説明

建物の換気構造

【課題】コストの増加を防ぐとともに、季節に応じて、快適な居住環境を形成することが可能な建物の換気構造を提供することを目的とする。
【解決手段】建物本体1の上下方向に沿ってタワー部10を貫通する風洞部20は、季節に応じて、この風洞部20と屋外との間で空気を流通させる空気流通手段と、この風洞部20内に取り込んだ空気を、各階2,3,4の床2b、3a,3b、4a,4b上にそれぞれ設けられる居住領域内へと導いて供給する給気手段と、この風洞部20と各居住領域とを仕切る壁20aにそれぞれ設けられるとともに、これら風洞部20と各居住領域とを連通する排気口26とを有していることを特徴とする建物の換気構造。これにより、夏場等の温暖な時季において建物内で涼を取ることができるとともに、冬場等の寒冷な時季において建物内の保温効果を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空調機器の発達に伴い、空調機器を利用して冷暖房を行うようになっている。そのため、住宅等の建物においては、空調効果を高めるために、屋内外の空気の出入りを遮断し、室内の熱が屋外に漏れないようにし、建物の内部の空調におけるエネルギー損失を少なくするために、室内の気密性および断熱性を高くした高気密・高断熱建物が利用されている。
一方、このような高気密・高断熱建物は、屋内外の空気の出入りを遮断しているために換気を十分に行う必要があった。そこで、高気密・高断熱建物の換気を行うために、建物内の部屋等、仕切られた複数の空間をまとめて換気するセントラル換気装置が利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−344253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、空調機器によって建物内の冷暖房を行うとコストが高いという問題がある。
このような空調機器によるコストの増加を軽減するために、夏場等の温暖な時季は、空調機器に代えて換気装置を使用し、この換気装置の動力を上げる方法が採られる場合がある。このような方法によれば、建物内の給排気における空気の量や速度が増すことになるので、空調機器を稼動せずとも建物内に涼を取ることが可能となる。
しかしながら、このように換気装置の動力を上げてしまうと、空調機器と同じくコスト高を招く場合がある。その上、換気装置の動力が上げられたままだと、冬場等の寒冷な時季においては、積極的に寒冷な外気を取り込むとともに建物内の暖気を排出することになってしまうので望ましくない。
【0005】
本発明の課題は、コストの増加を防ぐとともに、季節に応じて、快適な居住環境を形成することが可能な建物の換気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図6に示すように、複数階建てに構築される建物本体1の中央に、この建物本体1の上下方向に沿ってタワー部10が設けられており、この建物本体1の各階2,3,4の床2a,2b、3a,3b、4a,4bは、前記タワー部10を挟んで、該タワー部10の両側に配設されており、前記タワー部10は、前記建物本体1の上下方向に沿って該タワー部10を貫通する風洞部20を備えており、
前記風洞部20は、季節に応じて、この風洞部20と屋外との間で空気を流通させる空気流通手段と、
この風洞部20内に取り込んだ空気を、前記各階2,3,4の床2b、3a,3b、4a,4b上にそれぞれ設けられる居住領域内へと導いて供給する給気手段と、
この風洞部20と前記各居住領域とを仕切る壁20aにそれぞれ設けられるとともに、これら風洞部20と各居住領域とを連通する排気口26とを有していることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記空気流通手段によって前記風洞部20と屋外との間で空気を流通させて風洞部20内に空気を取り込み、この風洞部20内に取り込んだ空気を、前記給気手段によって前記各居住領域へと導いて供給し、これら各居住領域内の空気を、前記排気口26から風洞部20へと排出し、この排出された空気を前記空気流通手段によって屋外へと送り出すことができるので、建物内の換気を行うことができる。
したがって、換気装置の動力を上げることなく、建物内の給排気における空気の量や速度を増やすことができるので、コストの増加を防ぐことができるとともに、夏場等の温暖な時季において建物内で涼を取ることができる。
また、前記空気流通手段によって前記風洞部20と屋外との間で空気を流通させずに、前記風洞部20内の空気を、前記給気手段によって前記各居住領域へと導いて供給し、これら各居住領域内の空気を、前記排気口26から風洞部20へと排出することができるので、建物内で空気を循環させることができる。
したがって、屋外の寒冷な空気を建物内に取り込んでしまうことと、建物内の暖気を屋外へと排出してしまうことを防ぐことができるので、コストの増加を防ぐことができるとともに、冬場等の寒冷な時季において建物内の保温効果を高めることができる。
これによって、季節に応じて、快適な居住環境を形成することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図1〜図6に示すように、請求項1に記載の建物の換気構造において、
前記空気流通手段は、前記風洞部20の下端部に位置し、屋外から風洞部20へと空気を引き込む引き込みファン21と、
