説明

廃棄物分解炉

【課題】全ての有機廃棄物が熱分解される前に灰を外部に排出でき、さらに下層に存在する灰から順番に且つ均等に外部に排出することができる新規な廃棄物分解炉を提供する。
【解決手段】有機廃棄物を収容する分解炉本体2と、この分解炉本体2の外側底面板部6g上に配置された灰回収トレー60と、この灰回収トレー60上に上記分解炉本体2の側方から差し込まれるシャッター板70と、分解炉本体2の側板部に形成され灰回収トレー60とシャッター板70とを出し入れする側部開口部52とを備えてなる。また、シャッター板70の上方には、所定の大きさの異物の脱落を阻止する脱落規制部材62が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を処理するために使用される廃棄物分解炉に関し、特に熱により廃棄物を分解する廃棄物分解炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで有機廃棄物を熱分解する分解炉は、焼却炉として広く使用されてきた。これまで使用されてきた焼却炉の基本的構成は、有機廃棄物が収容される焼却炉本体と、有機廃棄物をこの焼却炉本体に投入する開口及びこの開口を開閉する開閉蓋と、上記焼却炉本体に接続された排気管とを備えているものである。そして、こうした従来の焼却炉の使用方法は、上記開閉蓋を開蓋し、開放された開口から焼却炉本体内に有機廃棄物を投入し、着火させるものであり、着火した有機廃棄物が熱分解されることにより発生するガスは、上記排気管を介して大気に放出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記焼却炉本体内で有機廃棄物が熱分解されると灰が該焼却炉本体内において蓄積され、こうした灰が多量に蓄積されると焼却炉内の有効容積が制約されることから、適宜灰を取り除く必要がある。こうした灰を取り除く手段としては、上記焼却炉本体の底方向に排出口を設け、この排出口から取り出し用の器具を用いて外部に排出する方法が採用されている。しかしながら、こうした方法では、焼却炉の近傍が灰で汚損される危険性が高い。さらに、こうした方法では、排出口近傍の灰から順番に取り除くことになることから、排出口の近傍の灰の上方に残置され未だ焼却されていない有機物を取り除かなければ、中央に存在する下層の灰を取り除くことはできない。したがって、従来の焼却炉では、有機廃棄物が全て焼却され灰となった後でなければ、灰を取り除くことはできない。
【0004】
そこで、本発明は、上述した従来の焼却炉が有する課題を解決するために提案されたものであって、全ての有機廃棄物が熱分解されるのを待つまでもなく、灰を外部に排出することができ、さらに下層に存在する灰から順番に且つ均等に外部に排出することができる新規な廃棄物分解炉を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため、第1の発明(請求項1記載の発明)は、有機廃棄物を収容する分解炉本体と、この分解炉本体の底板部上に配置された灰回収トレーと、この灰回収トレー上に上記分解炉本体の側方から差し込まれるシャッター板と、上記分解炉本体の側板部に形成され上記灰回収トレーとシャッター板とを出し入れする側部開口と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0006】
上記第1の発明では、側部開口から灰回収トレー上にシャッター板を差し込むと、このシャッター板上に存在する灰が該シャッター板の上面により遮蔽され、下方に移動することがない。よって、内部に収容されている最も下層の灰は、上記灰回収トレーに収容された状態で外部に取り出される。また、この取り出した灰を灰回収トレーから排出し、空の灰回収トレーを上記側部開口から分解炉本体内に配置し、再び上記シャッター板を取り除くことにより、最も下層の灰が均等に灰回収トレー内に収容される。なお、上記説明では、シャッター板を差し込む作業から説明したが、このシャッター板を常時分解炉本体内に配置させ、該分解炉本体内の灰を取り除く際に、シャッター板を取り除き、その後に再び差し込んだ上で上述した作業を行っても良い。
【0007】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記シャッター板の上方には、所定の大きさの異物の脱落を阻止する脱落規制部材が配置されてなることを特徴とするものである。
【0008】
