説明

建築物緑化システム

【課題】緑化植物栽培用の水や培養液が建築物の屋上面や壁面に流出することがなく、建築物の屋上面や壁面の耐久性を低下させることのない建築物緑化システムを提供する。
【解決手段】噴霧装置2の各噴霧ノズル2Fが工場の屋上面Rと緑化植物Pの植栽床1との間の空間に緑化植物P用の培養液のミストを噴霧すると、その培養液のミストが植栽床1に植え込まれた緑化植物Pの根毛から直接吸収される。こうして緑化植物Pが栽培され、工場の屋上面Rが緑化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや工場などの建築物の屋上面や壁面を緑化植物により緑化するための建築物緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化対策の一環として緑化運動が推進されており、ビルや工場などの建築物においては、その屋上を緑化植物により緑化するシステムや装置が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、植物の育成に十分な通気性を確保できる屋上緑化システムとして、特定構造の育成基盤(100)を備えた屋上緑化システムが記載されている。この育成基盤(100)は、複数の凸条が並設された薄肉金属パネル(200)上に透水シート(105)を介して植物育成用の軽量土(106)を配置した構造を有するものである。
【0004】
一方、特許文献2には、軽量化により建物に対する負担を軽減させるようにした屋上緑化装置として、特定構造の緑化構造体(22)を備えた屋上緑化装置が記載されている。この緑化構造体(22)は、格子状を呈するメッシュボードからなる載置部(20)上に、板状を呈する繊維ボード(16a)からなる植栽部(16)を載置した構造を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−259409号公報
【特許文献2】特開2010−41969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された屋上緑化システムにおいては、緑化植物への散水、すなわち育成基盤(100)の軽量土(106)への散水が必要であり、その散水によって育成基盤(100)の重量が大幅に増大する。加えて、軽量土に散水された水が軽量土から溢れ、育成基盤を超えて屋上へ流出することがある。すなわち、特許文献1に記載された屋上緑化システムは、屋上の耐久・耐水性に大きな影響があり、既存のビルや工場などの建築物の屋上を特許文献1に記載の屋上緑化システムで緑化する場合、育成基板を設置するに先立って、屋上に新たな耐久・耐水対策を講じる必要がある。
【0007】
同様に、特許文献2に記載された屋上緑化装置においても、緑化植物への散水、すなわち緑化構造体(22)の植栽部(16)への散水が必要であり、その散水によって緑化構造体(22)の重量が大幅に増大すると共に、散水された水が屋上へ流出することがあり、屋上の耐久性・耐水性に大きな影響がある。従って、既存のビルや工場などの建築物の屋上を特許文献2に記載された屋上緑化装置で緑化する場合においても、屋上に新たな耐久・耐水対策を講じる必要がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に対応してなされたものであり、緑化植物栽培用の水や培養液が建築物の屋上面や壁面に流出することがなく、建築物の屋上面や壁面の耐久・耐水性を低下させることのない建築物緑化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明に係る建築物緑化システムは、建築物の屋上面や壁面を緑化植物により緑化するためのシステムであって、建築物の屋上面や壁面との間に所定空間を開けて設置される緑化植物の植栽床と、植栽床と屋上や壁面との間の空間に緑化植物栽培用の水や培養液を噴霧する噴霧装置とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る建築物緑化システムでは、噴霧装置が建築物の屋上面や壁面と緑化植物の植栽床との間の空間に緑化植物栽培用の水や培養液を噴霧すると、その水や培養液の噴霧が植栽床に植え込まれた緑化植物の根毛から直接吸収されることにより、緑化植物が栽培され、こうして建築物の屋上面や壁面が緑化される。
