説明

建築用の耐火パネルおよび断熱壁体

【課題】火災時において、ヒートブリッジを形成することがなく、パネル連結部の変形分離を抑制して火炎の侵入を有効に防止することができ、しかも、薄肉化が可能な建築用の耐火パネルと、その耐火パネルを用いた断熱壁体を提供する。
【解決手段】表側外装材と裏側外装材を対向させ、それらの外装材間に断熱材を充填した、本体とその本体の両幅端部に設けられた2つの接続部A,Bとから構成される耐火パネルであって、上記接続部Aの表側外装材は、隣接するパネルの接続部Bの表側外装材と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの裏側外装材は、隣接するパネルの接続部Bの裏側外装材と重なり部を形成する構造になることを特徴とする耐火パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋や簡易建築物等の外壁や間仕切りなどに用いられる建築用の耐火パネルとそれを用いた断熱壁体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家屋や簡易建築物の外壁等に使用される建築用のパネルは、耐火性能に優れていることが必要である。上記耐火性能については、例えば、1時間耐火構造の壁にあっては、建築基準法第77条に基づく指定性能評価機関の防耐火性能試験・評価業務方法書に規定された1時間の加熱を実施し、試験終了時までの試験体裏面の上昇温度が平均で140K以下、最高で180K以下であること、また、上記1時間の加熱試験において試験終了時までに、非加熱側への10秒を超えて継続する火炎の噴出がないこと、非加熱面で10秒を超えて継続する発炎がないこと、および火炎が通る亀裂等の損傷を生じないこと等を満たすことと規定されている。
【0003】
上記耐火性能は、パネル本体の構造を、対向して配設した鋼板等からなる表側外装材と裏側外装材との間に十分な厚さの断熱材を充填することで基本的には満たすことができる。しかし、建築用の耐火パネルは、上下、左右に連結されて使用されるものである。そのため、家屋や簡易建築物等全体の耐火性能は、パネル本体の耐火性能よりはむしろパネル連結部の耐火性能、特にパネル連結部からの火炎侵入を防止する性能の良否によって、大きく左右される。したがって、パネル連結部の耐火性能は極めて重要である。
【0004】
そこで、パネル連結部の構造について、従来から多くの提案がなされている。例えば、特許文献1〜7には、金属薄板材からなる表面材と裏面材との間に断熱材を挟持したパネルの一端に雄型連結部が形成され、他端に隣接するパネルの雄型連結部が入り込む雌型連結部が形成された耐火パネルが提案されている。しかしながら、特許文献1のパネルは、雌型連結部の凹部にコの字状の補強材を介装しているため、また、特許文献5、6の耐火パネルは、金属薄板材からなる表面材と裏面材とが連結しているため、これらが熱橋(ヒートビリッジ)を形成して、耐火性や断熱性を劣化させるという問題がある。
【0005】
また、特許文献2,3のパネルは、接続部において表面材と裏面材の端部が断熱材に埋入した構造となっているため、また、特許文献4および7のパネルは、接続部の形状が複雑であるため、いずれも使用できる断熱材は、ウレタンフォーム等の発泡性のもの、あるいは、特殊形状に成型されたものに限定される。発泡性の断熱材は、一般にロックウール等からなる板状の断熱材と比較して耐火性に劣る傾向があり、これを補うためには、水酸化アルミニウム等の吸熱剤を添加する必要がある。また、加熱を受けた際に有害ガスを発生し、あるいは、リサイクルが難しいという問題点を抱えている。したがって、表面材と裏面材との間に充填される断熱材としては、板状のものであることが好ましい。
【0006】
上記問題点を解決するものとして、特許文献8には、表側外装材と裏側外装材を対向させてその両外装材間に断熱材を充填した、本体とその本体の両幅端部に設けられた接続部とから構成される建築用パネルにおいて、隣接するパネル接続部の表側外装材どうしおよび裏側外装材どうしが嵌合して連結体を形成する構造とした建築用パネル(図6)が提案されている。
【特許文献1】特開平08−184159号公報
【特許文献2】特開平06−294196号公報
【特許文献3】特開平05−079148号公報
【特許文献4】特開平06−008372号公報
【特許文献5】特開平06−238785号公報
【特許文献6】特開平07−003998号公報
【特許文献7】特開平08−277619号公報
