説明

建物の壁断熱構造

【課題】壁内断熱材を交換する際の作業負荷の軽減を図ることができる建物の壁断熱構造を提供する。
【解決手段】建物10の外周部において、屋外側には外壁パネル11が設けられ、屋内側には内壁パネル12が設けられている。外壁パネル11は、屋外面を形成する外壁材14と、外壁材14の裏面側に固定された外壁フレーム15とを備えている。内壁パネル12は、内壁下地材21と、内壁下地材21の裏面側に固定された内壁フレーム22と、複数の断熱材23とを備える。対向する外壁材14と内壁下地材21との間の壁内空間29において複数の断熱材23は上下に複数分割して設けられており、内壁パネル12の内壁フレーム22には上下に隣り合う断熱材23同士を隔てる仕切フレーム材22cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁部では、対向して設けられた外壁材と内壁材との間の壁内空間に断熱性の向上を図るべくグラスウール等からなる壁内断熱材が配設される場合がある(例えば特許文献1)。一般にかかる断熱材は、壁内空間の高さ方向全域にわたって一枚物で形成されており、それ故壁内断熱材は例えば内壁材とほぼ同じ高さを有して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−115637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、洪水等により建物が床上浸水等した場合には、壁内空間に水が浸入し、これにより壁内断熱材が水に漬かり使い物にならなくなることが考えられる。その場合、水に漬かった壁内断熱材を新しい断熱材に交換する必要が生じうる。ここで、上述したように壁内断熱材は壁内空間の高さ方向全域にわたり一枚物で形成された大型部材であるため、壁内断熱材を交換する際その取り回しが大変であることが考えられる。そのため、壁内断熱材の交換作業を行う際には多大な労力を要するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、壁内断熱材を交換する際の作業負荷の軽減を図ることができる建物の壁断熱構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の壁断熱構造は、対向する2つの壁面材の間の壁内空間に壁内断熱材が配設される建物の壁断熱構造であって、前記壁内断熱材は、前記壁内空間において上下方向に複数に分割して設けられており、上下に隣り合う各壁内断熱材の間には、それら壁内断熱材同士を隔てる隔て部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、壁内空間において複数の壁内断熱材が上下に分割して設けられており、上下に隣り合う壁内断熱材同士が隔て部材により隔てられ互いの接触が回避されている。そのため、床上浸水等により壁内空間に水が入り込み一部の壁内断熱材が水に浸かった場合でも、その上方の壁内断熱材に水が吸い上げられる等して壁内断熱材の濡れの被害が上側に拡がるのを抑制できる。そして、壁内断熱材の交換作業は複数の壁内断熱材のうち水に浸かった一部の壁内断熱材についてのみ行えば済むため、壁内断熱材を交換する際の作業負荷を軽減させることができる。
【0008】
また、浸水によって濡れた壁内断熱材だけを交換すればよいため、濡れていない壁内断熱材についてはそのまま継続して使用することができる。そのため、壁内空間の高さ方向全域にわたる壁内断熱材を交換していた従来の構成と比べ、壁内断熱材を無駄なく使用することができる。
【0009】
ここで、隔て部材は、上下に隣り合う2つの壁内断熱材の間に沿って長尺状に形成されていることが望ましい。そうすれば、上下に隣り合う断熱材同士の接触をより確実に防止する効果が期待できる。また、隔て部材を、さらに壁内断熱材の厚み方向全域に設けるようにすれば、上下に隣り合う壁内断熱材同士の接触をより一層確実に防止できる。
【0010】
第2の発明の建物の壁断熱構造は、第1の発明において、前記壁内空間において前記2つの壁面材のうちいずれかには、前記複数の壁内断熱材を囲んで設けられる縦桟及び横桟を有してなる下地フレームが固定されており、前記下地フレームは、上下に隣り合う各壁内断熱材の間に設けられ隣り合う縦桟同士を連結する連結材を有し、その連結材により前記隔て部材が構成されていることを特徴とする。
【0011】
一般に、壁内断熱材は壁面材の裏面に固定された下地フレームにより囲まれて設置される。そこで、本発明では、この下地フレームに隣り合う縦桟同士を連結する連結材を設け、この連結材により隔て部材を構成している。この場合、連結材により下地フレームの剛性を高めつつ第1の発明の効果を得ることができる。
【0012】
第3の発明の建物の壁断熱構造は、第1又は第2の発明において、水検知部と該水検知部に接続される線状部とを有する水検知装置を用い、前記水検知部を先端として前記水検知装置が前記壁内空間に挿入されて当該壁内空間の浸水状況が検出される建物の壁断熱構造であり、前記壁内空間には、上下方向に延びかつ上下に配置された複数の壁内断熱材を跨いだ状態で、前記水検知装置を挿入させるための被挿入部が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記のように壁内空間において複数の壁内断熱材が上下分割されて配置されている場合、壁内空間における浸水状況を把握できれば、浸水した壁内断熱材がどれであるか、新規の壁内断熱材をどれだけ用意すればいいか等の判断が可能となる。その点、本発明では、壁内空間に水検知装置を挿入するための被挿入部を設け、この被挿入部に水検知装置を挿入することで当該水検知装置により壁内空間の浸水状況を検出できるようにしている。この場合、壁内空間から壁内断熱材を取り外すことなく壁内断熱材の浸水状況を確認できるため都合がよい。また、水検知装置を被挿入部に挿入することで水検知装置を壁内断熱材に接触させることなく壁内空間に挿入できるため、壁内断熱材を傷付けることなく浸水状況を確認できるという利点もある。
