説明

延長された治療ウインドウを有する、応答性細胞、組織および器官の保護、回復および増強のための組織保護サイトカイン

すでに承認済の治療薬の治療ウインドウ外の時点で投与するとき、哺乳動物における応答性細胞、組織、器官もしくは身体部分の機能または生存能力を保護する、もしくはこれらの機能を回復するための、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物の方法および使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
個体の生存に重要なのは、損傷(限定するわけではないが、例えば、外傷、低酸素−虚血、発作、感染および中毒など)に対する身体の応答である。ヒトの身体は、損傷に対して二重の応答を生じさせる。最初に、損傷または外傷に直接影響を受ける細胞は、壊死、すなわち、細胞の未制御の溶解によって死滅する。壊死細胞から放出された様々な細胞因子が、損傷に対する二次応答を誘導する。この応答は、傷害、または脳卒中、心臓発作もしくは脊髄外傷のような破壊的事象後の外傷または損傷の局在化した一次壊死部位からの組織損傷の拡大を、損傷周囲のはるかに多量の健康な組織を破壊することによって阻止しようとする。
【0002】
この二次機構は、感染の危険性を低減し、周囲の組織をさらなる損傷から保護することにより、一次事象から起こる二次損傷を個体が被るのを防御する一方法として進化した。この機構は、まず血流を強制的に損傷領域に向けて、血液損失を最小限にし、血圧を維持すると同時に、患部組織への酸素および栄養分の流れを抑制することにより開始する。数時間以内の一次事象で、組織壊死因子(TNF)などのある特定の組織因子が損傷細胞からその周囲細胞へと放出される。これらの因子は、マクロファージ、すなわち、損傷組織の清掃に特化した白血球を誘引する。その結果、主としてプログラムされた細胞死、すなわち、アポトーシスにより、患部領域内の生存細胞は死滅し始める。アポトーシスでは、遺伝子プログラムによって核DNAの分解が起こり、その後、核は収縮および断片化する。次に、中程度の炎症反応が起こり、損傷組織や、アポトーシス細胞から生じた細胞屑を清掃する役割を果たす。炎症が軽減するにつれ、修復機構が活性化され、最終的には瘢痕の形成が起こる。これらの二次機構が起こる一次損傷部位周囲の領域を周縁部と呼ぶ。
【0003】
今日の最新治療および医療全体の基準からみると、身体誘導による細胞および組織に対するこの二次損傷は、生存機能に何ら役立たないばかりではなく、一次損傷からの回復を損ない、遅延させることもある。心筋梗塞(心臓発作)、慢性心不全、老人性黄斑変性、糖尿病性網膜症、糖尿病性ニューロパシー、アルツハイマー病、多発性硬化症、ルー・ゲーリグ病はすべて、アポトーシスが重要な病原因子であると考えられる疾患である。アポトーシスが関連する多数の動物の損傷および疾病モデルから、周縁部のアポトーシスを薬剤により抑制することによって、機能および組織形態計測結果が改善されることが証明されている。周縁部内でアポトーシスを誘導する各段階が、治療介入の潜在的標的になるのである。
【0004】
反対に、これは、身体がアポトーシスを誘導する特定の段階をそれ自体で実行してしまう前に、治療を実施する必要があること、すなわち、治療ウインドウ(therapeutic window)を意味する。例えば、脳卒中に対する現在の治療は、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)、すなわち、血餅を溶解させて、脳の損傷部位への血流を回復させる上で有効であることが証明されている血栓溶解薬の投与を含む。しかし、その治療ウインドウは、発作の開始から3時間であり、この時間内に用いないと有効でないことが証明されている。残念なことに、脳卒中を患う患者は往々にして1〜2日待った後、医療処置を求める。これは、一部には、一般に脳卒中および脳卒中の症状が知られていないこと、脳卒中の初期における患者の錯乱状態、ならびに患者による疾患の否認による。さらに、脳卒中の重症度、および脳卒中後の個体の能力によっては、個体が発作後に医療処置を求めることができない場合もある。
【0005】
脊髄損傷は、現在承認されている治療薬の治療ウインドウが十分ではない状況の別の例を提供する。以前、ステロイド薬であるメチルプレドニゾンは、損傷から8時間以内に投与すれば、脊髄損傷からの回復を改善すると考えられていた。しかし、近年の証拠によって、この治療の治療値が疑問視されている。Hugenholtz, Herman, Methylprednisolone for acute spinal cord injury: not a standard of care, CMAJ, 2003; 168(9)を参照のこと。また、このような脊髄損傷を被りやすい個体は、治療ウインドウ内にこの疑わしい治療を受けることができないこともある。例えば、スポーツ選手、特に熱狂的スポーツファン、軍隊従事者、建設作業員などは、治療ウインドウ内で治療が受けられない場所または状況下で損傷を受けることもありうる。最後に、血栓溶解薬、例えば、rt-PA(TNKase、Genentech, South San Francisco, カリフォルニア州およびRETAVASE, Centocor, Inc., Malvern, ペンシルバニア州)およびストレプトキナーゼ(STREPASE, AstraZeneca LP, Wilmington, デラウェア州)が、心筋梗塞(MI)(一般的には心臓発作として知られる)を治療するのに用いられている。これらの血栓溶解薬の多くの治療ウインドウは、梗塞から6時間以内である。Goldgergら、Impact of Time to Treatment with Tissue Plasminogen Activator on Morbidity and Mortality Following Acute Myocardial Infarction, Am J Cardiol 1988; 82:259-264を参照のこと。この場合も、この治療ウインドウは、罹患した多くの個体が治療を受けるのには短すぎる。Dracupら、An International Perspective on the Time to Treatment for Acute Myocardial Infarction, Journal of Nursing Scholarship, 2003; 35:4, 317-323を参照のこと。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、延長された治療ウインドウ、すなわち、特定の適応において現在承認されている治療薬の治療ウインドウ、例えば、脳卒中の場合のrt-PAでは3時間の治療ウインドウ、脊髄損傷の場合のメチルプレドニゾンについては8時間を超える治療ウインドウを有する組織保護化合物が求められている。さらに、これらの損傷を被りやすい個体を前処置することにより、ある程度の保護をもたらす、もしくは負傷による損傷の程度を軽減するニーズも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、応答性哺乳動物細胞、組織もしくは器官の損傷からの保護、またはこのような損傷後の機能を回復するための医薬組成物の製造のためのエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの使用であって、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ外の時点で、上記医薬組成物を投与する、上記使用に関する。好ましくは、前記医薬組成物は、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、または、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後に投与する。加えて、前記医薬組成物は、以下の3つの時点:(1)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、(2)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ内、もしくは(3)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後、の少なくともいずれか2つの時点で哺乳動物に投与する。好ましくは、前記医薬組成物は、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後の時点、ならびに、以下の時点:(1)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、または(2)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ内、の少なくとも1つの時点で哺乳動物に投与する。あるいはまた、前記医薬組成物は、以上挙げた3つのすべての時点で投与してもよい。
【0008】
本発明の一実施形態では、医薬組成物に用いられるエリスロポイエチンは、化学的に改変されたエリスロポイエチンおよび組換えエリスロポイエチンからなる群より選択される。
【0009】
別の実施形態では、医薬組成物は、ヘマトクリットの増加、血管収縮、血小板の過剰活性化、プロコアグラント活性、および血小板の生成増加からなる群より選択される少なくとも1つの活性が欠失した組織保護サイトカインを含む。好ましくは、組織保護サイトカインは、化学的に改変されたエリスロポイエチンおよび組換えエリスロポイエチンからなる群より選択される。組織保護サイトカインとして好適な化学的に改変されたエリスロポイエチンは、(i)少なくともシアル酸部分を含まないエリスロポイエチン;(ii)少なくともN結合またはO結合炭水化物を含まないエリスロポイエチン;(iii)少なくとも1つのグリコシダーゼによる天然エリスロポイエチンの処理により減少した炭水化物含量を少なくとも含むエリスロポイエチン;(iv)少なくとも1以上の酸化炭水化物を含むエリスロポイエチン;(v)少なくとも1以上の酸化炭水化物を含む化学的に還元されたエリスロポイエチン;(vi)少なくとも1以上の改変アルギニン残基を含むエリスロポイエチン;(vii)少なくとも1以上の改変リシン残基を含むエリスロポイエチン;(viii)エリスロポイエチン分子のN末端アミノ基の少なくとも1つの改変を含むエリスロポイエチン;(ix)少なくとも1つの改変チロシン残基を含むエリスロポイエチン;(x)少なくとも1つの改変アスパラギン酸またはグルタミン酸残基を含むエリスロポイエチン;(xi)少なくとも1つの改変トリプトファン残基を含むエリスロポイエチン;(xii)少なくとも1つのアミノ酸が除去されたエリスロポイエチン;(xiii)エリスロポイエチン分子中に少なくとも1つのシスチン結合の少なくとも1つの開裂(opening)を有するエリスロポイエチン;ならびに(xiv)末端切断型エリスロポイエチンの1つでよい。一実施形態では、組織保護サイトカインは、アシアロエリスロポイエチン、好ましくはヒトアシアロエリスロポイエチンである。別の実施形態では、組織保護サイトカインは、少なくとも1つのカルバミル化リシン残基を含むエリスロポイエチンである。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態では、医薬組成物は、組換えエリスロポイエチンである組織保護サイトカインを使用し、この組換えエリスロポイエチンは、配列番号5の第11〜15位[配列番号1]、配列番号5の第44〜51位[配列番号2]、配列番号5の第100〜108位[配列番号3]、もしくは配列番号5の第146〜151位[配列番号4]に位置する1以上の改変アミノ酸残基を有するエリスロポイエチンムテインである。
【0011】
前述した医薬組成物を用いて、ニューロン、網膜細胞、筋細胞、心細胞、肺細胞、肝細胞、腎細胞、小腸細胞、副腎皮質細胞、副腎髄質細胞、毛細管細胞、内皮細胞、精巣細胞、卵巣細胞、子宮内膜細胞、もしくは幹細胞のような哺乳動物細胞を治療することができる。具体的には、哺乳動物細胞としてさらに、光受容体細胞、神経節細胞、双極性細胞、水平細胞、無軸索細胞、ミュラー細胞、心筋層細胞、ペースメーカ細胞、洞房結節細胞、洞結節細胞、房室結節細胞、ヒス束細胞、肝細胞、星細胞、クップファー細胞、糸球体間質細胞、杯細胞、腸腺細胞、腸内分泌細胞、糸球体細胞、線維束細胞、網状細胞、クロム親和細胞、周皮細胞、レイディヒ細胞、セルトーリ細胞、精子細胞、グラーフ卵胞細胞、始原卵胞細胞、子宮内膜支質細胞、ならびに子宮内膜細胞が挙げられる。
【0012】
さらに、前述の医薬組成物を用いて、発作障害、多発性硬化症、脳卒中、低血圧、心停止、虚血、心筋梗塞、炎症、認知機能の加齢関連欠損、放射線損傷、脳性麻痺、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、リー病、AIDS、痴呆、記憶喪失、筋萎縮側索硬化症、アルコール症、感情障害、不安障害、注意欠陥障害、自閉症、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳または脊髄外傷または虚血、心肺バイパス、慢性心不全、黄斑変性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜虚血、もしくは網膜外傷に関連する損傷に対する保護をもたらすか、または、このような損傷後の機能を回復させることができる。
【0013】
一実施形態では、本発明で使用する医薬組成物は、損傷から約8時間〜約168時間後に哺乳動物に投与すれば、治療効果を発揮することができる。好ましくは、上記医薬組成物は、損傷から約12時間〜約72時間後に投与すれば、治療効果を発揮することができる。別の実施形態では、本発明で使用する医薬組成物は、損傷の約1時間〜約24時間前に投与すれば、治療効果を発揮することができる。好ましくは、上記医薬組成物は、損傷の約6時間〜約18時間前に投与すれば、治療効果を発揮することができる。
【0014】
メチルプレドニゾンの治療ウインドウ外の時点で、前記医薬組成物を投与して、脊髄外傷から脊髄細胞、組織もしくは器官を保護することにより、本発明に従う使用の有用性を示す例を説明する。別の例は、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子の治療ウインドウ外の時点で、前記医薬組成物を投与して、脳卒中または脳外傷から脳細胞、組織もしくは器官を保護することに関するものである。
【0015】
本発明はさらに、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物を哺乳動物に投与することにより、哺乳動物細胞、組織もしくは器官への損傷を治療する方法であって、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ外の時点で、上記医薬組成物を投与する、上記方法に関する。好ましくは、前記医薬組成物は、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、または、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後に投与する。具体的には、前記医薬組成物は、以下の3つの時点:(1)外傷または損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、(2)外傷または損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ内、もしくは(3)外傷または損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後の少なくともいずれか2つの時点で哺乳動物に投与する。好ましくは、前記医薬組成物は、現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後の時点、ならびに、以下の時点:(1)外傷または損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、または(2)外傷または損傷について現在承認済の治療薬に認められる治療ウインドウ内の少なくとも1つの時点で投与する。あるいはまた、前記医薬組成物は、以上挙げた3つのすべての時点で投与してもよい。
【0016】
本発明の方法はまた、本発明に関して提案される前述の使用条件に従い実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の詳細な説明
I.
