説明

延伸剥離性の光学的に透明な感圧性接着剤

シリコーン感圧性接着剤組成物及び粘着性タブを含む、光学的に透明な延伸剥離性感圧接着剤フィルムを提供する。該感圧性接着剤組成物は、尿素系シリコーン共重合体、オキサミド系シリコーン共重合体、アミド系シリコーン共重合体、ウレタン系シリコーン共重合体、ポリジオルガノシロキサンポリマー、又はこれらの共重合体の混合物からなる群から選択されるエラストマーのシリコーンポリマーから形成される。該感圧性接着剤組成物はまた、MQ粘着付与樹脂を含んでもよい。該感圧性接着剤組成物は、接着剤物品を形成するために使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学的に透明であり、かつ延伸剥離性である、感圧性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
延伸剥離性接着テープは、基材に結合し、次に伸張に際して基材から剥離するためにしばしば使用される。延伸剥離性接着テープは、例えば、組み立て、結合、付着、及び取り付け用途を含む様々な用途において有用である。延伸剥離テープは、結合されている基材の表面に対し、テープをある角度で延伸することにより、基材から剥離することができる。
【0003】
多くの延伸剥離性接着テープは、一旦人造壁板等の基材に結合されると、目に見える残留物を基材に残したり、目に見える損傷を基材に与えたりすることなく、基材からきれいに剥離される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
光学的に透明な感圧性接着剤は、光学物品において使用されることが可能な接着剤である。かかる光学的に透明な感圧性接着剤が、容易な剥離のために延伸剥離性であれば、多くの場合において望ましい。エラストマーのシリコーン系ポリマーは、かかる光学的に透明な延伸剥離性感圧性接着剤を製造するために知られている。
【0005】
シリコーン感圧性接着剤組成物及び粘着性タブを含む延伸剥離性接着剤フィルムが開示される。感圧性接着剤組成物は、尿素系シリコーン共重合体、オキサミド系シリコーン共重合体、アミド系シリコーン共重合体、ウレタン系シリコーン共重合体、ポリジオルガノシロキサンポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるエラストマーのシリコーンポリマーを含む。該感圧性接着剤組成物はまた、MQ粘着付与樹脂を含んでもよい。
【0006】
また、第1の基材及び第1の基材の表面上に配置される延伸剥離性感圧接着剤フィルムを含み、延伸剥離性感圧接着剤フィルムは、シリコーン感圧性接着剤組成物及び粘着性タブを含む物品が開示される。また、物品は、任意的に第2の基材を含んでもよい。基材は、剛体(デバイス表面、ガラスプレート等)であってもよいし、非剛体(剥離ライナー、テープ裏材、フィルム、シート等)であってもよい。
【0007】
本開示はまた、第1の基材を提供する工程と、延伸剥離性接着剤フィルムを基材表面の少なくとも一部分に配置する工程であって、延伸剥離性感圧接着剤フィルムは、シリコーン感圧性接着剤組成物と粘着性タブとを含む、工程と、第2の基材が延伸剥離性感圧性接着剤を介して第1の基材と結合し、粘着性タブが、ユーザーによる把持のために利用可能であるように、第2の基材を延伸剥離性感圧性接着剤に接触させる工程とを含む、アセンブリを取り外し可能に接着するための方法を開示する。
【0008】
幾つかの実施形態では、本開示は、第1の基材と、第2の基材と、第1の基材と第2の基材との間に配置される延伸剥離性感圧性接着剤とを含むアセンブリを含み、延伸剥離性感圧性接着剤は、シリコーン感圧性接着剤組成物と、粘着性タブとを含む。基材は、剛体(デバイス表面、ガラスプレート等)であってもよいし、非剛体(剥離ライナー、テープ裏材、フィルム、シート等)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】2つの基材に延伸剥離性接着剤フィルムが付加された、接着剤構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
光学的に透明な延伸剥離可能な接着剤が望ましい、例えば、光学デバイス又は接着剤が目立たないことが望ましい用途等の、様々な最終用途に好適とする、光学的に透明な延伸剥離性感圧接着剤フィルムが提供される。感圧性接着剤は、シリコーンエラストマーのポリマーを含み、粘着付与樹脂等の他の構成要素を含んでもよい。感圧性接着剤は、単層として有用であり、他の延伸性のある層の存在を必要としない。必要に応じて、開示される感圧性接着剤と併せて、追加の伸長可能な層が使用されることができる。感圧性接着剤はまた、粘着性タブを有する。粘着性タブは、感圧性接着剤の容易な把持及び延伸剥離を可能にする。
【0011】
本明細書で使用される用語「接着剤」は、2つの被着体を合わせて接着するのに有用なポリマー組成物を指す。接着剤の一例は、感圧性接着剤である。
【0012】
感圧性接着ポリマーは、(1)攻撃的及び永久的粘着力、(2)指圧以下の圧力による接着力、(3)被着体を保持する十分な能力、並びに(4)被着体からきれいに取り外すのに十分な貼着力を含む特性を有することが当業者にとっては周知である。感圧性接着としてよく機能を果たすことがわかっている材料は、粘着力、引き剥がし接着力、及び剪断保持力の、望ましいバランスをもたらすのに必要な、粘弾性を示すように設計され配合されたポリマーである。特性の適正なバランスを得ることは、単純なプロセスではない。
【0013】
用語「シリコーン系」は、本明細書で使用するとき、シリコーンユニットを含む巨大分子を指す。用語シリコーン又はシロキサンは互換的に用いられ、ジアルキル又はジアリールシロキサン(−SiRO−)繰り返し単位を有する単位を指す。
【0014】
用語「尿素系」は、本明細書で使用するとき、少なくとも1つの尿素連結を含有する、セグメント化コポリマーである巨大分子を指す。
【0015】
用語「アミド系」は、本明細書で使用するとき、少なくとも1つのアミド連結を含有する、セグメント化コポリマーである巨大分子を指す。
【0016】
用語「ウレタン系」は、本明細書で使用するとき、少なくとも1つのウレタン連結を含有する、セグメント化コポリマーである巨大分子を指す。
【0017】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を備えた炭化水素である、アルケンのラジカルである1価の基を意味する。アルケニルは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には、2〜20個の炭素原子を含有する。幾つかの実施形態では、アルケニルは、2〜18個、2〜12個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基としては、エテニル、n−プロペニル、及びn−ブテニルが挙げられる。
【0018】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を指す。該アルキルは、直鎖、分岐鎖、環状、又はそれらの組み合わせであることができ、かつ典型的には、1〜20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アルキル基は、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。
【0020】
用語「ハロアルキル」とは、ハロで置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキルを意味する。幾つかのハロアルキル基は、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、及びブロモアルキル基である。「ペルフルオロアルキル」という用語は、すべての水素原子がフッ素原子によって置換されたアルキル基を指す。
【0021】
用語「アリール」とは、芳香族及び炭素環式である一価の基を指す。アリールは、芳香環に接続又は縮合した、1〜5個の環を有することができる。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
用語「アルキレン」は、アルカンのラジカルである二価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。アルキレンは、多くの場合、1〜20個の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、アルキレンは、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上に(すなわち、アルキリデン)、又は異なる炭素原子上にあることができる。
【0023】
用語「ヘテロアルキレン」とは、チオ、オキシ、又は−NR−(式中、Rはアルキルである)によって接続された、少なくとも2つのアルキレン基を含む、二価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分枝状、環状、アルキル基によって置換される、又はこれらの組み合わせであってもよい。幾つかのヘテロアルキレンは、例えば、−CHCH(OCHCHOCHCH−のような、ヘテロ原子が酸素であるポリオキシアルキレンである。
【0024】
用語「アリーレン」とは、炭素環式かつ芳香族である、二価の基を指す。この基は、接続している、縮合している、又はこれらの組み合わせである1〜5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。幾つかの実施形態では、アリーレン基は、5個以下の環、4個以下の環、3個以下の環、2個以下の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであることができる。
【0025】
用語「ヘテロアリーレン」は、炭素環式及び芳香族であり、硫黄、酸素、窒素、又はフッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素のような、ハロゲンのようなヘテロ原子を含有する二価の基を指す。
【0026】
用語「アラルキレン」とは、式−R−Ar(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリーレンである)(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している)の2価の基を指す。
【0027】
用語「アルコキシ」とは、式中、Rがアルキル基である、式−ORの1価の基を意味する。
【0028】
別途記載のない限り、「光学的に透明」は、可視光スペクトル(約400〜約700nm)の少なくとも一部分にわたって高い光透過性を有し、低いヘイズを呈する、接着剤又は物品を指す。視覚的に透明な材料は、多くの場合、少なくとも90%の視感透過率、及び400nm〜700nmの波長帯での約2%未満のの曇価を有する。視感透過率及び曇り度は両方、例えば、ASTM−D 1003−95の方法を使用して決定することができる。
【0029】
別途記載のない限り、「延伸剥離性」は、接着剤又はテープの性質を指す。延伸剥離性接着剤及びテープは、少なくとも1つの基材に接着結合を形成し、次に延伸に際して基材から剥離する。典型的に、延伸剥離性接着剤及びテープは、目に見える残留物をほんの少ししか残さないかまったく残さず、基材に目に見える損傷を与えずに、基材からきれいに剥離可能であり得る。
【0030】
本明細書で使用される「延伸可能な」とは、延伸剥離条件下において、破損したり切断したりすることなく、延伸されることが可能な材料を指す。
【0031】
感圧接着剤フィルムは、延伸可能で、伸縮自在であり、好ましくは、例えばガラス、セラミックス、塗装人造壁板、仕上げ(例えば、着色又はニス塗り)木材又はプラスチックを含む種々の基材からきれいに剥離可能(すなわち、目に見える残留物を残さない)である。プラスチック基材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、ポリカーボネート等を含む。基材に結合された後、感圧接着剤フィルムはまた、表面に損傷を与えることなく基材から剥離されることが可能である。
