説明

建具

【課題】面材の室内側面の結露水をスムーズに室外側に排水できると共に、強風雨時に雨水等が室内側に吹き込むことがない建具とする。
【解決手段】枠体1の面材嵌入溝(ガラス嵌入溝2)に面材(ガラス3)を装着すると共に、前記面材嵌入溝の室内側縦内面と面材の室内側面との間を室内側水密材4で水密し、この室内側水密材4における面材の下端側に位置する部分を不連続して面材の室内側面を面材嵌入溝に連続する水抜き空間部6を形成し、この水抜き空間部6に通水性部材7を設けると共に、前記面材嵌入溝に排水孔5を形成し、面材の室内側面の結露水を通水性部材7を通して排水孔5から排水し、その排水孔5から吹き込んだ雨水等は通水性部材7を通ることがないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌め殺し窓、可動障子などの枠体に面材を装着した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
嵌め殺し窓や可動障子においては、室内と室外との温度差によってガラスの室内側面に結露が生じ、結露水が流れ落ちて枠体の下部から室内側に流れ込むことがある。
この結露水を室外側に排水するようにした嵌め殺し窓が特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0003】
前記特許文献1に開示された嵌め殺し窓は、枠体の下枠におけるガラス嵌入溝とガラスの室内側面との間を水密するシーリング材の一部分に水抜き孔を形成し、前記下枠のガラス嵌入溝の底部に排水孔を形成し、ガラスの室内側面の結露水が水抜き孔からガラス嵌入溝に流入し、排水孔から室外側に排水するようにしてある。
【0004】
特許文献2に開示された嵌め殺し窓は、枠体の縦枠下部に室内側排水口を形成し、下枠に室外側排水口を形成して下枠内に排水通路を形成すると共に、この排水通路に通水性充填物を充填し、ガラスの室内側面の結露水を室内側排水口から排水通路を通して室外側排水口から室外に排水するようにしている。
【特許文献1】実開昭62−190088号公報
【特許文献2】特開昭60−115788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された嵌め殺し窓であると、強風雨時に雨水等が排水孔を通して水抜き孔から室内側に吹き込む恐れがある。
特許文献2に開示された嵌め殺し窓であると、通水性充填物によって強風雨時に雨水等が室内側排水口から室内側に吹き込むことを防止できるが、排水通路の全体に通水性充填物を充填するので、その通水性充填物の使用量が多く、結露水の流通抵抗が大きいと共に、排水通路は横向きで結露水が流れにくいので、これらが相俟ってスムーズに結露水を室外側に排水できない。
【0006】
本発明は、結露水をスムーズに室外側に排水できると共に、強風雨時に雨水等が室内側に吹き込むことがないようにした建具とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、枠体と枠体内に設けられる面材とを有した建具であって、
前記枠体は、面材の端面が挿入される面材嵌入溝を有し、
前記面材嵌入溝は、前記面材の室内側面と対向する対向面を有して構成されていると共に、排水孔を有し、
前記対向面と前記面材の室内側面との間を室内側水密材で水密し、
前記室内側水密材における前記面材の下端側に位置する部分を不連続として水抜き空間部を形成し、当該水抜き空間部に通水性部材を設け、
前記室内側水密材は、取付部と、水密部と、を有し、
前記通水性部材は、取付部と、流体の流通量を制限する通水部と、を有し、
前記各取付部を前記対向面に設けた取付用溝に挿入して取付けたことを特徴とする建具である。
【0008】
本発明においては、前記水抜き空間部において相対向した前記水密部の端面に、前記通水部の両端部を接することができる。
このようにすれば、水密部の端面と通水部との間を水密することができるから、その間から強風雨時に雨水等が室内側に吹き込むことがない。
【0009】
本発明においては、通水性部材の通水部の上方に、結露水が溜まる上向き凹陥部を形成することができる。
このようにすれば、面材の室内側面の結露水が上向き凹陥部に溜まるので、その結露水が通水部を通って下方に流れ易くなる。
また、上向き凹陥部にある程度結露水を溜めることができるため、通水部を直ぐに通水できなかった結露水の室内側への流出を防ぐことができる。
