説明

建築用の複合断熱材と、その施工方法

【課題】十分な断熱性能を有しながらも、簡易な構造であって、更に製造コストや製品価格を廉価にすることのできる、新たな建築用の複合断熱材を提供し、また施工に際して簡易に施工可能とすることができる建築用の複合断熱材と、その施工方法を提供すること。
【解決手段】 建築物に使用する板状の断熱材であって、対向する2枚のプラスチック製のシート間を平行な直線状または曲線状のリブで連結してなる中空構造のプラスチック段ボールと、当該プラスチック段ボールの表面および裏面の少なくとも何れかの面または両面に設けられた、輻射熱に対して高反射率を有する金属材料層とからなる建築用の複合断熱材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物における断熱用の建築材料と、その施工方法ならびにこの断熱材料を使用して建築された建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋やビルディングなどの建築物においては、室内の温度を快適に保つため、種々の断熱材が使用されている。特に近年では、省エネを目的として、建築物における断熱構造・技術への関心は高まっている。
【0003】
そして従来から使用されている建築用の断熱材としては、グラスウール等の繊維系断熱材や、繊維系断熱材より断熱性能の優れる発泡樹脂系断熱材が知られており、近年では、さらに高性能な断熱材として、特許文献1(特開2008−69820号公報)に示されるような真空断熱材も提案されている。この特許文献1では、外被材で囲まれた空間内に、気体を吸着可能な吸着材を備え、前記吸着材が、窒化物とLiとを有して25℃常圧もしくは減圧下で少なくとも窒素を吸着する気体吸着性物質を含む断熱体となっている。
【0004】
また従前における建築物の断熱工法としては、垂木、柱、間柱、梁、大引、桁、大引、根太などで構成する住宅などの建築物の軸組間に、前記したような断熱材を充填する方法(充填断熱工法)が一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−69820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来から種々の断熱材が実際に使用されているが、古くから使用されているグラスウールや発泡スチロールを用いて形成された伝統的な断熱材では、十分な断熱効果を得るためには、肉厚にならざるを得ず、施工性や断熱性能においていまだ改良の余地があった。
【0007】
一方、近年開発された真空断熱材は、その断熱性において十分な効果を期待することができるが、真空状態を形成する為の精密加工を要し、これが製造コストや製品価格に反映する物となっていた。更に外被材については、真空状態を保持できるような材料を使用することが必要になり、特許文献1においても、内側から順に熱融着層、ガスバリア層、表面保護層を有するラミネートフィルムからなる外被材といった、複雑な積層構造を有するものが必要であった。
【0008】
そこで本発明は、十分な断熱性能を有しながらも、簡易な構造であって、更に製造コストや製品価格を廉価にすることのできる、新たな建築用の複合断熱材を提供することを第一の課題とする。
【0009】
また従来提供されている発泡系断熱材や真空断熱材は剛直な板状であるため、施工に際しても問題があった。すなわち、発泡系断熱材の施工は、軸組間に断熱材をはめ込む方法(充填断熱工法)や軸組の外側に断熱材を貼付け、釘やボルトを介して固定する方法(外張り断熱工法)が採用されているが、剛直な断熱材を建築物の軸組間にはめ込むには、はめ込み先の軸組間と同じ形状および寸法に予め加工しておく必要があり、軸組間に対して僅かでも寸法形状が異なると、隙間が発生したり、逆に、はめ込めこむことができなくなるという問題があった。
【0010】
また、軸組の外側に断熱材を貼り付ける方法(外張り断熱工法)も、断熱材を高精度に切断できないと断熱材の突合せ部分に隙間ができてしまい、気密テープ等で隙間を塞がなければならない。また、釘やボルトで固定するのに手間と時間がかかり、施工コストが高くなる問題があった。
【0011】
