説明

廃液流路洗浄機構、液体噴射装置および廃液流路洗浄方法

【課題】本発明は、液体噴射装置において、廃液流路を洗浄し、メンテナンス動作と洗浄動作を同時にまたは順序的に行うことができる廃液流路洗浄機構および洗浄方法を提供する。
【解決手段】本発明の廃液流路洗浄機構は、液体噴射ヘッドから排出される廃液を受ける廃液受け部と、一端が上記廃液受け部に接続され、当該廃液受け部が受けた廃液を廃液受け部外に排出する廃液流路と、上記廃液流路に設けられて当該廃液流路での液体の流れを制御する廃液制御ユニットと、上記廃液受け部と上記廃液制御ユニットとの間における廃液流路に接続され、当該廃液流路に洗浄液を供給する洗浄液流路と、上記洗浄液流路に設けられて当該洗浄液流路での洗浄液の流れを制御する洗浄液制御ユニットと、上記廃液制御ユニットおよび上記洗浄液制御ユニットをそれぞれ独立して制御するコントローラと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液流路洗浄機構および廃液流路洗浄方法、上記廃液流路洗浄機構を備えた液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の液体噴射塗布装置の電子分野への応用展開に従って、塗布装置に用いられるインクなどの液体には、顔料のほか、銀などの金属、ガラス、樹脂をはじめとして多種多様な機能性材料が含まれている。またこのような機能性材料を液体中に効果的に分散させるため、種々の有機溶剤を含んだ液体を使用している。
【0003】
このような液体には、エタノールなど乾燥しやすい有機溶剤を用いたもの、および銀など一度固化すると再溶解させることが困難なものもある。
【0004】
液晶または半導体製造用途で使用される機能性材料をワークに対して塗布するインクジェット装置を例として説明すると、インクジェットヘッドのノズル部分において、機能性材料が固化すると吐出口が塞がれてしまうため、吐出不能になるといった不具合が生じる。このため、定期的にインクジェットヘッドからインクを強制排出させる強制排出動作または未使用時にはノズル部分の固化が促進しないようにノズル部分の湿潤状態を保持するキャッピング動作といったメンテナンス動作を行っている。
【0005】
従来技術には、洗浄液を用いてインクジェットヘッドのノズル部分およびキャップ部の内部でのインクの固化を防止する構成が開示されている。例えば、特許文献1では、ヘッドキャッピング動作時の保湿力を高める目的で、キャップ部に当接させた洗浄液の供給体からポンプで洗浄液を吸引してキャップ部の内部に洗浄液を溜める。キャップ部の内部に供給された洗浄液は、キャップ部の内壁およびふちに付着している廃インクを再分散させることで、キャップ部の内壁にてインクが固化するのを防止することができる。また、特許文献2では、ヘッドをキャップ部に密着させた状態で、キャップ部に連通されている洗浄液タンクから洗浄液をキャップ部の内部に充満させてヘッドのノズル部分を洗浄している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−226719号公報(2009年10月8日公開)
【特許文献2】特開2000−62213号公報(2000年2月29日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献の構成において、キャップ部の内部に溜めた洗浄液が、キャップ部から廃インクタンクまでの廃インク流路を通って廃インクタンクに廃液されるため、キャップ部の内部のインクを含む洗浄液は廃インク流路にも流れる。つまり、廃インク流路にはインクを含む洗浄液が通り、さらに、通常、廃インク流路に洗浄液が流れるのは、キャッピング動作終了時等のある程度の時間が経過した後なので、乾燥・固化しやすいインクでは、この廃インク流路に機能性材料が固着してしまうことも懸念される。
【0008】
また、廃インクを廃インクタンクに排出するために、廃インク機構として、廃インク流路に電磁バルブ等の流路開閉手段および吸引ポンプ等の廃インク吸引手段を設けることが多い。このため、これらの手段にインクジェットヘッドから排出されたインクが固着すると、流路開閉動作および該廃液吸引動作が所望した通りに実行することができなくなり、インクジェットヘッドからインクを排出するといったインクジェットヘッドを良好な状態に保とうとするメンテナンス動作が行えない。したがって、ノズル部分への固形成分の固着などが促進され、ノズル詰まりによる吐出不良を引き起こす原因となってしまう。
【0009】
また、キャップ部の内部にはインクを保持する吸収体が置かれていることが多く、多分に固形成分を含んだインクが残っており、キャップ部の内部に供給した洗浄液は、この残ったインクを含んで廃インク流路に流れていく。このため、洗浄液だけでなく多分に固形成分を含んだインクも排出されることからも高い廃インク固着防止効果は望めなかった。
【0010】
さらに従来技術では、洗浄液が外部に開口したキャップで外気に晒されるため、洗浄液が外部に蒸発していくことも懸念される。一般に生産用途で使用される洗浄液は洗浄効果を高めるため有機溶剤を使用していることが多く、外部に蒸発すると、作業者が吸い込む危険性があり、人体への悪影響が危惧される。
【0011】
ここで、一旦固形成分がキャップ部などのメンテナンスユニットの各部に固着してしまったことを考えると、キャップ部の枠体等であれば、外部に晒され手が届く箇所なので、手動で清掃するなどが可能であるが、廃インク機構については、流路や機器の解体が必要になり、実質清掃作業は不可能である。
【0012】
また、メンテナンスユニットにはキャップ部だけでなく、インクジェットヘッドから吐出されたインクの吐出状態を確認する時に用いられる吐出インク受け部、インクジェットヘッドのノズル部をゴムブレードによって払拭清掃するワイピング部等もあり、これらの廃インク機構が詰まると、廃インクが排出できないことによる不具合が生じる。しかし、従来技術にはこれらの廃インク機構および廃インク流路の固着防止については何ら開示されていない。