【0032】
好適な感圧性接着剤組成物の例は、シリコーン系接着剤組成物を含む。シリコーン系接着剤組成物は、少なくとも1つのシリコーンエラストマーのポリマーを含み、粘着付与樹脂等の他の構成要素を含んでもよい。エラストマーのポリマーは、例えば、尿素系シリコーン共重合体、オキサミド系シリコーン共重合体、アミド系シリコーン共重合体、ウレタン系シリコーン共重合体、ポリジオルガノシロキサンポリマー、及びこれらの混合物を含む。
【0033】
有用な部類のシリコーンエラストマーのポリマーの一例は、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー等の尿素系シリコーンポリマーである。シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミンの反応生成物(シリコーンジアミンともいう)、ジイソシアネート、及び任意的に有機ポリアミンを含む。好適なシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、次の反復単位で表され、
【0034】
【化1】

【0035】
式中、
それぞれのRは、独立して、アルキル部分であり、好ましくは約1〜12の炭素原子を有する部分であり、例えば、トリフルオロアルキル基又はビニル基、ビニルラジカル又は高級アルケニルラジカルによって置換されてもよく、式R(CHCH=CHによって表され、式中、Rは、−(CH−又は−(CHCH=CH−であり、aは1、2又は3であり、bは0、3又は6であり、cは3、4又は5であり、シクロアルキル部分は約6〜12の炭素原子を有し、アルキル基、フルオロアルキル基及びビニル基と置換されてもよく又はアリール部分は、約6〜20の炭素原子を有し、例えばアルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基及びビニル基と置換されてもよく、あるいはRは米国特許第5,028,679号に記載されるペルフルオロアルキル基であるか、米国特許第5,236,997号に記載されるフッ素含有基であるか、米国特許第4,900,474号及び同第5,118,775号に記載されるパーフルオロエーテル含有基であり、典型的に、R部分の少なくとも50%は、1〜12の炭素原子を有する、残部が一価のアルキル又は置換フェニルラジカルのメチルラジカル、アルケニルラジカル、フェニルラジカル、若しくは置換フェニルラジカルであり、
それぞれのZは、約6〜20の炭素原子を有するアリーレンラジカル又はアラルキレンラジカル、約6〜20の炭素原子を有するアルキレン又はシクロアルキレンラジカルである多価のラジカルであり、幾つかの実施形態では、Zは2,6−トリレン、4,4’−メチレンジフェニレン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン、テトラメチル−m−キシリレン、4,4’−メチレンジシクロヘキシレン、3,5,5−トリメチル−3−メチレンシクロヘキシレン、1,6−ヘキサメチレン、1,4−シクロヘキシレン、2,2,4−トリメチルヘキシレン及びこれらの混合物であり、
それぞれのYは、独立して、1〜10の炭素原子のアルキレンラジカル、アラルキレンラジカル又は6〜20の炭素原子を有するアリーレンラジカルである多価のラジカルであり、
各Dは、水素、1〜10個の炭素原子のアルキルラジカル、フェニル、及び複素環を形成するためのB又はYを含む環状構造を完成させるラジカルからなる群から選択され、
ここで、Bはアルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、フェニレン、ヘテロアルキレン(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、並びにこれらのコポリマー及び組み合わせを含む)からなる群から選択される多価ラジカルであり、
mは0〜約1000の数字であり、
nは少なくとも1である数字であり、かつ
pは、少なくとも10、幾つかの実施形態では15〜2000、又は30〜1500である数である。
【0036】
有用なシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、例えば、米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、同5,461,134及び同第7,153,924号並びにPCT公開第WO 96/35458、同第WO 98/17726号、同第WO 96/34028号、同第WO 96/34030号及びWO 97/40103に開示されている。
【0037】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー類の調製に使用される有用なシリコーンジアミン類の例としては、次の式で表されるポリジオルガノシロキサンジアミン類が挙げられる。
【0038】
【化2】

【0039】
式中、各Rは、独立してアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、又はハロで置換されたアリールであり、各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン、又はそれらの組み合わせであり、かつ、nは、0〜1,500の整数である。
【0040】
式IIのポリジオルガノシロキサンジアミンは、任意の既知の方法により調製することができ、かつ任意の好適な分子量、例えば700〜150,000g/モルの範囲内の平均分子量を有することができる。好適なポリジオルガノシロキサンジアミン及びポリジオルガノシロキサンジアミンを作製する方法は、例えば、米国特許第3,890,269号、同第4,661,577号、同第5,026,890号、同第5,276,122号、同第5,214,119号、同第5,461,134号、同第5,512,650号、及び同第6,355,759号に記載されている。幾つかのポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えば信越シリコーン・アメリカ社(トーランス(Torrance)、カルフォルニア州)及びジェレスト社(Gelest Inc.)(モリスビル(Morrisville)ペンシルベニア州)から市販されている。
【0041】
2,000グラム/モル超又は5,000グラム/モル超の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンは、米国特許第5,214,119号、同第5,461,134号、及び同第5,512,650号に記載されている方法を使用して調製可能である。記載した方法の1つは、反応条件下及び不活性雰囲気下にて、(a)以下の式のアミン官能性末端ブロック剤
【0042】
【化3】

【0043】
[式中、Y及びRは、式IIについて定義されたものと同一である。]、(b)前記アミン官能性末端ブロック剤と反応して、2,000グラム/モル未満の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを形成するのに十分な環状シロキサン、並びに(c)次の式を有する無水アミノアルキルシラノレート触媒
【0044】
【化4】

【0045】
[式中、Y及びRは、式IIで定義されたものと同一であり、かつMは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ルビジウムイオン、又はテトラメチルアンモニウムイオンである。]を混ぜ合わせることを伴う。実質的に全てのアミン官能性末端ブロック剤が消費されるまで、反応を継続し、次いで、追加の環状シロキサンを添加して、分子量を増大させる。追加の環状シロキサンは多くの場合、ゆっくりと添加する(例えば、滴下)。多くの場合、反応温度は80℃〜90℃の範囲内、反応時間は5〜7時間で実施される。得られたポリジオルガノシロキサンジアミンは、高純度であることができる(例えば、2重量パーセント未満、1.5重量パーセント未満、1重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.1重量パーセント未満、0.05重量パーセント未満、又は0.01重量パーセント未満のシラノール不純物)。アミン官能性末端ブロック剤対環状シロキサンの比を変更することによって、式IIの得られたポリジオルガノシロキサンジアミンの分子量を変えることができる。
【0046】
式IIの前記ポリジオルガノシロキサンジアミンを調製するもう1つの方法は、反応条件下かつ不活性雰囲気下にて、(a)次の式を有するアミン官能性末端ブロック剤
【0047】
【化5】

【0048】
[式中、R及びYは、式Iについて記載されたものと同一であり、かつ、添字xが、1〜150の整数に等しい]、(b)前記アミン官能性末端ブロック剤の平均分子量より大きい平均分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを得るのに十分な環状シロキサン、並びに(c)水酸化セシウム、セシウムシラノレート、ルビジウムシラノレート、セシウムポリシロキサノレート、ルビジウムポリシロキサノレート、及びこれらの混合物から選択される触媒を混ぜ合わせることから構成される。実質的に全てのアミン官能性末端ブロック剤が消費されるまで、反応を継続する。この方法は、米国特許第6,355,759号に更に記載されている。この手順を使用して、任意の分子量のポリジオルガノシロキサンジアミンを調製することができる。
【0049】
式IIのポリジオルガノシロキサンジアミンを調製するための更に別の方法は、米国特許第6,531,620に記載されている。本方法では、以下の反応に示すように、環状シラザンは、ヒドロキシ末端基を有するシロキサン材料と反応する。
【0050】
【化6】

【0051】
基R及び基Yは、式IIについて記載されたものと同一である。下付記号mは、1より大きい整数である。
【0052】
ポリジオルガノシロキサンジアミンの例としては、ポリジメチルシロキサンジアミン、ポリジフェニルシロキサンジアミン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンジアミン、ポリフェニルメチルシロキサンジアミン、ポリジエチルシロキサンジアミン、ポリジビニルシロキサンジアミン、ポリビニルメチルシロキサンジアミン、ポリ(5−ヘキセニル)メチルシロキサンジアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
ポリジオルガノシロキサンジアミン成分は、得られるシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの弾性率調整手段を提供する。一般に、高分子量ポリジオルガノシロキサンジアミンは、低弾性率のコポリマーを提供するが、低分子量ポリジオルガノシロキサンポリアミンは、より高い弾性率のコポリマーを提供する。
【0054】
有用なポリアミンの例としては、例えば、D−230、D−400、D−2000、D−4000、ED−2001及びEDR−148の商標名にて、ハンストマン社(Hunstman Corporation)(テキサス州ヒューストン)から市販されているポリオキシアルキレンジアミンを含むポリオキシアルキレンジアミン;例えば、ハンストマン(Hunstman)から、T−403、T−3000及びT−5000の商標名にて市販されているポリオキシアルキレントリアミンを含むポリオキシアルキレントリアミン;並びに、例えば、エチレンジアミン及び、デュポン(デラウェア州ウィルミントン)から、ダイテック(DYTEK)A及びダイテック(DYTEK)EPの商標名にて入手可能なポリアルキレンを含むポリアルキレンが挙げられる。
【0055】
任意のポリアミンは、コポリマー弾性率の変更手段を提供する。有機ポリアミンの濃度、種別及び分子量は、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの弾性率に影響を与える。