この第2の発明では、灰回収トレー内に、その内壁高さよりも大きな異物が脱落することを阻止することができる。なお、この第2の発明において、上記脱落規制部材は、少なくとも所定の大きさの異物の脱落を阻止することができるものであれば良く、該脱落規制部材の形状や構造は、脱落を阻止すべき異物の大きさに応じて適宜設定すれば良い。この脱落規制部材は、例えば、複数のバーが平行に配置されているものや、格子状,ハニカム状,網状等に成形されているものであっても良い。
【0009】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の何れかの発明において、前記分解炉本体内部の下方は、徐々にすぼめられており、前記シャッター板の面積は、上記最もすぼめられた下端開口部の面積よりも広い面積とされ、前記灰回収トレーの開口面積は、前記シャッター板の面積よりも広い面積とされてなることを特徴とするものである。
【0010】
この第3の発明では、分解炉本体内部形状の下方は、徐々にすぼめられており、換言すれば、下方側の水平断面積が下端開口部に至るまで狭くされている。例えば、分解炉本体の全体形状が円筒状に成形されている場合においては、下方側中途部から下方へ徐々に縮径されて縦断面が円錐台状になるものであり、一方、該分解炉本体が箱状に成形されている場合には、4つの側板の下端側は内部容積が下方へ徐々に狭くなるよう傾斜していれば良い。また、この第3の発明では、上記シャッター板は、上記狭められた部位で囲まれた面積よりも広い面積を有し、該部位に存在する灰を支持し得るものであることが必要となる。さらに、この第3の発明では、上記灰回収トレーの開口面積は、上記シャッター板の面積よりも広く、当然に上記狭められた部位で囲まれた面積よりも広いものでなければならない。
【0011】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1,第2又は第3の何れかの発明において、前記分解炉本体内には、前記シャッター板の両側を水平方向にガイドするガイドレールが配置され、これらのガイドレールの奥行き側は、該ガイドレール上に存在する灰が押し出されるよう開放されてなるとともに、該開放された部位の下方には前記灰回収トレーが位置してなることを特徴とするものである。
【0012】
この第4の発明では、シャッター板が上記ガイドレールにガイドされながら分解炉本体内に差し込まれた際、これらのガイドレール上に灰が存在すると、該灰は、シャッター板の先端により押されながら、最終的には開放されたガイドレールの先端側から下方に脱落し、この脱落した灰は上記灰回収トレー内に収容される。
【0013】
なお、上記ガイドレールは、少なくとも灰が貯留している分解炉本体内に差し込まれる際に、少なくともシャッター板をガイドするものであれば良く、したがって、シャッター板の下面を支持する水平の板体をガイドレールとして構成しても良いが、蓄積された灰に差し込まれるシャッター板が灰の抵抗により水平に差し込まれず上方に傾斜される場合が想定されることからすれば、このガイドレールは、シャッター板の上面及び下面の両方をガイドするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)によれば、灰回収トレー内に灰を収容した状態で外部に取り出すことができるので、分解炉本体の外側を汚損することを防止することができ、また、シャッター板と灰回収トレーとにより、分解炉本体内に蓄積された最も下層の灰を偏ることなく均等に外部に排出することができる。したがって、分解炉本体内に蓄積・積層された灰の上部に熱分解されていない有機廃棄物が存在する場合、或いはその有機廃棄物が熱分解されている途中であっても、該有機廃棄物が熱分解されるのを待つまでもなく、灰を回収することが可能となる。
【0015】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)では、シャッター板の上方には、所定の大きさの異物の脱落を阻止する脱落規制部材が配置されてなることから、灰回収トレー内に異物が収容されることがない。特に、この第2の発明によれば、この脱落規制部材により、異物の大きさが灰回収トレーの高さよりも大きな異物が存在することにより、上記シャッター板の差し込み作業が不能となる事態を有効に解消することが可能となる。
