説明

建設機械のステップ構造

【課題】 ステップの取り付け工程を省略できて、しかも障害物との衝突時にも耐え得る強度を確保できる建設機械のステップ構造を提供すること。
【解決手段】 この油圧ショベルのステップ構造は、下部走行体1上に上部旋回体2が旋回自在に搭載され、この上部旋回体2の旋回フレーム8を構成するメインフレーム30の一部が上部旋回体2の昇降用のステップ33を構成している構造であって、メインフレーム30が一枚板で構成されるとともに、そのメインフレーム30の一部がメインフレーム30上に取り付けられたサイドデッキ35及びカバー11から外側に張り出すことにより、ステップ33を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械のステップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルでは、上部旋回体に搭載されたエンジン等を覆うカバーが設けられており、作業者は、カバーの上面に上って、点検、清掃、修理などの各種メンテナンスをするようになっている。この場合、作業者は、地面から下部走行体のクローラ上面に上り、さらにカバーに取り付けられた複数段ステップを踏んでそのカバーの上面へと上っていき、逆順でカバーの上面から地面に降りることができる。
【0003】
例えば特許文献1では、図8に示すように、上部旋回体51の旋回フレーム53の外周に取り付けたサイドデッキ54に外付けで最下段のステップ55を設けている。なお、同図中の56,57は、それぞれカバー52の中間部と上部とに設けられた上段のステップである。
【特許文献1】特開平10−266264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のステップ構造では、上部旋回体51の旋回フレーム53の外周に取り付けたサイドデッキ54に外付けで最下段のステップ55を設けているので、その取り付け工程が必要である。また、ステップ55は作業者の体重を支える程度の強度しか持たないものであるため、もし油圧ショベルが作業中に誤って障害物と衝突した場合等にはステップ55が大きく変形してしまい、その後の使用が不可能となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ステップの取り付け工程を省略できて、しかも障害物との衝突時にも耐え得る強度を確保できる建設機械のステップ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建設機械のステップ構造は、下部走行体上に上部旋回体が旋回自在に搭載され、この上部旋回体の旋回フレームを構成する底板の一部が該上部旋回体の昇降用のステップを構成していることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明のように、前記上部旋回体の旋回フレームの底面全体が底板で構成されており、その底板の一部が前記旋回フレームの周縁部に取り付けられたサイドデッキより外側に張り出すことにより、前記ステップを形成していることとしてもよい。
【0008】
請求項3記載の発明のように、前記上部旋回体の旋回フレームの底面のうち補強フレームで区画されたセンタセクションが底板で構成されており、その補強フレームに取り付けられ前記旋回フレームの周縁部を構成するサイドデッキより外側に前記底板の一部が張り出すことにより、前記ステップを形成していることとしてもよい。
【0009】
請求項4記載の発明のように、前記底板の一部の張り出し方向は、上部旋回体の前側であることとしてもよい。
【0010】
請求項5記載の発明のように、前記上部旋回体に搭載された機器の一部を覆うカバーが前記底板上に設けられ、そのカバーのうち底板と接する部位の一部が凹んでおり、その凹み部分で露出した底板部分が前記ステップを構成していることとしてもよい。
【0011】
請求項6記載の発明のように、前記カバーの凹み部分の上部が作業灯の設置スペースになっていることとしてもよい。
【0012】
請求項7記載の発明のように、前記カバーの凹み部分で露出した底板部分からさらに外側に当該底板が延長されていることとしてもよい。
【0013】
請求項8記載の発明のように、前記ステップの寸法は、上部旋回体の後端の旋回半径内に収まるように設定されていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建設機械のステップ構造によれば、下部走行体上に上部旋回体が旋回自在に搭載され、この上部旋回体の旋回フレームを構成する底板の一部が該上部旋回体の昇降用のステップを構成しているので、ステップを取り付ける工程を省略できる。
【0015】