一方、真空断熱材は、スペーサーの役割を繊維集合体からなる芯材をガスバリア性フィルムからなる外被材で覆い、密封して内部を減圧することにより製造されることから、真空断熱材の内部の真空を保つために製造後は外被材を傷つけることができないため、真空断熱材は切断加工や釘、ボルトによる固定が難しく施工性に問題があった。真空断熱材の施工性を改善するために真空断熱材を発泡樹脂で包含した板状部材開発されているが、施工性については発泡系断熱材と同じ問題が解決されていなかった。
【0012】
そこで本発明は、施工に際しての従来の課題を解決し、簡易に施工可能とすることができる建築用の複合断熱材と、その施工方法を提供することを第二の課題とする。
【0013】
更に、前記したようなグラスウールなどの繊維系断熱材やウレタンフォームなどの発泡系断熱材を使用した場合には、十分な断熱効果を発現させるために、一定の厚さの収容空間を確保しなければならず、これが建築構造物の設計上の課題でもあった。
【0014】
そこで本発明は、建築物における断熱のための空間を狭くすることのできる、建築用の複合断熱材と、これを用いた建築物の提供を第三の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明はアルミ箔などの金属材料を用いて輻射熱を遮断するとともに、温まった空気を円滑に排出することのできる様に構成した建築用の複合断熱材を提供するものである。
【0016】
即ち本発明は、建築物に使用する板状の断熱材であって、対向する2枚のプラスチック製のシート間を平行な直線状または曲線状のリブで連結してなる中空構造のプラスチック段ボールと、当該プラスチック段ボールの片面または両面に設けられた、輻射熱に対して高反射率を有する金属材料層とからなる建築用の複合断熱材を提供するものである。
【0017】
上記プラスチック段ボールは、、プラスチックを素材として作られた段ボールシートであり、一般にはポリプロピレンを用いて形成されたものを使用することができるが、一定の強度が要求されている場合には、ポリカーボネートを用いて形成されたものであっても良い。このようなプラスチック段ボールを使用することにより、建築物の施工時において曲折して設置しなければならない場合においても簡易に曲げることができ、また所定の形状に切断するのも容易である。更に耐久性および耐水性にも優れていることから、腐食などの心配もなくなる。また、かかるプラスチック段ボールは、2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている厚さ方向に直交する向き(即ち縦方向又は横方向)に中空孔が形成されており、この中空孔が通気孔として機能することができる。かかる中空孔(通気孔)は、プラスチック段ボールの片面が高温になった場合であっても、その熱を対流又は通気によってプラスチック段ボール外に放出することができ、断熱効果を高めることができる。
【0018】
そして本発明にかかる建築用の複合断熱材では、上記プラスチック段ボールの片面または両面に、輻射熱に対して高反射率を有する金属材料層を形成する。
【0019】
かかる輻射熱に対して高反射率を有する金属材料層は、反射率の高い金属材料を用いて形成されており、たとえば金、銀、アルミニウム、ステンレスなどを用いて形成することができる。即ち反射率の高い金属シートをプラスチック段ボールの片面または両面に貼付する他、蒸着やスパッタリングによりプラスチック段ボールの片面または両面に金属層を形成しても良く、更にこれらの金属材料からなる粉末を配合・分散させた塗料を塗布して反射率の高い金属材料層を形成することもできる。
【0020】
プラスチック段ボールの片面または両面に設けた反射率の高い金属材料層は、殆どの熱線をはね返すことができ、これにより外部の熱の吸収を阻止することができる。即ち、金属材料層により熱線を跳ね返して輻射熱を遮断することから、全熱移動の約65〜80%を遮断することができる。また、熱伝導により、当該金属材料層自体やその近傍の空気の温度が上昇したとしても、この温まった空気は、プラスチック段ボールの中空構造、より具体的には2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている厚さ方向に直交する向きに延伸して貫通する中空孔によって排出されることから、当該建築用の複合断熱材による断熱効果を一層高めることができる。
【0021】