【0014】
第4の発明の建物の壁断熱構造は、第3の発明において、前記壁内断熱材は、前記壁内空間において前記2つの壁面材のうち少なくともいずれかの壁面材の裏面に接触して設けられており、前記壁面材における前記壁内断熱材との接触面には、前記被挿入部としての溝部が形成されており、前記溝部が形成された壁面材又は当該壁面材の上方もしくは下方には、前記溝部への前記水検知装置の挿入口となる開口部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
ところで、壁内空間において壁内断熱材が壁内空間の厚み方向全域に配設される等して壁内断熱材が壁面材の裏面に接触して設けられる場合がある。そこで本発明では、この点に鑑みて、壁面材における壁内断熱材との接触面に水検知装置を挿入するための溝部を形成している。これにより、壁内断熱材が壁内空間において壁面材の裏面に接触していても、水検知装置を壁面材の溝部に沿って挿入することにより壁内空間の浸水状況を確認できる。また、溝部を有する壁面材又はその上方又は下方に設けられた開口部を通じて水検知装置を溝部に挿入できるため、壁面材を取り外すことなく壁内空間の浸水状況を確認できる。よって、以上より、壁面材の裏面に壁内断熱材が接触している場合でも壁内空間の浸水状況を好適に確認することができる。
【0016】
第5の発明の建物の壁断熱構造は、第4の発明において、前記溝部が形成された壁面材は内壁材であり、前記開口部は、前記内壁材とその上方にある天井面材との間又は前記内壁材とその下方にある床面材との間に形成されており、前記内壁材の上端部又は下端部に前記開口部を覆った状態で設けられ、少なくとも一部が移動可能とされた見切り材を備え、前記見切り材の移動可能な部分を移動させることにより前記開口部が開放されることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、内壁材と天井面材又は床面材との間に水検知装置の挿入口となる開口部を設け、その開口部を見切り材により覆う構成としているため、内壁材周辺の外観を損うことなく第4の発明の効果を得ることができる。また、見切り材の少なくとも一部を移動させることにより開口部が開放されるため、壁内空間の浸水状況を確認するにあたって都合がよい。
【0018】
なお、見切り材としては、例えば廻り縁や巾木等が挙げられる。
【0019】
第6の発明の建物の壁断熱構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記2つの壁面材のうち少なくともいずれかは、その一部又は全部が回動可能とされており、その回動可能な部分が前記壁内空間の外側に回動されることにより、前記壁内空間の内外を連通しかつ前記壁内断熱材を挿通可能な開口領域が形成されることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、壁面材の回動部分が例えば壁内空間の外側に回動されることにより壁内空間に設けられた壁内断熱材が露出するため、壁面材を取り外すことなく壁内断熱材を交換できる。そのため、壁内断熱材の交換作業をより一層容易とすることができる。
【0021】
第7の発明の建物の壁断熱構造は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記2つの壁面材のうち少なくとも一方は、屋内面を形成する内壁仕上げ材の下地となる内壁下地面材であり、前記内壁下地面材には取付部が固定されている一方、前記内壁仕上げ材には前記取付部に着脱自在に取り付けられる被取付部が固定されており、前記取付部に前記被取付部が取り付けられることにより前記内壁下地面材に対し前記内壁仕上げ材が取り付けられることを特徴とする。
【0022】
一般に内壁仕上げ材は内壁下地面材に対し接着剤等で取り付けられるため、壁内断熱材の交換に際し内壁仕上げ材を取り外す場合には内壁仕上げ材を破る等して取り外す必要がある。そのため、壁内断熱材の交換後に内壁仕上げ材を再度利用することが困難であった。その点本発明では、内壁仕上げ材を内壁下地面材に対して着脱自在に取り付けられるため、内壁仕上げ材を破る等することなく取り外すことができる。これにより、壁内断熱材の交換後も内壁仕上げ材を再利用することができる。
【0023】
第8の発明の建物の壁断熱構造は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記2つの壁面材のうち少なくとも一方は、屋内面を形成する内壁仕上げ材の下地となる内壁下地面材であり、前記内壁仕上げ材に対して上下方向への引っ張り及びその引っ張りの解除を選択的に行う引張手段を備え、前記内壁仕上げ材は、前記引張手段により上下に引っ張られた状態で前記内壁下地面材の壁面に密着させて取り付けられ、前記引張手段による引っ張りが解除された状態で前記内壁下地面材の壁面に沿って水平方向に移動可能とされることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、内壁仕上げ材を上下方向に引っ張った状態で内壁下地面材の壁面に密着して取り付けることができる。そして、引っ張りが解除された状態で、内壁仕上げ材を内壁下地面材の壁面に沿って水平移動させることができる。これにより、壁内断熱材の交換に際し内壁下地面材を取り外す場合には、まず内壁仕上げ材を水平移動させることで内壁下地面材を露出させ、その後露出した内壁下地面材を取り外せばよい。この場合、内壁下地面材を取り外すにあたって内壁仕上げ材を破る等する必要がないため、壁内断熱材の交換後も内壁仕上げ材を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】建物の外周部の構成を示す縦断面図。
【図2】内壁パネルの構成を示す分解斜視図。
【図3】内壁パネルの一部を示す横断面図。
【図4】壁内空間における浸水状況を確認する様子を示す縦断面図。
【図5】別例における内壁仕上げ材の取付構成を示す横断面図。