本発明の方法は、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ外の、すなわち、それに前後する時点で、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを投与することにより、哺乳動物身体内の細胞、組織および器官の局所または全身保護、あるいは、損傷による機能不全の回復または再生を可能にする。前述したように、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインは、一般に認められている治療ウインドウ外でこれらの治療効果をもたらすことができるため、現在承認されている限定的な治療ウインドウのためにこれまで排除されてきた条件下で、個体の極めて多様な状態および疾患を予防ならびに治療する能力が提供される。概して本発明は、治療しようとする損傷について現在承認されている治療薬の治療ウインドウ外に医薬組成物を投与することにより、細胞機能を維持、促進、増強、再生する、もしくはその他のあらゆる様式で該投与が利益をもたらすという前記の目的のために、医薬組成物を製造するためのエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの使用に関する。本発明はまた、有効量のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを哺乳動物に投与することにより、細胞機能を維持、促進、増強、もしくは再生する方法に関する。
【0018】
本発明の様々な方法では、少なくとも、哺乳動物身体内の応答性細胞に正の効果または利益をもたらすための特定の投与経路、投与時間、および暴露時間について有効な量のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物を用いる。意図する治療の標的細胞、組織、もしくは器官が、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインが内皮細胞関門を通過するのを必要とする場合、医薬組成物は、内皮細胞関門の通過後に、応答性細胞に所望の効果をもたらすことができる濃度で、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む。エリスロポイエチン受容体と相互作用し、この受容体の活性をモジュレートすることができる分子を本明細書では一般に、エリスロポイエチンまたはエリスロポイエチン受容体活性モジュレーターと呼ぶが、これは本発明において有用である。これらの分子は、例えば、以下に説明するように、天然に存在するエリスロポイエチン分子、合成エリスロポイエチン分子、もしくは組換え形態のエリスロポイエチン分子のいずれでもよいし、あるいはまた、本明細書に記載するように、エリスロポイエチン応答性細胞活性をモジュレートする以外は、必ずしもエリスロポイエチンに類似していない他の分子であってもよい。
【0019】
II.用語
A.「エリスロポイエチン」とは、ヒトにおいて、約30〜34 kDaの分子量を有する糖タンパク質ホルモンである。成熟タンパク質は約165個のアミノ酸(配列番号5)を有し、オリゴ糖残基は、上記分子の重量の約40%を含む。エリスロポイエチンは、その赤血球生成作用:骨髄への作用(ヘマトクリットの増加(赤血球生成)、血小板の過剰活性化、プロコアグラント活性、ならびに血小板の生成増加)、もしくは血管への作用(血管収縮)によって定義される。米国特許第4,703,008号、第5,441,868号、第5,547,933号、第5,618,698号、第5,621,080号、第5,756,349号、および第5,955,422号を参照のこと。Modulation of Excitable Tissue Function by Peripherally Administered Erythropoietinと題するPCT特許出願PCT/US00/10019(その全文を参照として本明細書に組み込む)にすでに開示されているように、近年、エリスロポイエチンは組織保護効果の特性があるとされている。エリスロポイエチンは、例えば、PROCRIT(Ortho Biotech Inc., Raritan, NJから入手可能)、EPOGEN(Amgen, Inc., Thousand Oaks, CAから入手可能)、ならびに、NEORECOROMON、エリスロポイエチンβ(F. Hoffman-La Roche Ltd., Basel(スイス)から入手可能)の商標で市販されているものを入手することができる。さらに、様々な宿主系を組換えエリスロポイエチンの発現および産生に用いてもよく、このような宿主系として、限定するわけではないが、細菌、酵母、昆虫、植物、および哺乳動物(ヒトなど)の細胞系が挙げられる。例えば、細菌において産生される組換えエリスロポイエチンは、細菌では産物がグリコシル化またはシアル化されないため、これを用いて、非グリコシル化形態のエリスロポイエチンを生成することができる。あるいは、組換えエリスロポイエチンは、グリコシル化する他の系、例えば、植物およびヒト細胞において産生させることもできる。
【0020】
加えて、改変型のエリスロポイエチンも本発明の方法で有用である。改変型エリスロポイエチンには、天然、合成および組換え形態のヒトおよびその他の哺乳動物エリスロポイエチンの化学的改変および/または発現系媒介によるグリコシル化改変が含まれる。多様な改変型のエリスロポイエチンがすでに記載されている。これらの改変型エリスロポイエチンは、該分子の赤血球生成活性を改善することを目標とするものであったが、このような改変は本発明の目的にも適していると考えられる。これらの改変型エリスロポイエチンとして、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:米国特許第5,457,089号および米国特許第4,835,260号に記載されている、カルボキシ末端に改変アミノ酸を含むもの;米国特許第5,856,298号に記載されているような、分子毎に様々な数のシアル酸残基を有するエリスロポイエチンイソ型;米国特許第4,703,008号に記載されているポリペプチド;米国特許第5,767,078号に記載されているアゴニスト;米国特許第5,773,569号および第5,830,851号に記載されている、エリスロポイエチン受容体と結合するペプチド;ならびに、米国特許第5,835,382号に記載されている、小分子模倣体。加えて、天然または組換えヒトエリスロポイエチンより大きいin vivo半減期を有する改変型のエリスロポイエチンも本発明の使用および方法に包含される。具体的には、米国特許第5,856,298号に教示されているシアル酸残基の増加;欧州特許第0640619号に教示されている糖の付加;WO0102017、WO0032772、および米国特許出願番号200301666566に教示されているポリエチレングリコール(PEG)残基の付加;米国特許出願番号20040009902、20030124115および20030113871ならびに米国特許第6,242,570号に教示されているエリスロポイエチンとの融合によるタンパク質の付加;PCT出願番号US/94/02957および米国特許出願番号20030077753に教示されている、組換えまたは天然いずれかのヒトエリスロポイエチンの天然型グルコシル化パターンの改変、および/または米国特許出願番号20020081734に教示されている突然変異、により半減期が延長されたエリスロポイエチンも本発明の範囲に含まれる。改変型エリスロポイエチンには、以下に挙げる特許出願に教示されているジグリコシル化およびPEG化(pegylated)エリスロポイエチンコンジュゲートも含まれる:WO0102017、欧州特許第1064951号、欧州特許第1345628号、WO03029291、欧州特許第0640619号、米国特許出願番号2003077753、米国特許出願番号20030120045、ならびに米国特許第6,583,272号および第6,340,742号。このような長期作用エリスロポイエチンの例としては、Amgen Inc.(Thousand Oaks, 米国カリフォルニア州)から入手可能なARANESP、F. Hoffmann-La Roche(Basel, スイス)から入手可能なCERA、ならびにWO03029291に教示されているジグリコシル化およびPEG化エリスロポイエチンが挙げられる。
【0021】
B.「組織保護サイトカイン」とは、組織保護作用を発揮し、かつ、骨髄に対するエリスロポイエチンの作用、すなわち、ヘマトクリットの増加(赤血球生成)、血小板の過剰活性化、プロコアグラント活性、ならびに血小板の生成増加、もしくは血管への作用、すなわち、血管収縮(高血圧)のうちの1以上が欠失しているサイトカインを意味する。組織保護サイトカインは、以下に挙げる文献にすでに開示されているように、化学的に改変された、もしくは組換え形態のエリスロポイエチンでもよい:Recombinant Tissue Protective Cytokines and Encoding Nucleic Acids Thereof for Protection, Restoration, and Enhancement of Responsive Cells, Tissues, and Organsと題するPCT/US03/20964;Tissue Protective Cytokines for the Protection, Restoration, and Enhancement of Erythropoietin Responsive Cells, Tissues and Organsと題する米国特許出願番号10/188,905;ならびにProtection, Restoration, and Enhancement of Erythropoietin Cells, Tissues and Organsと題するPCT 特許出願番号PCT/US01/49479。組織保護サイトカインは、赤血球生成活性をすべて欠失しているのが好ましい。
【0022】
組織保護サイトカインは、グアニド化、アミド化、カルバミル化(カルバモイル化)、トリフェニル化、アセチル化、スクシニル化、硝酸化、あるいは、アルギン、リシン、チロシン、トリプトファンもしくはシステイン残基またはカルボキシル基の改変、中でも、PCT/US01/49479に記載されている限定タンパク質分解などの方法により、化学的に改変されたエリスロポイエチンからなるものでもよい。加えて、組織保護サイトカインは、PCT/US03/20964に開示されているような組換えエリスロポイエチンでもよい。組換えエリスロポイエチンは、エリスロポイエチンムテインからなるものでもよい。開示されているエリスロポイエチンへの突然変異としては、置換、欠失(分子内欠失など)、付加(融合タンパク質を生成する付加など)、もしくはアミノ酸配列内および/または該配列に隣接したアミノ酸残基の保存的置換で、しかも「サイレント」変化を起こす保存的置換、および非保存的アミノ酸置換、ならびに、さらに大きな挿入および欠失が挙げられる。化学的に改変されたエリスロポイエチンおよび組換えエリスロポイエチンの両方を用いて、受容体結合に影響を与える4つの機能性ドメイン:VLQRY(配列番号1)および/またはTKVNFYAW(配列番号2)および/またはSGLRSLTTL(配列番号3)および/またはSNFLRG(配列番号4)内のエリスロポイエチンアミノ酸配列(配列番号5)内に改変が起こるようにするのが好ましい。当業者であれば、本発明の目的に有用な組織保護サイトカインが、前記改変の少なくとも1つを有することを容易に決定できるが、前記改変の1つ以上を有していてもよい。
【0023】
