説明

建物の外壁流水システム

【課題】外壁面材の温度状況に応じて好適に水を外壁面材に沿って流すことができる建物の外壁流水システムを提供する。
【解決手段】建物10の一階部分11及び二階部分12にはそれぞれ外壁面材21が設けられ、外壁面材21には、複数の中空通路23及び目地通路29が設けられている。建物10には、屋根部15上の貯水槽31の水を外壁面材21の水通路23,29に供給する水供給系統30が設けられ、同系統30は、給水配管34や水吐出部40等を備える。貯水槽31の水が給水配管34を介して水吐出部40に供給されると、その水が水吐出部40より水通路23,29に供給される。水吐出部40は、外壁面材21の各水通路23,29のうち水を吐出する吐出先の水通路23,29を切り替える切替機構を備える。コントローラは、外壁温センサ51により検知された外壁面材21の温度に基づいて、いずれの水通路23,29に水を供給するのかを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁流水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外側から建物に散水したり建物の外周部に沿って水を流したりする等して建物を冷却する技術が知られている。例えば特許文献1には、屋根面に向けて水を放出する噴射ノズルを設けた構成が開示されている。これによれば、噴射ノズルから放出された水が屋根面を流れ落ちる間に屋根の熱により気化されるため、その気化熱により屋根の温度上昇を抑制することができ、ひいては建物内の温度上昇を抑制できる。
【0003】
また、屋外側に露出した外壁面材の上部(望ましくは上端部)に向け水を放出する噴射ノズルを設ける構成が考えられる。この場合、噴射ノズルから放出された水が外壁面材に沿って下方に流れ、その流れ落ちる間に気化される。これにより、その気化熱により外壁面材の温度上昇を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−77410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に外壁面材の温度は日射量や外気温等屋外の環境に依存して変動する。例えば、夏場等、外気温が高かったり日射量が多かったりする場合には、外壁面材の温度が著しく高くなる。ここで、上記の技術により外壁面材を冷却するにあたっては、例えば開閉弁の開閉により外壁面材に対して水が一様に放出されるが、外壁面材の温度によっては十分に冷却能力が得られないと考えられる。また、冷却効果を高めるべく水量を多めに設定しておくと水使用量が過多になると考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、外壁面材の温度状況に応じて好適に水を外壁面材に沿って流すことができる建物の外壁流水システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の外壁流水システムは、建物の外壁面材には上下方向に延びる水通路が複数の箇所に設けられ、これら複数の水通路に水を流すべく当該複数の水通路に水を供給する水供給手段を備える建物の外壁流水システムであって、前記外壁面材の温度を検知する外壁温検知手段と、前記外壁温検知手段により検知された前記外壁面材の温度に基づいて、前記水供給手段による前記複数の水通路への水の供給態様を制御する供給態様制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、外壁面材の温度に基づいて、外壁面材に設けられた複数の水通路への水の供給態様が制御される。したがって、例えば日射量が増大する等して外壁面材の温度が高くなった場合に、複数の水通路への水の供給量を増やしこれら水通路を流れる水の量を多くしたり、外壁面材の温度が特に高い部分に集中的に水を供給したりすることで、外壁面材の温度上昇を抑制する効果を高めることができる。この場合、外壁面材の温度状況に応じて好適に水を外壁面材に沿って流すことができる。
【0009】
第2の発明の建物の外壁流水システムは、第1の発明において、前記建物において前記外壁面材により屋外と仕切られた屋内空間の温度を検知する屋内温検知手段を備え、前記水供給手段は、前記複数の水通路に供給する水の量を調整する機能を有し、前記供給態様制御手段は、前記外壁温検知手段により検知された前記外壁面材の温度と前記屋内温検知手段により検知された前記屋内空間の温度とに基づいて、前記水供給手段による前記複数の水通路への水の供給量を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、外壁面材の温度に基づいて、複数の水通路への水の供給量が制御される。したがって、外壁面材の温度が高くなった場合には、複数の水通路への水の供給量を増やしこれらの水通路を流れる水の量を多くすることで外壁面材の温度上昇を抑制する効果を高める等、外壁面材の温度状況に応じて適切な量の水を外壁面材に沿って流すことが可能となる。
【0011】
また、外壁面材の温度に加え屋内空間の温度に基づいて、複数の水通路への水の供給量が制御されるため、屋内空間の温度が高い場合に複数の水通路に流す水の量を多くする等することができる。よって、屋内空間が暑くなっている場合に、外壁面材の温度上昇を抑制する効果を高めることができ、その結果屋内空間における冷房負荷の軽減を図ることができる。
【0012】
第3の発明の建物の外壁流水システムは、第1又は第2の発明において、前記供給態様制御手段は、前記外壁温検知手段により検知された前記外壁面材の温度に基づいて、前記複数の水通路のうちいずれの水通路に水を供給するのかを前記水供給手段により切り替えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、外壁面材の温度に基づいて、複数の水通路のうちいずれの水通路に水を供給するのかを切り替えられる。したがって、日射の方角の変動により外壁面材において温度上昇する部位が移動しても、かかる部位に追従して当該部位付近の水通路に水を流す等、外壁面材の温度状況に応じて外壁面材において水を流す場所を変えることができる。
【0014】
第4の発明の建物の外壁流水システムは、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記外壁温検知手段の検知結果に基づいて、前記建物の周りで火災が発生しているか否かを判定する火災判定手段を備え、前記供給態様制御手段は、前記火災が発生していないと判定された場合と、前記火災が発生していると判定された場合とで、前記水供給手段による前記複数の水通路への水の供給態様を変更することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、隣家等建物の周りで火災が発生しているか否かに応じて外壁面材における複数の水通路への水の供給態様が変更される。そのため、建物周りで火災が発生している場合には、火災が発生していない場合よりも複数の水通路への水の供給量を増やしこれら水通路を流れる水の量を増やす等することで外壁面材周辺の防火性能を高めることができる。これにより、建物周りで火災が発生しているか否かに応じて好適に外壁面材に沿って水を流すことができる。
【0016】
第5の発明の建物の外壁流水システムは、第4の発明において、前記水通路として、火災時にのみ水を流す火災時用水通路を備え、前記火災時用水通路は、前記建物の外周部において前記外壁面材が存在していない部位に設けられ又は当該部位に通じており、前記供給態様制御手段は、前記火災判定手段により火災が発生していると判定された場合に、少なくとも前記火災時用水通路へ水を供給するよう前記水供給手段を制御することを特徴とする。
【0017】
建物周りで火災が発生している場合と火災が発生していない場合とでは外壁面材において水を流すべき場所が異なる。例えば、火災発生時には、建物外周部にて外壁面材が存在していない部位に、すなわち建物外周部にて防火性の面で劣る部位に水を供給したり水を流したりすることが望ましい。その点、本発明では、火災発生時に外壁面材が存在してない部位に水を供給したり水を流したりすることができるため、建物外周部の防火性能を効果的に高めることができる。
