガス経路を切り換えた後、制御装置105は加熱炉101を再加熱し(S18)、これによって通常運転(加熱)が再開される(S19)。加熱炉101の再加熱によって、加熱炉101で再び脱塩物が生成され、それとともに可燃性ガスが発生する。発生した可燃性ガスは、供給路110を介して燃焼炉102に供給される。このとき燃焼炉102は酸化雰囲気となっており、燃焼炉102内に供給された可燃性ガスは十分に燃焼される。
【0045】
本発明で用いる廃棄物は、有機性廃棄物である。有機性廃棄物の種類は限定されないが、有機性廃棄物の加熱によって発生する可燃性ガスを適切に処理し得る本発明では、プラスチックに比べて加熱により可燃性ガスが発生しやすい、木屑などの植物系バイオマスを含む有機性廃棄物を処理する場合に、より効果を発揮することができる。植物系バイオマスは、紙および/または木として、建設発生土にも含まれている。可燃性ガスがより発生しやすい状況、すなわち、有機性廃棄物が植物系バイオマスを含む場合、加熱炉101は、少なくとも植物系バイオマスの一部を熱分解可能な温度で運転(加熱)され、これによって本発明の効果がより発揮される。
【0046】
有機性廃棄物は、植物系バイオマスの他に廃プラスチックを含む混合物であってもよい。廃プラスチックは、塩化ビニルなどの塩素含有プラスチックが含まれていることが多い。塩素含有プラスチックを加熱すると、塩化水素ガスを発生し、装置の腐食など様々な問題を引き起こすおそれがある。そこで、有機性廃棄物が廃プラスチックを含む場合は、塩素含有プラスチックを脱塩可能な温度で加熱炉101を運転し、それによって脱塩物が得られるようにすることで、塩化水素ガスの発生が抑制された良好な燃料を得ることができる。電気系統の失陥時には、脱塩によって発生した塩化水素ガスを含む可燃性ガスがセメント製造装置10に供給されるが、例えば1200℃以上の高温で処理することで、可燃性ガスを適切に燃焼することができる。セメント製造装置10でこのような燃焼処理が可能な個所としては、クリンカクーラー15、仮焼炉12、窯前および窯尻13が挙げられる。
【0047】
なお、セメント製造装置10に塩素バイパス設備等の脱塩設備を設けてもよい。脱塩設備を設けることにより、加熱炉101から流入する可燃性ガスに塩化水素が多く含まれる場合であっても、塩化水素ガスがセメント製造装置10に与える悪影響が低減される。また、塩化水素ガスに基づくダイオキシンの発生を低減するため、加熱炉101から排出される可燃性ガスは、仮焼炉12、窯尻13に導入されることが好ましい。
【0048】
廃棄物処理装置100で処理できる廃プラスチックの例を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
上述した形態では、商用電源からの電力の供給が停止している間、加熱炉101の余熱によって発生し得る可燃性ガスを、セメント製造装置10のクリンカクーラー15に供給する例を示した。しかし、この可燃性ガスは、クリンカクーラー15に限らず、可燃性ガスを燃焼可能で、かつ酸化雰囲気となる個所であれば、任意の個所に供給することができる。可燃性ガスを燃焼可能な個所とは、可燃性ガスを燃焼可能な温度とされる個所のことである。可燃性ガスを燃焼可能な温度は、好ましくは500℃以上の高温であり、これにより、供給された可燃性ガスを確実に燃焼させることができる。
【0051】
以下に、廃棄物処理装置100で発生した可燃性ガスの供給個所として好ましい幾つかの例を示す。
【0052】
図4に示す例では、廃棄物処理装置100の排出路120はセメント製造装置10の仮焼炉12に接続されている。図5に示す例では、廃棄物処理装置100の排出路120はセメント製造装置10の排出路120はセメント製造装置10のサスペンションプレヒータ11に接続されている。図6に示す例では、廃棄物処理装置100の排出路120はセメント製造装置10のローラリーキルン14の窯前に接続されている。図7に示す例では、廃棄物処理装置100の排出路120はセメント製造装置10の窯尻13に接続されている。これら仮焼炉12、サスペンションプレヒータ11、窯前および窯尻13はいずれも、高温酸化雰囲気となる個所である。また、排出路120は、クリンカクーラー15、仮焼炉12、サスペンションプレヒータ11、窯前および窯尻13の2個所以上に接続されていてもよい。
【0053】
ただし、サスペンションプレヒータ11は、最上段から排気ガスを排出するため、排出路120をサスペンションプレヒータ11に接続した場合は、可燃性ガスが十分に燃焼されずに排出されてしまうおそれがある。よって、可燃性ガスは、クリンカクーラー15、仮焼炉12、窯前および窯尻13の少なくとも1個所に供給することが好ましく、それによって、可燃性ガスが十分に燃焼されないまま装置外に排出されるおそれを低減することができる。
【0054】
以上説明したように、本発明の一形態によれば、以下の(1)〜(7)に記載する廃棄物処理装置および(8)に記載する廃棄物処理方法が提供される。
【0055】
(1) 有機性廃棄物を加熱することによって燃料化する加熱炉101と、
前記加熱炉101内で発生した可燃性ガスが供給可能なように供給路110を介して前記加熱炉101に接続され、供給された可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉102と、
電気的に駆動されて前記燃焼炉102内に空気を供給する送気ファン106と、
