説明

建築パネルの製造方法

【課題】 凹凸パターンを施した長尺パネルの長手方向の任意位置で切断してなる各建築パネルに対し、上記凹凸パターンに対応した塗装パターンで塗装を行う塗装手段を用い、生産性良く塗装可能にする。
【解決手段】 凹凸パターン3と所定の位置関係を有する基準マーク4を施して建築パネル1を形成する。塗装装置8に建築パネル1が搬入される前に、建築パネル1の搬送前端側の切断端面5及び基準マーク4を検出手段9によって検出し、切断端面5と基準マーク4との距離を算出し、基準マーク4と凹凸パターン3との位置関係を加味して凹凸パターン3内の切断端面5の位置を特定し、塗装手段7の塗装パターン6内の塗装開始位置6aを設定し、塗装装置8に搬入した建築パネル1の表面に対し、塗装手段7によって上記塗装開始位置6aからの塗装パターン6を塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面意匠を施した建築パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の外装材や内装材等に用いられる建築パネルの表面には、建築物の外観向上のために、凹凸をつけたり塗装を施したりして表面意匠を形成することが行われている。たとえば特許文献1には、表面に所定の凹凸形状を施した後に、この凹凸形状に対応する塗装パターンを周面に有する塗装ロールを用いて塗装を施した建築パネルが開示されている。
【0003】
ところで、近年、建築物の外観には人工的な規則性を極力排して自然調の外観にすることが好まれる傾向があり、この傾向に対処して建築物に自然調の外観を得るために、本出願人は、たとえば表面に一定の凹凸パターンを長手方向に繰り返し施した長尺パネルをその長手方向の任意位置で切断して多数の建築パネルを形成し、この多数の建築パネルを任意に並べて壁等を形成するといったことを考えた。つまり、このように形成された多数の建築パネルは、長尺パネルの長手方向の任意位置で切断されたことで一対の切断端面間に亙る方向に凹凸パターンがずれたような凹凸形状がそれぞれ形成されることから、凹凸パターンは共通して有するものの各建築パネル毎に異なる表面意匠を備えることとなっており、このような多数の建築パネルを任意に並べて壁等を形成すると、各建築パネル毎に異なる表面意匠が任意に並ぶことによって不規則な自然調の建築物の外観を得ることができるのである。
【0004】
しかしながら、これら建築パネルにその凹凸形状に合わせて各々塗装を施すためには、各建築パネルの凹凸形状がそれぞれ異なっていることから、各凹凸形状に合わせた塗装パターンを建築パネル毎に用意しなければならず、その生産性は著しく悪いものである。ところで、これら建築パネルの各凹凸形状は凹凸パターンを共通して有しているので、生産性を向上させるために特許文献1を参考にして、凹凸パターンに対応した塗装パターンを有する塗装ロールを用いて各建築パネルの表面に塗装を施すことも考えられるが、各建築パネルは長尺パネルの長手方向の任意位置で切断したものであって各凹凸形状は凹凸パターンが一対の切断端面間に亙る方向にずれるようにそれぞれ形成されていることから、各建築パネルに特有の凹凸形状に塗装パターンを合わせるための塗装ロールの位置合わせが困難であり、したがって、凹凸パターンに対応した塗装パターンを有した塗装手段によって生産性良く、それぞれ異なる凹凸形状を有する建築パネルに塗装を施すことは実現されていないのが現状であった。
【特許文献1】特開平6−278355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて為したものであって、凹凸パターンを施した長尺パネルの長手方向の任意位置で切断してなる各建築パネルに対し、上記凹凸パターンに対応した塗装パターンで塗装を行う塗装手段を用い、生産性良く塗装可能にする建築パネルの製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の請求項1に係る建築パネルの製造方法は、長尺パネル2の表面に一定の凹凸パターン3をプレスにてその長手方向に繰り返し施し、この長尺パネル2をその長手方向の任意位置で切断すると共に凹凸パターン3と所定の位置関係を有する基準マーク4を施して建築パネル1を形成し、この建築パネル1をその切断端面5を進行方向に向けて搬送し、上