説明

建物設計支援装置及び建物設計支援方法

【課題】複数の作業に対応する複数の設計アプリケーションを用いて行われる建物設計の効率を向上させる設計支援技術を提供する。
【解決手段】建物設計支援装置は、複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する手段と、複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する手段と、複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得する手段と、上記格納された情報に基づいて、当該取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物設計を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工務店や住宅メーカ等のような建物の設計者は、複数の設計アプリケーションを利用して建物の設計を行う。各設計アプリケーションは、各作業工程についてそれぞれ提供される専門性の高いツールである。
【0003】
このような建物設計を支援する技術が、下記特許文献1で提案されている。下記特許文献1によれば、設計項目毎の単位プログラムの集合として全体システムを構築し、建物の企画設計と生産設計との実際に応じた最小の入力で生産設計が能率良く行える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−190466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような複数の設計アプリケーションは、設計目的となる建物に関するデータ(以降、物件データとも表記する)を共用する。例えば、或る設計アプリケーションは、他の設計アプリケーションにより編集されたデータを使って処理を実行し、設計図書等のような成果物を出力する。このような環境では、建物設計に携わる担当者は、各設計アプリケーションに入力されているデータ、各設計アプリケーションで実施された作業、各設計アプリケーションから出力された結果物等の管理を正確に行う必要がある。
【0006】
建物設計では、後工程になればなる程、情報が具体化するため、設計変更等のような作業工程の後戻りが多くなる傾向にある。よって、設計担当者は、成果物がいつの時点の物件データで出力されたのか、どのファイルが最新の物件データなのか、最新の物件データにはいつの時点の設計情報が反映されているのか等のような情報を管理する必要がある。例えば、設計変更に応じて物件データの修正が生じた場合、設計担当者は、その修正が反映された物件データを特定し、かつ、次にすべき作業工程を特定する必要がある。
【0007】
しかしながら、このような物件データと各設計アプリケーションで実施された作業との関連の管理は、担当者に委ねられているのが現状である。これにより、担当者の負担を増加させ、設計作業の効率を低下させる原因となっていた。
【0008】
本発明の目的は、複数の作業に対応する複数の設計アプリケーションを用いて行われる建物設計の効率を向上させる設計支援技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各態様では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0010】
第1の態様は、建物設計支援装置に関する。第1の態様に係る建物設計支援装置は、複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、上記物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を各設計アプリケーションに渡し、各設計アプリケーションで編集されたデータを上記物件データ格納手段に反映させるデータ制御手段と、複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得する取得手段と、上記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、上記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する作業制御手段と、を備える。
【0011】
第2の態様は、複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、を有するコンピュータにより実行される建物設計支援方法に関する。第2の態様に係る建物設計支援方法は、物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を各設計アプリケーションに渡し、各設計アプリケーションで編集されたデータを物件データ格納手段に反映させ、複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得し、上記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、上記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定することを含む。
【0012】
なお、本発明の別態様としては、上記第1の態様に含まれる構成をコンピュータに実現させるプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記各態様によれば、複数の作業に対応する複数の設計アプリケーションを用いて行われる建物設計の効率を向上させる設計支援技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における住宅設計支援装置の構成例を概念的に示すブロック図。
【図2】作業マスタテーブルの例を示す図。
【図3】作業管理テーブルの例を示す図。
【図4】依存関係テーブルの例を示す図。
【図5】住宅設計アプリケーションの実行制御時における、第1実施形態の住宅設計支援装置の動作例を示すフローチャート。
【図6】住宅設計アプリケーションで実施された作業終了時における、第1実施形態の住宅設計支援装置の動作例を示すフローチャート。
【図7】住宅設計工程管理の画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態の構成に限定されない。
【0016】
