説明

建築板材の取付装置

【課題】施工性が高く、居住空間の狭小化を防止できる建築用板材の取付装置を提供する。
【解決手段】取付装置10は、下地板もしくは軽量鉄骨下地などの建築下地12に、壁材や天井材などの建築板材14を取り付けるためのものであり、建築下地12に固定される固定部材16と、固定部材16に一端が回動可能に取り付けられている回動保持部材18と、回動保持部材18の回動を抑止する回動抑止機構20とを備えている。そして、回動抑止機構20は、可動側係合部42と固定側係合部24とで構成されており、取付装置10の下面に建築板材14を位置決めした後、取付装置10の可動側係合部42を固定側係合部24に嵌合させる。これにより、板材当接部40が建築板材14の表面に当接されるとともに、回動保持部材18の回動が抑止されるので、建築板材14が建築下地12に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材や天井材などの建築板材を下地板や軽量鉄骨などの建築下地に取り付けるための建築板材の取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築板材(壁材、天井材等)を建築下地(下地板、軽量鉄骨等)に取り付ける際には、建築板材と建築下地とを、釘やステープル等の保持具または接着剤により固定するようにしていた(非特許文献1参照)。しかし、釘やステープル等の保持具を用いる場合には、片手で建築板材を保持しながら保持具を打ち込む等しなければならないため、施工が面倒であり、接着剤を単独で用いる場合には、初期接着力に優れた専用の接着剤が必要なため、施工コストが高くなりすぎるという問題があった。
【0003】
そこで、近年では、建築板材を建築下地に簡単かつ安価に取り付けるための技術が種々開発されており、その一例として、特許文献1に記載された「天井装置」を挙げることができる。この天井装置1は、図10に示すように、天井材(i)を建築下地(ii)に取り付けるためのものであり、建築下地(ii)から垂下された板状の竪片2と、竪片2の下端から水平方向に延びる連結片3と、連結片3の端部に形成された略円柱状の軸部4と、軸部4に回動可能に取り付けられた天井材載置片5とで構成されている。そして、天井材載置片5は、長尺板状の本体部5aと、本体部5aの幅方向一方端部から本体部5aと直交する方向に延びる天井材載置部6と、本体部5aの幅方向他方端部から本体部5aと直交する方向に延びるストッパー部7と、本体部5aの幅方向中央部に設けられた被嵌部8とで構成されている。
【0004】
天井材(i)を建築下地(ii)の表面に取り付ける際には、図11に示すように、まず、天井材載置片5を回動させることによって、天井材載置部6を連結片3の上方において竪片2側へ逃がし、次に、天井材(i)を天井材載置片5よりも上方まで持ち上げる。そして、ストッパー部7が連結片3の下面に当接するまで天井材載置片5を回動させ、その後、図10に示すように、天井材(i)を天井材載置部6に載置する。
【特許文献1】実開昭55−42775号公報
【非特許文献1】「おさまり詳細図集2コンクリート造・鉄骨造の仕上編」、理工学社、1973年、p.141
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の天井装置1によれば、天井材(i)を建築下地(ii)の表面に取り付ける際に、片手で天井材(i)を保持しながら保持具を打ち込む等しなくてもよいので施工性を向上できるとともに、専用の接着剤が不要なので施工コストを軽減できる。
【0006】
しかしながら、このような天井装置1を用いて天井材(i)を施工するには、連結片3の上側に、天井材載置部6を一時的に逃がすための空間S(図11)が必要となるため、この空間の分だけ居住空間が狭小化されるという問題点があった。
【0007】
それゆえに、本発明の主たる課題は、施工性を向上できるとともに、居住空間の狭小化を防止できる建築板材用の取付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、「建築板材14を建築下地12の表面に取り付けるための建築板材の取付装置10であって、建築下地12に固定される固定部材16と、固定部材16に一端が回動可能に取り付けられ、建築板材14を建築下地12の表面で保持する回動保持部材18と、回動保持部材18の回動を抑止する回動抑止機構20とで構成されており、回動保持部材18は、建築下地12の表面に位置決めされた建築板材14の表面に当接する板材当接部40を有しており、回動抑止機構20は、板材当接部40を建築板材14の表面に当接させた状態で回動保持部材18の回動を抑止するように形成されていることを特徴とする建築板材の取付装置10。」である。