C.「応答性細胞」とは、エリスロポイエチンへの暴露により、その機能または生存能力が維持されうる、促進されうる、増強されうる、再生されうる、もしくは、その他の様式で利益がもたらされうる、哺乳動物細胞を意味する。このような細胞の非制限的例として、ニューロン細胞、網膜細胞、筋細胞、心細胞、肺細胞、肝細胞、腎細胞、小腸細胞、副腎皮質細胞、副腎髄質細胞、毛細管内皮細胞、精巣細胞、卵巣細胞、膵細胞、皮膚細胞、骨細胞および子宮内膜細胞を挙げることができる。具体的には、応答性細胞として、限定するわけではないが、以下のものが挙げられる:ニューロン;網膜細胞:光受容体細胞(桿状および錐状)、神経節細胞、双極性細胞、水平細胞、無軸索細胞、およびミュラー細胞;筋細胞;心細胞:心筋層細胞、ペースメーカ細胞、洞房結節細胞、洞結節細胞、ならびに、結合組織細胞(房室結節およびヒス束);肺細胞;肝細胞:肝細胞、星細胞、クップファー細胞;腎細胞:糸球体間質細胞、腎上皮細胞および細管間質細胞;小腸細胞:杯細胞、腸腺(腸陰窩)および腸内分泌細胞;副腎皮質細胞:糸球体細胞、線維束細胞、および網状細胞;副腎髄質細胞:クロム親和細胞;毛細管細胞:周皮細胞;精巣細胞:レイディヒ細胞、セルトーリ細胞および精子細胞、ならびにそれらの前駆細胞;卵巣細胞:グラーフ卵胞および始原卵胞細胞;子宮内膜細胞:子宮内膜支質および子宮内膜細胞;膵細胞:膵ランゲルハンス島、α細胞、β細胞、γ細胞、およびδ細胞;皮膚細胞;骨細胞:骨前駆細胞、破骨細胞および骨芽細胞;ならびに、以上挙げた器官に存在する幹および内皮細胞。さらに、このような応答性細胞、ならびにエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインがこれらに賦与する利益は、直接応答性ではない他の細胞、もしくはこのような非応答性細胞を含む組織または器官に対して間接的に保護または増強をもたらすことまで拡大されてもよい。応答性細胞の増強により間接的に利益を受けるこのような他の細胞、もしくは組織または器官は、「関連」細胞、組織もしくは器官として、応答性細胞、組織もしくは器官の一部をなす。従って、本明細書に記載するエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの利益は、組織または器官における少数または低比率の応答性細胞、例えば、このような組織に存在する興奮性またはニューロン組織、もしくはテストステロンを生成する精巣のレイディヒ細胞の存在により賦与されることもある。一態様では、応答性細胞またはその関連細胞、組織もしくは器官は、興奮性細胞、組織または器官ではないか、あるいは、興奮性細胞または組織を主に含むものではない。
【0024】
D.「損傷」とは、主に、神経学的または精神医学的症状を呈する中枢神経系または末梢神経系のヒトの疾患、眼の疾患、心臓血管疾患、心肺疾患、呼吸器疾患、腎臓、泌尿および生殖器疾患、骨疾患、皮膚疾患、胃腸疾患、ならびに内分泌および代謝異常を意味し、これらの疾患に対し本発明のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインは治療効果を有する。具体的に、このような状態および疾患として、興奮性組織、例えば、中枢神経系組織、末梢神経系組織、もしくは心臓組織または網膜組織における興奮性組織(例:脳、心臓、もしくは網膜/眼)に有害な影響をもたらす低酸素状態が挙げられる。ストレス、損傷、また最終的にはニューロン細胞死を招くような、ニューロン組織に対する酸素の生物利用能を低下させるあらゆる状態を本発明の方法で治療することができる。一般に低酸素症および/または虚血と呼ばれるこれらの状態は、限定するわけではないが、以下に挙げるものから起こる、または以下のものを含む:脳卒中、血管閉塞、胎児期または生後の酸素欠乏、窒息、(機械的な)窒息、喘息、溺没、一酸化炭素中毒、煙の吸入、外傷(外科手術および放射線療法を含む)、仮死、てんかん、低血糖、慢性閉塞性肺疾患、気腫、成人呼吸促迫症候群、低血性ショック、敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、インスリンショック、鎌状赤血球発症、心停止、律動異常、窒素性ナルコーシス、ならびに、心肺バイパス法によって起こる神経欠損。従って、本発明の方法を用いて、様々な状態および状況での低酸素状態に起因する興奮性組織への損傷を治療または予防することができる。このような状態および状況の非制限的例を以下の表に挙げる。
【表1】





【0025】
E.「治療ウインドウ(therapeutic window)」とは、初期損傷に関する期間であって、その間に治療薬を投与すれば、明らかな臨床効果が得られるような期間である。例えば、組換え組織型プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)は、虚血性脳卒中の治療に承認されている治療薬である。虚血性脳卒中から3時間後までに、患者への臨床効果が証明されている。従って、rt-PAは、脳卒中の場合、3時間の治療ウインドウを有する。具体的損傷以外にも、治療ウインドウは、傷の重症度に基づいており、従って、治療ウインドウは、軽度と重度の損傷間で変動しうる。治療ウインドウを正確に比較するためには、損傷と損傷重症度を考慮に入れなければならない。製造者の表示、ならびに、Medical Economics Company, Inc.により刊行されたPhysicians Desk Reference、もしくはその他一般に認識されている同等の文献を参照することにより、様々な治療化合物の治療ウインドウを決定することができる。
【0026】
治療ウインドウは、さらに「予防治療ウインドウ」に細分することもできる。「予防治療ウインドウ」は、負傷より前の期間であって、その間に治療薬を投与すれば、負傷による損傷からの保護をもたらすか、または損傷を軽減するような期間を意味する。個体が、急性の損傷(限定するわけではないが、手術、外傷(鈍傷など)、脳卒中、中毒など)を被った場合には、神経変性状態または進行性疾患と比較して治療ウインドウを決定するのが容易である。しかし、神経変性状態または進行性疾患の場合には、治療ウインドウは、神経変性状態または進行性疾患の次の段階または病期の開始からの期間となることもある。さらにまた、損傷がその治療ウインドウより前または後のいずれかに起こった場合には、治療ウインドウ外の投与を考慮する。
【0027】
F.「承認されている(承認済の)治療薬」とは、連邦または州政府の取締り機関により特定の損傷の治療について承認されている治療薬、あるいは、動物、さらに具体的にはヒトへの使用のための米国薬局方またはその他の一般に認可されている外国の薬局方に収載されている治療薬を意味する。例えば、以下に挙げる治療薬は、それらの特定の適応について承認された治療薬と考えられる:虚血性脳卒中の治療に使用するrt-PA(Genetech Inc., South San Francico, Californiaにより、ACTIVASEの名称で販売されている)、脊髄損傷の治療に使用するメチルプレドニゾンのようなコルチコステロイド、rt-PA(TNKase、Genetech Inc., South San Francico, CaliforniaおよびRETAVASE、Centocor, Inc., Malvern, Pennsylvania)およびストレプトキナーゼ(STREPASE、AstraZeneca LP、Wilmington, Delaware)などの血栓崩壊剤。
【0028】
II.治療方法
本発明は、応答性細胞、組織、もしくは器官に対する特定の損傷について以前承認された治療薬の治療ウインドウ外に投与することができる医薬組成物を製造するためのエリスロポイエチンおよび/または前記組織保護サイトカインの使用を提供する。本発明の方法は、損傷より前(予防的使用)、もしくは以前承認された治療薬の治療ウインドウが経過した後(延長使用)に、医薬組成物を投与することを可能にする。従って、本発明は、一般に、機械的外傷またはヒトの疾患の結果の治療または予防治療を提供する。CNSおよび/または末梢神経系の疾患、障害もしくは状態の治療または予防治療が好ましい。限定するわけではないが、眼、心臓血管、心肺、呼吸器、腎臓、泌尿器、生殖器、胃腸、内分泌、もしくは代謝成分を有するものを含む疾患、障害もしくは状態の治療または予防治療が提供される。
【0029】
A.予防的使用
前述のように、本発明のエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを含む医薬組成物は、応答性組織、すなわち、頭部、脊髄、眼、心臓および腎臓への損傷が起こりうる活動に従事する者が予防的に使用することが可能である。この予防的使用を図1に示すが、ここでは、アシアロエリスロポイエチンまたはカルバミル化エリスロポイエチンのような組織保護サイトカインの単回用量による前治療により、脊髄損傷のラットモデルに高度の回復がみられた。加えて、図5もラットの中大脳動脈閉塞モデルにおいて同様の効果を示している。中大脳動脈の閉塞から1.5または4時間後に組織保護サイトカイン、すなわち、アシアロエリスロポイエチンを投与すると、閉塞により生じた梗塞体積の減少による治療効果が明らかにされた。
【0030】
従って、このような危険な活動に従事する前に、応答性細胞、組織、もしくは器官への傷害によって起こる損傷を予防(すなわち、その開始を遅延、阻害、または停止させる)、該損傷から保護する、もしくは軽減するのに十分なエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを含む用量の医薬組成物を摂取することができる。特に、この治療方法は、限定するわけではないが、プロスポーツ選手(飛込み選手、レーシングカードライバー、サッカー選手など)、軍隊従事者(兵士、落下傘兵)、緊急時出動員(警察、消防、EMS、および災害救急隊員)、スタントマン、ならびに建設作業員など、損傷を被りやすい様々な職業での用途が考えられる。加えて、組織保護サイトカインの予防的使用は、限定するわけではないが、ロッククライミング、懸垂下降、スカイダイビング、競馬、自転車旅行、サッカー、ラグビー、野球、ならびに、飛込みなど、損傷の危険性を呈するレジャー活動にも考慮される。
【0031】
さらに、本発明の医薬組成物は、外科手術に伴う外傷を制限する、または外科手術からの個体の回復を助ける目的で、個体の手術を準備するのに予防的に用いることができる。エリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを含む医薬組成物を用いる本発明の治療方法は、外科手術のための予防的使用を提供するが、これは、一時的虚血事象を引き起こす手術、例えば、限定するわけではないが、バイパス手術(冠動脈バイパス)、血管形成術、切断術、および移植、ならびに、脳や脊髄手術および心臓切開手術のような応答性細胞、組織もしくは器官に直接実施する手術において特に有用である。このような手術には、心肺バイパスの使用も含まれる。
【0032】
好ましくは、組織保護サイトカイン、さらに好ましくは、赤血球生成作用を完全に欠失した組織保護サイトカインを前記予防的投与のために投与することにより、エリスロポイエチンの赤血球生成作用による合併症、ならびに、プロスポーツの分野では、化合物の投与によるパフォーマンス向上の知覚を防止する。しかし、エリスロポイエチンの使用をモニタリングし、赤血球の有害な増加またはその不正な使用を防止する条件で、エリスロポイエチンの使用も考慮される。加えて、単回用量の予防的投与が好ましいが、本発明ではそれ以外の投薬レジメンも意図され、これは具体的活動により決定される。
【0033】
本発明の医薬組成物は、損傷の約1〜24時間前、さらに好ましくは損傷または外傷の約6〜18時間前、最も好ましくは損傷の少なくとも約24時間前に投与する。専門の医師であれば、延長された半減期を呈示する改変型のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカイン(Long Acting Erythropoietins that Maintain Tissue Protective Activity of Endogenous Erythropoietinと題するPCT 出願番号PCT/US0328073(参照として本明細書に組み込む)に開示されているものなど)が、医薬組成物の予防的治療ウインドウを延長しうることを認識するであろう。
【0034】
B.延長使用
さらに、本発明の組織保護サイトカインは、損傷発生後の長い治療ウインドウを有する。往々にして負傷した個体は、損傷が起こったことを認識しない、医療を受けに行くことができない、あるいは、応答性細胞、組織もしくは器官への損傷に対処する前に、別の損傷に対処する必要があるために、損傷後すぐに(0〜3時間)治療を受けられないことがある。従って、特定の治療薬は、患者が該治療薬の治療ウインドウ内に治療を受けることがほとんどないため、患者が利用可能な治療薬群から事実上排除されている。例えば、虚血性脳卒中患者に用いられる組織型プラスミノーゲン活性化因子(rt-PA)の治療ウインドウはわずか3時間しかない。その他の承認された治療薬(限定するものではないが、脊髄損傷の治療に用いられるメチルプレドニゾン、コルチコステロイド)にも、同じ制約の問題があり、最初の損傷から8時間以内に投与しなければならない;rt-PAまたはストレプトキナーゼのような血栓溶解薬は、心筋梗塞から3〜6時間以内に投与しなければならない。従って、エリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを含む医薬組成物を用いることにより、治療開始の遅延にかかわらず、治療効果を賦与することが考えられる。