【0013】
そこで、本発明は、キャップ部などの廃液受け部だけではなく、廃液流路および廃液流路に介在する部材に対しても、洗浄液により洗浄が可能で廃液固着を防止できる、液体噴射装置の廃液流路洗浄機構および廃液流路の洗浄方法を提供し、並びに廃液固化に起因する故障頻度を低減可能な信頼性の高い廃液流路洗浄機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る廃液流路洗浄機構は、液体噴射ヘッドから排出される廃液を受ける廃液受け部と、一端が上記廃液受け部に接続され、当該廃液受け部が受けた廃液を廃液受け部外に排出する廃液流路と、上記廃液流路に設けられて当該廃液流路での液体の流れを制御する廃液制御ユニットと、上記廃液受け部と上記廃液制御ユニットとの間における廃液流路に接続され、当該廃液流路に洗浄液を供給する洗浄液流路と、上記洗浄液流路に設けられて当該洗浄液流路での洗浄液の流れを制御する洗浄液制御ユニットと、上記廃液制御ユニットおよび上記洗浄液制御ユニットをそれぞれ独立して制御するコントローラと、を備えている。
【0015】
また、上記廃液流路洗浄機構において、上記液体噴射ヘッドがインクジェットヘッドであり、上記廃液が廃インクであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記廃液流路洗浄機構を備えた液体噴射装置も提供する。
【0017】
ここで、本発明に言及する液体とは、様々な機能性材料などを含んだもので、乾燥するとその中の機能性材料が固化しやすいものを指す。例えば、インク、液晶材料、接着剤、配線用の銀ペーストなどがある。このような液体が通過した箇所で、液体中の機能性材料が固化して付着するのを防止する目的で、上記廃液流路洗浄機構が使われる。また、上記インクの種類は特に限定されず、顔料を含むインク(印刷用インク)、半導体材料を含むインク(半導体製造用インク)、銀などの金属を含むインク、ガラスを含むインク、樹脂を含むインク等が例示される。
【0018】
上記構成によれば、廃液受け部に接続されて当該廃液受け部の廃液を排出する廃液流路に対して、清浄な洗浄液を直接供給して洗浄できる。また、廃液流路に対する洗浄動作を必要によって別個に制御することが可能である。このため、特殊な液体などを用いた場合であっても、廃液流路での液体中の機能性材料の固着による詰まりを防ぐことができる。また、清掃が非常に不便な廃液流路の廃液固着を抑止できるので、固着発生による装置の停止時間を大幅に削減することができ、装置の効率的稼動が実現できる。
【0019】
また、上記廃液流路洗浄機構において、上記廃液制御ユニットは、廃液吸引ポンプを備えており、上記洗浄液制御ユニットは、洗浄液供給ポンプを備えており、上記コントローラは、上記廃液流路を洗浄する際に、上記廃液吸引ポンプの単位時間流量が上記洗浄液供給ポンプの単位時間流量より大きくなるように制御を行うことが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、廃液受け部内の廃液を廃液吸引ポンプで吸引することで、廃液をより効率的に廃液受け部から排出することができる。また、洗浄液供給ポンプで洗浄液を廃液流路に供給するので、供給量または供給時間をより簡単に制御することができる。特に、コントローラによって、廃液流路を洗浄する際に、廃液吸引ポンプの単位時間流量が液送ポンプの単位時間流量より大きくなるように制御を行う結果、廃液吸引ポンプによる吸引量が洗浄液の供給量より多くなるので、装置全体の漏液を防止できる。特に限定されないが、メンテナンス動作と洗浄動作を同時に行うとき等に効果的である。
【0021】
また、上記廃液流路洗浄機構において、上記廃液受け部が、液体噴射ヘッドから吐出される液体を受けるものであることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、液体噴射ヘッドから液体を強制的に排出する場合に限らず、液体噴射ヘッド自身の動作により液体を吐出する場合においても廃液流路の洗浄が可能である。よって、廃液流路の廃液固化による詰まりを未然に防ぎ、液体噴射ヘッドの良好な状態を保つことができる。
【0023】
上記目的を達成するために、本発明に係る上記廃液流路洗浄機構における廃液流路洗浄方法であって、廃液制御ユニットにより廃液を廃液受け部から排出する最中または排出した後に、洗浄液制御ユニットにより廃液流路に洗浄液を供給して、廃液流路および廃液制御ユニットを洗浄するように、コントローラが上記廃液制御ユニットおよび洗浄液制御ユニットの動作を制御することを特徴とする。
【0024】
上記方法によれば、廃液受け部に接続されて当該廃液受け部の廃液を排出する廃液流路に対して、清浄な洗浄液を直接供給して洗浄できる。また、廃液流路に対する洗浄動作を必要によって別個に制御することが可能である。このため、特殊な液体などを用いた場合であっても、廃液流路での液体中の機能性材料の固着による詰まりを防ぐことができる。また、清掃が非常に不便な廃液流路の廃液固着を抑止できるので、固着発生による装置の停止時間を大幅に削減することができ、装置の効率的稼動が実現できる。
【0025】
また、上記廃液流路洗浄方法において、上記廃液制御ユニットは、廃液吸引ポンプを備えており、上記洗浄液制御ユニットは、洗浄液供給ポンプを備えており、上記廃液制御ユニットと上記洗浄液制御ユニットとを同時に動作させる場合、上記廃液吸引ポンプの単位時間流量が上記洗浄液供給ポンプの単位時間流量より大きくなるように、上記コントローラが当該廃液吸引ポンプおよび洗浄液供給ポンプの動作を制御することが好ましい。
【0026】
上記方法によれば、特に、メンテナンス動作と洗浄動作を同時に行うとき、廃液吸引ポンプによる吸引量が洗浄液の供給量より多くなるので、装置全体の漏液を防止できる。
【0027】