【図6】別例における内壁仕上げ材の設置構成を示す縦断面図。
【図7】巾木及び廻り縁周辺の構成を示す縦断面図。
【図8】内壁仕上げ材を移動させる様子を示す斜視図。
【図9】内壁下地材を回動可能とした構成を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は建物の外周部の構成を示す縦断面図である。
【0027】
図1に示すように、建物10の外周部において、屋外側には外壁パネル11が設けられており、その屋内側には内壁パネル12が設けられている。外壁パネル11は、屋外面を形成する外壁材14と、外壁材14の裏面側(屋内面側)に固定された外壁フレーム15とを備えている。外壁材14は、例えば窯業系サイディング等の外装材により形成されている。
【0028】
外壁フレーム15は、断面コ字状の軽量鉄骨材からなる縦フレーム材15a及び横フレーム材15bが矩形枠状に連結されることにより構成されている。外壁フレーム15の各横フレーム材15bのうち上下の横フレーム材15bは、それぞれ床梁17及び天井梁18に対しボルト等により固定されている。これにより、外壁パネル11が建物10に対して固定されている。
【0029】
次に、内壁パネル12の構成について図2及び図3に基づいて説明する。なお、図2は内壁パネル12の構成を示す分解斜視図であり、図3は内壁パネル12の一部を示す横断面図である。
【0030】
図2に示すように、内壁パネル12は、内壁仕上げ材28(図1参照)の下地となる内壁下地材21と、内壁下地材21の裏面側(屋外面側)に固定された内壁フレーム22と、内壁フレーム22の枠内部に組み込まれた複数の断熱材23とを備える。内壁下地材21は、例えば石膏ボードにより形成されている。内壁下地材21の裏面には、図3に示すように、上下方向に延びる溝部25が内壁下地材21の幅方向に所定間隔で複数形成されている。具体的には、各溝部25は内壁下地材21の上下方向全域にわたって形成されている。
【0031】
内壁フレーム22は、木製の角材からなる複数のフレーム材が連結されることにより構成されている。内壁フレーム22は、全体として内壁下地材21と略同じ大きさ(縦横寸法)を有して形成されており、内壁下地材21の幅方向両端部及び中間部において上下方向(高さ方向)に延びる縦フレーム材22aと、内壁下地材21の下端部において水平方向(内壁下地材21の幅方向)に延びる横フレーム材22bとを有している。なお、本内壁フレーム22は、内壁下地材21の上端部に横フレーム材が設けられておらず、各フレーム材22a,22bにより囲まれた枠内領域がパネル上端部において上方に開放されている。
【0032】
内壁フレーム22は、さらに上記枠内領域を上下に仕切る仕切フレーム材22cを有している。仕切フレーム材22cは、隣り合う各縦フレーム材22aの間に上下方向に所定間隔をおいて複数掛け渡されており、その両端部において各縦フレーム材22aにビス等により固定されている。これにより、内壁フレーム22の枠内領域は仕切フレーム材22cにより上下方向に複数に分割されており、これら各分割領域31がそれぞれ断熱材23の設置される設置スペースとなっている。また、本実施形態では、これら各分割領域31がほぼ同じ大きさ(縦横寸法)で形成されている。
【0033】
なお、内壁フレーム22の各フレーム材22a〜22cは、略同一の厚み寸法(内壁パネル12の厚み方向の長さ)を有して形成されている。
【0034】
断熱材23は、防湿性を有するポリエチレンフィルム等からなる袋体の中にグラスウールを充填することにより構成されている。断熱材23は、全体として略直方体状に形成されており、具体的には内壁フレーム22に形成された分割領域31と略同じ大きさ(縦横寸法)を有し、かつ、仕切フレーム材22cの厚み寸法(屋内外方向の長さ)と略同じ厚みを有して形成されている。
【0035】
断熱材23は、内壁フレーム22の各分割領域31にそれぞれ配設され、内壁フレーム22に対してタッカー等により固定されている。この場合、上下方向に隣り合う断熱材23同士は仕切フレーム材22cにより隔てられ、左右方向に隣り合う断熱材23同士は縦フレーム材22aにより隔てられている。これにより、上下方向に隣り合う断熱材23同士及び左右方向に隣り合う断熱材23同士は非接触の状態とされている。また、各断熱材23はそれぞれ分割領域31において各フレーム材22a〜22cの内側面との隙間がなく、かつ内壁下地材21の裏面に当接された状態で設けられている。そのため、この設置状態において、断熱材23の屋外側面と内壁フレーム22(フレーム材22a,22c)の屋外側面とは略面一となっている。これにより、上下方向に隣り合う断熱材23同士はその厚み方向全域において仕切フレーム材22cにより隔てられ、左右方向に隣り合う断熱材23同士はその厚み方向全域において縦フレーム材22aにより隔てられている。
【0036】
図1の説明に戻り、内壁パネル12は、内壁フレーム22が外壁パネル11の外壁フレーム15の屋内側面にタッピングネジ等により取り付けられることで固定されている。かかる内壁パネル12の設置状態において、外壁材14と内壁下地材21との間には壁内空間29が形成されており、その壁内空間29に上記複数の断熱材23が上下方向に並べられかつ上下に隣り合う断熱材23同士が仕切フレーム材22cにより隔てられている。なお、断熱材23は、壁内空間29において構造部材である外壁フレーム15の屋内側に設置されており、それ故本実施形態の建物10では外壁部にいわゆる充填断熱工法が採用されている。
【0037】
内壁パネル12の内壁下地材21の屋内側面には、屋内面を形成する内壁仕上げ材28が接着等により取り付けられている。内壁仕上げ材28は、例えばクロス(壁紙)により形成されている。
【0038】
内壁パネル12の下方には、床面を形成する床面材35が設けられている。床面材35は、パーティクルボード等により構成されており、床梁17の上面に設置された床根太34により下方から支持されている。
【0039】