【0035】
図2〜4に記載されているように、本発明の医薬組成物は、最初の損傷または外傷の発生を実質的に超えて治療ウインドウを延長する。図2は、骨髄損傷のラットモデルにおける損傷から24時間後に投与された単回用量の組換えエリスロポイエチンが依然として有効であることを示している。図3〜4もまた、組織保護サイトカインであるアシアロエリスロポイエチンおよびカルバミル化エリスロポイエチンの複数回投薬レジメンが、ラット骨髄損傷モデルの損傷からそれぞれ48時間および72時間後に開始して、依然として有効であることを示している。
【0036】
さらに、図6〜7は、中大脳動脈閉塞から24時間後に、組織保護サイトカイン、すなわちカルバミル化エリスロポイエチンを投与すると、ラットの挙動に正の効果をもたらすことを示している。この結果は、脳卒中から24時間後には、脳卒中による損傷の大部分が不可逆であることが文献での定説であるため、特に驚異的である。
【0037】
特に、本発明の治療方法は、負傷者が負傷後適切な時間内に治療を受けることができない戦闘または災害状況において有用である。
【0038】
損傷が起こってから経過した時間の量に応じて、当業者は、所望の治療効果を達成するために、投薬レジメン(単回投与または複数回投与)、投薬量(時間が経過しているほど高い用量が必要)、もしくは投与経路(より直接的経路、すなわち、皮下とは反対に静脈内投与が確実である)を調整する必要があると考えられる。本発明の方法によれば、医薬組成物は、損傷から約8〜168時間後、好ましくは損傷から約12〜72時間後に投与する。この例は脳卒中に関するが、脊髄損傷のような別の適応に関する医薬組成物の治療ウインドウの典型例でもある。従って、医薬組成物におけるエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインの使用により、該組成物は、応答性細胞、組織および器官への損傷の現実的な予防および治療の需要に合せて対処することが可能になる。
【0039】
C.治療レジメン
専門の医師は、効果を高めるために本発明の方法および使用を組み合わせることが可能であることを認識するであろう。
【0040】
本発明の医薬組成物は、すでに承認済の治療薬の治療ウインドウに関して複数の時点で投与することができる。従って、エリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを含む医薬組成物は、以下の時点:損傷の前、損傷とほぼ同じ時点またはすでに承認済の治療薬の治療ウインドウ内、あるいはすでに承認済の治療薬の治療ウインドウ外、の少なくともいずれか2つの時点で投与する。医薬組成物はまた、前記3つのすべての時間内に投与することもできる。このような治療レジメンは、戦闘のような状況において好ましく、その際、戦闘の前に兵士に医薬組成物を投与し、その後、兵士が負傷したら戦場で再び投与するか、あるいは、状況によって負傷兵士の適切な時間内の治療ができない場合にはさらに後で投与することができる。
【0041】
さらに、当業者には、特定の形態のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの方が、予防または延長使用により良く適する場合があることも認識されよう。従って、予防投与には1つのエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを用い、延長投与には別のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを用いるのが有利であると認識されるだろう。例えば、外科手術の前に、予防のためにアシアロエリスロポイエチンを投与し、手術後、別のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを投与することにより、患者の回復に役立てることができる。
【0042】
加えて、専門の医師は、個体の別の損傷形態を治療する、または相乗効果を達成する、すなわち、他の治療薬の効能を高める、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの効能を高める目的で、本発明の医薬組成物と同時に他の治療薬を投与する利点も認識するであろう。
【0043】
本発明の別の態様では、本発明に従う医薬組成物は、組織保護機能を示す少なくとも1つの小分子と一緒に、エリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを製剤に含んでもよい。好適な小分子として、限定するわけではないが、以下のものが挙げられる:ステロイド(例:ラザロイドおよびグルココルチコイド)、抗酸化剤(例:コエンザイムQ10、αリポ酸、およびNADH)、抗異化酵素(例:グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、合成触媒性スカベンジャー、ならびに模倣類似体)、インドール誘導体(例:インドールアミン、カルバゾール、およびカルボリン)、硝酸中和剤、アデノシン/アデノシンアゴニスト、光化学物質(フラボノイド)、薬草エキス(イチョウおよびウコン)、ビタミン(ビタミンA、EおよびC)、オキシダーゼ電子受容体阻害薬(例:キサンチンオキシダーゼ電子受容体阻害薬)、鉱物(例:銅、亜鉛、およびマグネシウム)、非ステロイド抗炎症薬(例:アスピリン、ナプロキセン、およびイブプロフェン)、ならびにこれらの組合せ。加えて、本発明の医薬組成物と一緒に、限定するわけではないが、以下に挙げる薬剤を用いてもよい:抗炎症薬(例:コルチコステロイド、プレドニゾンおよびヒドロコルチゾン)、グルココルチコイド、ステロイド、非ステロイド抗炎症薬(例:アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、およびCOX-2阻害薬)、βアゴニスト、抗コリン作用薬およびメチルキサンチン)、免疫調節薬(例:小有機分子、T細胞受容体モジュレーター、サイトカイン受容体モジュレーター、T細胞枯渇薬、サイトカインアンタゴニスト、モノカインアンタゴニスト、リンパ球阻害薬、もしくは抗癌薬)、金注射薬、スルファサラジン、ペニシラミン、抗血管新生薬(例:アンギオスタチン、TNF-αアンタゴニスト(例:抗TNF-α抗体)、ならびにエンドスタチン)、ダプソン、プソラレン(例:メトキサレンおよびトリオキサレン)、抗マラリア薬(例:ヒドロキシクロロキン)、抗ウイルス薬、ならびに抗生物質(例:エリスロマイシンおよびペニシリン)。
【0044】
さらに、本発明の医薬組成物は、すでに承認済の治療薬、例えば、限定するわけではないが、rt-PA、メチルプレドニゾン、ならびに、血栓溶解薬と組み合わせて用いることにより、相乗的にこれら化合物の治療ウインドウを延長することもできる。
【0045】
IV.医薬組成物
一実施形態では、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインのこのような医薬組成物を全身投与することにより、標的細胞、組織もしくは器官を保護または増強することができる。このような投与は、吸入、経皮による非経口、あるいは、経粘膜、例えば、経口、鼻内、直腸、膣内、舌下、もしくは粘膜下により実施することができる。好ましくは、投与は、例えば、静脈内または腹腔内注射による非経口であり、さらに、限定するものではないが、動脈内、筋内、皮内および皮下投与も含まれる。
【0046】
これ以外の投与経路、例えば、灌流液の使用、器官への注射、もしくはその他の局所注射による投与の場合には、前記と同等レベルの組織保護サイトカインをもたらす医薬組成物が提供される。組織中約15 pM〜30 nMのレベルが好ましい。
【0047】
本発明の医薬組成物は、治療に有効な量の化合物と、薬学的に許容される担体を含む。具体的実施形態において、「薬学的に許容される」とは、連邦または州政府の取締り機関により承認されているか、動物、さらに具体的にはヒトでの使用について米国薬局方またはその他の一般に認可されている外国の薬局方に収載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療薬と一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、もしくはビヒクルを意味する。このような製剤用担体は、食塩水、および油、例えば、石油、動物、植物もしくは合成油(例:ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)のような滅菌液体でよい。食塩水は、医薬組成物を静脈内投与する場合には、好ましい担体である。また、特に注射液に、食塩水やデキストロースおよびグリセロール水溶液を液体担体として用いることもできる。好適な製剤用賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望であれば、組成物は、さらに微量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤を含んでもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、持続的放出製剤などの形態でよい。組成物は、通常の結合剤および担体(トリグリセリドなど)を用いて、座薬として製剤化してもよい。本発明の化合物は、中性または塩の形態として製剤化してもよい。薬学的に許容可能な塩として、遊離アミノ基で形成されるもの:例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されるもの、ならびに、遊離カルボキシル基で形成されるもの:例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されるものが挙げられる。好適な製剤用担体の例は、E. W. Martinによる”Remington’s Pharmaceutical Sciences”に記載されている。このような組成物は、患者への適正な投与のための形態を提供するような適量の担体と一緒に、好ましくは精製された形態で、治療に有効な量の化合物を含む。製剤は、投与様式に適合するものでなければならない。
【0048】
経口投与に適した医薬組成物は、カプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;溶液、シロップもしくは懸濁液(水性または非水性液体);食用フォームまたはホイップ;あるいはエマルションの形態で提供することができる。錠剤または硬質ゼラチンカプセルには、ラクトース、デンプンまたはその誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム、ステアリン酸またはその塩を含有させることができる。軟質カプセルには、植物油、蝋、脂肪、半固体、もしくは液体ポリオールなどを含有させることができる。溶液およびシロップには、水、ポリオールおよび糖を含有させることができる。
【0049】
経口投与に意図する活性薬剤は、胃腸管での活性薬剤の崩壊および/または吸収を遅延させる材料でコーティングするか、このような材料を添加してもよい(例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを用いることができる)。従って、活性薬剤の持続的放出は、何時間にもわたって実施することができ、必要であれば、胃での分解から活性薬剤を保護することもできる。経口投与用の医薬組成物は、特定のpHまたは酵素条件により、特定の胃腸位置で活性薬剤の放出を促進するように製剤化してもよい。
【0050】
経皮投与に適した医薬組成物は、受容者の表皮とじかに接触した状態を長時間維持するよう意図された個別のパッチの形態で提供することができる。局所投与に適した医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エーロゾルもしくはオイルの形態で提供してもよい。皮膚、口、眼もしくはその他の外部組織への局所投与のためには、局所軟膏またはクリームを用いるのが好ましい。軟膏に製剤化する場合には、活性成分をパラフィンまたは水混和性軟膏基材のいずれかと一緒に用いてもよい。あるいは、活性成分を水中油形基材または油中水形基材と一緒にクリームに製剤化してもよい。眼への局所投与に適した医薬組成物としては、点眼薬が挙げられる。これらの組成物では、好適な担体、例えば、水性溶剤に活性成分を溶解または懸濁させることができる。口への局所投与に適した医薬組成物としては、ロゼンジ、錠剤および含そう薬が挙げられる。