【0018】
第6の発明の建物の外壁流水システムは、第5の発明において、前記建物には、前記外壁面材が横並びに複数設けられ、隣り合う外壁面材の間には目地部が形成されており、前記火災時用水通路は、前記目地部により構成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、建物周りで火災が発生した場合には隣り合う外壁面材の間に形成された目地部に沿って水を流すことができる。これにより、目地部の防火性能を高めることができ、目地部を通じて火が建物内に入りこむのを抑制することができる。
【0020】
第7の発明の建物の外壁流水システムは、第5又は第6の発明において、前記外壁面材には、屋内外を連通する開口部が設けられ、前記火災時用水通路は、その下流側端部が前記開口部に通じており、前記火災時用水通路から前記開口部に水が供給されることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、建物周りで火災が発生した場合には外壁面材に形成された開口部に火災時用水通路を通じて水が供給されるため、建物内への火の入り込み口となり易い開口部の防火性能を高めることができる。
【0022】
第8の発明の建物の外壁流水システムは、第4乃至第7のいずれかの発明において、前記水通路として、前記外壁面材の表面側に設けられた表面通路と、前記外壁面材の内部に設けられた内部通路とを備え、前記供給態様制御手段は、前記火災判定手段により火災が発生していないと判定された場合には前記表面通路に水を供給し、前記火災判定手段により火災が発生していると判定された場合には前記表面通路及び前記内部通路の双方に水を供給するよう前記水供給手段を制御することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、建物周りで火災が発生してない非火災時には外壁面材に設けられた表面通路に水を流すことができ、建物周りで火災が発生している火災時には表面通路に加え内部通路に水を流すことができる。ここで、火災発生時には外壁面材の表面通路に水を流しても、火災による炎熱の影響で水が短時間で気化し消失してしまうおそれがある。これに対し、外壁面材の内部通路に水を流すようにすると、炎熱による水の気化を抑制することができ、外壁面材の温度上昇を抑制する上で好ましい。
【0024】
また、非火災時は、主に水通路を流れる水の気化に伴う気化熱により外壁面材の温度上昇の抑制を図り、火災時は、主に炎熱により加熱された外壁面材よりも低温の水を水通路に流すことで外壁面材の温度上昇の抑制を図ることが考えられる。この点を鑑みると、非火災時には表面通路に水を流し、火災時には表面通路に加え内部通路に水を流す上記の構成は望ましいといえる。
【0025】
第9の発明の建物の外壁流水システムは、第1乃至第8のいずれかの発明において、前記建物は、上下に隣接する上階部と下階部とを有しており、前記上階部及び前記下階部の各外壁面材にそれぞれ前記複数の水通路が設けられ、それら上階側の水通路と下階側の水通路とが通じており、前記外壁温検知手段は、前記上階部の外壁面材の温度と前記下階部の外壁面材の温度とを検知するものであり、前記水供給手段は、前記上階側の水通路と前記下階側の水通路とに個別に水を供給可能であり、前記供給態様制御手段は、前記外壁温検知手段により検知された前記上階部の外壁面材の温度と前記下階部の外壁面材の温度とに基づいて、前記上階側の水通路及び前記下階側の水通路のうちいずれの水通路に水を供給するかを前記水供給手段により切り替えることを特徴とする。
【0026】
上階部及び下階部の各外壁面材に設けられた水通路同士が上下に通じている構成では、上階側の水通路に水を供給し、その供給した水が上階側の水通路を下方に流れ終えた後下階側の水通路に流れ込むようにすることが考えられる。しかしながら、この場合、下階側の水通路には、上階側で暖められた水が流れることとなるため、下階部の外壁面材についてはその温度上昇を効果的に抑制できないおそれがある。その点、本発明によれば、上階側の水通路と下階側の水通路とに個別に水を供給できるため、下階側の水通路に直接水を供給でき、その結果かかる不都合を回避できる。また、上階部の外壁面材の温度と下階部の外壁面材の温度とに基づいて上階側の水通路及び下階側の水通路のうちいずれに水を供給するかを切り替えられるため、例えば下階部の外壁面材の温度が高い場合には、下階側の水通路に直接水が供給することが可能となる。そのため、下階部の外壁面材の温度上昇を抑制するにあたり都合のよい構成といえる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態における外壁流水システムの構成を示す図。
【図2】横並びに設けられた外壁面材の構成を示す横断面図。
【図3】水吐出部及びその周辺の構成を示す縦断面図。
【図4】水吐出部の構成を示す縦断面図。
【図5】切替部材を回転させた様子を示す縦断面図。
【図6】外壁流水制御処理を示すフローチャート。
【図7】第2の実施形態における外壁面材の構成を示す横断面図。
【図8】給水系統を示す平面図。
【図9】外壁面材周辺を屋外側から見た図。
【図10】他の実施形態における外壁流水システムの構成を示す図。
【図11】外壁面材の中空部に分岐系統を設けた状態を示す横断面図。
【図12】外壁部における温度分布を示す図。
【図13】外壁流水システムの構成を示す図。
【図14】外壁流水システムの構成を示す図。
【図15】水通路構成部材により水通路を構成した状態を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は外壁流水システムの構成を示す図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の建物10は、下階部としての一階部分11と、上階部としての二階部分12とを有する二階建て建物であり、その屋根部15は陸屋根として構成されている。建物10には、一階部分11に一階居室16が設けられ、二階部分12に二階居室17が設けられている。建物10には、一階居室16及び二階居室17を屋外と仕切る外壁部19が設けられている。外壁部19は、一階部分11及び二階部分12にそれぞれ設けられた外壁面材21を備える。一階部分11の外壁面材21と二階部分12の外壁面材21とは上下に並んで設置されており、それら各外壁面材21により上下に連続した屋外面が形成されている。なお、各外壁面材21は、図示しないフレーム材を介して建物10の柱や梁等に組み付けられている。
【0030】
次に、外壁面材21周辺の構成について図2に基づいて説明する。外壁面材21は、一階部分11及び二階部分12においてそれぞれ横並びに複数設けられており、図2は横並びに設けられた外壁面材21の構成を示す横断面図である。
【0031】
図2に示すように、外壁面材21は、上下方向に延びる略四角柱状の中空部23を複数有しており、例えば押出成形セメント板により構成されている。これら各中空部23は、後述する水を流すための水通路となっており、以下の説明では場合によって中空部を中空通路23ともいう。
【0032】
外壁面材21の各中空通路23は同外壁面材21の幅方向に沿って所定間隔で設けられ、詳しくは等間隔で設けられている。外壁面材21の各中空通路23は、外壁面材21の高さ方向全域に亘って上下に延びており、上端部及び下端部においてそれぞれ上方及び下方に開口されている。また、一階部分11の外壁面材21と二階部分12の外壁面材21とが上下に並んで設置された状態では、上下各外壁面材21の各々の中空通路23が上下直列に配置されている。つまり、一階側の中空通路23と、二階側の中空通路23とは上下に通じている。
【0033】