【特許文献8】特開2006−009564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献8に開示された耐火パネルは、隣接するパネルの接続部を構成する表側外装材どうしおよび裏側外装材どうしが2重に嵌合連結して連結体を形成する構造としたことで、パネル連結部における耐火性能の向上を図っている。しかしながら、このパネル構造では、嵌合連結部を表側外装材と裏側外装材の両側に設けるスペースを確保する必要があることから、必然的にパネル連結部の断熱材の厚みを減少せざるを得ない。しかも、嵌合接続部には、通常、断熱材は充填されていないため、パネル連結部における断熱性や耐火性がパネル本体よりも低下し、パネル連結部がヒートブリッジ(熱橋)となってしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献8の建築用パネルは、パネル接続部に石膏ボードを充填することで耐火性能の確保を図っているが、石膏ボードは断熱性に乏しく、しかも、パネル施工時に予想される雨水の侵入等により材質劣化を生じたり、留付ビスを貫通させてパネルを下地材へ取付ける際に割れを起こしたりするおそれがある。
【0009】
また、同じ耐火性能を有するパネルであれば、パネル本体の厚さは薄い方が好ましいのは道理であり、昨今において上市されている外壁向けの建築用パネルは、その厚さが1時間耐火構造認定品で50mm程度、30分防火構造認定品で35mm程度にまで薄くなってきている。しかし、特許文献8の実施例には、断熱材としてロックウールを使用した厚さが75mmの建築用パネルについての耐火性能試験結果が記載されているだけであり、同技術を厚さ50mm以下のパネルに適用した場合の耐火性能は明らかではない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、火災時において、ヒートブリッジを形成することがなく、パネル連結部の変形分離を抑制して火炎の侵入を有効に防止することができ、しかも、薄肉化が可能な建築用の耐火パネルと、その耐火パネルを用いた断熱壁体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、パネルの接続部を構成する表側外装材が隣接するパネル接続部の表側外装材と嵌合連結部を介して連結すると共に、裏側外装材が隣接するパネル接続部の裏側外装材と嵌合連結部を介さずに重なる構造とすれば、火災時においてもヒートブリッジの形成もなく、接続部の断熱材の厚さを大きくとれ、しかも板状の断熱材を使用できるため、パネル連結部の変形分離も防止できることを見出し、本願発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、表側外装材と裏側外装材を対向させ、それらの外装材間に断熱材を充填した、本体とその本体の両幅端部に設けられた2つの接続部A,Bとから構成される耐火パネルであって、上記接続部Aの表側外装材は、隣接するパネルの接続部Bの表側外装材と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの裏側外装材は、隣接するパネルの接続部Bの裏側外装材と重なり部を形成する構造になることを特徴とする耐火パネルである。
【0013】
本発明の上記耐火パネルは、耐火パネル本体の一方の幅端部に設けられた接続部Aは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に2段に屈曲させた段部Aと、その段部Aに続いて形成されたパネル本体に平行な立ち上がり部と、その立ち上がり部の先端を外側に折り返して形成された係合部と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側にコの字状に折り曲げて形成された凸条部を有し、上記接続部Aの反対側の本体幅端部に設けられた接続部Bは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に折り返して形成した二重折返し部と、その二重折返し部に続いてコの字状に折り曲げて形成した係合溝と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側に屈曲させたのちパネル本体に平行に立ち上げた段部Bを有し、上記接続部Aの係合部は隣接するパネルの接続部Bの係合溝と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの凸条部は隣接するパネルの接続部Bの段部Bと重なり部を形成する構造になることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の上記耐火パネルは、耐火パネル本体の一方の幅端部に設けられた接続部Aは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に2段に屈曲させた段部Aと、その段部Aに続いて形成されたパネル本体に平行な立ち上がり部と、その立ち上がり部の先端を外側に折り返して形成された係合部と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