なお、この建築用の複合断熱材において、上記金属材料層はプラスチック段ボールの片面だけであっても良いが、望ましくは両面に設ける。ただし、2枚の建築用の複合断熱材を向き合わせて使用する場合には、プラスチック段ボールの片面に金属材料層が設けられた建築用の複合断熱材を使用するのが望ましい。この場合、片面に金属材料層を設けた複合断熱材料は、金属材料層同士が向かい合うように、又はプラスチック段ボール同士が向かい合うように、或いは何れかの複合断熱材におけるプラスチック段ボールに向き合わせて他の複合断熱材の金属材料層を配置することができる。またプラスチック段ボールの片面に金属材料層を設けた複合断熱材料において、当該金属材料層の外側に面に、更にプラスチック段ボールを設けることもできる。この場合、プラスチック段ボール同士で金属材料層を挟み込んだ構造の複合断熱材となる。
【0022】
上記建築用の複合断熱材において、2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている厚さ方向に直交する向きの中空孔の延伸方向の端部には、建築用の複合断熱材同士を面一に連結する連結手段を設けることが望ましい。
【0023】
この建築用の複合断熱材は、実際に建築物の断熱に使用する場合には、複数枚を連結して使用されることから、各建築用の複合断熱材の連結時において、中空孔同士の連通を確実に行い得るようにする為である。かかる連結手段としては、何れか一方の端部(中空孔が開口している端部)に他の建築用の複合断熱材を継合するべく、当該複合断熱材の片面又は両面から、前記端部を超えて延伸する壁状部を形成することが考えられる。
【0024】
また、本発明では前記課題の少なくとも何れかを解決するために、建築物における断熱材として、上記本発明にかかる建築用の複合断熱材が使用された建築物を提供する。かかる建築物は、2つ以上の建築用の複合断熱材が、2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている厚さ方向に直交する向きの中空孔が連通するように連結されていることを特徴とする。
【0025】
かかる本発明の建築物においては、例えば外壁の構築に際して、上記建築用の複合断熱材を1層又は2層にすることができる。また、外壁面等に埋め込まれた建築用の複合断熱材は、建築用の複合断熱材の縦又は横方向に貫通する中空孔が、上下方向に向いて設けられることが望ましく、更に連通する中空孔内の空気を強制的に吸気または排気するために、当該中空孔の上端側開口または下端側開口には、ファンによる強制的な吸気または排気が行われることも望ましい。例えば、中空孔の上端側開口または下端側開口をダクトに繋げ、このダクト内の気体を排気するか、あるいは当該ダクト内に気体を吸気することにより、これに繋がる各中空孔内の気体を強制的に流通させることができる。このような強制的な給排気を行うことにより、この建築用の複合断熱材は、伝導熱の移動さえも確実に阻止することができる。
【0026】
更に、建築用の複合断熱材における金属材料層が金属箔や金属シートを用いて形成されている建築用の複合断熱材を使用する場合には、当該金属材料層により電磁遮蔽の効果を発現させることができ、よって高圧線の下などにおける電磁波の影響をも、これを用いた建築物内においては解消することができる。
【0027】
また本発明では、上記課題の少なくとも何れかを解決するために、上記本発明にかかる建築用の複合断熱材を用いた建築物の断熱工法を提供する。
【0028】
即ち、本発明にかかる建築用の複合断熱材は、2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている、厚さ方向に直交する向きの中空孔が、建築物の上下方向に向くように配置され、上下に連結される建築用の複合断熱材同士における中空孔同士は相互に連通しており、連通する中空孔を通気路として利用する建築物の断熱工法である。
【0029】
かかる断熱方法では、建築用の複合断熱材がプラスチック段ボールを用いて形成されていることから、曲折や切断を容易に行うことができ、よって施工性が著しく向上する。更にこの建築用の複合断熱材は、実質的にプラスチック段ボールの厚さであることから、これを収容するための空間も狭くすることができ、その結果、壁面の厚さを薄くしたり、あるいは耐震補強材料をより多く設置することが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
以上のように構成された建築用の複合断熱材によれば、十分な断熱性能を有しながらも、簡易な構造であって、更に製造コストや製品価格を廉価にすることのできる、新たな建築用の複合断熱材を提供することができる。