【0056】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、約3モルを超えない、幾つかの実施形態では、約0.25〜約2モルの量のポリアミンを含んでもよい。典型的に、ポリアミンは、約300g/モル以下の分子量を有する。
【0057】
例えば、上述のポリアミンと反応可能な、ジイソシアネート及びトリイソシアネートを包含する任意のポリイソシアネートを、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの調製に用いることができる。好適なジイソシアネートの例としては、芳香族ジイソシアネート、例えば、2,6−トルエンジイソシアネート、2,5−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o−クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン−4,4’−ジイソシアネート、ポリカルボジイミド変性メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’−ジイソシアナト−3,3’,5,5’−テトラエチル)ジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシビフェニル(o−ジアニシジンジイソシアネート)、5−クロロ−2,4−トルエンジイソシアネート、及び1−クロロメチル−2,4−ジイソシアナトベンゼン、芳香族−脂肪族ジイソシアネート、例えば、m−キシリレンジイソシアネート及びテトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,12−ジイソシアナトドデカン及び2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン;並びに脂環式ジイソシアネート、例えば、メチレンジシクロヘキシレン−4,4’−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)及びシクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。
【0058】
ポリアミンと、特にポリジオルガノシロキサンジアミンと反応可能ないかなるトリイソシアネートも好適である。このようなトリイソシアネートの例としては、例えば、ビウレット、イソシアヌレート、及び付加物から生成されるものなどの多官能イソシアネートが挙げられる。市販のポリイソシアネートの例としては、バイエルからのデスモデュール(DESMODUR)及びモンデュール(MONDUR)並びにダウ・プラスティックス(Dow Plastics)からのPAPIの商標名にて入手可能な、一連のポリイソシアネートの一部が挙げられる。
【0059】
ポリイソシアネートは、典型的に、ポリジオルガノシロキサンジアミンと任意のポリアミンとの量に基づく化学量論的な量で存在する。
【0060】
別の有用な部類のシリコーンエラストマーのポリマーは、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマー等のオキサミド系ポリマーである。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーの例は、例えば、米国特許公開第2007−0148475号に記載されている。ブロックポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーは、少なくとも2つの式IIIの繰り返し単位を含有する。
【0061】
【化7】

【0062】
この式において、各Rは、独立してアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、若しくはアルキル、アルコキシ、又はハロで置換されたアリールである(この際、R基の少なくとも50%はメチルである)。各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせである。添字nは、独立して40〜1500の整数であり、かつ添字pは、1〜10の整数である。基Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2個の−NHR基を差し引いたものに相当する残余部分である2価の基である。基Rは、水素若しくはアルキル(例えば、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はRはGと共にそれら両方が結合した窒素と一緒になって複素環基(例えば、RHN−G−NHRはピペラジン等)を生成する。各アスタリスク()は、繰り返し単位がコポリマー内の別の基、例えば別の式IIIの繰り返し単位などへ結合する部位を示す。
【0063】
式IIIにおけるRのための好適なアルキル基は、典型的には、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、及びイソブチルが挙げられるが、これらに限定されない。Rのための好適なハロアルキル基は、多くの場合、ハロゲンで置換された、対応するアルキル基の水素原子のほんの一部しか有しない。代表的なハロアルキル基としては、1〜3個のハロ原子及び3〜10個の炭素原子を有するクロロアルキル及びフルオロアルキル基が挙げられる。Rに好適なアルケニル基は、2〜10個の炭素原子を有することが多い。代表的なアルケニル基は、多くの場合、エテニル、n−プロペニル、及びn−ブテニルのような、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有する。Rに好適なアリール基は、6〜12個の炭素原子を有することが多い。フェニルは、代表的なアリール基である。アリール基は、非置換であっても、又は、アルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ)、若しくはハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)によって置換されていてもよい。Rのための好適なアラルキル基は通常、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基を有する。幾つかの代表的なアラルキル基においては、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子(すなわち、アラルキルの構造は、アルキレンがフェニル基に結合しているアルキレン−フェニルである)を有する。
【0064】
基の少なくとも50%は、メチルである。例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のR基が、メチルであることができる。残りのR基は、少なくとも2つの炭素原子を有するアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールから選択することができる。
【0065】
式III中の各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン、又はそれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、典型的には、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。代表的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。好適なアラルキレン基は通常、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基を有する。幾つかの代表的なアラルキレン基においては、アリーレン部分はフェニレンである。つまり、2価アラルキレン基は、フェニレン−アルキレンであり、ここで、フェニレンは、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書で使用するとき、基Yに関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン基及びアラルキレン基から選択される2つ又はそれ以上の基の組み合わせを意味する。例えば、組み合わせは、単一のアルキレンに結合した単一のアラルキレン(例えば、アルキレン−アリーレン−アルキレン)であることができる。1つの代表的なアルキレン−アリーレン−アルキレンの組み合わせでは、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0066】
式III中の各添字nは、独立して40〜1500の整数である。例えば、添字nは、1000以下、500以下、400以下、300以下、200以下、100以下、80以下、又は60以下の整数であることができる。nの値は、多くの場合、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、又は少なくとも55である。例えば、添字nは、40〜1000、40〜500、50〜500、50〜400、50〜300、50〜200、50〜100、50〜80、又は50〜60の範囲内であることができる。
【0067】
添字pは、1〜10の整数である。例えば、pの値は、多くの場合、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下の整数である。pの値は、1〜8、1〜6、又は1〜4の範囲内であることができる。
【0068】
式III中の基Gは、残留単位であり、これは、式RHN−G−NHRのジアミン化合物から、2つのアミノ基(すなわち、−NHR基)を差し引いたものに等しい。基Rは、水素若しくはアルキル(例えば、1〜10、1〜6、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であるか又はRは、G及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成する(例えば、RHN−G−NHRはピペラジンである)。ジアミンは、一級又は二級アミノ基を有することができる。大部分の実施形態では、Rは水素又はアルキルである。多くの実施形態では、ジアミンの両方のアミノ基は、一級アミノ基であり(すなわち、両方のR基が水素である)、かつジアミンが、式HN−G−NHを持つ。
【0069】
幾つかの実施形態では、Gは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレンは、2〜10個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有することが多い。代表的なアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。好適なヘテロアルキレンは、少なくとも2つのエチレン単位を有するポリオキシエチレン、少なくとも2つのプロピレン単位を有するポリオキシプロピレン、又はこれらのコポリマーのような、ポリオキシアルキレンであることが多い。好適なポリジオルガノシロキサン類としては、式IIのポリジオルガノシロキサンジアミン類(前述)から2個のアミノ基を差し引いたものが挙げられる。代表的なポリジオルガノシロキサンとしては、アルキレンY基を有するポリジメチルシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアラルキレン基は、通常、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基を含有する。幾つかの代表的なアラルキレン基は、フェニレン−アルキレンであり、ここで、フェニレンは、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書で使用するとき、基Gに関して「これらの組み合わせ」とは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、及びアラルキレンから選択される2つ又はそれ以上の基の組み合わせを指す。組み合わせは、例えば、アルキレンに結合したアラルキレン(例えば、アルキレン−アリーレン−アルキレン)であることができる。1つの代表的なアルキレン−アリーレン−アルキレンの組み合わせでは、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0070】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、式−R−(CO)−NH−(式中、Rはアルキレンである)を有する基を含まない傾向がある。共重合性材料の主鎖に沿った全てのカルボニルアミノ基は、オキサリルアミノ基(すなわち、−(CO)−(CO)−NH−基)の一部である。すなわち、共重合材料の主鎖に沿った任意のカルボニル基は、別のカルボニル基に結合し、オキサリル基の一部である。より具体的には、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、複数のアミノオキサリルアミノ基を有する。
