説明

廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられるろ過装置

【課題】
極めて簡単な構成で低コストであり、具体的にディーゼルエンジン自動車などに適用して実現でき、廃棄物を有価物とし得る廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられるろ過装置を提供する。
【解決手段】廃食油をろ過するろ材の目のサイズが0.01μm〜50μm未満の一次ろ過装置を設ける。一次ろ過装置によりろ過された廃食油が供給され機関本体側に連通する燃料フィルタ装置であり、ろ材の目のサイズが50μm〜500μmである燃料フィルタ装置を設ける。一次ろ過装置によりろ過された廃食油を燃料フィルタ装置に通して用いることにより、廃食油を安定したディーゼル燃料として用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品加工後の植物油等を含む廃食油等を利用した廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられるろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の影響は、地球の平均気温上昇、海面水位上昇、氷河後退、永久凍土融解、生き物の生態系破壊などをもたらし、これらが過去50年間の人間活動によりもたらされたものであることは、多くの研究者の一致した見解となっている。地球温暖化の原因として化石燃料の大量消費による二酸化炭素排出量が近時激増しており、これが温室効果ガスの一つとして機能し、地表に再放射することによることが知られている。1997年の地球温暖化防止を目的とする京都議定書は、温室効果ガス排出量の削減を実行する国際約束を行い、2008年〜2012年の間に温室効果ガス排出量を1990年レベルより全体で5%以上削減することが目標に掲げられ、2005年2月の発効により、議定書の批准国はその遵守を義務付けられている。これを守るために、会議開催国のわが国では外国から排出権を購入してまでも目標達成に努力することを強いられており、二酸化炭素排出量削減は、今日、個々の国民レベルで対応すべき、まさに社会問題となっている。
【0003】
化石燃料を用いる自動車の排気ガス中には一酸化炭素(CO)、二酸化硫黄(SO)その他の、人体に有害なNOx、SOx成分を含むだけでなく、二酸化炭素の相当量を排出することが知られており、自動車の排気ガス削減を達成できればひいては地球温暖化防止に役立つことは周知である。従来、家庭、事業所などから排出される料理等で使われた天ぷら油その他の動植物油をディーゼルエンジン用燃料、すなわちバイオディーゼルフューエル(BDF)として使用する提案がなされている。例えば植物油などのバイオディーゼル燃料は、植物の成長過程で光合成により大気中の二酸化炭素を吸収しているから、その生物から作られる燃料を燃焼させても元来大気内に存在した以上の二酸化炭素を発生させることはないから、地球温暖化を少なくとも加速させることはなく、化石燃料のような有害物質を発生させることも少ない。従来、廃食用油をディーゼル燃料として利用する提案として特許文献1〜3がある。特許文献1には、廃食用油をヒータ、攪拌機にかけて循環させ、燃焼装置の供給燃料とすることが開示されている。また、廃食用油を灯油、重油と混合させることが記載されている。また、特許文献2には、廃食用油を加熱してフィルタで固形物を除去してディーゼルエンジンの燃料油とする技術が開示されている。さらに、特許文献3では、廃食用油と燃料油を混合して得られた混合油を加熱し、これをフィルタでろ過して高分子状物質をろ過する技術が開示されている。
【特許文献1】特開昭64−197号
【特許文献2】特開平4−222311号
【特許文献3】特開2007−186574号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、オイルポンプ、オイルヒーター、攪拌機を閉回路に配列して加温液体の循環管回路を設けておき、この回路に沈殿後の油をストレーナを通したものを供給し、粘度降下のための加温、攪拌処理した油として燃焼装置に供給する構造が基本であり、処理工程、機器構成、回路設備等が必要で装置が大型化、コスト高となるばかりでなく、可搬性に劣り車載などで簡易に用いることができないという問題があった。また、特許文献2の動植物油脂廃油の燃料化方法によれば、動植物油脂廃油を加熱して廃油中の水と固形物を沈降分離し、得られた廃油を加熱して粘度調整してさらに水と固形物を沈降分離し、さらにそれで得られた廃油をフィルタに掛けて固形物を除去した廃油を燃料として利用するものであり、基本的には加熱と沈降分離処理したものをフィルタでろ過した廃油を燃料として利用しようとするものである。