【0009】
この発明に係る取付装置10を使用する際には、建築下地12に固定部材16を固定し、建築板材14を建築下地12の表面に位置決めし、板材当接部40を建築板材14の表面に当接させた状態で、回動保持部材18の回動を回動抑止機構20により抑止する。建築板材14を、建築下地12の表面に位置決めする際には、板材当接部40を逃がす必要があるが、この発明では、回動保持部材18の一端が固定部材16に回動可能に取り付けられているので、建築下地12から離れる方向へ板材当接部40を逃がすことができる。
【0010】
つまり、従来の天井装置1(図10)では、天井材載置片5の幅方向中央部に設けられた被嵌部8が連結片3に対して回動可能に取り付けられており、幅方向他方端部に形成されたストッパー部7が連結片3の下面に当接していたので、天井材載置部6を建築下地から離れる方向へ逃がすことができなかったが、この発明ではそのようなことはない。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した取付装置において、「回動抑止機構20は、固定部材16に設けられた固定側係合部24と、回動保持部材18に設けられ、固定側係合部24と係合する可動側係合部42とを有すること」を特徴とする。
【0012】
この発明によれば、固定部材16に設けられた固定側係合部24と回動保持部材18に設けられた可動側係合部42とを係合することにより、板材当接部40を建築板材14の表面に当接させるとともに、回動保持部材18の回動を抑止することができる。
【0013】
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した取付装置10において、「回動抑止機構20は、固定部材16と回動保持部材18との間に架設された弾性体50を有し、弾性体50の弾性力により、板材当接部40を建築板材14の表面に当接するように形成されていること」を特徴とする。
【0014】
この発明によれば、固定部材16と回動保持部材18との間に架設された弾性体50の弾性力により、回動保持部材18の回動を抑止するとともに、板材当接部40を建築板材14の表面に当接させることができる。
【0015】
請求項4に記載した発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された取付装置10において、「固定部材16および回動保持部材18の一方または双方に照明装置66が設けられていること」を特徴とする。
【0016】
この発明は、照明装置66によって装飾的機能を取付装置10に付加したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建築板材を建築下地の表面に取り付ける際に、片手で建築板材を保持しながら保持具を打ち込む等しなくてもよいので施工性を向上できる。また、従来のように、板材当接部を一時的に逃がすための空間S(図11)を確保する必要がないので、居住空間の狭小化を防ぐことができる。
【0018】
さらに、請求項4に記載の取付装置によれば、取付装置に装飾的機能を付加することができるので、デザイン性に優れた居住空間を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に従って説明する。図1は、本発明の第1実施例に係る取付装置10Aを示す斜視図である。この取付装置10Aは、図2に示すように、下地板もしくは軽量鉄骨下地などの建築下地12に、壁材や天井材などの建築板材14を取り付けるためのものであり、固定部材16と、回動保持部材18と、回動抑止機構20とを備えている。
【0020】
固定部材16は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等のような合成樹脂によって形成された部材であり、取付ネジ21(図2)によって建築下地12に固定される長尺板状のベース22と、ベース22のほぼ中央部から下向きに延びて形成された固定側係合部24と、回動保持部材18を取り付けるための回動保持部材取付用板材25とで一体的に形成されている。なお、ベース22の所定位置には、取付ネジ挿通用孔28が設けられている。
【0021】
固定側係合部24は、高さの異なる2枚の係合用板材30を所定の間隔を隔てて配設することによって構成されており、2枚の係合用板材30の対向する側面には、複数の係合突条が高さ方向に並んで鋸歯状に形成されている。高さが高い方の係合用板材30は、回動保持部材18と当接してその回動を抑止するストッパーとして機能し、この高さによって回動保持部材18の固定位置が決められる。
【0022】
