説明

建築用パネル

【課題】種々の通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、該基材パネルと同様に通気性・透湿性を有する塗膜を形成することにより、簡単な塗装作業のみで、一般家屋の天井材や内装材等の分野に利用できる建築用パネルを提供する。
【解決手段】通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料を塗布してなる建築用パネルであって、溶剤の揮発性の大なる塗料の溶剤の揮発で上記基材パネルの表面に通気性・透湿性を有する塗膜を形成してなる建築用パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は建築用パネルに関し、さらに詳しくは、通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に通気性・透湿性を有する塗膜を形成してなり、調湿性に優れた建築用パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築用パネル、特に木質材料からなる建築用パネルは、木材が多孔質であることによる特性、すなわち、通気性・透湿性に優れ、調湿機能を有することから、種々の建築材料、特に、内装材の分野等で使用されることが多い。上記木質材料としては、近年、無垢の木材の入手が困難となってきていることから、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等、種々の木質基材に突き板等を貼着したり、木目模様の化粧紙を接着する等、表面化粧して上記建築用パネルとして汎用されている。
【0003】
一方、上記した木質材料のみならず、不燃性材料であるスラグ、石膏、セメント系の無機材料を主成分とし、これに調湿性成分を添加して通気性・透湿性を付与してなる調湿性建材も知られている。例えば、特開2002−68860号公報には、上記調湿性成分として珪藻土が添加された建材が開示されている。
【0004】
すなわち、特開2002−68860号公報には、重量で、二水石膏:15%〜50%、水硬性物質:15%〜50%、粒度が2μm〜100μmの範囲内にある珪藻土:5%〜25%、パーライト:10%〜15%、有機質補強繊維:4%〜8%からなる基材の一面に、通気性シーラーを塗布、乾燥し、その表面に通気性塗料を塗布してなる調湿性建材が開示され、上記通気性塗料としてアクリル樹脂エマルジョン、着色・体質顔料および添加剤を配合した例が示されている。そして、吸放湿特性、防火性、耐火性に優れるとともに軽量であり、また調湿性であるため、天井材、内装材等の意匠性が必要な建材に好適に用いることができる旨記載されている。
【特許文献1】特開2002−68860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、木質材料または石膏等の無機材料に調湿性成分を添加してなる不燃調湿性建材等、種々の通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、該基材パネルと同様に通気性・透湿性を有する塗膜を形成することにより、簡単な塗装作業のみで、一般家屋の天井材や内装材等の分野に利用可能な建築用パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る建築用パネルは、通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料を塗布してなる建築用パネルであって、溶剤の揮発性の大なる塗料の溶剤の揮発で上記基材パネルの表面に通気性・透湿性を有する塗膜を形成してなることを特徴としている。
【0007】
上記塗料の塗布方法は特に限定されず、公知の方法が用いられる。例えば、シルク印刷法、インクジェット法、凹凸のあるローラーを用いるスプレッター法、スプレー法等をあげることができる。また、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料としては、親水性、水溶性塗料である水性塗料と撥水性、溶剤系の塗料であるウレタン塗料、ゴム塗料との組み合わせが例示される。
【0008】