【0016】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)では、分解炉本体内部の下方は、徐々にすぼめられており、前記シャッター板の面積は、上記最もすぼめられた下端開口部の面積よりも広い面積とされ、前記灰回収トレーの開口面積は、このシャッター板の面積よりも広い面積とされてなることから、灰回収トレーを開口から外部に取り出す際に、該灰回収トレー内の灰が外側にこぼれ、このこぼれた灰の存在により、再び灰回収トレーを分解炉本体内の所定の位置に正確に配置できない事態を有効に解消することができる。
【0017】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)では、シャッター板が上記ガイドレールにガイドされながら分解炉本体内に差し込まれた際、これらのガイドレール上に灰が存在すると、該灰は、ガイドレールの先端により押されながら、最終的には開放されたガイドレールの先端側から下方に脱落し、この脱落した灰は上記灰回収トレー内に収容される。したがって、ガイドレール上に存在する灰により、シャッター板の差し込み作業が不能となる事態を解消することができるとともに、灰回収トレーを分解炉本体内の所定の位置に正確に配置できない事態を有効に解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態に係る廃棄物分解炉1は、図1に示すように、有機廃棄物を収容する分解炉本体2と、この分解炉本体2の外側底面板部(本発明の底板部)6g上に配置された灰回収トレー60と、この灰回収トレー60上に上記分解炉本体2の側方から差し込まれるシャッター板70と、上記分解炉本体2の各正面板部(本発明の側板部)6c,7cの下方に形成され上記灰回収トレー60とシャッター板70とを出し入れする側部開口52と、この側部開口52を閉塞する閉塞蓋54とを備えている。
【0019】
まず、上記分解炉本体2は、図1に示すように、鉄板を溶接することにより略箱状に成形されてなる外側筺体6と内側筺体7とから構成されてなる二重構造とされており、一方の外側筺体6は、外側平面板部6a、外側正面板部6c、外側背面板部6d、外側左側板部6e(図2参照)、外側右側板部6f(図2参照)及び外側底面板部6gにより筐体を構成している。
【0020】
また、他方の内側筺体7は前記外側筺体6の内側で平行に設けられ、内側平面板部7a、内側正面板部7c、内側背面板部7d、内側左側板部7e(図2参照)、内側右側板部7f(図2参照)及び内側底面板部7gにより筐体を構成している。なお、外側底面板部6gと内側底面板部7gとの間は、後述する各外側板6k,6m,6nにより接続され、上記外側底面板部6gの下面には、筒状に成形された4個の脚部8が溶接されている。
【0021】
そして、外側筺体6と内側筺体7との図1に示す左側上方には、長方形状の大型開口(符号は省略する。)がそれぞれ形成され、大型開閉蓋13により開閉自在とされている。この大型開閉蓋13は、前記閉塞し得る面積を備えた板状体であり、蝶番機構14により開閉自在となされている。また、この大型開閉蓋13の手前側には、開閉ハンドル15の基端が溶接されている。この開閉ハンドル15は、この開閉ハンドル15を把持しながら上記蝶番機構14を介して上記大型開口を開閉操作することができるように構成されている。なお、この大型開閉蓋13の手前側には、図示しないロック機構が配置され、その開錠操作により、当該大型開閉蓋13が回動操作できないように構成されている。
【0022】
また、上記大型開閉蓋13には、図1に示すように、長方形状の第1の筒状体20の中途部が溶接されており、この第1の筒状体20の下端側は上記分解炉本体2内に突出し、上端側は第1の外側開閉蓋21により閉塞されている。この第1の外側開閉蓋21は、上記第1の筒状体20の上端側背面と該第1の外側開閉蓋21とを接続する蝶番機構22により第1の筒状体20の開口20aを開閉自在とされている。なお、この第1の外側開閉蓋21の手前側には、第1の外側開閉蓋21による上記第1の筒状体20の開口20aの閉塞状態をロックし、分解炉本体2内のガスを遮断するするロック機構27が配置されている。
【0023】
また、上記分解炉本体2を構成する上記外側平面板部6aと内側平面板部7aとには、図1に示すように、第2の筒状体31の中途部が溶接されている。この第2の筒状体31の下端側は、上記分解炉本体2内にやや突出してなり、上端側は、上記外側平面板部6aの上面よりもやや上方に突出している。そして、この第2の筒状体31の上端には、該第2の筒状体31の開口31aを閉塞する第2の外側開閉蓋33が図示しないボルトを介して固定されている。
【0024】