【0031】
また、本発明にかかる建築用の複合断熱材は、上記のようにプラスチック段ボールと金属材料層で形成されていることから、施工に際しての従来の課題を解決し、簡易に施工可能とすることができる建築用の複合断熱材と、その施工方法を提供することができる。
【0032】
そして本発明により、建築物における断熱のための空間を狭くすることのできる、建築用の複合断熱材と、これを用いた建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態にかかる建築用の複合断熱材の分解斜視図
【図2】本実施の形態にかかる建築用の複合断熱材の横断面図であり、(A)は片面に金属材料層を設けた例、(B)は両面に金属材料層を設けた例を示している。
【図3】建築用の複合断熱材の連結状態を示す斜視略図
【図4】他の実施の形態にかかる建築用の複合断熱材の連結状態を示す斜視略図
【図5】建築物の壁面に使用した例を示す縦断面図
【図6】他の実施の形態にかかる建築用の複合断熱材の上端要部斜視図
【図7】本実施の形態にかかる建築用の複合断熱材を用いた建築物を示す縦断面略図
【図8】他の実施の形態にかかる建築用の複合断熱材の横断面図であり、(A)は金属材料層をプラスチック段ボールで挟んで構成した例、(B)は金属材料層とプラスチック段ボールを交互に設けた例を示している。
【図9】実施例における実験方法を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明にかかる建築用の複合断熱材10をより具体的にした実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施の形態にかかる建築用の複合断熱材10は、図1の建築用の複合断熱材10の分解斜視図に示すように、プラスチック段ボール20の片面に、アルミニウムシートからなる金属材料を貼り合わせて形成されており、その結果、図2(A)の要部横断面図に示すように、プラスチック段ボール20の片面に金属材料層30が積層した構造となっている。プラスチック段ボール20に対する金属材料の貼り付けは、接着剤(接着テープなどを含む。以下同じ)や粘着剤を用いて行うことができる。金属材料層30は、その裏面全体がプラスチック段ボール20の片面に貼り付くことが望ましいが、例えばプラスチック段ボール20の縁部分に接着剤を設けて、金属材料層30の縁部を保持するものであっても良い。また接着剤や粘着剤によることなく、アルミニウム粉を分散させた塗料を塗布したり、アルミニウムを蒸着させても良い。
【0035】
また、この実施の形態で使用する金属材料層30の厚さは、およそ0.1〜0.2mm程度の厚さであり、望ましくは0.15mmの厚さのアルミニウムシートが使用される。かかるアルミニウムシートは、その表面が金属光沢を有するものとして形成される事が望ましい。輻射熱を反射させるために、反射率が重要だからである。なお、アルミニウムシートの他にも、反射率が50%以上、望ましくは90%、特に望ましくは95%以上の金属材料を使用することも可能である。
【0036】
またプラスチック段ボール20は、おおよそ4mm程度の厚さのものが使用されるが、これに限らず使用することが可能である。プラスチック段ボール20内に確保される中空孔32における空気の移動しやすさを向上させるためには、これ以上の厚さのプラスチック段ボール20を使用することもでき、また建築物における壁面への設置空間を小さくする場合には、これよりも薄いプラスチック段ボール20を使用することもできる。そして当該プラスチック段ボール20は、熱の蓄積を極力避けるために、透明または半透明であることが望ましく、また当該プラスチック段ボール20を構成するプラスチック製のシートとリブ31とは、可能な限り薄く形成されることが望ましい。ただし、一定の強度が要求される場合には、適宜、プラスチック製のシートとリブ31の厚さや材質を選択、採用することができる。
【0037】
また、このプラスチック段ボール20には、図1において、その長手方向に貫通する中空孔32が確保されており、これが熱伝導によって温まった空気を排出または吸入するための通気路として機能することができる。
【0038】
更に、前記図1の実施形態では、プラスチック段ボール20の片面にだけ金属材料層30を設けた例を示したが、そのほかにも図2(B)に示すように、プラスチック段ボール20の両面に金属材料層30を設けることもできる。プラスチック段ボール20の両面に金属材料層30を設けた場合には、当然の事であるが当該建築用の複合断熱材10の両面からの放射熱を遮断することができる。例えば夏期は屋外からの放射熱を遮断し、冬季は室内からの放射熱を遮断することができる。
