説明

建築板

【課題】再利用の際の手間や製造の際の手間を簡素化することができる建築板を提供する。
【解決手段】多数の中空孔2を有する基材1の端部を実加工することにより、一部の中空孔2を実加工面3に露出させる。実加工面3に露出した中空孔2を溝状の排水路2aとして形成することができ、実接合部分の隙間に浸入した水をこの排水路2aを通じて排水することができて防水性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅、商業建築物、工場、倉庫などの外装材等として用いられる建築板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外装材として用いられる建築板は、セメントを主成分とする所謂窯業系サディング材で形成されている(例えば、特許文献1参照)。このような建築板Aにはその端部に実加工が施され、隣接する建築板A、Aを実接合により接続するようにして施工するものが提案されている。例えば、建築板Aとしては、その一端部において厚み方向の表面側略半分が実部10として突設されており、他端部(上記一端部と反対側の端部)において厚み方向の裏面側略半分が受け実部11として突設されたものがあり、この場合、図5に示すように、隣接する建築板A、Aのうち、一方の建築板Aの実部10を他方の建築板Aの受け実部11の表面側に重ねて実接合することによって、隣接する建築板A、Aを接続するようにしている。ここで、実接合部分の防水性を高めるために、実受け部11の表面には発泡樹脂等のホットメルトを用いてパッキン15が形成されており、実部10を受け実部11の表面側に重ねた際に、パッキン15を実部10の裏面に密着させることにより、実接合部分の隙間を塞ぐようにしている。
【0003】
しかし、このようなパッキン15を設けることで問題が生じている。すなわち、近年、環境問題から建築板製造メーカーでは、施工現場で発生した端材を回収し、粉砕し、建築板の原料などとして再利用しているが、端材に上記パッキン15が付着している状態では、建築板の原料にパッキン15の樹脂が異物として混入してしまうため、製造面及び品質面で各種の問題が生じる。例えば、製造面では製造設備に樹脂が付着して所望の形状に成型できないなどの問題が生じ、品質面ではセメントの結合力が弱くなり強度低下を起こすなどの問題が生じる。従って、端材を粉砕する前にパッキン15を取り除く必要があり、この作業に非常に手間がかかるという問題があった。しかも、建築板Aを製造する工程でパッキン15を接着加工する必要があり、製造面でも手間がかかるという問題があった。
【特許文献1】特許2591625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、再利用の際の手間や製造の際の手間を簡素化することができる建築板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る建築板Aは、多数の中空孔2を有する基材1の端部を実加工することにより、一部の中空孔2を実加工面3に露出させて成ることを特徴とするものである。
【0006】
本発明の請求項2に係る建築板Aは、請求項1において、実加工により形成された実部4を接続することにより実加工面3に露出した中空孔2を対向可能に形成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項3に係る建築板Aは、請求項1又は2において、複数の中空孔2、2…を実加工面3の全面に亘って露出させて成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項4に係る建築板Aは、請求項1乃至3のいずれか一項において、基材1は、セメントと水と油性物質を主成分とするセメント含有逆エマルジョン組成物からなるセメント系成形材料で形成されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、実加工面3に露出した中空孔2を溝状の排水路2aとして形成することができ、実接合部分の隙間に浸入した水をこの排水路2aを通じて排水することができて防水性を確保することができるものであり、従って、従来のようにパッキン15を設ける必要が無くなって、端材を再利用する際の手間や建築板を製造する際の手間を簡素化することができるものである。
【0010】
請求項2の発明では、実加工面3に露出した溝状の排水路2a、2aが対向することにより、排水路2aの断面積を大きくすることができ、この排水路2a、2aで水が流れやすくなって、排水性能を高めることができるものである。
【0011】
請求項3の発明では、実接合部分に複数の排水路2aを形成することができ、排水性能を高めることができるものである。
【0012】
請求項4の発明では、基材1がセメントと水と油性物質を主成分とするセメント含有逆エマルジョン組成物からなるセメント系成形材料で形成されたものであるので、多数の中空孔2を有する基板1を容易に形成することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
本発明の建築板Aは、図2に示すように、平板状に形成される基板1の一端部と他端部(一端部と反対側の端部)に実部10と実受け部11とを切削や切断などの実加工により形成したものである。実部10及び実受け部11は基板1の各端部の全長にわたって突設されており、実部10の厚みは基板1の表面側略半分の厚みと同等に形成されていると共に実受け部11の厚みは基板1の裏面側略半分の厚みと同等に形成されている。また、基板1には多数の中空孔2、2…が形成されている。この中空孔2は実部10及び実受け部11を含む基板1の全体にわたって形成されており、実部10及び実受け部11の長手方向と平行に全長にわたって形成されている。また、中空孔2の両端は、実部10と実受け部11とを形成していない基板1の他の端部に開口している。そして、上記のように実部10と実受け部11は実加工により形成されているので、実加工により形成される基板1の実加工面3(実部10と実受け部11の表面を含む基板1の端面)には一部の中空孔2が溝状の排水路2aとなって露出した状態となる。
【0015】
上記のように形成される建築板Aは、その複数枚を縦横に並べて建物の壁材などの外装材として施工されるが、横方向に隣接する建築板A、Aは、一方の建築板Aの実受け部11の表面側に他方の建築板Aの実部10を重ねるように実接合して接続されるものである。従って、隣接する建築板A、Aの実接合部分の隙間に多数の溝状の排水路2aが開口した状態で存在することになる。また、建築板Aが壁の外装材の場合は、中空孔2及び溝状の排水路2aは上下方向(鉛直方向)に長くなるように配置し、建築板Aが屋根の外装材の場合は、中空孔2及び溝状の排水路2aは屋根の傾斜方向に長くなるように配置する。そして、本発明の建築板Aでは実接合部分の隙間に浸入した水を排水路2aで縁切りし、その後、排水路2aを通じて水を流れ落として排水することができ、建築板Aの裏面側(屋内側)への水の浸入を防止して防水性を確保することができるものである。従って、従来のようにパッキンを必要としないものである。