また、図1に示すように、上記分解炉本体2を構成する内側筺体7の内部には、内側開閉蓋40が配置されている。この内側開閉蓋40は、上記第1の筒状体20に形成された開口20aと上記第2の筒状体31の開口31aを択一的に閉塞するものである。この内側開閉蓋40は、分解炉本体2内であって、上記第1の筒状体20と第2の筒状体31との中間位置に水平に配置された回動軸41に一端が溶接されてなるものであり、この回動軸41は、図示しない軸受けにより回動自在に支持されている。
【0025】
そして、上記回動軸41には、図示しないウォームホイールが固定され、このウォームホイールには図示しないウォームギアが噛合している。このウォームギアには図示しない回動操作軸が固定され、その先端に図示しない回動操作ハンドルが固定されている。すなわち、作業者がこの回動操作ハンドルを回動操作することにより、上記回動軸41及び内側開閉蓋40が回動する。また、上記内側背面板部7dと外側背面板部6dの上端側には、分解炉本体2内で発生したガス(煙)が排気可能な少なくとも1組の排気管4が配設されている。
【0026】
次いで、本発明に係る灰回収トレー60及びシャッター板70が配設される分解炉本体2の下部について説明する。その分解炉本体2の下部は、図2、図3又は図4に示す外側筐体6の各板部6c,6d,6e,6fと、内側筐体7の各板部7c,7d,7e,7fとのそれぞれの下端に、内側底面板部7gが外側底面板部6gと平行に溶接され、その中心部は図2に示すように四角窓7jにより開口されている。
【0027】
この内側底面板部7gと外側底面板部6gとの間で、外側筐体6の各板部6d,6e,6fの下方には、図3及び図4に示すように、背面外側板6k、左外側板6m、右外側板6nが溶接によりそれぞれ立設され、内側底面板部7g及び外側底面板部6gと、本発明の側板部である各外側板6k,6m,6nとで、図3に示す左方の側部開口部52が開放された箱状に形成されている。その側部開口部52近傍で外側底面板部6gの端部には、揺動自在な蝶番機構53の一方の固定片(符号は省略)が固着され、他方の揺動片(符号は省略)には、側部開口部52を開閉可能な略コ字状に形成された閉塞蓋54の下端片54aが止着されている。
【0028】
また、側部開口部52近傍で内側底面板部7gの端部には、図2又は図3に示す閉塞状態を維持するための3組のそれぞれのロック機構55の操作レバー55a側が固着され、このロック機構55の掛止片55bは、前記閉塞蓋54の上端片54bに止着されている。そして、ロック機構55の操作レバー55aをコイルばね(符号は省略)に抗して開放側へ持ち上げると掛止片55bから操作レバー55a側の掛止部(符号は省略)が開錠される。この開錠作用により、前記側部開口部52は、閉塞蓋54の上端片54b側を把持して手前に揺動させることで、閉塞蓋54による図示の閉塞状態から図示しない開放状態にして、後述する灰回収トレー60又はシャッター板70の出し入れをすることができる。
【0029】
また、上記分解炉本体2を構成する内側筺体7の内部の下方には、図2、図3又は図4に示すように、4個の傾斜板51c,51d,51e,51fが、下方に向かってすぼむように傾斜させて四隅がそれぞれ接合され、それぞれの下端は前記内側底面板部7gの四角窓7j近傍に溶接されている。これら傾斜板51c乃至51fのそれぞれの上端部(符号は省略)は、内側筐体7の各板部7c,7d,7e,7fの近接位置まで延出する水平なフランジ状に形成されている。また、傾斜板51c乃至51fのその最もすぼめられた下端開口部(符号は省略)の面積は、内側底面板部7gの四角窓7jで形成される開口部の面積と略同一に構成されている。
【0030】
また、前記内側底面板部7gの下面で四角窓7j近傍には、垂下側板56c,56d,56e,56fがそれぞれ溶接され、これらの下端には、上案内板57c,57d,57e,57fがそれぞれ溶接され、これらのうち上案内板57e,57fの下面外縁に、図4に示すガイドレール50E,50Fが設けられている。これらのガイドレール50E,50Fは、上案内板57e,57fの下面外縁に、横案内板58e,58fがそれぞれ溶接され、これらの下面には、前記上案内板57e,57fよりも広幅の下案内板59e,59fが溶接されている。
【0031】
そして、横案内板58e,58fの対向する内側は、上案内板57e,57fと下案内板59e,59fとの間に、それぞれ略コ字状凹部でなるシャッター案内溝61e,61fが形成され、後述するシャッター板70を進退移動可能に案内する。また、これらガイドレール50E,50Fのそれぞれのシャッター案内溝61e,61fの奥(図4における紙面裏側)は、それぞれの下案内板59e,59f上に存在する灰が押し出されるよう開放されてなる図3に示す排出開口61iがそれぞれ形成されている。