前記風洞部20の上端部に位置し、屋根1aから上方に突出して設けられるとともに、空気が通過する通気孔23aを有する換気塔22とを備えており、この換気塔22の通気孔23aは開閉可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記空気流通手段は、前記引き込みファン21と、前記換気塔22とを備えているので、前記引き込みファン21を稼動させることによって、屋外から風洞部20へと空気を取り込むことができ、この風洞部20内に取り込んだ空気を前記換気塔22の通気孔23aから屋外へと排出することができる。
さらに、前記引き込みファン21は、前記風洞部20の下端部に位置し、前記換気塔22は、前記風洞部20の上端に位置するので、前記風洞部20の下端部から上端部へと空気が移動することになり、前記風洞部20内に上昇気流を発生させることができる。そして、このような上昇気流が前記風洞部20内で発生することにより、前記排気口26から風洞部20へと排出される各居住領域の空気を上昇気流に乗せて、前記換気塔22の通気孔23aから屋外へと効率良く排出することができる。しかも、暖かい空気は上昇する性質を備えているので、特に夏場等の温暖な時季においては、さらに換気効率が向上することとなる。
また、前記換気塔22の通気孔23aは開閉可能に構成されているので、前記通気孔23aを開放することによって前記風洞部20内の空気を確実に排出でき、前記通気孔23aを閉塞することによって前記風洞部20内の上昇気流の発生を抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図1〜図5に示すように、請求項1または2に記載の建物の換気構造において、
前記給気手段は、前記風洞部20内に配管されるとともに、先端部が前記各居住領域に向かって開口する給気パイプ24と、
この給気パイプ24の上端部に設けられるとともに、前記風洞部20内の空気を前記給気パイプ24に取り込んでから前記各居住領域へと送り出す送風ファン25とを備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記給気手段は、前記給気パイプ24と、前記送風ファン25とを備えているので、前記送風ファン25を稼動させることで前記風洞部20内の空気を前記給気パイプ24に取り込むことができるとともに、この給気パイプ24を通じて前記各居住領域に向かって送り出すことができる。さらに、前記送風ファン25は、前記給気パイプ24の上端部に設けられているので、前記風洞部20内の上方に溜まる暖かい空気を、前記給気パイプ24に取り込みやすくなる。
これによって、冬場等の寒冷な時季において、前記排気口26から風洞部20へと排出される各居住領域の暖かい空気を、再び、各居住領域へと送り出すことができるので、建物内の保温効果をより高めることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図1〜図5に示すように、請求項3に記載の建物の換気構造において、
前記排気口26は、前記各居住領域の天井の近傍に配置されており、
前記給気パイプ24の先端部は、前記各居住領域の床2b、3a,3b、4a,4bの近傍に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記排気口26は、前記各居住領域の天井の近傍に配置されており、前記給気パイプ24の先端部は、前記各居住領域の床2b、3a,3b、4a,4bの近傍に配置されているので、例えば夏場等の温暖な時季において、前記各居住領域内に、下方から比較的冷たい空気を前記給気パイプ24を通じて取り込むことができ、暖められて上昇した空気を前記排気口26から前記風洞部20へと排出することができる。これによって、前記各居住領域内での換気のサイクルを形成できるので、各居住領域内を効率よく換気することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、請求項2〜4のいずれか一項に記載の建物の換気構造において、
前記各居住領域のうち、床面2aの高さが、地上面と略等しい高さに設定された居住領域は屋外に向かって開放されており、
前記引き込みファン21は、この居住領域と前記風洞部20とを仕切る壁20aに設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記各居住領域のうち、床面2aの高さが、地上面と略等しい高さに設定された居住領域は屋外に向かって開放されているので、屋外の空気を該居住領域へと取り込むことができる。また、該居住領域へと取り込まれた空気は、直射日光を受けにくくなるので、夏場等の温暖な時季であっても温度の低いものとなる。
また、このような比較的冷たい空気を前記引き込みファン25によって前記風洞部20内へと引き込むことができるので、前記風洞部20の下部を比較的冷たい空気で満たすことができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば図1および図2に示すように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の建物の換気構造において、
前記各居住領域のうち、少なくとも一つの居住領域の床下空間に蓄熱手段27が設けられており、
この床下空間と前記風洞部20とを仕切る壁20aには、前記風洞部20内の空気を前記床下空間に取り込むための通気口20bが形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、前記各居住領域のうち、少なくとも一つの居住領域の床下空間に蓄熱手段27が設けられており、前記壁20aに前記通気口20bが形成されているので、前記通気口20bを通じて前記風洞部20から前記床下空間へと取り込んだ空気の暖気または冷気を、前記蓄熱手段27に蓄熱することができる。