【0051】
鼻内および肺投与に適した医薬組成物には、粉末(好ましくは、20〜500ミクロンの粒度を有するもの)のような固体担体を含有させてもよい。粉末は、鼻から吸入させる方法、すなわち、鼻近傍に保持した粉末の容器から鼻を通して速やかに吸入させることにより投与することができる。あるいは、鼻内投与に適した医薬組成物は、液体担体を含んでもよい(例えば、鼻内スプレーまたは点鼻薬)。あるいはまた、深い吸入、または口腔咽頭部へのマウスピースの設置により、化合物の肺への直接吸入を達成することも可能である。これらの組成物は、活性成分の水または油性溶液を含んでもよい。吸入による投与のための組成物は、限定するものではないが、加圧エーロゾル、ネブライザーもしくは注入器など、専用に設計された装置により供給することができる。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物を鼻腔に直接投与するか、もしくは鼻腔または口腔咽頭部を介して肺に投与する。
【0052】
直腸投与に適した医薬組成物は、座薬または注腸の形態で提供することができる。膣内投与に適した医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームもしくはスプレー製剤の形態で提供することができる。
【0053】
非経口投与に適した医薬組成物としては、水性および非水性滅菌注射液または懸濁液が挙げられ、これらに、抗酸化剤、バッファー、静菌薬、ならびに、該組成物を当該受容者の血液と実質的に等張にする溶質を含有させてもよい。組成物に存在しうるその他の成分として、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が挙げられる。非経口投与に適した組成物は、単回投与または複数回投与容器、例えば、密封アンプルおよびバイアル中に提供することができ、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存し、使用の直前に滅菌液体担体(例:注射用の滅菌食塩水)を添加するだけでよいようにすることもできる。即時注射のための溶液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製してもよい。一実施形態では、エリスロポイエチンの注射液を含むオートインジェクターは、救急車、緊急処置室、および戦場における緊急使用、さらには、特に、外傷による切断(例えば、芝刈り機の不注意な使用による)の可能性が起こりうる場合など、自宅での自己投与のためにさえ提供することができる。
【0054】
好ましい実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与に適した医薬組成物として、常用の方法に従い製剤化する。典型的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性バッファー中の溶液である。必要であれば、組成物に、可溶化剤、ならびに、注射部位の痛みを緩和するリドカインのような局所麻酔薬を含有させてもよい。一般に、各成分は、単位投与形態で、例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサシェのような密封容器中の凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、別々に供給するか、あるいは、混合してもよい。組成物を注入により投与しようとする場合には、滅菌医薬グレード水または塩水を含む注入ボトルを用いて、組成物を投与することができる。組成物を注射により投与する場合には、滅菌塩水のアンプルを用意し、投与前に成分を混合するようにしてもよい。
【0055】
座薬は一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の活性成分を含み;経口製剤は、10%〜95%の活性成分を含むのが好ましい。
【0056】
移植器官浴での使用、現場灌流、もしくは器官摘出前の器官供給者の血管への投与のための灌流液組成物を提供することもできる。このような医薬組成物は、個体への急性または慢性疾患治療、局所または全身投与に適さないレベルのエリスロポイエチン、組織保護サイトカイン、もしくはそのような形態のエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインのいずれかを含むが、このような医薬組成物は、治療した器官または組織を正常な循環に暴露または戻す前にそこに含まれるレベルのエリスロポイエチンを除去または低下させる前に、死体、器官浴、器官灌流液、もしくは現場灌流液においてここで意図する機能を果たす。本発明のこの形態で用いるエリスロポイエチンは、天然に存在する形態(例:ヒトエリスロポイエチン)などのあらゆるエリスロポイエチンでも、あるいは、前記の組織保護サイトカイン(非制限的例として、アシアロエリスロポイエチンおよびフェニルグリオキサル−エリスロポイエチンなど)のいずれでもよい。
【0057】
本発明はまた、1以上の本発明の医薬組成物の成分を充填した1以上の容器を含む医薬パックまたはキットも提供する。この容器には、医薬品または生物学的製剤の製造、使用もしくは販売を取り締まる政府機関により規定された形式の表示を随意に備えることができ、この表示が、ヒトへの投与のための製造、使用もしくは販売当局による承認を示す。
【0058】
別の実施形態では、例えば、制御された放出系を用いて、医薬組成物を送達する。例えば、静脈注入、移植可能な浸透ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、もしくはその他の投与様式を用いて、投与することができる。一実施形態では、ポンプを用いる(Langer、前掲;Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201;Buchwaldら、1980, Surgery 88:507;Saudekら、1989, N. Engl. J. Med. 321:574を参照)。別の実施形態では、小胞、特にリポソームで組成物を投与する(Langer, Science 249:1527-1533 (1990);Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-BeresteinおよびFidler(編)、Liss, New York, pp. 353-365 (1989);WO 91/04014;米国特許第4,704,355号;Lopez-Berestein, 同上、pp. 317-327;同文献全般を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を用いる(Medical Applications of Controlled Release, LangerおよびWise(編)、CRC Press: Boca Raton, Florida, 1974;Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, SmolenおよびBall (編)、Wiley: New York (1984);RangerおよびPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61, 1953;また、Levyら、1985, Science 228:190;Duringら、1989, Ann. Neurol. 25:351;Howardら、1989, J. Neurosurg. 71:105も参照)。
【0059】
さらに別の実施形態では、制御された放出系は、治療標的、すなわち、標的細胞、組織もしくは器官の近位に配置することにより、全身用量のごく一部を用いるだけでよい(例えば、Goodson, pp. 115-138 in Medical Applications of Controlled Release, 第2巻、前掲、1984を参照)。これ以外にも制御された放出系について、Langerによる総説(1990, Science 249:1527-1533)に記載されている。
【0060】
別の実施形態では、適正に製剤化された医薬組成物を鼻内、経口、直腸、膣内、もしくは舌下投与により投与する。
【0061】
具体的実施形態では、治療が必要な部位に、本発明のエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを局所投与するのが望ましい;これは、例えば、限定するものではないが、手術中の局所注入、局所適用(例:手術後包帯と一緒に)、注射により、カテーテルを用いて、座薬を用いて、インプラントを用いて達成することができ、上記インプラントは、多孔性または非多孔性、もしくはゼラチン状材料、例えば、シラスティック膜のような膜、もしくは繊維である。
【0062】
V.用量
エリスロポイエチンおよびエリスロポイエチン様分子の活性(ユニット)は、伝統的に、げっ歯動物モデルにおいて赤血球生成を刺激する効果に基づいて(ならびに、エリスロポイエチンの国際標準によって導かれるように)定義される。1ユニット(U)の標準的エリスロポイエチン(MW=〜34,000)は、約8ngのタンパク質(1mgのタンパク質は約125,000 U)である。しかし、本発明において、赤血球生成に対する作用は所望の活性に付随して起こるものであり、必ずしも本発明の特定の組織保護サイトカインの検出可能な特性というわけではないため、本発明の特定の組織保護サイトカインの活性の定義を赤血球生成活性に基づいて行なうのは適切ではない。従って、本明細書に用いるように、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの活性ユニットは、神経系またはその他の応答性細胞系においてWHO国際標準エリスロポイエチンにより誘発されるのと同じ活性を同じ系に誘発するのに必要なタンパク質の量として定義する。当業者は、本明細書の指導に従って、非赤血球生成エリスロポイエチンまたは関連組織保護サイトカイン分子のユニットを容易に決定することができよう。
【0063】
好ましい有効用量の選択は、当業者には周知の複数の要因を考慮して、当業者が容易に決定することができる。このような要因として、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの具体的形態、ならびに、バイオアベイラビリィティー(生物利用能)、代謝、半減期のような薬動力学的パラメーターが挙げられ、これらのパラメーターは、医薬化合物の正規の承認を取得するのに一般に用いられる通常の開発工程の間に確認されているはずである。用量を考慮する際の別の要因を以下に挙げる:治療しようとする状態または疾患、もしくは正常な個体において達成される利益、患者の体重、投与経路(急性または慢性患者のいずれに投与するかに関わらず)、併用する薬剤、ならびに、投与される薬剤の効能に影響を与えることが知られるその他の要因。従って、正確な用量は、医師の判断に従い、各患者の状況、例えば、個々の患者の状態および免疫状態に応じて決定しなければならない。
【0064】
本明細書全体を通じて、その目的に対し、組織保護サイトカインの好ましい受容者はヒトであるが、本発明の方法は、ヒト以外の哺乳動物、特に、飼いならした動物、家畜、ペット、および動物園の動物にも同様に適用される。しかし、本発明はこれらに限定するわけではなく、すべての哺乳動物に利益を賦与することができる。
【0065】
本発明の別の形態では、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物に細胞、組織もしくは器官を直接暴露する、あるいは、組織または器官の血管にエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物を投与または接触させることにより、内皮細胞関門により血管から遮断されていない細胞、組織もしくは器官の生存能力を増強するための方法および組成物を提供する。治療した組織または器官における応答性細胞の活性増強は、正の作用が及ぼされたことによるものである。
【0066】