【0032】
また、図2又は図3に示す前記垂下側板56c,56dには、傾斜板51c,51d,51e,51f及び内側筐体7の四角窓7jの下方の空間を横断するようにして、円柱状で9本の脱落規制部材62が止着され、これら9本の脱落規制部材62の上方の分解炉本体2内に介在する所定の大きさの異物の下方への落下を阻止すべく規制するように構成されている。したがって、上記9本の脱落規制部材62のそれぞれの間隔、及び垂下側板56e,56fとの隙間は、落下を規制しようとする異物の大きさによって決められ、その規制すべき異物の大きさは、後述する灰回収トレー60内の高さ以下であることが望ましい。
【0033】
なお、本例では円柱状で9本の脱落規制部材62を平行に横設して構成したものであるが、このほかに、格子状,ハニカム状,網目状等にも構成することができる。また、これら9本の脱落規制部材62の上部近傍には、当該脱落規制部材62により落下が阻止された残留異物の図示しない取り出し口が、前記外側筐体6及び内側筐体7と、傾斜板51c乃至51fのいずれかの1つとを貫通して、図示しない閉塞蓋により閉塞可能に配設され、その開閉蓋を開放することにより、当該取り出し口から残留異物を適宜の時期に取り出すことができる。
【0034】
また、分解炉本体2内の前記脱落規制部材62の上方には、図3又は図4に示すように、分解炉本体2内の温度を検出するための検出子75aを備えた温度センサ75が、外側背面板部6d、内側背面板部7d及び傾斜板51dを貫通して横設されている。また、図示しない操作盤には、温度センサ75により検出された分解炉本体2内の温度を表示する温度表示器と、その温度が設定温度以下である場合には点灯する表示ランプとが配設されている。
【0035】
そして、この温度センサ75により分解炉本体2内の下層部における温度を検出することで、その温度が設定温度以下であれば、下層部に滞在する物質が熱分解された後の灰であり、又は設定温度以上であれば、熱分解されていない燃焼中の有機廃棄物が滞在していることを検知することができる。なお、この温度センサ75の取り付け高さの適正位置については、次欄で説明する灰回収トレー60の容積との関係において後述する。
【0036】
次いで、上記分解炉本体2の外側底面板部6g上に配置される灰回収トレー60について説明する。この灰回収トレー60は図5に示すように、正面側板63c,背面側板63d,左側板63e及び右側板63fにより四角枠状に溶接された枠体の下面に平板状の底板63gが溶接され、その上部が開口の箱状に形成されている。また、その前面(図5の左側)の正面側板63cには、握手が可能な取手64が溶接されている。
【0037】
そして、このように形成された灰回収トレー60は、図3又は図4に示すように、上記分解炉本体2の外側底面板部6g上の所定位置に載置され、上方から降下する熱分解後の灰を収容する。この灰回収トレー60内に収容した灰を回収する際は、図3に示す側部開口部52を閉塞蓋54の開放操作により開放した後、当該灰回収トレー60の取手64を握手して引き出すことで、外部に取り出し分解後の灰を回収することができる。
【0038】
次いで、上記分解炉本体2内の灰回収トレー60上に差し込まれるシャッター板70について説明する。このシャッター板70は図6に示すように、平板状に形成された遮蔽板73の左右両端のそれぞれの上面に、長尺状のスペーサ75e,75fが溶接され、これらの上面には長尺状のスライダ76e,76fが、前記ガイドレール50E,50Fのそれぞれのシャッター案内溝61e,61f内を滑動可能に溶接されている。また、その前面(図6の左側)の端面部上面には、握手が可能な取手74が溶接されている。
【0039】
そして、このように形成されたシャッター板70は、図3又は図4に示すように、上記分解炉本体2内に載置された灰回収トレー60の上方において、前記シャッター案内溝61e,61f内にそのスライダ76e,76fが載置され、上方に蓄積された灰が降下することを遮蔽する。このシャッター板70上に蓄積された熱分解後の灰を前記灰回収トレー60内に収容する際は、図3に示す側部開口部52を閉塞蓋54の開放操作により開放した後、当該シャッター板70の取手74を握手して引き出すことで、遮蔽されていた灰は降下し、灰回収トレー60内に収容することができる。
【0040】
