説明

建屋壁面塗装時の養生方法、支持体および養生具

【課題】シート体の使用量を大幅に減少させるとともに、リフォーム時の居住環境悪化も回避できる。
【解決手段】建屋壁面1の塗装作業をするに際して、建屋壁面1に存在する窓開口2の上縁に沿った複数箇所に、建屋壁面1から延出するように支持体4を位置させるとともに、これら支持体4間にシート体5を張設して庇体3を形成し、当該庇体3によって塗料が窓開口2へ侵入するのを規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建屋壁面塗装時の養生方法、支持体および養生具に関し、特に広い面積の養生領域を最小限の機材で養生することができる養生方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建屋外壁面の塗装をする場合等は、壁面に露出する窓や布基礎の外表面等に塗料が付着しないように養生している。この場合の養生方法は、シート体で窓や布基礎の全面を覆い、その外周縁を布テープ等でサッシ枠や外壁面下縁の水切り部に止着する等の方法によっている。
【0003】
なお、特許文献1には、車輌の開閉口部を養生するための板金塗装用の養生シートが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-177654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の養生方法では、比較的大面積の窓や布基礎の全面をシート体で覆っているために、大量のシート体が必要になるとともに、窓がシート体で閉鎖されてしまうためにリフォーム時には住人の居住環境が悪化するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、シート体の使用量を大幅に減少させるとともに、リフォーム時の居住環境悪化も回避できる建屋壁面塗装時の養生方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明の建屋壁面塗装時の養生方法は、建屋壁面(1)の塗装作業をするに際して、建屋壁面(1)に存在する養生領域(2)の上縁ないし側縁に沿った複数箇所に、建屋壁面(1)から延出するように支持体(4,7,82)を位置させるとともに、これら支持体(4,7,82)間にシート体(5,81)を張設して庇体(3)を形成し、当該庇体(3)によって塗料が養生領域(2)内へ侵入するのを規制したことを特徴とする。
【0008】
本第1発明においては、庇体を形成したことにより、壁面塗装作業時に飛散する塗料は庇体で受け止められて、養生領域へ侵入することが規制される。庇体の庇面積は養生領域の面積に比して十分小さくできるから、シート体の使用量を大幅に低減することができる。また、養生領域が窓開口である場合には、窓体が開閉可能な状態に維持できるから、リフォーム時等の居住環境悪化も避けられる。
【0009】
本第2発明では、上記支持体(4)は、養生領域(2)の上縁ないし側縁に止着される基部(41,71)と、建屋壁面(1)から離れる方向へ延出する支持部(42,72)と、支持部を補強するリブ部(43,73)とを備え、これら基部(41,71)、支持部(42,72)およびリブ部(43,73)が一枚の平板紙材を折り曲げて形成されている。
【0010】
本第2発明においては、支持体を、平板の紙材を折り曲げて形成しているから、平板の紙材を積み重ねることによって保管、搬送をコンパクトに行うことができる。さらに紙材であるから使用後の処分も容易である。
【0011】
本第3発明では、上記紙材は略長方形をなし、基部(41)は紙材の長手方向の一端部を折り曲げて形成されているとともに、リブ部(43)は紙材の長手方向へその一部を折り曲げて形成されている。本第3発明においては、紙材はほぼ長方形状とできるから材料取りに無駄を生じない。
【0012】
本第4発明の建屋壁面塗装時の養生方法に使用する支持体は、建屋壁面(1)に止着される基部(41)と、当該基部(41)から延出する支持部(42)と、支持部(42)を補強するリブ部(43)とを備え、これら基部(41)、支持部(42)およびリブ部(43)を一枚の紙材を折り曲げて形成する。
【0013】
本第5発明では、支持体を形成する上記紙材は略長方形をなし、基部(41)は紙材の長手方向の一端部を折り曲げて形成されているとともに、リブ部(43)は紙材の長手方向へその一部を折り曲げて形成されている。
【0014】
本第6発明の建屋壁面塗装時の養生方法では、シート体(81)には一方の側縁に沿って、養生領域(2)の上縁ないし側縁にシート体(81)の側縁を接着するための接着テープ(83)が設けられるとともに、シート体(81)にはその長手方向へ間隔をおいて複数の支持体(82)がシート体(81)を横断するように設けられている。
【0015】
本第6発明においても本第1発明と同様の効果が得られるとともに、シート体を適当長さに切断し、これに設けた接着テープを養生領域の上縁ないし側縁に接着するだけの簡易な作業で庇体を形成して養生領域の養生を行うことができる。
【0016】
本第7発明の建屋壁面塗装時の養生方法に使用する養生具では、シート体(81)の一方の側縁に沿って、当該側縁を建屋壁面(1)に存在する養生領域(2)の上縁ないし側縁に沿って接着する接着テープ(83)が設けられるとともに、シート体(81)の長手方向へ間隔をおいて複数の支持体(82)がシート体(81)を横断するように設けられており、このようなシート体(81)が巻回状態で収納されている。