また、上記廃液流路洗浄方法において、上記洗浄液制御ユニットは廃液吸引ポンプおよび電磁バルブを備え、上記電磁バルブを閉じた状態で、上記洗浄液制御ユニットにより洗浄液を廃液流路に供給して当該洗浄液を廃液流路内に溜め、その後上記電磁バルブを開いて、廃液流路内に溜まった上記洗浄液を排出するように、上記コントローラが廃液制御ユニットおよび洗浄液制御ユニットの動作を制御することが好ましい。
【0028】
上記方法によれば、洗浄液を洗浄液流路の上流側に一時的に溜めることができて、廃液受け部などを含む洗浄液流路の上流側の洗浄も行うことができる。さらに、洗浄液を一時的に溜めることで、付着された廃液の再溶解性が高くなり、洗浄効果がより高くなる。
【0029】
また、上記廃液流路洗浄方法において、上記廃液制御ユニットは廃液吸引ポンプを備え、上記廃液吸引ポンプを用いて液体噴射ヘッドから廃液受け部に対して廃液を排出する最中に、上記洗浄液を上記廃液流路に間欠的に供給するように、上記コントローラが廃液制御ユニットおよび洗浄液制御ユニットの動作を制御することが好ましい。
【0030】
上記方法によれば、洗浄液を間欠的に供給することができるので、洗浄効果を保ちつつ洗浄液の使用量を削減することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、廃液受け部に接続されて当該廃液受け部の廃液を排出する廃液流路に対して、清浄な洗浄液を直接供給して洗浄できる。また、廃液流路に対する洗浄動作を必要によって別個に制御することが可能である。このため、特殊な液体などを用いた場合であっても、廃液流路での液体中の機能性材料の固着による詰まりを防ぐことができる。また、清掃が非常に不便な廃液流路の廃液固着を抑止できるので、固着発生による装置の停止時間を大幅に削減することができ、装置の効率的稼動が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態にかかる廃インク流路洗浄機構の構成例を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す廃インク流路洗浄機構による洗浄方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1に示す廃インク流路洗浄機構による洗浄方法の他の一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示す廃インク流路洗浄機構による洗浄方法のさらに他の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態にかかる廃インク流路洗浄機構の他の構成例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる廃インク流路洗浄機構のさらに他の構成例を模式的に示す図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる廃インク流路洗浄機構の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。もちろん、本発明はこれに限定されるものではなく、この実施形態に記載されている構成機構の形状、その相対配置などは、特に限定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、本発明の各実施形態において、同じ構成を有するものに対しては、同じ名称かつ同じ符号を付けて説明する。
【0034】
また、本発明の実施形態置では、液体噴射装置の一例として、インクを噴射して対象物に塗布するインクジェット装置を説明する。
【0035】
〔第1の実施形態:廃インク流路洗浄機構の第1の構成例〕
図1はインクジェット装置の廃インク流路洗浄機構1(廃液流路洗浄機構)の構成を示したブロック図である。図1において、実線で示した部分が本発明の廃インク流路洗浄機構1となる。
【0036】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るインクジェット装置の廃インク流路洗浄機構1は、廃インク受け部(廃液受け部)4と、廃インクタンク(廃液収容部)5と、廃インク流路(廃液流路)6と、廃インク電磁バルブ(廃液制御ユニット)7と、廃インク吸引ポンプ(廃液吸引ポンプ、廃液制御ユニット)8と、洗浄液タンク(洗浄液収容部)9と、洗浄液電磁バルブ(洗浄液制御ユニット)10と、洗浄液供給ポンプ(洗浄液制御ユニット)11と、洗浄液流路12とを備える。さらに、廃インク流路洗浄機構1は、廃インク電磁バルブ7と、廃インク吸引ポンプ8と、洗浄液電磁バルブ10と、洗浄液供給ポンプ11とをそれぞれ独立して制御可能なコントローラ(制御部)18とを備える。
【0037】
廃インク受け部4は、インクジェット装置のインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)2のノズル3から排出される廃インクを一時的に溜めるものである。例えば、廃インク受け部4として、インクジェットヘッド2のノズル3を密閉保湿する機能も備えたキャップ部を用いることができる。この場合、廃インク受け部4はインクジェットヘッド2のメンテナンス動作を実施する際にノズル3と対向して廃インクを受ける。
【0038】
ここで、「排出」とは、対象物にインクの塗布を行うためにインクジェットヘッド2自身の動作によりノズル3からインクを「吐出(予備吐出も含む)」する状態、および、メンテナンス等を行うためにインクジェットヘッド2のノズル3から強制的にインクを吸引又は押出しする状態、の双方を指す。
【0039】
廃インクタンク5は、廃インク受け部4に溜められた廃インクおよび洗浄廃液を回収して収容するものである。ここで洗浄廃液とは、上記のように、洗浄液を用いて廃インク流路または廃インク受け部4を洗浄した後の廃液を指す。
【0040】
