説明

建物構造

【課題】従来よりも低コストで耐震性及び免震性に優れ、結露やシロアリが発生しにくく、サビや腐りの原因となる雨水の停滞を無くし、火災の延焼を抑えることができ、更にメンテナンスも行いやすい住居構造を提供する。
【解決手段】本発明は、上記課題を解決するため、建物構造において、基礎を共通とする外構造と内構造からなり、前記外構造内に内構造を組立て、前記外構造と前記内構造を振動を伝達しない素材で連結したことを特徴とする建物構造の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば2階建の住宅においては、居住空間を作る柱、壁等に屋根を接続する方法で建築されており、重心が高くなりやすい構造であるため、地震等による倒壊を防ぐためにも柱、壁等に強度を持たせた構造であった。
【0003】
しかしながら、従来のような構造で建築される住宅に対して、十分な強度を保った耐震措置を行うことや、免震措置を行うことはコストがかかり、容易に施すことができるものではなかった。
【0004】
また、居間、寝室、台所等の居住空間を構成する柱を軸として両面から板、その他の部材を打ち付けて壁としているが、前記壁の中は空洞であったり、断熱材等が敷き詰められており、結露やシロアリが発生する可能性が高い場所であった。
【0005】
上記のような結露やシロアリは、住宅の耐久性を下げ、住宅自体の寿命を短くする危険性が高いため、定期的なメンテナンスを要する箇所であるが、このような場所は簡単にメンテナンスを行うことができる所ではなく、気づいたときには立て替えや大規模な修繕を余儀なくされる状況に陥っていることがあった。
【0006】
また、従来のような住宅構造は、火災の際に延焼しやすい構造であるため、火災が発生した場合は、全焼であることが多く、半焼で済んだとしても住み続けることは難しく、やはり立て替えを余儀なくされた。
【0007】
また、間取りにおいても二階以上に寝室を設けることが多く、各部屋の広さを大きくしたり、部屋数を増やすことで、必然的に一階部分の床面積が無駄に大きくなり、当然コストがかかるものであった。
【0008】
また、従来の住宅の屋根を平らな屋根や、勾配がゆるい屋根とすることがあるが、このような住宅の場合は雨水の停滞が起こりやすく、これによりサビや腐りが起こり、建物を劣化させる原因となっていた。
【0009】
そもそも、従来の技術には住宅の耐久性、寿命という点における対策が十分ではなく、寿命の短い建物が多かった。特に、プレハブ、戸建て、集合住宅等、賃貸住宅においては、一般的に25〜30年の寿命とされ、立て替えのために多くの費用を投じなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−62278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、従来よりも低コストで耐震性及び免震性に優れ、結露やシロアリが発生しにくく、サビや腐りの原因となる雨水の停滞を無くし、火災の延焼を抑えることができ、更にメンテナンスも行いやすい住居構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、建物構造において、基礎を共通とする外構造と内構造からなり、前記外構造内に内構造を組立て、前記外構造と前記内構造を振動を伝達しない素材で連結したことを特徴とする建物構造の構成とした。
【0013】
前記内構造を、一階建て若しくは複数階層からなり、最上階にあたる部屋の天井を無くした内構造とし、前記外構造の屋根を共用したことを特徴とする建物構造の構成とした。
【0014】
また、前記内構造の外側に廊下を設けて、前記廊下と前記外構造を振動を伝達しない素材で連結したことを特徴とする建物構造の構成とした。
【0015】
前記廊下を、幅広の廊下とし、前記内構造の外側に複数枚の可動壁及び可動天井を設けて、前記外構造の内側に前記可動壁を受ける凹部を形成した固定壁及び前記可動天井を受ける上下可動天井受けを設けて、前記可動壁と固定壁を連結し、前記可動天井と上下可動天井受けを前記可動天井を上下可動天井受けの間に間隙を設けた状態に配置して、前記廊下を独立空間として利用できる廊下としたことを特徴とする建物構造の構成とした。
【0016】
更に、前記外構造の屋根を、前記外構造の外壁側に一部張り出した屋根とし、前記屋根の張り出し部分下の基礎上且つ前記外構造の外側に浴室を備えて、前記浴室と外壁を振動を伝達しない素材で連結し、前記外壁の浴室を連結した部分に開口部を設けて外構造内と浴室内を行き来できるようにしたことを特徴とする建物構造の構成とした。
【0017】