【0017】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の建屋壁面塗装時の養生方法等によれば、シート体の使用量を大幅に減少させるとともに、リフォーム時の居住環境の悪化も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態における庇体を設けた建屋外壁窓開口の斜視図である。
【図2】支持体を上方から見た斜視図である。
【図3】支持体を図2のA矢印で示す下方から見た斜視図である。
【図4】支持体を形成する紙材の平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における支持体の斜視図である。
【図6】本発明の第3実施形態における養生具の斜視図である。
【図7】養生具により形成された庇体を設けた建屋外壁窓開口の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1には建屋外壁面1に設けられた、養生領域としての窓開口2を養生した状態を示す。図において、矩形の窓開口2には引き違いの窓体21,22が設けられており、これら窓体21,22は、窓開口2の内周に嵌着された窓サッシ23によって左右方向へ直線移動可能に保持されている。そして、この窓開口2に庇体3が設けられている。
【0021】
庇体3は窓開口2の上縁両端に設けられた支持体4と、これら支持体4を覆うようにこれらの間に張設されたシート体5とを備えている。本実施形態ではシート体は例えば透明なビニルシートである。ここで、図2には、支持体4を上方から見た斜視図を、図3には、支持体4を下方から見た斜視図を示す。支持体4はボール紙等の厚紙の紙材を折り曲げて形成され、基部41、支持部42およびリブ部43で構成されている。
【0022】
支持体4を形成するための紙材は、図4に示すような略長方形をなしており、その一端部には基部41を形成するための折れ線44が紙材を横切るように形成されており、この折れ線44に沿って折り曲げることで基部41が形成される(図2、図3)。なお、基部41には、紙材の長手方向へ延びる切り込み411と、これよりもやや傾斜して延びる切り込み412が形成されている(図4)。
【0023】
図4において、紙材の端部を除いた部分は支持部42となっており、ここには約半分の領域に門形の切り込み45が形成してある。これら切り込み45の両端間には、紙材の長手方向へ延びる、リブ部43を形成するための折れ線46が形成されており、切り込み45の左右の脚部451,452は端部に近い側では長く、反対側では短くなっている。そこで、折れ線46に沿って折り曲げることにより、基部41と支持部42に直交し基部41の側で幅広となったリブ部43が形成される(図2、図3)。
【0024】
この際、リブ部43の一端を図3に示すように基部41の切り込み411内に挿入することによって、リブ部43の姿勢が確定されて支持部42が補強されるとともに、基部41と支持部42の成す角度θ(図3)が90度よりも小さい角度に設定される。なお、例えば布基礎の養生をする場合のように、基部41と支持部42の成す角度θをさらに小さくしたい場合には、リブ部43の一端を切り込み412の方へ挿入する。図4において、紙材の支持部42の、残る半分の領域には切り込み45の脚部452の一端から、紙材の長手方向へ支持部42の他端まで延びる折れ線47が形成されており、この折れ線47に沿って支持部42を山形断面に折り曲げることによって(図2、図3)、本体部42の強度がさらに向上させられている。
【0025】
このようにして紙材より折り曲げ形成された支持体4の基部41を、接着テープたる両面テープ等で窓サッシ23の上縁両端に固定し(図1)その支持部42を建屋外壁面1から斜め下方へ延出させる。そして支持体4間にシート体5を掛け渡し、必要箇所を適宜支持体4に接着テープたる布テープ等で固着するとともに建屋外壁面1に近いシート体5の側縁51を布テープ6等で窓サッシ23に固着する。このようにして庇体3が形成される。
【0026】
庇体3を形成したことにより、外壁塗装作業時に上方から飛散落下する塗料は庇体3で受け止められて、下方の窓開口2へ侵入することが規制される。本実施形態によれば、窓開口2の面積に比して庇体3の庇面積は十分小さくできるから、シート体の使用量を大幅に低減することができる。また、窓体21,22が開閉可能な状態に維持されているから、リフォーム時等の居住環境悪化も避けられる。さらに本実施形態では、支持体4を、平板の紙材を折り曲げて形成しているから、平板の紙材を積み重ねて保管、搬送をコンパクトに行うことができる。さらに紙材であるから使用後の処分も容易である。また、紙材はほぼ長方形状とできるから材料取りに無駄を生じない。
【0027】
本実施形態の養生方法は前述のように例えば布基礎の養生にも使用することができ、この場合には、支持体4の基部41を、両面テープ等で建屋外壁面下縁の水切り等に固定してその支持部42を上記外壁から斜め下方へ延出させ、支持体4間に掛け渡したシート体5の側縁51を布テープ等で水切りに固着する。
【0028】
(第2実施形態)