【0011】
本発明の建築物緑化システムにおいて、緑化植物の植栽床は、金属その他各種材料製のネットなどの網状体に挟持された不織布を有する構造とすることができる。この場合、植栽床が極めて軽量化する。
【0012】
また、本発明の建築物緑化システムにおいて、噴霧装置は、ポンプによる水や培養液の圧送供給路に設けられた複数の噴霧ノズルを有する構成とすることができる。この場合、ポンプが水や培養液を圧送すると、その圧力により複数の噴霧ノズルが水や培養液を噴霧する。
【0013】
さらに、本発明の建築物緑化システムは、植栽床を屋上面に設置するための支持部材を兼用する複数のプランターやポットと、各プランターやポットに植栽された緑化植物に灌水する灌水装置と、各プランターやポットからの排水を回収して前記噴霧装置に供給する排水回収装置とを備えた構成とすることができる。この場合、各プランターやポットにも緑化植物が栽培されて屋上面が緑化される。
【0014】
ここで、排水回収装置により回収される排水を集める排水受けを各プランターが有していると、排水回収装置が排水を確実に回収できるので好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る建築物緑化システムでは、噴霧装置が建築物の屋上面や壁面と緑化植物の植栽床との間の空間に緑化植物用の水や培養液を噴霧することにより、植栽床に植え込まれた緑化植物が栽培され、こうして建築物の屋上面や壁面が緑化される。
【0016】
ここで、本発明に係る建築物緑化システムによれば、緑化植物栽培用の水や培養液が建築物の屋上面や壁面に流出することがないため、屋上面や壁面の耐久・耐水性を低下させることがない。従って、既存の建築物の屋上面や壁面に対する新たな耐久工事はもとより、防水シートの敷設やゴムコーティングなどの防水工事も不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建築物緑化システムの概要を示す斜視図である。
【図2】図1に示した建築物緑化システムの植栽床の構造を示す断面図である。
【図3】第2実施形態に係る建築物緑化システムの概要を示す斜視図である。
【図4】図3に示した建築物緑化システムのプランターの構造を示す斜視図である。
【図5】図4に示したプランターの横断面図である。
【図6】第3実施形態に係る建築物緑化システムの概要を示す斜視図である。
【図7】第4実施形態に係る建築物緑化システムの概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して本発明に係る建築物緑化システムの実施の形態を説明する。図1および図2に示すように、第1実施形態に係る建築物緑化システムは、建築物である例えば工場の屋上面Rを緑化植物Pにより緑化するためのシステムである。
【0019】
この建築物緑化システムは、工場の屋上面Rとの間に所定空間を開けて設置される緑化植物Pの植栽床1と、この植栽床1と屋上面Rとの間の空間に緑化植物Pの栽培用の水や培養液を噴霧する噴霧装置2とを備えている。
【0020】
緑化植物Pとしては、セダム、芝生、ハーブ類、一年草草花、多年草草花などが挙げられる。このうち、ベンケイソウ科に属する常緑多年生の多肉植物のセダムは、サボテンなどと同様に乾燥に強く、しかも夏の高温や冬の低温にも強いため、建築物緑化に好適である。
【0021】
特に、建築物緑化に適した多年草のセダムとしては、メキシコマンネングサ、モリムラマンネングサ、タイトゴメ、ツルマンネングサ、コーラルカーペット、サカサマンネングサ、マルバマンネングサ、オノマンネングサ、キリンソウなどが挙げられる。
【0022】
また、建築物緑化に使用できる多年草の芝生としては、高麗芝が一般的であるが、姫高麗芝、朝鮮芝、ビロード芝などの日本芝や、バーミューダグラス類、ベントグラス類、ライグラス類、ブルーグラス類、フェスク類などの西洋芝も使用できる。
【0023】
なお、建築物緑化に使用できる多年草のハーブ類としては、ローズマリー類、ラベンダー類、タイム、セージ類、スイートバジル、カモミール、ミント類が挙げられる。
【0024】
さらに、上記以外の多年草草花としては、宿根バーベナ、ヤブラン、フィリヤブラン、アジュガ、シバザクラ、マツバギク、ユリオプスデージー、ガザニア、ブルーサルビア、イトバハルシャギク、ガウラ、タマスダレ、ドイツスズラン、クロッカス、ムスカリなどが挙げられる。