以上述べたように、本発明は、内皮細胞と堅く連結した器官(例えば、脳、網膜および精巣など)の毛細管の内皮細胞の管腔表面から基底膜表面にエリスロポイエチン分子を輸送できるという発見に一部基づいている。従って、関門を通過する応答性細胞は、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの有益な効果を受けやすい標的であることから、応答性細胞を含み、かつ該応答性細胞に完全にまたは部分的に左右されるその他の細胞型または組織もしくは器官は、本発明の方法の標的である。特定の理論に拘束されるわけではないが、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインのトランスサイトーシス後、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインは、応答性細胞上のエリスロポイエチン受容体、例えば、ニューロン、網膜細胞、筋肉細胞、心細胞、肺細胞、肝細胞、腎細胞、小腸細胞、副腎皮質細胞、副腎髄質細胞、毛細管内皮細胞、精巣細胞、卵巣細胞、もしくは内皮細胞と相互作用することができ、この受容体結合が、シグナル伝達カスケードを開始し、これによって、応答性細胞または組織内の遺伝子発現プログラムの活性化が起こり、その結果、毒素、化学療法薬、放射線治療、低酸素などによる損傷から細胞または組織、もしくは器官が保護されることになる。従って、損傷または低酸素ストレスから、応答性細胞を含む組織を保護し、このような組織の機能を増強する方法を以下に詳しく説明する。
【0067】
本発明の一実施形態の実施に際し、哺乳動物患者は、癌治療のための全身化学療法(放射線療法など)を受けているが、このような療法は、一般に、神経、肺、心臓、卵巣もしくは精巣の損傷など、有害な作用を有する。化学療法および/または放射線療法の前およびその間に、前記のようなエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを含む医薬組成物の投与を実施することにより、化学療法薬による損傷から様々な組織および器官を保護する(例えば、精巣を保護する)。治療は、化学療法薬の循環レベルが、哺乳動物身体への危険性レベルを下回るまで継続することができる。
【0068】
本発明の別の実施形態では、あらゆる外科手術(例えば、心肺バイパス手術)において、天然エリスロポイエチンまたは本発明の組織保護サイトカインを用いることができる。一実施形態では、バイパス手術の前、その間、および/またはその後に、前記のようなエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを含む医薬組成物の投与を実施することにより、脳、心臓、およびその他の器官の機能を保護する。
【0069】
本発明の別の実施形態では、心臓弁を修復する外科手術は一時的心停止および動脈閉塞を必要とした。手術前に、組織保護サイトカインであるカルバミル化アシアロエリスロポイエチンを患者に体重1kg当たり4μg注入した。このような処置により、特に再灌流後、低酸素性虚血による細胞の損傷を予防した。
【0070】
Ex-vivo用途のために、または応答性細胞、例えば、ニューロン組織、網膜組織、心臓、肺、肝臓、腎臓、小腸、副腎皮質、副腎髄質、毛細管内皮、精巣、卵巣、または子宮内膜細胞もしくは組織などを治療するために、本発明のエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを用いる、前記例において、本発明は、血管系に対し遠位の応答性細胞、組織もしくは器官の保護または増強に適合する投与単位形態の医薬組成物であって、約1pg〜5mg、500 pg〜5mg、1ng〜5mg、500 ng〜5mg、1μg〜5mg、500μg〜5mg、もしくは1mg〜5mgの量の組織保護サイトカインと、薬学的に許容される担体を含む、上記医薬組成物を提供する。好ましい実施形態では、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの量は、約1pg〜1mgの範囲内にある。好ましい実施形態では、製剤は、非赤血球生成性の組織保護サイトカインを含む。
【0071】
さらに、本発明のこの回復方法の態様は、細胞、組織もしくは器官機能不全の回復のための医薬組成物の製造のための、本明細書に記載のあらゆるエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインの使用であって、その際、不全の原因である最初の傷害後、およびかなり後に治療を開始する、上記使用に関する。さらに、本発明のエリスロポイエチンおよび/または組織保護サイトカインを用いる治療は、急性期および慢性期中の疾患または状態の期間にわたって行なうこともできる。
【0072】
医薬組成物が、エリスロポイエチンを含む場合、好ましい実施形態では、1回の投与につき、体重1kg当たり約1μg〜約100μg、好ましくは約5〜約50μg/kg、最も好ましくは約10μg〜約30μg/kgの用量で全身投与する。この有効用量は、エリスロポイエチンの投与後、約10,000、15,000、もしくは20,000 mU/ml(80、120もしくは160 ng/ml)血清より高いエリスロポイエチンの血清レベルを達成するのに十分でなければならない。このような血清レベルは、投与から約1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10時間後に達成されうる。必要に応じて、この投与を繰り返してもよい。例えば、臨床的に必要であれば、毎日、または適当な間隔を置いて(例えば、1〜12週間毎、1〜3時間毎に)繰り返すことができる。一実施形態では、有効な量のエリスロポイエチンと薬学的に許容される担体を単回用量のバイアルまたはその他の容器にパッケージングする。別の実施形態では、本明細書に記載した活性を発揮することができるが、ヘモグロビン濃度またはヘマトクリットの増加を引き起こさない組織保護サイトカインを用いる。このような組織保護サイトカインは、本発明の方法を長期的に実施しようとする場合に好ましい。別の実施形態では、赤血球生成を最大限刺激するのに必要な用量より高い用量でエリスロポイエチンを用いる。前述のように、本発明の組織保護サイトカインは、赤血球生成活性が必ずしもあるわけではないため、造血単位で表した前記用量は、エリスロポイエチンについて例示しているにすぎない;ここでは、用量についての前記重量当量を提供し、これは、組織保護サイトカインにも適用可能である。
【0073】
以下の実施例では、本発明の治療方法の様々な動物モデルおよびin vitro試験を実施することにより、エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインのいずれかを含む医薬組成物をすでに承認済の治療薬の治療ウインドウ外に投与したときの効果を明らかにする。本発明は、本発明の例として挙げる以下の非制限的実施例を参照にすることによりさらによく理解されよう。以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに詳しく説明するために示すものである。しかし、これら実施例が、本発明の広い範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0074】
実施例1
脊髄損傷モデル
エリスロポイエチンおよび組織保護サイトカインのラット脊髄圧迫試験
この実験では、体重が180〜300 gの雌のウィスターラットを用いた。手術の12時間前からラットを絶食させ、人道的に拘束し、チオペンタールナトリウム(40 mg/kg-bw)の腹腔内注射により麻酔した。皮膚の浸潤(ブピバカイン0.25%)後、解剖顕微鏡を用いて、2cmの切開部から完全一層(T-3)椎弓切除を実施した。脊髄に0.6ニュートン(65 g)の締付け力を及ぼす一時的動脈瘤クリップの硬膜外使用により、外傷性脊髄損傷を引き起こした。クリップを取り外した後、皮膚切開部を閉じ、ラットを麻酔から完全に回復させてケージに戻した。ラットを連続的にモニタリングし、自発的排尿が再開するまで毎日少なくとも2回膀胱の触診を行なった。
【0075】
Bassoら、1995 J. Neurotrauma 12:1-21の運動評価スケールの使用により、ラットの運動神経機能を評価した。このスケールでは、動物に0(脚の運動が観察されない)から21(正常歩行)までの点数を割り当てる。各ラットが受ける処理について知らされていない同じ試験者により、損傷から1、12、24、48、72時間後、次いで1週間後、機能欠損についてラットを試験した。
【0076】
A.組織保護サイトカインの予防治療ウインドウ
18匹のラットをランダムに3つのグループに分けた。対照グループ(I)(n=6)には、手術から24時間前に通常の食塩水を(静脈内注射により)投与した。グループ(II)(n=6)には、手術の24時間前に、PCT/US01/49479に記載されているプロトコルに従って調製したアシアロエリスロポイエチン(10μg/kg-bw、静脈内)を投与し;また、グループ(III)(n=6)には、手術の24時間前に、PCT/US01/49479に記載されているプロトコルに従って調製したカルバミル化エリスロポイエチン(10μg/kg-bw、静脈内)を投与した。
【0077】
図1は、42日の期間にわたって脊髄外傷から回復するラットの運動評価を示すグラフである。このグラフからわかるように、手術の24時間前にアシアロエリスロポイエチン(グループII)またはカルバミル化エリスロポイエチン(グループIII)が投与されたラットは、対照ラットと比較して、損傷から容易に回復しており、損傷からの良好な全体的回復を示した。本発明において記載した別の組織保護サイトカインによる治療からも同様の結果が予想される。
【0078】
B.組織保護サイトカインの治療ウインドウ
1.単回投与の治療ウインドウ
この実施例では、上に概説した脊髄損傷プロトコルを用いた。ラットの体温を調節しながら、椎弓切除を実施した。58 gの力で60秒間ラットのT3胸椎に動脈瘤クリップを適用した。これは、脊髄傍動脈に影響を与えないように実施した。ラットをグループにわけ、これらグループの各々に、損傷から0〜24時間までの様々な時点で、単回用量のrhEPO(10μg/kg bw)を静脈内投与した。その後、前記プロトコルに従い、ラットの運動スコアを45日間モニタリングした。
【0079】
図2から、たとえ最初の損傷から24時間までに単回用量のrhEPOを投与しなかった場合でも、rhEPOが組織保護効果を有することがわかる。
【0080】
2.複数回投与の治療ウインドウ
この実施例では、上に概説した脊髄損傷プロトコルを用いた。ラットの体温を調節しながら、椎弓切除を実施した。58 gの力で60秒間ラットのT3胸椎に動脈瘤クリップを適用した。これは、脊髄傍動脈に影響を与えないように実施した。外傷を与えた後、組織保護サイトカインであるカルバミル化およびアシアロエリスロポイエチンを用いて、複数回投与レジメン(初めの3日は3回投与(10 μg/kg bw)を静脈内投与し、その後毎週2回投与した)で治療した。ラットをグループ(N=6)にわけ、これらグループの各々に対し、損傷から0〜72時間までの様々な時点で、組織保護サイトカインの複数回投与レジメンを開始した。その後、前記プロトコルに従い、ラットの運動スコアを45日間モニタリングした。
【0081】
図3および4から、たとえ最初の損傷からすぐ(0〜6時間後)に化合物を投与しなかった場合でも、前記の組織保護サイトカインが組織保護効果を発揮することがわかる。特に、図3から、損傷から72時間後までに投与されなくても、カルバミル化エリスロポイエチンが組織保護効果を有することがわかる。同様に、図4は、損傷から24時間後に投与されても、アシアロエリスロポイエチンが治療効果を有することを示す。
【0082】
実施例2
中大脳動脈閉塞(MCAO)実験
Charles River(Calco, イタリア)から体重250〜280 gの雄Cr1:CD(SD)BRラットを入手した。以下に挙げる文献の教示に従ってこれらのラットに手術を実施した:Brines, M.L., Ghezzi, P., Keenan, S., Agnello, D., de Lanerolle, N.C., Cerami, C., Itri, L.M.、およびCerami, A. 2000 Erythropoietin crosses the blood-brain barrier to protect against experimental brain injury Proc Natl Acad Sci USA 97:10526-10531。簡単に説明すると、ラットをクロラール水和物(400 mg/kg bw、腹腔内)で麻酔し、頚動脈を切開して露出し、右頚動脈を二針の縫合により閉塞した後切断した。右眼窩に隣接しかつ吻側にバーであけた開口部によりMCAを露出させ、これを鼻動脈に遠位の部位で焼灼した。この固定MCA病変周囲に半影(境界領域)を形成するため、微小鉗子による牽引を用いて、反対側頚動脈を1時間閉塞した後、再度開口した。