側に屈曲させたのちパネル本体に平行に立ち上げた段部Bを有し、上記接続部Aの反対側の本体幅端部に設けられた接続部Bは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に折り返して形成した二重折返し部と、その二重折返し部に続いてコの字状に折り曲げて形成した係合溝と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側にコの字状に折り曲げて形成された凸条部を有し、上記接続部Aの係合部は隣接するパネルの接続部Bの係合溝と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの凸条部は隣接するパネルの接続部Bの段部Bと重なり部を形成する構造になることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の耐火パネルにおける上記断熱材は、板状断熱材であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記耐火パネルの接合部Aの立ち上がり部を、表側外装材、断熱材および裏側外装材を貫通する固定用ビスを用いてパネル下地に固定し、接合部Aと隣接する耐火パネルの接合部Bとが順次に連結してなることを特徴とする断熱壁体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パネル接続部の構造を改善したことにより、接続部の断熱材の厚さを大きくとれ、しかも板状の断熱材を使用が可能であるため、火災時においてもヒートブリッジの形成がなく、パネル連結部の変形分離もない耐火パネルを実現することができる。したがって、本発明によれば、耐火パネルを薄肉化しても、建築基準法第77条に基づく指定性能評価機関の防耐火性能試験にも耐え得る耐火、防火性能を有する耐火パネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明に係る耐火パネルの構造を模式的に示した断面図である。
この図に示すように、本発明の耐火パネル1は、表側外装材2と裏側外装材3とを対向させて、それらの外装材間に断熱材4を充填した本体5と、上記と同様の構成を有し、本体の両幅端部に設けられた2つの接続部A(6)および接続部B(7)とからなるものである。
【0019】
ここで、上記表側外装材2および裏側外装材3は、板厚が0.5mm程度の鋼板で、好ましくは、上記鋼板に美麗性や耐食性の向上を目的としてカラー塗装等の表面処理を施した表面処理鋼板であることが望ましい。
【0020】
また、上記表側外装材2と裏側外装材3との間に充填された断熱材は、板状断熱材、発泡性断熱材のいずれも用いることができ、例えば、板状断熱材としては、ロックウール保温板やグラスウール保温板、少なくともロックウール粒状綿および無機フィラーを含有する混合体からなるボード、少なくとも発泡樹脂粉粒体およびセメントを含有する混合体からなるボード、木質繊維断熱板、炭酸カルシウム系発泡板などを好適に用いることができる。一方、発泡性断熱材としては、例えば、ウレタンフォームやイソシアヌレートフォーム、フェノールフォームなどを用いることができる。
【0021】
上記板状断熱材を用いた耐火パネルは、表裏の外装材と断熱材とを接着剤で接合し、所定の厚さに加圧成形して製造される。一方、発泡性断熱材を用いた耐火パネルは、所定の間隔をもって平行に配置され表裏外装材間において断熱材を発泡させることにより製造される。なお、発泡性断熱材は、接続部のような狭い複雑形状の空間への充填性に優れているという利点を有している反面、板状の断熱材と比較して耐火性に劣る傾向があり、水酸化アルミニウム等の吸熱剤を添加する必要があること、火災で加熱された際に有毒ガスを発生するおそれがあること、およびリサイクル性に劣ること等の問題点を抱えるものでもある。したがって、本発明の耐熱パネルには、板状断熱材を用いるのが好ましい。
【0022】
また、本発明の耐火パネル本体の両幅端部に設けられた2つの接続部のうち、本体幅端部の一方に設けられた接続部A(6)は、パネル本体から延長した表側外装材2を内側に2段に屈曲させた段部A(61)と、その段部1に続いて形成されたパネル本体に平行な立ち上がり部62と、その立ち上がり部の先端を外側に折り返して形成された係合部63と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側にコの字状に折り曲げて形成された凸条部64と、上記表側外装材と裏側外装材の間に充填された断熱材4とで構成されている。
【0023】