本実施形態に係る建物設計支援装置は、複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、この物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を各設計アプリケーションに渡し、各設計アプリケーションで編集されたデータを物件データ格納手段に反映させるデータ制御手段と、複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得する取得手段と、上記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する作業制御手段と、を備える。
【0017】
上記建物設計支援装置では、物件データの必要な部分が各設計アプリケーションにそれぞれ渡され、各設計アプリケーションで編集されたデータがその物件データに反映される。即ち、本実施形態における建物設計支援装置では、複数の設計アプリケーションで共用される物件データが集中管理されるため、建物の設計担当者によるデータの改版管理の負担をなくすことができる。また、当該設計担当者による、各設計アプリケーションにいつの時点のデータが読み込まれているか等の管理負担もなくすことができる。
【0018】
更に、本実施形態における建物設計支援装置では、各設計アプリケーションで実施される各作業の作業状態がそれぞれ管理され、作業間の依存関係が管理され、これら管理情報に基づいて、或る設計アプリケーションを実行すべきか否か、即ち、或る作業を実施できるか否かが判定される。
【0019】
従って、本実施形態によれば、当該設計担当者は、全体の作業工程上、次にすべき作業を容易に認識することができる。更に、本実施形態によれば、本来後戻りして実施すべきであった作業をすることなく次工程の作業をしてしまったといった作業の過誤を防止することができる。結果、本実施形態における建物設計支援装置によれば、建物の設計担当者の作業負担を軽減させることができ、ひいては、設計作業の効率を向上させることができる。
【0020】
以下、上述の実施形態について更に詳細を説明する。以下の実施形態は、上述の建物設計支援装置を住宅設計に適用した場合の例である。住宅設計では、設計変更等のような作業工程の後戻りが規模の大きい建物より多くなる傾向にあるため、以下の実施形態における住宅設計支援装置は、より顕著な効果を奏する。なお、本実施形態は、適用範囲を住宅設計のみに制限しない。
【0021】
[第1実施形態]
〔装置構成〕
図1は、第1実施形態における住宅設計支援装置(以降、単に支援装置とも表記する)10の構成例を概念的に示すブロック図である。第1実施形態における支援装置10は、いわゆるコンピュータであり、例えば、バス5で相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)1、メモリ2、入出力インタフェース(I/F)3等を有する。メモリ2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク、可搬型記憶媒体等である。入出力I/F3は、ディスプレイ等の表示装置7や、キーボード等の入力装置8等のようなユーザインタフェース装置と接続される。なお、支援装置10のハードウェア構成は限定されない。
【0022】
支援装置10は、CPU1によりメモリ2に記憶されるプログラムが実行されることで以下のような複数の処理部を実現する。支援装置10は、複数の住宅設計アプリケーション30(#1)、30(#2)、30(#m)(mは正の整数)、住宅設計インタフェース部20、共通物件データベース(DB)15、作業マスタテーブル27、作業管理テーブル28、依存関係テーブル29等を有する。なお、共通物件DB15、作業マスタテーブル27、作業管理テーブル28及び依存関係テーブル29は、メモリ2上で実現される。
【0023】
複数の住宅設計アプリケーション30(#1)、30(#2)、30(#m)は、住宅設計のための各作業で利用されるアプリケーションである。以降、これらは、区別する必要のある場合を除いて、住宅設計アプリケーション30又は住宅設計アプリ30と総称される。例えば、住宅設計アプリ30は、CAD(Computer Aided Design)のような住宅設計図の編集のためのアプリケーション、意匠チェックのためのアプリケーション、構造計算のためのアプリケーション、部材抽出のためのアプリケーション、見積書作成のためのアプリケーションを含む。
【0024】
住宅設計アプリ30は、市販のアプリケーションがインストールされたものであってもよいし、支援装置10で独自に提供されるソフトウェア構成要素であってもよい。ソフトウェア構成要素とは、プログラムがCPU1で実行されることにより実現される、タスク、プロセス、関数のようなソフトウェア部品(断片)を意味する。また、本実施形態は、このような住宅設計アプリ30の機能及び数を限定しない。
【0025】
共通物件DB15は、設計目的となる建物に関するデータである物件データを格納する。共通物件DB15は、物件データ格納手段と呼ぶこともできる。当該物件データには、例えば、CADデータ等のような設計図面データ、仕様情報、部材情報、発注情報、納品情報等のような建物モデルに関する設計情報や、仕様書、設計図、見積書、発注書、納品書等のような成果物に関する情報などが含まれる。なお、本実施形態は、このような物件データ自体の内容を限定しない。
【0026】
作業マスタテーブル27は、住宅設計で実施される複数の作業が予め登録されるテーブルである。図2は、作業マスタテーブル27の例を示す図である。作業マスタテーブル27には、図2の例に示すように、各作業について、作業を識別するための作業コード、作業名、登録日時、登録ユーザ、更新日時、更新ユーザ、適用開始日、適用終了日等がそれぞれ格納される。ここで、登録ユーザは、その作業を新たに登録した者を示し、登録日時は、その作業が登録された日時を示す。更新ユーザは、その作業について作業名等を修正した者を示し、更新日時は、その修正された日時を示す。適用開始日は、その作業に関し本実施形態における支援の適用を開始日を示し、適用終了日は、その作業に関し当該支援の適用を終了する日を示す。
【0027】