【0083】
A.組織保護サイトカインの予防治療ウインドウ
スプレー・ドーリーラットを前記MCAOプロトコルに供した。再灌流の1.5時間または4時間前のいずれかに、アシアロエリスロポイエチンを上記ラットに投与した。−1.5時間については3回投与:0、5、50 μg/kg bw(1グループ当たり6匹)、また−4時間については2回投与:0および50 μg/kg bw(1グループ当たり6匹)を用いた。Brinesら、2000 Proc Natl Acad Sci USA 97:10526-10531に記載されたプロトコルに従って、24時間後、脳切片のテトラゾリウイム染色により損傷体積の読み取り値を決定した。
【0084】
図5は、MCAOプロトコルによる病変の体積を示すグラフである。アシアロエリスロポイエチンによる前処置は、MCAO手術の1.5時間および4時間前に投与した場合、病変体積の有意な減少を示した。
【0085】
B.組織保護サイトカインの治療ウインドウ
この実施例では、上に概説したMCAOプロトコルを用いた。処置後、24時間および48時間後に、PBSまたはカルバミル化エリスロポイエチン(10μg/kg bw、静脈内)をラットに投与した。
【0086】
その後、ラットを挙動試験に供した。De Ryckら、Noecortical localization of tactile/proprioceptive limb placing reactions in the rat, Brain Research, 573 (1992) 44-60に記載されているド・リック(De Ryck)試験を28日間にわたり実施し、処置したラットの肢配置(limb placement)反応を評価した。ド・リック試験に従い、各ラットを6つの試験に供した。4つの試験では、次のことを評価した:テーブルの先端から10 cmの高さの地点から下方に向けてラットを保持することにより、その脚をどれくらい伸ばすか;テーブルの縁で、頭部を45℃の角度にしてラットを保持することにより、ラットがテーブルと接触した状態を維持するかどうか;ラットをテーブルの縁に保持し、その前足をテーブルに載せるかどうかを観察することにより、どのようにしてラットがテーブルに前足を載せるか;ラットをテーブルの縁に保持し、その前足をテーブルから落とすか否かを観察することにより、ラットがテーブルから「落ちる」かどうかを評価する。ラットには以下のように評点をつけた:配置なしが0;前足の不完全なまたは遅延した配置が1;前足の即座かつ完全な配置は2。さらに、別の2つの試験では、ラットをテーブルと平行に配置し、前または後足のいずれかをテーブルに載せようとするか否かを決定することにより、ラットがテーブルの上を横向きに進むかどうかと、ラットをテーブルの縁と平行に配置し、ラットを押したとき前または後足のいずれかをテーブルから落とすか否かを決定することにより、ラットがテーブルから横向きに落ちるかどうかを評価した。これらの試験にも前記と同じ評点付け方式を用いたが、前および後足は別々に評点付けをした。ラットが取得できる最高点は16である。図6から、再灌流から24および48時間後にカルバミル化エリスロポイエチンで処置したラットは、対照グループより優れた配置評点を取得したことが明らかであり、これは、損傷から24時間後に投与した場合でも、カルバミル化エリスロポイエチンの治療効果を示している。
【0087】
また、ラットをフットフォールト挙動プロトコルで試験した。Markgrafら、Brain Research 575:238-246 (1992)のプロトコルに従い、グリッド寸法が30 mmのステンレス鋼グリッド床30 cm×30 cmを持ち上げた上でラットの試験を実施した。グリッド上に載せると、ラットは動き回り、場合によっては、足を踏み外して、グリッドの開口部から落ちることになる(「フットフォールト」)。フットフォールトの数を1分間測定した。図7からわかるように、再灌流から24および48時間後にカルバミル化エリスロポイエチンで処置したラットは、PBSで処置したラットよりもフットフォールトの数が少なかった。
【0088】
本発明は、ここに記載した具体的実施形態にその範囲を制限されるものではなく、これらの実施形態は、本発明の個々の態様を説明するためにすぎない。また、機能的に均等の方法および成分も本発明の範囲に含まれる。実際、本明細書に示し、説明したもの以外にも、本発明の様々な変更が、以上の説明および添付の図面から当業者には明らかとなるだろう。このような変更も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0089】
本明細書で引用した参考文献はすべて、あらゆる目的のためにその全文を参照として本明細書に組み込むものとする。
【0090】
図面の簡単な説明
(図1)
単回用量で投与したアシアロエリスロポイエチンおよびカルバミル化エリスロポイエチンを、脊髄損傷のラットモデルに損傷の約24時間前に投与したとき、予防治療効果を有することを示す図である。
(図2)
単回用量で投与したエリスロポイエチンを、脊髄損傷のラットモデルに損傷から約24時間後に投与したとき、治療効果を有することを示す図である。
(図3)
複数回用量レジメンで投与したカルバミル化エリスロポイエチンを、脊髄損傷のラットモデルに損傷から少なくとも約72時間後までに投与したとき、治療効果を有することを示す図である。
(図4)
複数回用量レジメンで投与したアシアロエリスロポイエチンを、脊髄損傷のラットモデルに損傷から約24時間後までに投与したとき、治療効果を有することを示す図である。
(図5)
中大脳動脈閉塞の1.5または4時間前に、組織保護サイトカインであるアシアロエリスロポイエチンをラットモデルに予防的に投与すると、予防治療効果を有することを示す図である。
(図6)
中大脳動脈閉塞の24時間および48時間後に、カルバミル化エリスロポイエチンを投与すると、デ・リック試験を用いたラットの前足配置(paw placement)に関し治療効果を有することを示す図である。
(図7)
中大脳動脈閉塞の24時間および48時間後に、カルバミル化エリスロポイエチンを投与すると、ラットにおいてフットフォールト(foot fault)の数が減少することを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応答性哺乳動物細胞、組織もしくは器官の損傷からの保護、または該損傷後の機能を回復するための医薬組成物の製造のためのエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの使用であって、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ外の時点で、該医薬組成物を投与する、上記使用。
【請求項2】
損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前に前記医薬組成物を投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後に前記医薬組成物を投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
応答性哺乳動物細胞、組織および器官の損傷からの保護、または該損傷後の機能を回復するために投与される医薬組成物の製造のためのエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの使用であって、以下の3つの時点:(1)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、(2)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ内、もしくは(3)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後、の少なくともいずれか2つの時点で該医薬組成物を投与する、上記使用。
【請求項5】
応答性哺乳動物細胞、組織および器官の損傷からの保護、または該損傷後の機能を回復するために投与される医薬組成物の製造のためのエリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインの使用であって、その際、現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後の時点、ならびに、以下の時点:(1)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、または(2)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ内、の少なくとも1つの時点で、該医薬組成物を投与する、上記使用。
【請求項6】
前記哺乳動物細胞、組織もしくは器官が脊髄である、請求項1、4もしくは5に記載の使用。
【請求項7】
前記外傷または損傷が脊髄損傷である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記組織保護サイトカインをメチルプレドニゾンの治療ウインドウ外に投与する、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記哺乳動物細胞、組織もしくは器官が脳である、請求項1、4もしくは5に記載の使用。
【請求項10】
前記外傷または損傷が脳卒中または脳外傷である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組織保護サイトカインを組換え組織プラスミノーゲン活性化因子の治療ウインドウ外に投与する、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬組成物が、損傷から約8時間〜約168時間後に投与されたとき、治療効果を発揮することができる、請求項1、4、もしくは5に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬組成物が、損傷から約12時間〜約72時間後に投与されたとき、治療効果を発揮することができる、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記医薬組成物が、損傷の約1〜約24時間前に投与されたとき、治療効果を発揮することができる、請求項1、4、もしくは5に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬組成物が、損傷の約6〜約18時間前に投与されたとき、治療効果を発揮することができる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記応答性哺乳動物細胞が、ニューロン、網膜細胞、筋細胞、心細胞、肺細胞、肝細胞、腎細胞、小腸細胞、副腎皮質細胞、副腎髄質細胞、毛細管細胞、内皮細胞、精巣細胞、卵巣細胞、子宮内膜細胞、もしくは幹細胞を含む、請求項1、4、もしくは5に記載の使用。
【請求項17】
前記哺乳動物細胞がさらに、光受容体細胞、神経節細胞、双極性細胞、水平細胞、無軸索細胞、ミュラー細胞、心筋層細胞、ペースメーカ細胞、洞房結節細胞、洞結節細胞、房室結節細胞、ヒス束細胞、肝細胞、星細胞、クップファー細胞、糸球体間質細胞、杯細胞、腸腺細胞、腸内分泌細胞、糸球体細胞、線維束細胞、網状細胞、クロム親和細胞、周皮細胞、レイディヒ細胞、セルトーリ細胞、精子細胞、グラーフ卵胞細胞、始原卵胞細胞、子宮内膜支質細胞、ならびに子宮内膜細胞を含む、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記損傷が、発作障害、多発性硬化症、脳卒中、低血圧、心停止、虚血、心筋梗塞、炎症、認知機能の加齢関連欠損、放射線損傷、脳性麻痺、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、リー病、AIDS、痴呆、記憶喪失、筋萎縮側索硬化症、アルコール症、感情障害、不安障害、注意欠陥障害、自閉症、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳または脊髄外傷もしくは虚血、心肺バイパス、慢性心不全、黄斑変性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿性病網膜症、緑内障、網膜虚血、もしくは網膜外傷に関連する、請求項1、4、もしくは5に記載の使用。
【請求項19】