また、上記接続部Aの反対側の本体幅端部に設けられた接続部B(7)は、パネル本体から延長した表側外装材を内側に折り返して形成した二重折返し部71と、その二重折返し部に続いてコの字状に折り曲げて形成した係合溝72と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側に屈曲させたのちパネル本体に平行に立ち上げた段部B(73)と、上記表側外装材と裏側外装材の間に充填した断熱材4とで構成されている。
【0024】
ここで、上記接合部Aの段部Aを2段に屈曲させている理由は、1段目は、接続部Bの二重折返し部と、盛り上がりなく重なり部を形成するためであり、また、2段目は、この段部に続いて設けられた立ち上がり部において、耐火パネルをパネル下地に固定するための固定用ビス(後述する)のヘッドを収納するスペースを確保するためである。
【0025】
また、接合部Aの立ち上がり部の先端を外側に折り返して形成した係合部63を、敢えて、係合部63と嵌合する係合溝72の形状に合わせてコの字状としなかった理由は、両者をコの字状にして嵌合させると、両者が面で接触するため、強風雨の際に、内部に入り込んだ雨水が、毛管現象によってさらに内部に浸透するおそれがあるためである。さらに、図1では、係合部63の先端部分は、外側に二重に折り返されているが、内側に二重に折り返してもよいことは勿論である。
【0026】
また、上記図1では、接合部Aの裏側外装材により形成される凸条部64はコの字状になっているが、これに限定させるものではなく、例えば、接合部Bの二重折返し部71のように単に内側に折り返したものであってもよく、むしろ、この方が、接合部の断熱材の厚さを大きくできるので好ましい場合もある。また、接続部Aの凸状部64、接続部Bの係合溝72および段部B(73)の先端部は、断熱材を把持するように外装材の先端を内側に屈曲させておくのが好ましい。
【0027】
上記接続部A(6)と隣接するパネルの接続部B(7)は、図2に示したように、接続部Aの表側外装材により形成された係合部63と、隣接するパネルの接続部Bの表側外装材により形成された係合溝72とが嵌合連結部を形成し、接続部Aの裏側外装材から形成された凸条部64と、隣接するパネルの接続部Bの裏側外装材により形成された段部B(73)とが重なり部を形成することによって、パネルと隣接するパネルとの連結部8を形成する。
【0028】
耐火パネルの接続部A,Bの構造を上記構造とすることにより、特許文献8の接続部のように、耐火パネルの表面側と裏面側の両方に嵌合部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなることから、断熱材の厚さを厚くすることができる。また、本発明に耐火パネルは、図1や図2から明らかなように、断熱材を挟持している表側外装材と裏側外装材とが繋がっていないので、ヒートブリッジを形成することもない。その結果、パネル連結部の耐火、防火性能を大幅に向上することができるので、耐火パネルの厚さを低減することができ、例えば、1時間耐火構造品であれば50mm以下、30分防火構造品であれば35mm以下まで薄肉化することが可能となる。
【0029】
なお、上記図1では、接続部A側に裏側外装材により凸条部64が形成され、接続部B側に裏側外装材により段部B(73)が形成された耐火パネルについて説明したが、上記配置を入れ替えて、接続部A側に段部Bが形成され、接続部B側に凸条部が形成された構造、すなわち、上記耐火パネル本体の一方の幅端部に設けられた接続部Aは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に2段に屈曲させた段部Aと、その段部Aに続いて形成されたパネル本体に平行な立ち上がり部と、その立ち上がり部の先端を外側に折り返して形成された係合部と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側に屈曲させたのちパネル本体に平行に立ち上げた段部Bを有し、上記接続部Aの反対側の本体幅端部に設けられた接続部Bは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に折り返して形成した二重折返し部と、その二重折返し部に続いてコの字状に折り曲げて形成した係合溝と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側にコの字状に折り曲げて形成された凸条部を有し、上記接続部Aの係合部は隣接するパネルの接続部Bの係合溝と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの凸条部は隣接するパネルの接続部Bの段部Bと重なり部を形成する構造としてもよいことは勿論である。
【0030】
次に、本発明に係る断熱壁体について説明する。