隣り合う外壁面材21の間には、目地部としての縦目地25が形成されている。縦目地25には、当該縦目地25を通じて屋内側に雨水が浸入するのを防止すべく1次止水シール27と2次止水シール28とが設けられている。これら各止水シール27,28は定形シールからなり、例えばエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等の弾性を有する樹脂素材により形成されている。各止水シール27,28は、縦目地25に沿って上下に延びるように形成されており、1次止水シール27が縦目地25において屋外側に設けられ、2次止水シール28が縦目地25において屋内側に設けられている。また、各止水シール27,28は、縦目地25よりも厚く形成されており、それ故縦目地25において隣り合う外壁面材21の間に圧縮状態で介在されている。
【0034】
この場合、縦目地25には、1次止水シール27と2次止水シール28との間に上下に延びる目地通路29が形成されている。この目地通路29は上端部及び下端部においてそれぞれ上方及び下方に開口されている。この目地通路29は、通常は1次止水シール27を通過して同通路29に浸入した水を下方に導いて排水する排水通路として機能する。また、一階部分11の目地通路29と二階部分12の目地通路29とは上下に直列に配置されている。
【0035】
ところで、本実施形態の建物10には、外壁面材21に設けられた中空通路23及び目地通路29に水を供給することにより、それら各通路23,29に水を流す外壁流水システムが設けられている。以下、この外壁流水システムの構成について説明する。なお、本実施形態では、建物10において隣家55に面して設けられた外壁面材21に本システムを適用することを想定している。また、ここで中空通路23及び目地通路29が水通路に相当する。
【0036】
図1に示すように、建物10の屋根部15上には、雨水を貯留するための貯水槽31が設けられている。また、貯水槽31には、水道配管32が接続されており、同貯水槽31に水道水を供給できるようになっている。したがって、本貯水槽31には、晴天が続く等して貯水量が不足した場合に水道水による水の補充が可能となっている。
【0037】
なお、かかる水補充手段としては、水道水を補充する以外に、建物10内の水廻り設備(浴槽や洗面台など)から排水された生活排水(中水)を補充することが考えられる。また、貯水槽31の貯水量を検知する貯水量センサを設け、同センサの検知結果に基づき貯水量の不足が判定された場合に水補充手段による水の補充を行うようにしてもよい。
【0038】
建物10には、貯水槽31の水を外壁面材21の水通路23,29に供給する水供給系統30が設けられている。水供給手段としての水供給系統30は、給水配管34と、水吐出部40と、開閉バルブ36とを備えて構成されている。給水配管34は、貯水槽31に接続されており、給水配管34の下流側には水吐出部40が接続されている。水吐出部40は、二階部分12の外壁面材21に設けられた水通路23,29に当該水通路23,29の上方から水を吐出するものであり、二階部分12の外壁面材21の上方にて当該外壁面材21の幅方向に沿って延びている。水吐出部40より水が吐出されると、水通路23,29には通路上端より水が供給される。なお、水吐出部40の詳細は後述する。
【0039】
給水配管34には、同配管34における水の流通を許可又は禁止する開閉バルブ36が設けられている。開閉バルブ36は、電気的な操作により開閉動作を行うものである。開閉バルブ36が開状態とされると、貯水槽31の水が給水配管34を通じて水吐出部40に供給され、その供給された水が水吐出部40より二階部分12の外壁面材21における所定の水通路23,29に吐出(供給)される。ここで、吐出された水は当該水通路23,29を下方に向かって流れ、その後、当該水通路23,29の下方に設けられた一階部分11の外壁面材21の水通路23,29に流れ込む。そして、その流れ込んだ水は一階部分11の水通路23,29を下方に流れ、最終的に当該水通路23,29の下端開口部より屋外に放出される。
【0040】
次に、水吐出部40の構成について図3に基づいて説明する。なお、図3は、水吐出部40及びその周辺の構成を示す縦断面図である。
【0041】
水吐出部40は、外壁面材21に設けられた各水通路23,29のうち、水を吐出(供給)する吐出先(供給先)の水通路23,29を切り替える切替機構を備えている。すなわち、水吐出部40は、図3に示すように、内外二重に構成されており、内側に設けられた吐出配管41と、外側に設けられ吐出配管41に対し回転することで水の吐出先となる水通路23,29を切り替える切替部材42とを備える。
【0042】
吐出配管41は、円筒状に形成されており、例えば金属製のパイプからなる。吐出配管41は、二階部分12の各外壁面材21上において外壁面材21の幅方向に沿って延びている。詳細には、吐出配管41は、二階部分12の各外壁面材21上において、二階部分12における各外壁面材21の各々の中空通路23と目地通路29とに跨って延びている。吐出配管41の一端部(上流側端部)には給水配管34が接続され、吐出配管41の他端部(下流側端部)の開口は円形プレートにより塞がれている。
【0043】
吐出配管41には、その長手方向において、外壁面材21の各中空通路23の上方位置と、目地通路29の上方位置とに吐出孔部43が設けられている。吐出孔部43は、貯水槽31より吐出配管41に供給された水を水通路23,29に吐出するための孔であり、水通路23,29側(下側)に向けて開口されている。
【0044】
切替部材42は、吐出配管41の各吐出孔部43のうちいずれの吐出孔部43から水を吐出するかを切り替えるものである。切替部材42は、円筒状に形成されており、吐出配管41の外径とほぼ同じ内径寸法を有している。
【0045】
切替部材42には、その長手方向において吐出配管41の各吐出孔部43に対応する位置に、換言すると外壁面材21に設けられた各中空通路23及び各目地通路29の上方位置にそれぞれ、切替部材42の内外を連通する開口部45が設けられている。ここで、開口部45の詳細を図3に加え図4を参照しつつ説明する。図4は、吐出配管41をその長手方向と直交する面で切断した断面図であり、(a)が隣り合う中空通路23a,23bのうちの一方である第1中空通路23aの上方位置における断面図(図3のA−A線断面図に相当)、(b)が隣り合う中空通路23a,23bのうちの他方である第2中空通路23bの上方位置における断面図(図3のB−B線断面図に相当)、(c)が目地通路29の上方位置における断面図(図3のC−C線断面図に相当)である。なお、第1中空通路23aと第2中空通路23bとは外壁面材21の幅方向に交互に配置されている。また、図4では、説明の便宜上、水吐出部40の断面において開口部分に網掛けを付している(後述する図5も同様)
図3及び図4に示すように、本切替部材42には、開口部45として、同切替部材42の外周方向において開口位置の異なる第1開口部45a、第2開口部45b及び第3開口部45cが設けられている。第1開口部45aは各第1中空通路23aの上方位置に設けられ、第2開口部45bは各第1中空通路23a及び各第2中空通路23b(すなわち各中空通路23)の上方位置に設けられ、第3開口部45cは各中空通路23及び各目地通路29の上方位置に設けられている。換言すると、切替部材42には、第1中空通路23aの上方位置に第1乃至第3開口部45a〜45cが設けられ(図4(a)参照)、第2中空通路23bの上方位置に第2開口部45b及び第3開口部45cが設けられ(図4(b)参照)、目地通路29の上方位置に第3開口部45cが設けられている(図4(c)参照)。
【0046】
切替部材42は、吐出配管41の外周に沿って回転することにより第1乃至第3開口部45a〜45cの位置を外周方向に変えることが可能となっている。図5は、切替部材42を回転させた様子を示す断面図である。図5において(a)は、切替部材42が、その第1開口部45aが吐出配管41の吐出孔部43と連続する第1位置にある場合を示し、(b)は、切替部材42が、その第2開口部45bが吐出配管41の吐出孔部43と連続する第2位置にある場合を示し、(c)は、切替部材42が、その第3開口部45cが吐出配管41の吐出孔部43と連続する第3位置にある場合を示している。このように、本切替部材42は、第1乃至第3位置の間で回転することが可能となっている。なお、図5(a)〜(c)ではそれぞれ、図4と同様、水吐出部40における第1中空通路23a、第2中空通路23b及び目地通路29の各上方位置における断面図を示している。