前記エリスロポイエチンが、化学的に改変されたエリスロポイエチンおよび組換えエリスロポイエチンからなる群より選択される、請求項1、4、もしくは5に記載の使用。
【請求項20】
前記組織保護サイトカインが、ヘマトクリットの増加、血管収縮、血小板の過剰活性化、プロコアグラント活性、および血小板の生成増加からなる群より選択される少なくとも1つの活性を欠失している、請求項1、4、もしくは5に記載の使用。
【請求項21】
前記組織保護サイトカインが、化学的に改変されたエリスロポイエチンおよび組換えエリスロポイエチンからなる群より選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記組織保護サイトカインが、以下のi〜xiv:
i.少なくともシアル酸部分を含まないエリスロポイエチン;
ii.少なくともN結合またはO結合の炭水化物を含まないエリスロポイエチン;
iii.少なくとも1つのグリコシダーゼによる天然エリスロポイエチンの処理により減少した炭水化物含量を少なくとも含むエリスロポイエチン;
iv.少なくとも1以上の酸化炭水化物を含むエリスロポイエチン;
v.少なくとも1以上の酸化炭水化物を含む化学的に還元されたエリスロポイエチン;
vi.少なくとも1以上の改変アルギニン残基を含むエリスロポイエチン;
vii.少なくとも1以上の改変リシン残基を含むエリスロポイエチン;
viii.エリスロポイエチン分子のN末端アミノ基の少なくとも1つの改変を含むエリスロポイエチン;
ix.少なくとも1つの改変チロシン残基を含むエリスロポイエチン;
x.少なくとも1つの改変アスパラギン酸またはグルタミン酸残基を含むエリスロポイエチン;
xi.少なくとも1つの改変トリプトファン残基を含むエリスロポイエチン;
xii.少なくとも1つのアミノ酸が除去されたエリスロポイエチン;
xiii.エリスロポイエチン分子における少なくとも1つのシスチン結合の少なくとも1つの開裂を有するエリスロポイエチン;ならびに
xiv.末端切断型エリスロポイエチン;
からなる群より選択される化学的に改変されたエリスロポイエチンである、請求項21に記載の使用
【請求項23】
前記組織保護サイトカインが、アシアロエリスロポイエチンである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記アシアロエリスロポイエチンが、ヒトアシアロエリスロポイエチンである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記組織保護サイトカインが、少なくとも1つのカルバミル化リシン残基を有するエリスロポイエチンである、請求項22に記載の使用。
【請求項26】
前記組織保護サイトカインが、配列番号5の第11〜15位[配列番号1]、配列番号5の第44〜51位[配列番号2]、配列番号5の第100〜108位[配列番号3]、もしくは配列番号5の第146〜151位[配列番号4]に位置する1以上の改変アミノ酸残基を有するエリスロポイエチンムテインを含む組換えエリスロポイエチンである、請求項21に記載の使用。
【請求項27】
エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、応答性哺乳動物細胞、組織もしくは器官の生存能力を保護または維持する方法であって、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ外の時点で該医薬組成物を投与する、上記方法。
【請求項28】
損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前に前記医薬組成物を投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後に前記医薬組成物を投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物を投与することを含む、応答性哺乳動物細胞、組織もしくは器官の生存能力を保護または維持する方法であって、以下の3つの時点:(1)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、(2)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ内、もしくは(3)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後、の少なくともいずれか2つの時点で該医薬組成物を投与する、上記方法。
【請求項31】
エリスロポイエチンまたは組織保護サイトカインを含む医薬組成物を投与することを含む、応答性哺乳動物細胞、組織もしくは器官の生存能力を保護または維持する方法であって、損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより後の時点、ならびに、以下の時点:(1)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウより前、または(2)損傷について現在承認されている治療薬に認められる治療ウインドウ内、の少なくとも1つの時点で、該医薬組成物を投与する、上記方法。
【請求項32】
前記哺乳動物細胞、組織もしくは器官が脊髄である、請求項27、30もしくは31に記載の方法。
【請求項33】
前記外傷または損傷が脊髄損傷である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記組織保護サイトカインをメチルプレドニゾンの治療ウインドウ外に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物細胞、組織もしくは器官が脳である、請求項27、30もしくは31に記載の方法。
【請求項36】
前記外傷または損傷が脳卒中または脳外傷である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記組織保護サイトカインを組換え組織プラスミノーゲン活性化因子の治療ウインドウ外に投与する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記医薬組成物が、損傷から約8時間〜約168時間後に投与したとき、治療効果を発揮することができる、請求項27、30もしくは31に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬組成物が、損傷から約12時間〜約72時間後に投与したとき、治療効果を発揮することができる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記医薬組成物が、損傷の約1〜約24時間前に投与したとき、治療効果を発揮することができる、請求項26、39もしくは40に記載の方法。
【請求項41】
前記医薬組成物が、損傷の約6〜約18時間前に投与したとき、治療効果を発揮することができる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記哺乳動物細胞が、ニューロン、網膜細胞、筋細胞、心細胞、肺細胞、肝細胞、腎細胞、小腸細胞、副腎皮質細胞、副腎髄質細胞、毛細管細胞、内皮細胞、精巣細胞、卵巣細胞、子宮内膜細胞、もしくは幹細胞を含む、請求項27、30もしくは31に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物細胞がさらに、光受容体細胞、神経節細胞、双極性細胞、水平細胞、無軸索細胞、ミュラー細胞、心筋層細胞、ペースメーカ細胞、洞房結節細胞、洞結節細胞、房室結節細胞、ヒス束細胞、肝細胞、星細胞、クップファー細胞、糸球体間質細胞、杯細胞、腸腺細胞、腸内分泌細胞、糸球体細胞、線維束細胞、網状細胞、クロム親和細胞、周皮細胞、レイディヒ細胞、セルトーリ細胞、精子細胞、グラーフ卵胞細胞、始原卵胞細胞、子宮内膜支質細胞、ならびに子宮内膜細胞を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記外傷または損傷が、発作障害、多発性硬化症、脳卒中、低血圧、心停止、虚血、心筋梗塞、炎症、認知機能の加齢関連欠損、放射線損傷、脳性麻痺、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、リー病、AIDS、痴呆、記憶喪失、筋萎縮側索硬化症、アルコール症、感情障害、不安障害、注意欠陥障害、自閉症、クロイツフェルト−ヤコブ病、脳または脊髄外傷もしくは虚血、心肺バイパス、慢性心不全、黄斑変性、糖尿病性ニューロパシー、糖尿病性網膜症、緑内障、網膜虚血、もしくは網膜外傷に起因する損傷により引き起こされる、請求項27、30もしくは31に記載の方法。
【請求項45】
前記エリスロポイエチンが、化学的に改変されたエリスロポイエチンおよび組換えエリスロポイエチンからなる群より選択される、請求項27、30もしくは31に記載の方法。
【請求項46】
前記組織保護サイトカインが、ヘマトクリットの増加、血管収縮、血小板の過剰活性化、プロコアグラント活性、および血小板の生成増加からなる群より選択される少なくとも1つの活性が欠失している、請求項27、30もしくは31に記載の方法。
【請求項47】
前記組織保護サイトカインが、化学的に改変されたエリスロポイエチンおよび組換えエリスロポイエチンからなる群より選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記組織保護サイトカインが、以下のi〜xiv:
i.少なくともシアル酸部分を含まないエリスロポイエチン;
ii.少なくともN結合またはO結合の炭水化物を含まないエリスロポイエチン;
iii.少なくとも1つのグリコシダーゼによる天然エリスロポイエチンの処理により減少した炭水化物含量を少なくとも含むエリスロポイエチン;
iv.少なくとも1以上の酸化炭水化物を含むエリスロポイエチン;
v.少なくとも1以上の酸化炭水化物を含む化学的に還元されたエリスロポイエチン;
vi.少なくとも1以上の改変アルギニン残基を含むエリスロポイエチン;
vii.少なくとも1以上の改変リシン残基を含むエリスロポイエチン;
viii.エリスロポイエチン分子のN末端アミノ基の少なくとも1つの改変を含むエリスロポイエチン;
ix.少なくとも1つの改変チロシン残基を含むエリスロポイエチン;
x.少なくとも1つの改変アスパラギン酸またはグルタミン酸残基を含むエリスロポイエチン;
xi.少なくとも1つの改変トリプトファン残基を含むエリスロポイエチン;
xii.少なくとも1つのアミノ酸が除去されたエリスロポイエチン;
xiii.エリスロポイエチン分子における少なくとも1つのシスチン結合の少なくとも1つの開裂を有するエリスロポイエチン;ならびに
xiv.末端切断型エリスロポイエチン;
ものからなる群より選択される化学的に改変されたエリスロポイエチンである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記組織保護サイトカインが、アシアロエリスロポイエチンである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記アシアロエリスロポイエチンが、ヒトアシアロエリスロポイエチンである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記組織保護サイトカインが、少なくとも1つのカルバミル化リシン残基を有するエリスロポイエチンである、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記組織保護サイトカインが、配列番号5の第11〜15位[配列番号1]、配列番号5の第44〜51位[配列番号2]、配列番号5の第100〜108位[配列番号3]、もしくは配列番号5の第146〜151位[配列番号4]に位置する1以上の改変アミノ酸残基を有するエリスロポイエチンムテインを含む組換えエリスロポイエチンである、請求項47に記載の方法。

【公表番号】特表2007−505159(P2007−505159A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533223(P2006−533223)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015733
【国際公開番号】WO2004/112693
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(501401582)ザ ケネス エス.ウォーレン インスティテュート,インコーポレーテッド (8)
【出願人】(505004835)
【Fターム(参考)】