【0039】
更に本実施の形態にかかる複合断熱材は、図8(A)に示す様に、金属材料層をプラスチック段ボールで挟んで構成したり、或いは図8(B)に示す様に、金属材料層とプラスチック段ボールを交互に設けて構成することもできる。金属材料層をプラスチック段ボールで挟んだ複合断熱材料にあっては、熱せられて高温になった金属材料層の熱を、プラスチック段ボールに設けられた中空孔32における空気の移動により効果的に放熱することができ、また金属材料層自体の熱を、その周囲の建築材料に伝えないようにすることができる。また、金属材料層とプラスチック段ボールを交互に設けた複合断熱材料にあっては、十分な断熱空間や、放熱のための通気面積(中空孔の開口面積)を確保して。効果的な放熱を行うことができる。
【0040】
そして上記のようにプラスチック段ボール20に金属材料層30を設けた建築用の複合断熱材10には、施工時における相互連結の容易性を考慮して、その上端部または下端部に、各複合断熱材10同士を面一に連結する連結手段を設けることが望ましい。即ち、施工性を考慮した場合には、プラスチック段ボール20の片面または両面に金属材料層30を積層させ、プラスチック段ボール20の中空孔32の開口する端部に、連結手段を設けた建築用の複合断熱材10とすることができる。
【0041】
かかる連結手段は、例えば図3に示すように、建築用の複合断熱材10の両面の端部に、プラスチック段ボール20の端部を越えて延伸する壁状部40を設けることができる。図3に示すように、建築用の複合断熱材10の両面に壁状部40を形成した場合には、対向する壁状部40間で、当該建築用の複合断熱材10に連結される他の建築用の複合断熱材10の端部を挟むことができ、これにより両複合断熱材10の中空孔32間同士が確実に連通することができる。即ち、この対向配置された帯のような壁状部40材は、複合断熱材10同士の繋ぎ目から空気が漏れるのを阻止するものとして機能することができる。
【0042】
また連結手段は、例えば図4に示すように、建築用の複合断熱材10の片面の端部に、プラスチック段ボール20の端部を越えて延伸する壁状部40を設けることもできる。この場合、帯のような壁状部40が設けられる面は、金属材料層30が設けられていない面であることが望ましい。金属材料層30における反射率の低下を減じるためである。図4に示すように、片面に壁状部40を形成した建築用の複合断熱材10においては、これらを相互に繋ぎ合わせる場合には、この壁状部40で建築用の複合断熱材10の厚さ方向における位置決めを行うことができ、よって中空孔32が建築用の複合断熱材10の厚さ方向にずれることはなくなる。壁状部40で位置決めした建築用の複合断熱材10同士は、壁状部40が存在しない側の繋ぎ目を透明なテープなどで一体化し、連結された建築用の複合断熱材10同士の繋ぎ目からの空気の漏洩を阻止することができる。
【0043】
なお、図3および図4のいずれの場合においても、連結される建築用の複合断熱材10は、連結時において接着剤や粘着剤などにより壁状部40に結合されることが望ましい。
【0044】
以上のように連結された建築用の複合断熱材10は、建築物の壁面等に断熱材として設置することができる。図5は、上記建築用の複合断熱材10の壁面への設置例を示す、壁面の縦断面斜視図である。一般的な住宅の外壁面の場合は、通常、屋外側からサイディングやモルタルなどの外装材63、胴縁62、構造用合板61が組み合わされており、構造用合板61の室内側に壁紙などの内部装飾(図示せず)が施されている。そこで本実施の形態にかかる建築用の複合断熱材10は、図5に示すように胴縁62と構造用合板61との間に設けることができる。具体的には胴縁62と構造用合板61との間に、金属材料層30が外側(屋外側)を向くように設置することができる。
【0045】
このように構成された外壁では、屋外からの放射熱は外装材や胴縁を介して伝わってくることになるが、これは建築用の複合断熱材10における金属材料層30で反射され、それよりも室内側への侵入は阻止されることになる。この金属材料層30は、伝導熱により暖められることも考えられるが、この金属材料層30の熱は、当該金属材料層30よりも室内側に存在するプラスチック段ボール20の内部に存在する中空孔32に空気を通すことにより放出することができる。この中空孔32における空気の移動(即ち熱の移動)は、空気の自然対流によって行うことも考えられるが、望ましくはファンなどを用いて強制的に流通させる。