【0047】
図5(a)に示すように、切替部材42が第1位置にある場合には、吐出配管41の各吐出孔部43のうち第1中空通路23aの上方に位置する吐出孔部43のみが開口される。この場合、当該開口された吐出孔部43より貯水槽31の水が各第1中空通路23aに吐出(供給)される。また、図5(b)に示すように、切替部材42が第2位置にある場合には、吐出配管41の各吐出孔部43のうち第1中空通路23a及び第2中空通路23bの上方に位置する吐出孔部43が開口される。この場合、当該開口された吐出孔部43より貯水槽31の水が各第1中空通路23a及び各第2中空通路23bに吐出(供給)される。さらに、図5(c)に示すように、切替部材42が第3位置にある場合には、吐出配管41の各吐出孔部43がすべて開口される。この場合、当該開口された各吐出孔部43より貯水槽31の水が各中空通路23(23a,23b)及び各目地通路29すべてに吐出(供給)される。
【0048】
以上より、本吐出部40では、上記のように切替部材42の位置切替を行うことで、貯水槽31の水を供給する供給先の水通路23,29の数を増減させることが可能となっており、ひいては複数の水通路23,29への水の供給量を大小調整することが可能となっている。具体的には、切替部材42が第1位置にある場合、第2位置にある場合、第3位置にある場合の順序で複数の水通路23,29への水の供給量を大きくすることができる。
【0049】
また、図3に示すように、切替部材42には、同部材42を回転駆動する回転駆動部47が設けられている。回転駆動部47は、例えば周知の電動モータにより構成されている。本実施形態では、この回転駆動部47を駆動させることにより、切替部材42を第1位置乃至第3位置の各位置に回転移動させることとしている。
【0050】
図1の説明に戻り、建物10の一階部分11及び二階部分12には、外壁温検知手段としての外壁温センサ51が設けられている。一階外壁温センサ51aは、一階部分11の外壁面材21の温度を検知するセンサであり、例えば一階部分11の各外壁面材21のうちいずれか一つに設けられている。二階外壁温センサ51bは、二階部分12の外壁面材21の温度を検知するセンサであり、例えば二階部分12の各外壁面材21のうちいずれか一つに設けられている。
【0051】
建物10の一階部分11及び二階部分12には、屋内温検知手段としての居室温センサ52が設けられている。一階居室温センサ52aは、一階居室16の温度を検知するセンサであり、二階居室温センサ52bは、二階居室17の温度を検知するセンサである。各居室温センサ52a,52bは、例えばそれぞれの居室16,17の内壁面に設けられている。
【0052】
次に、本システムの電気的構成について説明する。建物10には、供給態様制御手段としてのコントローラ50が設けられている。コントローラ50は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成されている。コントローラ50には、外壁温センサ51及び居室温センサ52から逐次検知結果が入力される。コントローラ50は、これら各センサ51,52からの検知結果に基づいて、開閉バルブ36及び回転駆動部47を動作制御する。
【0053】
次に、コントローラ50により実行される給水制御処理について図6に基づいて説明する。なお、図6は給水制御処理を示すフローチャートである。また、本処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0054】
まずステップS11では、各外壁温センサ51a,51bの検知結果に基づいて、隣家55で火災が発生したか否かを判定する。具体的には、この判定は、一階部分11の外壁面材21の温度及び二階部分12の外壁面材21の温度の少なくともいずれかが所定の火災発生温度Tfよりも高くなったか否かに基づいて行う。ここで、所定の火災発生温度Tfは、太陽光の照射等、環境要因によっては上昇し得ない温度に設定されており、例えば80℃に設定されている。隣家55で火災が発生していない場合にはステップS12に進む。
【0055】
ステップS12では、各外壁温センサ51a,51bの検知結果に基づいて、外壁面材21の温度が所定の給水開始温度Tw以上であるか否かを判定する。なお、給水開始温度Twは、火災発生温度Tfよりも低温であり、例えば40℃に設定されている。この判定は、例えば一階部分11の外壁面材21の温度及び二階部分12の外壁面材21の温度の少なくともいずれかが給水開始温度Tw以上であるか否かに基づいて行う。外壁面材21の温度が給水開始温度Tw以上である場合にはステップS14に進む。
【0056】
ステップS14では、外壁温センサ51及び居室温センサ52の検知結果に基づいて通常給水処理を実施する。本処理では、外壁面材21の温度が所定の閾値αよりも低く、かつ、居室16,17の温度が所定の閾値βよりも低い場合には、開閉バルブ36を開状態とするとともに、回転駆動部47を駆動させ切替部材42を第1位置に移動させる。なおここで、外壁温に関する所定の閾値αは例えば60℃に設定され、居室温に関する所定の閾値βは例えば35℃に設定されている。これにより、外壁面材21の温度及び居室16,17の温度の双方が著しく高くなってない場合には、貯水槽31の水が水吐出部40より第1中空通路23aにのみ供給される。つまり、この場合複数の中空通路23に対して比較的小流量で水を流すことができる。
【0057】
一方、外壁面材21の温度が所定の閾値α以上である場合、又は、居室16,17の温度が所定の閾値β以上である場合には、開閉バルブ36を開状態とするとともに、回転駆動部47を駆動させ切替部材42を第2位置に移動させる。これにより、外壁面材21の温度及び居室16,17の温度の少なくともいずれかが著しく高くなっている場合には、貯水槽31の水が第1中空通路23aに加え第2中空通路23bにも供給される。つまり、この場合複数の中空通路23に対して比較的大流量で水を流すことができる。
【0058】
なお、外壁面材21の温度が所定の閾値αよりも低いか否かの判定は、例えば一階部分11の外壁面材21の温度及び二階部分12の外壁面材21の温度の少なくともいずれかが所定の閾値αよりも低いか否かに基づいて行う。また、居室16,17の温度が所定の閾値βよりも低いか否かの判定は、例えば一階居室16の温度及び二階居室17の温度の少なくともいずれかが所定の閾値βよりも低いか否かに基づいて行う。その後、本処理を終了する。
【0059】
なお、外壁面材21の温度及び居室16,17の温度に基づく切替部材42の位置切替を、換言すると複数の中空通路23への水の供給量の大小の切替を、上記の構成に代えて、例えば外壁面材21の温度と居室16,17の温度との温度差に基づいて行ってもよい。
【0060】
一方、先のステップS11において隣家55で火災が発生した場合には、ステップS13に進み、火災時給水処理を実施する。この処理では、開閉バルブ36を開状態とするとともに、回転駆動部47を駆動させ切替部材42を第3位置に移動させる。この場合、貯水槽31の水が水吐出部40より各中空通路23及び各目地通路29に対して供給される。これにより、隣家55で火災が発生した場合は、外壁面材21におけるすべての水通路23,29に水を流すことができる。その後、本処理を終了する。
【0061】
また、隣家55で火災が発生しておらず(ステップS11でNO判定)、かつ、外壁面材21の温度が給水開始温度Twよりも低い(ステップS12でNO判定)場合には、ステップS15に進み、給水停止処理を実行する。この処理では、開閉バルブ36を閉状態とすることで、貯水槽31から水吐出部40への水の供給を禁止する。これにより、水吐出部40から水通路23,29への水の吐出(供給)が停止され、ひいては水通路23,29における水の流通が停止する。その後、本処理を終了する。
【0062】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0063】