【0025】
なお、一年草草花として、春咲きのパンジー、ビオラ、クリサンマセム・ノースポール、クリサンマセム・ムルチコーレ、デージー、リナリア、夏咲きのマツバボタン、キバナコスモス、ホソバヒャクニンソウ、春〜秋咲きのマリーゴールド、ベゴニア・センパフローレンス、ペチュニア、ハナスベリヒユなどが挙げられ、これらの一年草草花も本発明の建築物緑化システムにおける緑化植物Pとして好適に使用することができる。
【0026】
緑化植物Pには、栽培用の水の他に、あるいは水と共に培養液を噴霧する。この培養液は、水溶性肥料を水に溶かして5,000〜10,000倍に希釈したものであり、その肥料の種類あるいは肥料配分は、植栽される緑化植物Pの種類、噴霧する肥料の種類に応じて適宜選定される。
【0027】
ここで、植栽床1は、緑化植物Pを植え込むためのものであり、例えば図2に示すように、2枚の金網1A,1A間に1枚または数枚の不織布1Bが挟持された構造を有し、極めて軽量化されている。金網1Aとしては、織金網、クリンプ金網、エキスパンドメタルなどの各種のステンレス金網またはビニール被覆金網が使用できる。不織布1Bは適宜の合成樹脂繊維からなり、緑化植物Pの種類に応じた適宜の厚さおよび空隙を有する。
【0028】
植栽床1は、屋上面Rに設置された複数の支持ブロック3上に支持されて屋上面Rから数十cm程度の低い高さ位置に張設される。各支持ブロック3には、植栽床1の金網1A,1Aの目を突き抜けるボルト3Aが突設されており、このボルト3Aに螺合するナット3Bによって金網1A,1Aが支持ブロック3上に固定される。
【0029】
なお、緑化植物Pの根が良好に生育するには暗所が好ましく、このために上記の植栽床1の下方空間を囲む暗色のカーテン(図示省略)を、植栽床1の周辺部を支持する各支持ブロック3間に張設して、植栽床1と屋上面Rとの間、すなわち緑化植物Pの根が生育する空間を、太陽光線から遮断することもできる。この場合、上記の金網1Aと不織布1Bも太陽光線を遮断する暗色のものが好ましい。
【0030】
噴霧装置2は、貯留タンク2Aに貯留された緑化植物Pの栽培用の培養液をフィルター2Bを介して耐圧チューブ2C内に圧送するポンプユニット2Dと、このポンプユニット2Dの作動を制御するコントローラユニット(図示省略)と、培養液の圧送供給路である耐圧チューブ2Cの途中に配設された複数のジョイント2Eにそれぞれ突設された各噴霧ノズル2Fとを有する。
【0031】
噴霧装置2は、ポンプユニット2Dの作動により、各噴霧ノズル2Fから植栽床1の下面に向けて培養液のミストを噴霧する。各噴霧ノズル2Fは、培養液のミストが緑化植物Pの根毛から直接吸収されるように、培養液を例えば10μm以下、好ましくは5μm程度のミストとして噴霧する。
【0032】
ここで、噴霧装置2の各噴霧ノズル2Fから植栽床1の下面に向けて噴霧された培養液のミストが大気中へ散逸するのを上記の植栽床1の下方空間を囲む暗色のカーテンで防ぐことができる。
【0033】
以上のように構成された第1実施形態の建築物緑化システムでは、噴霧装置2のポンプユニット2Dが作動すると、複数の噴霧ノズル2Fから植栽床1の下面に向けて培養液のミストが噴霧される。
【0034】
この培養液のミストは、非常に微細な5μm程度のミストであるため、植栽床1に植え込まれた緑化植物Pの根毛から直接吸収される。こうして緑化植物Pが栽培され、工場の屋上面Rが緑化される。
【0035】
すなわち、第1実施形態に係る建築物緑化システムによれば、緑化植物Pへの散水が不要であり、工場の屋上面Rの耐久性を低下させることがない。従って、既存の建築物の屋上面Rに対する新たな耐久工事を不要とすることができる。また、緑化植物Pへの散水が不要であって、緑化植物Pの栽培用の水や培養液が工場の屋上面Rに流出することがないため、防水シートやゴムコーティングなどの屋上面Rの防水工事をも不要とすることができる。
【0036】
つぎに、図3〜図5を参照して本発明の第2実施形態に係る建築物緑化システムを説明する。第2実施形態に係る建築物緑化システムは、図1に示した複数の支持ブロック3の一部または全部をプランター4…に変更すると共に、各プランター4に植栽された緑化植物Pに灌水する灌水装置5と、各プランター4からの排水を回収して噴霧装置2に供給する排水回収装置6とを追加したものである。なお、図3に示した例では一部の支持ブロック3,3…がプランター4,4…に変更されている。