しかしながら、この装置においても処理工程が多く、設備構成が複雑で高コストであり、現実には実用上の点で難点があった。さらに、特許文献3の装置では、重油等の燃料油と廃食用油とを混合し、これを加熱後、フィルタユニットを通過させてディーゼルエンジンに供給するものであり、この装置においても重油と廃食用油との混合処理、混合油の加熱処理等を必要として具体的な装置構成は大型、重厚化し、簡易使用、低コスト装置としては実現しにくく、さらには、化石燃料と混合されるため有害物質を含む温室効果ガスとして排出されて地球環境負荷軽減のための貢献も少ないものであった。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、極めて簡単な構成で低コストであり、具体的にディーゼルエンジン自動車などに適用して実現でき、廃棄物を有価物とし得る実用性に優れた廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられるろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、廃食油16をろ過する一次ろ過装置と、一次ろ過装置によりろ過された廃食油が供給され機関本体側に連通する燃料フィルタ装置14であって、ろ材54の目のサイズが50μm〜500μmである燃料フィルタ装置14と、を含む廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる該一次ろ過装置12でありろ材の目のサイズが0.01μm〜50μm未満であることを特徴とする廃食油のディーゼル機関燃料システム10に用いられる一次ろ過装置12から構成される。燃料フィルタ装置14によりろ過処理される廃食油は一次ろ過処理装置12によりろ過処理された廃食油である必要がある。1次ろ過処理と、機関側の燃料フィルタ装置のろ過処理と、の2回の物理処理のみで、従来利用が困難とされていた生の廃食油をそのままディーゼル燃料として使用し、かつ、機関の安定した継続の運転に何らの障害を生じさせることなく走行させることとなる。ろ材の構成は耐油性、耐食性に優れる素材であれば合成樹脂、合成繊維、金属、合金、紙、その他任意のものを選択できる。一次ろ過装置のろ材の目の大きさは0.01μm以下のものでもよいが、ディーゼル機関内に供給して燃焼させる液体油としては、このろ材の目でろ過されるもので充分であり、ポンプの圧送定格を考慮すると、この程度で充分である。50μm以上のろ材の目のサイズとすると、高粘性の植物性油が後工程の燃料フィルタ装置のろ材に付着して目詰まりを生じさせるおそれがある。燃料フィルタ装置のろ材は、目のサイズが50μm〜500μmであるが、50μm未満のろ材を既に通過しているので50μm以上の目のサイズのろ材での物理的なろ過処理で問題はない。50μm未満の目のサイズのろ材とすると、目詰まりのおそれがあり、機関本体の運転の停止等の問題を逆に生じさせる。燃料フィルタ装置側のろ材の目のサイズ上限は500μm以上のものでも現実には問題とはならないと考えられる。
【0007】
その際、一次ろ過装置12、油水分離型ろ過装置から構成するとよい。油水分離型ろ過装置は、廃食油投入後液体内の質量差により自然に油水分離を行いつつ、ろ過機能を有する装置であり、したがって、自然に油水分離ができてろ過を行える構造であるから、装置のハウジング及びそれに収容されるろ材も大きくでき、したがって、ある程度のろ過処理廃食油の一次貯留可能な容積を有するある程度の大きさのろ過装置である。自立可能状態に設置できると常時車載した状態で用いることができる。
【0008】
また、一次ろ過装置12に圧送駆動源(18)が接続され、一次ろ過装置12が圧送式油水分離型ろ過装置から構成されるとよい。ポンプ圧送等により油水分離型ろ過装置内に廃食油を投入し、さらに、その圧送力で機関本体側への供給系に排出供給するから、ある程度の量の廃食油を短時間にしかも油水分離型のろ材に無理をかけずに高機能の物理ろ過処理を行う。圧送駆動源は、目のサイズが0.01μm〜50μm未満のろ材を備える一次ろ過装置12のろ材24の定格圧力で圧送運転可能な液体供給装置でよい。なお、大出力の大型ポンプを用いなくとも、油水分離型のろ過構成のために、小型ポンプによっても充分なろ過処理を行いつつ油ぶんのみを排出して短時間で例えば10リットルを2,3分程度でろ過処理でき、実用に適する。
【0009】