【0071】
該ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、線状のブロック共重合体であり、かつエラストマー材料である。脆性固体又は硬質プラスチックとして一般に処方される、周知のポリジオルガノシロキサンポリアミド類の多くとは異なり、該ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド類は、該コポリマーの重量に基づいて、50重量%超のポリジオルガノシロキサンセグメントを含むように処方することができる。ジオルガノシロキサンのポリジオルガノシロキサンポリオキサミド類中での重量%は、より高分子量のポリジオルガノシロキサンセグメントを使用することによって増大させることができ、60重量%超、70重量%超、80重量%超、90重量%超、95重量%超、又は98重量%超の該ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド類中のポリジオルガノシロキサンセグメントを提供することができる。より多量のポリジオルガノシロキサンを使用して、妥当な強度を維持しつつ、より低弾性率のエラストマー材料を調製することができる。
【0072】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド類の幾つかは、当該材料を顕著に分解させること無しに、200℃以下、225℃以下、250℃以下、275℃以下、又は300℃以下の温度まで加熱することができる。例えば、空気の存在下で、熱重量分析器内で加熱した際に、コポリマー類は、多くの場合、毎分50℃の速度にて、20℃〜約350℃の範囲内で走査した際に、10%未満の重量喪失を持つ。更に、コポリマーは、多くの場合、冷却時に、検出できるほど機械的強度が低下しないことよって決定されるとき、明らかに分解することなく、空気中にて1時間、250℃のような温度で加熱することができる。
【0073】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマー類は、低いガラス転移温度、熱的安定性及び酸化安定性、耐紫外線性、低表面エネルギー及び低疎水性、数多くのガスに対する高透過性などのポリシロキサン類の望ましい特徴の多くを有する。更に、コポリマー類は、良好乃至優れた機械的強度を示す。
【0074】
別の有用な部類のシリコーンエラストマーのポリマーは、アミド系シリコーンポリマーである。かかるポリマーは、尿素連結(−N(D)−C(O)−N(D)−)のかわりにアミド連結(−N(D)−C(O)−)を含む尿素系ポリマーと類似し、ここで、C(O)はカルボニル基を、Dは水素又はアルキル基を表す。
【0075】
かかるポリマーは、種々の異なる手法で表され得る。前述の式IIに記載のポリジオルガノシロキサンジアミンから、アミド系ポリマーは、ポリカルボン酸又は例えばジエステル等のポリカルボン酸誘導体との反応によって調製することができる。幾つかの実施形態では、アミド系シリコーンエラストマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミンとアジピン酸のサリチル酸ジメチルとの反応によって調製される。
【0076】
アミド系シリコーンエラストマーへの代替的な反応経路は、カルボン酸エステル等のシリコーンジカルボン酸誘導体を利用する。シリコーンカルボン酸エステルは、シリコーンヒドリド(すなわち、末端にシリコーン−ヒドリド(Si−H)結合を有するシリコーン)とエチレン系不飽和エステルとのヒドロシリル化反応を介して調製されることができる。例えば、シリコーンジヒドリドは、例えば、CH=CH−(CH−C(O)−OR等のエチレン系不飽和エステルと反応して、ここで、C(O)はカルボニル基を表し、nは15までの整数であり、Rはアルキル、アリール又は置換アリール基であり、−Si−(CHn+2−C(O)−ORでキャップしたシリコーン鎖を産生することができる。−C(O)−OR基は、シリコーンジアミン、ポリアミン又はその組み合わせと反応することができるカルボン酸誘導体である。好適なシリコーンジアミン及びポリアミンは、上述されており、脂肪族、芳香族、又はオリゴマーのジアミン(エチレンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン等)が挙げられる。
【0077】
別の有用な部類のシリコーンエラストマーのポリマーは、シリコーンポリ尿素−ウレタンブロックコポリマー等のウレタン系のシリコーンポリマーである。シリコーンポリ尿素−ウレタンブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミンの反応生成物(シリコーンジアミンともいわれる)、ジイソシアネート、及び有機ポリオールを含む。かかる材料は、−N(D)−B−N(D)−連鎖が−O−B−O−連鎖に置き換えられることを除き、式Iの構造に構造的に非常に類似している。かかるポリマーの例は、例えば、米国特許第5,214,119号に記載されている。
【0078】
これらのウレタン系のシリコーンポリマーは、有機ポリアミンを有機ポリオールに置き換えることを除き、尿素系シリコーンポリマーと同様に調製される。典型的に、アルコール基とイソシアネート基との間の反応は、アミノ基とイソシアネート基との間の反応よりも遅いため、ポリウレタン化学反応で一般的に使用されるスズ触媒等の触媒が使用される。
【0079】
有用な部類のシリコーンポリマーの別例は、ポリジオルガノシロキサンポリマーである。好適なポリジオルガノシロキサンポリマーとしては、例えば、シラノール官能性部又はアルケニル官能性部を有する、ポリジメチルシロキサンポリマー及びポリジメチルジフェニルシロキサンポリマーが挙げられる。
【0080】
シリコーンポリジオルガノシロキサン系シリコーン感圧性接着剤組成物は、MQ樹脂及びポリジオルガノシロキサンを反応させることによって製造することができる。このような反応をさせるために、2種の異なった反応化学が通常用いられる。縮合化学及び付加硬化化学である。
【0081】
要約すると、縮合化学は、例えば、米国特許第2,736,721号、同第2,814,601号、同第4,309,520号、同第4,831,070号、同第2,857,356号、同第3,528,940号、及び同第5,308,887号;並びに英国特許第998,232号に記載されているように、トリオルガノシロキシ単位及びSiO4/2単位を含むシラノール官能性MQ粘着付与樹脂を、シラノールで末端ブロックされたポリジオルガノシロキサンと混合することを包含する。MQ樹脂及びポリジオルガノシロキサンは、相互縮合する(intercondensed)ことができ、これによって接着剤組成物の内部及び相互での縮合を提供する。共重合シリコーン樹脂とポリジオルガノシロキサンとの間の縮合は、周囲温度又は高温での触媒の存在下にて、あるいは高温での触媒の不存在下でのいずれかで実施され得る。
【0082】
シラノール官能ポリジオルガノシロキサンとシラノール官能MQ樹脂の分子間縮合物を含むシリコーン感圧性接着剤組成物は、上記のように、所望により、接着剤組成物を架橋するためのジアリールペルオキシド架橋剤などのフリーラジカル重合触媒を含むことができ、それによって「感圧接着剤技術のハンドブック(The Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology」(サタ(Satas)、1982年)に教示されるように、剥離性接着において僅かな損失のみで、シリコーン感圧性接着剤組成物の高温での剪断特性を向上させる。
【0083】
付加硬化化学によって調製されたシリコーン感圧性接着剤組成物は一般的に、アルケニル基を有するポリジオルガノシロキサン、RSiO1/2及びSiO4/2構造単位を含むMQシリコーン樹脂(式中、Rは先に定義されているように、以下の官能性:ケイ素結合水素、ビニル、アリル、プロペニル及び高級アルケニル基からなる群から選択されるものなどのシリコーン結合アルケニル基を有するもの)の1つ以上を有するか又はシラノールである)、所望により架橋若しくは鎖延長剤、並びに、シリコーン感圧接着剤組成物の硬化をもたらすプラチナ又は他の貴金属のヒドロシル化(hydrosilation)触媒を含む。このような組成物の例は、米国特許第3,527,842号、同第3,983,298号、同第4,774,297号、欧州特許公報第355,991号、及び同第393,426号、並びに日本公開特許平成2年第58587号中に見出される。
【0084】
広い範囲の市販のシリコーン感圧性接着剤組成物は好適である。このようなシリコーン感圧性接着剤組成物の例としては、ダウ・コーニング社製の280A、282、7355、7358、7502、7657、Q2−7406、Q2−7566及びQ2−7735;ゼネラル・エレクトリック社製のPSA 590、PSA 600、PSA 595、PSA 610、PSA 518(中程度のフェニル含有量)、PSA 6574(高含有量のフェニル)及びPSA 529、PSA 750−D1、PSA 825−D1、及びPSA 800−Cが挙げられる。「感圧接着剤技術のハンドブック(The Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technoloy)」(サタ(Satas)、1982年)、346ページに教示されるように、2つの異なるジメチルシロキサン系シリコーン感圧性接着剤組成物のブレンド、又は、米国特許第4,925,671号に記載されるような、ジメチルシロキサン系シリコーン感圧性接着剤組成物とジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン系感圧性接着剤組成物のブレンドなどの、シリコーン感圧性接着剤組成物の様々なブレンドもまた有用である。
【0085】
シリコーンエラストマーのポリマーは、溶媒系プロセス、無溶媒プロセス、又はこれらの組み合わせによって調製され得る。有用な溶媒系プロセスは、例えば、Tyagi et al.,「Segmented Organosiloxane Copolymers:2.Thermal and Mechanical Properties of Siloxane−Urea Copolymers」Polymer,vol.25,December,1984、及び米国特許第5,214,119号に記載されている。シリコーンエラストマーのポリマーを製造する有用な方法は、例えば、米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、及び同第5,461,134号、米国特許公開第2007−0148475号、及びPCT公開WO 96/35458号、同WO 98/17726号、同WO 96/34028号、及び同WO 97/40103号に記載されている。
【0086】