廃インク流路6は、廃インク受け部4と廃インクタンク5とをつなぐ、チューブや配管継手等で構成されたもので、本実施形態において、廃インク流路6は、一端が廃インク受け部4の底部に接続され、他端が廃インクタンク5に挿入されている。また、廃インク流路6を経由して、廃インク受け部4からの廃インクだけではなく、洗浄液タンク9からの洗浄液も廃インクタンク5に回収される。
【0041】
廃インク電磁バルブ7は、廃インク流路6上に配置され、すなわち、廃インク受け部4と廃インクタンク5との間に配置されて、廃インク流路6での廃インクまたは洗浄廃液の流れの可否または流量を制御するものである。
【0042】
廃インク吸引ポンプ8は、廃インク流路6上に配置され、本実施形態では廃インク電磁バルブ7と廃インクタンク5との間に配置されて廃インクまたは洗浄廃液を強制的に吸引して廃インクタンク5へ回収する廃液吸引装置である。本実施形態において、廃インク受け部4の底部における廃インク流路6との接続部分が、廃インク吸引ポンプ8にて廃インク受け部中の廃インクを吸引するために用いられる吸引口となっている。
【0043】
また、廃インク吸引ポンプ8の回転速度などを制御することで、廃インク流路6での廃インクまたは洗浄廃液の流量を調整することができる。なお、廃インク吸引ポンプ8を、廃インクの流れ方向に対して廃インク電磁バルブ7の上流に設置してもよい。
【0044】
洗浄液タンク9は、洗浄液を収容するもので、チューブや配管継手等で構成された洗浄液流路12を介して廃インク流路6に接続される。本実施の形態において、洗浄液流路12は、廃インク受け部4と廃インク電磁バルブ7との間の廃インク流路6に接続されている。また、洗浄液電磁バルブ10は、洗浄液流路12での洗浄液の流れの可否または洗浄液の供給量を制御するものである。洗浄液供給ポンプ11は、洗浄液タンク9から廃インク流路6内に洗浄液を強制的に供給するための洗浄液供給装置である。洗浄液供給ポンプ11の回転速度などを制御することで、洗浄液の供給量を調整することができる。本実施形態において、洗浄液流路12において、洗浄液電磁バルブ10に対し、洗浄液供給ポンプ11は、洗浄液流れ方向の上流側に設置されている。もちろん、両者の設置順位を逆に変更してもよい。
【0045】
本発明の廃インク流路洗浄機構1によれば、コントローラ18の制御により、インクジェットヘッドのメンテナンス動作および廃インク受け部4、廃インク流路6および廃インク流路6中に配された各種部材(具体的には、廃インク電磁バルブ7および廃インク吸引ポンプ8、および廃インク受け部4等)に対する洗浄動作を同時にまたは個別に行うことが可能である。
【0046】
(メンテナンスモード)
インクジェットヘッドのメンテナンスは、インクジェットヘッド2内部およびノズル3の吐出口付近を新鮮なインクでリフレッシュさせ、インクジェットヘッド2の継続使用による微小ダストや増粘インクを排出し、良好なインク吐出を持続させるための操作である。メンテナンス動作は、ノズル3に供給されているインクを加圧するか、あるいは、ノズル3と廃インク受け部4とを密着させた状態で強制的にインクジェットヘッド2内のインクをノズル3から排出させることなどで実現できる。
【0047】
例えば、ノズル3と廃インク受け部4とを密着させた状態で、廃インク電磁バルブ7を開き、廃インク吸引ポンプ8を駆動すると、廃インク吸引ポンプ8の吸引力によりインクジェットヘッド2内のインクが強制的に吸引され、ノズル3および廃インク流路6を経由して廃インクタンク5へ回収される。メンテナンス時の廃インクは、図1の点線矢印が示すルートbに従って流れる。
【0048】
(洗浄モード)
上記メンテナンス動作を行った場合、廃インク受け部4、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8には、廃インクが付着することになる。廃液受け部4には、ある程度まとまった量の廃インクが溜まることになるので、乾燥が進むことによる固着の心配は少ないし、外部からのアクセスが容易なため、一定間隔で作業者が清掃することも可能である。ところが、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8については、作業者による清掃は機構そのものを解体する必要があり容易ではない。
【0049】
また、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8に付着する廃インクが固着してしまうと、上述したようなインクジェットヘッド2のメンテナンス動作が正常に行われず、インクが対象物の狙った位置に吐出できない、あるいは吐出そのものが不可能になるといった不具合が生じてしまう。
【0050】
そこで、メンテナンス動作を行った後あるいは同時に、洗浄液タンク9に収容された洗浄液で、廃インクが経由した上記部材および廃インク流路6を洗浄することが好ましい。以下、図2、3を参照して、図1における廃インク流路洗浄機構の洗浄動作の各モードに関するフローについて説明する。なお、各モードでの、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8、洗浄液電磁バルブ10、および洗浄液供給ポンプ11の動作制御はコントローラ18によって実行される。
【0051】
(第1の洗浄モード)
図2を参照し、メンテナンス動作と同時またはその後に洗浄動作を行う場合を説明する。
【0052】
まず、メンテナンス動作として、廃インク電磁バルブ7を開き(図2のステップS1)、廃インク吸引ポンプ8を駆動する(図2のステップS2)。このとき、廃インク受け部4の廃インクは、廃インク吸引ポンプ8の吸引力により、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7および廃インク吸引ポンプ8を経由して廃インクタンク5に排出される。
【0053】