回動保持部材取付用板材25は、高さが低い方の係合用板材30の下端からベース22と平行に延びる板材であり、回動保持部材取付用板材25の端部には、固定部材16に回動保持部材18を回動可能に取り付けるために、軸34を挿通する孔36が設けられている。なお、回動保持部材取付用板材25とベース22との間隔は、建築板材14の端部を挿入する空間Aを確保するために、建築板材14の厚さよりもやや大きめの寸法に設定されている。
【0023】
回動保持部材18は、固定部材16に軸34を介して回動可能に取り付けられたものであり、ABS樹脂等のような合成樹脂によって形成されている。回動保持部材18は、長尺板状の基部38を有しており、基部38の幅方向一方端部には、建築板材14に当接される当たり部41を有する板材当接部40が形成されている。また、基部38の幅方向中央部には、板材当接部40と同じ側において、基部38の主面に対して直交する方向へ延びて板状の可動側係合部42が形成されており、可動側係合部42の両面には、係合用板材30の係合突条に係合される鋸歯状の係合突条が形成されている。さらに、基部38の幅方向他方端部には、固定部材取付部44が形成されており、固定部材取付部44の端部には、軸34を挿通するための孔46(図示せず)が設けられている。
【0024】
回動抑止機構20は、固定部材16に設けられた固定側係合部24と回動保持部材18に設けられた可動側係合部42とで構成されており、可動側係合部42が固定側係合部24に、鋸歯状の係合突条において係合される。これにより、回動保持部材18が固定部材16に対して固定されるとともに、回動保持部材18の逆方向への回動が禁止される。
【0025】
第1実施例に係る取付装置10を用いて建築板材14を取り付ける手順について、図3により説明する。なお、図3では、2個の取付装置10Aを用いて、建築板材14を取り付ける場合を示している。取付装置10Aの取付位置、および取付装置10Aの必要本数は、建築板材14を施工したい天井面などの広さと、使用する建築板材14の幅との関係などから決定される。
【0026】
まず、建築下地12の所定位置に、取付ネジ21を用いて取付装置10を螺着する。そして、建築板材14を斜めに保持し、建築板材14の一端を斜め下から押し込むようにして、一方(図3における右側)の取付装置10Aの空間Aに挿入する(図3(a)参照)。そして、建築板材14の他端部を水平に持ち上げ、先に建築下地12に螺着しておいた他方(図3における左側)の取付装置10Aのベース22の下面に建築板材14を位置決めする(図3(b)参照)。そして、他方の取付装置10Aの可動側係合部42を固定側係合部24に嵌合させる。
【0027】
この状態において、板材当接部40は建築板材14の表面に当接されているとともに、回動保持部材18の回動は抑止されている(図3(c)参照)。そして、建築板材14が板材当接部40とベース22とで挟持され、建築下地12に取り付けられている。
【0028】
このように、建築板材14の取り付けに際し、片手で建築板材14を保持しつつ保持具を打ち込む等しなくてもよいので施工性を向上できる。また、建築板材14を、ベース22の下面に位置決めする際に、板材当接部40を逃がす必要があるが、この発明では、回動保持部材18の一端が固定部材16に回動可能に取り付けられているので、建築下地12から離れる方向へ板材当接部40を逃がすことができる。このため、建築下地12側に板材当接部40を逃がすための空間が不要となり、居住空間の狭小化を防ぐことができる。
【0029】
さらに、空間Aが確保されているので、建築板材14の一端を空間Aに挿入することにより、取付装置10Aの回動抑止機構20を操作することなく、建築板材14の一端を保持することができるので、建築板材14の施工性を向上できる。
【0030】
本発明の第2実施例に係る取付装置10Bは、図4に示すように、取付装置10Aの変形例であり、回動抑止機構20を構成する固定側係合部24および可動側係合部42の形状が取付装置10Aと異なる。
【0031】
取付装置10Bの固定側係合部24は、ベース22のほぼ中央部から下向きに延びる板状の係合用板材30と、係合用板材30の下端からベース22と平行に延びる板状の係合板材48と、係合用板材30の中央部からベース22と平行に延びる板状の回動保持部材取付用板材25とによって形成されている。また、取付装置10Bの可動側係合部42の端部は鈎状に形成されており、係合板材48の端部に、鈎状に形成された可動側係合部42が係止されることにより、回動保持部材18の回動が抑止される。
【0032】
本発明の第3実施例に係る取付装置10Cは、図5および6に示すように、回動抑止機構20が固定部材16と回動保持部材18との間に架設された弾性体50を有することを特徴とするものであり、固定部材16と、回動保持部材18と、弾性体50を有する回動抑止機構20とを備えている。