【0046】
そこでこの実施の形態では、連結された建築用の複合断熱材10の上端側には、ダクト50を設け、連通する中空孔32の開口が、このダクト50内に存在するように形成している。そして、このダクト50内の空気は、当該ダクト50内もしくはダクト50の出口側または入口側に設けられるファン(例えばシロッコファン)によって強制的に移送させることができる。この図5に示すように、建築用の複合断熱材10における中空孔32の上端側開口をダクト50内に存在させる場合、ダクト50内をファンによって減圧することにより、中空孔32内の空気はダクト50内に吸い込まれ、これにより建築用の複合断熱材10の熱を排出することが可能になる。
【0047】
なお、図5に示すように中空孔32の開口側を減圧するか或いは加圧する場合、中空孔32内の気体を効果的に移動させるためには、当該中空孔32の開口面積を大きくすることが望ましい。そこで、図6に示すように、当該建築用の複合断熱材10におけるプラスチック段ボール20の端部は、背面側に斜めに切り欠くことも望ましい。図6では上端側を斜めに切り欠いているが、更に下端側を斜めに切り欠いても良い。
【0048】
また、建築用の複合断熱材10は、外装材と胴縁との間に設けることも可能である。また他の実施の形態として、更に構造用合板の室内側にも建築用の複合断熱材10を設置することができ、この場合には、金属材料層30が室内側に向くように建築用の複合断熱材10を設置することができる。
【0049】
そして、上記した建築用の複合断熱材10は、外壁の断熱材として使用するほか、更に屋根64の断熱材として使用することも望ましい。図7は、家屋において外壁から屋根まで建築用の複合断熱材10を設置した例を示している。この図7に示すように、外壁から屋根まで建築用の複合断熱材10を設置する場合には、外壁に設置した建築用の複合断熱材10と屋根裏に設置した建築用の複合断熱材10とを連結し、それぞれの中空孔32を連通させることが望ましい。そのために、外壁に設けられた建築用の複合断熱材10の中空孔32と、屋根裏に設置される建築用の複合断熱材10の中空孔32を連通させるために、両者の接合には筒状部材55を設置することが考えられる。このようにして建築物の高さ方向に連通する中空孔32の上端には、前記図6に示したようなダクト50を接合し、このダクト50を介して連通する中空孔32の気体を強制的に排出させることもできる。
【0050】
また、この図7に示すように建築物全体を建築用の複合断熱材で断熱した場合には、同時に建築物全体が金属材料層によって覆われることになり、よって電磁遮蔽効果により、建築物内への電磁波の侵入を阻止することができる。
【0051】
更に、建築物における日当たりの良い壁面に設けられた建築用の複合断熱材10と、日当たりの良くない壁面に設けられた建築用の複合断熱材10とで、吸気・排気の経路を異ならせ、冬季などにおいては、日当たりの良い壁面に設けられた建築用の複合断熱材10から吸い上げた暖気された空気を、日当たりの良くない壁面に設けられた建築用の複合断熱材10の中空孔32を通過させるように構成することも可能である。この場合、吸気および排気の経路を2系統形成するか、あるいは夫々の吸気または排気を制御する弁を設けることが望ましい。
【実施例1】
【0052】
本発明にかかる複合断熱材料の効果を確認するべく、実験を行った。この実験では、単なるプラスチック段ボールを用いた試験体と、本発明にかかる複合断熱材を用いた試験体とにおける断熱効果の違いを確認した。
この実験で使用した試験体は、図9に示す様に、各実験で使用した材料で形成した箱状体であり、25cm離れた所からヒーター(800Wの赤外線ヒーター)で加熱して、当該試験体のヒーターとの対向面の温度、当該対向面の裏側(箱状の試験体の内壁面)の温度、および箱状の試験体の内部空間の温度を測定した。なお、温度の測定は、加熱開始後の温度の変化を測定し、また実験時の環境温度は25.8℃であった。そして、この試験体におけるヒーターに対向する面の反対側の面を開放した物を使用した。
各実験で使用した試験体の材料は、以下の通りである。
「実験例1」