外壁面材21に上下方向に延びる複数の水通路23,29を設け、これら複数の水通路23,29への水の供給を行う水供給系統30を設けた。そして、外壁温センサ51により検知された外壁面材21の温度に基づいて複数の水通路23,29への水の供給態様を制御することとした。この場合、外壁面材21の温度に応じて水の供給態様を変更することができる。よって、外壁面材21の温度状況に応じて好適に水を外壁面材21に沿って流すことができる。
【0064】
具体的には、外壁面材21の温度に基づいて、複数の水通路23,29への水の供給量を制御することとした。これにより、外壁面材21の温度が高くなった場合には、複数の水通路23,29への水の供給量を増やしこれらの水通路23,29を流れる水の量を多くすることで外壁面材21の温度上昇を抑制する効果を高めることができる。また、外壁面材21の温度が低い場合には、複数の水通路23,29への水の供給量を減らしこれらの水通路23,29を流れる水の量を少なくすることで、貯水槽31の水を無駄に使用することを抑制できる。よって、この場合、外壁面材21の温度状況に応じて適切な量の水を外壁面材21に沿って流すことができる。
【0065】
また、外壁面材21の温度に加え居室16,17の温度に基づいて、複数の水通路23,29への水の供給量を制御した。これにより、居室16,17の温度が高い場合に複数の水通路23,29に流す水の量を多くすることができる。よって、居室16,17が暑くなっている場合に、外壁面材21の温度上昇を抑制する効果を高めることができ、その結果居室16,17における冷房負荷の軽減を図ることができる。
【0066】
外壁面材21の温度に基づいて、複数の水通路23,29のうちいずれの水通路23,29に水を供給するのかを切り替えるようにした。これにより、外壁面材21の温度状況に応じて外壁面材21において水を流す場所を変えることが可能となる。
【0067】
水を供給する供給先の水通路23,29の数を増減させることにより、複数の水通路23,29へ供給する水の供給量を制御するようにした。この場合、複数の水通路26,29への水の供給量を制御するに際し実用上好ましい構成といえる。
【0068】
外壁温センサ51の検知結果に基づいて隣家55で火災が発生したか否かを判定し、火災が発生していないと判定した場合と火災が発生していると判定した場合とで、水通路23,29への水の供給態様を変更することとした。具体的には、火災が発生していると判定した場合には、火災が発生していないと判定した場合よりも複数の水通路23,29への水の供給量を増やすようにした。この場合、火災発生時には外壁面材21周辺の防火性能を高めることができる。よって、隣家55で火災が発生しているか否かに応じて好適に外壁面材21に沿って水を流すことができる。
【0069】
水通路23,29として、火災時にのみ水を流す目地通路29を備え、隣家55で火災が発生していると判定した場合には少なくとも目地通路29に水を供給するようにした。これにより、火災発生時には、建物外周部において外壁面材21が存在していない縦目地25部分に、すなわち建物外周部において防火性の面で劣る縦目地25部分に水を流すことができるため、建物外周部の防火性能を高めることができる。
【0070】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態の構成を図7乃至図9に基づいて第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、図7は、外壁面材の構成を示す横断面図であり、図8は、給水系統を示す平面図であり、図9は、外壁面材周辺を屋外側から見た図である。
【0071】
図7に示すように、本実施形態の外壁面材61には、その内部に上下方向に延びる中空部62が形成されており、その表面側に同じく上下方向に延びる溝部63が形成されている。中空部62は、外壁面材61の幅方向に所定の間隔で複数設けられており、同様に、溝部63も同方向に所定の間隔で複数設けられている。そして、各中空部62と各溝部63とは外壁面材61の幅方向において交互に配置されている。
【0072】
中空部62及び溝部63はそれぞれ、外壁面材61の高さ方向全域に亘って延びており(詳細には後述する開口部65が設けられている部分を除く)、その上端部及び下端部においてそれぞれ開口されている。そして、本実施形態では、この中空部62と溝部63とを水を流すための水通路としており、以下の説明では、中空部62を中空通路62といい、溝部63を溝通路63という。また、ここで中空通路62が内部通路に相当し、水通路63が表面通路に相当する。
【0073】
次に、中空通路62及び溝通路63に貯水槽31の水を供給するための給水系統について図8に基づき説明する。
【0074】
図8に示すように、貯水槽31には、給水配管71が接続されている。給水配管71は下流側で第1配管72と第2配管73とに分岐されている。第1配管72は、その下流側の部分が二階部分12の外壁面材61の上方において同外壁面材61の幅方向に延びる吐出部74となっている。吐出部74は、二階部分12の外壁面材61の各溝通路63上に跨るようにして延びている。一方、第2配管73も、その下流側の部分が二階部分12の外壁面材61の上方において同外壁面材61の幅方向に延びる吐出部75となっている。吐出部75は、二階部分12の外壁面材61の各中空通路62上に跨るようにして延びている。
【0075】
第1配管72の吐出部74には、その長手方向において溝通路63の上方位置に吐出孔部77が形成されている。吐出孔部77は、吐出部74に供給された貯水槽31の水を溝通路63に吐出するための孔であり、溝通路63側に向けて開口されている。第2配管73の吐出部75には、その長手方向において中空通路62の上方位置に吐出孔部78が形成されている。吐出孔部78は、吐出部75に供給された貯水槽31の水を中空通路62に吐出するための孔であり、中空通路62側に向けて開口されている。
【0076】
第1配管72における吐出部74よりも上流側には、第1開閉バルブ81が設けられ、第2配管73における吐出部75よりも上流側には、第2開閉バルブ82が設けられている。これら各バルブ81,82は、電気的な操作により開閉動作を行うことで、各々の配管72,73における水の流通を許可又は禁止するものである。ここで、第1開閉バルブ81が開状態とされると、貯水槽31の水が給水配管71を介して第1配管72の吐出部74に供給され、当該吐出部74の各吐出孔部77より溝通路63に吐出(供給)される。この場合、水が溝通路63を下方に向かって流れる。一方、第2開閉バルブ82が開状態とされると、貯水槽31の水が給水配管71を介して第2配管73の吐出部75に供給され、当該吐出部75の各吐出孔部78より中空通路62に吐出(供給)される。この場合、水が中空通路62を下方に向かって流れる。
【0077】
また、図9に示すように、本実施形態の建物60には、二階部分12の外壁面材61に、屋内外を連通する開口部65が設けられている。開口部65は,内壁面材(図示略)に形成された開口部等とともに窓部66を構成している。窓部66には、当該窓部66を開閉する開閉部材としてのガラス戸67が設けられ、ガラス戸67には、当該ガラス戸67を開閉駆動する開閉駆動部68が設けられている。開閉駆動部68は、例えば電動モータ等の電動式の駆動機構からなる。
【0078】
外壁面材61に形成された各中空通路62及び各溝通路63のうち一部の通路は開口部65によって上下に分断されている。分断された上下の通路のうち上側の通路は下端部(すなわち下流側端部)が開口部65に通じる開口部用水通路62a,63aとなっている。したがって、水吐出部40より貯水槽31の水が開口部用水通路62a,63aに供給されると、その供給された水は同水通路62a,63aを下方に流れ最終的に開口部65に向けて吐出される。なおここで、開口部用水通路62a,63aが火災時用水通路に相当する。
【0079】
また、建物10には、当該建物10周りを吹く風の向きを検知する風向センサ69が設けられている。風向センサ69は、例えば外壁面材61の屋外面に設けられている。
【0080】