次に、洗浄動作として、洗浄液電磁バルブ10を開き(図2のステップS3)、洗浄液供給ポンプ11を駆動して(図2のステップS4)、洗浄液流路12を経由して、廃インク流路6に洗浄液を供給する。そして、洗浄液は、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7および廃インク吸引ポンプ8に流されて、これらに付着した廃インクを溶解して洗浄する(図2のステップS5)。このとき、洗浄廃液は、廃インク吸引ポンプ8の吸引力により、廃インクタンク5に回収される。この洗浄モードにおいて、洗浄液は、図1の二点鎖線矢印で示すルートa→a1に従って流す。
【0054】
そして、所定時間の洗浄を行った後、洗浄液供給ポンプ11を停止し(図2のステップS6)、洗浄液電磁バルブ10を閉じ(図2のステップS7)、洗浄液の供給を停止する。そして、廃インク吸引ポンプ8を停止し(図2のステップS8)、廃インク電磁バルブ7を閉じる(図2のステップS9)ことで洗浄動作を完了する。
【0055】
このように、洗浄液は廃インクが付着した箇所を通っていくので、同時に各部材に付着した廃インクを廃インクタンク5へ排出することができ、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8の廃インク固着による不具合を防止することができる。
【0056】
(第2の洗浄モード)
以下、図3を参照して、廃インク受け部4の内部も洗浄できるモードについて説明する。
【0057】
まず、上記のように、メンテナンス動作として、廃インク電磁バルブ7を開き(図3のステップS11)、廃インク吸引ポンプ8を駆動する(図3のステップS12)。このとき、廃インク受け部4の廃インクは、廃インク吸引ポンプ8の吸引力により、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7および廃インク吸引ポンプ8を経由して廃インクタンク5に排出される。
【0058】
次に、洗浄動作として、廃インク吸引ポンプ8を停止し(図3のステップS13)、廃インク電磁バルブ7を閉じてから(図3のステップS14)、洗浄液電磁バルブ10を開き(図3のステップS15)、洗浄液供給ポンプ11を駆動する(図3のステップS16)。こうすることで、余分な廃インクが付着した廃インク受け部4には、洗浄液タンク9から供給された洗浄液が溜められる(図3のステップS17)。すなわち、廃インク流路6および廃インク受け部4の容積、並びに単位時間あたりの洗浄液の供給量からステップS17で洗浄液を貯める時間を設定しておき、その時間経過を待つ。
【0059】
ここで、上記ステップS11,S12を経て廃インク受け部4の廃インクを廃インクタンク5に排出するステップは略してもよい。つまり、上記ステップS13,14により、廃インク電磁バルブ7が廃インク流路6を閉鎖した状態で、洗浄液電磁バルブ10を開き、洗浄液供給ポンプ11を駆動して、メンテナンス動作による廃インクが貯留された廃インク受け部4に直接洗浄液を供給してもよい。
【0060】
そして、廃インク受け部4に所定量(所定時間)の洗浄液が溜められた後、洗浄液供給ポンプ11の駆動を停止し(図3のステップS18)、洗浄液電磁バルブ10を閉じて(図3のステップS19)、洗浄液の供給を停止する。
【0061】
その後、廃インク電磁バルブ7を再び開き(図3のステップS20)、廃インク吸引ポンプ8を再駆動する(図3のステップS21)。これにより、廃インクを溶解した後の洗浄廃液は、廃液受け部4から廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8を流し、これらに付着した廃インクを溶解し、廃インク吸引ポンプ8の吸引力により廃インクタンク5に回収される(図3のステップS22)。この回収における廃インク吸引ポンプ8の駆動時間は、例えば、廃インク流路6の長さから決定すればよく、ステップS22の待ち時間となる。
【0062】
そして、洗浄を行った後、廃インク吸引ポンプ8を停止し(図3のステップS23)、廃インク電磁バルブ7を閉じる(図3のステップS24)ことで洗浄動作を完了する。
【0063】
この洗浄モードにおいて、洗浄液は、図1の二点鎖線矢印と点線矢印で示すルートa→a2→bに従って流す。
【0064】
このように、洗浄液は廃インクが付着した箇所を通っていくので、同時に各部材に付着した廃インクを溶解して廃インクタンク5へ排出することができ、廃インク受け部4、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8の廃インク固着による不具合を防止することができる。
【0065】
この洗浄モードによれば、洗浄液流路12が廃インク流路6に接続されている箇所より上流側に対しても洗浄液による洗浄を行うことができるし、一定時間洗浄液が貯められることになるので、付着したインクを再溶解して排出することも可能である。さらに、インクジェットヘッド2のメンテナンスタイミングと合わせる必要は無く、例えば装置の稼動を一定期間停止する際に行えばよく、停止中における廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8の付着インクによる固着を防止することができる。
【0066】
なお、上記各動作のモードにおいて、説明したようなシリアル的な処理ではなく、例えば廃インク電磁バルブ7と洗浄液電磁バルブ10とを同時に開閉するなど並列処理を行ってもよい。
【0067】
また、廃インク吸引ポンプ8は、ノズル3から確実にインクを排出するために、大流量のものを用いるもしくは大流量駆動することが望ましく、洗浄液供給ポンプ11は、洗浄液の流しすぎによる廃インク受け部4からの溢れの懸念をより確実に軽減するために、廃インク吸引ポンプ8に比べて、小流量のものを用いるもしくは小流量駆動することが望ましい。
【0068】
ここで、第1の洗浄モードで廃インク流路6に直接洗浄液を供給する場合は、第2の洗浄モードで廃インク受け部4に洗浄液を供給する場合に比べて、廃インク受け部4に残った廃インクが一緒に排出されてしまうことにより、洗浄液に廃インクが混ざり洗浄効果が薄れる虞が軽減できる。さらに、第2の洗浄モードと比較して第1の洗浄モードの場合は、外気に晒されている廃インク受け部4に洗浄液を供給しないため、洗浄液が有機溶剤である場合でも、有毒成分が外部に蒸発してしまう危険性がより少なく、人体や周囲環境へ悪影響を与える虞もより少ないという利点もある。