また、その際、一次ろ過装置12が、ハウジング26と、上位側から被ろ過体が投入され、同じく上位側からろ過後の液体が通過排出されるように垂下状にハウジング内で支持されるろ材24と、を含む圧送式油水分離型ろ過装置からなるとよい。
【0010】
さらに、ハウジング26が縦長容器からなる構成とするよい。
【0011】
また、1次ろ過装置12によるろ過後の廃食油が、1次ろ過装置に原料廃食油を供給する圧送駆動源18の圧送力により、燃料フィルタ装置14への供給系へ供給されるとよい。
【0012】
さらに、圧送駆動源としてのポンプ18と一次ろ過装置12とが構造機体60により一体的に組み付けられているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置によれば、廃食油をろ過する一次ろ過装置と、一次ろ過装置によりろ過された廃食油が供給され機関本体側に連通する燃料フィルタ装置であって、ろ材の目のサイズが50μm〜500μmである燃料フィルタ装置と、を含む廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる該一次ろ過装置であり、ろ材の目のサイズが0.01μm〜50μm未満である構成であるから、極めて簡単な構成で低コストであり、具体的にディーゼルエンジン自動車などに適用して廃食油のみを簡易に利用したディーゼル機関用燃料を利用し得る。また、企業、事業所等では有料により業者に依頼して処理していたものを無料で処理が可能となり、エネルギーの有効利用により使用者側の経費節減に寄与しうる。同時に、実用化が極めて簡単であるから、すべての利用可能なディーゼル機関搭載機器について、本燃料システムを用いることにより、実質的に二酸化炭素削減に貢献でき、個々の事業所、家庭レベルでの利用が具体化すれば地球温暖化防止に有効に貢献することが可能である。
【0014】
また、一次ろ過装置が、油水分離型ろ過装置からなる構成とすることにより、自然に油水分離ができて、かつ、ろ過を行え、また、ある程度のろ過処理廃食油の一次貯留可能なバッファ室機能を有して油水分離とろ過を同時に無理なく行うことができる。
【0015】
また、一次ろ過装置に圧送駆動源が接続され、一次ろ過装置が圧送式油水分離型ろ過装置から構成することにより、油水分離型のろ過装置の構造を活かしながら有効なろ過処理と短時間でのろ過処理量を確保し、低コストで具体的に実用化可能である。
【0016】
また、一次ろ過装置が、ハウジングと、上位側から被ろ過体が投入され、同じく上位側からろ過後の液体が通過排出されるように垂下状にハウジング内で支持されるろ材と、を含む圧送式油水分離型ろ過装置からなる構成であるから、圧送式油水分離型ろ過装置を具体的に実現でき、その実効を図れる。
【0017】
また、ハウジングが縦長容器からなる構成であるから、油水分離ろ過構成を具体的に実現でき、また、車載時等にもコンパクトに収容車載可能である。
【0018】
また、1次ろ過装置によるろ過後の廃食油が、1次ろ過装置に原料廃食油を供給する圧送駆動源の圧送力により、燃料フィルタ装置への供給系へ供給される構成であるから、装置構成を簡略、コンパクト化でき、また、油水分離型のろ過装置のろ材のろ過機能に過負荷をかけずに高機能にろ過処理を維持させ得る。
【0019】
また、圧送駆動源としてのポンプと一次ろ過装置とが構造機体により一体的に組み付けられている構成とすることにより、管理や車載安定、廃食油投入作業操作を行いやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1、図2は、本発明の廃食油のディーゼル機関燃料システム10の一実施の形態を示す概略構成図であり、図において、本システム10は、一次ろ過装置12と、燃料フィルタ装置14と、を含む。なお、本発明のシステムを適用するディーゼル機関は、動力源としてディーゼル機関が採用されるすべての装置、機械、機関等を含むものであり、それらが適用されるものとして例えば、ディーゼル機関自動車、発電機、トラクタ、耕運機、農業用潅水器その他の農業機械、トラック、バスその他の輸送機器、タンク等の武器、船、その他のディーゼル機関機がある。
【0021】
本実施形態のディーゼル機関燃料システム10は、例えばディーゼル機関自動車に適用される例を示しており、特にシステム全体を車載として燃料となる生の廃食油を直接に当該自動車で処理して機能させる自動車車載式のディーゼル機関燃料システムを示している。
【0022】