図8に示すように、コントローラ50は、外壁温センサ51、居室温センサ52、風向センサ69の検知結果に基づいて、各開閉バルブ81,82を開閉制御するとともに開閉駆動部68を駆動制御する。以下、コントローラ50により実行される制御の内容を説明する。また、本実施形態では、通常給水処理(図6のステップS14)及び火災時給水処理(図6のステップS13)の内容が第1実施形態と異なり、それ以外の処理については第1実施形態と同じであるため、以下においては通常給水処理及び火災時給水処理の内容を中心に説明する。
【0081】
まず、通常給水処理について説明する。本処理では、コントローラ50は、第1開閉バルブ81を開状態とするとともに第2開閉バルブ82を閉状態とする。この場合、貯水槽31の水が第1配管72の吐出部74より外壁面材61の溝通路63に供給される。そのため、隣家55で火災が発生していない場合には、水通路62,63のうち溝通路63にのみ水が流れる。
【0082】
ここで、上述したように各溝通路63のうち開口部用溝通路63aを流れる水は最終的に開口部65に向けて吐出されるため、屋外の気温が高い場合等には、その吐出された水が一部気化し、その気化熱により開口部65周辺の外気が冷やされると考えられる。そこで、本処理では、この点に着目し、さらに風向センサ69により検知された風の向きに基づいて、ガラス戸67を開閉するよう開閉駆動部68の駆動制御を行う。具体的には、風向センサ69により検知された風の向きが開口部65に向かう向きである場合に、ガラス戸67を開くよう制御する。この場合、気化熱により冷やされた外気を開口部65に向かって吹く風とともに開口部65に取り込むことができるため、二階居室17内を涼しくすることができる。
【0083】
次に、火災時給水処理について説明する。本処理では、コントローラ50は、第1開閉バルブ81及び第2開閉バルブ82の双方を開状態とする。この場合、貯水槽31の水が第1配管72の吐出部74より外壁面材61の溝通路63に供給されるとともに、第2配管73の吐出部75より外壁面材61の中空通路62に供給される。そのため、隣家55で火災が発生した場合には、水が溝通路63に加え中空通路62にも流れる。
【0084】
ここで、火災発生時には、外壁面材61の開口部65を通じて火が入り込み易い。そのため、本処理では、さらにガラス戸67を閉めるよう開閉駆動部68の駆動制御を行う。これにより、火災発生時には、開口部65が閉鎖されるとともに、閉鎖された開口部65に対し溝通路63と中空通路62との双方から給水が行われるため開口部65周りの防火性能を高めることができる。
【0085】
なお、コントローラ50は、通常給水処理及び火災時給水処理を実行しない場合には、第1開閉バルブ81及び第2開閉バルブ82の双方を閉状態とし、溝通路63及び中空通路62への給水処理を停止する。
【0086】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0087】
外壁面材61に、水通路として、外壁面材61の内部に設けられた中空通路62と、外壁面材61の表面側に設けられた溝通路63とを設け、隣家55で火災が発生してない場合には通常給水処理として中空通路62に水を供給し、隣家55で火災が発生している場合には火災時給水処理として中空通路62に加え溝通路63にも水を供給した。火災発生時に溝通路63に水を流す場合、火災による炎熱の影響で水が短時間で気化し消失してしまうおそれがある。これに対し、中空通路62に水を流すようにすると、炎熱による水の気化を抑制することができる。そのため、上記の構成は、外壁面材61の温度上昇を抑制する上で好ましい構成といえる。
【0088】
また、非火災時は、主に水通路を流れる水の気化に伴う気化熱により外壁面材61の温度上昇の抑制を図り、火災時は、主に炎熱により加熱された外壁面材61よりも低温の水を水通路に流すことで外壁面材61の温度上昇の抑制を図ることが考えられる。この点を鑑みると、非火災時には溝通路63に水を流し、火災時には溝通路63に加え中空通路62に水を流す上記構成は望ましい構成といえる。
【0089】
外壁面材61に、水通路として同外壁面材61に設けられた開口部65に通じる開口部用水通路62aを設け、隣家55で火災が発生していると判定した場合には開口部用水通路62aに水を供給するようにした。これにより、隣家55で火災が発生した場合には外壁面材61の開口部65に開口部用水通路62aを通じて水が供給されるため、建物10内への火の入り込み口となり易い開口部65周辺の防火性能を高めることができる。
【0090】
〔他の実施形態〕
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0091】
(1)上記各実施形態では、貯水槽31の水を外壁面材21,61の水通路に流した後屋外に放出する構成、すなわち水を再利用しない構成としたが、これを変更し、貯水槽31の水を水通路を通じて循環させ水の再利用を行う構成としてもよい。以下、その具体例について説明する。
【0092】
図10は、本例における外壁流水システムの構成を示す図である。図10に示すように、本例の建物10には、貯水槽31の水を循環させるための循環回路91が設けられている。循環回路91は、貯水槽31に接続された給水配管92と、給水配管92の下流側端部において分岐され外壁面材21の各中空部23に設けられた複数の分岐系統93と、これら各分岐系統93の下流側端部において集合され貯水槽31に通じる戻り配管94とを備える。給水配管92には、開閉バルブ96と、循環ポンプ97とが設けられている。開閉バルブ96は、開閉動作を行うことで循環回路91における水の流通を許可又は禁止するものである。循環ポンプ97は、貯水槽31の水を循環回路91に循環させるものであり、例えばダイアフラムポンプ等からなる。また、循環ポンプ97は、循環回路91に循環させる水の流量を調整する機能を有している。
【0093】
図11は、外壁面材21の各中空部23に分岐系統93が設けられた状態を示す横断面図である。図11に示すように、外壁面材21の各中空部23にはそれぞれ分岐系統93が設けられ、それら各分岐系統93はそれぞれ上下に延びる一対の配管93a,93bを有する。各配管93a,93bは、熱伝導性に優れた金属材料からなり、その外周面が中空部23の内周面に接触した状態で同中空部23に設けられている。なおここで、分岐系統93の各配管93a,93bが水通路に相当する。
【0094】
図10の説明に戻り、分岐系統93の各配管93a,93bは、一階部分11の外壁面材21の中空部23と二階部分12の外壁面材21の中空部23とに跨って延びており、詳しくはそれら各中空部23の全域に亘って延びている。分岐系統93の各配管93a,93bのうち、第1配管93aは給水配管92の下流側端部に接続され、第2配管93bは戻り配管94の上流側端部に接続されている。また、各分岐系統93において第1配管93aと第2配管93bとは、水を加熱又は冷却することで水温調整を行う水温調整装置98により接続されている。
【0095】
ここで、貯水槽31の水は給水配管92を介して各分岐系統93の第1配管93aに供給され各々の配管93aを下方に向かって流れる。各第1配管93aを流れる水は水温調整装置98に供給され同装置98により所望の温度に調整される。そして、温度調整された水は水温調整装置98から各第2配管93bに吐出されて各々の配管93bを上方に向かって流れ、その後戻り配管94を通じて貯水槽31に戻される。このようにして、本例では、貯水槽31の水が循環回路91を通じて循環される。
【0096】
次に、本システムにおいてコントローラ50により実行される制御の内容を説明する。
【0097】
コントローラ50は、外壁温センサ51等の検知結果に基づいて、開閉バルブ96、循環ポンプ97及び水温調整装置98を動作制御する。例えば、夏季等において、外壁面材21の温度が所定温度(例えば40℃)以上になった場合には、開閉バルブ96を開状態とするとともに循環ポンプ97を作動させ、貯水槽31の水を循環回路91に循環させる。そして、水温調整装置98により循環回路91を流れる水を冷却する。この場合、冷却された水により外壁面材21が冷やされる。一方、冬季等において、外壁面材21の温度が所定温度(例えば10℃)以下になった場合には、上記と同様に貯水槽31の水を循環回路91に循環させ、水温調整装置98により同回路91を流れる水を加熱する。この場合、加熱された水により外壁面材21が暖められる。