これによって、前記蓄熱手段27の上方に位置する居住領域の床の温度を上昇・下降させることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の建物の換気構造において、
前記建物本体1には、少なくとも屋外から該建物本体1内に取り込む空気と、建物本体1内から屋外へと排出する空気との熱交換を行う熱交換器を備える24時間換気型の空調設備が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、前記建物本体1には、24時間換気型の空調設備が設けられているので、この空調設備によって、前記建物本体1内の空調管理を行うことができる。また、前記風洞部20による換気機能・空気循環機能と組み合わせて利用することで、季節に応じて、より快適な居住環境を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、空気流通手段によって風洞部と屋外との間で空気を流通させて風洞部内に空気を取り込み、この風洞部内に取り込んだ空気を、給気手段によって各居住領域へと導いて供給し、これら各居住領域内の空気を、排気口から風洞部へと排出し、この排出された空気を空気流通手段によって屋外へと送り出すことができるので、建物内の換気を行うことができる。
したがって、換気装置の動力を上げることなく、建物内の給排気における空気の量や速度を増やすことができるので、コストの増加を防ぐことができるとともに、夏場等の温暖な時季において建物内で涼を取ることができる。
また、空気流通手段によって風洞部と屋外との間で空気を流通させずに、風洞部内の空気を、給気手段によって各居住領域へと導いて供給し、これら各居住領域内の空気を、排気口から風洞部へと排出することができるので、建物内で空気を循環させることができる。
したがって、屋外の寒冷な空気を建物内に取り込んでしまうことと、建物内の暖気を屋外へと排出してしまうことを防ぐことができるので、コストの増加を防ぐことができるとともに、冬場等の寒冷な時季において建物内の保温効果を高めることができる。
これによって、季節に応じて、快適な居住環境を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】夏場等の温暖な時季における本発明の建物の換気構造の一例を示す側断面図である。
【図2】冬場等の温暖な時季における本発明の建物の換気構造の一例を示す側断面図である。
【図3】建物の1階を示す平面図である。
【図4】建物の2階を示す平面図である。
【図5】建物の3階を示す平面図である。
【図6】換気塔付近の構造を示す側断面図である。
【図7】通気孔付近および開閉手段の一例を示す拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、図中の矢印Aは太陽光を表しているものとする。
図1は本発明に係る建物の換気構造の一例を示す側断面図である。
図1において符号1は、建物本体を示す。この建物本体1は、1階2と2階3と3階4とからなる3階建てに構築されており、この建物本体1の中央に、この建物本体1の上下方向に沿ってタワー部10が設けられている。
また、この建物本体1の各階2,3,4の床2a,2b、3a,3b、4a,4bは、前記タワー部10を挟んで、該タワー部10の両側に配設されており、これら床2a,2b,3a,3b,4a,4b上には、それぞれ居住領域が設けられている。
【0023】
また、これら各階2,3,4の双方の床2a,2b,3a,3b,4a,4bのうち、一方の床2a,3a,4aは、他方の床2b,3b,4bよりも高い位置に設けられている。すなわち、前記建物本体1にはスキップフロアの構造が採用されている。
【0024】
なお、前記建物本体1には、少なくとも屋外から該建物本体1内に取り込む空気と、建物本体1内から屋外へと排出する空気との熱交換を行う熱交換器を備える24時間換気型の空調設備が設けられている。
また、このような空調設備は、前記熱交換器だけでなく、吸湿機能を有し、吸湿後は乾燥した空気と接触することによって放湿して再生可能な調湿材が収容された調湿機と、前記熱交換器によって熱交換された外気を前記調湿機内の調湿材に接触させたうえで建物内に取り入れる取入れ経路と、前記熱交換器によって熱交換された室内空気を前記調湿機内の調湿材に接触させたうえで外部に放出する放出経路等とを備えていることが望ましい。
【0025】
一方、前記床2a上に設けられる居住領域は、図1〜図3に示すように、屋外に向かって開放されており、床面の高さが、地上面と略等しい高さに設定された土間床部30と、この土間床部30よりも若干高い位置に設定された玄関部31とを有しており、前記土間床部30はカーポートとして利用されている。
【0026】
前記床2b上に設けられる居住領域は、部屋32と、トイレ・洗面室・風呂を備える水回り室33として利用されている。なお、この1階2の他方の床2bは、地上面と略等しい高さの一方の床2aよりも低い位置に設けられるので、この床2b上に設けられる居住領域は、半地下の状態となっている。
【0027】
前記床3a上に設けられる居住領域は、図1および図2,図4に示すように、リビング34として利用されている。また、このリビング34を囲む壁のうち、前記タワー部10側の壁と対向する壁に開口部が形成されている。また、この開口部の外側はバルコニー35となっている。
【0028】
前記床3b上に設けられる居住領域は、トイレ36と、部屋37と、この部屋37から出入可能なウォークインクローゼット38として利用されている。また、部屋37を囲む壁のうち、前記タワー部10側の壁と対向する壁に開口部が形成されており、この開口部の外側はバルコニー39となっている。