図3は、本発明の断熱壁体の断面を模式的に示した図であり、上記に説明した耐火パネルを、接合部Aの立ち上がり部61において、表側外装材、断熱材および裏側外装材を貫通する固定用ビス9を用いて間隔をもって配設された下地材10に固定し、次いで、上記固定された耐火パネルの接合部Aに、隣接する耐火パネルの接合部Bを連結し、接合部Aの立ち上がり部で固定用ビス9を用いて下地材10に固定する工程を順次繰り返して構築したものである。なお、パネル連結部を構築するに際しては、雨水の侵入を防止するため、接合部Aが上方になるよう取り付けることが好ましい。また、上記固定用ビスを打ち込む際の位置決めを容易にするため、接続部Aの立ち上がり部にガイド溝を設けておいてもよい。
【0031】
なお、接合部Aと隣接する耐火パネルの接合部Bとを連結するに際しては、連結部における耐火性や気密性を向上するため、図3に示したように、両接続部の間にクッション性断熱材11を介装することが好ましい。このクッション性断熱材は、耐火パネルの製造時に接続部AまたはBのいずれか一方または両方に予め取り付けておいてもよいが、断熱壁体を構築する際に、両接合部間に挿入するようにしてもよい。
【0032】
本発明の耐火パネルは、先述したように、接続部における断熱材の厚さが厚いので断熱性に優れている他、表裏の外装材を形成している鋼板が繋がっていないのでヒートブリッジとなることもない。したがって、本発明の耐火パネルを連結して構築された断熱壁体は、本体部分の断熱性に優れているのみならず、パネル連結部においても極めて優れた断熱性を有するものとなる。
【実施例】
【0033】
図1に示した本発明の構造を有する厚さが35mm(断熱材:34mm、表側外装材:0.5mm、裏側外装材:0.5mm)で、幅が600mmの耐火パネルと、図6に示した引用文献8に開示された構造を有する厚さが35mm(断熱材:34mm、表側外装材:0.5mm、裏側外装材:0.5mm)で、幅が600mmの耐火パネルを、少なくとも発泡樹脂粉粒体およびセメントを含有する混合体をボード化した板状断熱材を用いて製作した。また、図1に示した本発明の構造を有する耐火パネルについては、断熱材として、少なくともロックウール粒状綿および無機フィラーを含有する混合体をボード化した板状断熱材を用いたものも製作した。
次いで、上記3種類の耐火パネルを用いて、中央部分に2枚の耐火パネルの連結部を有する400mm×400mmの大きさの連結部試験片と、耐火パネル本体部分から切り出した同じ大きさの本体試験片を作製し、建築基準法第77条に基づく指定性能評価機関の防耐火性能試験・評価業務方法書に準じた防火性能試験に供した。この試験は、下記式;
T=345log10(8t+1)+20
ここで、T:平均炉内温度(℃)、t:試験の経過時間(分)
で規定された温度で昇温が可能な加熱炉を用いて、上記試験片の片面を30分間加熱し、加熱開始から加熱終了時までの試験片裏面の上昇温度を測定する試験方法である。
なお、上記防耐火性能試験・評価業務方法書に規定された評価基準では、試験開始から30分を経過するまでの試験片裏面の上昇温度が平均で140℃以下、最高で180℃以下を合格と判定しているが、本実施例において測定される本体試験片裏面の上昇温度は上記平均上昇温度と、また、連結部試験片裏面の上昇温度は、上気最高上昇温度と考えることができる。
【0034】
上記測定の結果を表1に示した。また、図4は、本発明の構造を有する耐火パネル(No.1)と、引用文献8の構造を有する耐火パネル(No.2)における、加熱開始から試験終了までの試験片裏面温度の測定結果を示したものであり(但し、No.1および2のパネル本体試験片は、実質同一であるため、No.2の試験結果は省略した。)。
これらの結果から、いずれのパネルも上記防火性能試験には合格しているが、パネル連結部試験片裏面の加熱開始30分後の上昇温度は、本発明の構造を有する耐火パネル(No.1)の方が、引用文献8の構造を有する耐火パネル(No.2)より20℃以上も低く、従って、本発明の構造の方がパネル連結部の防火性能に優れていることがわかる。
また、図5は、本発明の構造を有する上記耐火パネル(No.1)と同じ構造を有し、断熱材のみを他の板状断熱材(少なくともロックウール粒状綿および無機フィラーを含有する混合体をボード化したもの)に変えた耐火パネル(No.3)の温度変化を示したものである。この図4と、図3のNo.1との比較から、断熱材を少なくともロックウール粒状綿および無機フィラーを含有する混合体をボード化したものとすることにより、さらに防火性能が改善されていることがわかる。
なお、連結部試験片については、防火試験後、解体して接続部の変形を確認したが、No.1〜3のいずれの耐火パネルにおいても、防火試験による大きな変化は認められなかった。
【0035】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る耐火パネルの断面構造図である。
【図2】本発明の耐火パネルが、隣接する耐火パネルと連結した状態を示す図である。
【図3】本発明の耐火パネルで構築した断熱壁体の断面図である。
