説明

廃水処理装置および廃水処理方法

【課題】活性汚泥処理槽のMLSS濃度を高く保ちつつ活性汚泥処理を行うことができる廃水処理装置および廃水処理方法を提供する。
【解決手段】廃水処理装置10は、被処理水を固液分離する最初沈殿池50と、最初沈殿池50から供給された被処理水を活性汚泥処理する活性汚泥処理槽12と、活性汚泥処理槽12から供給された処理物に含まれる汚泥を濃縮する常圧浮上装置30と、常圧浮上装置30からの濃縮汚泥を分離された分離液を固液分離する最終沈澱池24と、常圧浮上装置30により濃縮された汚泥を活性汚泥処理槽12に戻すべく返送する濃縮汚泥返送ラインL7を備える。常圧浮上装置30が汚泥を濃縮して活性汚泥処理槽12に返送するため、活性汚泥処理槽12のMLSS濃度を高くできる。また、最終沈澱池24が濃縮汚泥を分離された分離液をさらに固液分離し、処理水を一層清澄にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理装置および廃水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の有機性被処理水を活性汚泥処理槽で生物処理する技術が種々提案されている。このような技術においては、汚水を管路により処理施設に移送し、処理施設においては、管路により移送された汚水を最初沈殿池で固液分離した後、汚泥を滞留させた活性汚泥処理槽にて曝気をして活性汚泥処理を行い、活性汚泥処理した処理物をさらに固液分離して、処理水と余剰汚泥とに分離する(非特許文献1)。
【非特許文献1】「下水道ハンドブック」、株式会社建設産業調査会、1997年2月15日、p.388、図10.2.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような下水処理等における活性汚泥処理法では、活性汚泥処理槽内のMLSS(MixedLiquor Suspeded Solids:混合液懸濁物質)濃度は、一般的に1500〜2000mg/Lの範囲で運転されている。しかし、MLSS濃度が低過ぎると処理が安定せず余剰汚泥の減容化が図れないため、より高いMLSS濃度で汚泥処理を行うことが考えられる。ところが、上記の技術においては、活性汚泥処理槽内を高いMLSS濃度に保つことが困難である。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、活性汚泥処理槽のMLSS濃度を高く保ちつつ活性汚泥処理を行うことができる廃水処理装置および廃水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被処理水を活性汚泥処理する活性汚泥処理槽と、活性汚泥処理槽の処理物中に含まれる汚泥を濃縮して分離する汚泥濃縮装置と、汚泥濃縮装置により汚泥を分離された分離液をさらに固液分離する固液分離槽と、汚泥濃縮装置により濃縮された汚泥を活性汚泥処理槽に戻すべく返送する濃縮汚泥返送ラインと、を備えた廃水処理装置である。
【0006】
この構成によれば、汚泥濃縮装置が活性汚泥処理槽の処理物中に含まれる汚泥を濃縮して分離し、濃縮汚泥返送ラインが汚泥濃縮装置により濃縮された汚泥を活性汚泥処理槽に戻すべく返送するため、活性汚泥処理槽のMLSS濃度を高くして活性汚泥処理を行うことができる。また、固液分離槽が汚泥濃縮装置により汚泥を分離された分離液をさらに固液分離するため、処理水を一層清澄にして排出することができる。
【0007】
この場合、固液分離槽により分離液を固液分離して得られた汚泥を、汚泥濃縮装置に戻すべく返送する第1汚泥返送ラインを備えることが好適である。この構成によれば、固液分離槽により固液分離され濃縮された汚泥を、第1汚泥返送ラインが汚泥濃縮装置に返送するため、当該濃縮された汚泥がさらに汚泥濃縮装置で濃縮されることになり、活性汚泥処理槽のMLSS濃度を一層高くして活性汚泥処理を行うことができる。
【0008】
また、固液分離槽により分離液を固液分離して得られた汚泥を、活性汚泥処理槽に戻すべく返送する第2汚泥返送ラインを備えていても良い。この構成によれば、固液分離槽により固液分離され濃縮された汚泥を、第2汚泥返送ラインが活性汚泥処理槽に直接返送するため、固液分離槽から返送される汚泥の濃度が十分高い場合、活性汚泥処理槽のMLSS濃度を高くして活性汚泥処理を行うことができる。
【0009】