【0029】
前記床4a上に設けられる居住領域は、図1および図2,図5に示すように、建物本体1の最上層に位置する部屋40として利用されている。また、この部屋40を囲む壁のうち、前記タワー部10側の壁と対向する壁に開口部が形成されており、この開口部の外側はバルコニー41となっている。
【0030】
前記床4b上に設けられる居住領域は、ダイニング42と、キッチン43として利用されている。また、これらダイニング42およびキッチン43を囲む壁のうち、前記タワー部10側の壁と対向する壁に開口部が形成されている。
また、前記建物本体1の上部に設けられる屋根1aには、前記床4b床に設けられる居住領域に面する天窓5が開閉可能に設けられている。
【0031】
なお、前記リビング34と、前記ダイニング42・キッチン43とは、前記床3aと床4bとの間に架け渡される階段12d(後述する)によって行き来が容易にできるようになっており、また、これらリビング34と、ダイニング42・キッチン43との間には、ドア等を設けない構成としている。
【0032】
一方、前記タワー部10は、図1〜図5に示すように、このタワー部10の上下方向に沿って積層するとともに、前記建物本体1の各階2,3,4の床2a,2b,3a,3b,4a,4b上にそれぞれ設けられる居住領域のうちの任意の居住領域に向かって開口する複数のユーティリティー部11,11…と、これら複数のユーティリティー部11,11…に隣接するとともに、前記建物本体1内の各床2a,2b,3a,3b,4a,4bをそれぞれ連絡する階段12a,12b,12c,12d,12eを有する階段室12と、前記建物本体1の上下方向に沿って前記タワー部10を貫通する風洞部20とを備えている。
【0033】
本実施の形態の複数のユーティリティー部11,11…は、図1〜図5に示すように、前記各居住領域分設けられており、各ユーティリティー部11,11が前記居住領域に向かって開口している。
これら複数のユーティリティー部11,11…は、前記各階2,3,4の双方の床2a,2b,3a,3b,4a,4bと連続する高さに一体的に設けられる仕切り床11aによって上下に仕切られており、この仕切り床11aによって前記複数のユーティリティー部11,11…を確実に上下に仕切ることができる。
また、前記仕切り床11a上と、この仕切り床11aと連続する床2a,2b,3a,3b,4a,4b上との間を確実に行き来することができる。
【0034】
また、本実施の形態の複数のユーティリティー部11,11…のうち、前記土間床部30側、前記リビング34側、前記部屋37側、前記キッチン43側にそれぞれ開口するユーティリティー部11,11…は、収納空間とされている。
また、この収納空間の天井高を0.9m〜1.4mとすることによって、この収納空間に人が入って、何とか作業ができる最低限の高さを確保できるとともに、建物本体1の高さを、隣接する建物に日照等の影響を及ぼさない程度に抑えることができる。
さらに、収納空間の天井高が0.9m〜1.4mであれば、通常の部屋の半分程度に抑えられることになるので、天井高が0.9m〜1.4mの収納空間とされたユーティリティー部11,11…を、前記各居住領域に確実に割り当てることができる。
【0035】
また、本実施の形態において、前記床4a上の部屋40に向かって開口するユーティリティー部11は、図5に示すように、勉強部屋とされている。
なお、この勉強部屋としてのユーティリティー部11は、前記部屋40だけでなく、前記ダイニング42・キッチン43および階段室12に向かって開口している。これによって、前記ダイニング42やキッチン43で作業をしながら、子どもの様子を見ることができたり、行き来が容易でコミュニケーションを取りやすいという利点がある。
また、この勉強部屋としてのユーティリティー部11の天井高は、本実施の形態の他のユーティリティー部11,11…の天井高よりも高く設定されており、前記部屋40の天井高と略等しい。
【0036】
前記階段室12は、上述のように前記建物本体1内の各床をそれぞれ連絡する階段12a,12b,12c,12d,12eを有している。
前記階段12aは、前記1階2の他方の床2bと、前記1階2の一方の床2aとの間に架設されており、前記階段12bは、前記1階2の一方の床2aと、前記2階3の他方の床3bとの間に架設されている。
また、前記階段12cは、前記2階3の他方の床3bと、前記2階3の一方の床3aとの間に架設されており、前記階段12dは、前記2階3の一方の床3aと、前記3階4の他方の床4bとの間に架設されている。
さらに、前記階段12eは、前記3階4の他方の床4bと、前記3階4の一方の床4aとの間に架設されている。
また、前記階段12eを除く階段12a,12b,12c,12dは、前記収納空間としてのユーティリティー部11,11…との間に壁が立設されて隔絶されている。
【0037】
前記風洞部20は、季節に応じて、この風洞部20と屋外との間で空気を流通させる空気流通手段と、この風洞部20内に取り込んだ空気を、前記各階2,3,4の床2b、3a,3b、4a,4b上にそれぞれ設けられる居住領域内へと導いて供給する給気手段と、この風洞部20と前記各居住領域とを仕切る壁20aにそれぞれ設けられるとともに、これら風洞部20と各居住領域とを連通する排気口26とを有している。
【0038】
前記空気流通手段は、前記風洞部20の下端部に位置し、屋外から風洞部20へと空気を引き込む引き込みファン21と、前記風洞部20の上端部に位置し、屋根1aから上方に突出して設けられるとともに、空気が通過する通気孔23aを有する換気塔22とを備えている。