【図4】本発明の構造の耐火パネルと従来構造の耐火パネルの防火性能を比較したグラフである。
【図5】本発明の構造の耐火パネルで、断熱材を変えたときの防火性能を比較したグラフである。
【図6】従来技術の耐火パネルの断面構造図である。
【符号の説明】
【0037】
1:耐火パネル 2:表側外装材
3:裏側外装材 4:断熱材
5:耐火パネル本体 6:接続部A
61:段部A 62:立ち上がり部
63:係合部 64:凸状部
7:接続部B 71:二重折り返し部
72:係合溝 73:段部B
8:パネル連結部 9:固定
10:下地材 11:クッション性断熱材
12a、12b:凸条 13a、13b:二重折り返し部
14a、14b:凹溝 15:石膏ボード
16:クッション性断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側外装材と裏側外装材を対向させ、それらの外装材間に断熱材を充填した、本体とその本体の両幅端部に設けられた2つの接続部A,Bとから構成される耐火パネルであって、
上記接続部Aの表側外装材は、隣接するパネルの接続部Bの表側外装材と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの裏側外装材は、隣接するパネルの接続部Bの裏側外装材と重なり部を形成する構造になることを特徴とする耐火パネル。
【請求項2】
上記耐火パネル本体の一方の幅端部に設けられた接続部Aは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に2段に屈曲させた段部Aと、その段部Aに続いて形成されたパネル本体に平行な立ち上がり部と、その立ち上がり部の先端を外側に折り返して形成された係合部と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側にコの字状に折り曲げて形成された凸条部を有し、
上記接続部Aの反対側の本体幅端部に設けられた接続部Bは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に折り返して形成した二重折返し部と、その二重折返し部に続いてコの字状に折り曲げて形成した係合溝と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側に屈曲させたのちパネル本体に平行に立ち上げた段部Bを有し、
上記接続部Aの係合部は隣接するパネルの接続部Bの係合溝と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの凸条部は隣接するパネルの接続部Bの段部Bと重なり部を形成する構造になることを特徴とする請求項1に記載の耐火パネル。
【請求項3】
上記耐火パネル本体の一方の幅端部に設けられた接続部Aは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に2段に屈曲させた段部Aと、その段部Aに続いて形成されたパネル本体に平行な立ち上がり部と、その立ち上がり部の先端を外側に折り返して形成された係合部と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側に屈曲させたのちパネル本体に平行に立ち上げた段部Bを有し、
上記接続部Aの反対側の本体幅端部に設けられた接続部Bは、パネル本体から延長した表側外装材を内側に折り返して形成した二重折返し部と、その二重折返し部に続いてコの字状に折り曲げて形成した係合溝と、パネル本体から延長した裏側表層材を内側にコの字状に折り曲げて形成された凸条部を有し、
上記接続部Aの係合部は隣接するパネルの接続部Bの係合溝と嵌合して連結部を形成し、上記接続部Aの凸条部は隣接するパネルの接続部Bの段部Bと重なり部を形成する構造になることを特徴とする請求項1に記載の耐火パネル。
【請求項4】
上記断熱材は、板状断熱材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐火パネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の耐火パネルの接合部Aの立ち上がり部を、表側外装材、断熱材および裏側外装材を貫通する固定用ビスを用いてパネル下地に固定し、接合部Aと隣接する耐火パネルの接合部Bとが順次に連結してなることを特徴とする断熱壁体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−263913(P2009−263913A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112275(P2008−112275)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000200323)JFE鋼板株式会社 (77)
【Fターム(参考)】