あるいは、固液分離槽により分離液を固液分離して得られた汚泥を、汚泥濃縮装置に戻すべく返送する第1汚泥返送ラインと、活性汚泥処理槽に戻すべく返送する第2汚泥返送ラインとを備え、第1汚泥返送ラインと第2汚泥返送ラインとで返送する汚泥の割合が変更自在とされていることが好適である。
【0010】
この構成によれば、第1汚泥返送ラインと第2汚泥返送ラインとで返送する汚泥の割合を変更自在とされているため、活性汚泥処理槽のMLSS濃度も所望に変更自在とできる。
【0011】
また本発明の別の態様は、被処理水を活性汚泥処理する活性汚泥処理工程と、活性汚泥処理工程の処理物中に含まれる汚泥を濃縮して分離する汚泥濃縮工程と、汚泥濃縮工程により汚泥を分離された分離液をさらに固液分離する固液分離工程と、汚泥濃縮工程により濃縮された汚泥を活性汚泥処理工程に戻すべく返送する濃縮汚泥返送工程と、を含む廃水処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃水処理装置および廃水処理方法によれば、活性汚泥処理槽のMLSS濃度を高くして活性汚泥処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る廃水処理装置および廃水処理方法について添付図面を参照して説明する。なお、同一の構成要素は同一の符号で示し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る廃水処理装置の構成を示す図である。本実施形態の排水処理装置10により処理される廃水は、例えば、下水、農業集落排水、漁業集落排水、民間企業排水、団地排水等の有機性排水である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の廃水処理装置10は、被処理水を移送する汚水流入管路L0と、被処理水を固液分離する最初沈殿池50と、最初沈殿池50から被処理水供給ラインL1を介して供給された被処理水を活性汚泥処理する活性汚泥処理槽12と、活性汚泥処理槽12から処理物移送ラインL2を介して供給された処理物に含まれる汚泥を濃縮する常圧浮上装置(汚泥濃縮装置)30と、常圧浮上装置30から分離液移送ラインL6を介して供給され、汚泥を分離された分離液をさらに固液分離する最終沈澱池(固液分離槽)24とを備えている。また廃水処理装置10は、常圧浮上装置30により濃縮された汚泥を活性汚泥処理槽12に戻すべく返送する濃縮汚泥返送ラインL7を備える。さらに廃水処理装置10は、最終沈澱池24により処理物を固液分離して得られた汚泥を、常圧浮上装置30に戻すべく返送する分離固形分移送ラインL4、第1汚泥返送ポンプ28および第1汚泥返送ラインL5を備える。なお、分離固形分移送ラインL4により移送された汚泥の内、第1汚泥返送ラインL5により返送された汚泥を除いた残部は、汚泥処理施設40に送られる。汚泥処理施設40では、汚泥を脱水処理した後、焼却処理を行う。汚泥の脱水処理により脱水された水は、返流水再送ラインL8によって、汚水流入管路L0に返送される。
【0016】
最初沈殿池50は、被処理水を固液分離するもので、回転駆動されるスクレーパ52を有している。このスクレーパ52は、槽の底部にたまった固形物を中央に集めるもので、この固形物は固形物排出ラインL9により排出される。また、最初沈殿池50は、固形物を分離された被処理水の上澄み液を、被処理水供給ラインL1を介して活性汚泥処理槽12に供給する。
【0017】
活性汚泥処理槽12は、送風機14、流量計16および攪拌機18を有し、これらにより槽内の汚泥を曝気し攪拌することができる。また活性汚泥処理槽12は、DO計(溶存酸素計)20とORP計22(酸化還元電位検出計)とを有し、これらにより槽内の溶存酸素量と酸化還元電位を測定して、送風機14および攪拌機18を制御し、槽内の溶存酸素量を所定値とする。活性汚泥処理槽12は、濃縮汚泥返送ラインL7から送られる濃縮汚泥のため、MLSS濃度が10000〜15000mg/Lと高濃度になる。
【0018】
常圧浮上装置30は、浮上濃縮法により、活性汚泥処理槽12からの汚泥を濃縮するものである。混合器32は、処理物移送ラインL2により移送された処理物を気泡と混合し、常圧浮上装置30に送る。常圧浮上装置30は、槽の底部から処理物が噴出し、気泡の付着した汚泥を槽の水面に浮上させる。掻寄器34は、水面に浮上させた汚泥を掻き集めて、濃縮汚泥移送ラインL7によって、被処理水供給ラインL1から活性汚泥処理槽12に返送する。この常圧浮上装置30は、活性汚泥処理槽12からの汚泥を2倍以上に濃縮し、MLSS濃度を20000〜30000mg/Lとする。一方、常圧浮上装置30は、槽内で浮上せず、分離液下部に残存するSS(Suspeded Solids:懸濁物質)を、分離液移送ラインL6によって最終沈殿池24に送る。