【0016】
本発明の建築板Aにおいて、中空孔2の個数や直径は基板1の板厚や幅寸法に応じて適宜設定可能であり、また、中空孔2の断面形状は円状や四角状、六角状などの任意のものとすることができるが、排水を効率よく行うために、排水路2aの開口幅は4mm以上で排水路2aの断面積は6mm以上であることが好ましい。尚、排水路2aの開口幅と断面積の特に上限はないが、建築板Aの強度低下を防止するなどのために、開口幅は10mm以下、断面積は78mm以下とするのが好ましい。また、本発明の建築板Aは基板1の表面側及び裏面側を厚くして凹凸模様などを形成する層を設けてもよい。
【0017】
また、上記では実接合として合いじゃくりを例示したが、これに限らず、図3に示すように、雄実12と雌実13とからなる実接合にしてもよい。この場合、雄実12の表面及び雌実13に臨む内面が実加工面3となって排水路2aが形成されるものである。また、上記では多数の排水路2aを実加工面3に形成したが、これに限らず、図4(a)に示すように、一個の排水路2aを実加工面3に形成するだけでもよい。また、図4(b)に示すように、複数の排水路2aを実加工面3に形成しても、それらを対向しない位置に形成してもよい。
【0018】
本発明の建築板Aは無機系、樹脂系、金属系などの任意の材料で形成することができるが、セメントと水と油性物質を主成分とするセメント含有逆エマルジョン組成物からなるセメント系成形材料を用いることができる。これにより、多数の中空孔2を有する基板1を押し出し成形により容易に形成することができ、また、吸水が少なく寒冷地において凍結が発生し難くなるものである。この組成物において、セメントと水の比率は任意に設定することができるが、重量比率で、セメント1に対して水0.3〜2の範囲が一般的に好ましい。
【0019】
セメントとしては、特に制限されるものではないが、ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ハイアルミナセメント、シリカヒュームなどを挙げることができるものであり、これらを一種単独で用いたり、二種以上を併用したりすることができる。
【0020】
油性物質は水と逆エマルジョン(W/Oエマルジョン)を形成するためのものであり、特に制限されるものではないが、通常は疎水性の液状物質が利用され、例えばトルエン、キシレン、灯油、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができ、これらを一種単独で用いたり、二種以上を併用したりすることができる。油性物質の配合量は、セメント含有逆エマルジョン組成物中の水と固形分の総量に対して5〜10体積%の範囲が好ましい。
【0021】
セメント含有逆エマルジョン組成物には上記の成分の他に、乳化剤を配合することが好ましい。乳化剤は逆エマルジョンに安定性を付与するために配合されるものであり、例えばソルビタンセスキオール、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ジエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセロールモノオレート等の非イオン界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を用いることができる。乳化剤の配合量はセメント含有逆エマルジョン組成物中の水と固形分の総量に対して1〜3体積%の範囲が好ましい。
【0022】
セメント含有逆エマルジョン組成物中にはさらに、適宜量の補強材や各種添加剤を配合することができる。補強材としては、例えば砂利、パーライト、シラスバルーン、ガラス粉、アルミナシリケートなどの骨材、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維等の合成繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、パルプなどの補強繊維を挙げることができる。
【0023】
以下に、建築板Aの製造方法の一例を示す。まず、乳化剤(例えば、ヤシ油1.0〜2.0質量部)、スチレンモノマー4.0〜6.0質量部、水35.0〜50.0質量部及び適量の架橋剤と重合開始剤とを混合して逆エマルジョンを作製する。次に、この逆エマルジョン100質量部と、セメント70〜90質量部と、軽量化材0.3〜5.0質量部と、補強繊維1.0〜2.0質量部とを強制攪拌機あるいは連続混合機にて混合してセメント含有逆エマルジョン組成物を調製する。次に、セメント含有逆エマルジョン組成物を押出成形機に投入して成形シートを押し出し成形する。このとき、押出成形機にはあらかじめ成型しようとする中空断面形状の口金を取り付けておく。この後、押出成形機から押し出し成形された中空断面形状の成形シートをトレイで受け取る。次に、成形シートを蒸気養生を行って硬化させた後、表面や端面の仕上げ加工を行うと共に所定の寸法に裁断して基板1を形成する。この後、上記の実加工を行って実部10及び実受け部11を形成し、本発明の建築板Aとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は断面図、(b)は接続状態を示す断面図、(c)は一部の斜視図である。
【図2】同上の一部を省略した斜視図である。
【図3】同上の他例を示す断面図である。
【図4】同上の他例を示し、(a)(b)は一部を拡大した断面図である。
【図5】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 基板
2 中空孔
3 実加工面
A 建築板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の中空孔を有する基材の端部を実加工することにより、一部の中空孔を実加工面に露出させて成ることを特徴とする建築板。
【請求項2】
実加工により形成された実部を接続することにより実加工面に露出した中空孔を対向可能に形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の建築板。
【請求項3】
複数の中空孔を実加工面の全面に亘って露出させて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築板。
【請求項4】
基材は、セメントと水と油性物質を主成分とするセメント含有逆エマルジョン組成物からなるセメント系成形材料で形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建築板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−13578(P2009−13578A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172823(P2007−172823)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】