図2の例では、設計図編集、意匠チェック、構造計算、部材抽出、見積書作成といった作業が登録されている。以降、住宅設計で実施される作業として、図2の例の5つの作業が存在するものと仮定して説明する。設計図編集とは、間取り等の設計を行い、住宅の設計図を作成する作業を示す。意匠チェックとは、設計図編集により行われた住宅設計に含まれる意匠が適正であるか等を確認する作業を示す。構造計算とは、住宅の安定性や耐久性等の基準を満たしているか否かを判定するために、固定荷重、地震荷重等のような要素を計算する作業を示す。部材抽出とは、設計図が示す住宅モデルを形成する各部材、各部材の数を抽出する作業を示す。見積書作成とは、抽出された部材及びその数などに応じて住宅建築費用の見積書を作成する作業を示す。なお、本実施形態で扱われる作業は、これらに限定されない。
【0028】
作業管理テーブル28は、各作業についての作業状態を管理するためのテーブルであり、作業情報格納手段と呼ぶこともできる。図3は、作業管理テーブル28の例を示す図である。作業管理テーブル28には、各作業について、作業コード、更新ユーザ、更新日時、ステータス等がそれぞれ格納される。作業コードは、作業マスタテーブル27(図2参照)に格納される作業コードと同様である。更新ユーザは、その作業の状態を更新するトリガとなる作業を実施した者を示し、更新日時は、その作業の状態の更新を行った日時を示す。
【0029】
作業状態には、作業の未実施、作業の結果が正常であったことを示す正常完了、及び、作業の結果が異常であったことを示す異常完了のいずれか1つが設定される。例えば、意匠チェックにおいて異常と判定された場合には、意匠チェックの作業状態には異常完了が設定され、意匠チェックにおいて正常と判定された場合には、意匠チェックの作業状態には正常完了が設定される。
【0030】
依存関係テーブル29は、作業間の依存関係の情報を格納する。依存関係テーブル29は、依存関係格納手段と呼ぶこともできる。図4は、依存関係テーブル29の例を示す図である。図4の例に示すように、依存関係テーブル29には、依存関係にある作業のペア毎に、その依存関係に対応する操作を示す情報等がそれぞれ格納される。具体的には、依存関係テーブル29には、作業コード、依存関係作業コード、作業状態操作コード、登録日時が関連付けられて格納される。作業コード及び依存関係作業コードには、相互に依存関係にある各作業の作業コードであって、作業マスタテーブル27(図2参照)に格納される作業コードのいずれか1つがそれぞれ設定される。
【0031】
作業状態操作コードとは、作業コードフィールド及び依存関係コードフィールドに格納される各作業コードで特定される作業のいずれか一方が実施された場合に、他方の作業の状態情報をどのように操作するのかを示す情報である。本実施形態では、この作業状態の操作の種類として、図4に示す4つの操作が管理される。なお、本実施形態は、この作業状態操作コードの数を限定しない。
【0032】
図4の例で利用される作業状態操作コードは、以下の4つのコードのいずれか1つが設定される。コード(000001)は、作業コードフィールド及び依存関係作業フィールドに設定される作業コードにより特定される作業が完了した場合に、作業の結果に応じてその作業の状態を正常完了か異常完了かを区別して設定する必要があることを示す。これにより、コード(000001)が依存関係作業フィールドに設定されるレコードでは、作業コードフィールド及び依存関係作業コードフィールドには同じ作業コードが設定される。言い換えれば、作業状態を正常完了と異常完了とで区別する必要のある作業が存在する場合には、その作業の作業コードが作業コードフィールド及び依存関係作業コードフィールドの両方に設定され、かつ、作業状態操作コードフィールドには、コード(000001)が設定される。
【0033】
コード(000002)は、依存関係作業コードフィールドに設定された作業コードが示す作業が実施された場合に、作業コードフィールドに設定された作業コードが示す作業の状態を未実施に変更する必要があることを示す。
【0034】
コード(000003)及び(000004)は、作業コードフィールドに設定された作業コードが示す作業が実施されるにあたり、依存関係作業コードフィールドに設定された作業コードが示す作業の状態が正常完了である必要があることを示す。コード(000003)は、必須条件であることを示し、コード(000004)は、コード(000003)よりも要求度合が低く、必要条件であることを示す。これにより、第1の作業の実施が第2の作業の実施状態に作業工程上、依存するといった依存関係には、コード(000002)、コード(000003)、コード(000004)のいずれか1つの作業状態操作コードが設定される。
【0035】
住宅設計インタフェース部20は、データ制御部21、取得部22、作業制御部23等を含み、住宅設計アプリ30と、各データ(共通物件DB15、作業マスタテーブル27、作業管理テーブル28及び依存関係テーブル29)との間の制御を行う。
【0036】
データ制御部21は、共通物件DB15に格納される物件データの中の必要な部分を各住宅設計アプリ30にそれぞれ渡し、各住宅設計アプリ30で編集されたデータを共通物件DB15に反映させる。例えば、データ制御部21は、必要な部分データを含むファイルを介して各住宅設計アプリ30に所望のデータを渡す。
【0037】
取得部22は、複数の住宅設計アプリ30のいずれか1つに対応する作業コードを取得し、この作業コードを作業制御部23に送る。ここで、各住宅設計アプリ30と、それにより実施される作業の作業コードとの対応付けは、取得部22により予め保持されていてもよいし、対象となる住宅設計アプリ30から取得されてもよい。例えば、表示装置7に表示されるメニューがユーザ(設計者)により入力装置8を介して操作されることで、所望の住宅設計アプリ30が実行された場合、取得部22は、その実行された住宅設計アプリ30の識別情報を受け、この識別情報に基づいて、予め保持されている対応付け情報から作業コードを抽出する。
【0038】
また、取得部22は、複数の住宅設計アプリ30のいずれか1つが実行されることにより実施された作業の完了状態を取得する。取得部22は、作業の完了状態とその作業コードを作業制御部23に送る。作業の完了状態は、住宅設計アプリ30が終了されるタイミングで、その住宅設計アプリ30から直接取得されてもよいし、住宅設計アプリ30が終了されるタイミングで更新されるファイルを介して、取得されてもよい。正常完了と異常完了とが区別される住宅設計アプリ30により実施された作業については、正常完了と異常完了とが区別可能な形で当該完了状態が取得される。
【0039】