加えて、前記内構造を、伝統工法、木造在来工法、木造2×4構造、木造金物構造、鉄骨構造、鉄筋コンクリート工法のいずれかの工法により組み立てた内構造とし、
前記外構造を、伝統工法、木造在来工法、木造2×4構造、木造金物構造、鉄骨構造、鉄筋コンクリート工法のいずれかの工法により組み立てた外構造としたことを特徴とする建物構造の構成とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記のような構成であるため、耐震性、免震性に優れ、地震による倒壊の可能性を下げることができる。
【0019】
また、結露やシロアリが発生しにくい構造であるため、柱や壁内を腐食される可能性が少ない。
【0020】
また、雨水が停滞しにくい構造であるため、サビや腐りが発生しにくい。
【0021】
また、火災による延焼を遅らせることができるため、火災が発生した場合であっても、全焼となる前に消火できる可能性があがり、火災により焼失した箇所や損傷を受けた箇所のみを修繕することで対応することができ、従来よりも低コストで対応することができる。
【0022】
更に、メンテナンスがしやすい構造であるため、定期的なメンテナンスを低コストで行うことができ、柱や壁内、基礎内等での修繕箇所を早期に発見し対応することができる。
【0023】
加えて、以上のような効果の相乗効果により従来の耐用年数よりも長期間に渡って安心して居住することができ、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明である住居構造の内部構成図である。
【図2】本発明である住居構造の内部構造図である。
【図3】本発明である住居構造の一部拡大斜視図である。
【図4】本発明である住居構造の一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1及び図2は本発明である住居構造の内部構成図、図3及び図4は本発明である住居構造の一部拡大斜視図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、本発明である建物構造は、基礎4を共通とする外構造2と内構造3からなり、前記外構造2内に内構造3を組立て、前記外構造2と前記内構造3を振動を伝達しない素材で連結した建物1である。
【0028】
前記振動を伝達しない素材とは、ゴム材等の弾性素材でできた連結部材13であり、このような素材で前記外構造2と内構造3を連結することで、地震の際に各構造2、3の振動を互いに影響し合わず、耐震性、免震性を向上させることができる。
【0029】
前記内構造3は、一階建て若しくは複数階層からなり、最上階6にあたる部屋の天井を無くした内構造3とし、前記外構造2の屋根2bを共用している。
【0030】
そのため、前記内構造3を構成する壁3a、床3b、内壁3e及び柱は、屋根の重さを考慮せずに、従来よりも軽量な材料で建築することができる。
【0031】
前述のように、最上階6においては天井が無く、屋根2bまでの距離があるため、開放感があり通風性に優れた空間となり、台所や居間が適している。
【0032】
また、前述のように最上階6と屋根2bに距離があるため、火災のときの延焼を遅らせることができる。
【0033】
また、図1及び図2に示すように、前記内構造3の外側に廊下7を設けて、前記廊下7と前記外構造2を振動を伝達しない素材で連結することにより、
前述のように台所や居間を配置した最上階6(図1、2においては二階)の広さと等しい内構造3の一階6a部分に廊下を配置する必要がなく、従来よりも広く個人の部屋を確保することができる。
【0034】
また、反対に従来と同程度の広さの個人の部屋を一階6aに配置したとしても、最上階6(図上では二階)に配置する台所や居間が従来よりも狭くなることはなく、従来よりも広い台所と居間を配置することができ、いずれにせよ省スペース化、低コスト化に繋がる。
【0035】
図1から図4に示すように、前記廊下7を幅広の廊下とし、前記内構造3の外側に複数枚の可動壁8及び可動天井9を設けて、前記外構造2の内側に前記可動壁8を受ける凹部10aを形成した固定壁10及び前記可動天井9を受ける上下可動天井受け11、12を設けて、前記可動壁8と固定壁10を連結し、前記可動天井9と上下可動天井受け11、12を前記可動天井9を上下可動天井受け11、12の間に間隙17を設けた状態に配置して、前記廊下7を独立空間として利用できる廊下7とした。
【0036】
図3及び図4に示すように、前記可動壁8は容易に開閉することができる。前記可動壁8を閉める際は、外構造2側に設置された固定壁10の凹部10aに可動壁8の端部を陥入される。また、前記可動壁8を使用しない場合は、内構造8の壁面に平行して収納することが出来るため邪魔にならない。但し、可動壁8の取付位置は図3、図4に示した位置に限定されるものではないため、蝶番を介して内建物3に固定する方法であってもよい。更にこの場合、固定壁10に凹部に代えて可動壁受けの段差を設けたり、他の方法で一時固定をできる構造とすればよい。