記凹凸パターン3に対応した塗装パターン6で塗装を施すようにした塗装手段7を有した塗装装置8に建築パネル1が搬入される前に、建築パネル1の搬送前端側の切断端面5及び基準マーク4を検出手段9によって検出し、切断端面5と基準マーク4との距離を算出すると共に、上記算出された切断端面5と基準マーク4との距離及び基準マーク4と凹凸パターン3との位置関係に基いて凹凸パターン3内の切断端面5の位置を特定し、上記特定した凹凸パターン3内の切断端面5の位置データに基いて塗装手段7の塗装パターン6内の塗装開始位置6aを設定し、塗装装置8に搬入した建築パネル1の表面に対し、塗装手段7によって上記塗装開始位置6aからの塗装パターン6を塗装するようにしたことを特徴とする。
【0007】
これによると、凹凸パターン3を施した長尺パネル2の長手方向の任意位置で切断して形成してなる建築パネル1にあっては、一対の切断端面5間に亙る方向に凹凸パターン3がずれたような建築パネル1毎に異なる凹凸形状を有するものであるが、建築パネル1に凹凸パターン3と所定の位置関係を有する基準マーク4を施し、この基準マーク4を基にして凹凸パターン3内の切断端面5の位置を特定し、塗装手段7の凹凸パターン3に対応した塗装パターン6内の切断端面5の位置を特定して塗装パターン6内の塗装開始位置6aを設定し、上記塗装開始位置6aからの塗装パターン6を塗装するようにしたことで、建築パネル1が有する凹凸形状に合致した塗装を可能にできたものであり、つまり、凹凸パターン3に対応する塗装パターン6で塗装を行う塗装手段7によって各建築パネル1の凹凸形状に合わせて生産性良く塗装を行うことができたものである。
【0008】
また、請求項2に係る建築パネルの製造方法は、請求項1において、上記凹凸パターン3に対応した塗装パターン6の塗装面を周面に形成すると共に駆動モータにて回転駆動されて塗装面を建築パネル1の表面に圧接させることで塗装を施すようにした塗装ロール10で塗装手段7を構成し、搬送された建築パネル1の搬送前側の切断端面5aが塗装ロール10の塗装位置24に至るタイミングに合わせて塗装ロール10の塗装パターン6内の塗装開始位置6aを位置させるように、塗装ロール10の駆動モータを減速又は加速させる回転制御を行わせ、塗装装置8に搬入した建築パネル1の表面に対し、塗装ロール10によって上記塗装開始位置6aからの塗装パターン6を塗装するようにしたことを特徴とする。これによると、塗装ロール10の駆動モータを減速又は加速させる回転制御によって塗装パターン6の塗装開始位置6aを各建築パネル1の切断端面5に位置させることができたことから、塗装手段7として塗装ロール10という単純な構成を採用できたものであり、塗装工程でも一定速度で建築パネル1を搬送させることができたことから、建築パネル1の生産性の向上も図ることができる。
【0009】
また、請求項3に係る建築パネルの製造方法は、請求項1または2において、隣接する建築パネル1に設けた凹状の雌実11に覆われるように嵌合される凸状の雄実12を建築パネル1の側端に1対の切断端面5間に亙るように形成し、この雄実12に基準マーク4を施すようにしたことを特徴とする。これによると、隣接する建築パネル1同士を雄実12と雌実11との嵌合によって連結させた建築パネル1の使用時(建築物への施工時)には、雄実12に施した基準マーク4は雌実11に覆われて建築物の外観に現出されないようにでき、基準マーク4による建築物の外観悪化を回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、凹凸パターンに対応する塗装パターンで塗装を行う塗装手段によって、各建築パネル毎に異なる凹凸形状に合わせて、生産性良く塗装を行うことができる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0012】