作業制御部23は、作業管理テーブル28及び依存関係テーブル29に格納される情報に基づいて、取得部22から送られる作業コードが示す作業を実行してもよいか否かを判定する。この判定は、即ち、その住宅設計アプリ30に対応する作業を実施してよいか否かの判定と同意である。更に、作業制御部23は、作業管理テーブル28及び依存関係テーブル29に格納される情報に基づいて、取得部22から送られる作業コードが示す作業及びこの作業と依存関係にある他の作業の作業状態を更新する。作業制御部23の具体的処理については、動作例の項において詳述する。
【0040】
作業制御部23は、判定結果を住宅設計インタフェース部20に送る。住宅設計インタフェース部20は、作業制御部23から送られる判定結果に基づいて、対象の住宅設計アプリ30の実行を制御する。また、住宅設計インタフェース部20は、作業制御部23から警告の表示を依頼された場合には、警告を表示装置7に表示させるための画面データを生成し、表示装置7に送る。
【0041】
〔動作例〕
図5は、住宅設計アプリ30の実行制御時における、第1実施形態の支援装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0042】
第1実施形態における支援装置10では、取得部22が、1つの住宅設計アプリ30に対応する作業コードを取得する(S51)。例えば、この住宅設計アプリ30は、ユーザが表示装置7に表示される画面を操作することにより実行を望んだアプリケーションである。取得部22は、取得された作業コードを作業制御部23に送る。以降、処理(S51)において取得部22により取得された作業コードが示す作業を現作業と表記する。
【0043】
作業制御部23は、依存関係テーブル29から、現作業の実施と依存関係にある他の作業、及び、その依存関係に対応する依存関係コードを抽出する(S52)。具体的には、作業制御部23は、依存関係テーブル29から、作業コードフィールドに現作業の作業コードが設定されており、かつ、依存関係作業コードフィールドに現作業以外の作業コードが設定されており、かつ、作業状態操作コードにコード(000003)又は(000004)が設定されているレコードを抽出する(S52)。作業状態操作コード(000003)及び(000004)は、上述したように、作業の実施に際し完了が前提の作業が存在することを示す。
【0044】
作業制御部23は、抽出されたレコードが存在する場合には(S53;YES)、次に、現作業と依存関係にある他の作業の作業状態を作業管理テーブル28から抽出する(S54)。具体的には、作業制御部23は、当該抽出されたレコードの依存関係作業コードフィールドに設定されている作業コードの作業状態情報を作業管理テーブル28から抽出する(S54)。
【0045】
作業制御部23は、作業管理テーブル28から抽出された他の作業の作業状態が正常完了を示すか否かを判定する(S55)。作業制御部23は、他の作業の作業状態が正常完了を示す場合には(S55;YES)、現作業を実施することができると判定する(S56)。言い換えれば、この判定は、現作業に対応する上記住宅設計アプリ30を実行することができることを意味する。
【0046】
また、作業制御部23は、上述の処理(S52)において該当するレコードが抽出されなかった場合にも(S53;NO)、同様に、現作業と依存関係にある他の作業が存在しないため、現作業を実施することができると判定する(S56)。
【0047】
一方、作業制御部23は、他の作業の作業状態が正常完了を示さない場合には(S55;NO)、更に、依存関係テーブル29から抽出されたレコードの作業状態操作コードがコード(000003)を示すか否かを判定する(S57)。この判定は、作業状態操作コードが示す内容が必須条件か否かを判定することと同意である。
【0048】
作業制御部23は、作業状態操作コードがコード(000003)を示す場合には(S57;YES)、現作業を実施することができないと判定する(S58)。言い換えれば、この判定は、現作業に対応する上記住宅設計アプリ30を実行することができないことを意味する。
【0049】
作業制御部23は、作業状態操作コードがコード(000003)を示さない、即ち、作業状態操作コードがコード(000004)を示す場合には(S57;NO)、警告の出力を条件として、現作業を実施することができると判定する(S56)。
【0050】
作業制御部23は、上述のような判定結果を住宅設計インタフェース部20に渡す。このとき、作業制御部23は、警告の出力が条件とされる場合には、その旨も判定結果と共に住宅設計インタフェース部20に送る。
【0051】
作業制御部23から送られる情報に基づいて、住宅設計インタフェース部20は、対象の住宅設計アプリ30の実行を制御する。例えば、住宅設計インタフェース部20は、実施可能であることの通知を受けた場合には、対象の住宅設計アプリ30を実行する。また、住宅設計インタフェース部20は、警告の出力も必要であることの通知を受けた場合には、警告を表示させるための画面データを生成することで、その警告を表示装置7に表示させた後、対象の住宅設計アプリ30を実行する。また、住宅設計インタフェース部20は、実行不可であることの通知を受けた場合には、対象の住宅設計アプリ30を実行できないことを表示装置7に表示させる。
【0052】
依存関係テーブル29が図4のように設定される場合には、第1実施形態における支援装置10は、次のように動作する。即ち、構造計算を実施する住宅設計アプリ30は、意匠チェックの作業状態が異常完了又は未実施を示す場合には実行されず、部材抽出を実施する住宅設計アプリ30は、意匠チェックの作業状態が未実施又は異常完了を示す場合には、警告が出力されると共に実行される。
【0053】
なお、図5の動作例では、処理(S52)で抽出されたレコードが複数存在する場合の動作が明記されていないが、複数レコードが依存関係テーブル29から抽出された場合であっても、第1実施形態における支援装置10は適切に対処可能である。即ち、作業制御部23は、処理(S55)において、抽出された複数のレコードで特定される複数の他の作業の中に、作業状態が正常完了でない作業が存在するか否かを判定する。作業制御部23は、作業状態が正常完了でない他の作業が1つでも存在する場合には、当該他の作業に対応する作業状態操作コードがコード(000003)か否かを判定するようにすればよい(S57)。他の処理については、上述したとおりである。
【0054】
図6は、住宅設計アプリ30で実施された作業終了時における、第1実施形態の支援装置10の動作例を示すフローチャートである。
【0055】