【0037】
前記可動天井9も容易に開閉することができる。前記可動天井9を使用する場合は、まず、屋根2b側に取り付けた上可動天井受け11を廊下7と平行となるように引き出し、次に前記上可動天井受け11の下側に来るように可動天井9を廊下7と平行になるように持ち上げ、最後に下可動天井受け12を廊下7と平行になるように持ち上げる。
【0038】
以上のように上下可動天井受け11、12の間隙17に可動天井9を挟むことにより、可動天井9の急な落下を避けることができる。また、上下可動天井受け11、12及び可動天井9を使用しない場合は、前記可動天井9を内構造3に折り畳み、前記上下可動天井受け11、12を屋根2bに折り畳むことができる。
【0039】
尚、前記可動天井9と内構造3の接続及び上下可動天井受け11、12と屋根2bの接続には蝶番による接続に加えて、油圧方式を取り入れることで急激な落板に危険性を回避できる。
【0040】
前記上下可動天井受け11、12と可動天井9は完全に接した状態ではなく、各部材間にも隙間がある。このようにすることで振動が伝わりにくく、地震の際の免震に役立つ。
【0041】
以上のように廊下7を可動壁8及び可動天井9で仕切ることにより一つの部屋として使用することができ、家族構成の変化やライフスタイルの変化にも柔軟に対応することができる。
【0042】
例えば、廊下7をプライバシーを重要視しない一時的な独立空間として使用したい場合は、前記可動壁8で仕切るだけで、天井部分は開放したままとすれば良いし、ある程度プライバシーを重要視する部屋として使用する場合は、前記可動壁8及び可動天井9で仕切ればよい。
【0043】
尚、符号8aはドアを示しており、上記のように廊下7を可動壁8で仕切った場合に使用するドアである。
【0044】
前記一階6a部分に配置される各部屋の扉や、廊下7を仕切る可動壁8のドア8aを二重又は嵌め込みの扉とすることで結露の発生を抑えることができ、壁として耐久性も維持できる。
【0045】
図1及び図2に示すように、前記外構造2では、屋根2bの面積を大きく取り、勾配を大きくすると共に、外壁2aを少なくした。
【0046】
前記のように屋根2bの勾配を大きくすることで雨水は停滞すること無く流れきり、停滞した雨水による建物のサビや腐りの発生は極めて起こりにくい。従って、そのような場所の劣化を抑えることができる。
【0047】
また、図1に示すように、屋根2bの棟木2eと棟包16のあたりに隙間を設け、更に屋根2bに換気装置15を取り付けることで、建物内の換気を行うことができ、快適な居住環境とすることができる。加えて、図示はしていないが、前記屋根2bの下方に窓を取り付けることで、多くの光を取り入れることができ、建物内を明るくすることができる。
【0048】
また、前記外構造2の屋根2bを、前記外構造2の外壁2a側に一部張り出した屋根2bとし、前記屋根2bの張り出し部分下の基礎4上且つ前記外構造の外側に浴室5を備えて、前記浴室5と外壁2を振動を伝達しない素材で連結し、前記外壁2aの浴室5を連結した部分に開口部2gを設けて外構造2内と浴室5内を行き来できるようにした。
【0049】
以上のように、湿気が最も多い浴室5を外構造2の外側且つ屋根2bの下側に配置することで、外構造2及び内構造3に不要な湿気を与えることが無く、また、浴室5のみを容易にメンテナンス、交換することができる。
【0050】
図1及び図2に示した建物1のように、一階6a部分の床を土地14よりも下げることで、土地14からの内構造3の高さを押さえ、外構造2の屋根2bの勾配を大きくしても建築基準法等に触れない建物1とすることがでる。
【0051】
尚、階段7aは、前記一階6a部分へ行き来するための階段であり、階段3dは内構造3の最上階6へ行き来するための階段である。このように、各階段を内構造3の外側、即ち廊下7部分に配置することで、内構造3を小さく収めることができ、結果的に内構造3の低コスト化を図ることができる。
【0052】
また、前記基礎4は、立ち上がり4aの高さを従来よりも高めにすることで空間4bを設けることができ、人が入って、基礎内のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0053】
尚、外構造2の外壁2aに設けた玄関扉2cから入った際に数段の階段7aを設けて通常の住居での一階にあたる部分を土地14の高さと異なる高さとし、階段7aの最下段の下側に床受け4cを設けた。前記最下段と床受け4cにおいても完全に連結固定されてはおらず、内構造3と外構造2の間で振動が伝わりにくくなるようにしてある。