【0019】
最終沈澱池24は、汚泥を除去され少量のSSが残存する分離液を汚泥と処理水とに固液分離するもので、最初沈殿池50と同様に、回転駆動されるスクレーパ26を有している。このスクレーパ26は、槽の底部にたまった汚泥を中央に集めて排出するもので、この汚泥は分離固形分移送ラインL4により移送される。一方、最終沈澱池24は、分離された処理水を、処理水排出ラインL3を介して排出する。第1汚泥返送ラインL5および第1汚泥返送ポンプ28は、分離固形分移送ラインL4により移送された汚泥の一部を、常圧浮上装置30に返送する。
【0020】
以下、本実施形態の廃水処理装置10の作用について説明する。汚水流入管路L0により移送された被処理水は、最初沈殿池50で固液分離されて活性汚泥処理槽12で活性汚泥処理される。活性汚泥処理された処理物は、常圧浮上装置30で濃縮されて濃縮汚泥返送ラインL7を介して活性汚泥処理槽12に返送される。常圧浮上装置30で濃縮された汚泥を分離された分離液は、最終沈殿池24でさらに固液分離され、固液分離された上澄み液は処理水として処理水排出ラインL3により排出される。固液分離された汚泥の一部は、第1汚泥返送ラインL5により常圧浮上装置30に返送される。
【0021】
本実施形態においては、特に、活性汚泥処理された処理物が常圧浮上装置30で濃縮され、活性汚泥処理槽12に返送される。下水処理等における活性汚泥法では、活性汚泥処理槽内におけるMLSS濃度は、一般に1500〜2000mg/Lの範囲で運転されている。一方、窒素、りんの除去を目的とした高度処理では、2000〜3000mg/L、オキシデーションデッチでは3000〜4000mg/LのMLSS濃度が設計標準となっている。MLSS濃度が低すぎると処理が安定せず汚泥の減容化が図れない。一方、MLSS濃度が高すぎると必要な酸素量が増え、不経済となると考えられている。
【0022】
しかし、近年、MLSS濃度を高くした活性汚泥法が提案されている。例えば、汚泥減容プロセス、し尿処理プロセス等においてはMLSS濃度を6000〜15000mg/Lの高い値で運転することが提案され、特殊なケースとしては20000mg/Lで運転することも提案されている。
【0023】
しかしながら、このような高MLSS濃度の処理においては、固液分離、特に汚泥の濃縮方法が問題となる。汚泥を高MLSS濃度に濃縮するためには、遠心分離法、膜分離法等が採用される場合が多い。しかし、遠心分離法はランニングコストが高く、膜分離法はイニシャルコストが高いといったデメリットが生じる場合がある。
【0024】
そこで本実施形態では、従来、最終沈殿池からの余剰汚泥を処理・処分するために用いられていた浮上濃縮法を用いて汚泥を濃縮する。本実施形態では、活性汚泥処理槽12と常圧浮上装置30と最終沈殿池24とを直列に設置し、活性汚泥処理槽12からの汚泥の濃縮を常圧浮上装置30によって行い、常圧浮上装置30の下部分離液の清澄化は最終沈殿池24において重力沈降によって行うものとした。浮上濃縮法には加圧濃縮法と常圧濃縮法とがあるが、本実施形態では加圧ポンプの稼動等で電気使用量がかさむ加圧浮上法ではなく、常圧浮上法を採用する。
【0025】
従来の装置においては、活性汚泥処理槽12に返送される汚泥の年間を通してのMLSS濃度は3000〜6000mg/Lの範囲と考えられる。本実施形態では、活性汚泥処理槽12に返送する汚泥のMLSS濃度を20000〜30000mg/Lとすることにより、活性汚泥処理槽12におけるMLSS濃度を10000〜15000mg/Lと高くすることができる。これにより汚泥処理の安定化が図られ、余剰汚泥の減容化効率の向上が図られる。また、廃水処理施設において冬期に反応が遅くなる消化・脱窒反応が、活性汚泥処理槽12のMLSS濃度が高濃度であるため、良好に進行する。さらに、常圧浮上装置30および最終沈殿池24を直列で設置するため、高濃度の濃縮汚泥が得られるとともに、濃縮汚泥を分離された後の分離液を供給される最終沈殿池24では一層清澄な上澄み液を処理水として排出できる。