第1実施形態における支援装置10では、取得部22が、複数の住宅設計アプリ30のいずれか1つで実施された作業の完了状態をその作業コードと共に取得する(S61)。この処理は、対象の住宅設計アプリ30の実行終了に連動してもよいし、その実行終了とは別に、作業終了に連動してもよい。例えば、対象の住宅設計アプリ30が、作業の終了を検知し、この検知のタイミングで、その住宅設計アプリ30を識別するためのIDと作業完了状態とを含むファイルを出力する。取得部22は、このファイルから対象の住宅設計アプリ30のIDと作業完了状態とを取得し、自身で保持する情報に基づいて、住宅設計アプリ30のIDに対応する作業コードを取得する。以降、処理(S61)において取得部22により取得された作業コードが示す作業を現作業と表記する。取得部22は、このように取得された作業完了状態及び現作業の作業コードを作業制御部23に送る。
【0056】
作業制御部23は、依存関係テーブル29から、現作業に関連する作業状態操作コード、及び、現作業の実施と依存関係にある他の作業を抽出する(S62)。具体的には、作業制御部23は、依存関係テーブル29から、依存関係作業コードフィールドに現作業の作業コードが設定されており、かつ、作業状態操作コードにコード(000002)が設定されているレコード、及び、作業コードフィールドに現作業の作業コードが設定されており、かつ、作業状態操作コードにコード(000001)が設定されているレコードを抽出する(S62)。
【0057】
作業制御部23は、抽出されたレコードが存在する場合には(S63;YES)、該当レコードの作業状態操作コードがコード(000002)か否かを判定する(S64)。作業制御部23は、当該作業状態操作コードがコード(000002)であると判定すると(S64;YES)、当該抽出されたレコードの作業コードフィールドに設定されている作業コードに関し、作業管理テーブル28に格納される作業状態を未実施に変更する(S65)。図4の例によれば、意匠チェックが正常完了した後、再度、設計図編集の作業が行われた場合には、意匠チェックの作業状態が未実施に変更される。
【0058】
作業制御部23は、当該作業状態操作コードがコード(000002)でない、即ち、コード(000001)である場合(S64;NO)、処理(S61)で取得された完了状態が異常を示すか否かを判定する(S66)。これは、コード(000001)が、作業の結果に応じてその作業の状態を正常完了か異常完了かを区別して設定する必要があることを意味するからである。
【0059】
作業制御部23は、当該完了状態が異常を示す場合には(S66;YES)、現作業の作業コードに関し、作業管理テーブル28に格納される作業状態を異常完了に設定する(S67)。一方、作業制御部23は、当該完了状態が異常を示さない、即ち、当該完了状態が正常を示す場合には(S66;NO)、現作業の作業コードに関し、作業管理テーブル28に格納される作業状態を正常完了に設定する(S68)。
【0060】
また、作業制御部23は、依存関係テーブル29から抽出されたレコードが存在しない場合にも(S63;NO)、現作業の作業コードに関し、作業管理テーブル28に格納される作業状態を正常完了に設定する(S68)。これは、作業コードフィールド及び依存関係作業コードフィールドに現作業の作業コードが共に設定されており、かつ、作業状態操作コードフィールドにコード(000001)が設定されているレコードが依存関係テーブル29に存在しない場合である。この場合は、即ち、現作業コードが示す作業の作業状態には、結果に関わらず、正常完了が設定されることを意味するからである。
【0061】
作業制御部23は、作業管理テーブル28に格納される、現作業の作業状態、又は、現作業と依存関係にある他の作業の作業状態を更新すると(S65、S67、又はS68)、依存関係テーブル29から抽出されたレコードで未処理のレコードが存在するか否かを判定する(S69)。作業制御部23は、未処理のレコードが存在する場合には(S69;YES)、その未処理のレコードを対象にして、処理(S64)以降を実行する。
【0062】
〔表示画面例〕
上述の図5の動作例の説明では、各住宅設計アプリ30の実行時に、警告や実行不可を表示装置7に表示させる例を挙げたが、図7に示すような工程管理のための画面を表示装置7に表示させるようにすることもできる。図7は、住宅設計工程管理の画面例を示す図である。
【0063】
住宅設計インタフェース部20は、図7に示すような画面データを生成して、その画面を表示装置7に表示させるようにしてもよい。図7の住宅設計工程管理画面では、作業マスタテーブル27に格納される各作業について、作業名称及び作業状態がそれぞれ表示される。また、当該各作業について実施可能状態が区別可能に表示される。図7の例では、実施可能な作業は、実線の四角で示され、実施不可能な作業は、斜線で示され、警告を伴う実施可能な作業は、点線の四角で示される。
【0064】
このような画面データを生成するために、住宅設計インタフェース部20は、作業名称を作業マスタテーブル27から取得し、作業状態を作業管理テーブル28から取得し、各作業の実施可能状態を作業制御部23にそれぞれ判定させるようにすればよい。この場合、取得部22は、作業マスタテーブル27に格納される各作業の作業コードを順次取得し、図5に示す動作が、取得部22により取得された各作業コードについて繰り返し実行されればよい。
【0065】
また、この画面内の各作業を示す箇所が入力装置8を用いてユーザ(設計担当者)により操作された場合に、各作業を実施するための各住宅設計アプリ30が起動されるようにすることもできる。
〔第1実施形態の作用及び効果〕
上述したように第1実施形態では、共通物件DB15において、複数の住宅設計アプリ30で共用される物件データが格納され、データ制御部21により、共通物件DB15内の物件データの必要な部分が各住宅設計アプリ30にそれぞれ渡され、各住宅設計アプリ30で編集されたデータが共通物件DB15に反映される。
【0066】
従って、第1実施形態によれば、複数の住宅設計アプリ30で共用される物件データが集中管理されるため、住宅設計の担当者によるデータの改版管理の負担をなくすことができる。また、当該設計担当者による、各住宅設計アプリ30にいつの時点のデータが読み込まれているか等の管理負担もなくすことができると共に、古いデータを用いて作業を実施してしまったといった過誤を防ぐことができる。
【0067】