また、その降下する灰の灰回収トレー60内における収容量が所定量に達した際には、前記側部開口部52からシャッター板70を分解炉本体2内に挿入し、かつ、それぞれのスライダ76e,76fを前記ガイドレール50E,50Fのシャッター案内溝61e,61f内で滑動させて、図3に示す所定位置に位置決めすることで、上方に蓄積された灰が降下することを遮蔽することができる。
【0041】
また、前記シャッター案内溝61e,61fの奥(図4における紙面裏側)は、それぞれの下案内板59e,59f上に存在する灰が押し出されるよう開放されてなる図3に示す排出開口61iがそれぞれ形成されているので、シャッター板70の先端部により押し出される灰は、前記排出開口61iから下方に脱落し、この脱落した灰は灰回収トレー60内に収容される。
【0042】
次いで、図3又は図4において、上述した分解炉本体2の傾斜板51c,51d,51e,51fが最もすぼめられた下端開口面積Aと、シャッター板70の遮蔽板73上面の表面積Bと、灰回収トレー60上部の開口面積Cとの関係について説明する。これらの面積を対比すると、シャッター板70の表面積Bは、分解炉本体2の最もすぼめられた下端開口面積Aよりも広く、かつ、灰回収トレー60上部の開口面積Cは、シャッター板70の表面積Bよりも広く構成されている(すなわち、A<B<C)。
【0043】
そして、シャッター板70の表面積Bが、分解炉本体2の最もすぼめられた下端開口面積Aよりも広く構成されていることで、シャッター板70上に蓄積された熱分解後の灰は、当該シャッター板70の周縁からはみ出して落下することが防止される。また、灰回収トレー60上部の開口面積Cが、シャッター板70の表面積Bよりも広く構成されていることで、灰回収トレー60内に灰が収容される際に、シャッター板70を引き出して分解炉本体2の下端開口部から蓄積された灰を降下させると、灰回収トレー60内に山盛りになるが、上記下端開口面積Aはシャッター板70の表面積Bよりもさらに狭いから、灰回収トレー60内で山盛りになる山裾部分が、灰回収トレー60内かはみ出すことを防止することができる。
【0044】
以上のことから、上述した温度センサ75の取り付け高さの適正位置を決めることができる。すなわち、温度センサ75による検温の目的が、分解炉本体2内の下層部に滞在する物質が熱分解された後の灰である場合にのみ回収すべく判断するものであるから、温度センサ75の取り付け高さの適正位置は、灰回収トレー60内の容積よりも、シャッター板70の上面から温度センサ75近傍までの間に蓄積される灰の体積が大きくなるように、当該温度センサ75の高さを決めれば、分解されていない高温の有機廃棄物が灰回収トレー60内に回収されることはない。
【0045】
引き続いて、上述した実施の形態に係る廃棄物分解炉1の使用方法を説明しながら作用効果を説明する。先ず、図1に示す分解炉本体2内に、図示しない有機廃棄物を投入するには、開閉ハンドル15を把持し、蝶番機構14を介して大型開閉蓋13を時計回りに回転させて、その大型開口から有機廃棄物を分解炉本体2内に投入することができる。また、こうした有機廃棄物の投入は、蝶番機構22を介して外側開閉蓋21を開蓋し、その開口20aからも、または、外側開閉蓋33を開蓋し、その開口31aからも投入することができる。
【0046】
そして、このように有機廃棄物の投入が終了した場合には、該有機廃棄物に着火するとともに、上記大型開閉蓋13又は外側開閉蓋21若しくは外側開閉蓋33を閉蓋して、分解炉本体2内のガス(排煙)が外部に流出しないようにしておく。また、上述した有機廃棄物が分解炉本体2内において熱分解することにより発生したガス(煙)は、排気管4から外部に排出される。
【0047】
このようにして熱分解した灰を回収する際には、前記温度センサ75により検出された温度表示器の表示温度が設定温度以下であるか、又は表示ランプが点灯していることを確認し、これらを満たした後に回収作業に入る。若しも、温度表示器の表示温度が設定温度以上であるか、又は表示ランプが点灯していない場合には、前記有機廃棄物が回収される恐れがあるとして、灰の回収時期を繰り下げることで、当該有機廃棄物を回収することを防止できる。なお、灰の回収に係る以下の説明においては、あらかじめ前記確認がなされているものとする。
【0048】