【0054】
上記のように通常の住居の一階にあたる部分を土地14より高い位置にすることは本発明において限定した事項ではなく、同じ高さとしても構わない。但し、通常の住居の一階にあたる部分の床は外構造2と分離した構造でなければならない。
【0055】
上述のように各部を構成することで、建物1を従来の耐用年数よりも長く維持させることができ、しかも低コストで実現することができる。
【0056】
尚、前記内構造3は、伝統工法、木造在来工法、木造2×4構造、木造金物構造、鉄骨構造、鉄筋コンクリート工法のいずれの工法で組み立てた内構造3であってもよく、同じく、前記外構造2についても、伝統工法、木造在来工法、木造2×4構造、木造金物構造、鉄骨構造、鉄筋コンクリート工法のいずれの工法で組み立てた外構造2であってもよい。また、前記外構造2と内構造3を同じ工法で組み立てなくても構わない。
【0057】
更に、前述の建物内にコンデンサを設け、真空ポンプを用いて除湿を行うことで効果的に除湿を行い、結露を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明である住居構造は、耐震性、免震性に優れ、メンテナンスも容易であり、結露、シロアリ及び雨水の停滞によるサビ、腐りの発生を抑えることができるため、従来よりも長期に渡って安心して居住することができ、且つ、経済的であるため、建築業界に多大な貢献をもたらす。
【符号の説明】
【0059】
1 建物
2 外構造
2a 外壁
2b 屋根
2c 玄関扉
2d 開口部
2e 棟木
2f 母屋
2g 開口部
3 内構造
3a 壁
3b 床
3c 開口部
3d 階段
3e 内壁
4 基礎
4a 立ち上がり
4b 空間
4c 床受け
5 浴室構造
6 最上階
6a 一階
7 廊下
7a 階段
8 可動壁
8a ドア
9 可動天井
10 固定壁
10a 凹部
11 上可動天井受け
12 下可動天井受け
13 連結部材
14 土地
15 換気装置
16 棟包
17 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構造において、
基礎を共通とする外構造と内構造からなり、
前記外構造内に内構造を組立て、
前記外構造と前記内構造を振動を伝達しない素材で連結したことを特徴とする建物構造。
【請求項2】
前記内構造を、
一階建て若しくは複数階層からなり
最上階にあたる部屋の天井を無くした内構造とし、
前記外構造の屋根を共用したことを特徴とする請求項1に記載の建物構造。
【請求項3】
前記内構造の外側に廊下を設けて、
前記廊下と前記外構造を振動を伝達しない素材で連結したことを特徴とする請求項1または請求項2項に記載の建物構造。
【請求項4】
前記廊下を、
前記内構造の外側に複数枚の可動壁及び可動天井を設けて、
前記外構造の内側に前記可動壁を受ける凹部を形成した固定壁及び前記可動天井を受ける上下可動天井受けを設けて、
前記可動壁と固定壁を連結し、前記可動天井と上下可動天井受けを前記可動天井を上下可動天井受けの間に間隙を設けた状態に配置して、
前記廊下を独立空間として利用できる廊下としたことを特徴とする請求項3に記載の建物構造。
【請求項5】
前記外構造の屋根を、
前記外構造の外壁側に一部張り出した屋根とし、
前記屋根の張り出し部分下の基礎上且つ前記外構造の外側に浴室を備えて、
前記浴室と外壁を振動を伝達しない素材で連結し、
前記外壁の浴室を連結した部分に開口部を設けて外構造内と浴室内を行き来できるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項4項のいずれか1項に記載の建物構造。
【請求項6】
前記内構造を、
木造在来工法、伝統工法、木造2×4構造、木造金物構造、鉄骨構造、鉄筋コンクリート工法のいずれかの工法により組み立てた内構造とし、
前記外構造を、
木造在来工法、伝統工法、木造2×4構造、木造金物構造、鉄骨構造、鉄筋コンクリート工法のいずれかの工法により組み立てた外構造とした
ことを特徴とする請求項1項から請求項5項のいずれか1項に記載の建物構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−162909(P2012−162909A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23759(P2011−23759)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(310010232)
【Fターム(参考)】