更に、作業管理テーブル28において、各住宅設計アプリ30で実施される各作業の作業状態がそれぞれ管理され、依存関係テーブル29において、作業間の依存関係が管理される。作業制御部23では、これら管理される情報に基づいて、取得部22により取得された作業コードが示す現作業と依存関係にある他の作業の作業状態が確認され、この作業状態に応じて現作業を実施できるか否かが判定される。
【0068】
また、取得部22により作業の完了状態が取得された場合、依存関係テーブル29に格納される操作コードに基づいて、作業管理テーブル28に格納される現作業の作業状態の更新に連動して、現作業と依存関係にある他の作業の作業状態が未実施に変更される。更に、当該操作コードに基づいて、現作業の完了状態として、正常完了と異常完了とが区別して管理される。
【0069】
このように、第1実施形態では、物件データと共に、その物件データを用いて実施された作業の完了状態が全体の作業工程を考慮した状態で集中管理される。従って、第1実施形態によれば、住宅設計の担当者は、各作業の状況及び全体の作業工程を容易に把握することができるため、次にすべき作業工程、作業の成果物がいつの時点の物件データで出力されたものか等の情報を容易に認識することができる。結果、第1実施形態によれば、住宅設計の担当者の作業負担を大幅に軽減させることができ、ひいては、設計作業の効率を大幅に向上させることができる。
【0070】
なお、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数のステップ(処理)が順番に記載されているが、本実施形態で実行される処理ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。本実施形態では、図示される処理ステップの順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0071】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも特定され得る。但し、当該実施形態が以下の記載に限定されるものではない。
【0072】
(付記1)複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、上記物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を各設計アプリケーションに渡し、各設計アプリケーションで編集されたデータを上記物件データ格納手段に反映させるデータ制御手段と、複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得する取得手段と、上記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、上記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する作業制御手段と、を備えることを特徴とする建物設計支援装置。
【0073】
(付記2)上記依存関係格納手段は、上記作業ペアの作業識別子と、当該作業ペアの一方が実施された場合に他方の作業の作業状態をどのように操作するのかを規定する操作コードと、を関連付けて格納し、上記作業制御手段は、上記他の作業の作業識別子と共に上記操作コードを特定し、当該特定された操作コードが、上記現作業の実施のためには上記他の作業の状態情報が正常完了を示すことを要求する場合に、上記他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から上記他の作業の状態情報を抽出する、
ことを特徴とする付記1に記載の建物設計支援装置。
【0074】
(付記3)上記取得手段は、複数の設計アプリケーションのいずれか1つが実行されることにより実施された現作業の完了状態を更に取得し、上記作業制御手段は、上記特定された操作コードが、上記現作業の実施に応じて上記他の作業の状態情報を未実施に変更することを要求する場合に、上記作業情報格納手段に格納される上記現作業の実施状態を上記取得手段により取得された完了状態に変更すると共に、上記作業情報格納手段に格納される上記他の作業の実施状態を未実施状態に変更する、ことを特徴とする付記2に記載の建物設計支援装置。
【0075】
(付記4)上記取得手段は、上記現作業の完了状態として、作業の結果が正常であったことを示す正常完了、及び、作業の結果が異常であったことを示す異常完了のいずれか1つを取得し、上記依存関係格納手段は、所定の作業識別子について、上記作業情報格納手段に格納される状態情報を正常完了と異常完了とに区別することを要求する操作コードを更に格納し、上記作業制御手段は、上記特定された操作コードが、状態情報を正常完了と異常完了とに区別することを要求する場合に、上記作業情報格納手段に格納される上記現作業の状態情報を、上記取得手段により取得された異常完了を示す状態に変更する、ことを特徴とする付記3に記載の建物設計支援装置。
【0076】
(付記5)上記取得手段は、複数の設計アプリケーションの各々を特定するためのアプリケーション識別子と、当該各設計アプリケーションを利用して実施される各作業を特定するための作業識別子との対応関係を保持する、ことを特徴とする付記1から4のいずれか1つに記載の建物設計支援装置。
【0077】
(付記6)上記複数の作業は、住宅設計図の編集、意匠チェック、構造計算、部材抽出、見積書作成を含み、上記複数の設計アプリケーションは、上記住宅設計図の編集のためのアプリケーション、上記意匠チェックのためのアプリケーション、上記構造計算のためのアプリケーション、上記部材抽出のためのアプリケーション、上記見積書作成のためのアプリケーションを含む、ことを特徴とする付記1から5のいずれか1つに記載の建物設計支援装置。
【0078】
(付記7)複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、を有するコンピュータにより実行される建物設計支援方法において、物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を各設計アプリケーションに渡し、各設計アプリケーションで編集されたデータを物件データ格納手段に反映させ、複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得し、上記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、上記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定することを含む建物設計支援方法。
