説明

廃油脂類の焼却装置

【課題】ドラム缶や丸缶などの缶に入った廃油脂類を焼却処理する装置に関し、速やかな完全燃焼を可能にし、不完全燃焼により生ずる灰の量を低減する。更に、ドラム缶焼却装置のトラブルによって連続処理が妨げられる事態を回避する。
【解決手段】焼却炉内の燃焼ガスの流れの最も上流の側にドラム缶焼却装置を備えた廃油脂燃焼エリアが設けられている。廃油脂燃焼エリアの炉床とドラム缶焼却装置との間に、炉床に流出した廃油脂類を撹拌し、かつ当該廃油脂類が燃焼したあとの灰を排出する撹拌板を備えている。炉床上の廃棄物が表面燃焼となって表面にできる皮膜で燃焼効率が低下すること及び自動灰出しが困難になることを、床面を撹拌することによって燃焼効率を高めながら燃焼灰を自動排出できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドラム缶や丸缶などの缶に入った廃油、廃溶剤、廃樹脂などの廃油脂類の焼却装置に関するもので、単独で又は他の種類の廃棄物と共に缶内の廃油脂類を焼却処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼却炉の炉壁にドラム缶焼却装置を設けた廃油脂類の焼却装置は、この発明の出願人がすでに提案している(特許文献1、2)。図4に示すように、このドラム缶焼却装置は、焼却炉の炉壁21の一部に設けられ、ドラム缶倒伏装置27を備えている。廃油脂類の入ったドラム缶Aは、ドラム缶焼却装置の内扉24を閉じ外扉25を開いた状態で、ドラム缶倒伏装置27に挿入される。次に外扉25を閉じて内扉24を開き、ドラム缶倒伏装置27を炉内に向けて水平より下向きになるまで倒伏させ、ドラム缶の内容物を炉内に流出させると共に、ドラム缶内に残った廃油脂類をドラム缶内で燃焼させる。そして廃油脂類の排出及び燃焼が終了したら、ドラム缶倒伏装置27を起立させて内扉24を閉じ、外扉25を開いて焼却済ドラム缶を取り出す。
【0003】
特許文献1、2で提案した焼却装置は、上記手順によるドラム缶内の廃油脂類の焼却の他に、丸缶(一斗缶)内の廃油脂類の焼却や廃プラスチック材等を焼却する火格子5(図1参照)を備えている。丸缶は、火格子5の上方に設けた丸缶投入口61から火格子5上に投入されて火格子上で内容物が焼却され、焼却済の丸缶は、火格子5から落下して炉底67に設けた丸缶排出プッシャ70で排出される。
【0004】
特許文献1で提案した焼却装置のドラム缶焼却装置は、丸缶投入口61に対向させて、丸缶投入口61を設けた側と反対の側の炉壁に設けられている。一方、特許文献2で提案した焼却装置では、底部に側方に突出した部分を設けた側面視で略L型の焼却炉を備え、その側方に突出した部分の炉壁に3個のドラム缶焼却装置を設けている。特許文献2に記載の焼却装置は、L型の炉の屈曲部分に火格子を備え、当該火格子の上にプラスチック屑、木屑、紙屑等の投入口51が設けられ、更にその上方に、丸缶の投入口61が設けられている。
【0005】
これらの焼却装置によれば、ドラム缶や丸缶に入った廃油脂類を缶に入れたままの状態で能率良く焼却することができ、また炉内への廃油脂類の入った缶の投入及び排出を自動的に行うことができ、廃油脂類の焼却を人手をかけることなく能率良く行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−2828号公報
【特許文献2】特開平8−189629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来構造の廃油脂類の焼却装置は、ドラム缶内で固まって取出すことが困難な廃油脂類や、他の種類の廃棄物と混ざると発煙、発熱、発火、爆発などが起る危険性がある廃油脂類を、缶から取出すことなく個別に安全に処理できるという優れた特徴があるため、最近の廃棄物処理プラントには必須の処理装置となっている。
【0008】
しかし、上述した従来構造の焼却装置では、流動性及び揮発性の低い廃油脂類では、ドラム缶から炉底に流出した廃油脂類の表面のみが燃焼するいわゆる表面燃焼となって燃焼完了に時間を要するとか、燃焼が不完全となって炉底に不完全燃焼した後の灰が大量に生ずることがあるという問題があった。また、特許文献2で提案した構造の焼却装置では、発熱量の低い廃棄物の入ったドラム缶を処理する場合、内容物への着火が困難で燃え残りが発生する場合がある。