【0039】
前記引き込みファン21は、図1〜図3に示すように、前記床2a上に設けられる居住領域と前記風洞部20とを仕切る壁20aに設けられている。また、この引き込みファン21は、少なくとも、前記床2a上に設けられる居住領域側から前記風洞部20へと空気を引き込み可能な方向に回転するように構成されている。
【0040】
また、この引き込みファン21は、その稼動をON・OFF操作できるようになっている。したがって、例えば、夏場等の温暖な時季においては、前記引き込みファン21の動力をONにして回転させて空気の引き込みができるようにし、冬場等の寒冷な時季においては、動力をOFFにして回転を停止させて前記風洞部20内に空気を引き込まないようにすることができる。
【0041】
さらに、この引き込みファン21には、この引き込みファン21によって引き込んだ空気を前記風洞部20の下端部付近へと誘導する誘導パイプ21aが設けられている
【0042】
なお、図示はしないが、この引き込みファン21には、屋外からのゴミや落ち葉、砂等の塵芥が風洞部20内に入らないようにカバーが設けられている。
【0043】
また、前記換気塔22は、図1,図2および図6に示すように、前記風洞部20と連続するパイプ状スペースを形成するものであり、上端部には換気塔カバー22aが設けられており、この換気塔カバー22aの上面にはガラス等の透光性を有する面材22bが設けられている。なお、この換気塔カバー22aの内部空間は屋外に連通し、空気が流通している。
また、前記換気塔カバー22aの上面に前記透光性面材22bが設けられることによって、この透光性面材22bを通じて、太陽光を換気塔22内へと差し込ませることができ、この換気塔22の内部および前記風洞部20の上部の空気を暖めることができるようになっている。このように、前記換気塔22の内部および前記風洞部20の上部の空気を暖めることができれば、暖かい空気が上昇する性質を利用して、前記風洞部20内に上昇気流を発生させることができ、換気効率を向上させることができる。
【0044】
さらに、前記換気塔22の上端部には、この換気塔22の上端部から前記換気塔カバー22aの透光性面材22bに向かって突出する筒状の換気筒23が設けられており、この換気筒23の上端部には、蓋部材23cが設けられている。この蓋部材23cは、前記換気筒23の上面開放部を覆う上面板部と、この上面板部の下面周縁部に沿って、かつ下方に向かって垂設される壁部とからなる。
そして、この換気筒23の上端部には、図6に示すように、前記換気塔22の内部空間と前記換気塔カバー22a内部空間とを連通する通気孔23aが形成されている。この通気孔23aは、前記蓋部材23cの壁部によって、前記換気塔カバー22a内に流入する風雨が前記通気孔23aを通じて前記風洞部20内に容易に入らない構成となっている。
【0045】
なお、前記通気孔23aは開閉可能に構成されている。すなわち、前記換気筒23は、前記通気孔23aを開閉する開閉手段23bを有している。
この開閉手段23bは、本実施の形態においては、図7に示すような回転可能な開閉ダンパーとするが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。また、このような開閉ダンパー等の開閉手段23は、この開閉手段23を駆動させる駆動手段と、この駆動手段を制御する制御手段等とを備えており、前記居住領域のいずれかに操作部を設けることによって、この居住領域内から操作可能に設定されているものとする。
【0046】
前記給気手段は、図1〜図5に示すように、前記風洞部20内に配管されるとともに、先端部が前記各居住領域に向かって開口する給気パイプ24と、この給気パイプ24の上端部に設けられるとともに、前記風洞部20内の空気を前記給気パイプ24に取り込んでから前記各居住領域へと送り出す送風ファン25とを備えている。
【0047】
前記給気パイプ24は、前記風洞部20の上下方向に沿って長尺な筒状のメインパイプ24aと、このメインパイプ24aから枝分かれするようにして設けられるサブパイプ24bとを有している。
また、前記メインパイプ24aは筒状に形成されているので、上面および下面が開放された状態となっている。
さらに、このメインパイプ24aは、上端部に、このメインパイプ24aと一体形成されるとともに、このメインパイプ24aの上端部から上方に向かうにつれて徐々に広がる逆円錐台形状の傾斜板部24cを備えている。この傾斜板部24cによって、前記風洞部20の上端部付近の空気を集めやすく、前記風洞部20の下部から上昇する空気の妨げともなりにくい。
【0048】
なお、前記メインパイプ24aは、例えば、このメインパイプ24aの外周面と、前記風洞部20の内周面との間に架け渡されて双方に固定される支持部材(図示せず)によって前記風洞部20内に保持されている。
この支持部材は、例えば前記メインパイプ24aに外挿されて固定されるリング状部材と、このリング状部材の外周面から突出し、その突出端部が前記風洞部20の内周面に固定される棒状部材とを備えているものとする。
また、このような支持部材は、前記メインパイプ20aの長さ方向に沿って、かつ所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0049】
前記サブパイプ24bは、前記複数の居住領域に対応できるように複数設けられており、その先端部が前記風洞部20と各居住領域とを仕切る壁20aに設けられている。つまり、前記壁20aには、前記サブパイプ24bの先端部が挿入される孔部がそれぞれ形成されていることになる。
また、これら孔部は前記各居住領域の床の近傍の高さに設けられている。このため、前記サブパイプ24bの先端部も、前記各居住領域の床の近傍に配置されている。