内壁パネル12の下端部と床面材35との境界部には、同境界部を覆うための巾木41が設けられている。巾木41は、内壁下地材21の屋内側面に接着剤等により固定されている。詳細には、巾木41の設置部位では内壁仕上げ材28が除去されて内壁下地材21が露出しており、その露出した部分に巾木41が固定されている。
【0040】
内壁パネル12の上方には、天井面を形成する天井面材37が設けられている。天井面材37は、例えば2枚重ねの石膏ボードにより構成され、天井梁18の下面に取り付けられた野縁36により支持されている。
【0041】
内壁パネル12の上端部と天井面材37との境界部には、同境界部を覆うための廻り縁42が設けられている。ここで、この廻り縁42及びその周辺の構成について詳しく説明する。内壁パネル12(詳細には最上段に設置された断熱材23)の上方における天井面材37の下面側には、木製の角材からなる下地部材39が設けられている。下地部材39は、天井面材37を介して野縁36にビス等で固定されている。
【0042】
下地部材39の屋内側には、廻り縁42が取り付けられる取付部材43が固定されている。取付部材43は、内壁パネル12の内壁下地材21の上端部と天井面材38との間に設けられており、この設置状態において取付部材43と内壁下地材21の上端部との間には所定の隙間(以下、開口部45という)が設けられている。この開口部45は、内壁下地材21の溝部25に通じており、後述する水検知装置46を溝部25に挿入するための挿入口となっている。
【0043】
取付部材43の屋内側には、廻り縁42が取り付けられている。廻り縁42は、内壁パネル12の上端部に沿って長尺状に形成されており、例えば硬質系樹脂からなる。廻り縁42は、取付部材43の屋内側面と内壁仕上げ材28の屋内面とに跨って設けられており、これにより開口部45が廻り縁42により覆われている。また、廻り縁42は、取付部材43に対して回動可能とされており、例えば取付部材43に対しヒンジ等を介して取り付けられている。かかる構成において、図1で二点鎖線で示すように、廻り縁42が屋内側に回動されると開口部45が開放される。つまり、本実施形態では、廻り縁42の回動によって開口部45が開閉されるようになっている。
【0044】
なお、開口部45を開閉するための構成として、廻り縁42を回動可能にする以外に、廻り縁42を取付部材43に対してスライド可能にする等その他の構成(動作機構)を用いてもよい。例えば廻り縁42をスライドさせることで開口部45を開閉する構成としては、廻り縁42を上下に案内する案内レールを取付部材43に設置し、その案内レールに沿って廻り縁42を上下移動させることで開口部45を開閉する構成が考えられる。また、廻り縁42の全部を回動可能にすることに代えて、廻り縁42の一部のみを、例えば廻り縁42の長手方向中央部のみを回動可能としてもよい。
【0045】
次に、建物10が床上浸水した場合に断熱材23を交換する際の作業手順について図4を参照しつつ説明する。なお、図4は、壁内空間29における浸水状況を確認する様子を示す縦断面図である。
【0046】
まず、壁内空間29における浸水状況を確認する作業を行う。この作業は、図4に示すように、廻り縁42を屋内側に回動させて開口部45を開放し、その開放された開口部45を通じて水検知装置46を内壁下地材21の溝部25に挿入することにより行う。水検知装置46は、水分検知器47と、その水分検知器47に一端が接続されたハーネス48と、ハーネス48の他端側に接続され水分検知器47の検知結果を表示する装置本体49とを有してなる。水分検知器47は、壁内空間29における水分量を検知するものである。本実施形態では、水分検知器47として、壁内空間29の湿度を上記水分量として検知する電子式湿度計を用いている。ハーネス48は、少なくとも溝部25の上下長さを有するものであり、浸水確認に際し、水検知装置46は、水分検知器47とハーネス48の少なくとも一部とが溝部25に挿入される。
【0047】
水検知装置46を溝部25に挿入する作業は、ハーネス48の下端部に水分検知器47がぶら下げられた状態で水検知装置46を内壁下地材21の溝部25に沿って下方に挿入することにより行う。そして、水分検知器47により検知された壁内空間29の湿度を装置本体49により確認することで、壁内空間29(ひいては断熱材23)の浸水状況を確認する。ここで、壁内空間29の浸水により上下分割された複数の断熱材23のうち下側の断熱材23が浸水した場合には、壁内空間29において、浸水した下側の断熱材23周りの湿度と、浸水していない上側の断熱材23周りの湿度とには相違が生じることが考えられる。そのため、かかる湿度の検知によって断熱材23の浸水確認が可能となる。
【0048】
なお、壁内空間29の浸水状況の確認のために水検知装置46(水分検知器47)として必ずしも湿度センサを用いる必要はなく、その他の水分検知器47を用いてもよい。例えば、水分検知器47として、壁内空間29における水の有無を検知する水検知センサを用いてもよい。この場合、壁内空間29が浸水している状況下で溝部25に水検知装置46を挿入し、壁内空間29における水の有無を確認することとなる。なお、水検知センサとしては、例えば一対の電極を備え、各電極間の抵抗値に基づいて水の有無を検知する構成のものが考えられる。
【0049】
また、水検知装置46のハーネス48には、長手方向に沿って複数の目印(例えば目盛)が付けられており、水検知装置46を溝部25に挿入した際に、この目印により水分検知器47の上下位置を確認できるようになっている。そして、本作業では、壁内空間29における浸水の有無を確認するとともに、浸水が確認された場合には壁内空間29においていずれの高さまで浸水したのかを上記の目印を用いて併せて確認する。浸水高さを確認することで壁内空間29に上下分割して設置された複数の断熱材23のうちいずれの断熱材23が水に浸かったのかを把握できるため、新品の断熱材23を用意するにあたり都合がよい。
【0050】