厚さ2.5mmの半透明のプラスチック段ボールを用いて箱状の試験体を形成した。この試験体における実験結果を以下の表1に示す。
【表1】

「実験例2」
厚さ4.0mmの青色のプラスチック段ボールを用いて箱状の試験体を形成した。この試験体における実験結果を以下の表2に示す。
【表2】

「実験例3」
厚さ2.5mmの半透明プラスチック段ボールの表面及び裏面にアルミニウムシートからなる金属材料層を設けた複合断熱材料を用いて箱状の試験体を形成した。この試験体における実験結果を以下の表3に示す。
【表3】

「実験例4」
厚さ2.5mmの半透明プラスチック段ボール同士でアルミニウムシートからなる金属材料層を挟んだ複合断熱材料を用いて箱状の試験体を形成した。この試験体における実験結果を以下の表4に示す。
【表4】

「実験例5」
厚さ2.5mmの半透明プラスチック段ボールの表面及び裏面に、市販されているアルミホイル(厚さ0.015mm〜0.02mm)からなる金属材料層を設けた複合断熱材料を用いて箱状の試験体を形成した。この試験体における実験結果を以下の表5に示す。
【表5】

「実験例6」
アルミニウムシート、厚さ2.5mmの半透明プラスチック段ボール、アルミニウムシート、厚さ2.5mmの半透明プラスチック段ボールをこの順で重ね合わせた金属材料層を設けた複合断熱材料を用いて箱状の試験体を形成した。この試験体における実験結果を以下の表6に示す。
【表6】

【符号の説明】
【0053】
10 建築用の複合断熱材
20 プラスチック段ボール
30 金属材料層
31 リブ
32 中空孔
40 壁状部
50 ダクト
55 筒状部材
61 構造用合板
62 胴縁
63 外装材
64 屋根


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に使用する板状の断熱材であって、
対向する2枚のプラスチック製のシート間を平行な直線状または曲線状のリブで連結してなる中空構造のプラスチック段ボールと、
当該プラスチック段ボールの表面および裏面の少なくとも何れかの面または両面に設けられた、輻射熱に対して高反射率を有する金属材料層とからなることを特徴とする、建築用の複合断熱材。
【請求項2】
前記プラスチック段ボールは、厚さ方向に直行する向きに中空孔が貫通しており、当該プラスチック段ボールの表面および裏面の少なくとも何れかの面または両面に設けられた金属材料層の外側の面には、更にプラスチック段ボールが設けられている、請求項1に記載の建築用の複合断熱材。
【請求項3】
2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている厚さ方向に直交する向きの中空孔の延伸方向の端部には、建築用の複合断熱材同士を面一に連結する連結手段が設けられている、請求項1又は2に記載の建築用の複合断熱材。
【請求項4】
建築物における断熱材として、請求項1〜3の何れか一項に記載の建築用の複合断熱材が使用された建築物であって、
2つ以上の建築用の複合断熱材が、2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている厚さ方向に直交する向きの中空孔が連通するように連結されていることを特徴とする建築物。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の建築用の複合断熱材を用いた建築物の断熱工法であって、
当該建築用の複合断熱材は、2枚のプラスチック製のシートとリブとで区画されている、厚さ方向に直交する向きの中空孔が、建築物の上下方向に向くように配置され、
上下に連結される建築用の複合断熱材同士における中空孔同士は相互に連通しており、
連通する中空孔を通気路として利用することを特徴とする建築物の断熱工法。
【請求項6】
前記上下に連結された建築用の複合断熱材同士で相互に連通する中空孔の上端または下端の開口は、強制的に吸気または排気されるダクト内に開口している、請求項5に記載の建築物の断熱工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−67575(P2012−67575A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233172(P2010−233172)
【出願日】平成22年10月17日(2010.10.17)
【出願人】(508170302)株式会社タカショー (4)
【Fターム(参考)】