【0079】
(付記8)上記依存関係格納手段には、上記作業ペアの作業識別子と、当該作業ペアの一方が実施された場合に他方の作業の作業状態をどのように操作するのかを規定する操作コードと、が関連付けて格納されており、上記他の作業の作業識別子と共に上記操作コードを特定し、当該特定された操作コードが、上記現作業の実施のためには上記他の作業の状態情報が正常完了を示すことを要求する場合に、上記他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から上記他の作業の状態情報を抽出する、ことを更に含む付記7に記載の建物設計支援方法。
【0080】
(付記9)複数の設計アプリケーションのいずれか1つが実行されることにより実施された現作業の完了状態を更に取得し、上記特定された操作コードが、上記現作業の実施に応じて上記他の作業の状態情報を未実施に変更することを要求する場合に、上記作業情報格納手段に格納される上記現作業の実施状態を上記取得手段により取得された完了状態に変更すると共に、上記作業情報格納手段に格納される上記他の作業の実施状態を未実施状態に変更する、ことを更に含む付記8に記載の建物設計支援方法。
【0081】
(付記10)上記現作業の完了状態には、作業の結果が正常であったことを示す正常完了、及び、作業の結果が異常であったことを示す異常完了のいずれか1つを示す情報が含まれており、上記依存関係格納手段には、所定の作業識別子について、上記作業情報格納手段に格納される状態情報を正常完了と異常完了とに区別することを要求する操作コードが更に格納されており、上記特定された操作コードが、状態情報を正常完了と異常完了とに区別することを要求する場合に、上記作業情報格納手段に格納される上記現作業の状態情報を、異常完了を示す状態に変更する、ことを更に含む付記9に記載の建物設計支援方法。
【0082】
(付記11)コンピュータに、複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を各設計アプリケーションに渡し、各設計アプリケーションで編集されたデータを物件データ格納手段に反映させるデータ制御手段と、複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得する取得手段と、上記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、上記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する作業制御手段と、を実現させることを特徴とするプログラム。
【0083】
(付記12)上記依存関係格納手段は、上記作業ペアの作業識別子と、当該作業ペアの一方が実施された場合に他方の作業の作業状態をどのように操作するのかを規定する操作コードと、を関連付けて格納し、上記作業制御手段は、上記他の作業の作業識別子と共に上記操作コードを特定し、当該特定された操作コードが、上記現作業の実施のためには上記他の作業の状態情報が正常完了を示すことを要求する場合に、上記他の作業の作業識別子を用いて、上記作業情報格納手段から上記他の作業の状態情報を抽出する、
ことを特徴とする付記11に記載のプログラム。
【0084】
(付記13)上記取得手段は、複数の設計アプリケーションのいずれか1つが実行されることにより実施された現作業の完了状態を更に取得し、上記作業制御手段は、上記特定された操作コードが、上記現作業の実施に応じて上記他の作業の状態情報を未実施に変更することを要求する場合に、上記作業情報格納手段に格納される上記現作業の実施状態を上記取得手段により取得された完了状態に変更すると共に、上記作業情報格納手段に格納される上記他の作業の実施状態を未実施状態に変更する、ことを特徴とする付記12に記載のプログラム。
【0085】
(付記14)上記取得手段は、上記現作業の完了状態として、作業の結果が正常であったことを示す正常完了、及び、作業の結果が異常であったことを示す異常完了のいずれか1つを取得し、上記依存関係格納手段は、所定の作業識別子について、上記作業情報格納手段に格納される状態情報を正常完了と異常完了とに区別することを要求する操作コードを更に格納し、上記作業制御手段は、上記特定された操作コードが、状態情報を正常完了と異常完了とに区別することを要求する場合に、上記作業情報格納手段に格納される上記現作業の状態情報を、上記取得手段により取得された異常完了を示す状態に変更する、ことを特徴とする付記13に記載のプログラム。
【0086】
(付記15)上記取得手段は、複数の設計アプリケーションの各々を特定するためのアプリケーション識別子と、当該各設計アプリケーションを利用して実施される各作業を特定するための作業識別子との対応関係を保持する、ことを特徴とする付記11から14のいずれか1つに記載のプログラム。
【符号の説明】
【0087】
1 CPU
2 メモリ
7 表示装置
8 入力装置
10 住宅設計支援装置(支援装置)
15 共通物件データベース(DB)
20 住宅設計インタフェース(I/F)部
21 データ制御部
22 取得部
23 作業制御部
27 作業マスタテーブル
28 作業管理テーブル
29 依存関係テーブル
30、30(#1)、30(#2)、30(#m) 住宅設計アプリケーション(住宅設計アプリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、
前記物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を前記各設計アプリケーションに渡し、前記各設計アプリケーションで編集されたデータを前記物件データ格納手段に反映させるデータ制御手段と、
前記複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、
前記複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、
前記複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得する取得手段と、