【0009】
炉底に堆積した灰は、炉を停止して炉底から掻き出さねばならないので、炉の連続処理ができず、処理能力が低下するとか、最適な燃焼状態を長期間維持できないなどの問題が生ずる。更に、ドラム缶焼却装置にトラブルがあった場合、焼却炉全体を停止して補修する必要があり、このときにも上記と同様な問題が発生していた。
【0010】
この発明は、特許文献1、2で提案した廃油脂類の焼却装置を更に改良して、性質の異なる種々の廃油脂類の速やかな完全燃焼を可能にすること、不完全燃焼により生ずる灰を無くして灰の量を低減すること、更に、ドラム缶焼却装置のトラブルによって連続処理が妨げられる事態を回避することができる廃油脂類の焼却装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、ドラム缶から取り出せない或いはポンプ圧送ができない樹脂と溶剤の混合物や、缶内で固まっている廃溶剤、廃接着剤、タール系樹脂廃油や、臭気性の廃樹脂、他の廃棄物と混合すると化学反応が生ずるおそのある廃棄物など、ドラム保管されている特殊な廃棄物を、ドラム缶に入れたまま焼却して燃焼後にドラム缶を回収することができる廃油脂類の焼却装置において、加熱されてドラム缶から流れ出す廃棄物を浅い樋状ないし舟底形の炉床40で受け、この炉床上の廃棄物が表面燃焼となって表面にできる皮膜で燃焼効率が低下すること及び自動灰出しが困難になることを、床面を撹拌することによって燃焼効率を高めながら燃焼灰を自動排出できるようにしたものである。
【0012】
この発明の廃油脂類の焼却装置は、焼却炉1内の燃焼ガスの流れの最も上流の側にドラム缶焼却装置22dを備えた廃油脂燃焼エリア2が設けられている。廃油脂燃焼エリア2は、中央部が若干低くなるように両側部を傾斜させた浅い樋状の炉床40を備えており、この炉床とドラム缶焼却装置22dとの間に、炉床40に流出した廃油脂類を撹拌し、かつ当該廃油脂類が燃焼したあとの灰を排出する撹拌板34を備えている。
【0013】
この撹拌板34は、当該撹拌板を前記樋状の樋の延在方向と直交する方向に往復動させる水平駆動装置39と、当該撹拌板を炉床40に押し付けたり炉床40から離隔させる上下駆動装置37とに連結されている。水平駆動装置39は、撹拌板34の移動ストロークを少なくとも長短2段に切り換え可能で、長ストローク側で撹拌板34を移動させたとき、当該撹拌板は廃油脂燃焼エリアの炉床40の外側にまで移動し、短ストローク側では、当該撹拌板を炉床40の幅内で往復動させる。
【0014】
廃油脂燃焼エリア2には、ドラム缶焼却装置22dに設けたドラム缶倒伏装置27により倒伏されたドラム缶から流出した廃油脂類が落下する炉床の位置に向けて、燃焼バーナ23が設けられている。廃油脂燃焼エリア2の燃焼ガスの下流側には、火格子5が設けられ、更にその下流側に二次燃焼室58が設けられている。
【0015】
好ましいこの発明の廃油脂類の焼却装置は、上記の構造に加えて、廃油脂燃焼エリア2と火格子5を設けた焼却炉本体下方部との間に燃焼ガスの流路を遮断する水冷構造の遮蔽扉42が設けられている。また、好ましいこの発明の廃油脂類の焼却装置は、火格子5の上方に、着火し難い廃油脂類や揮発性で灰の生じない廃油脂類が入ったドラム缶内の廃油脂類を燃焼するための上部ドラム缶焼却装置22uが設けられている。
【0016】
すなわち、好ましいこの発明の廃油脂類の焼却装置は、下部と上部にドラム缶焼却装置22d、22uを設け、ドラム缶入りの高温燃焼性の又は難燃焼性の廃溶剤、廃樹脂、廃油類を上部ドラム缶焼却装置22uで燃焼することで、二次燃焼室58の温度維持の安定化を図り、かつ二次燃焼に必要な化石燃料の消費削減を可能にしたものである。
【発明の効果】
【0017】