また、これらサブパイプ24bの先端部または前記孔部には通気可能なカバーを設けておき、外観性の低下を防ぐことが好ましい。
【0050】
前記送風ファン25は、前記メインパイプ24aの上端部の傾斜板部24c内に保持されている。すなわち、この送風ファン25は、図示はしないが、この送風ファン25を保持するとともに該送風ファン25を回転させるための駆動手段・回転機構等を有する筐体を備えており、この筐体は、この筐体の外周面と、前記メインパイプ24aの上端部の傾斜板部24cの内周面との間に架け渡されて双方に固定される支持部材によって、前記傾斜板部24c内に保持されている。
【0051】
また、この送風ファン25は、夏場等の温暖な時季においては、図1に示すように、前記メインパイプ24a内の空気を前記換気塔22へと送る方向、つまり下方から上方へと向かう方向に回転でき、冬場等の寒冷な時季においては、図2に示すように、前記風洞部20の上端部および換気塔22内の空気を前記メインパイプ24a内へと送る方向、つまり上方から下方へと向かう方向に回転できるようになっている。
【0052】
なお、この送風ファン25は、この送風ファン25の近傍に設けられる温度センサーで計測された周囲の温度に基づいて制御されるものであってもよい。また、この送風ファン25だけに限られず、前記引き込みファン21や、前記通気孔23aを開閉する開閉手段23bも、同様な構成を採用してもよいものとする。
さらに、これら送風ファン25と、引き込みファン21と、開閉手段23bとが互いに連動するように制御してもよいものとする。
【0053】
また、前記排気口26は、図1および図2に示すように、前記風洞部20と前記各居住領域とを仕切る壁20aに、前記各居住領域の天井の近傍に配置されるようにして設けられている。
この排気口26の居住領域側には、この排気口26の内部が見えないようにし、通気も可能なカバーを設けておき、外観性の低下を防ぐことが好ましい。
【0054】
また、前記各居住領域のうち、少なくとも一つの居住領域の床下空間に蓄熱手段27が設けられており、この床下空間と前記風洞部20とを仕切る壁20aには、前記風洞部20内の空気を前記床下空間に取り込むための通気口20bが形成されている。
本実施の形態においては、図1および図2に示すように、前記リビング34が設けられる床3aの床下空間に蓄熱手段27が設けられている。
【0055】
この蓄熱手段27としては、例えばコンクリート等が用いられており、冬場であれば室温が下がった夜間にも、昼間に蓄熱した熱が持続され、快適な居住環境を形成することができる。また、夏場であれば室温があがった昼間にも、夜間に蓄熱した冷気が持続され、快適な居住環境を形成することができる。
さらに、このように蓄熱手段27がコンクリート製のものであれば、前記床下空間の所定スペースに流動性のあるコンクリートを打設し硬化させるだけで、正確な形状の蓄熱層を簡単に施工できる。
【0056】
なお、このような蓄熱手段27は、前記リビング34が設けられる床3aの床下空間だけでなく、他の床の床下空間に設けてもよい。
例えば、本実施の形態においては、前記玄関部31が設けられる部分の床2aの床下空間と、前記部屋32が設けられる床2bの床下空間とに蓄熱手段27が設けられている。これら床2a,2bの床下空間に設けられる蓄熱手段27は一体的に連続して設けられている。
【0057】
次に、図面を参照して建物内の換気の態様を説明する。
本実施の形態の建物本体1には、上述のように24時間換気型の空調設備が設けられており、この空調設備が稼動している状態となっている。
【0058】
まず、夏場等の温暖な時季は、図1および図6,図7に示すように、前記通気孔23aを開閉する開閉手段23bは、前記通気孔23aを開放させた状態となっており、前記引き込みファン21は回転し、屋外から風洞部20へと空気を引き込んでいる状態となっており、前記送風ファン25は、前記メインパイプ24a内の空気を前記換気塔22へと送る方向、つまり下方から上方へと向かう方向に回転する状態となっている。
【0059】
したがって、前記風洞部20は、下端部から比較的冷たい空気を取り込み、上端部へと送ることができるようになっている。そして、風洞部20の上端部へと上昇する空気は、前記換気塔22の通気孔23aから屋外へと排出されることになり、前記風洞部20内は常に上昇気流が発生している状態となる。
【0060】
また、前記送風ファン25が前記メインパイプ24a内の空気を下方から上方へと送るので、前記風洞部20の下端部の比較的冷たい空気を、図1,図3〜図5に示すように、前記サブパイプ24bを通じて前記各居住領域へと供給することができる。
また、前記各居住領域へと供給された比較的冷たい空気は、各居住領域内で暖められて、各居住領域の天井付近に溜まり、そこから前記排気口26を通じて前記風洞部20へと排出される。
この風洞部20に排出された空気は、暖かい空気が上昇する性質を持っていることと、上述の上昇気流とによって前記風洞部20の上端部へと上昇して、前記通気孔23aから屋外に排出されるようになっている。
【0061】
さらに、前記引き込みファン21によって風洞部20内に取り込まれた空気の冷気は、前記床2a,2bの床下空間に設けられる蓄熱手段27と、前記床3aの床下空間に設けられる蓄熱手段27とによって蓄熱されており、前記床2a,2b,3aの上の各居住領域への冷房効果を発揮できるようになっている。特に、夜間は冷気を蓄熱しやすい。
【0062】
また、前記各居住領域に設けられた開口部や天窓5を開放させることによっても換気効率を向上させることができるようになっている。