【0037】
各プランター4は、支持部材としての剛性を有する適宜の合成樹脂(例えばABS樹脂)により、概略長方形の平面形状を有する箱型に形成されている。これらのプランター4,4…は、植栽床1の周囲に沿うコ字状に配列されて植栽床1の周縁部を支持している。なお、植栽床1の中央部分および各プランター4,4…により支持されていない部分は、プランター4と同じ高さの支持ブロック3,3により支持されている。
【0038】
図4に示すように、プランター4の長手方向両端の側壁部4A,4Aには、配管用のジョイントパイプ4B,4Bが貫通状態で固定されている。また、図5に示すように、プランター4の内側には、緑化植物Pの培養土を支持する土受け板4Cが着脱自在に係止されている。この土受け板4Cには、培養土への余剰の灌水を排出する多数の水抜き穴4Dが形成されている。
【0039】
ここで、土受け板4Cの下方に位置するプランター4の底板部4Eは、土受け板4Cの各水抜き穴4Dから滴下する余剰の灌水をプランター4の幅方向の片側に流下させるように、プランター4の幅方向の片側(図示の例では左側)に位置する側壁部4Fに向けて下降傾斜している。そして、底板部4Eの下降傾斜する排水勾配に沿って流下する灌水を外側に流出させる排水穴4G,4G…が側壁部4Fの下部の長手方向に沿って複数形成されている。
【0040】
また、各排水穴4G,4G…から流出する余剰の灌水を受け入れるように、プランター4の片側(左側)の側壁部4Fの下部には、排水受部としての排水樋4Hが連続して形成されている。そして、この排水樋4Hの上部には、側壁部4F側に倒れて排水樋4Hを覆う開閉カバー4Iが蓋部として一体に形成されている。
【0041】
灌水装置5は、各プランター4内に配置されて両端部がジョイントパイプ4B,4Bの内端部に接続された灌水チューブ5A(図4参照)と、各プランター4,4…のジョイントパイプ4B,4Bの外端部同士を接続して一端部がポンプユニット2Dに接続された給水チューブ5Bとを備えている。
【0042】
排水回収装置6は、各プランター4,4…の排水樋4H同士を連通状態に接続して一端部が吸引ポンプ6Aの吸引側に接続された吸引チューブ6Bと、一端部が吸引ポンプ6Aの吐出側に接続され、他端部が貯留タンク2Aに接続された吐出チューブ6Cとを有する。
【0043】
以上のように構成された第2実施形態の建築物緑化システムにおいては、緑化植物Pとして、例えば高麗芝などの多年草の芝生が植栽床1および各プランター4に植栽される。この第2実施形態の建築物緑化システムでは、噴霧装置2のポンプユニット2Dが作動すると、複数の噴霧ノズル2Fから植栽床1の下面に向けて培養液のミストが噴霧される。
【0044】
また、灌水装置5の給水チューブ5Bから給水される培養液が各プランター4内に配置された各灌水チューブ5Aから各プランター4内の培養土中に徐々に灌水される。ここで、各プランター4内において、土受け板4Cの各水抜き穴4D,4D…から底板部4E上に滴下する余剰の灌水は、底板部4Eの排水勾配により片側の側壁部4Fに向けて流下し、排水穴4G,4G…を介して排水樋4H内に流入する。
【0045】
各プランター4の各排水樋4H,4H…内に流入した余剰の灌水は、排水回収装置6の吸引ポンプ6Aの作動により、吸引チューブ6Bから吐出チューブ6Cを介して貯留タンク2Aに回収される。
【0046】
こうして植栽床1および複数のプランター4,4…により、高麗芝などの芝生が緑化植物Pとして栽培され、工場の屋上面Rが緑化される。そして、この第2実施形態の建築物緑化システムにおいても、緑化植物Pの栽培用の水や培養液が工場の屋上面Rに流出することがないため、防水シートやゴムコーティングなどの屋上面Rの防水工事をも不要とすることができる。
【0047】
続いて、図6を参照して本発明の第3実施形態に係る建築物緑化システムを説明する。第3実施形態に係る建築物緑化システムは、図3に示した複数のプランター4の一部または全部を概略円形の平面形状を呈するポット7に変更したものであり、図6に示した例では一部のプランター4,4…がポット7,7…に変更されている。
【0048】