有用なシリコーン系感圧性接着剤組成物は、典型的に、MQ粘着付与樹脂及びシリコーンエラストマーのポリマーを含む。MQ粘着付与樹脂及びシリコーンエラストマーのポリマーは、概してMQ粘着付与樹脂とシリコーンポリマーとのブレンドという形で存在する。典型的には、シリコーンポリマーは、シリコーン系感圧性接着剤組成物中に、約30重量%〜約90重量%、約30重量%〜約85重量%、約30重量%〜約70重量%、あるいは更に約45重量%〜約55重量%の量で存在することが好ましい。MQ粘着付与樹脂は、存在する場合、典型的に、少なくとも10重量%の量で存在する。幾つかの実施形態では、MQ粘着付与樹脂は、シリコーン系感圧性接着剤組成物中に、約15重量%〜約70重量%、約30重量%〜約70重量%、又は約40重量%〜約60重量%、あるいは更に約45重量%〜約55重量%の量で存在することが好ましい。
【0087】
有用なMQ粘着付与樹脂には、例えばMQシリコーン樹脂、MQDシリコーン樹脂及びMQTシリコーン樹脂が挙げられ、それらは、コポリマーシリコーン樹脂と呼ばれることもあり、典型的に、約100〜約50,000、又は約500〜約20,000の数平均分子重量を有し、一般的にメチル置換基を有する。MQシリコーン樹脂には、非官能性樹脂及び官能性樹脂の両方が包含され、官能性樹脂は、例えばシリコン結合水素、シリコン結合アルケニル、及びシラノールを含む1種以上の官能基を有する。
【0088】
MQシリコーン樹脂類は、R’SiO1/2単位(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)とを有する共重合性シリコーン樹脂類である。かかる樹脂は、例えば、「高分子科学技術百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)」(ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)、ニューヨーク(New York)、1989年、第15巻、265〜270頁)、米国特許第2,676,182号、同第3,627,851号、同第3,772,247号及び同第5,248,739号に記載されている。官能基を有するMQシリコーン樹脂は、米国特許第4,774,310号(これは、シリル水素化物基を記載している)、同第5,262,558号(ビニル基及びトリフルオロプロピル基を記載している)、及び米国特許第4,707,531号(これは、シリル水素化物基及びビニル基について記載している)に記載されている。上述の樹脂は、一般に、溶媒中で調製される。乾燥又は無溶媒MQシリコーン樹脂は、米国特許第5,319,040号、同第5,302,685号、及び同第4,935,484号に記載されるように調製される。
【0089】
MQDシリコーン樹脂は、例えば、米国特許第5,110,890号及び日本公開特許平成2年第36234号に記載されているような、R’SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、及びR’SiO2/2単位(D単位)を有するターポリマーである。
【0090】
MQTシリコーン樹脂は、RSiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、及びRSiO3/2単位(T単位)(MQT樹脂)を有するターポリマーである。
【0091】
市販のMQ樹脂は、トルエン中のSR−545MQ樹脂(ゼネラル・エレクトリック社・シリコーン樹脂部門(General Electric Co., Silicone Resins Division)(ニューヨーク州ウォーターフォード)から入手可能)及びトルエン中のMQ樹脂であるMQOH樹脂(PCR社(PCR, Inc.)(フロリダ州ゲーンズビル)から入手可能)を含む。このような樹脂は、一般に、有機溶剤中で供給される。MQシリコーン樹脂のこれら有機溶液類は、そのまま使用してよいし、当該技術分野において既知の多数の技法、例えば、スプレー乾燥、オーブン乾燥、及び蒸気分離によって乾燥してMQシリコーン樹脂を不揮発性含量100パーセントで提供してもよい。MQシリコーン樹脂はまた、2種以上のシリコーン樹脂のブレンドを含有することも可能である。
【0092】
シリコーンエラストマーのポリマーが種々のプロセスより調製され得るのと同様に、シリコーン系感圧性接着剤組成物もまた、種々のプロセスによって調製され得る。組成物は、溶媒系プロセス、無溶媒プロセス又はその組み合わせにおいて調製され得る。
【0093】
溶媒系プロセスにおいて、MQシリコーン樹脂は、使用される場合、ポリアミン及びポリイソシアネート等のポリマーを形成するために使用される反応物質が反応混合物中に導入される前、途中、後に導入されることができる。反応は、溶媒中又は溶媒の混合物中で実行され得る。溶剤は、反応物質と反応しないことが好ましい。出発材料及び最終生成物は、重合中又はその完了後、溶媒中に完全に混和したままであることが好ましい。これらの反応は、室温で、又は反応溶媒の沸点以下で実施することが可能である。反応は、概して50℃までの周囲温度で実行される。加えて、エラストマーのポリマーは、ポリマーが形成された後に、MQ樹脂が後に加えられた溶媒混合物中で調製され得る。
【0094】
実質的に無溶媒プロセスにおいて、ポリマーを形成するために使用される反応物質及びMQシリコーン樹脂は、使用される場合、反応装置内で混合され、反応物は、シリコーンエラストマーのポリマーを形成するために反応され、故に感圧性接着剤組成物を形成する。加えて、シリコーンエラストマーのポリマーは、例えば、ミキサー又は押出成形機等の無溶媒プロセス中で作製され、単離されるか、又は単に押出成形機に移送されてMQシリコーン樹脂と混合されることができる。
【0095】
溶媒系プロセスと無溶媒プロセスとの組み合わせを包含する1つの有用な方法には、シリコーンエラストマーのポリマーを無溶媒プロセスで調製した後、シリコーンエラストマーのポリマーとMQ樹脂溶液とを溶媒中で混合することが包含される。
【0096】
光学的に透明な延伸剥離性感圧性接着剤は、フィルム形態であり得る。かかるフィルムは、自立であり得、又は基材上に配置され得る。基材は、剥離ライナー、剛体面、テープ裏材、フィルム、又はシートであり得る。延伸剥離性感圧接着剤フィルムは、感圧接着剤フィルムを調製するための種々の一般的な方法を使用して調製されることができる。例えば、感圧性接着剤組成物は、剥離ライナー上にコーティングされるか、直接基材又は裏材上にコーティングされるか、又は別の層として形成され(例えば、剥離ライナー上にコーティングされる)、次に基材にラミネートされることができる。幾つかの実施形態では、感圧接着剤フィルムは、付着テープであり、すなわち、感圧接着剤フィルムは、2つの剥離ライナーの間に配置される。
【0097】
幾つかの実施例では、接着剤の一方又は両方の主表面に対し、微細構造表面を付与することが好ましい場合がある。接着剤の少なくとも一表面に微細構造表面を持たせることにより、ラミネーションの際の空気排出を助けることが望ましい場合がある。接着剤フィルムの一方又は両方の表面に微細構造表面を持たせることが望ましい場合は、接着剤コーティング又はフィルムは、微細構造を含んだツール又はライナーの上に配置することができる。次いで、ライナー又は用具を取り除いて、微細構造化表面を有する接着剤フィルムを露出させてもよい。光学的用途においては一般に、光学的特性との干渉を防ぐため、微細構造は時間と共に消失することが望ましい。
【0098】
幾つかの実施形態では、感圧接着剤フィルムは、単層からなる。他の実施形態では、感圧接着剤フィルムは、多層からなり、すなわち、感圧性接着剤に加えて追加の層が存在する。多層が存在する場合、追加の層は、追加の層が光学的に透明であり、延伸可能であり、光学的に透明な延伸剥離性感圧性接着剤の機能を抑制する限り、フィルム、発泡体、又は追加のエラストマー若しくは感圧性接着剤であってもよい。エラストマー又は感圧性接着剤が追加の層として使用される場合、エラストマー又は感圧性接着剤は、標準的な溶媒型及び/又は無溶剤技術を使用して調製され得る。幾つかの無溶媒技術では、追加のエラストマー又は感圧性接着剤層は、コートアンドキュア(coat and cure)技術によって調製され得る。この技術において、コーティング可能な混合物は、ウェブ(例えば剥離ライナー等)の上にコーティングされるか、又は本開示の感圧フィルムの上にコーティングされ、次に概して光化学的に硬化され得る。コーティング可能な混合物がモノマーのみを含有する場合、粘度は直ちにコーティング可能であるほどには高くない場合がある。コーティング可能な粘度を有する混合物を生成するために、幾つかの技術が使用され得る。高分子又は比較的に高分子の種等の粘度調整剤が追加されてもよく、又は例えば米国特許第6,339,111号(Moon,et al.)に記載の如く、モノマー混合物は部分的に予備重合されてコーティング可能なシロップ剤を生成することができる。
【0099】
幾つかの実施形態では、延伸剥離性感圧接着剤フィルムは、裏材上に配置されるテープの形状であることができる。裏材は、単層及び多層構造を含むことができる。有用な裏材には、かかる裏材が適切な光学的及び伸長性特性を有するならば、例えば、ポリマー発泡体層、高分子フィルム層、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
潜在的に有用な裏材の材料は、米国特許第5,516,581号及びPCT公開第WO 95/06691に開示されている。
【0101】
ポリマー発泡体層又は固体高分子フィルム層用に潜在的に有用なポリマー裏材の材料の代表例としては、例えば高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、及び鎖状超低密度ポリエチレンを含むポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブチレン等のポリオレフィン、例えば、可塑化及び非可塑化の両ポリ塩化ビニル、及びポリ酢酸ビニル等のビニル共重合体、例えば、エチレン/メタクリル酸塩共重合体、エチレン/ビニルアセチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、及びエチレン/プロピレン共重合体等のオレフィンコポリマー、アクリルポリマー及びコポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ポリプロピレン/ポリエチレン、ポリウレタン/ポリオレフィン、ポリウレタン/ポリカーボネート、ポリウレタン/ポリエステルなどの任意のプラスチック又はプラスチック及びエラストマー物質の混合物又はブレンドも使用できる。
【0102】
ポリマー発泡体は、テープが、表面不規則性、例えば塗装済人造壁板を有する表面へ接着されるときに有用である、順応性及び弾力性などのテープ特性を最適化するために選択することができる。順応性及び弾力性のポリマー発泡体は、接着剤テープが、表面不規則性を有する表面へ接着される用途によく適している。これは、典型的な壁表面の場合である。裏材に使用されるポリマー発泡体層は、剥離を実現するために発泡体を延伸する場合、テープ構造の一部分において、概して約32〜約481kg/m(2〜約30ポンド/立方フィート)の密度を有する。
【0103】
剥離を実現するために、多層裏材のポリマーフィルム又は発泡体層の1つだけを延伸しようとする場合には、その層は、十分な物理的性質を示すべきであると共に、その目的を達成するために十分な厚みがなければならない。
【0104】
高分子フィルムは、テープの耐荷重の強度及び破壊強度を増加させるために使用され得る。滑らかな表面を共に接着するという用途には、フィルムが特に適している。高分子フィルム層は典型的に、約10マイクロメートル(0.4mil)〜約254マイクロメートル(10mil)の厚みを有する。
【0105】