【0026】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係る廃水処理装置の構成を示す図である。図2に示すように、本実施形態においては、廃水処理装置10は、第1汚泥移送ラインL5にさらに第2汚泥移送ラインL10が付加され、第2汚泥移送ラインL10は、活性汚泥処理槽12に汚泥を返送する。第1汚泥移送ラインL5と第2汚泥移送ラインL10との間には、流量調整弁36が設けられている。本実施形態においては、流量調製弁36を調節することにより、第1汚泥返送ラインL5により常圧浮上装置30に返送する汚泥と、第2汚泥返送ラインL10により活性汚泥処理槽12に返送する汚泥との割合を変更自在とされている。本実施形態においては、例えば、分離固形分移送ラインL4により最終沈殿池24から引き抜かれた汚泥の濃度が十分に高い場合には、返送汚泥として常圧浮上装置30に返送する汚泥よりも活性汚泥処理槽12に返送する汚泥の割合を増やすことができる。このようにして、本実施形態では、活性汚泥処理槽12におけるMLSS濃度を自在に制御することができる。
【0027】
尚、本発明の廃水処理装置および廃水処理方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る廃水処理装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る廃水処理装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10…廃水処理装置、12…活性汚泥処理槽、14…送風機、16…流量計、18…攪拌機、20…DO計、22…ORP計、24…最終沈澱池(固液分離槽)、26…スクレーパ、28…汚泥返送ポンプ、30…常圧浮上装置(汚泥濃縮装置)、32…混合器、34…掻寄器、36…流量調節弁、40…汚泥処理施設、50…最初沈殿池、52…スクレーパ、L0…汚水流入管路、L1…被処理水供給ライン、L2…処理物移送ライン、L3…処理水排出ライン、L4…分離固形分移送ライン、L5…第1汚泥返送ライン、L6…分離液移送ライン、L7…濃縮汚泥返送ライン、L8…返流水返送ライン、L9…固形物排出ライン、L10…第2汚泥返送ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を活性汚泥処理する活性汚泥処理槽と、
前記活性汚泥処理槽の処理物中に含まれる汚泥を濃縮して分離する汚泥濃縮装置と、
前記汚泥濃縮装置により汚泥を分離された分離液をさらに固液分離する固液分離槽と、
前記汚泥濃縮装置により濃縮された汚泥を前記活性汚泥処理槽に戻すべく返送する濃縮汚泥返送ラインと、
を備えた廃水処理装置。
【請求項2】
前記固液分離槽により分離液を固液分離して得られた汚泥を、前記汚泥濃縮装置に戻すべく返送する第1汚泥返送ラインを備える、請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記固液分離槽により分離液を固液分離して得られた汚泥を、前記活性汚泥処理槽に戻すべく返送する第2汚泥返送ラインを備える、請求項1または2に記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記固液分離槽により分離液を固液分離して得られた汚泥を、前記汚泥濃縮装置に戻すべく返送する第1汚泥返送ラインと、前記活性汚泥処理槽に戻すべく返送する第2汚泥返送ラインとを備え、前記第1汚泥返送ラインと前記第2汚泥返送ラインとで返送する汚泥の割合が変更自在とされている、請求項1に記載の廃水処理装置。
【請求項5】
被処理水を活性汚泥処理する活性汚泥処理工程と、
前記活性汚泥処理工程の処理物中に含まれる汚泥を濃縮して分離する汚泥濃縮工程と、
前記汚泥濃縮工程により汚泥を分離された分離液をさらに固液分離する固液分離工程と、
前記汚泥濃縮工程により濃縮された汚泥を前記活性汚泥処理工程に戻すべく返送する濃縮汚泥返送工程と、
を含む廃水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−216145(P2007−216145A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39792(P2006−39792)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(598067603)住重環境エンジニアリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】