を有する廃棄物処理装置100であって、
前記加熱炉101内で発生した可燃性ガスをセメント製造装置10に排出可能なように前記加熱炉101と前記セメント製造装置10とを接続する排出路120と、
前記排出路120に設けられ、電気的失陥時に前記排出路120を開放する開放弁121と、
前記供給路110に設けられ、電気的失陥時に前記供給路110を遮断する遮断弁111と、
をさらに備えることを特徴とする廃棄物処理装置100。
【0056】
上記の廃棄物処理装置100では、電気的失陥時に加熱炉の運転(加熱)が停止される場合であっても、余熱によって加熱炉101内の有機性廃棄物から可燃性ガスが継続して発生するおそれが高い。一方、電気的失陥時には、送気ファン106が停止するため空気が燃焼炉102に供給されず、燃焼炉102内が還元雰囲気となって爆発のおそれがある。電気的失陥時に加熱炉101の運転(加熱)が停止されない場合、可燃性ガスの発生が継続されるためこの問題はより顕著となる。
【0057】
そこで、加熱炉101とセメント製造装置10とを接続する排出路120を設け、この排出路120に設けられた開放弁121を開いて可燃性ガスをセメント製造装置10に排出する。これにより、可燃性ガスを高温酸化雰囲気のセメント製造装置10で処理することが可能となり、燃焼炉102の爆発を回避することができる。
【0058】
(2) 上記(1)の廃棄物処理装置10において、
前記排出路120は、前記セメント装置10の、酸化雰囲気かつ可燃性ガスを燃焼可能な位置に接続されていること
を特徴とする廃棄物処理装置100。
【0059】
このように、セメント製造装置10の酸化雰囲気かつ可燃性ガスを燃焼可能な位置に可燃性ガスを排出することで、可燃性ガスを適切に処理することができる。
【0060】
(3) 上記(2)の廃棄物処理装置100において、
前記排出路120は、前記セメント装置10のクリンカクーラー15、サスペンションプレヒータ11、仮焼炉12、窯前および窯尻13の少なくとも1個所に接続されていること
を特徴とする廃棄物処理装置100。
【0061】
セメント製造装置10におけるクリンカクーラー15、サスペンションプレヒータ11、仮焼炉12、溶前および窯尻13は、酸化雰囲気かつ可燃性ガスを燃焼可能な温度となる。これらのうち少なくとも1個所に可燃性ガスを供給することで、可燃性ガスを適切に処理することができる。
【0062】
(4) 上記(1)から(3)のいずれかの廃棄物処理装置100において、
前記有機性廃棄物は、植物系バイオマスを含むこと
を特徴とする廃棄物処理装置100。
【0063】
植物系バイオマスは、プラスチックと比べて加熱により可燃性ガスを発生しやすく、電気的失陥時に送気ファン106が停止すると燃焼炉102が還元雰囲気になりやすい。そのため、有機性廃棄物に植物系バイオマスが含まれている場合、開放弁121を開放して可燃性ガスをセメント製造装置10に排出し、可燃性ガスを適切に処理するという上記(1)の効果がより顕著に現われる。
【0064】
(5) 上記(4)の廃棄物処理装置100において、
前記有機性廃棄物は、前記植物系バイオマスと廃プラスチックとを含む混合物であり、
前記加熱炉101は、少なくとも前記植物系バイオマスの一部を熱分解可能な温度で運転されること
を特徴とする廃棄物処理装置100。
【0065】
植物系バイオマスを熱分解可能な温度で加熱炉101を運転中に電気的失陥が発生した場合、加熱炉101の運転が停止した後も植物系バイオマスから可燃性ガスが継続して発生するおそれが高い。よって、上記(5)の廃棄物処理装置100によれば、上記(4)の効果がより顕著に現われる。
【0066】
(6) 上記(5)の廃棄物処理装置100において、
前記廃プラスチックは、塩素含有プラスチックを含み、
前記加熱炉101は、前記塩素含有プラスチックを脱塩可能な温度で運転されること
を特徴とする廃棄物処理装置100。
【0067】
廃プラスチックは塩素含有プラスチックが含まれることが多い。このような塩素含有プラスチックを脱塩して燃料化することにより、塩化水素ガスの発生が抑制された良好な燃料を得ることができる。また、電気的失陥時には加熱炉101で発生する可燃性ガスをセメント製造装置10のロータリーキルン14に排出して例えば1200℃以上の温度で燃焼処理することで、脱塩によって発生する塩化水素ガスを含む可燃性ガスを適切に燃焼することができる。とりわけ、上記(3)のようにクリンカクーラー15、仮焼炉12、溶前および窯尻13の少なくとも1個所に可燃性ガスを排出することにより、塩化水素ガスをより適切に燃焼することができる。
【0068】
なお、セメント製造装置10に塩素バイパス設備等の脱塩設備を設ける場合、加熱炉101から流入する可燃性ガスに塩化水素が多く含まれる場合であっても、塩化水素ガスがセメント製造装置10に与える悪影響が低減される。また、塩化水素ガスに基づくダイオキシンの発生を低減するため、加熱炉101から排出される可燃性ガスは、仮焼炉12、窯尻13に導入されることが好ましい。
【0069】
(7) 上記(5)または(6)の廃棄物処理装置100において、
前記有機性廃棄物は建設発生土を含み、
前記植物系バイオマスは、前記建設発生土に含まれる紙および/または木であること
を特徴とする廃棄物処理装置100。
【0070】
このように、有機性廃棄物が、紙や木を含む建設発生土であっても、上記(5)および(6)の効果を得ることができる。