図1において、16は廃食油であり、例えば具体的な事業所や家庭から排出される料理、食品加工等で使用済みの植物油であり、これらの油の中には植物性油のほかに、他の食材や具材の中に含まれる動物から出る脂肪ぶんなどが混入した動植物性油の場合もある。廃食油16は、通常は容器などに収容されている。18は、廃食油の圧送駆動源としてのポンプであり、吸入管20、供給管22を接続してあり、例えば合成樹脂製のフレキシブルチューブなどからなる吸入管20により直接に廃食油容器から廃食油16を吸入し、同じく合成樹脂製の蛇腹チューブなどからなる供給管22により後述する一次ろ過装置12に圧送供給する。ポンプ18は、少なくとも、一次ろ過装置12に設置されるろ材の目の大きさにより決まる定格吐出圧を有するが、例えば、船舶用のビルジポンプなどの小型簡易ポンプなどを用いることができる。
【0023】
一次ろ過装置12は、ろ材24を有する廃食油16の一次ろ過手段であり、本実施形態において、特にろ材24はその目、すなわち液体を通過させるメッシュのサイズが0.01μm正方〜50μm未満正方で設定されている。廃食油を0.01μm〜50μm未満の目を有するろ材に通すと、理論的には植物油の分子サイズのもののみしか通過させないレベルのろ過処理から噴射ポンプや機関燃焼室にキズつきを生じさせない程度の不純物を物理的に除去させる。
【0024】
本実施形態において、この一次ろ過装置は油水分離型ろ過装置から構成されている。すなわち、容器内に投入した廃食油がそれぞれの比重差により下層に水が、上層に油が分離状態で存在させるような容器体を用い、その内部に上面開口のろ材を配置してろ過と同時に油水分離を行う装置である。しかも、上記のように本実施形態において圧送駆動源としてのポンプ18によりこの一次ろ過装置12に廃食油を供給し、その圧送駆動力によりろ過後の廃食油を燃料フィルタ装置14への供給系に排出供給させる圧送式油水分離型ろ過装置として構成されている。実施形態において、図2に示すように、一次ろ過装置12は縦長筒状の容器からなるハウジング26と、ハウジング26内に支持されたろ材24と、を含む。実施形態において、ハウジング26は縦長筒状容器本体28と、キャップ体30とからなり、キャップ30が容器本体28に着脱可能に固定されて固定状態でパッキンを介してハウジング26内を密閉する。ハウジング26は、圧送式で油水分離を行いつつろ過処理するろ材を用い、それを機能させる関係から、それらの機能を具備するために、ある程度の大きさで構成され、少なくとも自動車標準装備の単なる圧送式の燃料フィルタ装置よりも大となる。実施形態において、ハウジング26は、例えば直径15cm、高さ約1m程度の円筒体形状で構成されている。ハウジングの容器本体28は有底円筒状縦長容器からなり、その中空内部にフィルタユニット32が上面を開放して挿入離脱自在に支持されている。フィルタユニット32は、多数の孔を穿孔した上面開放で下方に向けて凸状に配置された籠体34と、その内側に重ねるように配置した上面開放の袋状ろ材24と、からなり両者は上端部分で連結されて一体として取扱できるようになっている。籠体34は柔軟な袋状ろ材24の支持を行うものであり、ハウジング26内の上端寄り位置に設けられた突起などの受部36に係止されてハウジングの上面開口から着脱自在にハウジング内部に装着支持可能となっている。ろ材24は、例えば耐油性、耐食性に優れるポリプロピレン素材の有底袋状フィルタ手段であり、上面を開口し底部を下側に配置して垂下状に支持されている。ろ材の目のサイズが0.01μm正方〜50μm未満正方のものが配置され、その範囲より大きな粒径の固形物をろ材の袋内部に捕集し、その範囲以下の物質を含む液体を通過させる。ろ材は上面開放で被濾過液を上面側から投入させ、下向きに凸の構成のものであれば素材、具体的な形状、構成は限定されず、例えば、ポリプロピレン以外の合成樹脂や合成繊維で製作したものでもよい。また、ステンレス製金網、その他の金属製で種々の形態に形成することもできる。なお、ハウジング本体、あるいはキャップ体30についても耐油性、耐食性の素材で構成すると良いが、取扱性を考慮すると、軽量のものが好ましい。ろ材24は、上述のように、一次ろ過装置自体が圧送式で油水分離ろ過を行うフィルタ手段であるから、ある程度の深さと、ろ過処理の量的能力が必要のための大きさと、を備える必要がある。したがって、通常は、自動車に標準搭載の燃料フィルタ装置14のろ材よりも長く、しかもサイズ自体も大きく設定される。
【0025】