流動性の低い廃油脂類や燃焼に時間がかかる廃油脂類が入ったドラム缶内の廃油脂類を焼却する際、廃油脂燃焼エリアのドラム缶焼却装置のドラム缶倒伏装置27でドラム缶を倒伏して、当該廃油脂類を廃油脂燃焼エリアの炉床40に流出させ、当該流出した廃油脂類を撹拌板34で撹拌しながらバーナ23の火炎を当てることにより、短時間でドラム缶内の廃油脂類の燃焼が行われると共に、当該廃油脂類を完全燃焼させることができ、燃焼灰の量を大幅に低減できる。
【0018】
そして、撹拌板34を長ストロークで移動させることにより、焼却処理を中断することなく灰を排出することができる。これにより、流動性の低い又は燃焼に時間がかかる廃油脂類の焼却を短時間で完全に、かつ連続して行うことができる。
【0019】
廃油脂燃焼エリア2と火格子5を設けた部分との間に遮蔽扉42を設けることにより、燃焼ガスの最上流側に位置する廃油脂燃焼エリア2にトラブルが起ったときに、この遮蔽扉42を閉めることにより、廃油脂燃焼エリア2での焼却処理のみを停止して、当該トラブルの復帰を図ることができる。
【0020】
すなわち、内容物の完全な把握が困難であるために、トラブルが生じやすい廃油脂燃焼エリア2を燃焼ガスの流れの最も上流側に配置した焼却炉において、焼却炉全体の運転を止めることなく、廃油脂燃焼エリア2で発生したトラブルの復旧を図ることができる。
【0021】
更に火格子5の下流側に上部ドラム缶焼却装置22uを設けて、高温で燃焼する廃油脂類が入ったドラム缶を上部ドラム缶焼却装置22uで燃焼することにより、二次燃焼室58を高温にして排ガス中の未燃分を燃焼すると共にダイオキシンの発生を防止するために必要な補助燃料の消費量を低減できる。この上部ドラム缶焼却装置22uは、高温の燃焼ガスが流れる領域に設けられるため、着火し難い廃棄物の入ったドラム缶の焼却にも適しており、燃焼ガスの最上流側と二次燃焼室58に近い下流側に設けた下部と上部のドラム缶焼却装置22d、22uにより、種々の廃油脂類の入ったドラム缶の焼却を経済的かつ速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】焼却装置の断面正面図
【図2】図1の焼却装置の要部を図1の左側から見た拡大断面側面図
【図3】図1の焼却装置の断面平面図
【図4】ドラム缶焼却装置の断面側面図
【図5】丸缶焼却装置の断面側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に示したこの発明の焼却装置について説明する。図1は焼却炉1を内部を示す断面正面図である。図の焼却装置は、ドラムA缶内の廃油脂類の焼却の他に、丸缶(一斗缶)B内の廃油脂類やプラスチック屑、木屑、紙屑などを同時に焼却することができる構造である。
【0024】
焼却炉1は、底部に側方に突出した廃油脂燃焼エリア2を備えた略L型で、その突出した廃油脂燃焼エリア2の炉壁21に、2個の下部ドラム缶焼却装置22dが配置されている。廃油脂燃焼エリア2の炉床40は、図2に断面形状を示すように、中央部が若干低くなる方向に両側を傾斜させた浅い樋状ないし舟底形で、その樋の延在方向は、図2の紙面直角方向である。廃油脂燃焼エリア2の先端及び各下部ドラム缶焼却装置22dに対向する炉壁には、焼却中のドラム缶内及びドラム缶から炉床40に流出した廃油脂類を着火ないし燃焼するバーナ20及び23、23が配置されている。
【0025】
下部ドラム缶焼却装置22d及び後述する上部ドラム缶焼却装置22uは、炉壁21から外方に突出した状態で設けられている。各ドラム缶焼却装置22(22d、22u)は、炉壁21の外面に沿って上下して開閉される内扉24と、それから間隔を隔てて同様に上下して開閉される外扉25とを備えており、この内扉24と外扉25との間にドラム缶投入室26が形成されている。このドラム缶投入室には、ドラム缶倒伏装置27が支軸28まわりに炉内側に倒伏可能に設けられている。ドラム缶倒伏装置27は、ドラム缶の底部を支持する台枠29と倒伏状態のドラム缶を支持する支え枠30とでL字形に形成され、支え枠30の上端は、倒伏状態のドラム缶の落下を防止するために、内側に屈曲してストッパ31を一体に形成してある。
【0026】
下部ドラム缶焼却装置22dに対向する炉壁に設けたバーナ23は、図2に示すように、下方に向けて設けられており、ドラム缶から廃油脂燃焼エリアの炉床40に流出した廃油脂類を加熱燃焼するように設けられている。