上記の作業により壁内空間29に浸水が確認された場合には、断熱材23の交換作業を行う。この作業では、まず内壁仕上げ材28及び内壁下地材21を建物10から取り外し、水に浸かって濡れた断熱材23を内壁フレーム22の分割領域31から取り外す。そして、新品の断熱材23をその分割領域31に設置する。その後、内壁下地材21及び内壁仕上げ材28を建物10に取り付け、一連の交換作業が終了する。
【0051】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0052】
対向する外壁材14と内壁下地材21との間の壁内空間29に断熱材23を上下方向に複数に分割して設け、上下に隣り合う各断熱材23の間にそれら断熱材23同士を非接触の状態で隔てる仕切フレーム材22cを設けた。この場合、床上浸水等により壁内空間29に水が入り込み一部の断熱材23が水に浸かった場合でも、その上方の断熱材23に水が吸い上げられる等して断熱材23の濡れの被害が上側に拡がるのを抑制できる。そして、断熱材23の交換作業は複数の断熱材23のうち水に浸かった一部の断熱材23についてのみ行えば済むため、断熱材23を交換する際の作業負荷を軽減させることができる。
【0053】
また、浸水によって濡れた断熱材23だけを交換すればよいため、濡れていない断熱材23についてはそのまま継続して使用することができる。そのため、壁内空間29の高さ方向全域にわたる断熱材23を交換していた従来の構成と比べ、断熱材23を無駄なく使用することができる。
【0054】
仕切フレーム材22cは上下に隣り合う断熱材23の間に沿って長尺状に形成されているため、上下に隣り合う断熱材23同士の接触をより確実に防止する効果が期待できる。さらに、仕切フレーム材22cは断熱材23の厚み方向全域において設けられているため、上下に隣り合う断熱材23同士の接触をより一層確実に防止することができる。
【0055】
内壁下地材21の裏面に固定された内壁フレーム22に隣り合う縦フレーム材22a同士を連結する仕切フレーム材22cを設け、その仕切フレーム材22cにより隔て部材を構成した。この場合、仕切フレーム材22cにより内壁フレーム22の剛性を高めつつ上記の効果を得ることができる。
【0056】
壁内空間29に、上下方向に延びかつ上下に配置された複数の断熱材23を跨いだ状態で、水検知装置46を挿入するための被挿入部(詳しくは溝部25)を設けた。この場合、被挿入部に水検知装置46を挿入することにより当該水検知装置46により壁内空間29の浸水状況を検出できるため、壁内空間29から断熱材23を取り外すことなく断熱材23の浸水状況を確認できる。また、水検知装置46を被挿入部に挿入することで水検知装置46を断熱材23に接触させることなく壁内空間29に挿入できるため、断熱材23を傷付けることなく浸水状況を確認できるという利点もある。
【0057】
壁内空間29において断熱材23を内壁下地材21の裏面に接触させて設けた。そして、内壁下地材21における断熱材23との接触面に上下に延びる溝部25を形成し、内壁下地材21の上方に溝部25への水検知装置46の挿入口となる開口部45を設けた。これにより、断熱材23が壁内空間29において内壁下地材21の裏面に接触していても、水検知装置46を内壁下地材21の溝部25に沿って挿入することにより壁内空間29の浸水状況を確認できる。また、開口部45を通じて水検知装置46を溝部25に挿入できるため、内壁下地材21を取り外すことなく壁内空間29の浸水状況を確認できる。よって、以上より、内壁下地材21の裏面に断熱材23が接触している場合でも壁内空間29の浸水状況を好適に確認することができる。
【0058】
具体的には、内壁下地材21とその上方にある天井面材37との間に開口部45を形成するとともに、同下地材21の上端部に開口部45を覆った状態で設けられ回動可能な廻り縁42を備えた。そして、その廻り縁42を回動させることにより開口部45が開放されるようにした。これにより、内壁周辺の外観を損なうことなく上記の効果を得ることができる。また、廻り縁42を回動させることにより開口部45が開放されるため、壁内空間29の浸水状況を確認するにあたって都合がよい。
【0059】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0060】
(1)上記実施形態では、内壁仕上げ材28を内壁下地材21に接着剤により取り付けたが、内壁仕上げ材を内壁下地材に対して着脱可能に取り付けてもよい。具体的には、内壁下地材に取付部を固定するとともに内壁仕上げ材にはその取付部に着脱自在に取り付けられる被取付部を固定し、取付部に被取付部が取り付けられることにより内壁下地材に対して内壁仕上げ材が取り付けられるようにすることが考えられる。以下、その具体例を図5に基づいて説明する。なお、図5は内壁仕上げ材の取付構成を示す横断面図であり、(a)が内壁仕上げ材を内壁下地材に取り付けた状態を示し、(b)が内壁仕上げ材を内壁下地材から取り外した状態を示している。
【0061】
図5(a)に示すように、本例の内壁下地材51には、その屋内側面に上下方向に延びる取付部としての複数の嵌合溝53が形成されている。これら各嵌合溝53は、内壁下地材51の幅方向(左右方向)に所定の間隔(詳細には等間隔)で配置されている。一方、内壁仕上げ材52の裏面には、内壁下地材21の嵌合溝53に嵌合される被取付部としての嵌合部材54が取り付けられている。嵌合部材54は、上下方向に沿って長尺状に形成されており、例えば定形シーリング等のゴム材からなる。嵌合部材54は、内壁下地材51の各嵌合溝53に対応して複数設けられており、具体的にはこれら各嵌合部材54は嵌合溝53の配置間隔(ピッチ)と同じ間隔で設けられている。各嵌合部材54はそれぞれ嵌合溝53に嵌合された状態で取り付けられており、これにより内壁仕上げ材52が内壁下地材51に取り付けられている。また、図5(b)に示すように、各嵌合部材54が嵌合溝53から取り外されることにより内壁仕上げ材52が内壁下地材51から取り外される。つまり、内壁仕上げ材52は内壁下地材51に対して着脱自在とされている。かかる構成によれば、断熱材23の交換に際し内壁仕上げ材52を取り外す場合に内壁仕上げ材52を破る等することなく取り外すことができるため、断熱材23を交換した後も内壁仕上げ材52を再利用することができる。