容器本体28の上面を開閉自在に覆蓋するキャップ体30の周囲に被濾過液の投入口38が設けられるとともに、そのキャップ体の投入口の直径方向他端側に排出口40が設けられている。投入口38には供給管22の他端側が接続され、密閉状態のハウジングのろ材の内側に向けて廃食油が投入される。キャップ体30の下面側には投入口38から投入される廃食油の流れを下方に強制的に変向させる案内板などの案内部42が設けられており、ポンプ18から圧送される廃食油をハウジング内部で確実にろ材24の底部側に向けて流下させる。排出口40には例えばフレキシブルタイプの合成樹脂チューブからなる第2の供給管44が接続されてろ材24の目の空隙を通過後の廃食油を排出させる。なお、46は、キャップ体30に取り付けられハウジング26内部の空気部分の圧力を表示させる圧力ゲージであり、ろ材24の目詰まり状態を外部に表示させる。
【0026】
上記の実施形態の一次濾過装置12は、例えば8リットル程度の容量のハウジング26で構成されている。すなわち、この一次濾過装置12は、単に廃食油を通過させるだけではなく、ろ過処理後の廃食油の一次貯留機能を有している。なお、貯留そのものを行うのが目的ではない。その意味で、数リットル〜数十リットル容量程度のある程度の大きさのハウジングから構成されるものであり、したがって、容量は3リットル程度から50リットル程度の容量の範囲のものなどでも構成できる。車載可能かつ、取扱容易性を考慮すると、8リットルから20リットル程度がより好ましいが、任意にその大きさを設定することができる。なお、ハウジング26は、一次濾過装置12が圧送式油水分離型ろ過装置として機能するものであり、実用的には廃食油の時間当たりの量的な処理能力が必要となるが、この圧送式油水分離型ろ過装置によれば、縦長容器の全内壁面積の例えば50%程度から100%未満までのろ材表面積の大きさによるろ過が可能で、これを定格圧駆動ポンプによる圧送式で圧送供給するとしても、例えば10リットル程度の廃食油を2〜3分程度の時間で物理ろ過処理することができ、通常の給油時間と全く遜色がない。
【0027】
さらに、本実施形態において、一次ろ過装置12は、圧送供給される廃食油を受けて収容し、かつ、その際に廃食油の油水分離を同時に行う。すなわち、上面を開口して垂下状に容器本体28内に材24が支持され、その開口の上位側に設置した投入口38から被ろ過液としての廃食油が投入され、同じく上位側の排出口40からろ過後の液体が通過排出される。そして、ポンプ18からの圧送力で一次ろ過装置12内に圧送される廃食油は、その圧送力でろ過された後に装置12の外部に排出される。したがって、比重の小さな油ぶんは容器本体内の上層部に存在し、ろ過後の油ぶんが排出されるから、容器の開口面積に対して充分な大きさの直径-高さ比を有する容器本体内で油に対して比重の大きな水分や他のごみ、固形物等は容器本体の底部281に沈殿し、ここにおいて、油水を分離させる。
【0028】
図1に戻って、一次ろ過装置12によりろ過された廃食油は第2供給管により自動車燃料タンク48内に供給される。供給は燃料タンクの蓋を開放させた状態で、例えばフレキシブルチューブの端部の開口からポンプ18の圧送駆動力により、直接にタンク内に放出させることができる。
【0029】
さらに、タンク48に投入された廃食油は、図示しない燃料系ポンプを介して燃料供給パイプ50から自動車のディーゼル機関本体51側に連通する燃料フィルタ装置14に圧送供給される。図3において、燃料フィルタ装置14は、ケース52内にろ紙エレメントを配置支持させた例えば公知の燃料フィルタであり、本実施形態において、この燃料フィルタ装置14には、そのろ材54の目の大きさが50μm〜500μmのものが設置されている。この燃料フィルタ装置14によるろ過は、異物除去と水分の分離のために行われるが、本実施形態のろ材54の目の大きさの50μm〜500μmと設定することにより、高粘性の植物油やゼリー状の動物油脂がろ材54に付着して目詰まりを生じることなく、1次ろ過処理された廃食油を円滑に機関本体側に図示しない噴射ポンプを介して噴射供給して燃焼させ、安定して機関を駆動させる。特に、本実施形態では予め1次ろ過装置12で目のサイズが0.01μm〜50μm未満のろ材を通過し、かつ、高粘度高分子物質と水分とそれらのサイズより大の固形物を予め除去しているから、この機関本体側の燃料フィルタ装置のろ材54の目のサイズをこの程度に設定しても、ごみや不純物、あるいは半固形状のゼリー状物質は除去されて通常は存在しないので、通過することがなく、したがって、異物等の混入による機関側のトラブルもない。
【0030】