【0098】
また、コントローラ50は、外壁温センサ51等の検知結果に基づいて、循環回路91を循環する水の流量を調整するよう循環ポンプ97を動作制御する。例えば、夏季等において、循環回路91に水温調整装置98により冷却された冷却水を循環させる場合には、外壁面材21の温度が高いほど循環回路91における水の流量を多くするよう循環ポンプ97を制御する。これにより、外壁面材21の温度が高くなった場合には、分岐系統93に供給される水の供給量を、すなわち分岐系統93を流れる水の量を多くすることができ、その結果外壁面材21の温度上昇を抑制する効果を高めることができる。よって、外壁面材21の温度状況に応じて適切な量の水を外壁面材21に沿って流すことが可能となる。
【0099】
次に、本システムを用いて外壁面材21を冷やしたり暖めたりする場合の外壁部19における温度分布について、従来例と比較しつつ説明する。図12は、外壁部19における温度分布を示す図であり、(a)が夏季における温度分布を示し、(b)が冬季における温度分布を示している。
【0100】
図12に示すように、外壁部19には、屋外側から屋内側にかけて順に外壁面材21、断熱材101、下地材102、内壁面材103が設けられている。より詳しくは、外壁面材21と断熱材101との間には通気層104が形成されている。このような構成において、まず図12(a)に示すように、夏季において従来(つまり外壁面材21に流水を行わない場合)は外壁部19の厚み方向における温度勾配が急であったのに対し、本システムではその温度勾配が緩やかになっている。そのため、屋外側から外壁部19を通じて居室16,17に流入する熱量を低減させることができ、その結果冷房装置の負荷低減を図ることができる。
【0101】
一方、図12(b)に示すように、冬季において従来は外壁部19の厚み方向における温度勾配が急であったのに対し、本システムではその温度勾配が緩やかになっている。そのため、居室16,17から外壁部19を通じて屋外側に流出する熱量を低減させることができ、その結果暖房装置の負荷低減を図ることができる。また、外壁部19を介して流出入する熱量を低減させた分、断熱材101の厚みを小さくしてもよく、その場合外壁部19全体の厚みを小さくすることができ、居室16,17のスペース拡張を図ることができる。
【0102】
(2)上記各実施形態では、隣家55に面して設置された外壁面材21,61に、すなわち建物10において一の方角に設けられた外壁面材21,61に本外壁流水システムを適用したが、異なる方角に設けられた複数の外壁面材に本システムを適用してもよい。その一例を図13に示す。図13に示すように、本例の建物10には、東西南北の各方角に外壁面材21が設けられ、これら各方角の外壁面材21にそれぞれ水通路23,29が設けられている。そして、建物10には、各方角の外壁面材21ごとに個別に貯水槽31の水を水通路23,29に供給する複数の水供給系統30が設けられている。したがって、本例では、貯水槽31の水を各方角の外壁面材21に供給することが可能となっている。
【0103】
外壁温センサ51は、各方角の外壁面材21にそれぞれ設けられ、それら各センサ51はそれぞれ対応する外壁面材21の温度を検知する。コントローラ50は、各外壁温センサ51の検知結果に基づいて、いずれの方角の外壁面材21の水通路(中空通路23)に水を供給するかを制御する。具体的には、コントローラ50は、各方角の外壁面材21のうちその温度が給水開始温度Tw以上になったものがあれば、当該外壁面材21の水通路23に水を供給すべく該当する開閉バルブ36を開状態とする。この場合、各方角の外壁面材21のうちで温度上昇した外壁面材21に沿って水を流すことができる。そのため、建物10に対する日射位置の変動等により、温度上昇する外壁面材21の位置が変わっても、それに追従して外壁面材21の温度上昇を抑制することできる。
【0104】
また、コントローラ50は、各外壁温センサ51の検知結果に基づいて、建物10周りにおけるいずれの方角で火災が発生したかを判定し、火災が発生した方角に設けられた外壁面材21の水通路23,29に水を供給するよう制御してもよい。具体的には、コントローラ50は、各方角の外壁面材21のうちその温度が火災発生温度Tfよりも高くなったものがあれば、当該外壁面材21の水通路23,29に水を供給すべく該当する開閉バルブ36を開状態とする。この場合、火災が発生した方角に設けられた外壁面材21に水を流すことができるため、建物10周りで火災が発生した場合には火災発生側の防火性能を高めることができる。そのため、建物10の周囲において異なる方角に複数の隣家がある場合等には都合がよい。
【0105】
(3)上記各実施形態では、二階部分12に設けられた複数の外壁面材21,61についてまとめて水通路への水の供給を行ったが、各外壁面材21,61ごとに個別に水通路への水の供給を行ってもよい。具体的には、二階部分12における各外壁面材21ごとに水通路23への水の供給を行う複数の水供給系統30を設けることが考えられる。この場合、各外壁面材21ごとにそれぞれ各々の外壁面材21の温度を検知する外壁温センサ51を設け、コントローラ50により、それら各外壁温センサ51の検知結果に基づいて給水処理を実施する。具体的には、コントローラ50は、各外壁面材21のうちその温度が給水開始温度Tw以上になったものがあれば、当該外壁面材21の水通路23に貯水槽31の水を供給すべく該当する開閉バルブ36を開状態とする。これにより、各外壁面材21のうち温度上昇した外壁面材21にのみ水を流すことができるため、水の節約を図ることができる。特に、貯水槽31の水を用いて外壁面材21に水を流す構成の場合、その効果が大きい。
【0106】
(4)上記第1の実施形態では、二階部分12の外壁面材21の水通路23,29に水を供給するようにし、その供給した水が当該水通路23,29を流れた後、一階部分11の外壁面材21の水通路23,29に入り込むようにした。そのため、一階部分11の水通路23,29には、二階部分12で暖められた水が入り込むこととなり、それ故一階部分11の外壁面材21についてはその温度上昇を好適に抑制できないおそれがある。そこで、この点に鑑みて、貯水槽31の水を、二階部分12の外壁面材21の水通路23,29と、一階部分11の外壁面材21の水通路23,29とにそれぞれ個別に供給できるようにしてもよい。その具体的を図14に示す。
【0107】
図14に示すように、本例では、貯水槽31に接続された給水配管109が下流側で一階側配管110と二階側配管111とに分岐されており、それら分岐された各配管110,111の下流側端部にそれぞれ水吐出部40が接続されている。一階側水吐出部40aは、一階部分11の外壁面材21の上方に設けられ、当該外壁面材21の水通路23,29に水を吐出するものである。二階側水吐出部40bは、二階部分12の外壁面材21の上方に設けられ、当該外壁面材21の水通路23,29に水を吐出するものである。
【0108】
一階側配管110と二階側配管111とにはそれぞれ開閉バルブ112,113が設けられている。一階側開閉バルブ112が開状態とされると貯水槽31の水が一階側配管110を介して一階側水吐出部40aに供給され、当該吐出部40aより一階部分11の外壁面材21の水通路23,29に水が吐出(供給)される。一方、二階側開閉バルブ113が開状態とされると貯水槽31の水が二階側配管111を介して二階側水吐出部40bに供給され、当該吐出部40bより二階部分12の外壁面材21の水通路23,29に水が吐出(供給)される。このように、本例のシステムでは、一階部分11の水通路23,29と二階部分12の水通路23,29とに個別に水を供給可能となっている。
【0109】