【0062】
なお、取付部及び被取付部の構成は必ずしも上記の構成に限定されることなく、面ファスナー等その他の部材を用いて構成してもよい。例えば面ファスナーを用いる場合には、フック状に起毛された部分を有するフック部(取付部)を内壁下地材51に固定するとともに、ループ状に起毛された部分を有するループ部(被取付部)を内壁仕上げ材52に固定することが考えられる。
【0063】
(2)内壁仕上げ材に対して上下方向への引っ張り及びその引っ張りの解除を選択的に行う引張手段を備え、内壁仕上げ材を引張手段により上下に引っ張った状態で内壁下地材の壁面に密着させて取り付け、また引っ張りを解除することで内壁仕上げ材を内壁下地材の壁面に沿って水平移動可能としてもよい。以下、その具体例について図6乃至図8に基づいて説明する。なお、図6は内壁仕上げ材の設置構成を示す縦断面図、図7は巾木及び廻り縁周辺の構成を示す縦断面図、図8は内壁仕上げ材を移動させる様子を示す斜視図である。
【0064】
図6に示すように、内壁下地材21の屋内側面において巾木64と廻り縁65との間には内壁仕上げ材61が設けられている。巾木64は、内壁下地材21の下端部に沿って長尺状に形成され、廻り縁65は、内壁下地材21の上端部に沿って長尺状に形成されている。
【0065】
図7に示すように、巾木64において、内壁下地材21側には上側に開放された凹み部分が長手方向に沿って延びるように形成されており、その凹み部分は内壁下地材21に対する巾木64の取付状態においては内壁下地材21及び巾木64により構成される下部収容溝78となる。この下部収容溝78には、内壁仕上げ材61の下端部が収容されているとともに、同下端部を支持するための支持機構が設けられている。
【0066】
下部収容溝78には、同収容溝78の長手方向に沿って延びる下側案内棒66が設けられている。下側案内棒66は、その両端部が巾木64の長手方向両端部に設けられた一対の受け部64aにより支持されている。
【0067】
廻り縁65において、内壁下地材21側には下側に開放された凹み部分が長手方向に沿って延びるように形成されており、その凹み部分は内壁下地材21に対する廻り縁65の取付状態においては内壁下地材21及び廻り縁65により構成される上部収容溝79となる。この上部収容溝79には、内壁仕上げ材61の上端部が収容されているとともに、同上端部を支持するための支持機構が設けられている。
【0068】
上部収容溝79には、同収容溝79の長手方向に沿って延びる上側案内棒67が設けられている。上側案内棒67は、その両端部が廻り縁65の長手方向両端部に設けられた一対の受け部65aにより支持されている。
【0069】
内壁仕上げ材61の上端部及び下端部には、上記案内棒66,67が挿通される孔部を有するリング部材58が所定間隔で複数取り付けられている。内壁仕上げ材61は、これら各リング部材58の孔部に案内棒66,67が挿通されることで内壁下地材21の屋内側に支持されている。内壁仕上げ材61の上端側及び下端側には、その屋内側面に平板状でかつ長尺状の引張プレート68,69が内壁仕上げ材61の幅方向(水平方向)に延びる向きで取り付けられている。詳細には、引張プレート68,69は、内壁仕上げ材61の幅寸法よりも若干長く形成されており、その両端部が内壁仕上げ材61から側方にはみ出している。引張プレート68,69のはみ出し部分には、その両面に図示しないラチェット歯が形成されている。
【0070】
巾木64には、引張プレート68が下部収容溝78に入った状態で同引張プレート68の両端部を支持する下側溝部62が設けられている。具体的には、巾木64の両端部に設けられた各受け部64aは互いに対向する対向面を有しており、下側溝部62はそれら各受け部64aの対向面にそれぞれ対向して設けられている。下側溝部62は、上下方向に延びるように形成されており、その上端部において上方に開口されている。また、下側溝部62の側面には、引張プレート68のラチェット歯と係止可能なラチェット溝(図示略)が形成されている。
【0071】
一方、廻り縁65には、引張プレート69が上部収容溝79に入った状態で引張プレート69の両端部を支持する上側溝部63が設けられている。具体的には、廻り縁65の両端部に設けられた各受け部65aは互いに対向する対向面を有しており、上側溝部63はそれら各受け部65aの対向面にそれぞれ対向して設けられている。上側溝部63は、上下方向に延びるように形成されており、その下端部において下方に開口されている。また、上側溝部63の側面には、引張プレート69のラチェット歯と係止可能なラチェット溝(図示略)が形成されている。
【0072】
上記構成において、図7(a)に示すように、各引張プレート68,69がそれぞれ巾木64の下側溝部62及び廻り縁65の上側溝部63に挿入されると、引張プレート68,69のラチェット歯が溝部62,63のラチェット溝に係止され、これにより引張プレート68,69が巾木64及び廻り縁65に固定される。このとき、各引張プレート68,69により内壁仕上げ材61が上下に引っ張られ、その引っ張られた状態で内壁仕上げ材61は内壁下地材21の屋内側面に密着される。
【0073】
一方、図7(b)に示すように、溝部62,63のラチェット溝に対する引張プレート68,69のラチェット歯の係止が解除され引張プレート68,69が溝部62,63から取り外されると、内壁仕上げ材61の上下方向への引っ張りが解除され、内壁仕上げ材61が弛緩する。これにより、内壁仕上げ材61は内壁下地材21の屋内側面に対する密着から解放される。なお、ラチェット溝に対するラチェット歯の係止の解除は、図示しない解除機構を用いて行われる。そして、この引っ張り解除状態では、図8に示すように、内壁仕上げ材61を内壁下地材21の屋内側面に沿って水平移動させることができる。具体的には、内壁仕上げ材61の上下の端部に取り付けられたリング部材58を案内棒66,67に沿って移動させることで内壁仕上げ材61が水平移動される。