また、ステップは底板の一部からなるため、建設機械が作業中に障害物と衝突したとしても、その衝突力に耐えうる強度を有し、当該ステップは変形し難いものとなる。その結果、ステップの取り付け工程を省略できて、しかも障害物との衝突時にも耐え得る強度を確保できる建設機械のステップ構造が得られる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、前記上部旋回体の旋回フレームの底面全体が底板で構成されており、その底板の一部が前記旋回フレームの周縁部に取り付けられたサイドデッキより外側に張り出すことにより、前記ステップを形成しているので、そのステップは旋回フレームと一体となり、最も高い強度が確保できるようになる。
【0017】
ところで、旋回フレームの底面全体を底板で構成したのでは、建設機械の重量が大きくなることから、強度の最も必要なセンタセクションにのみ底板を設けることがある。そこで請求項3記載の発明によれば、前記上部旋回体の旋回フレームの底面のうち補強フレームで区画されたセンタセクションが底板で構成されており、その補強フレームに取り付けられ前記旋回フレームの周縁部を構成するサイドデッキより外側に前記底板の一部が張り出すことにより、前記ステップを形成しているので、建設機械の重量を軽量化しつつも高いステップの強度が確保できる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、前記底板の一部の張り出し方向は、上部旋回体の前側であるので、上部旋回体の後端の旋回半径内に収まりやすくなる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、前記上部旋回体に搭載された機器の一部を覆うカバーが前記底板上に設けられ、そのカバーのうち底板と接する部位の一部が凹んでおり、その凹み部分で露出した底板部分が前記ステップを構成しているので、ステップが旋回フレームから突出しなくなる。したがって、このステップが直接障害物に衝突する可能性が少なくなる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、前記カバーの凹み部分の上部が作業灯の設置スペースになっているので、上部旋回体の内部スペースの有効利用が図られる。
【0021】
請求項7記載の発明によれば、前記カバーの凹み部分で露出した底板部分からさらに外側に当該底板が延長されているので、上部旋回体の内部スペースを有効利用しつつ、ステップの強度を確保できる。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、前記ステップの寸法が、上部旋回体の後端の旋回半径内に収まるように設定されるので、ステップが直接障害物に衝突する可能性がさらに少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1はクローラ式油圧ショベルの全体構成を示す側面図であって、建設機械の一例としての油圧ショベルの車体(本体)は、下部走行体1と、上部旋回体2とより構成されており、この上部旋回体2の前部には掘削用アタッチメント3が起伏自在に装着されている。
【0024】
下部走行体1は、左右のクローラフレーム4及びクローラ5(いずれも片側のみ図示)からなり、両側クローラ5が、左右の走行モータ7により個別に回転駆動されて走行する。
【0025】
上部旋回体2は、旋回フレーム8、キャビン9、機械室10等からなり、機械室10には、エンジン、油圧ポンプ、コントロール弁(いずれも図示せず。)等機器の一部を配置しており、この機械室10は防音等のための箱状のカバー11で覆われている。
【0026】
掘削用アタッチメント3は、ブーム17、上記油圧ポンプからの圧油により伸縮動作してブームを起伏させるブームシリンダ18と、アーム19と、このアーム19を回動させるアームシリンダ20と、バケット21と、このバケットを回動させるバケットシリンダ22とを具備している。
【0027】
図2〜図4は本発明の一実施形態に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法を示す図であって、図2は一枚板構造の底板周りを示す斜視図、図3はサイドデッキを付設した状態を示す斜視図、図4はカバーを装着した状態を示す斜視図である。
【0028】
図2において、30は旋回フレーム8の底面を構成するメインフレーム(底板)であって、このメインフレーム30は長方形状の鋼板の後端部と前端部両側とをそれぞれ円弧状に切り欠いた形状となっており、適所にリブで補強している。
【0029】
縦板(補強フレーム)31,32は、ブーム17の基端を起伏自在に支持するとともに、ブームシリンダ18のシリンダ側を支持するように、メインフレーム30上に適当な間隔でそれぞれ立設され、メインフレーム30の強度メンバとなる厚板構造とされているが、その強度確保等のために所定高さの山形状に設定されている。
【0030】