次に、本実施形態の作用について説明すると、ディーゼルエンジン機関自動車のいわゆる標準に搭載されている燃料フィルタ(Fuel Filter)としての燃料フィルタ装置14のろ材は予めろ材の目のサイズが50μm〜500μmの範囲のいずれかのサイズのものを装着させておく。そして、ポンプ18と、一次ろ過装置12と樹脂製蛇腹管20、22は予め接続した状態で車載可能である。したがって、たとえばディーゼルエンジン機関自動車を廃食油の貯留場所付近まで移動させ、吸入管20などを用いて自動車の燃料タンク48に直接に給油させることができる。その際、ポンプ18により一次ろ過装置12の密閉容器内に上位から導入された例えば使用済みの天ぷら油は、図2に示すように案内部42により強制的に変向されて容器内を下方に向けて流下する。そして、ろ材24では粒径50μm以上のサイズの固形物はろ材の内側24Nに残留させ、それ以下のサイズの固形物ならびに油等の液体をろ材から通過させて外部24Uに移行させる。この際、高粘性の植物油やゼリー状の動物性油脂もろ材24の目に付着して捕捉される。一方、ろ材を通過した液体内には水分も含まれている。油に比較して比重の大きな水分子は容器28の底部281に水16Bとして沈殿し、油16Aと分離して存在する。そして、同じく容器の上位に設置された排出口40からろ材を通過した軽比重の油ぶんが排出され、第2供給管44から自動車の燃料タンク48内に供給される。このとき、1次ろ過装置12に使用済みの直接の原料廃食油を供給するポンプ18の圧送力により、燃料タンク48へ直接に供給するから、設備構成を極めて簡単にし得るとともに、軽量で取り扱いもしやすく、しかも低コストで設備可能である。なお、ポンプ18の電力は、例えば車載自動車のバッテリからとることができる。1次ろ過済みの廃食油は燃料タンク48から機関本体側に連通する燃料フィルタ装置14のろ材54に図示しない燃料ポンプにより圧送供給される。このとき、前述したように、予め1次ろ過装置12で目のサイズが0.01μm〜50μm未満のろ材を通過し、かつ、高粘度高分子物質と水分とそれらのサイズより大の固形物を予め除去しているから、ろ材の目のサイズが50μm〜500μmの燃料フィルタ装置14を通過させることにより、粘性による目詰まりを確実に防止し、安定してディーゼル機関本体を運転駆動させることが可能となる。
【0031】
次に、図4により、本発明の第2の実施形態のディーゼル機関燃料システムについて説明するが、第1の実施形態と同一部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。第2実施形態のシステム10−2が第1実施形態と異なる点は、ポンプと一次ろ過装置とを一体的に組み付けて圧送駆動源一体組み付けの一次ろ過装置構成とした点である。この実施形態では、基台56とフレーム58とを含む構造機体60を設け、この構造機体に圧送駆動源としてのポンプ60と、ポンプ60に併設して縦長容器体からなる一次ろ過装置62を一体的に配置させ組み付けたものである。さらに、この実施形態では、構造機体60に外部から投入して貯留させておく貯留タンク64が同構造機体に設備されている。貯留タンク64、ポンプ60、一次ろ過装置62はそれぞれ耐油、耐食性のパイプにより連通接続されている。一次ろ過装置62には図示しない合成樹脂製などの蛇腹管が接続されて一次ろ過処理後の廃食油が外部供給される。このように、圧送駆動源一体組み付けの一次ろ過装置構成とすることにより、1次ろ過処理前後の煩雑な機器の管理の手間が省ける。
【0032】
上記第1実施形態と同様の構成により一次ろ過装置12のろ材24の目のサイズが1μm、燃料フィルタ装置14のろ材54の目のサイズが50μmのものを装備し、実車に組み込んで走行した結果を図4に示す。それぞれ3台の車種はそのつど家庭や事業所から排出される使用済み天ぷら油や、食品加工工程で排出される使用済みの食用油を無料で引き取り入手し、使用したものである。実施形態と同様に、廃食油のみで走行し、化石燃料は一切使用していない。3台述べ走行距離は今日まで、2万6千キロメートルであるが、機関トラブルは発生していない。また、一次ろ過装置、ポンプ、ろ材はすべて市販の製品を利用して構成可能であり、実使用のもので要した経費は3万円弱程度である。なお、ディーゼル機関燃料自動車に本燃料システムを標準として装備することもできる。例えば、自動車側の燃料タンクに連通併設して本発明の圧送式油水分離型ろ過装置の着脱収容室を設け、必要に応じて自動車に装備か、あるいは外部使用のポンプを用いて廃食油を圧送供給させるようにしても良い。
【0033】
以上、説明したように、本発明の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いる一次ろ過装置によれば、該一次ろ過装置と標準装備の自動車側の燃料フィルタ装置のそれぞれのろ材を所定の目のサイズのものに設定し、かつ、一次ろ過装置を経由して得られた廃食油を燃料フィルタ装置に供給することで得られる廃食油は実用上も全く問題のないディーゼル燃料として利用が可能である。