本例の建築パネル1は、建物の外装材、浴室内壁、内装材等に用いられる窯業系(セメント系)や金属系の建築パネル1であって、図2(a)のように、押出し成形や抄造にて製造した原板となる長尺パネル2の表面にローラプレスや押圧プレス等のプレスにて目地溝13と柄用突部14とからなる凹凸パターン3をその長手方向に繰り返し施し、図2(b)のように、上記長尺パネル2をその長手方向の任意位置で切断することで形成されている。詳しくは、本例の凹凸パターン3は上面視で目地溝13で区分けされた異なる大きさのブロック状の柄用突部14が複数配置されて形成されており、この凹凸パターン3が長手方向に繰り返し施された長尺パネル2をその長手方向において凹凸パターン3のピッチ寸法とは無関係のピッチで切断することで、建築パネル1が形成されている。このように形成された複数の建築パネル1は、共通して凹凸パターン3を有するものの、建築パネル1毎に一対の切断端面5間に亙る方向に凹凸パターン3がずれたような凹凸形状をそれぞれ有するようになっている。その後、この建築パネル1は、製造ライン搬送コンベア15に乗せられて塗装工程に送られるのであり、図2(c)のように、たとえば各柄用突部14に特有の柄模様をそれぞれ塗装するなど、各建築パネル1の凹凸形状に合わせた塗装が施されて仕上げがなされるようにされている。
【0013】
ここで、本例の塗装工程で用いる塗装装置8は、所定の塗装パターン6を繰り返し塗装できる簡易な構造のフレキソ印刷機が採用されている。この塗装装置8は、図1のように、製造ライン搬送コンベア15から渡された建築パネル1を塗装装置8内で搬送する塗装工程搬送コンベア16と、この塗装工程搬送コンベア16にて搬入された建築パネル1の表面に塗装を施す塗装ロール10と、この塗装ロール10にインキを供給するアニロックスロール17と、塗装ロール10の塗装位置24に塗装工程搬送コンベア16と面一の上面を有するようにして配置されるバックアップロール18とを備えて構成されている。詳しくは、塗装ロール10の周面には上述のように形成された各建築パネル1の凹凸形状に共通する凹凸パターン3に対応させた塗装パターン6からなる塗装面を有しており、塗装ロール10とバックアップロール18とに建築パネル1を挟持させて建築パネル1の表面に塗装面を圧接させることで建築パネル1の表面に塗装が施されるようにされている。ここで、塗装ロール10及びアニロックスロール17は制御部19の駆動制御を受ける駆動モータ(図示せず)によって回転駆動されている。また、塗装工程搬送コンベア16、バックアップロール18及び製造ライン搬送コンベア15は建築パネル1を搬送するものであって一定速度で運転されるのであるが、インバータ制御で運転速度の調整は可能とされている。
【0014】
ところで、上述のように形成された複数の建築パネル1は、共通して凹凸パターン3を有しているから、凹凸パターン3に対応する塗装パターン6で塗装を行う塗装手段7(本例では塗装ロール10)を有した塗装装置8によって塗装を行わせることができれば、生産性良く塗装仕上げを行うことができる。しかしながら、上記のように形成された複数の建築パネル1は、各建築パネル1毎に一対の切断端面5間に亙る方向に凹凸パターン3がずれたような凹凸形状をそれぞれ有するようになっており、つまり各建築パネル1に異なる凹凸形状が形成されているのであるが、本例では、複数の建築パネル1を順に、各建築パネル1に異なる凹凸形状に合わせて塗装手段7の塗装パターン6にて塗装を行うことを可能にする工夫が為されており、以下に詳述する。
【0015】
まず、建築パネル1の塗装工程への搬送の前段階で、建築パネル1の表面に凹凸パターン3と所定の位置関係を有するように基準マーク4を設ける。本例では、図3のように、凹凸パターン3の長尺パネル2の押出し方向側の端部に相当する位置に基準マーク4が設けられており、この基準マーク4は建築パネル1をその厚み方向に貫通する貫通孔で構成されている。そして、この貫通孔は長尺パネル2への凹凸パターン3の形成前に長尺パネル2をその厚み方向に打ち抜くことで形成されていて、プレス金型の長尺パネル2への押圧位置の位置合わせの基準としても使用されている。この基準マーク4は建築パネル1に少なくとも一つ以上設けられる。なお、本例の建築パネル1の一対の対向する側端部には、建築パネル1の使用時(建築物への施工時)に隣接する建築パネル1同士を連結させるための凸状の雄実12及び凹状の雌実11が一対の切断端面5間に亙ってそれぞれ形成されている。そして、本例の建築パネル1における雄実12は、建築パネル1の使用時において隣接する建築パネル1の雌実11に覆われるように嵌合されて連結されるようにされたものであり、この雌実11に対して基準マーク4を構成する貫通孔が穿設されている。したがって、この基準マーク4は建築パネル1の使用時においては建築物の外観に現出されないようになっており、基準マーク4による建築物の外観低下を回避できるようにされている。