上記請求項1に記載の建築用パネルにおいて、一方の塗料の塗膜が通気性・透湿性を有するものであり、他方の塗料の塗膜が通気性・透湿性に劣るものであるとともに、両者の塗料を部分的に重ね塗りして塗膜が形成されてなる場合、例えば、通気性・透湿性を有する塗膜を形成する塗料を不規則あるいは規則的配列のドットパターン、ラインパターン等で部分的に先に塗布し、その上に通気性・透湿性に劣る塗膜を形成する塗料を重ね塗りする方法が例示される。ここで、2種の塗料は溶剤相互の相溶性が悪く、重ね塗りしても後から塗布され、通気性・透湿性に劣る塗膜を形成する塗料は撥かれて上記したドットパターン、ラインパターンの上には乗らないため、塗膜の通気性・透湿性を保持することができる。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の建築用パネルにおいて、上記基材パネルの表面に揮発性の高い塗料を部分的に塗布し、その上に揮発性の低い塗料を塗布して通気性・透湿性を有する塗膜が形成されてなることを特徴としている。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載の建築用パネルにおいて、上記通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料を混合して塗布し、通気性・透湿性を有する塗膜が形成されてなることを特徴としている。例えば、溶剤相互の相溶性が悪い2種の塗料を予め、攪拌機等で攪拌して懸濁状態とすることにより、親油性成分がソーセージ状やひも状のミセルを形成し、通気性・透湿性を有する基材パネルの表面にランダムなパターンで通気性・透湿性部分を有する塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本願請求項1記載の発明に係る建築用パネルにおいては、通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、溶剤の揮発性に差異を有し、かつ溶剤相互の相溶性が悪い2種の塗料を塗布し溶剤の揮発性の大なる塗料の溶剤の揮発で基材パネルの表面に通気性・透湿性を有する塗膜を形成することにより、該基材パネルの持つ通気性・透湿性を損なうことなく、表面上に通気性・透湿性を有する塗膜を簡単に、作業性よく形成することが可能となる。
【0012】
さらに、この建築用パネルにおいては、通気性・透湿性を有する塗膜を形成する塗料と、通気性・透湿性に劣る塗膜を形成する他の塗料とが、部分的に重ね塗りされると、通気性・透湿性を有する塗膜が上記基材パネルの表面に部分的に形成されるため、基材パネルの有する通気性・透湿性を大きく損なうことなく表面塗装され、意匠性に優れた建築用パネルを得ることができる。そして、この建築用パネルを居住空間の間仕切り壁等に用いた場合、上記基材パネルの有する通気性・透湿性によって調湿機能が発現するため、結露の発生を防ぎ、極度の乾燥を防いで、室内におけるカビの発生等を防止できる。
【0013】
本願請求項2記載の発明に係る建築用パネルにおいては、特に、上記基材パネルの表面に揮発性の高い塗料を部分的に塗布し、その上に揮発性の低い塗料を塗布することにより、揮発性の高い塗料の溶剤が先に蒸発し、通気性・透湿性を有する塗膜が部分的に形成される。そして、後から重ね塗りされた通気性・透湿性に劣る塗膜を形成する塗料は溶剤相互の相溶性が悪いために撥かれて、通気性・透湿性を有する塗膜上には乗らないため、記基材パネルの表面に通気性・透湿性を有する塗膜を簡単に形成することができる。
【0014】
本願請求項3記載の発明に係る建築用パネルにおいては、特に、上記通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料を予め、混合して塗布することにより、ランダムなパターンで通気性・透湿性の塗膜を形成することができる。そして、上記建築用パネルを居住空間の間仕切り壁等に用いた場合、上記基材パネルの有する通気性・透湿性によって調湿機能が発現するため、結露の発生を防ぎ、極度の乾燥を防いで、室内におけるカビの発生等を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本願発明に係る建築用パネルの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態においては、通気性・透湿性を有する基材パネルとして、構造用合板を用い、この合板の表面に揮発性の高い塗料を部分的に塗布し、その上に揮発性の低い塗料を塗布して通気性・透湿性を有する塗膜を形成する場合について説明する。
【0016】
図1は、上記合板4の表面に揮発性の高い塗料1を、例えば、不規則あるいは規則的配列のドットパターンで部分的に塗布した形態を模式的に示す断面図である。上記揮発性の高い塗料1としては、例えば、アクリル樹脂やエチレン−酢酸ビニル樹脂等の水性塗料をあげることができる。ここで、上記水性塗料としては、塗布後に通気性・透湿性を有するディスパージョン層が形成される水性樹脂エマルジョン塗料を用いることが好ましい。