【0034】
本発明は、上記した実施形態に記載の構成に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、任意にその構成を改変することができる。たとえば、本一次ろ過装置を含むシステムを装備する機体は、ディーゼル機関自動車のほかに、発電機、トラクタ、耕運機、農業用潅水器その他の農業機械、トラック、バスその他の輸送機器、タンク等の武器、船などについても適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係るディーゼル機関燃料システムの概略構成図である。
【図2】図1のシステムの一次ろ過装置の一部切欠き拡大説明図である。
【図3】図1のシステムの燃料フィルタ装置の拡大断面説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るディーゼル機関燃料システムの概略構成図である。
【図5】図1のシステムを実装した自動車の走行状態の表を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 ディーゼル機関燃料システム(第1実施形態)
10−2 ディーゼル機関燃料システム(第2実施形態)
12 一次ろ過装置
14 燃料フィルタ装置
16 廃食油
18 ポンプ
20 吸入管
22 供給管
24 ろ材
26 ハウジング
28 容器本体
48 燃料タンク
54 燃料フィルタ装置のろ材
60 構造機体
62 一次ろ過装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食油をろ過する一次ろ過装置と、
一次ろ過装置によりろ過された廃食油が供給され機関本体側に連通する燃料フィルタ装置であって、ろ材の目のサイズが50μm〜500μmである燃料フィルタ装置と、を含む廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる該一次ろ過装置であり、
ろ材の目のサイズが0.01μm〜50μm未満であることを特徴とする廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置
【請求項2】
一次ろ過装置が、油水分離型ろ過装置からなることを特徴とする請求項1記載の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置
【請求項3】
一次ろ過装置に圧送駆動源が接続され、一次ろ過装置が圧送式油水分離型ろ過装置から構成されることを特徴とする請求項1または2記載の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置
【請求項4】
一次ろ過装置が、ハウジングと、上位側から被ろ過体が投入され、同じく上位側からろ過後の液体が通過排出されるように垂下状にハウジング内で支持されるろ材と、を含む圧送式油水分離型ろ過装置からなることを特徴とする請求項3記載の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置
【請求項5】
ハウジングが縦長容器からなる請求項4記載の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置
【請求項6】
一次ろ過装置によるろ過後の廃食油が、一次ろ過装置に原料廃食油を供給する圧送駆動源の圧送力により、燃料フィルタ装置への供給系へ供給されることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置
【請求項7】
圧送駆動源としてのポンプと一次ろ過装置とが構造機体により一体的に組み付けられていることを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の廃食油のディーゼル機関燃料システムに用いられる一次ろ過装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−121455(P2009−121455A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106379(P2008−106379)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【分割の表示】特願2007−296297(P2007−296297)の分割
【原出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(507378994)
【Fターム(参考)】