したがって、結露水をより一層スムーズに室外側に排水できる。
【0010】
本発明においては、通水性部材の通水部は、可撓性のフィンを有し、このフィンの先端部が面材の室内側面に接して下向きに湾曲変形させることができる。
このようにすれば、フィンの上に結露水が溜まることでフィンは下向きに湾曲変形して面材の室内側面との間から結露水が流れ落ち、そのフィンの下に雨水等が作用した時には上向きに湾曲変形し難いから面材の室内側面との間から雨水等が室内側に吹き込むことがない。
【0011】
本発明においては、通水性部材の通水部は、フィンの上面側にパイルを有していることができる。
このようにすれば、フィンの下面に雨水や風圧等によって上方へ付勢された場合でも、フィンの上面側に位置するパイルによってめくれ上がり難くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、面材の室内側面の結露水は通水性部材を通して面材嵌入溝に流れ落ち、排水孔から排水されるので、スムーズに室外側に排水できる。
また、排水孔から吹き込んだ雨水等は通水性部材で上向きに流れることが制限されるので、強風雨時に雨水等が排水孔を通して室内側に吹き込むことがない。
また、室内側水密材を取付ける取付用溝を利用して通水性部材を簡単に取付けできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示すように、枠体1の面材嵌入溝としてのガラス嵌入溝2に面材としてのガラス3を装着して建具としてある。
前記ガラス嵌入溝2は枠体1の内周面1aに開口していると共に、全周に亘って連続している。
図2に示すように、前記ガラス嵌入溝2の対向面としての室内側縦内面2aとガラス3の室内側面3aとの間が室内側水密材4で水密されている。
図3に示すように、前記枠体1のガラス嵌入溝2は排水孔5を有する、例えば底部2bにおける下部に排水孔5が形成されている。
前記室内側水密材4における前記ガラス3の下端側に位置する部分は不連続で、その室内側水密材4の相対向した端面4a,4a間とガラス3の室内側面3aと枠体1のガラス嵌入溝2の室内側縦内面2aとの間に水抜き空間部6を形成している。
要するに、室内側水密材4における前記ガラス3の下端側に位置する長手方向の一部分を不連続として水抜き空間部6を形成している。
【0014】
前記水抜き空間部6はガラス3の室内側面3aと連続していると共に、前記ガラス嵌入溝2の上部(開口部)に位置して前記ガラス嵌入溝2の底部2bよりも高い位置にあり、ガラス3の室内側面3aの結露水が水抜き空間部6を流れ落ちてガラス嵌入溝2の底部2bまで落下する。
前記水抜き空間部6に通気性部材7を取付けてある。
この通気性部材7は、水や空気などの流体の流通量(通過量)を制限するものである。例えば、上から下に向けて水が流れ易いが、下から上に向けては水が流れにくいものである。
【0015】
このようであるから、ガラス3の室内側面3aの結露水は通水性部材7を通してガラス嵌入溝2の底部2bに流れ落ち、排水孔5から室外側に排水される。この排水孔5から直接室外側に排水しても良いし、排水孔5から排水経路を通して室外側に排水するようにしても良い。
また、通水性部材7の上下寸法は短く、結露水の流入抵抗が小さいし、水抜き空間部6には縦向きに結露水が流れるから流れ易いので、これらが相俟ってスムーズに結露水が流れ落ちるから、ガラス3の室内側面3aの結露水をスムーズに室外側に排水できる。
また、強風雨時に雨水等が排水孔5からガラス嵌入溝2内に入り込むが、通水性部材7によって室内側に吹き込むことを抑制できる。
【0016】
前述の説明において、図1は概略的に図示してあると共に、図2、図3は建物躯体の取付を含めて具体的に図示してあるので、図1と図2、図3は寸法、形状が相違する部分がある。
【0017】
次に、前記室内側水密材4と通水性部材7について詳細に説明する。
前記室内側水密材4は図2に示すように、取付部4bと水密部4cを備え、その取付部4bを室内側縦内面2aの取付用溝8に嵌入して取付け、その水密部4cがガラス3の室内側面3aに押しつけられる。
前記通水性部材7は図3に示すように取付部7aと通水部7bを備え、その取付部7aを前記取付用溝8に嵌入して取付け、その通水部7bがガラス3の室内側面3aに接している。この通水部7bが流体の流通量を制限する。
【0018】