裏材は、エラストマー材料を含むことができる。好適なエラストマー系裏地材料としては、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリクロロプレン(すなわち、ネオプレン)、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シス−1,4−ポリイソプレン、エチレン−プロピレンターポリマー(例えば、EPDMゴム)、シリコーンゴム、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー等のシリコーンエラストマー、ポリウレタンゴム、ポリイソブチレン、天然ゴム、アクリレートゴム、熱可塑性ゴム、例えば、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー及びスチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー並びに熱可塑性ポリオレフィンゴム材料が挙げられる。
【0106】
多層構造において光学的透明度及び延伸性を保持する潜在的困難のため、多くの実施形態では、感圧接着剤フィルムは単層構造である。
【0107】
光学的に透明な延伸剥離性感圧接着剤フィルムには、図1に図示されるように、粘着性タブを含む。図1において、16及び18は基材であり、12は光学的に透明及び延伸剥離性の感圧接着剤フィルムである。粘着性タブは、10で表される。ユーザーは、取り外し工程中に、当該粘着性タブ10を延伸するため把持して引っ張り、貼り付けてある対象体又は基材からそのテープを取り外すことができる。粘着性タブは、光学的に透明な延伸剥離性感圧性接着剤の延長である。多くの光学的使用において、タブのサイズを最小におさえることが望ましいため、タブの粘着性は、ユーザーがタブを把持することを補助する。
【0108】
図1は、ユーザーが感圧性接着剤を延伸剥離するために好適な一構造を示すが、他の構造も可能である。とりわけ、剛体又は非剛体のどちらかの基材のうちの1つについて、粘着性タブと重なり合うセグメントを有することが望ましい。この重なり合うセグメントは、感圧性接着剤の可使時間中に粘着性タブを隠す役割をし得るが、粘着性タブに永久的に接着されるものではない。典型的に、重なり合いは、取り外し可能であるか、又はユーザーが粘着性タブを把持することを妨げないように設置される。取り外し可能な重なり合いの例としては、引き離しストリップ、剛体基材の離脱セグメント等が挙げられる。
【0109】
幾つかの用途では、感圧接着剤フィルムの延伸剥離を補助するように、巻き上げツール等の回収ツールを使用することが望ましい。かかるツールは、感圧接着剤フィルムが除去される際に、感圧接着剤フィルムを回収することを補助することができる。かかるツールの一例は巻き上げツールであり、これは粘着性タブが付加される、感圧接着剤フィルムが延伸剥離される際に感圧接着剤フィルムの巻き取りを可能にするための、プラスチック、木材、金属、厚紙等のような簡易なものであってもよいし、より複雑な器具であってもよい。回収ツールを用いた感圧接着剤フィルムの回収は、例えば、工場の組立ライン等のようにスペースが限られている場合、感圧接着剤フィルムの継続的な直線延伸よりも望ましい場合がある。
【0110】
延伸剥離性感圧接着剤フィルムは、物品を製造するために使用され得る。かかる物品には、光学フィルム、基材又は両方を含み得る光学物品が挙げられる。光学物品は、情報ディスプレイ、窓覆い、図形物品、手持ち式電子機器、投影システム、保護フィルム、タッチセンサー等を含む、多様な光学用途において使用され得る。
【0111】
情報ディスプレイ装置の例としては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、フロント及びリアプロジェクションディスプレイ、陰極線管及び標識を含む、広範な表示域構成を有する装置が挙げられる。このような表示域構成を、携帯情報端末、携帯電話、タッチスクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、汎世界測位システム、測深器、計算機、電子書籍、CD又はDVDプレーヤー、投射型テレビスクリーン、コンピューターモニター、ノートパソコンのディスプレイ、計器、計器パネルカバー、グラフィックディスプレイ(戸内及び戸外グラフィック、バンパーステッカー等を含む)反射シート等を含む、種々の持ち運び可能な及び持ち運びできない情報ディスプレイ装置で使用することができる。
【0112】
2つの剛体基材及び当該の2つの剛体基材の間に感圧接着剤フィルムを含む物品が提供される。本明細書で使用される「剛体基材」という用語は、剛体又は実質的に剛体である基材を表す。例えば、剛体基材には、板ガラス、硬質高分子シート及びディスプレイ表面を含む。一方の剛体基材の他方の剛体基材へのラミネーションの用途の例としては、例えば、反射防止(AR)又は保護カバーガラス等の剛体シートによって保護されたCRT(ブラウン管)及びLCD(液晶ディスプレイ)ディスプレイ画面が挙げられる。かかるラミネーションを利用し得るデバイスの例としては、携帯情報端末、携帯電話、タッチスクリーン、腕時計、自動車ナビゲーションシステム、衛星利用測位システム、投影テレビ画面、コンピューターモニター、ノートパソコンディスプレイ等のデバイスを含む、移動式又は非移動式の情報ディスプレイデバイスが挙げられる。剛体カバーのディスプレイ画面への固着、従って剛体カバーとディスプレイ画面との間のあらゆる空隙を取り除くことは、表示される画像の質を向上させるということが報告されている。
【0113】
延伸剥離性の光学的に透明な感圧性接着剤は、これらを含むデバイスの製造中に欠陥が検出された場合、感圧性接着剤を延伸剥離することにより剛体カバーを除去し、デバイスが再びラミネートされて欠陥のないラミネーションを提供することができるため、かかるシステムにおいてとりわけ有用である。また、デバイスの耐用年限にわたり、交換又はリサイクルのために剛体カバーシートを除去することが望ましい場合、剛体カバーは光学的感圧性接着剤を延伸剥離することにより除去されることができる。かかる除去は、硬化光学接着剤を用いては不可能であり、感圧性接着剤を用いても非常に困難である。
【0114】
光学フィルムと、光学フィルムの少なくとも1つの主表面に隣接する、感圧性接着剤フィルムとを含む物品が提供される。物品は、別の基材(例えば、感圧性接着剤層に恒久的又は一時的に接合しているもの)、別の接着剤層、又はこれらの組み合わせを更に含み得る。本明細書で使用するとき、用語「隣接する」を用いて、直接接触する、又は1層以上の層若しくはフィルムにより分離された、2つの層又はフィルムを指すことができる。しばしは、隣接する層又はフィルムは、直接接している。
【0115】
幾つかの実施形態において、結果として得られる物品は光学エレメントであってよいし、光学エレメントを調製するために使用することもできる。本明細書で使用される用語「光学エレメント」は、光学的効果又は光学的用途を有する物品を指す。光学エレメントは、例えば、電子機器ディスプレイ、建設用途、交通用途、プロジェクション用途、光通信用途、及びグラフィックス用途に使用することができる。好適なエレメントには、スクリーン又はディスプレイ、陰極線管、偏光器、反射器、タッチセンサーなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0116】
任意の好適な光学フィルムを物品に使用することができる。本明細書で使用される用語「光学フィルム」は、光学的効果を生み出すために使用できるフィルムを指す。光学フィルムは通常、単層又は複層であり得る、ポリマー含有フィルムである。光学フィルムは可撓性であり、好適な任意の厚さにすることができる。光学フィルムはしばしば、電磁スペクトルの一部の波長(例えば、電磁スペクトルの可視紫外線範囲又は赤外線範囲の波長)に対して、少なくとも部分的に透過性、反射性、反射防止性、偏光性、光学的に透明、又は拡散性である。代表的な光学フィルムには、可視光鏡面フィルム、カラー鏡面フィルム、太陽光反射フィルム、赤外線反射フィルム、紫外線反射フィルム、反射偏光フィルム(輝度上昇フィルム及びデュアル輝度上昇フィルムを含む)、吸収性偏光フィルム、光学的に透明なフィルム、色付きフィルム、及び反射防止性フィルムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
幾つかの実施形態では、光学フィルムはコーティングを含む。一般に、コーティングを用いて、フィルムの機能を高める、又はフィルムに更なる機能を提供することができる。コーティングの例としては、例えば、ハードコート、防曇コーティング、耐引っ掻きコーティング、プライバシーコーティング、又はこれらの組み合わせが挙げられる。耐久性の高いハードコート、防曇コーティング、及び耐引っ掻きコーティングのようなコーティングは、例えば、タッチスクリーンセンサ、ディスプレイスクリーン、グラフィックス用途等のような用途において望ましい。プライバシーコーティングの例としては、例えば、視界をぼんやりさせるための、ぼやけた(blurry)若しくは濁ったコーティング、又は視野角を制限するためのルーバー付フィルムが挙げられる。
【0118】
幾つかの光学フィルムは、ポリマー(例えば、染料を含むポリマー又は含まないポリマー)を含有する材質の複数の層、又は金属含有材質とポリマー材質との複数の層を有する。幾つかの光学フィルムは、異なる屈折率を有するポリマー材質を交互に重ねた層を有する。他の光学フィルムは、ポリマー層と金属含有層とを交互に重ねた層を有する。代表的な光学フィルムは、米国特許第6,049,419号、同第5,223,465号、同第5,882,774号、同第6,049,419号、同第RE 34,605号、同第5,579,162号、及び同第5,360,659号に記載されている。
【0119】
物品に含まれる基材には、ポリマー材質、ガラス材質、セラミックス材質、金属含有材質(例えば、金属又は金属酸化物など)、又はこれらの組み合わせが含まれ得る。基材は、支持層、プライマー層、ハードコート層、装飾デザインなどの材料の複数層を含み得る。基材は、接着剤フィルムに恒久的に又は一時的に接合され得る。例えば、剥離ライナーを一時的に接合させ、別の基材に接着剤フィルムを接合する際に除去することができる。
【0120】
基材は、例えば、可撓性、剛性、強度若しくは支持、反射性、反射防止性、偏光性、又は透過性(例えば、異なる波長に対して選択的に)をもたらすなど、さまざまな機能を有し得る。すなわち、基材は可撓性又は剛性であり得、反射性又は非反射性であり得、視覚的に透明、着色しているが透過性、又は不透明(例えば、非透過性)であり得、及び偏光性又は非偏光性であり得る。
【0121】
代表的な基材には、液晶ディスプレイ又は陰極線管などの電子機器ディスプレイの外側表面、窓又は窓ガラスの外側表面、光学構成要素(反射器、偏光器、回折格子、鏡、又はレンズなど)の外側表面、その他のフィルム(装飾フィルム、他の光学フィルムなど)、若しくは同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
ポリマー基材の代表的な例には、ポリカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレート)、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、セルローストリアセテート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーなどを含むものが挙げられる。
【0123】
他の実施形態において、基材は剥離ライナーである。任意の好適な剥離ライナーを使用することができる。好適なライナーの例としては、例えば、クラフト紙等の紙、又は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエステル等の高分子フィルムが挙げられる。ライナーの少なくとも1つの表面は、シリコーン、フッ素性化学物質、又は他の低表面エネルギー系の剥離材料を用いて処理され、剥離ライナーを提供することができる。好適な剥離ライナー類及びライナーの処理方法は、米国特許第4,472,480号、同第4,980,443号、同第4,736,048号に記載されている。該ライナーは、その表面に微細構造を有することができ、それは接着剤に付与されて、接着剤フィルムの表面上に微細構造を形成する。次にライナーを除去して、微細構造表面を有する接着剤フィルムを露出させることができる。
【0124】