【0016】
複数の建築パネル1は、その切断端面5を進行方向に向けて前後の建築パネル1と所定の間隔をあけてそれぞれ搬送されていくのであるが、塗装装置8の前に設けられた形状検出部20によって、各建築パネル1の形状が検出されるようにされている。この形状検出部20は、各建築パネル1の切断端面5及び基準マーク4を検出する検出手段9、建築パネル1の搬送速度を測定するエンコーダ21、上記検出手段9及びエンコーダ21の各測定結果から建築パネル1の形状を検出する算出部22とから構成されている。形状検出部20による建築パネル1の形状の検出は以下に詳述する。
【0017】
本例の検出手段9には製造ライン搬送コンベア15の上方位置に配置された汎用の光電センサが用いられており、この光電センサは、製造ライン搬送コンベア15にて搬送される建築パネル1の雄実12が通る位置を測定位置とし、この測定位置と向けてスポット径0.1mm以下の照射光を照射するものであり、この測定位置での建築パネル1の有無を検知できるようにされている。この検出手段9が製造ライン搬送コンベア15に載置されて搬送される複数の建築パネル1を検知した際には図5のような出力結果を得ることができる。ここで、光電センサにあって測定位置で建築パネル1を検知した場合にはオン状態とし、測定点10aで建築パネル1を検知しない場合にはオフ状態とすると、製造ライン搬送コンベア15に載置されて搬送される建築パネル1にあっては、オフ状態からオン状態に測定結果が変化する建築パネル1の搬送前側の切断端面5a、オン状態からオフ状態になってその後すぐにオン状態となるように測定結果が変化する基準マーク4、オン状態からオフ状態に測定結果が変化する建築パネル1の搬送後側の切断端面5bが、それぞれ順に検知可能にされている。
【0018】
ここで、本例では、検出手段9を構成する光電センサによる検知精度を向上させる工夫がなされている。本例の基準マーク4は具体的に3×10mm程度の貫通孔であって、建築パネル1の雄実12と雌実11とに亙る方向に長い矩形長孔形状に形成されている。しかして、製造ライン搬送コンベア15の幅方向(建築パネル1の雄実12と雌実11とに亙る方向と同方向)に建築パネル1がずれて搬送されてしまい、光電センサの測定位置が製造ライン搬送コンベア15の幅方向にずれてしまった場合においても、基準マーク4の検出漏れを極力防止できるようにされている。なお、基準マーク4を構成する貫通孔が円孔や楕円孔である場合に上述のように製造ライン搬送コンベア15の幅方向に建築パネル1がずれて搬送されてしまったときには、光電センサの測定位置の製造ライン搬送コンベア15の幅方向へのずれに応じて基準マーク4の検知位置が建築パネル1の一対の切断端面5間に亙る方向にずれてしまうが、本例の貫通孔は基準マーク4の検知位置が建築パネル1の一対の切断端面5間に亙る方向に平行な直線状の孔縁を有する矩形長孔形状に形成されているから、このような事態を回避できるようにされているのである。また、本例では、図示はしないが、建築パネル1の搬送方向における検出手段9の測定位置の手前位置に建築パネル1の搬送姿勢修正用のガイドローラが設けられている。上記ガイドローラによると、製造ライン搬送コンベア15上で建築パネル1が所定の搬送姿勢から水平面内で傾いた姿勢で搬送されている場合に、建築パネル1の雄実12及び雌実11を有する両端部を一瞬両側から挟み込むようにして所定の搬送姿勢に建築パネル1を修正するようにし、検出手段9の測定位置上に建築パネル1の雄実12が一対の切断端面5間に亙って確実に通過するようにしているのである。
【0019】
また、エンコーダ21は製造ライン搬送コンベア15に備えられており、このエンコーダ21によると、製造ライン搬送コンベア15の運転速度(建築パネル1の搬送速度)に応じて増減して出力されるエンコーダパルスの測定数によって製造ライン搬送コンベア15の移動距離(建築パネル1の移動距離)が求まるようにされている。そして、算出部22では、このエンコーダ21による測定結果と、上記検出手段9で検知された建築パネル1の切断端面5や基準マーク4の検出結果と、基準マーク4と凹凸パターン3との位置関係とに基いて、凹凸パターン3内の切断端面5の位置を特定している。