これらのプランター4,4…およびポット7,7…には、芝生などの多年草や低い常緑樹などを含む種々の緑化植物Pが植栽される。そして、プランター4,4…およびポット7,7…は、前述した灌水装置5によって灌水されるように構成されている。また、プランター4,4…は、前述した排水回収装置6によって余剰の灌水が回収されるようになっている。なお、図示はしないが、ポット7,7…を前記のプランター4,4…と同様の構成の潅水機構と排水回収機構を有するものとすることもできる。
【0049】
以上のように構成された第3実施形態の建築物緑化システムでは、噴霧装置2のポンプユニット2Dが作動すると、複数の噴霧ノズル2Fから植栽床1の下面に向けて培養液のミストが噴霧される。また、灌水装置5を介してプランター4,4…およびポット7,7…に灌水される。そして、プランター4,4…に灌水された余剰の灌水は、排水回収装置6の吸引ポンプ6Aの作動により貯留タンク2Aに回収される。
【0050】
こうして植栽床1、複数のプランター4,4…および複数のポット7,7…により、適宜の緑化植物Pが栽培され、工場の屋上面Rが緑化される。そして、この第3実施形態の建築物緑化システムにおいても、緑化植物Pの栽培用の水や培養液が工場の屋上面Rに流出することがないため、防水シートやゴムコーティングなどの屋上面Rの防水工事をも不要とすることができる。
【0051】
つぎに、図7を参照して本発明の第4実施形態に係る建築物緑化システムを説明する。第4実施形態に係る建築物緑化システムは、図1に示した植栽床1を複数に分割して各植栽床1の間に作業通路8を設けると共に、各植栽床1の周囲に太陽光発電をするためのソーラーパネル9,9…を配設したものである。なお、ソーラーパネル9,9…は、植栽床1自体、あるいは図1に示した支持ブロック3、図6に示したプランター4やポット7を支持部材として使用することもできる。
【0052】
図7に示すように、植栽床1は長手方向に沿う作業通路8により2つの植栽床1,1に区画されている。噴霧装置2は、各植栽床1,1の下面に向けて培養液のミストを噴霧するように構成されており、噴霧装置2の耐圧チューブ2Cによって接続された貯留タンク2A、フィルター2Bおよびポンプユニット2Dは、例えば2つの植栽床1,1の短辺側の片側に配置されている。
【0053】
ソーラーパネル9,9…は、2つの植栽床1,1の周囲に沿って横方向に並べて立設されている。各ソーラーパネル9,9…は、略垂直に立設されていてもよく、あるいは所定の傾斜角度をもって立設されていてもよい。なお、図7に示した例では、ソーラーパネル9,9…は、2つの植栽床1,1の周囲のうち、貯留タンク2Aやポンプユニット2Dが配置される側の周囲および作業通路8に面した側の周囲には設置されていないが、これらの箇所にもソーラーパネル9,9…を設置することができる。
【0054】
ここで、支持ブロック3,3…による植栽床1,1の支持高さは、ソーラーパネル9の高さに応じて設定するのが好ましい。植栽床1,1の支持高さをソーラーパネル9の高さに応じて高くした場合、噴霧装置2の支持高さは、図示しない適宜の支持台などを用いることにより、植栽床1,1の支持高さに合わせて高くする(なお、支持台を用いる場合は、該支持台内部をチューブ等の配設スペースとして使用することもできる)。
【0055】
このように植栽床1,1の支持高さに応じた高さを有するソーラーパネル9,9…は、各植栽床1,1の下方空間、すなわち緑化植物Pの根が生育する空間を太陽光線から遮断するカーテンの機能も発揮する。
【0056】
ここで、噴霧装置2により各植栽床1,1の下面に向けて噴霧されるミストを利用して各ソーラーパネル9,9…を冷却することができるように、各ソーラーパネル9,9…の背面側には、冷却用の放熱フィン(図示省略)を設けることもできる。
【0057】
以上のように構成された第4実施形態の建築物緑化システムでは、各植栽床1,1に植設された緑化植物Pにより、工場の屋上面Rが緑化される。そして、この第4実施形態の建築物緑化システムにおいても、緑化植物Pの栽培用の水や培養液が工場の屋上面Rに流出することがないため、防水シートやゴムコーティングなどの屋上面Rの防水工事をも不要とすることができる。
【0058】
加えて、第4実施形態の建築物緑化システムでは、2つの植栽床1,1の間に作業通路8が設けられているため、各植栽床1,1に対するメンテナンス作業が容易となる。
【0059】