また、上記熱分解作業中における灰回収トレー60及びシャッター板70のそれぞれの待機位置は、図3に示す待機位置に、(1)灰回収トレー60とシャッター板70との両方を待機させておくか、(2)灰回収トレー60のみを前記待機位置に待機させておきシャッター板70は閉塞蓋54を開いて外部に出しておくか、又は、(3)シャッター板70のみを前記待機位置に待機させておき灰回収トレー60は閉塞蓋54を開いて外部に出しておくかのうちいずれでもよい。
【0049】
それぞれの場合における灰の回収手順は、(1)の両方を待機させておいた場合には、灰はシャッター板70上に蓄積され、灰回収トレー60内には収容されていないので、灰の回収に際しては、ロック機構55を開錠して閉塞蓋54を開き、シャッター板70の取手74を握手して手前に引き出す。この操作により、シャッター板70上の分解炉本体2内で積層状に蓄積され、シャッター板70により遮蔽されていた灰は、分解炉本体2の傾斜板51c,51d,51e,51fの最もすぼめられた下端開口部に滞在する最下層部から順次灰回収トレー60内に降下される。
【0050】
そして、シャッター板70上に蓄積されていた灰は、瞬く間に降下して灰回収トレー60内に収容されるので、所定時間後にシャッター板70を図4に示すガイドレール50E,50Fにより案内させながら前進させ、灰回収トレー60内の上部で山積みされた灰を上下に分離するようにして突っ切り、図3に示す載置位置まで押入れ、シャッター板70上の灰の降下を遮蔽する。
【0051】
この状態における灰回収トレー60内の灰は、円錐台状に山積みされているが、灰回収トレー60の取手64を握手して軽く揺動させると山積みされた灰の頂部が崩れ、山裾部近傍における灰回収トレー60の内壁面との間の隙間部へ流れ込み、灰の上面は灰回収トレー60の開口上面より低くなる。その後に灰回収トレー60の取手64を握手して引き出すと、灰回収トレー60内の灰は溢れ出ることなく、分解炉本体2から取り出すことができるので、当該灰は灰回収トレー60内から所定の回収容器に回収できる。そして、回収後の灰回収トレー60は、分解炉本体2内の図3に示す載置位置まで押入れ、次の回収時期まで待機させておき、必要がある場合には、閉塞蓋54により側部開口部52を閉塞してロック機構55を施錠しておく。
【0052】
また、(2)の灰回収トレー60のみを待機させておいた場合には、灰は灰回収トレー60上に直接収容されるので、灰の回収に際しては、ロック機構55を開錠して閉塞蓋54を開き、シャッター板70の取手74を握手して図4に示すガイドレール50E,50Fの案内により前進させ、灰回収トレー60内の上部で山積みされた灰を上下に分離するようにして突っ切り、図3に示す載置位置まで押入れ、シャッター板70上の灰の降下を遮蔽する。
【0053】
この状態における灰回収トレー60内の灰は、円錐台状に山積みされているが、上記(1)と同様の揺動操作により灰の頂部が崩れ、灰の上面は灰回収トレー60の開口上面より低くなる。その後に灰回収トレー60の取手64を握手して引き出すと、灰回収トレー60内の灰は溢れ出ることなく、分解炉本体2から取り出すことができるので、当該灰は灰回収トレー60内から所定の回収容器に回収できる。そして、回収後の灰回収トレー60を戻す際には、分解炉本体2内の図3に示す載置位置まで押入れ、次の回収時期まで待機させておき、必要がある場合には、閉塞蓋54により側部開口部52を閉塞してロック機構55を施錠しておく。
【0054】
また、(3)のシャッター板70のみを待機させておいた場合には、灰はシャッター板70上に蓄積され、灰回収トレー60内には収容されていないので、灰の回収に際しては、ロック機構55を開錠して閉塞蓋54を開き、灰回収トレー60の取手64を握手して図3に示す載置位置まで押入れる。次にシャッター板70の取手74を握手して手前に 引き出す。この操作により、シャッター板70上の分解炉本体2内で積層状に蓄積され、シャッター板70により遮蔽されていた灰は、分解炉本体2の傾斜板51c,51d,51e,51fの最もすぼめられた下端開口部に滞在する最下層部から順次灰回収トレー60内に降下される。
【0055】
そして、シャッター板70上に蓄積されていた灰は、瞬く間に降下して灰回収トレー60内に収容されるので、所定時間後にシャッター板70を図4に示すガイドレール50E,50Fにより案内させながら前進させ、灰回収トレー60内の上部で山積みされた灰を上下に分離するようにして突っ切り、図3に示す載置位置まで押入れ、シャッター板70上の灰の降下を遮蔽する。
【0056】
