説明

建築用板材の実構造

【課題】作業性よく釘を打ち込め、かつ、木膨れによる嵌合不良を防止して雄実部と雌実部とをしっかりと結合できる建築用板材の実構造を提供する。
【解決手段】雄実部1と雌実部2とからなり、該雄実部1の雄実11が該雌実部2の雌実21に嵌合する実結合において、上記雄実11が突設される基端部の上部垂直面12に木膨れ吸収用溝部13が凹設される。好ましくは、上記木膨れ吸収用溝部13は、その天井部が奥行きにいくに従ってとともに低くなるように斜設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用板材の実結合に関する。さらに詳しくは、木質系建築用板材に設けられた雄実部と雌実部とを実結合する際に用いられる実の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床板、壁板等の木質系建築用板材の接合に関しては、単板の対向する両側端面に互いに嵌合可能な雄実部と雌実部とを設け、この雄実部の雄実と雌実部の雌実とを実結合することによって、複数の単板を接合することが一般的に行なわれている。例えば、下記特許文献には、本願図4に示す雄実部61と雌実部62とからなる実結合が記載されている。
【特許文献1】特開平8−109734号公報(第1−4頁、第2、3、4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、上記実結合においては、雄実部61を胴縁等の下地材に固定し、雌実部62が実結合される。すなわち、本願図4において、雄実部61の雄実611が突設される基端部の上部垂直面の付け根部を釘打ち部612とし、この部分に釘をあてがって自動釘打ち機等によって釘を打ち込み、その後雌実621を結合する。しかしながら、釘打ちの際、釘の先端が逃げて打ち込みにくく、また、打ち込み後、雄実部61全体が木膨れするという問題がある。そこで、本発明は、自動釘打ち機等で作業性よく、釘を打ち込むことができるとともに、木膨れによる嵌合不良を防止して雄実部と雌実部とがしっかりと結合できる建築用板材の実構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明においては、つぎのような技術的手段を講じている。すなわち、本発明によれば、雄実部と雌実部とからなり、該雄実部の雄実が該雌実部の雌実に嵌合する実結合において、上記雄実が突設される基端部の上部垂直面に木膨れ吸収用溝部が凹設された建築用板材の実構造が提供される。
【0005】
上記木膨れ吸収用溝部は、その天井部が奥行きにいくに従って低くなるように斜設され、断面略直角三角形の溝部とされることが好ましい。また、上記雄実が突設される基端部の上部垂直面の付け根部がV字型に切り欠かれて釘打ち用溝部されることが好ましい。さらに、上記雌実部の雌実上部の突起部の下部角部が面取りされて、釘頭収納部が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は上記のとおりであり、とくに、上記雄実が突設される基端部の上部垂直面に木膨れ吸収用溝部が凹設されているため、釘打ち時に生じる木膨れが吸収されて嵌合不良となることを防止し、雄実部と雌実部とをしっかりと結合することができる。
【0007】
上記木膨れ吸収用溝部は、その天井部が奥行きにいくに従って低くなるように斜設され、断面略直角三角形とされているため、木膨れを横方向に逃がすことができるとともに、上記雄実が突設される基端部の上部分の肉厚を残し、強度維持を図ることができる。
【0008】
上記雄実が突設される基端部の上部垂直面の付け根部が切り欠かれてV字型の釘打ち用溝部とされているため、釘を打ち込む時の目安とすることができるとともに、釘の先端をこの釘打ち用溝部にあてがって、自動釘打ち機等で作業性よく釘を打ち込むことができる。
【0009】
また、上記雌実部の雌実上部の突起部の下部角部が面取りされて、釘頭収納部が形成されているため、上記釘打ち用溝部に打ち込んだ釘の頭を収めて、雄実と雌実とをしっかりと嵌合させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して、詳細に説明する。図1は、本発明にかかる建築用板材の実構造を示す断面図である。図1からよくわかるように、上記実構造は、雄実部1と雌実部2とからなり、雄実部1の雄実11は雌実部2の雌実21に嵌合して建築用板材、例えば合板の端部どうしが接合されて床板、壁板等を形成する。
【0011】
本発明の実施形態においては、図1に示すように、雄実11が突設される基端部上部垂直面12には、釘打ち時に生じる木膨れを吸収するための木膨れ吸収用溝部13が設けられている。また、図1からよくわかるように、上記木膨れ吸収用溝部13は天井部を奥行きにいくに従って低くなるようように斜設し、断面略直角三角形とされている。すなわち、木膨れをできるだけ木膨れ吸収用溝部13内に逃がし、更に、上記基端部上部垂直面12の肉厚を残し、雄実部1の強度維持が図られている。
【0012】
また、雄実11が突設される基端部上部垂直面12の付け根部には、釘を打ち込む時の目安とするとともに、釘の先端が逃げないでしっかりと釘打ちができるようにV字型の切り欠きを設け、釘打ち用溝部14とされている。さらに、雌実21の上部突起部22の下部角部は面取りが施され、釘頭を収める釘頭収納部23が形成されている。
【0013】
図2は、釘打ち用溝部14に釘3の先端をあてがって自動釘打ち機5を用いて釘3を打ち込む状態を示す説明図である。図3は、このようにして釘3を打ち込んで雄実部1を下地材4に固定し、雌実部2を実結合した状態を示す断面図である。釘3によって雄実部1が下地材4に固定され、木膨れが木膨れ吸収用溝部13に吸収されるとともに、釘3の頭が上記釘頭収納部23に収められ、しっかりと実結合していることが明らかである。なお、図3からよくわかるように、雌実21は多少余裕を持って形成されているため、接着剤を併用して実結合する際は、この余裕空間は接着剤溜まりとされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる建築用板材の実構造を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる釘打ち用溝部に釘を打ち込む状態を示す説明図である。
【図3】本発明の実構造を用いて実結合した状態を示す断面図である。
【図4】公知の実結合を示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 雄実部
11 雄実
12 基端部上部垂直面
13 木膨れ吸収用溝部
14 釘打ち用溝部
2 雌実部
21 雌実
22 上部突起部
23 釘頭収納部
3 釘
4 下地材
5 自動釘打ち機
61 公知の雄実部
611 上記の雄実
612 上記の釘打ち部
62 公知の雌実部
621 上記の雌実

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄実部と雌実部とからなり、該雄実部の雄実が該雌実部の雌実に嵌合する実結合において、上記雄実が突設される基端部の上部垂直面に木膨れ吸収用溝部が凹設された建築用板材の実構造。
【請求項2】
上記木膨れ吸収用溝部は、その天井部が奥行きにいくに従って低くなるように斜設された請求項1に記載の建築用板材の実構造。
【請求項3】
上記雄実が突設される基端部の上部垂直面の付け根部が切り欠かれて釘打ち用溝部とされた請求項1に記載の建築用板材の実構造。
【請求項4】
上記雌実部の雌実上部の突起部の下部角部が面取りされて、釘頭収納部が形成された請求項1に記載の建築用板材の実構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−9372(P2006−9372A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186885(P2004−186885)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】