剥離ライナーには、線、ブランドのしるし、又は他の情報を印刷することができる。
【0125】
接着剤フィルムの厚みは、少なくとも約20マイクロメートルである傾向があり、通常約1,500マイクロメートルを上回らない。幾つかの実施形態では、厚みは、25〜1,270マイクロメートル、50〜1,000マイクロメートル、又は100〜750マイクロメートルである。
【実施例】
【0126】
これらの実施例は、単に例示のためのものに過ぎず、添付の請求項の範囲を限定することを意図するものではない。実施例及び明細書の他の箇所における全ての部、パーセント、比等は、他に記載がない限りにおいて、重量当たりである。使用した溶媒類及びその他の試薬類は、特に記載のない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のシグマ−アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)より入手した。
【0127】
【表1】

【0128】
試験方法
当量を決定するための滴定法
10(10)グラム(正確に計量する)の試験される化合物を瓶型容器に入れた。約50グラムのTHF溶媒(正確な計量ではない)を添加した。混合物が均質になるまで、電磁撹拌棒を使用して内容物を混合した。前駆体の理論当量を計算し、次にその当量数の3〜4倍の範囲の量のN−ヘキシルアミン(正確に計量した)を添加した。反応混合物を最低4時間撹拌した。ブロモフェノールブルー(10〜20滴)を添加し、内容物が均質になるまで混合した。混合物を黄色の終点まで1.0N塩酸にて滴定した。前駆体の当量数は、試料に加えたN−ヘキシルアミンの当量数から、滴定中に加えた塩酸の当量数を差し引いたものに等しかった。当量(グラム/当量)は、前駆体のサンプル重量を前駆体の当量数で割ったものに等しかった。
【0129】
固有粘度(IV)
平均固有粘度(IV)は、キャノン・フェンスケ(Canon-Fenske)粘度計(型式50番P296)を使用して、30℃、0.2グラム/デシリットル濃度のTHF溶液中にて、30℃で測定した。試験される材料の固有粘度は、0.1〜0.4グラム/デシリットルの範囲の濃度とは実質的に無関係であることが判明した。平均固有粘度は、3回以上の測定の平均とした。平均固有粘度を決定するための任意の変法は、具体例に記述されている。
【0130】
接着剤フィルムの調製及び延伸剥離試験
接着剤組成物をLoparex 5100 PET剥離ライナー(Loparex LLC,Willowbrook,Illinois)の剥離ライナーの上にコーティングし、178マイクロメートル(7mil)の厚さまで乾燥させた。接着剤を0.64センチメートル(0.25インチ)の厚さでガラス板にラミネートし、約0.64センチメートル(0.25インチ)のタブがガラス板の縁を覆うようにして粘着性タブを形成した。剥離ライナーを除去し、第2のガラス板を露出した接着面にラミネートして、粘着性タブを有するガラス/接着剤/ガラス構造を形成した。ガラス表面に対して約0度の角度で粘着性タブを把持して引っ張り、2片のガラスを剥離した。両方のガラス板について、接着剤の残留物を確認した。
【0131】
光学特性
8センチメートル×5センチメートル、厚さ51ミリメートルの一片のポリエステル上に接着剤のラミネートを調製し、厚さ51マイクロメートルの剥離ライナーで覆い、BYK−Gardner USA(メリーランド州、コロンビア(Columbia))から市販されているHB 4725 Haze−Gard Plusを使用してこれらの特性を測定することにより、接着剤試料の透過率、ヘイズ及び透明度が試験された。
【0132】
180°剥離接着性
この剥離接着試験は、ASTM D 3330−90に記載の試験法と同様であり、ガラス基材を該試験に記載のステンレス鋼基材の代用とする。
【0133】
特に記載のない限り、ポリエステルフィルム上の厚さ178マイクロメートル(7mil)の接着剤コーティングは、1.27センチメートル×15センチメートルのストリップに切断された。各ストリップは次に、2キログラムのローラーを用いてそのストリップ上を一度通過させて、10センチメートル×20センチメートルの清潔な溶媒洗浄されたガラス製試片に付着させた。固着したアセンブリは、室温で約1分間放置後、180°剥離接着力について、IMASS滑り/剥離試験機(型式3M90、Instrumentors Inc.(オハイオ州、ストロングスビル(Strongsville))から市販)を用い、5秒間のデータ収集時間にわたって2.3メートル/分(90インチ/分)の速度で試験した。2つの試料を試験した;報告された剥離接着値は、2つの試料の各々からの剥離接着値の平均値であった。剥離接着値は、オンス/インチで記録し、ニュートン/デシメートル(N/dm)に変換される。
【0134】
実施例1
モル比1/1/2のシリコーンジアミン/ポリアミン−1/H12MDIを含むエラストマーを有する感圧性接着剤組成物を、50重量%MQ樹脂−1で配合した。当該配合は、14.86部のPDMSジアミン33,000を0.05部のポリアミン−1,39.00部のトルエン及び21.00部の2−プロパノールと共にガラス反応器に入れて調製した。0.23部のH12MDIを溶液に加え、混合物を室温で2時間撹拌すると粘性となった。これに、25.00部のMQ樹脂−1を加えた。上記の接着剤フィルム調製及び延伸剥離試験方法を使用して溶液をコーティングした。どちらのガラス板にも接着剤残留物は見られなかった。上記に記載の試験方法を使用して、光学特性及び180°引き剥がし粘着力が測定された。データを表1に示す。
【0135】
実施例2
実施例1で調製された同一のエラストマーを有する感圧性接着剤組成物を30重量MQ樹脂−1と共に使用した。上記の接着剤フィルム調製及び延伸剥離試験方法を使用して溶液をコーティングした。どちらのガラス板にも接着剤残留物は見られなかった。上記に記載の試験方法を使用して、光学特性及び180°引き剥がし粘着力が測定された。データを表1に示す。
【0136】
実施例3
実施例1で調製された同一のエラストマーを有する感圧性接着剤組成物を15重量MQ樹脂−1と共に使用した。上記の接着剤フィルム調製及び延伸剥離試験方法を使用して溶液をコーティングした。どちらのガラス板にも接着剤残留物は見られなかった。上記に記載の試験方法を使用して、光学特性及び180°引き剥がし粘着力が測定された。データを表1に示す。
【0137】
調製例1
14K PDMSジアミンの試料(830.00グラム)を、機械的撹拌機、加熱マントル、窒素導入用チューブ(ストップコック付き)、及び排出管を装備した2リットルの3つ口樹脂フラスコ内に入れた。フラスコを窒素で15分間パージし、次に、激しく撹拌し、ジエチルオキサレート(33.56グラム)を滴加した。本反応混合物を約1時間、室温で撹拌し、次に、80℃にて75分間撹拌した。反応フラスコに、蒸留アダプタ及び蒸留レシーバを装着した。反応混合物を真空下(133パスカル、1トール)、120℃にて2時間加熱し、次に、130℃にて30分間、更なる留出物を回収することができなくなるまで加熱した。反応混合物を室温まで冷却すると、エチルオキサリルアミドプロピルを末端とするPDMSジアミンが提供された。透明な流動性の液体のガスクロマトグラフィー分析は、検出可能な濃度のジエチルオキサレートが残存していないことを示した。エステル当量は、H NMR(7,916グラム/当量に等しい当量)を使用し、滴定(8,272グラム/当量に等しい当量)することによって決定した。
【0138】
実施例4
20℃のステンレススチールの反応槽に、調製例1の18,158.4グラムの前駆体を入れた。容器を撹拌し(75rpm)、窒素フローでパージし、15分間真空にした。槽を25分間にわたって80℃まで加熱した。73.29グラムのMXDAを槽に真空チャージし73.29グラムのトルエンを次に続けた(やはり真空チャージした)。槽を6,895パスカル(1psig)まで加圧し、120℃まで加熱した。30分後、槽を150℃まで加熱した。一旦15℃の温度に到達させ、槽の圧力を5分間かけて解放(vent)した。槽を、40分間真空(およそ65kPa)に供して、エタノール及びトルエンを除去した。次に、槽を13790Pa(2psig)まで加圧し、粘稠な溶融ポリマーをテフロン(登録商標)コーティングしたトレイに排出し、冷却した。冷却されたシリコーンポリオキサミド生成物である、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーを微粒ペレットへと粉砕した。この材料のIVは、0.829g/dL(THF中)であると測定された。
【0139】
得られたポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーをエチルアセテートに溶解し、7.42部のMQ樹脂−1と混合して、50%重量のMQ樹脂−1を有する感圧性接着剤組成物を形成した。上記の接着剤フィルム調製及び延伸剥離試験方法を使用して溶液をコーティングした。どちらのガラス板にも接着剤残留物は見られなかった。上記に記載の試験方法を使用して、光学特性を測定した。データを表1に示す。
【0140】
実施例5
この実施例は、エラストマーの形成において、1.0モル%のMXDAが、等しいモル数のEDに置き換えられたことを除き、実施例4と同じように調製された。エラストマーを30%重量のMQ樹脂−1と混合して感圧性接着剤組成物を形成した。上記の接着剤フィルム調製及び延伸剥離試験方法を使用して溶液をコーティングした。どちらのガラス板にも接着剤残留物は見られなかった。上記に記載の試験方法を使用して、光学特性及び180°引き剥がし粘着力が測定された。データを表1に示す。
【0141】
実施例6
この実施例は、実施例5と同一のエラストマーを用いて調製され、15%重量MQ樹脂−1と混合して感圧性接着剤組成物を形成した。上記の接着剤フィルム調製及び延伸剥離試験方法を使用して溶液をコーティングした。どちらのガラス板にも接着剤残留物は見られなかった。上記に記載の試験方法を使用して、光学特性及び180°引き剥がし粘着力が測定された。データを表1に示す。
【0142】
【表2】

【0143】
実施例7
152.2部のサリチル酸メチル及び101.2部のトリエチルアミンのトルエン溶液(30%)へ、撹拌しながら91.5部のアジピン酸クロリドの40%トルエン溶液を滴加した。トリエチルアミン塩酸塩の沈殿物が即座に生じた。撹拌は、添加の完了後1時間続けた。混合物を濾過し、濾液が乾燥するまでロータリーエバポレーター内で蒸発させて、白色結晶性固体を得た。生成物たるアジピン酸のサリチル酸ジメチルをヘキサン中でスラリー化させ、濾過しかつオーブン内で乾燥させることにより分離した。生成物は、TLC及びNMRスペクトルによって単一体であることが確認できた。
【0144】
526.0部の5K PDMSジアミン30重量%溶液及びイソプロピルアルコール中の11.6部のヘキサメチレンジアミンを調製した。82.9部のサリチル酸メチルアジピン酸エステル(上記のように調製した)の30重量%イソプロピルアルコール溶液を調製し、かつこの溶液を第1溶液へ急速に添加した。透明溶液を室温で一晩撹拌し、その間、溶液粘度は急激に上昇した。溶液をガラス皿の中へキャストし、溶媒を数時間かけて蒸発させ、オーブン内70℃にて一晩かけて完全に乾燥させて、透明で強いエラストマーフィルムであるシリコーンポリアジパミドを得た。シリコーンポリアジパミドを、50重量%メチルエチルケトン/50重量%イソプロパノールブレンド中に10重量%固形分にて溶解させた。
【0145】
実施例8
PSA−1を使用して接着剤組成物を調製した。PSA−1の分散を0.5重量%のジクロロベンゾニルペルオキシドで硬化し、76マイクロメートル(3mil)の乾燥厚みまで剥離ライナー上にコーティングした。コーティングした接着剤をそれ自体の上に折り畳み、152マイクロメートル(6mil)の接着層を形成した。接着剤を0.64センチメートル(0.25インチ)の厚さでガラス板にラミネートし、約0.64センチメートル(0.25インチ)のタブがガラス板の縁を覆うようにして粘着性タブを形成した。剥離ライナーを除去し、第2のガラス板を露出した接着面にラミネートして、粘着性タブを有するガラス/接着剤/ガラス構造を形成した。ガラス表面に対して約0度の角度で粘着性タブを把持して引っ張り、2片のガラスを剥離した。どちらのガラス板にも接着剤残留物は見られなかった。