コントローラ50は、一階外壁温センサ51a及び二階外壁温センサ51bの検知結果に基づいて、各開閉バルブ112,113を動作制御する。具体的には、コントローラ50は、一階部分11の外壁面材21の温度が給水開始温度Tw以上になった場合には、一階側開閉バルブ112を開状態とし、一階部分11の水通路23,29に貯水槽31の水を供給する。また、二階部分12の外壁面材21の温度が給水開始温度Tw以上になった場合には、二階側開閉バルブ113を開状態とし、二階部分12の水通路23,29に貯水槽31の水を供給する。つまり、この場合、一階部分11及び二階部分12の外壁面材21のうち、温度上昇した外壁面材21に対し直接水を供給できる。よって、一階部分11の外壁面材21が温度上昇した場合には、当該外壁面材21の水通路23,29に直接水を供給することで、一階部分11の外壁面材21の温度上昇を好適に抑制できる。
【0110】
(5)上記実施形態では、外壁面材21の温度に基づいて水通路23,29への水の供給量を段階的に調整するようにしたが、外壁面材21の温度に基づいて水通路23,29への水の供給量を連続的に調整してもよい。例えば、給水配管34に、開閉バルブ36に代えて、連続的に流量調整が可能な可変バルブを設け、外壁面材21の温度に基づいて給水配管34を流れる水の流量を可変バルブにより連続的に制御することが考えられる。具体的には、外壁面材21の温度が高くなるのに比例して給水配管34を流れる水の流量を、すなわち水通路23,29への水の供給量を増大させることが考えられる。この場合、外壁面材21の温度状況に応じてより一層適切な量の水を外壁面材に沿って流すことができる。
【0111】
(6)上記各実施形態では、外壁面材21,61の中空部23,62を利用して水通路を構成したが、中空部を有しない外壁面材の場合、水通路を構成するための水通路構成部材を別途外壁面材に設けたりする必要がある。例えば、図15に示すように、水通路構成部材116を、板金を凹凸状に折り曲げ形成して構成し、該構成部材116を外壁面材115の裏面側に取り付けることにより所定間隔で複数の水通路119を形成することが考えられる。
【0112】
(7)貯水槽31に、建物10内に通じる配管を接続し、貯水槽31の水を建物10内に供給可能としてもよい。例えば、貯水槽31に、トイレに通じる配管を接続することが考えられる。この場合、断水時等に貯水槽31の水を汚水処理に使用することが可能となる。
【0113】
また、貯水槽31の水を屋根部15上に散水する散水装置を設けてもよい。この場合、定期的に屋根部15上に散水を行うことで屋根部15の温度上昇を抑制でき、その結果冷房負荷の低減に寄与することができる。
【0114】
(8)外壁面材21の中空部23に、保水機能を有する保水部材を設けてもよい。例えば、保水部材として金属製のパイプを用い、そのパイプ内部に水を保有させることが考えられる。そして、保水部材を加熱及び冷却する装置を設け、この装置により保水部材を加熱又は冷却することで保水部材内部の水を加熱又は冷却し、ひいては外壁面材21の温度調整を行う。これにより、冷暖房の負荷軽減に寄与することができる。
【符号の説明】
【0115】
10…建物、11…下階部としての一階部分、12…上階部としての二階部分、16…屋内空間としての一階居室、17…屋内空間としての二階居室、21…外壁面材、23…通常通路としての中空通路、25…目地部としての縦目地部、29…火災時用水通路としての目地通路、30…水供給手段としての水供給系統、50…供給態様制御手段及び火災判定手段としてのコントローラ、51…外壁温検知手段としての外壁温センサ、52…屋内温検知手段としての居室温センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁面材には上下方向に延びる水通路が複数の箇所に設けられ、これら複数の水通路に水を流すべく当該複数の水通路に水を供給する水供給手段を備える建物の外壁流水システムであって、
前記外壁面材の温度を検知する外壁温検知手段と、
前記外壁温検知手段により検知された前記外壁面材の温度に基づいて、前記水供給手段による前記複数の水通路への水の供給態様を制御する供給態様制御手段と、
を備えることを特徴とする建物の外壁流水システム。
【請求項2】
前記建物において前記外壁面材により屋外と仕切られた屋内空間の温度を検知する屋内温検知手段を備え、
前記水供給手段は、前記複数の水通路に供給する水の量を調整する機能を有し、
前記供給態様制御手段は、前記外壁温検知手段により検知された前記外壁面材の温度と前記屋内温検知手段により検知された前記屋内空間の温度とに基づいて、前記水供給手段による前記複数の水通路への水の供給量を制御することを特徴とする請求項1に記載の建物の外壁流水システム。
【請求項3】
前記供給態様制御手段は、前記外壁温検知手段により検知された前記外壁面材の温度に基づいて、前記複数の水通路のうちいずれの水通路に水を供給するのかを前記水供給手段により切り替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の外壁流水システム。
【請求項4】
前記外壁温検知手段の検知結果に基づいて、前記建物の周りで火災が発生しているか否かを判定する火災判定手段を備え、
前記供給態様制御手段は、前記火災が発生していないと判定された場合と、前記火災が発生していると判定された場合とで、前記水供給手段による前記複数の水通路への水の供給態様を変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の外壁流水システム。
【請求項5】
前記水通路として、火災時にのみ水を流す火災時用水通路を備え、
前記火災時用水通路は、前記建物の外周部において前記外壁面材が存在していない部位に設けられ又は当該部位に通じており、
前記供給態様制御手段は、前記火災判定手段により火災が発生していると判定された場合に、少なくとも前記火災時用水通路へ水を供給するよう前記水供給手段を制御することを特徴とする請求項4に記載の建物の外壁流水システム。
【請求項6】
前記建物には、前記外壁面材が横並びに複数設けられ、
隣り合う外壁面材の間には目地部が形成されており、
前記火災時用水通路は、前記目地部により構成されていることを特徴とする請求項5に記載の建物の外壁流水システム。
【請求項7】
前記外壁面材には、屋内外を連通する開口部が設けられ、
前記火災時用水通路は、その下流側端部が前記開口部に通じており、前記火災時用水通路から前記開口部に水が供給されることを特徴とする請求項5又は6に記載の建物の外壁流水システム。
【請求項8】
前記水通路として、前記外壁面材の表面側に設けられた表面通路と、前記外壁面材の内部に設けられた内部通路とを備え、
前記供給態様制御手段は、前記火災判定手段により火災が発生していないと判定された場合には前記表面通路に水を供給し、前記火災判定手段により火災が発生していると判定された場合には前記表面通路及び前記内部通路の双方に水を供給するよう前記水供給手段を制御することを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の建物の外壁流水システム。
【請求項9】
前記建物は、上下に隣接する上階部と下階部とを有しており、
前記上階部及び前記下階部の各外壁面材にそれぞれ前記複数の水通路が設けられ、それら上階側の水通路と下階側の水通路とが通じており、
前記外壁温検知手段は、前記上階部の外壁面材の温度と前記下階部の外壁面材の温度とを検知するものであり、
前記水供給手段は、前記上階側の水通路と前記下階側の水通路とに個別に水を供給可能であり、
前記供給態様制御手段は、前記外壁温検知手段により検知された前記上階部の外壁面材の温度と前記下階部の外壁面材の温度とに基づいて、前記上階側の水通路及び前記下階側の水通路のうちいずれの水通路に水を供給するかを前記水供給手段により切り替えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の建物の外壁流水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41705(P2012−41705A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182687(P2010−182687)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】