【0063】
一方、冬場等の寒冷な時季は、図2および図6,図7に示すように、前記通気孔23aを開閉する開閉手段23bは、前記通気孔23aを閉塞させた状態となっており、前記引き込みファン21は停止しており、前記送風ファン25は、前記風洞部20の上端部および換気塔22内の空気を前記メインパイプ24a内へと送る方向、つまり上方から下方へと向かう方向に回転する状態となっている。
【0064】
したがって、前記風洞部20は、屋外と隔絶されており、前記送風ファン25のみ稼動している状態となっている。特に晴れた日の昼間は、前記風洞部20の上端部の空気は、下端部の空気に比べて暖まるため、暖気を前記各居住領域と蓄熱手段27,27とに送ることができる。夜間は、各居住領域内の暖かい空気と、前記蓄熱手段27,27から発せられる熱気とによって、前記風洞部20内の空気を暖めることができ、このような暖かい空気を前記送風ファン25によって前記メインパイプ24a内へと送ることができる。
なお、冬場等の寒冷な時季であっても、暖かい空気が上昇する性質を変わることがないので、風洞部20内の空気は暖かいものほど上昇することになる。
【0065】
また、前記送風ファン25が前記風洞部20の上端部および換気塔22内の空気を前記メインパイプ24a内へと送るので、前記風洞部20の上端部の暖かい空気を、図2〜図5に示すように、前記サブパイプ24bを通じて前記各居住領域へと供給することができる。
【0066】
また、前記各居住領域へと供給された暖かい空気は、そのまま各居住領域の天井付近に溜まるか、さらに暖められてから天井付近に溜まり、そこから前記排気口26を通じて前記風洞部20へと排出される。
そして、この風洞部20に排出された空気は前記風洞部20の上端部へと上昇し、前記送風ファン25によって再び各居住領域へと供給されるようになっている。
【0067】
なお、上述のように、前記建物本体1には24時間換気型の空調設備が設けられているので、本実施の形態の建物の換気構造のように、冬場等の寒冷な時季において建物本体1内の空気を、この建物本体1内で循環させていたとしても、確実に24時間換気を行うことができるようになっている。
【0068】
本実施の形態によれば、前記空気流通手段によって前記風洞部20と屋外との間で空気を流通させて風洞部20内に空気を取り込み、この風洞部20内に取り込んだ空気を、前記給気手段によって前記各居住領域へと導いて供給し、これら各居住領域内の空気を、前記排気口26から風洞部20へと排出し、この排出された空気を前記空気流通手段によって屋外へと送り出すことができるので、建物内の換気を行うことができる。
したがって、換気装置の動力を上げることなく、建物内の給排気における空気の量や速度を増やすことができるので、コストの増加を防ぐことができるとともに、夏場等の温暖な時季において建物内で涼を取ることができる。
また、前記空気流通手段によって前記風洞部20と屋外との間で空気を流通させずに、前記風洞部20内の空気を、前記給気手段によって前記各居住領域へと導いて供給し、これら各居住領域内の空気を、前記排気口26から風洞部20へと排出することができるので、建物内で空気を循環させることができる。
したがって、屋外の寒冷な空気を建物内に取り込んでしまうことと、建物内の暖気を屋外へと排出してしまうことを防ぐことができるので、コストの増加を防ぐことができるとともに、冬場等の寒冷な時季において建物内の保温効果を高めることができる。
これによって、季節に応じて、快適な居住環境を形成することが可能となる。
【0069】
また、前記空気流通手段は、前記引き込みファン21と、前記換気塔22とを備えているので、前記引き込みファン21を稼動させることによって、屋外から風洞部20へと空気を取り込むことができ、この風洞部20内に取り込んだ空気を前記換気塔22の通気孔23aから屋外へと排出することができる。
さらに、前記引き込みファン21は、前記風洞部20の下端部に位置し、前記換気塔22は、前記風洞部20の上端に位置するので、前記風洞部20の下端部から上端部へと空気が移動することになり、前記風洞部20内に上昇気流を発生させることができる。そして、このような上昇気流が前記風洞部20内で発生することにより、前記排気口26から風洞部20へと排出される各居住領域の空気を上昇気流に乗せて、前記換気塔22の通気孔23aから屋外へと効率良く排出することができる。しかも、暖かい空気は上昇する性質を備えているので、特に夏場等の温暖な時季においては、さらに換気効率が向上することとなる。
また、前記換気塔22の通気孔23aは開閉可能に構成されているので、前記通気孔23aを開放することによって前記風洞部20内の空気を確実に排出でき、前記通気孔23aを閉塞することによって前記風洞部20内の上昇気流の発生を抑制することができる。
【0070】
また、前記給気手段は、前記給気パイプ24と、前記送風ファン25とを備えているので、前記送風ファン25を稼動させることで前記風洞部20内の空気を前記給気パイプ24に取り込むことができるとともに、この給気パイプ24を通じて前記各居住領域に向かって送り出すことができる。さらに、前記送風ファン25は、前記給気パイプ24の上端部に設けられているので、前記風洞部20内の上方に溜まる暖かい空気を、前記給気パイプ24に取り込みやすくなる。
これによって、冬場等の寒冷な時季において、前記排気口26から風洞部20へと排出される各居住領域の暖かい空気を、再び、各居住領域へと送り出すことができるので、建物内の保温効果をより高めることができる。
【0071】