【0027】
下部ドラム缶焼却装置22dの下方には、炉床40に流出した廃油脂類を撹拌する機能を備えた撹拌灰出し装置32が設けられている。撹拌灰出し装置32は、下部ドラム缶焼却装置22dの下方部において炉床40上へと延びる腕33を備えており、当該腕の先端に撹拌板34がその面を腕33の延在方向と直角にして下方に向けて取り付けられている。
【0028】
下部ドラム缶焼却装置22dの炉と反対の側には、腕33の延在方向と同方向のレール46に移動自在に案内された往復台36が設けられている。腕33は、往復台36に腕33の延在方向と直交する水平方向の支点ピン35により枢支されている。腕33は、この枢支位置を越えて反対側に延びており、その延びた部分の先端33aに往復台36に搭載した上下動シリンダ37のロッド38が連結されている。往復台36は、腕33の延在方向と同方向の水平シリンダ39に連結されて腕33の延在方向に往復駆動される。水平シリンダ39は、そのストロークを長短2段階に切り換えられるようになっている。
【0029】
撹拌灰出し装置32の上下動シリンダ37を伸張させた状態、すなわち撹拌板34を下方に付勢した状態で水平シリンダ39を長ストローク側に切り換えて駆動すると、撹拌板34は炉床40に押し付けられながら傾斜した両側部分を越えて移動し、炉床40に堆積した灰を炉床外へと排出する。灰を排出したあとは、上下動シリンダ37を縮退させて撹拌板34を持ち上げた状態で、炉床上へと復帰する。
【0030】
一方、水平シリンダ39を短ストローク側に切り換えて、当該シリンダを往復動させると、撹拌板34は、炉床40の幅内で往復動し、炉床40に堆積した廃油脂類を撹拌する。これによりドラム缶Aから流出して炉床40に堆積した流動性の低い廃油脂類を撹拌して、その燃焼を促進する。
【0031】
すなわち、この撹拌動作により、炉床に堆積した廃油脂類がその表面だけ燃焼して内部まで燃焼が進まないで焼却に時間がかかったり、不完全燃焼して多量の灰が生ずる事態を避けることができる。
【0032】
なお、廃油脂燃焼エリアの炉床40の外側(図2の左右両側又は片側)の灰が落下する部分は、炉内を水封構造によって外界と区画している水槽となっており、撹拌板34によって炉床40から排出された灰は、この水槽内へと落下し、当該水槽の底部に設けた灰出しコンベアによって炉外に搬出される。
【0033】
廃油脂類の燃焼によって生じた廃油脂燃焼エリア2の燃焼ガスは、焼却炉1の本体側へと流れ、本体側の下部に設けた火格子5上の丸缶内の廃油脂類や廃木材などの被焼却物を焼却する。
【0034】
廃油脂燃焼エリア2の基端側、すなわち本体側と繋がる部分には、電動チェンブロック41で昇降して開閉される遮蔽扉42が設けられている。通常、この遮蔽扉42は開放されているが、廃油脂燃焼エリア2での廃油脂類の焼却にトラブルが発生したときは、この遮蔽扉42と閉じることによって、本体側での焼却処理を停止することなく、廃油脂燃焼エリア2内の焼却処理を停止して、当該トラブルの復旧を図ることができる。遮蔽扉42は、内部に水ジャケットを備えた水冷式の扉である。
【0035】
略L形の焼却炉の屈曲部分には、3段の火格子5がカスケード状に配置されている。最上段の火格子に隣接する炉壁に、プラスチック屑、木屑、紙屑等の投入口51が開口しており、この開口には投入扉52が設けられている。投入口51の外側には、プラスチック屑、木屑、紙屑などを炉内に押し込む自動投入装置53が設けられている。
【0036】
また火格子5の上方の炉壁には、丸缶の投入口61が設けられている。丸缶投入口から投入された丸缶Bは、火格子5上に落下して、火格子5上で缶内の廃油脂類が焼却される。丸缶の投入口14には、図5に示すように、投入扉62が設けられ、その外側に丸缶Bを炉内に押し込むためのプッシャ63及びその駆動シリンダ64が配置されている。
【0037】
図5には丸缶の搬入及び投入装置が模式的に示されている。丸缶Bは、コンベア65によってリフタ66上へと送り込まれる。そしてリフタ66が上昇した後、丸缶投入口の扉62を開いてプッシャ63を前進させることにより、搬入された丸缶が炉内に投入される。投入された丸缶は、火格子5上に落下する。