【0033】
固定部材16は、建築下地12に固定されるABS製の部材であって、ベース22と弾性体取付部材52と回動保持部材取付用板材25とで一体的に形成されている。
【0034】
ベース22は、取付ネジ21により建築下地12に固定される長尺の板状部材であり、ベース22の所定位置に取付ネジ挿通用孔28が設けられている。
【0035】
弾性体取付部材52は、ベース22のほぼ中央下面から下方に延びる長尺の板状部材である垂直部54と、垂直部54の端部に設けられた半円状の凹部であって、弾性体50の一端を取り付けるための固定側弾性体取付部56とで形成されている。
【0036】
回動保持部材取付用板材25は、垂直部54の端部からベース22と平行に延びる「く」字状の板状部材であり、回動保持部材取付用板材25の端部には、回動保持部材18を取り付けるための半円状の凸部58が形成されている。なお、回動保持部材取付用板材25とベース22との間隔は、建築板材14の端部を挿入する空間(空間A)を確保するために、建築板材14の厚さとほぼ同じ寸法に設定されている。
【0037】
回動保持部材18は、固定部材16に回動可能に取り付けられているABS製の部材であって、長尺の板状部材である基部38と、基部38の幅方向一端部から基部38と直交する向きに延びる板状の板材当接部40と、基部38の幅方向他端部から板材当接部40と平行に延びる板状の固定部材取付部44とで形成されている。そして、板状当接部40の端部には、建築板材14に当接する当たり部41が形成されている。また、固定部材取付部44の端部には、固定部材16の凸部58に嵌合される凹部62が形成されている。さらに、当たり部41の固定部材取付部44と向き合う面には、弾性体50の他端を取り付けるための半円状の凹部である可動側弾性体取付部60が形成されている。
【0038】
弾性体50は、固定部材16と回動保持部材18との間に架設された金属製の板バネであり、弾性体50の一端は、固定側弾性体取付部56に取り付けられており、弾性体50の他端は、可動側弾性体取付部60に取り付けられている。
【0039】
回動抑止機構20は、固定部材16に設けられた固定側弾性体取付部56と、回動保持部材18に設けられた可動側弾性体取付部60と、弾性体50とで構成されている。図5では、弾性体50が上向きに湾曲した状態で取り付けられており、板材当接部40は建築板材14の表面から隔離された状態(解除状態)となっている。なお、図5に示すように、板材当接部40の当たり部41が建築板材14の表面に当接する回動保持部材18の回動方向を「X方向」と記載し、当たり部41が建築板材14の表面から隔離する回動保持部材18の回動方向を「Y方向」と記載する。
【0040】
図5に示す状態では、弾性体50の弾性力により、回動保持部材18をY方向に回動させる力が付勢されているので、回動保持部材18がX方向に不所望に動くことがない。次に、作業者が回動保持部材18をX方向に回動させていくと、弾性体50の曲率が小さくなっていき、弾性体50の曲率がある程度まで小さくなると、弾性体50が下向きに湾曲した状態(図6)となる。この状態では、弾性体50の弾性力により、回動保持部材18をX方向に回動させる力が付勢されているので、当たり部41が建築板材14の表面を押圧する。これにより、建築板材14を板材当接部40とベース22とで挟持して、建築下地12に取り付けることができる。
【0041】
本発明の第4実施例に係る取付装置10Dは、図7に示すように、取付装置10Cの変形例であり、主に回動抑止機構20を構成する弾性体50の形状が取付装置10Cと異なる。
【0042】
回動抑止機構20は、図7および8に示すように、固定部材16に設けられた固定側弾性体取付部56と、板材当接部40の中央部から板材当接部40に直交して延びる板状の可動側弾性体取付部材64と、固定部材16と回動保持部材18との間に架設された弾性体50とで構成されている。また、可動側弾性体取付部材64の端部には、可動側弾性体取付部60が設けられている。なお、弾性体50の一端は、可動側弾性体取付部60に取り付けられており、弾性体50の他端は、固定側弾性体取付部56に取り付けられている。本実施例では、弾性体50として、常温でゴム状の弾性を有する高分子物質であるエラストマが使用されている。さらに、弾性体50は、一端が固定側弾性体取付部56に取り付けられている固定側弾性体50aと、一端が可動側弾性体取付部60に取り付けられている可動側弾性体50bと、一端が固定側弾性体50aの他端と接続されており、他端が可動側弾性体50bの他端と接続されている中央部弾性体50cとで形成されている。
【0043】