また、前記排気口26は、前記各居住領域の天井の近傍に配置されており、前記給気パイプ24の先端部は、前記各居住領域の床2b、3a,3b、4a,4bの近傍に配置されているので、例えば夏場等の温暖な時季において、前記各居住領域内に、下方から比較的冷たい空気を前記給気パイプ24を通じて取り込むことができ、暖められて上昇した空気を前記排気口26から前記風洞部20へと排出することができる。これによって、前記各居住領域内での換気のサイクルを形成できるので、各居住領域内を効率よく換気することができる。
【0072】
また、前記各居住領域のうち、床面2aの高さが、地上面と略等しい高さに設定された居住領域は屋外に向かって開放されているので、屋外の空気を該居住領域へと取り込むことができる。また、該居住領域へと取り込まれた空気は、直射日光を受けにくくなるので、夏場等の温暖な時季であっても温度の低いものとなる。
また、このような比較的冷たい空気を前記引き込みファン25によって前記風洞部20内へと引き込むことができるので、前記風洞部20の下部を比較的冷たい空気で満たすことができる。
【0073】
また、前記各居住領域のうち、少なくとも一つの居住領域の床下空間に蓄熱手段27が設けられており、前記壁20aに前記通気口20bが形成されているので、前記通気口20bを通じて前記風洞部20から前記床下空間へと取り込んだ空気の暖気または冷気を、前記蓄熱手段27に蓄熱することができる。
これによって、前記蓄熱手段27の上方に位置する居住領域の床の温度を上昇・下降させることができる。
【0074】
また、前記建物本体1には、24時間換気型の空調設備が設けられているので、この空調設備によって、前記建物本体1内の空調管理を行うことができる。また、前記風洞部20による換気機能・空気循環機能と組み合わせて利用することで、季節に応じて、より快適な居住環境を形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1 建物本体
10 タワー部
20 風洞部
21 引き込みファン
22 換気塔
24 給気パイプ
25 送風ファン
26 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階建てに構築される建物本体の中央に、この建物本体の上下方向に沿ってタワー部が設けられており、この建物本体の各階の床は、前記タワー部を挟んで、該タワー部の両側に配設されており、前記タワー部は、前記建物本体の上下方向に沿って該タワー部を貫通する風洞部を備えており、
前記風洞部は、季節に応じて、この風洞部と屋外との間で空気を流通させる空気流通手段と、
この風洞部内に取り込んだ空気を、前記各階の床上にそれぞれ設けられる居住領域内へと導いて供給する給気手段と、
この風洞部と前記各居住領域とを仕切る壁にそれぞれ設けられるとともに、これら風洞部と各居住領域とを連通する排気口とを有していることを特徴とする建物の換気構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物の換気構造において、
前記空気流通手段は、前記風洞部の下端部に位置し、屋外から風洞部へと空気を引き込む引き込みファンと、
前記風洞部の上端部に位置し、屋根から上方に突出して設けられるとともに、空気が通過する通気孔を有する換気塔とを備えており、この換気塔の通気孔は開閉可能に構成されていることを特徴とする建物の換気構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建物の換気構造において、
前記給気手段は、前記風洞部内に配管されるとともに、先端部が前記各居住領域に向かって開口する給気パイプと、
この給気パイプの上端部に設けられるとともに、前記風洞部内の空気を前記給気パイプに取り込んでから前記各居住領域へと送り出す送風ファンとを備えていることを特徴とする建物の換気構造。
【請求項4】
請求項3に記載の建物の換気構造において、
前記排気口は、前記各居住領域の天井の近傍に配置されており、
前記給気パイプの先端部は、前記各居住領域の床の近傍に配置されていることを特徴とする建物の換気構造。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の建物の換気構造において、
前記各居住領域のうち、床面の高さが、地上面と略等しい高さに設定された居住領域は屋外に向かって開放されており、
前記引き込みファンは、この居住領域と前記風洞部とを仕切る壁に設けられていることを特徴とする建物の換気構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の建物の換気構造において、
前記各居住領域のうち、少なくとも一つの居住領域の床下空間に蓄熱手段が設けられており、
この床下空間と前記風洞部とを仕切る壁には、前記風洞部内の空気を前記床下空間に取り込むための通気口が形成されていることを特徴とする建物の換気構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の建物の換気構造において、
前記建物本体には、少なくとも屋外から該建物本体内に取り込む空気と、建物本体内から屋外へと排出する空気との熱交換を行う熱交換器を備える24時間換気型の空調設備が設けられていることを特徴とする建物の換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−189949(P2010−189949A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36155(P2009−36155)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】