【0038】
3段の火格子5のそれぞれには、シリンダ54で進退するプッシャ55が設けられており、最上段の火格子の上に投入されたプラスチック屑、木屑、紙屑など及び丸缶は、3個のプッシャ55を順次動作させることにより、順次下方の火格子へと落とされ、最後に炉の底部56に落下する。
【0039】
火格子5の先端側(図1で左側)の炉底部分は、焼却済の丸缶の落下部67とされ、この落下部に連なる炉壁には、丸缶排出扉68を備えた丸缶排出口69が設けられ、その反対の炉壁に、丸缶排出プッシャ70を備えた丸缶排出装置71が配置されている(図3)。
【0040】
火格子5の下方の炉底には、火格子5上の丸缶などから落下した内容物が燃焼した後の焼却灰が残るが、これは炉床部の炉壁に設けた灰出口57(図で点線で示されている)から炉外に取り出される。この灰出口57の外側には、灰出し装置(図示されていない)が配置されている。
【0041】
丸缶投入口61を設けた側と反対の側の炉壁には、上部ドラム缶焼却装置22uが設けられている。上部ドラム缶焼却装置22uは、前述した廃油脂燃焼エリアのドラム缶焼却装置22dと同様な構造を備え、同様な動作でドラム缶内の廃油脂類を燃焼する。この上部ドラム缶焼却装置には、これに対応するバーナや撹拌灰出し装置は設けられていない。揮発性で燃焼しやすい廃油脂類が入ったドラム缶の当該廃油脂類を燃焼ガスの流れの下流側に設けた上部ドラム缶焼却装置22uで焼却することにより、その高温の燃焼熱で燃焼ガス中の未燃分を二次燃焼室58で高温燃焼することができ、焼却炉の燃焼温度を維持するのに必要な重油などの補助燃料の消費量を低減することができる。
【0042】
また、炉内の温度が高温に維持されているときに、着火しにくい廃棄物の入ったドラム缶をこの上部ドラム缶焼却装置22uで焼却することにより、高温の燃焼ガスに晒されて内容物が速やかに燃焼する。
【0043】
丸缶投入口61及び上部ドラム缶焼却装置22uの上方の炉内は、二次燃焼室58とされ、左右の炉壁に二次燃焼用のバーナ59が配置されている。炉内の燃焼ガスは、この二次燃焼室58で完全燃焼し、炉の上端の煙道に繋がる開口60を通って図示しない排ガス処理装置へと導かれている。
【0044】
次に下部ドラム缶焼却装置22dを例にして、ドラム缶焼却時のドラム缶の搬入、焼却及び搬出動作を説明する。蓋を予め取り外したストッカ47上のドラム缶Aをフォクリフトなどの搬送装置48でドラム缶投入室26の入口高さまで持ち上げる。ドラム缶投入室26の入口は通常外扉25が電動チェンブロック43により吊り上げられて開放されている。そこで搬送装置48を前進させてドラム缶Aをドラム缶投入室26のドラム缶倒伏装置27上に降ろした後、搬送装置48を後退させる。次いでドラム缶投入室26の外扉25を閉じ、内扉24を電動チェンブロック44で吊り上げて開放する。その後、図示しない油圧モータなどによりドラム缶倒伏装置27をゆっくりと炉内側に倒し、ドラム缶Aの内容物を流出させる。
【0045】
炉床40に落下した内容物は、炉内床面で焼却される。またドラム缶A内に残った内容物は、ドラム缶の周囲に導かれる燃焼ガスにより高温に加熱されて流動化して炉内床面に落下して焼却され、またドラム缶A内でも焼却される。一定時間経過後焼却が終了したら、ドラム缶倒伏装置27を元の位置に戻してドラム缶Aを直立させ、内扉24を閉じる。最後に電動チェンブロック43で外扉25を吊り上げて開放し、搬送装置48で空になったドラム缶を取り出す。
【0046】
このドラム缶内の廃油脂類の燃焼時に撹拌灰出し装置の撹拌板34を水平シリンダ39のストロークを短ストローク側に切り換えた状態で往復動させることにより、炉床40に堆積した廃油脂類を撹拌して、その燃焼を促進する。そして、焼却が終了してドラム缶が排出されたあと、水平シリンダ39を長ストローク側に切り換えて撹拌板34を大きく移動させることにより、炉床の灰を排出する。
【0047】