【0074】
上記の構成によれば、断熱材23の交換に際し内壁下地材21を取り外す場合には、まず内壁仕上げ材61を水平移動させることで内壁下地材21を露出させ、その後露出した内壁下地材21を取り外せばよい。この場合、内壁下地材21を取り外すにあたって内壁仕上げ材61を破る等する必要がないため、断熱材23の交換後も内壁仕上げ材61を再利用することができる。
【0075】
なお、内壁仕上げ材61に対して上下方向への引張及びその引張を解除を行うための構成は必ずしも上記の構成に限定されない。例えば各案内棒66,67を上下移動させる機構を巾木64及び廻り縁65に設ける構成とすることが考えられる。この場合、下側案内棒66を下方に移動させかつ上側案内棒67を上方に移動させることで内壁仕上げ材61を上下に引っ張るとともに、下側案内棒66を上方に移動させかつ上側案内棒67を下方に移動させることで内壁仕上げ材61の引張を解除することができる。
【0076】
(3)内壁下地材21の一部又は全部を回動可能とし、その回動可能な部分を回動させることで壁内空間29に設けられた断熱材23を屋内側に露出させるようにしてもよい。具体的には、内壁下地材21を内壁フレーム22に対して回動可動とする回動部材を設けることが考えられる。例えば図9(a)に示すように、内壁下地材21を内壁フレーム22の下端部(詳細には横フレーム材22b)にヒンジ部材71を介して連結する。この場合、内壁下地材21を屋内側に回動させることにより、内壁下地材21が設置されていた部位には床から天井までにわたり壁内空間29と屋内空間とを連通する開口領域73が形成され、壁内空間29の各断熱材23が露出する。そのため、この開口領域73を通じて各断熱材23を交換することができる。これにより、内壁下地材21を取り外すことなく断熱材23を交換できるため、断熱材23の交換作業をより一層容易とすることができる。
【0077】
また、内壁下地材21を上下に分割しそれら分割した各部分を回動可能としてもよい。図9(b)では、内壁下地材21を内壁フレーム22の仕切フレーム材22cのうち上側の仕切フレーム材22c(以下、略して上側仕切フレーム材22cという)の設置高さにおいて上下に分割し、それら上下に分割した上側下地材75と下側下地材76とをそれぞれヒンジ部材71を介して内壁フレーム22に連結している。この場合、上側下地材75を屋内側に回動させることにより上側仕切フレーム材22cよりも上方にある断熱材23が露出するため、その露出した断熱材23を交換することができる。そして、下側下地材76を屋内側に回動させることにより上側仕切フレーム材22cよりも下方にある断熱材23が露出するため、その露出した断熱材23を交換することができる。
【0078】
なお、図9(c)に示すように、内壁下地材21を下側の仕切フレーム材22cの設置高さにおいて上下に分割することで、上側下地材81と下側下地材82とを構成してもよい。
【0079】
(4)上記実施形態では、内壁フレーム22の仕切フレーム材22cを用いて隔て部材を構成したが、隔て部材をその他の部材により構成してもよい。例えば、樹脂等からなる長尺材を別途内壁下地材21の裏面に貼り付け、その長尺材により隔て部材を構成してもよい。また、隔て部材は必ずしも長尺状である必要はない。例えば、隔て部材を直方体状のブロックにより構成し、そのブロックを上下に隣り合う断熱材23の間に沿って所定間隔で複数設置してもよい。要は、隔て部材は上下に隣り合う断熱材23同士を非接触状態で隔てるものであればその構成を問わない。
【0080】
(5)上記実施形態では、内壁下地材21の溝部25を水検知装置46を挿入するための被挿入部としたが、壁内空間29における断熱材23と外壁材14との間の空間等その他の部分を被挿入部としてもよい。
【0081】
(6)上記実施形態では、内壁下地材21の上端部と天井面材37との間に溝部25に通じる開口部45を設けたが、これを変更し、内壁下地材21を床面材35から上方に離間させて設置し内壁下地材21の下端部と床面材35との間に開口部を設けてもよい。建物10への浸水は下側から上側に向けて起こるものであるため、この場合壁内空間29における浸水の有無をいち早く確認できる。なお、かかる場合、水分検知器47を伸縮可能な棒材の一端に取り付け、その棒材を伸張させることで水分検知器47を溝部25に沿って上方に導くとよい。また、この場合、廻り縁42を回動可能にすることに代えて巾木41を回動可能とすればよい。
【0082】
(7)上記実施形態の建物10では、充填断熱工法を採用したため壁内空間29において断熱材23が内壁下地材21の裏面に接触して設けられていたが、例えば外張断熱工法を用いた建物では、壁内空間29において断熱材23が外壁材14の裏面に接触して設けられることがある。この場合、断熱材23が外壁フレーム15の内側領域に設置されることがある。そこで、かかる場合に、外壁フレーム15に対して内側領域を上下に仕切る仕切フレーム材を設け、その上下に仕切られた各領域に断熱材23を配設してもよい。この場合においても複数の断熱材23が壁内空間29において上下に並設され、上下に隣接する断熱材23同士が仕切フレーム材により隔てられる。
【0083】
また、かかる構成の場合、外壁材14に壁内空間29と屋外とを連通する開口部を設け、その開口部を通じて壁内空間29の浸水状況を確認するようにしてもよい。なお、開口部には、防水機能を有するカバーを取り付けておくのが好ましい。
【0084】
(8)上記実施形態では、断熱材23を上下方向に複数分割して設けたが、さらに断熱材23を内壁パネル12の厚み方向(屋内外方向)に複数分割してもよい。例えば、内壁フレーム22の各分割領域31に断熱材23を2枚重ねして配設し、これら各断熱材23の間に防水シートを介在させることが考えられる。この場合、建物10への浸水時に断熱材23の屋外側の部分だけが濡れた場合には、屋外側の断熱材23だけを交換すればよいため断熱材23の無駄をより一層減らすことができる。