【0146】
実施例9
モル比1/1/2のシリコーンジアミン/ポリアミン−1/H12MDIを含むエラストマーを有する感圧性接着剤組成物を、58重量%MQ樹脂−1で配合した。当該配合は、14.86部のPDMSジアミン33,000を0.05部のポリアミン−1,39.00部のトルエン及び21.00部の2−プロパノールと共にガラス反応器に入れて調製した。0.23部のH12MDIを溶液に加え、混合物を室温で2時間撹拌すると粘性となった。これに、29.00部のMQ樹脂−1を加えた。溶液を剥離ライナーの上にコーティングし、乾燥して25マイクロメートル(1mil)厚さの乾燥接着コーティングを形成した。この接着剤の2つのサンプルを転写テープ−1のそれぞれの面にラミネートして、178マイクロメートル(7mil)の厚さを有する3層構造を得た。この多層構造を、2つの顕微鏡スライドの間にラミネートし、約0.64センチメートル(0.25インチ)のタブがガラス板の縁を覆うようにして粘着性タブを形成した。室温に24時間置いた後、スライドは手指によって分解することができなかった。粘着性タブを角度ゼロで結合ラインから引っ張ると、テープは破れることなく結合ラインから延伸することができた。2つのガラスのスライドは分かれ、接着剤残留物はどちらの面にも見られなかった。
【0147】
実施例10
モル比1/1/2のシリコーンジアミン/ポリアミン−1/H12MDIを含むエラストマーを有する感圧性接着剤組成物を、58重量%MQ樹脂−1で配合した。当該配合は、14.86部のPDMSジアミン33,000を0.05部のポリアミン−1,39.00部のトルエン及び21.00部の2−プロパノールと共にガラス反応器に入れて調製した。0.23部のH12MDIを溶液に加え、混合物を室温で2時間撹拌すると粘性となった。これに、29.00部のMQ樹脂−1を加えた。溶液を剥離ライナーの上にコーティングし、乾燥して厚さ25マイクロメートル(1mil)の乾燥接着コーティングを形成した。転写テープ−2のサンプルを相互にラミネートして、厚さ102マイクロメートル(4mil)の転写テープを形成し、試験接着剤の2つのサンプルを厚さ2倍の転写テープ−2の両面にラミネートすると、厚さ152マイクロメートル(6mil)の3層構造を得た。この多層構造を、2つの顕微鏡スライドの間にラミネートし、約0.64センチメートル(0.25インチ)のタブがガラス板の縁を覆うようにして粘着性タブを形成した。室温に24時間置いた後、スライドは手指によって分解することができなかった。粘着性タブを角度ゼロで結合ラインから引っ張ると、テープは破れることなく結合ラインから延伸することができた。2つのガラスのスライドは分かれ、接着剤残留物はどちらの面にも見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸剥離性接着剤フィルムであって、
シリコーン感圧性接着剤組成物と、
粘着性タブと、を含む、延伸剥離性接着剤フィルム。
【請求項2】
前記感圧性接着剤組成物が、尿素系シリコーン共重合体、オキサミド系シリコーン共重合体、アミド系シリコーン共重合体、ウレタン系シリコーン共重合体、ポリジオルガノシロキサンポリマー、及びこれらの混合物からなる群から選択されるエラストマーのシリコーンポリマーを含む、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項3】
前記感圧性接着剤組成物が、
エラストマーのシリコーンポリマーと、
約10重量%〜約70重量%のMQ樹脂と、を含む、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項4】
前記感圧性接着剤組成物が、単層を含む、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項5】
前記感圧性接着剤が、光学的に透明である、請求項4に記載の接着剤フィルム。
【請求項6】
前記感圧性接着剤が、伸張可能である、請求項5に記載の接着剤フィルム。
【請求項7】
追加の伸長可能な層を更に含む、請求項6に記載の接着剤フィルム。
【請求項8】
前記感圧性接着剤の厚みが、25マイクロメートルから1,270マイクロメートルである、請求項4に記載の接着剤フィルム。
【請求項9】
前記感圧性接着剤が、少なくとも1つの構造化表面を含む、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項10】
前記エラストマーのシリコーンポリマーが、少なくとも5,000グラム/モルの分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンとポリイソシアネートとの反応生成物である、尿素系シリコーン共重合体を含む、請求項2に記載の接着剤フィルム。
【請求項11】
前記エラストマーのシリコーンポリマーが、式
【化1】

の少なくとも2つの繰り返し単位を含むアミド系シリコーン共重合体を含む
(式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり、
各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり、
Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2個の−NHR基を引いたものに等しい2価残基であり、
は水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し、
nは、独立して、0〜1500の整数であり、及び、
pは1〜10の整数である)、請求項2に記載の接着剤フィルム。
【請求項12】
第1の基材が前記延伸剥離性感圧性接着剤テープを介して第2の基材に結合されるとき、前記延伸剥離性感圧性接着剤テープが、前記第1の基材又は前記第2の基材の他方から完全に分離する前に、前記第1の基材又は前記第2の基材の一方から完全に分離することが可能である、請求項1に記載の接着剤フィルム。
【請求項13】
第1の基材と、
前記第1の基材の表面上に配置される延伸剥離性感圧接着剤フィルムと、を含む物品であって、前記延伸剥離性感圧接着剤フィルムが、
シリコーン感圧性接着剤組成物と、
粘着性タブと、
を含む、物品。
【請求項14】
前記第1の基材が、剛体面、テープ裏材、フィルム、シート、又は剥離ライナーを含む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
第2の基材を更に含む、請求項13に記載の物品。
【請求項16】
前記第1の基材が、剥離ライナーであり、前記第2の基材は、剥離ライナーである、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記シリコーン感圧性接着剤組成物が、光学的に透明である、請求項13に記載の物品。
【請求項18】
アセンブリを取り外し可能に結合するための方法であって、
第1の基材を提供する工程と、
延伸剥離性接着剤フィルムを、前記基材の表面の少なくとも一部分に配置する工程であって、前記延伸剥離性感圧接着剤フィルムが、
シリコーン感圧性接着剤組成物と、
粘着性タブと、を含む、工程と、
第2の基材が、前記延伸剥離性感圧性接着剤を介して第1の基材に結合し、前記粘着性タブが、ユーザーによる把持のために利用可能であるように、前記第2の基材を前記延伸剥離性感圧性接着剤に接触させる工程と、を含む、方法。
【請求項19】
延伸剥離性感圧接着剤フィルムを前記基材の前記表面上の少なくとも一部分に配置する工程が、前記接着剤組成物を、前記基材の上にコーティングする工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
延伸剥離性感圧接着剤フィルムを前記基材の前記表面上の少なくとも一部分に配置する工程が、接着剤物品を前記基材上にラミネートする工程を含み、前記接着剤物品は、その上に延伸剥離性接着剤フィルム組成物がコーティングされた剥離ライナーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記剥離ライナーが、前記延伸剥離性感圧性接着剤テープ組成物と接触している微細構造表面を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記延伸剥離性感圧接着剤フィルムが、単層を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記延伸剥離性感圧接着剤フィルムが、光学的に透明な接着剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記粘着性タブを把持し、かつ伸張することにより、前記感圧接着剤フィルムを、前記第1及び/又は第2の基材から伸張剥離する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記粘着性タブを把持する工程が、回収ツールを前記粘着性タブに接着させる工程を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記回収ツールが、プラスチックツール、金属ツール、厚紙ツール、木製ツール、又はセラミックスツールを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
アセンブリであって、
第1の基材と、
第2の基材と、
前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された延伸剥離性感圧性接着剤と、
を含み、前記延伸剥離性感圧性接着剤が、
シリコーン感圧性接着剤組成物と、
粘着性タブと、
を含む、アセンブリ。
【請求項28】
前記第1の基材及び前記第2の基材のそれぞれが、剛体面、テープ裏材、フィルム、シート、又は剥離ライナーを含む、請求項27に記載のアセンブリ。
【請求項29】
前記第1の基材が、ガラス、セラミックス、磁器、ポリマー、金属、又は木材から選択される剛体基材を含む、請求項28に記載のアセンブリ。
【請求項30】
前記第2の基材が、ガラス、セラミック重合体、金属、木材、高分子フィルム、光学フィルム、又は剥離ライナーを含む、請求項28に記載のアセンブリ。
【請求項31】
前記第1の基材又は前記第2の基材のうちの1つが、前記粘着性タブを被覆する、取り外し可能な重複セグメントを含む、請求項27に記載のアセンブリ。
【請求項32】
前記追加の伸長可能な層のうちの少なくとも1つが、感圧性接着剤又はエラストマー層を含む、請求項7に記載の接着フィルム。
【請求項33】
前記延伸剥離性感圧接着剤フィルムが、追加の伸長可能な層を更に含み、前記追加の伸長可能な層のうちの1つは、感圧性接着剤又はエラストマーを含む、請求項13に記載の物品。
【請求項34】
前記延伸剥離性感圧接着剤フィルムが、追加の伸長可能な層を更に含み、前記追加の伸長可能な層のうちの少なくとも1つは、感圧性接着剤又はエラストマーを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項35】
前記延伸剥離性感圧性接着剤が、追加の感圧性接着剤又はエラストマーを更に含む、請求項27に記載のアセンブリ。

【図1】
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【公表番号】特表2011−509338(P2011−509338A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542301(P2010−542301)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/030084
【国際公開番号】WO2009/089137
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】