【0071】
(8) 有機性廃棄物を加熱炉101で加熱することによって燃料化し、
前記加熱炉101で発生した可燃性ガスを燃焼炉102に供給し、
前記燃焼炉102に供給された可燃性ガスを、電気的に駆動される送気ファン106を用いて前記燃焼炉102内に空気を供給しつつ、前記燃焼炉102内で燃焼させる廃棄物処理方法において、
電気的失陥が発生した際、前記加熱炉101から前記燃焼炉102への前記可燃性ガスの供給を遮断するとともに、前記加熱炉101で発生した前記可燃性ガスをセメント製造装置10に排出すること
を特徴とする廃棄物処理方法。
【0072】
上記の廃棄物処理方法によれば、電気的失陥時であっても、余熱によって加熱炉101内の有機性廃棄物から可燃性ガスが継続して発生するおそれが高く、その一方で、電気的失陥時には、送気ファン106が停止するため燃焼炉102内が還元雰囲気となって爆発のおそれがある。そこで、電気的失陥が発生した際に、加熱炉101から燃焼炉102への可燃性ガスの供給を遮断するとともに、加熱炉101で発生した可燃性ガスをセメント製造装置10に排出することで、可燃性ガスを高温酸化雰囲気のセメント製造装置10で処理することが可能となり、燃焼炉102の爆発を回避することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 セメント製造装置
11 サスペンションプレヒータ
12 仮焼炉
13 窯尻
14 ロータリーキルン
15 クリンカクーラー
100 廃棄物処理装置
101 加熱炉
102 燃焼炉
103 減温塔
104 吸収塔
105 制御装置
106 送気ファン
110 供給路
111 遮断弁
120 排出路
121 開放弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を加熱することによって燃料化する加熱炉と、
前記加熱炉内で発生した可燃性ガスが供給可能なように供給路を介して前記加熱炉に接続され、供給された可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、
電気的に駆動されて前記燃焼炉内に空気を供給する送気ファンと、
を有する廃棄物処理装置であって、
前記加熱炉内で発生した可燃性ガスをセメント製造装置に排出可能なように前記加熱炉と前記セメント製造装置とを接続する排出路と、
前記排出路に設けられ、電気的失陥時に前記排出路を開放する開放弁と、
前記供給路に設けられ、電気的失陥時に前記供給路を遮断する遮断弁と、
をさらに備えることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の廃棄物処理装置において、
前記排出路は、前記セメント装置の、酸化雰囲気かつ可燃性ガスを燃焼可能な位置に接続されていること
を特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の廃棄物処理装置において、
前記排出路は、前記セメント装置のクリンカクーラー、サスペンションプレヒータ、仮焼炉、窯前および窯尻の少なくとも1個所に接続されていること
を特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の廃棄物処理装置において、
前記有機性廃棄物は、植物系バイオマスを含むこと
を特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の廃棄物処理装置において、
前記有機性廃棄物は、前記植物系バイオマスと廃プラスチックとを含む混合物であり、
前記加熱炉は、少なくとも前記植物系バイオマスの一部を熱分解可能な温度で運転されること
を特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の廃棄物処理装置において、
前記廃プラスチックは、塩素含有プラスチックを含み、
前記加熱炉は、前記塩素含有プラスチックを脱塩可能な温度で運転されること
を特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の廃棄物処理装置において、
前記有機性廃棄物は建設発生土を含み、
前記植物系バイオマスは、前記建設発生土に含まれる紙および/または木であること
を特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項8】
有機性廃棄物を加熱炉で加熱することによって燃料化し、
前記加熱炉で発生した可燃性ガスを燃焼炉に供給し、
前記燃焼炉に供給された可燃性ガスを、電気的に駆動される送気ファンを用いて前記燃焼炉内に空気を供給しつつ、前記燃焼炉内で燃焼させる廃棄物処理方法において、
電気的失陥が発生した際、前記加熱炉から前記燃焼炉への前記可燃性ガスの供給を遮断するとともに、前記加熱炉で発生した前記可燃性ガスをセメント製造装置に排出すること
を特徴とする廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183269(P2011−183269A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49142(P2010−49142)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】