前記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、前記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、前記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、前記複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する作業制御手段と、
を備えることを特徴とする建物設計支援装置。
【請求項2】
前記依存関係格納手段は、前記作業ペアの作業識別子と、当該作業ペアの一方が実施された場合に他方の作業の作業状態をどのように操作するのかを規定する操作コードと、を関連付けて格納し、
前記作業制御手段は、前記他の作業の作業識別子と共に前記操作コードを特定し、当該特定された操作コードが、前記現作業の実施のためには前記他の作業の状態情報が正常完了を示すことを要求する場合に、前記他の作業の作業識別子を用いて、前記作業情報格納手段から前記他の作業の状態情報を抽出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の建物設計支援装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記複数の設計アプリケーションのいずれか1つが実行されることにより実施された現作業の完了状態を更に取得し、
前記作業制御手段は、前記特定された操作コードが、前記現作業の実施に応じて前記他の作業の状態情報を未実施に変更することを要求する場合に、前記作業情報格納手段に格納される前記現作業の実施状態を前記取得手段により取得された完了状態に変更すると共に、前記作業情報格納手段に格納される前記他の作業の実施状態を未実施状態に変更する、
ことを特徴とする請求項2に記載の建物設計支援装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記現作業の完了状態として、作業の結果が正常であったことを示す正常完了、及び、作業の結果が異常であったことを示す異常完了のいずれか1つを取得し、
前記依存関係格納手段は、所定の作業識別子について、前記作業情報格納手段に格納される状態情報を前記正常完了と前記異常完了とに区別することを要求する操作コードを更に格納し、
前記作業制御手段は、前記特定された操作コードが、状態情報を前記正常完了と前記異常完了とに区別することを要求する場合に、前記作業情報格納手段に格納される前記現作業の状態情報を、前記取得手段により取得された異常完了を示す状態に変更する、
ことを特徴とする請求項3に記載の建物設計支援装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記複数の設計アプリケーションの各々を特定するためのアプリケーション識別子と、当該各設計アプリケーションを利用して実施される各作業を特定するための作業識別子との対応関係を保持する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の建物設計支援装置。
【請求項6】
前記複数の作業は、住宅設計図の編集、意匠チェック、構造計算、部材抽出、見積書作成を含み、
前記複数の設計アプリケーションは、前記住宅設計図の編集のためのアプリケーション、前記意匠チェックのためのアプリケーション、前記構造計算のためのアプリケーション、前記部材抽出のためのアプリケーション、前記見積書作成のためのアプリケーションを含む、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の建物設計支援装置。
【請求項7】
複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、前記複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、前記複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、を有するコンピュータにより実行される建物設計支援方法において、
前記物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を各設計アプリケーションに渡し、
前記各設計アプリケーションで編集されたデータを前記物件データ格納手段に反映させ、
前記複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得し、
前記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、前記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、
前記特定された他の作業の作業識別子を用いて、前記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、
前記抽出された他の作業の状態情報に基づいて、前記複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する、
ことを含む建物設計支援方法。
【請求項8】
コンピュータに、
複数の設計アプリケーションで共用される物件データを格納する物件データ格納手段と、
前記物件データ格納手段に格納される物件データの少なくとも一部を前記各設計アプリケーションに渡し、前記各設計アプリケーションで編集されたデータを前記物件データ格納手段に反映させるデータ制御手段と、
前記複数の設計アプリケーションの各々を利用して実施される各作業について、作業識別子と作業の状態を示す状態情報とをそれぞれ格納する作業情報格納手段と、
前記複数の作業の中の、作業の実施に関し相互に依存関係にある作業ペアの作業識別子を関連付けて格納する依存関係格納手段と、
前記複数の設計アプリケーションのいずれか1つに対応する作業識別子を取得する取得手段と、
前記依存関係格納手段に格納された情報に基づいて、前記取得手段により取得された作業識別子が示す現作業の実施と依存関係にある他の作業の作業識別子を特定し、当該特定された他の作業の作業識別子を用いて、前記作業情報格納手段から当該他の作業の状態情報を抽出し、当該抽出された他の作業の状態情報に基づいて、前記複数の設計アプリケーションのいずれか1つを実行すべきか否かを判定する作業制御手段と、
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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