図4と図5に示すように、室内側水密材4の不連続部における水密部4cの相対向した端面4aに、通水性部材7の通水部7bの両端部が接し、その通水部7bと水密部4cとの間を結露水が流れたり、強風雨時に雨水等が吹き込み難くするように水密している。
このようであるから、室内側水密材4を取付けるための取付用溝8を利用して通水性部材7を簡単に取付けできると共に、この通水性部材7(通水部7b)と室内側水密材4の端面4a(水密部4cの端面4a)との間を水密し、その間から強風雨時に雨水等が室内側に吹き込み難くしている。
【0019】
前記通水性部材7の取付部7aは、図3〜図5に示すように、基板10の背面に嵌入片11を設けたもので、その基板10の正面における上下中間に通水部7bが設けてあり、その嵌入片11を取付用溝8に嵌入することで基板10が室内側縦内面2aに接して取付用溝8を閉塞する。
そして、前記基板10の幅寸法(上下寸法)が通水部7bの上下寸法よりも大きく、基板10の正面と通水部7bとガラス3の室内側面3aとで図3に示すように上向き凹陥部12を形成している。要するに、通水部7bの上方に結露水が溜まる上向き凹陥部12を形成すれば良い。
【0020】
このようであるから、ガラス3の室内側面3aの結露水は前述の上向き凹陥部12に溜まるので、通水部7bを通って下方に流れ易くなるから、結露水をより一層スムーズに室外側に排水できる。
また、通水部7bを直ぐに通過できなかった結露水が室内側に流出することを防いでいる。
【0021】
次に、通水性部材7の具体例を図6と図7に基づいて説明する。
前記取付部7aの基板10は所定の厚さと幅と長さを有する矩形板状で、その背面10aの幅方向中央に嵌入片11が一体的に設けてあり、この基板10と嵌入片11は柔軟で長手方向に湾曲変形可能である。
前記気密部7bは、プレート13にフィン14と、上のパイル15と、下のパイル16を植設したもので、そのプレート13が基板10の正面10bの幅方向中央(上下方向中央)に固着して取付けてある。
前記フィン14は可撓性を有するシート状である。前記上のパイル15、下のパイル16は細い線状片を多数有したもので、例えばモヘヤと呼ばれるものである。
前記フィン14、上下のパイル15,16の先端部は室内側水密材4の先端面4dよりも正面側(室外側)に突出している。
前記フィン14の先端部が上のパイル15、下のパイル16の先端部よりも正面側(室外側)に突出している。
【0022】
前記取付部7bを取付用溝8に取付けることで、図7に示すようにフィン14の先端部、上下のパイル15,16の先端部をガラス3の室内側面3aに接して下向きにそれぞれ湾曲変形させる。
このようであるから、フィン14は上から下に向かう外力で下方に向けて湾曲変形し易いが、下から上に向かう外力では上方に向けて湾曲変形しにくい。
したがって、フィン14の上に結露水が溜まると、その結露水の重さでフィン14が下方に向けて湾曲変形して先端部をガラス3の室内側面3aとの間から結露水が下方に流れ落ちる。
また、強風雨時にフィン14の下に雨水等が吹きつけられても上方に向けて湾曲変形し難くなっている。
【0023】
前記上のパイル15はフィン14が上方へ湾曲変形し難くし、下のパイル16はフィン14の下に吹きつけられる雨水の勢いを弱める。
また、上のパイル15と下のパイル16を有しているから、通水性部材7を上下反転して取付けても同様の機能を発揮し、通水性部材7の上下の取付け誤りを生じることがない。
【0024】
前記気密部7bは、フィン14のみで良いし、フィン14と上のパイル15のみでも良く、さらにはフィン14と下のパイル16のみでも良い。
また、気密部7bはフィン14を用いずに上下のパイル15,16のみとでも良い。
【0025】
この実施の形態の枠体1は、室内側の内枠20と室外側の外枠30を連結してガラス嵌入溝2を周方向に連続して有するものとしてある。
前記内枠20は縦板21と横板22で断面鈎形状のリング形状で、横板22に取付板23が縦板21と連続して一体的に設けてある。
前記縦板21が前述の室内側縦内面2aで、室外側に開口した取付用溝8が形成してある。
前記外枠30の内枠20に向かう内側面31の外周1寄りと横板22の外枠30に向かう外側面22aとは離隔し、水密材32で水密してある。
前記水密材32の下の部分が不連続となって図3に示すように排水孔5としてある。
前記ガラス3の室外側面3bと外枠30の内側面31の内周寄りとの間が室外側水密材33で水密してある。
【0026】
前述の実施の形態の枠体1は矩形状としてあるが、これに限ることはなく任意の形状とすることができる。