【0085】
(9)上記実施形態では、建物10の外周部に設けられ屋内外を仕切る外壁部に対し本発明の断熱構造を適用したが、建物10の屋内側に設けられ屋内空間を複数に仕切る間仕切壁部に対して本発明を適用してもよい。この場合、対向する内壁材同士の間の壁内空間に複数の断熱材を上下に並設し、かつ上下に隣り合う断熱材同士を隔て部材により隔てればよい。
【0086】
(10)上記実施形態では、壁内断熱材としてグラスウールからなる断熱材23を用いたが、発泡系樹脂からなる断熱材等その他の壁内断熱材に対して本発明を適用してもよい。
【0087】
(11)上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、鉄骨軸組工法により構築される建物や、在来木造工法により構築される建物等、他の構造の建物にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
10…建物、12…内壁パネル、14…壁面材としての外壁材、21…壁面材及び内壁下地面材としての内壁下地材、22…下地フレームとしての内壁フレーム、22a…縦桟としての縦フレーム材、22b…横桟としての横フレーム材、22c…隔て部材及び連結材としての仕切フレーム材、23…壁内断熱材としての断熱材、25…被挿入部としての溝部、29…壁内空間、43…見切り材としての廻り縁、45…開口部、46…水検知装置、47…水検知部としての水分検知器、48…線状部としてのハーネス、51…内壁下地材、52…内壁仕上げ材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの壁面材の間の壁内空間に壁内断熱材が配設される建物の壁断熱構造であって、
前記壁内断熱材は、前記壁内空間において上下方向に複数に分割して設けられており、
上下に隣り合う各壁内断熱材の間には、それら壁内断熱材同士を隔てる隔て部材が設けられていることを特徴とする建物の壁断熱構造。
【請求項2】
前記壁内空間において前記2つの壁面材のうちいずれかには、前記複数の壁内断熱材を囲んで設けられる縦桟及び横桟を有してなる下地フレームが固定されており、
前記下地フレームは、上下に隣り合う各壁内断熱材の間に設けられ隣り合う縦桟同士を連結する連結材を有し、その連結材により前記隔て部材が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建物の壁断熱構造。
【請求項3】
水検知部と該水検知部に接続される線状部とを有する水検知装置を用い、前記水検知部を先端として前記水検知装置が前記壁内空間に挿入されて当該壁内空間の浸水状況が検出される建物の壁断熱構造であり、
前記壁内空間には、上下方向に延びかつ上下に配置された複数の壁内断熱材を跨いだ状態で、前記水検知装置を挿入させるための被挿入部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の壁断熱構造。
【請求項4】
前記壁内断熱材は、前記壁内空間において前記2つの壁面材のうち少なくともいずれかの壁面材の裏面に接触して設けられており、
前記壁面材における前記壁内断熱材との接触面には、前記被挿入部としての溝部が形成されており、
前記溝部が形成された壁面材又は当該壁面材の上方もしくは下方には、前記溝部への前記水検知装置の挿入口となる開口部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建物の壁断熱構造。
【請求項5】
前記溝部が形成された壁面材は内壁材であり、
前記開口部は、前記内壁材とその上方にある天井面材との間又は前記内壁材とその下方にある床面材との間に形成されており、
前記内壁材の上端部又は下端部に前記開口部を覆った状態で設けられ、少なくとも一部が移動可能とされた見切り材を備え、
前記見切り材の移動可能な部分を移動させることにより前記開口部が開放されることを特徴とする請求項4に記載の建物の壁断熱構造。
【請求項6】
前記2つの壁面材のうち少なくともいずれかは、その一部又は全部が回動可能とされており、
その回動可能な部分が回動されることにより、前記壁内空間に設けられた前記壁内断熱材が露出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物の壁断熱構造。
【請求項7】
前記2つの壁面材のうち少なくとも一方は、屋内面を形成する内壁仕上げ材の下地となる内壁下地面材であり、
前記内壁下地面材には取付部が固定されている一方、前記内壁仕上げ材には前記取付部に着脱自在に取り付けられる被取付部が固定されており、
前記取付部に前記被取付部が取り付けられることにより前記内壁下地面材に対し前記内壁仕上げ材が取り付けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建物の壁断熱構造。
【請求項8】
前記2つの壁面材のうち少なくとも一方は、屋内面を形成する内壁仕上げ材の下地となる内壁下地面材であり、
前記内壁仕上げ材に対して上下方向への引っ張り及びその引っ張りの解除を選択的に行う引張手段を備え、
前記内壁仕上げ材は、前記引張手段により上下に引っ張られた状態で前記内壁下地面材の壁面に密着させて取り付けられ、前記引張手段による引っ張りが解除された状態で前記内壁下地面材の壁面に沿って水平方向に移動可能とされることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建物の壁断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−247036(P2011−247036A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123773(P2010−123773)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】