次に丸缶焼却時の丸缶の燃焼動作について説明する。蓋を予め取り外した丸缶Bをテーブルリフタ66の上に載せる。図示しない昇降装置によりテーブルリフタ66を上昇させ、炉の丸缶投入口61の高さで停止する。次に丸缶投入口61の投入扉62を図示しない電動チェンブロックにより吊り上げて開放し、丸缶投入プッシャ63を進出させてテーブルリフタ66上の丸缶Bを炉内の火格子5上に押し込む。その後丸缶投入プッシャ63は直ちに後退して元の位置に戻り、投入扉62は閉鎖される。このような動作を数回続けて行うことにより、所定数の丸缶Bを火格子5上に載置する。
【0048】
投入された丸缶Bは火格子5上で内容物を焼却されるので、一定時間経過後プッシャ55を順に前進させ、火格子5上の丸缶Bを火格子5の先端側の丸缶落下部67に落下させる。丸缶落下部67に落ちた焼却済の丸缶Bは、炉の排出扉68を図示しない電動チェンブロックで吊り上げて開放した後、丸缶排出プッシャ70を前進させて丸缶排出口69より炉外に排出する。
【0049】
上述したドラム缶Aと丸缶Bの焼却は、並行して行うことも勿論可能である。また通常の廃プラスチック、廃木材、廃紙類などの廃棄物も、ドラム缶Aや丸缶Bと共に焼却することができる。また上記の説明では油脂缶をドラム缶と丸缶で代表したが、これに限定されるわけではなく、大型の油脂缶は上記ドラム缶と同様にして焼却され、また小型の油脂缶は上記丸缶と同様にして焼却される。
【符号の説明】
【0050】
1 焼却炉
2 廃油脂燃焼エリア
5 火格子
22(22d) ドラム缶焼却装置
22u 上部ドラム缶焼却装置
23 燃焼バーナ
27 ドラム缶倒伏装置
34 撹拌板
37 上下駆動装置
39 水平駆動装置
40 炉床
42 遮蔽扉
58 二次燃焼室
A ドラム缶
B 丸缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入されたドラム缶を焼却炉の内部に向けて下向きに倒伏して流出した内容物及び缶内の内容物を焼却するドラム缶焼却装置を備えた廃油脂類の焼却装置において、倒伏したドラム缶から内容物が落下してくる炉床上に当該内容物を撹拌する撹拌板ないし撹拌爪を備え、前記内容物の燃焼中にこの撹拌板ないし撹拌爪を往復動して燃焼中の前記内容物の燃焼を促進することを特徴とする、廃油脂類の焼却装置。
【請求項2】
搬入されたドラム缶を焼却炉の内部に向けて下向きに倒伏して流出した内容物及び缶内の内容物を焼却するドラム缶焼却装置を備えた廃油脂類の焼却装置において、ドラム缶焼却装置で倒伏したドラム缶から内容物が落下してくる部分の炉床は、中央部が若干低くなるように両側部を傾斜させた浅い樋状の炉床であり、この樋状の炉床の樋の延在方向と直交する方向に短ストロークで往復動して当該炉床部分に落下した前記内容物を撹拌すると共に長ストロークで移動して当該炉床上の灰を炉床外に排出する撹拌板を備え、前記内容物の燃焼中にこの撹拌板を短ストロークで往復動して燃焼中の前記内容物の燃焼を促進すると共に、前記内容物の燃焼終了時に炉床上を長ストロークで移動して当該炉床上の灰を排出することを特徴とする、廃油脂類の焼却装置。
【請求項3】
ドラム缶焼却装置が炉壁部分に設けられ、当該ドラム缶焼却装置と対向する炉壁に、当該ドラム缶焼却装置に搬入されて前記倒伏されたドラム缶から内容物が落下する部分の炉床に向けて燃焼バーナが設けられている、請求項1又は2記載の焼却装置。
【請求項4】
ドラム缶焼却装置が焼却炉内の燃焼ガスの流れの最上流側の領域に配置され、当該領域とそれより前記流れの下流側の炉内とを遮断する開閉自在な遮蔽扉を備えている、請求項1又は2記載の焼却装置。
【請求項5】
焼却炉内の燃焼ガスの流れの上流側に設けた前記ドラム缶焼却装置と、当該流れの下流側に設けた火格子と、当該流れの更に下流側の二次燃焼室の直下の位置に設けた上部ドラム缶焼却装置とを備えている、請求項1又は2記載の焼却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252660(P2011−252660A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126840(P2010−126840)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(392019857)株式会社アクトリー (27)
【Fターム(参考)】