具体的に、検出手段9によって検出された建築パネル1の搬送前側の切断端面5aと基準マーク4との各検出時点の時間差sに測定されたエンコーダパルスの測定数によって、上記時間差s内に移動した建築パネル1の距離、すなわち建築パネル1の搬送前側の切断端面5aと基準マーク4との距離が求められる。そして、基準マーク4と凹凸パターン3とは所定の位置関係を有しているから、凹凸パターン3内における建築パネル1の搬送前側の切断端面5aの位置が特定されるのである。無論、算出部22では、検出手段9による基準マーク4と建築パネル1の搬送後側の切断端面5bと検知時点の時間差内に測定されたエンコーダパルスの測定数によって凹凸パターン3内における建築パネル1の搬送後側の切断端面5bの位置も特定できるものである。なお、基準マーク4を凹凸パターン3の長尺パネル2の押出し方向側の端部に相当する位置毎にそれぞれ設けることも好ましく、この場合には算出部22にて、検出手段9による一枚の建築パネル1の測定中に検出された基準マーク4の数によって一枚の建築パネル1の凹凸形状の中に含まれる凹凸パターン3の数も測定できるのである。更に言うと基準マーク4は長尺パネル2への凹凸パターンのプレス成形時に同時に長尺パネル2の雄実12を打ち抜くように形成しても良い。
【0020】
上述のようにして形状検出部20で得られた建築パネル1の形状データは、塗装装置8の塗装手段7を制御する制御部19に送られるのであり、この制御部19によって、凹凸パターン3と対応する塗装ロール10の塗装パターン6内で、塗装開始位置6aが設定される。なお、本例の塗装装置8にあっては、その搬入口23には塗装装置8内に搬入される建築パネル1(建築パネル1の搬送前側の切断端面5a)を常時検出する搬入検出手段25が配置されており、また、塗装ロール10には塗装パターン6と所定の位置関係を有する測定点10aが設定されると共に塗装装置8に設けた測定点検知手段(図示せず)によって測定点10aを常時検知することで制御部19による塗装ロール10の回転制御が行われるようにされている。そして、この塗装装置8では、搬入検出手段25で搬送される建築パネル1を検知した後に、塗装ロール10の塗装位置24に至る建築パネル1に対して上記塗装開始位置6aから塗装パターン6を塗装させるように、上記制御部19によって下記のような制御が行われている。
【0021】
搬入検出手段25が搬送される建築パネル1を検出したときには、制御部19では、建築パネル1が塗装装置8の搬入口23から塗装位置24に至るまでの建築パネル1の到達所要時間を算出する。具体的に上記建築パネル1の到達所要時間は、塗装装置8の搬入口23と塗装位置24との間の距離、建築パネル1の搬送速度(塗装内コンベアの搬送速度)に基いて算出される。また、制御部19では、上述のように塗装パターン6内の塗装開始位置6aが設定されてこの塗装開始位置6aに対応する塗装ロール10の位置と上記測定点10aとの距離差が算出されるのであり、そして、搬入検出手段25の建築パネル1の検出時に測定点検知手段で検出された塗装ロール10の測定点10aの回転位置に基いて、搬入検出手段25の建築パネル1検出時の上記塗装開始位置6aに相当する塗装ロール10の回転位置(図1中T)が算出されるのであり、そして、塗装ロール10が通常回転速度で回転した場合に、上記塗装開始位置6aに対応する塗装ロール10の位置が搬入検出手段25の建築パネル1検出時から塗装位置24に回転して至る塗装開始位置6aの所要時間を算出する。そして、上記のように算出された建築パネル1の到達所要時間と塗装開始位置6aの所要時間との間に時間差がある場合には、制御部19によって、搬送された建築パネル1の搬送前側の切断端面5aが塗装ロール10の塗装位置24に至るタイミングに合わせて塗装ロール10の塗装パターン6内の塗装開始位置6aを位置させるように、塗装ロール10の駆動モータを減速又は加速させる回転制御を行わせるのである。
【0022】