【0069】
(第3の洗浄モード)
また、乾燥・固化しやすいインクに対しては、洗浄動作は、特にインクジェットヘッド2のメンテナンス直後、メンテナンス動作中またはインク吐出動作中に行うことで特に効果的である。
【0070】
例えば、図4は、ミストインクなどの乾燥が促進されないように、インク吐出動作または廃インク吸引動作中に洗浄を行うモードを示すフローチャートである。ここで言うインク吐出動作とは、対象物への吐出と同様にインクジェットヘッド自身の能動的な動作によって吐出を行う動作であり、インクジェットヘッドのノズルを良好な常態に保つための保全吐出動作を指す。図2に示す、メンテナンス動作の直後または同時に洗浄を行うモードとほぼ同じであるので、同様のステップについては、同じ符号を付与し説明は省略する。
【0071】
簡単に言うと、図4に示すように、インク吐出動作を開始する前にまずステップS1,S2を行って、洗浄準備をする。その後、インクの吐出を開始し(図4のステップS21)、同時にステップS3,S4を行って洗浄液を供給して、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ7、廃インク吸引ポンプ8の洗浄を行う。これにより、これら箇所でのインクの固着を防止する。所定回数の吐出を終了したらステップS22で吐出を終了したのち、洗浄液の供給、ならびに廃インクの吸引を停止して動作を終了する。これにより、インク固着が生じやすい吐出動作中の廃インク吸引動作においても洗浄液による洗浄を行うことができ、流路へのインク固着を防止することができる。
【0072】
このように、洗浄液電磁バルブ10を開き(ステップS3またはS15)、洗浄液供給ポンプ11を駆動する(ステップS4またはS16)制御は、廃インクの吸引動作とは独立して行うことができるので、図2、図3のフローに拘らず任意に行うことができる。例えば洗浄液の供給を間欠的に行えば、洗浄液の使用量を抑制しながら廃インク流路の洗浄を行うことができる。
【0073】
保全吐出動作はインクジェットヘッドから吸引力によってインクを強制的に排出させる動作に比べてインクの使用量が極端に少ない。例えば強制的な排出動作では1回当たり1〜3cc程度のインクが流れるが、保全吐出動作はたかだか0.05cc前後である。したがって、強制的な排出動作だとインク量が多いためその自重によって廃インク流路を流れていくことも可能だが、保全吐出動作ではインク量が少ないため吐出されたインクがそのまま廃インク流路に付着してしまうことが起こる。本洗浄モードによれば、このような場合でも廃インク流路に廃インクを確実に洗浄することができる。
【0074】
このように、本発明の廃インク流路洗浄機構を用いて、適宜洗浄液の供給/停止、廃液の回収/停止および待ち時間を設定して制御することで、効果的な洗浄が可能となる。図2〜4で示した洗浄方法は特に効果が得られる方法であるが、これらの方法だけに留まらず、廃インク機構を用いて種々の洗浄方法を行うことができる。
【0075】
〔第2の実施形態:廃インク流路洗浄機構の第2の構成例〕
以上では、一つのメンテナンスユニットに対して洗浄を行う、本発明の廃インク流路洗浄機構の構成例を説明した。但し、上記のように、インクジェットヘッドのメンテナンスユニットとして、インクジェットヘッド2に密着してノズル3を保湿保管するキャップ部、ノズル3に対して接触しながら相対移動することでノズル3を払拭清掃するワイピング部、インクジェットヘッド2のノズル3から予備吐出されたインクを受ける吐出受け部などがある。
【0076】
ここで、インクジェットヘッド2を保湿保管する際には、ノズル3から排出させたインクを廃インク受け部4に溜めておき、キャップ内部の湿潤状態を保つようにする。また、ノズル3を払拭清掃する際には、ワイピング部をノズル3に対して接触しながら相対移動することでゴームブレードなどのワイピング部材でノズル3に付着されたインクを拭き取る。また、予備吐出とは、インクを塗布しようとする対象物とは異なる試験物に対して、インクの吐出処理をする前に予め吐出状態を確認するため、又はノズル3近傍のインクの状態を整えるために行う試験物に対するインク吐出であり、吐出状態の確認のためには、図示しないカメラや検知センサーが配備される。
【0077】
通常、インクジェットヘッド2に対しては、上記メンテナンスユニットを全部設置して、必要に応じてそれぞれ異なるメンテナンス動作を行う。そこで、図5では、キャップ部41(廃インク受け部)、ワイピング部42(廃インク受け部)、吐出受け部43(廃インク受け部)を設置し、それぞれに本発明の廃インク流路洗浄機構1’を接続した構成を用いている。キャップ部41と吐出受け部43は特に専用のものである必要はなく、例えばキャップ部41で予備吐出を行っていても良い。なお、図5においても、実線で示した部分が本発明の廃インク流路洗浄機構1’となる。
【0078】
なお、各メンテナンスユニットでメンテナンスする際には、各部とインクジェットヘッド2が対向するよう、図示しない自動ステージ等で相対的に移動させればよい。
【0079】
図5に示すように、キャップ部41、ワイピング部42、吐出受け部43には、それぞれ廃インク電磁バルブ71、72、73が備えられており、これら廃インク電磁バルブ71、72、73は廃インク流路6を通じて廃インク吸引ポンプ8を経由して廃インクタンク5に接続されている。また廃インク流路6には洗浄液流路12が配管されており、それぞれ洗浄液電磁弁101、102、103と洗浄液供給ポンプ11を通じて洗浄液タンク9に繋がっている。つまり、図5では、廃インク流路洗浄機構を、インクジェットヘッド2のメンテナンスを行う各ユニットに搭載した例を示している。また、図面には示していないが、上記のような各メンテナンスユニットに搭載された廃インク流路洗浄機構のそれぞれは、コントローラにて個別に制御できる。