図7では、板材当接部40が建築板材14の表面から隔離された状態(解除状態)となっている。この状態において、固定側弾性体50aと、中央部弾性体50cとの接合部イ(図7中(イ)部)は、図7において右向きに凸となるV字状になっており、可動側弾性体50bと、中央部弾性体50cとの接合部ロ(図7中(ロ)部)は、図7において左向きに凸となるV字状になっている。一方、板材当接部40が建築板材14の表面に当接された状態(当接状態)では、図8示すように、接合部イおよびロにおけるV字状の凸の向きが解除状態(図7)と反対になる。このように、本実施例における解除状態と当接状態とを切り替えるためには、作業者が回動保持部材18を回動させて、接合部イおよびロにおけるV字状の向きを切り替えなければならない。換言すれば、解除状態(図7)または当接状態(図8)にある回動保持部材18は、外部から力が付勢されない限り、不所望に当接状態あるいは解除状態に切り替わることがない。これにより、取付装置10Dを当接状態とすることで、建築板材14を板材当接部40とベース22とで挟持して、建築下地12に取り付けることができる。
【0044】
本発明の第5実施例に係る取付装置10Eは、図9に示すように、固定部材16と回動保持部材18と照明装置66とで構成されている。固定部材16は、ベース22と、角パイプ状に形成された中央部68と、中央部68の両端下部に取り付けられた2枚の係合用板材30とで形成されている。そして、固定部材16には、端部が鈎状に形成された可動側係合部42を有する2つの回動保持部材18が回動可能に取り付けられている。また、中央部68には、取付装置10Eに装飾的機能を付加するための照明装置66が下向きに取り付けられている。なお、本実施例では、照明装置66に発光ダイオード(以下、「LED」と記載する。)が用いられている。
【0045】
取付装置10Eに照明装置66を取り付けることにより、取付装置10Eに装飾的機能を付加することができるので、デザイン性に優れた居住空間を提供することができる。さらに、照明装置66を発光させるための電気配線(図示せず)を中央部68の内部空間に配設することにより電気配線が隠蔽されるので、建築板材14施工後の見栄えを良くすることができる。
【0046】
なお、本実施例では、照明装置66が固定部材16に取り付けられているが、照明装置66は、回動保持部材18に取り付けられてもよく、固定部材16および回動保持部材18に取り付けられてもよい。また、照明装置66の発光色も、所望の色を用いることができる。
【0047】
本発明に係る取付装置10は、取付ネジ21により建築下地12に取り付けられているが、ネジの他に、釘、両面粘着テープ、接着剤などを用いてもよい。また、取付ネジ挿通用孔28に、あらかじめ皿もみ加工を施しておくことにより、空間Aに取付ネジ21の頭が出ず、建築板材14を空間Aに挿入したときに、取付ネジ21の干渉を防ぐことができる。
【0048】
建築板材14をより強固に建築下地12に取り付ける場合には、取付装置10により建築板材14を取り付けた後、接着剤などを用いてもよい。
【0049】
建築下地12には、合板、MDFなどの木質板材、石膏ボード、ケイ酸カルシウムボードなどを用いることができるが、取付装置10を固定するための釘やネジなどを保持する力の高い面材が好ましい。
【0050】
建築板材14には、ロックウール板、火山性ガラス質複層板、インシュレーションボード、石膏ボード、合板、MDF、ケイ酸カルシウムボード、合成樹脂板、金属板、無垢木材板などを用いることができる。さらに、建築板材14には、必要に応じて表面に化粧シート、塗装などによる化粧を施しておいてもよい。
【0051】
実施例では、本発明に係る取付装置10を天井施工に用いる場合について説明したが、取付装置10を垂直面に配設された建築下地に取り付けることにより、壁材、腰壁材などへの建築板材14の取付に用いることもできる。
【0052】
取付装置10の材質はABS樹脂に限られず、アルミニウム合金などの金属、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂などの各種樹脂を用いてもよい。なお、取付装置10が長尺となる場合には、適度なしなりを持つ樹脂を用いる方が施工時に扱い易いので好適である。また、取付装置10は、建築板材14を施工する面に応じた長さであれば長尺でなくてもよい。
【0053】
また、固定部材16や回動保持部材18を樹脂で形成する場合、その内部や表面にアルミ合金などの金属板を付加することにより、取付装置10の耐火性を向上させることができるとともに、各部材の強度を高めることができる。
【0054】