この状態における灰回収トレー60内の灰は、円錐台状に山積みされているが、上記(1)と同様の揺動操作により灰の頂部が崩れ、灰の上面は灰回収トレー60の開口上面より低くなる。その後に灰回収トレー60の取手64を握手して引き出すと、灰回収トレー60内の灰は溢れ出ることなく、分解炉本体2から取り出すことができるので、当該灰は灰回収トレー60内から所定の回収容器に回収できる。 そして、回収後の灰回収トレー60を戻す際には、分解炉本体2内の図3に示す載置位置まで押入れ、次の回収時期まで待機させておき、必要がある場合には、閉塞蓋54により側部開口部52を閉塞してロック機構55を施錠しておく。
【0057】
上述した(1)乃至(3)の操作により灰回収トレー60内へ降下する灰は、図3又は図4に示す分解炉本体2の傾斜板51c,51d,51e,51fの最もすぼめられた下端開口部に滞在する最下層部から順次降下するので、上層部に滞在する熱分解されていない燃焼中の有機廃棄物が、灰回収トレー60内へ収容されることはなく、熱分解された後の灰のみが収容される。
【0058】
また、図4に示す分解炉本体2の傾斜板51c,51d,51e,51fの最もすぼめられた下端開口部から降下した灰は、9本の脱落規制部材62を通過した後、その下方で待ち受ける灰回収トレー60内へ収容されるので、9本の脱落規制部材62の間隔幅よりも大きい異物が灰回収トレー60内へ収容されることはない。したがって、灰回収トレー60を引き出す際に、灰回収トレー60内の異物がガイドレール50E,50Fやシャッター板70に干渉することを回避できる。
【0059】
なお、上記実施の形態では、図示しない操作盤に、温度センサ75により検出された分解炉本体2内の温度が設定温度以下である場合に点灯するする表示ランプを配設して構成したが、この表示ランプは配設せずに温度表示器のみにより検知してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態に係る廃棄物分解炉の分解炉本体を示す縦断面図である。
【図2】図1に示す分解炉本体のA−A横断面図である。
【図3】図2に示す分解炉本体のB−B縦断面図である。
【図4】図2に示す分解炉本体のC−C縦断面図である。
【図5】実施の形態に係る灰回収トレーを示し、(a)は平面図、(b)は右側の側面図である。
【図6】実施の形態に係るシャッター板を示し、(a)は平面図、(b)は背面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 廃棄物分解炉
2 分解炉本体
50E,50F ガイドレール
52 側部開口部
60 灰回収トレー
61e,61f シャッター案内溝
61i 排出開口
62 脱落規制部材
70 シャッター板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物を収容する分解炉本体と、この分解炉本体の底板部上に配置された灰回収トレーと、この灰回収トレー上に上記分解炉本体の側方から差し込まれるシャッター板と、上記分解炉本体の側板部に形成され上記灰回収トレーとシャッター板とを出し入れする側部開口と、を備えてなることを特徴とする廃棄物分解炉。
【請求項2】
前記シャッター板の上方には、所定の大きさの異物の脱落を阻止する脱落規制部材が配置されてなることを特徴とする請求項1記載の廃棄物分解炉。
【請求項3】
前記分解炉本体内部の下方は、徐々にすぼめられており、前記シャッター板の面積は、上記最もすぼめられた下端開口部の面積よりも広い面積とされ、前記灰回収トレーの開口面積は、前記シャッター板の面積よりも広い面積とされてなることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかの廃棄物分解炉。
【請求項4】
前記分解炉本体内には、前記シャッター板の両側を水平方向にガイドするガイドレールが配置され、これらのガイドレールの奥行き側は、該ガイドレール上に存在する灰が押し出されるよう開放されてなるとともに、該開放された部位の下方には前記灰回収トレーが位置してなることを特徴とする請求項1,2又は3記載の廃棄物分解炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−315630(P2007−315630A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143062(P2006−143062)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(502266962)株式会社ネクサス (2)
【出願人】(500179161)
【Fターム(参考)】