支持体としては図5に示すようなものでも良い。図5において、支持体7は略長方形の紙材の一端が所定角度に折り曲げられて基部71となっており、残る部分は長尺の支持部72となっている。基部71に近い支持部72の半部側縁は段付に幅広となった後、基部71に向かって漸次幅広となっており、この部分を折り曲げることによって基部71に向かって幅広となるリブ部73が形成されている。なお、リブ部73の端縁は例えば布テープを使用して基部71に固着される。このような構造の支持体7を使用しても第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、支持体の構造をより簡素化することができる。
【0029】
(第3実施形態)
窓開口の幅や布基礎の長さは、通常、規格化されている。そこで、本実施形態では図6に示すような養生具を使用する。すなわち養生具8は、芯材の周りに巻回されて収納される長尺のシート体81に、その長手方向へ等間隔で支持体82を設けたものである。支持体82は例えばボール紙等の厚紙の長尺体で、これを、シート体81を横切るようにその表面に貼り付けてある。シート体81には一方の側縁に沿って布テープ83が設けてある。このような、布テープ83を設けた長尺のシート体81としては、養生用のマスカーとして従来から知られているものを利用することができる。
【0030】
上記養生具8は、庇体3(図7参照)の左右の垂れ部85を形成するために、支持体82を越えたところに位置する引き出し先の端部84が、布テープ83を設けた側へ漸次幅広となるように切断されている。この切断は、窓開口2(図7参照)の幅に合致する長さでシート体81を引き出した後の、引き出し元の端部でも同様に行う。
【0031】
このようにして切断したシート体81の側縁を、図7に示すように、これに設けられた布テープ83で窓サッシ23の上縁に固着する。この状態で、支持体82が建屋外壁面1から外方へ延出してシート体81がやや前下がりに支持され、窓開口2の上方を覆う庇体3が形成される。なお、布基礎の養生を行う場合には、シート体81の側縁をこれに設けた布テープ83で建屋外壁面下縁の水切り等に接着する。
【0032】
本実施形態によっても上記各実施形態と同様の効果が得られるとともに、第1実施形態のように支持体4の組み立てやこれを覆うシート体5を設置する等の手間を要することなく、シート体81を引き出して切断し、これを窓サッシ23の上縁に接着するだけの簡易な作業で庇体3を形成して窓開口2の養生を行うことができる。
【0033】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、窓開口2の上縁に沿って庇体3を設けたが、塗料の飛散方向によっては窓開口2の側縁に上下方向へ設けるようにしてもよい。また、上記各実施形態では建屋外壁面を対象としたが、建屋内壁面やその他の壁面であっても良い。
【符号の説明】
【0034】
1…建屋外壁面(建屋壁面)、2…窓開口(養生領域)、3…庇体、4…支持体、41…基部、42…支持部、43…リブ部、5…シート体、7…支持体、71…基部、72…支持部、73…リブ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋壁面の塗装作業をするに際して、建屋壁面に確保された養生領域の上縁ないし側縁に沿った複数箇所に、建屋壁面から延出するように支持体を位置させるとともに、これら支持体間にシート体を張設して庇体を形成し、当該庇体によって塗料が養生領域内へ侵入するのを規制したことを特徴とする建屋壁面塗装時の養生方法。
【請求項2】
前記支持体は、前記養生領域の上縁ないし側縁に止着される基部と、建屋壁面から離れる方向へ延出する支持部と、支持部を補強するリブ部とを備え、これら基部、支持部およびリブ部が一枚の平板紙体を折り曲げて形成されている請求項1に記載の建屋外壁塗装時の養生方法。
【請求項3】
前記紙体は略長方形をなし、前記基部は紙体の長手方向の一端部を折り曲げて形成されているとともに、前記リブ部は紙体の長手方向へその一部を折り曲げて形成されている請求項2に記載の建屋壁面塗装時の養生方法。
【請求項4】
建屋壁面に止着される基部と、当該基部から延出する支持部と、支持部を補強するリブ部とを備え、これら基部、支持部およびリブ部を一枚の平板紙体を折り曲げて形成した請求項1に記載の建屋壁面塗装時の養生方法に使用する支持体。
【請求項5】
前記紙体は略長方形をなし、前記基部は紙体の長手方向の一端部を折り曲げて形成されているとともに、前記リブ部は紙体の長手方向へその一部を折り曲げて形成されている請求項4に記載の支持体。
【請求項6】
前記シート体には一方の側縁に沿って、前記養生領域の上縁ないし側縁に前記シート体の側縁を接着するための接着テープが設けられるとともに、前記シート体にはその長手方向へ間隔をおいて複数の前記支持体がシート体を横断するように設けられている請求項1に記載の建屋壁面塗装時の養生方法。
【請求項7】
シート体の一方の側縁に沿って、当該側縁を建屋壁面に確保された養生領域の上縁ないし側縁に沿って接着する接着テープが設けられるとともに、シート体の長手方向へ間隔をおいて複数の支持体がシート体を横断するように設けられており、このようなシート体が巻回状態で収納されている請求項1に記載の建屋壁面塗装時の養生方法に使用する養生具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−209624(P2010−209624A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58808(P2009−58808)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(597096404)
【Fターム(参考)】