図6で説明すると、たとえば、図6(a)のように搬入検出手段25で建築パネル1を検知したときの塗装パターン6内の塗装開始位置6aに相当する塗装ロール10の回転位置Tがイ点であった場合には、図6(b)のように搬入検出手段25の建築パネル1の検知時から所定時間の間、塗装ロール10を低速運転し、その後、塗装ロール10を通常速度運転に戻し、搬送された建築パネル1の搬送前側の切断端面5aが塗装位置24に至るタイミングと同じタイミングで塗装位置24に塗装ロール10のイ点が至るようにしている。ここで、上記通常速度運転は建築パネル1に塗装を施す際の塗装ロール10の回転速度による運転である。同様に、図6(a)のように搬入検出手段25で建築パネル1を検知したときの塗装パターン6内の塗装開始位置6aに相当する塗装ロール10の回転位置Tがロ点であった場合には図6(c)のように、ハ点であった場合には図6(d)のように、それぞれ搬入検出手段25の建築パネル1の検知時から所定時間の間、塗装ロール10を低速運転し、その後、塗装ロール10を通常速度運転に戻し、搬送された建築パネル1の搬送前側の切断端面5aが塗装位置24に至るタイミングと同じタイミングで塗装位置24に塗装ロール10のロ点、ハ点がそれぞれ至るようにしている。また、図6(a)のように搬入検出手段25で建築パネル1を検知したときの塗装パターン6内の塗装開始位置6aに相当する塗装ロール10の回転位置Tがニ点であった場合には図6(e)のように、ホ点であった場合には図6(f)のように、それぞれ搬入検出手段25の建築パネル1の検知時から所定時間の間、塗装ロール10を高速運転し、その後、塗装ロール10を通常回転速度に戻して運転し、搬送された建築パネル1の搬送前側の切断端面5aが塗装位置24に至るタイミングと同じタイミングで塗装位置24に塗装ロール10のニ点、ホ点がそれぞれ至るようにしている。なお、本例の塗装ロール10は低速、通常及び高速の3段階の運転速度が設定されているが、より綿密な速度設定で多段階に運転されてもよい。
【0023】
上記のようにされたことで、塗装位置24に至る建築パネル1に対し塗装開始位置6aからの塗装パターン6を塗装することが可能にされているのであり、つまり、凹凸パターン3に対応する塗装パターン6で塗装を行う塗装手段7によって各建築パネル1の凹凸形状に合わせて生産性良く塗装を行うことが可能にされているのである。また、搬送された建築パネル1の搬送前側の切断端面5aと塗装ロール10の塗装開始位置6aとを同じタイミングで塗装位置24に至らしめる制御は塗装ロール10の回転速度の増減制御によって行われており、つまり建築パネル1の搬送速度は等速状態にできるので、製造ラインに建築パネル1を滞り無く流すことができ、この点でも建築パネル1の生産性の向上が図られているのである。また、搬入検出手段25による建築パネル1の検出にて塗装ロール10の増減制御が為されるので、図7のように製造ラインに流す複数の建築パネル1の前後の間隔Sは少なくとも塗装装置8の搬入口23から塗装位置24までの距離Lよりも長く設定されていることは言うまでもない。なお、塗装材料の成分によると塗装ロール10が膨潤現象を起こしてしまう可能性もあるが、このような場合には、建築パネル1の搬送速度とずらすように塗装ロール10の通常回転速度を制御部19によって調整し、建築パネル1上で塗装ロール10を滑らすようにして塗装を行わせることで、凹凸パターン3のピッチと塗装パターン6のピッチとを合致させることができる。
【0024】
上述の実施形態では塗装手段7として塗装ロール10を採用しているが、インクを吹き付ける等の吹付式の塗装手段7を採用することもできる。この塗装手段7の場合には制御部19に予め設定された塗装パターン6のプログラム制御によって塗装が行われるのであり、塗装装置8の制御部19によって、形状検出部20で得た建築パネル1の搬送前側の切断端面5aの凹凸パターン内での検出位置に基いて塗装パターン6内の塗装開始位置6aを設定すると共に建築パネル1の搬送前側の切断端面5aが塗装位置24に至る時間を算出し、建築パネル1の搬送前側の切断端面5aが塗装位置24に至るタイミングで塗装開始位置6aから塗装パターン6の塗装を建築パネル1に施すようにし、形状検出部20で得た建築パネル1の搬送後側の切断端面5bの凹凸パターン内での検出位置に基いて塗装パターン6内の塗装終了位置6bを設定すると共に建築パネル1の搬送後側の切断端面5bが塗装位置24に至る時間を算出し、建築パネル1の搬送後側の切断端面5bが塗装位置24に至るタイミングで上記塗装終了位置6bで塗装を終了させることで、建築パネル1の凹凸形状に合わせた塗装を行わせることが可能である。なお、基準マーク4を凹凸パターン3毎に設けたものにおいては、検出手段9の基準マーク4の検知回数に基いて建築パネル1が有する凹凸パターン3の数が検出されるから、この検出結果に基いて塗装開始から塗装終了までの塗装パターン6の塗装回数を加味して制御することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の例の製造ラインの要部の側面図である。