例えば、図8に示すように丸形状、図9に示すように菱形状とすることができる。
図8に示す丸形状の場合には、室内側水密材4は円形リング状で、取付用溝8も円形環状となるから、通水性部材7を円弧形状とする。
例えば、図6に示す通水性部材7の取付部7aを円弧形状に湾曲して取付用溝8に取付ける。
【0027】
図9に示す菱形状の場合には、室内側水密材4の最も下の部分はV字状となるから、取付用溝8の通水性部材7を取付ける部分もV字形状となるから、通水性部材7をV字形状とする。
例えば、図6に示す通水性部材7の取付部7aをV字形状に湾曲して取付用溝8に取付ける。
または、2つの通水性部材7を取付用溝8にそれぞれ取付けてV字状とする。
【0028】
前記枠体1は内枠20と外枠30でガラス嵌入溝2を有するものとしたが、これに限ることはなく、上枠、下枠、左右の縦枠を連結したものとしても良い。
また、前記実施の形態では嵌め殺し窓タイプの建具について説明したが、可動可能な障子を有した建具、例えば引違い窓や縦辷り出し窓等のように、開口枠に開閉可能に設けた可動障子を有した建具であっても良い。この場合、可動障子が四周框組(枠体)されたものにガラス(面材)が設けられ、ガラスの室内側面と框(枠体)のガラス嵌入溝の対向面(室内側縦内面)との間に通水性部材や室内側水密材を設ける

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すガラス建具の一部を破断した概略内観図である。
【図2】図1のA−A拡大詳細断面図である。
【図3】図1のB−B拡大詳細断面図である。
【図4】通水性部材を取付けた部分の正面図である。
【図5】通水性部材を取付けた部分の平面図である。
【図6】通水性部材の拡大斜視図である。
【図7】通水性部材とガラスの室内側面との接している部分の拡大図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示すガラス建具の一部を破断した概略外観図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態を示すガラス建具の一部を破断した概略外観図である。
【符号の説明】
【0030】
1…枠体、2…ガラス嵌入溝(面材嵌入溝)、2a…室内側縦内面(対向面)、2b…底壁、3…ガラス(面材)、3a…室内側面、4…室内側水密材、4a…端面、5…排水孔、6…水抜き空間部、7…通水性部材、7a…取付部、7b…通水部、8…取付用溝、14…フィン、15…上のパイル、16…下のパイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と枠体内に設けられる面材とを有した建具であって、
前記枠体は、面材の端面が挿入される面材嵌入溝を有し、
前記面材嵌入溝は、前記面材の室内側面と対向する対向面を有して構成されていると共に、排水孔を有し、
前記対向面と前記面材の室内側面との間を室内側水密材で水密し、
前記室内側水密材における前記面材の下端側に位置する部分を不連続として水抜き空間部を形成し、当該水抜き空間部に通水性部材を設け、
前記室内側水密材は、取付部と、水密部と、を有し、
前記通水性部材は、取付部と、流体の流通量を制限する通水部と、を有し、
前記各取付部を前記対向面に設けた取付用溝に挿入して取付けたことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記水抜き空間部において相対向した前記水密部の端面に、前記通水部の両端部を接した請求項1記載の建具。
【請求項3】
前記通水性部材の通水部の上方に、結露水が溜まる上向き凹陥部を形成した請求項2記載の建具。
【請求項4】
前記通水性部材の通水部は、可撓性のフィンを有し、このフィンの先端部が面材の室内側面に接して下向きに湾曲変形している請求項2又は3記載の建具。
【請求項5】
前記通水性部材の通水部は、前記フィンの上面側にパイルを有している請求項4記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−231856(P2008−231856A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76170(P2007−76170)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】