また、取付装置10の色は、居住空間のデザインに応じた色を用いることができる。しかし、取付装置10に白色系などの明色を使うと、取付装置10と建築板材14との間に生じる隙間の影が目立ってしまい、外観上、見苦しいものとなる場合がある。そこで、このような影を目立たなくするため、建築板材14の表面と当接する板材当接部40の端面に、あらかじめアクリルや樹脂製の透明部材を取り付けておくことができる。これにより、光が透明部材を照射しても影を生じさせることがなく、建築板材14を取付装置10に取り付けた際に、建築板材14の表面と板材当接部40との間に生じる影を目立たなくして、仕上がりの美感を向上させることができる。なお、この透明部材は、無色透明でも、有色透明でもよい。
【0055】
さらに、弾性体50として第3実施例では板バネが、第4実施例ではエラストマが用いられているが、ゴムやコイルバネなどを弾性体50に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施例に係る取付装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る取付装置を用いて建築下地に建築板材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る取付装置を用いた、建築板材の取付方法を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る取付装置を用いて建築下地に建築板材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る取付装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る取付装置を用いて建築下地に建築板材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の第4実施例に係る取付装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第4実施例に係る取付装置を用いて建築下地に建築板材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第5実施例に係る取付装置を用いて建築下地に建築板材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図10】従来の天井装置を用いて建築下地に天井材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図11】従来の天井装置を用いた、天井材の取付方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10…取付装置
12…建築下地
14…建築板材
16…固定部材
18…回動保持部材
20…回動抑止機構
24…固定側係合部
40…板材当接部
42…可動側係合部
50…弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築板材を建築下地の表面に取り付けるための建築板材の取付装置であって、
前記建築下地に固定される固定部材と、前記固定部材に一端が回動可能に取り付けられ、前記建築板材を前記建築下地の表面で保持する回動保持部材と、前記回動保持部材の回動を抑止する回動抑止機構とで構成されており、
前記回動保持部材は、前記建築下地の表面に位置決めされた前記建築板材の表面に当接する板材当接部を有しており、前記回動抑止機構は、前記板材当接部を前記建築板材の表面に当接させた状態で前記回動保持部材の回動を抑止するように形成されていることを特徴とする建築板材の取付装置。
【請求項2】
回動抑止機構は、
固定部材に設けられた固定側係合部と、
回動保持部材に設けられ、前記固定側係合部と係合する可動側係合部とを有することを特徴とする請求項1に記載の建築板材の取付装置。
【請求項3】
回動抑止機構は、
固定部材と回動保持部材との間に架設された弾性体を有し、
前記弾性体の弾性力により、板材当接部を建築板材の表面に当接するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築板材の取付装置。
【請求項4】
固定部材および回動保持部材の一方または双方に照明装置が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の建築板材の取付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−138586(P2007−138586A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334783(P2005−334783)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】