【図2】同上の建築パネルの形成過程を説明する図面であり、(a)は長尺パネルの上面図であり、(b)は長尺パネルを切断した状態の上面図であり、(c)は仕上後の建築パネルの上面図である。
【図3】(a)は同上の凹凸パターンの形成前の長尺パネルの上面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】同上の製造ラインの要部の概略構成図である。
【図5】同上の検出手段の出力結果を示すグラフである。
【図6】同上の塗装装置の制御部による塗装手段の制御を説明する図面であり、(a)は製造ラインの要部の側面図であり、(b)は塗装開始位置が(a)のイ点である場合の塗装ロールの運転制御を示すグラフであり、(c)は塗装開始位置が(a)のロ点である場合の塗装ロールの運転制御を示すグラフであり、(d)は塗装開始位置が(a)のハ点である場合の塗装ロールの運転制御を示すグラフであり、(e)は塗装開始位置が(a)のニ点である場合塗装ロールの運転制御を示すグラフであり、(f)は塗装開始位置が(a)のホ点である場合塗装ロールの運転制御を示すグラフである。
【図7】同上の製造ラインの要部の側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 建築パネル
2 長尺パネル
3 凹凸パターン
4 基準マーク
5 切断端面
6 塗装パターン
6a 塗装開始位置
7 塗装手段
8 塗装装置
9 検出手段
10 塗装ロール
12 雄実
19 制御部
20 形状検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺パネルの表面に一定の凹凸パターンをプレスにてその長手方向に繰り返し施し、この長尺パネルをその長手方向の任意位置で切断すると共に凹凸パターンと所定の位置関係を有する基準マークを施して建築パネルを形成し、この建築パネルをその切断端面を進行方向に向けて搬送し、上記凹凸パターンに対応した塗装パターンで塗装を施すようにした塗装手段を有した塗装装置に建築パネルが搬入される前に、建築パネルの搬送前端側の切断端面及び基準マークを検出手段によって検出し、切断端面と基準マークとの距離を算出すると共に、上記算出された切断端面と基準マークとの距離及び基準マークと凹凸パターンとの位置関係に基いて凹凸パターン内の切断端面の位置を特定し、上記特定した凹凸パターン内の切断端面の位置データに基いて塗装手段の塗装パターン内の塗装開始位置を設定し、塗装装置に搬入した建築パネルの表面に対し、塗装手段によって上記塗装開始位置からの塗装パターンを塗装するようにしたことを特徴とする建築パネルの製造方法。
【請求項2】
上記凹凸パターンに対応した塗装パターンの塗装面を周面に形成すると共に駆動モータにて回転駆動されて塗装面を建築パネルの表面に圧接させることで塗装を施すようにした塗装ロールで塗装手段を構成し、搬送された建築パネルの搬送前側の切断端面が塗装ロールの塗装位置に至るタイミングに合わせて塗装ロールの塗装パターン内の塗装開始位置を位置させるように、塗装ロールの駆動モータを減速又は加速させる回転制御を行わせ、塗装装置に搬入した建築パネルの表面に対し、塗装ロールによって上記塗装開始位置からの塗装パターンを塗装するようにしたことを特徴とする請求項1記載の建築パネルの製造方法。
【請求項3】
隣接する建築パネルに設けた凹状の雌実に覆われるように嵌合される凸状の雄実を建築パネルの側端に1対の切断端面間に亙るように形成し、この雄実に基準マークを施すようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の建築パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−326508(P2006−326508A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154706(P2005−154706)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】