【0080】
すなわち、図5に示す構成では、キャップ部41用、ワイピング部42用、又は吐出受け部43用の廃インク流路制御機構を個別に見た場合、その構成および配置は図1に示すものと実質的な相違はない。ただし、キャップ部41、ワイピング部42、および吐出受け部43に対して共通(一つ)の廃インク吸引ポンプ8および廃インクタンク5を備え、各部からの洗浄廃液が、廃インク電磁バルブ71と廃インク吸引ポンプ8との間における廃インク流路6において合流するように構成される。
【0081】
各メンテナンスユニットでインクジェットヘッド2のメンテナンスを行う際に、廃インク流路6に洗浄液を供給することで各部材に付着した廃インクを廃インクタンク5へ排出することができ、廃インク流路6、廃インク電磁バルブ71、72、73、廃インク吸引ポンプ8の廃インク固着による不具合を防止することができる。
【0082】
〔第3の実施形態:廃インク流路洗浄機構の第3の構成例〕
図6はインクジェットヘッドに適用される廃インク流路洗浄機構の他の構成例を示した図である。図6において、実線で示した部分が本発明の廃インク流路洗浄機構1”となる。
【0083】
図6に示す構成において、インクタンク13からインク流路14を通じて供給されるインクを、インク供給ポート15を介してインクジェットヘッド2の内部に溜める。また、廃インク流路洗浄機構1”は、インクジェットヘッド2の内部のインクを、ノズル3を介さず、廃インクポート16から排出させる構成を有している。すなわち、廃インクポート16は、インクジェットヘッド2のノズル3が設置される部分以外の位置に設けられ、廃インク電磁バルブ74、廃インク吸引ポンプ8を介在させた廃インク流路6によって廃インクタンク5に繋がっている。したがって、本実施形態において、インクジェットヘッド2での廃インクポート16の接続部分が、廃インク吸引ポンプ8にて廃インク受け部中の廃インクを吸引するために用いられる吸引口となっている。
【0084】
インクジェットヘッド2内のインクは、廃インクポート16から排出され、廃インク流路6および廃インク流路6上に設けられた廃インク電磁バルブ74、廃インク吸引ポンプ8を経由して廃インクタンク5に回収される。廃インクポート16からインク排出を行う際に、廃インク流路6に洗浄液を供給することで各部材に付着した廃インクを廃インクタンク5へ排出することができ、廃インク流路6、廃インク吸引ポンプ8の廃インク固着による不具合を防止することができる。
【0085】
ノズル3を介さず廃インクポート16からインクを排出する上記構成は、例えば交換等でインクジェットヘッド2内のインクを抜く場合、およびインクジェットヘッド2内に混入しているダストを排出する目的で廃インクポート16からインクを排出する場合等に適用される。
【0086】
ここで、洗浄液流路12は、廃インク吸引ポンプ8と廃インク電磁バルブ74との間の廃インク流路6に配管させているが、これは、廃インク電磁バルブ74でインクジェットヘッド2と洗浄液流路12とを遮断するためである。つまり、廃インク電磁バルブ74から廃インクポート16側の流路はインクジェットヘッド2内部と連通しており、常時インクで満たされているため廃インクの乾燥、固化の心配はなく、廃インク流路6および廃インク吸引ポンプ8への付着インクの洗浄ができればよい。
【0087】
(廃インク流路洗浄機構の効果)
以下、図7を参照しながら、上記実施形態に係る廃インク流路洗浄機構の効果を説明する。ここでは、特に効果が大きい吐出受け部43に対してインクジェットヘッド2のノズル3からインクを吐出した場合について説明する。吐出されたインクは、一滴が数ピコリットルと微量であるため、吐出受け部43に到達するまでにミスト状になって舞い上がってしまう。このインクミストはノズル3に付着することもあり、そのままにしておくとノズル3で乾燥し固着してしまうこともある。
【0088】
そこで、インク吐出動作中には、廃液回収と吐出インクを舞い上がらせないこととを目的として、廃インク電磁バルブ7を開き、ならびに廃インク吸引ポンプ8を駆動する吸引動作を行いながらインク吐出することが有効である。
【0089】
ここで、従来のインク吐出動作中の廃インク流路6’の様子を模式的に示すと図4(a)のようである。吐出されたミスト状のインクは廃インク流路6’の内壁、廃インク電磁バルブ7’の接液部や廃インク吸引ポンプ8’の接液部に付着しながら廃インクタンク5’へ流れていく。インク吐出動作中は、吸引する廃インク量に比べて、吸引動作によって同時に吸引されるエア量が大きい。そのため、吸引動作そのものが内壁や接液部に付着したミストインクの乾燥を促進させてしまい、これが繰り返されることで大きな付着インク17’になってしまう。
【0090】
噛み砕いて説明すると、接着剤を被接着物に塗布したあと、息を吹きかけて乾燥(密着)を促進させるようなことが起こっている。この付着インク17’が上記内壁や上記接液部でさらに乾燥して固着してしまうことによる不具合については上述の通りである。特に廃インク電磁バルブ7’、廃インク吸引ポンプ8’の接液部はバルブ開閉部やポンプ押し付け部など構造上流路が狭くなっている箇所があるため、ここでの付着インクの固着は不具合に繋がりやすい。
【0091】
一方、図4(b)は本発明の様子を模式的に示し、基本的には図1に示す廃インク流路洗浄機構と同様の構成である。インク吐出動作中もしくはインク吐出動作の終了直後に、廃インク流路に対して洗浄液を供給して廃インクタンク5へ洗浄廃液を排出する。これによって、上記内壁や上記接液部に付着したミストインクが乾燥、固着してしまう前に洗浄し、廃インクタンク5に流すことができるので、固着による流路詰まりあるいはそれに起因するインクジェットヘッドのメンテナンス不良を未然に防ぐことができる。
【0092】