ついで、上記合板4の表面にドットパターンで塗布された揮発性の高い塗料1の上に揮発性の低い塗料2を塗布する。ここで、揮発性の低い塗料2としては、例えば、ウレタン塗料、ゴム塗料等の溶剤系の塗料が用いられる。
【0017】
図2は、図1に示すドットパターンの上に揮発性の低い塗料2を塗布した形態を模式的に示す断面図である。このとき、上記した水性塗料は親水性、水溶性であり、揮発性の低い塗料2として用いられた溶剤系の塗料とは、溶剤どうしの相溶性が悪く、図1に示すドットパターンの上に塗布された揮発性の低い塗料2は撥かれ、乗ることがないため、図2に示すように揮発性の高い塗料1で塗布されたドットパターンの間に揮発性の低い塗料2の塗膜が形成される。
【0018】
図3は、上記した2種類の塗料のうち、揮発性の高い塗料1の溶剤が先に蒸発し、合板4の上に揮発性の高い塗料1の塗膜11が形成されるとともに、空隙3が生じた状態を示す断面図である。このとき、上記揮発性の高い塗料1として、アクリル樹脂エマルジョンやエチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン等の水性樹脂エマルジョン塗料を用いることにより、塗膜11中には塗料中の水分が蒸発するときの通路として生じた連続気孔が存在し、この連続気孔により、通気性を保つことができ、また、透湿性を確保することができる。
【0019】
一方、上記塗膜11よりも通気性・透湿性に劣る揮発性の低い塗料2の塗膜が合板4の表面に形成されていても、上記空隙3を通じて通気性・透湿性を確保できるため、合板4の通気性・透湿性が損なわれることなく、上記した2種類の塗料により合板4の表面を塗装することができる。
【0020】
このようにすることにより、単独の通気性・透湿性塗料を用いる従来法においては、塗膜厚が増すに従って塗膜中の連続気孔の連続性の低下や孔径の限界等に起因する通気性や透湿性の低下等という問題を解決して厚塗りを行うことができる。そして、薄い塗膜、厚い塗膜等からなる種々のパターンを任意に着色して、あるいはデザイン性を付与して表面に塗装することができ、意匠性に優れるとともに、通気性・透湿性に優れ、調湿機能が付与された建築用パネルを提供することができる。
【0021】
なお、上記実施形態は通気性・透湿性を有する基材パネルとして合板4を用いた例について述べたが、合板4にかかわらず、不燃性材料であるスラグ、石膏、セメント系の無機材料を主成分とする基材パネルについても適用可能である。また、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料を予め、混合して塗布し、通気性・透湿性を有する塗膜を基材パネルの表面に形成してもよく、このような方法によって塗装したときにおいても、前記した実施形態と同様の作用、効果を有する建築用パネルを得ることができる。このように本願発明に係る建築用パネルは設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】合板の表面に揮発性の高い塗料を部分的に塗布した形態を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示す部分的に塗布された揮発性の高い塗料の上に揮発性の低い塗料を塗布した形態を模式的に示す断面図。
【図3】揮発性の高い塗料の溶剤が先に蒸発し、合板の上に揮発性の高い塗料の塗膜が形成されて空隙が生じた状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0023】
1 揮発性の高い塗料
11 塗膜
2 揮発性の低い塗料
3 空隙
4 合板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料を塗布してなる建築用パネルであって、溶剤の揮発性の大なる塗料の溶剤の揮発で上記基材パネルの表面に通気性・透湿性を有する塗膜を形成してなる建築用パネル。
【請求項2】
上記基材パネルの表面に揮発性の高い塗料を部分的に塗布し、その上に揮発性の低い塗料を塗布して通気性・透湿性を有する塗膜が形成されてなる請求項1に記載の建築用パネル。
【請求項3】
上記通気性・透湿性を有する基材パネルの表面に、溶剤相互の相溶性が悪く、かつ溶剤の揮発性に差異を有する2種の塗料を混合して塗布し、通気性・透湿性を有する塗膜が形成されてなる請求項1に記載の建築用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−24737(P2010−24737A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188510(P2008−188510)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】