また、各植栽床1,1に周囲に立設されたソーラーパネル9,9…が太陽光発電するため、その電力を噴霧装置2の電源として利用することができる。この場合、ソーラーパネル9,9…は、その背面が噴霧装置2により各植栽床1,1の下面に向けて噴霧されるミストを利用して冷却される(背面に放熱フィンが設けられていれば、冷却効果はより一層良好となる)ため、発電効率が高まり、寿命も延びる。
【0060】
本発明に係る建築物緑化システムは、前述した各実施形態に限定されるものではない。例えば、植栽床1を構成する金網1Aは、防虫ネット、遮光ネット、防風ネットなどの名称で市販されている各種の合成樹脂製のネットに変更することができる。
【0061】
また、植栽床1を構成する不織布1Bは、合成樹脂製の保水シートやマット、再生繊維マット、ヤシガラマットなどに変更することができる。
【0062】
さらに、図7に示した作業通路8は、植栽床1を3つに区画するT字形の通路であってもよいし、植栽床1を4つに区画する十文字形の通路であってもよい。
【0063】
ここで、第1実施形態の建築物緑化システムは、建築物の平坦な屋上面だけでなく、傾斜した屋根面や、垂直な壁面、あるいは傾斜した壁面を緑化植物により緑化することが可能である。なお、壁面を緑化する場合には、支持ブロック3に代わる支持部材として、例えば複数の植込みボルト(図示省略)を壁面に設け、これらの植込みボルトを支持部材として植栽床1を壁面に沿って支持する。
【符号の説明】
【0064】
1 :植栽床
1A:金網
1B:不織布
2 :噴霧装置
2A:貯留タンク
2B:フィルター
2C:耐圧チューブ
2D:ポンプユニット
2E:ジョイント
2F:噴霧ノズル
3 :支持ブロック
3A:ボルト
3B:ナット
4 :プランター
4A:側壁部
4B:ジョイントパイプ
4C:土受け板
4D:水抜き穴
4E:底板部
4F:側壁部
4G:排水穴
4H:排水樋
4I:開閉カバー
5 :灌水装置
5A:灌水チューブ
5B:給水チューブ
6 :排水回収装置
6A:吸引ポンプ
6B:吸引チューブ
6C:吐出チューブ
7 :ポット
8 :作業通路
9 :ソーラーパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋上面および/または壁面を緑化植物により緑化するためのシステムであって、
建築物の屋上面および/または壁面との間に所定空間を開けて設置される緑化植物の植栽床と、
前記植栽床と屋上面および/または壁面との間の空間に緑化植物栽培用の水および/または培養液を噴霧する噴霧装置とを備えていることを特徴とする建築物緑化システム。
【請求項2】
前記植栽床は、網状体に挟持された不織布を有することを特徴とする請求項1に記載の建築物緑化システム。
【請求項3】
前記噴霧装置は、ポンプによる水および/または培養液の圧送供給路に設けられた複数の噴霧ノズルを有することを特徴とする請求項1または2に記載の建築物緑化システム。
【請求項4】
前記植栽床を屋上面に設置するための支持部材を兼用する複数のプランターおよび/またはポットと、
各プランターおよび/またはポットに植栽された緑化植物に灌水する灌水装置と、
各プランターおよび/またはポットからの排水を回収して前記噴霧装置に供給する排水回収装置とを備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の建築物緑化システム。
【請求項5】
前記各プランターは、灌水の排水勾配を有する底板部と、この底板部の排水勾配の低位側に排水穴を介して連通する排水受部と、この排水受部を覆う蓋部とを有すことを特徴とする請求項4に記載の建築物緑化システム。
【請求項6】
前記植栽床の周囲には、太陽光発電用のソーラーパネルが配設されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の建築物緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90623(P2013−90623A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194170(P2012−194170)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【出願人】(398031352)株式会社ノーユー社 (2)
【Fターム(参考)】