以上説明してきたように、本発明によれば、廃液流路(廃インク流路6)、廃液流路開閉装置(廃インク電磁バルブ7)、廃液吸引装置(廃インク吸引ポンプ8)に付着した廃液(廃インク)を効果的に除去することができる。特に、廃液の吸引と洗浄液の供給を完全に独立して制御することができるので、廃液受け部(廃インク受け部4)を含めた廃液流路の上方の洗浄が可能になるし、洗浄液供給を間欠的に行うことで洗浄液使用量を削減することも可能になる。また、メンテナンス動作あるいは液体吐出動作中にも洗浄動作を同時に行うことができる。
【0093】
また、一時的に廃液流路内に洗浄液を貯めて、その後流すような動作を行えば、流路内に付着した廃液をより効果的に除去することもできる。したがって、上記各部の廃液固着による不具合を防止することができ、廃液が固着することによる、液体ジェットヘッドのメンテナンス動作不良が阻止でき、良好な液体吐出を持続することができる。
【0094】
さらに、清掃が非常に不便な廃液流路の廃液固着を抑止できるので、固着発生による装置の停止時間を大幅に削減することができ、装置の効率的稼動が実現できる。したがって、電子デバイス用途の特殊な液体を用いた場合でも、故障頻度を小さくできる信頼性の高い液体噴射装置を実現でき、塗布装置の応用展開を広く拡大することができる。
【0095】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、液体噴射ヘッドを用いた塗布装置に適用できる。
【符号の説明】
【0097】
1、1’、1” 廃インク流路洗浄機構(廃液流路洗浄機構)
2 インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
3 ノズル
4 廃インク受け部(廃液受け部)
5 廃インクタンク
6 廃インク流路(廃液流路)
7 廃インク電磁バルブ(廃液制御ユニット)
8 廃インク吸引ポンプ(廃液吸引ポンプ、廃液制御ユニット)
9 洗浄液タンク
10 洗浄液電磁バルブ(洗浄液制御ユニット)
11 洗浄液供給ポンプ(洗浄液制御ユニット)
12 洗浄液流路
18 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドから排出される廃液を受ける廃液受け部と、
一端が上記廃液受け部に接続され、当該廃液受け部が受けた廃液を廃液受け部の外に排出する廃液流路と、
上記廃液流路に設けられて当該廃液流路での液体の流れを制御する廃液制御ユニットと、
上記廃液受け部と上記廃液制御ユニットとの間における廃液流路に接続され、当該廃液流路に洗浄液を供給する洗浄液流路と、
上記洗浄液流路に設けられて当該洗浄液流路での洗浄液の流れを制御する洗浄液制御ユニットと、
上記廃液制御ユニットおよび上記洗浄液制御ユニットをそれぞれ独立して制御するコントローラと、を備えている、ことを特徴とする廃液流路洗浄機構。
【請求項2】
上記廃液制御ユニットは、廃液吸引ポンプを備えており、上記洗浄液制御ユニットは、洗浄液供給ポンプを備えており、上記コントローラは、上記廃液流路を洗浄する際に、上記廃液吸引ポンプの単位時間流量が上記洗浄液供給ポンプの単位時間流量より大きくなるように制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の廃液流路洗浄機構。
【請求項3】
上記廃液受け部が、液体噴射ヘッドから吐出される液体を受けるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の廃液流路洗浄機構。
【請求項4】
上記液体噴射ヘッドがインクジェットヘッドであり、上記廃液が廃インクであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の廃液流路洗浄機構。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の廃液流路洗浄機構を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
請求項1に記載の廃液流路洗浄機構における廃液流路洗浄方法であって、
廃液制御ユニットにより廃液を廃液受け部から排出する最中または排出した後に、洗浄液制御ユニットにより廃液流路に洗浄液を供給して、廃液流路および廃液制御ユニットを洗浄するように、コントローラが上記廃液制御ユニットおよび洗浄液制御ユニットの動作を制御する、ことを特徴とする廃液流路洗浄方法。
【請求項7】
上記廃液制御ユニットは、廃液吸引ポンプを備えており、上記洗浄液制御ユニットは、洗浄液供給ポンプを備えており、上記廃液制御ユニットと上記洗浄液制御ユニットとを同時に動作させる場合、上記廃液吸引ポンプの単位時間流量が上記洗浄液供給ポンプの単位時間流量より大きくなるように、上記コントローラが当該廃液吸引ポンプおよび洗浄液供給ポンプの動作を制御することを特徴とする請求項6に記載の廃液流路洗浄方法。
【請求項8】
上記廃液制御ユニットは廃液吸引ポンプおよび電磁バルブを備え、
上記電磁バルブを閉じた状態で、上記洗浄液制御ユニットにより洗浄液を廃液流路に供給して当該洗浄液を廃液流路内に溜め、その後上記電磁バルブを開いて、廃液流路内に溜まった上記洗浄液を排出するように、上記コントローラが廃液制御ユニットおよび洗浄液制御ユニットの動作を制御することを特徴とする請求項6に記載の廃液流路洗浄方法。
【請求項9】
上記廃液制御ユニットは廃液吸引ポンプを備え、
上記廃液吸引ポンプを用いて液体噴射ヘッドから廃液受け部に対して廃液を排出する最中に、上記洗浄液を上記廃液流路に間欠的に供給するように、上記コントローラが廃液制御ユニットおよび洗浄液制御ユニットの動作を制御することを特徴とする請求項6に記載の廃液流路洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−30545(P2012−30545A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173579(P2010−173579)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】