そして、同図中の左手前側には、メインフレーム30の一部が張り出しており、本実施形態では、この張り出し部分が最下段のステップ(ステップ)33を形成するものである。したがって、このステップ33の寸法は、作業者が足で踏んで昇降できる程度の大きさとなっている。
【0031】
また、前記張り出し部分の左前角部をカットすることで、上部旋回体2の後端の旋回半径内にステップ33が確実に収まるようにしている。これにより、上部旋回体2の旋回時に、ステップ33が障害物と干渉する可能性が少なくなる。
【0032】
ついで、図3に示すように、サイドデッキ35は、旋回フレーム8の外皮をなす薄板構造であるが、その強度確保のため適所を外側に膨らませた断面C型の部材からなっている。このサイドデッキ35をメインフレーム30の左側周縁に取り付けた状態で、前記ステップ33がこのサイドデッキ35の下側から前方に突出している。
【0033】
ついで、図4に示すように、前記サイドデッキ35上に機械室10のカバー11を載せてボルト等で固定する。このカバー11は、略直方体であるが、その前側は先下がりに傾斜しており、その傾斜面に適宜凹部36,37,38が形成されている。
【0034】
そして、この凹部36,37,38にさらに上段のステップ39,40,41がそれぞれ取り付けられている。これらのステップ39,40,41はいずれも前記ステップ33の後部に配置されているので、障害物との衝突に耐える強度を持たす必要はなく、作業者の体重を支持するだけの強度があれば足りる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のステップ構造によれば、下部走行体1上に上部旋回体2が旋回自在に搭載され、この上部旋回体2の旋回フレーム8を構成するメインフレーム30の一部が上部旋回体2の昇降用のステップ33を構成しているので、ステップ33を取り付ける工程を省略できる。
【0036】
また、ステップ33はメインフレーム30の一部で構成されているので、たとえ油圧ショベルが作業中に誤って障害物と衝突したとしても、その衝突力に耐えてステップ33が変形し難いものとなっている。その結果、ステップの取り付け工程を省略できて、しかも障害物との衝突時にも耐え得る強度を確保できる建設機械のステップ構造が得られる。
【0037】
以下、変形例について説明する。
【0038】
図5は変形例1に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法におけるサイドデッキを付設した状態を示す斜視図である。
【0039】
上記実施形態では、メインフレーム30を旋回フレーム8の底面全面に亘る一枚の底板から構成しているが、油圧ショベルの軽量化の要請により、前記縦板31,32(図中では左側の縦板31のみを示している。)で区画されるいわゆるセンタセクション34にだけ、メインフレーム30を設けることがある。
【0040】
その場合には、図5に示すように、センタセクション34のメインフレーム30を同図中の左手前側に広げて、ステップ33を形成する。そして、メインフレーム30からは左側にはみ出すようにしてサイドデッキ35を縦板31に取り付けた状態で、前記ステップ33はこのサイドデッキ35よりも前方に突出している。
【0041】
この場合には、油圧ショベルを軽量化しつつも高いステップ33の強度が確保できる。
【0042】
図6は変形例2に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法におけるカバーを装着した状態を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は左側の断面図である。
【0043】
上記実施形態では、カバー11の上面に適宜凹部36,37,38を設けてその凹部36,37,38に上段のステップ39,40,41を取り付けているが、最下段のステップ33についても同様の構成としてもよい。
【0044】
その場合には、図6(a)(b)に示すように、前記上部旋回体2の機械室10を覆うカバー11の前記メインフレーム30と接する部位の一部が凹んでおり、その凹部(凹み部分)45で露出させたメインフレーム30部分が前記ステップ33を構成している。
【0045】
したがって、この場合には、メインフレーム30を突出させてステップ33とすることがないため、そのステップ33が直接障害物に衝突する可能性が殆どなくなる。
【0046】
また、図6(a)(b)に示すように、前記カバー11の凹部45の上部を作業灯46の設置スペースとして使用できる。この場合には、作業灯46の下部は前記最下段のステップ33を構成するが、作業灯46の上方にはさらに上段のステップ47,48をそれぞれ構成することができる。すると、カバー11の内部には、コントロール弁49等が配置できるスペースが確保できるから、上部旋回体2の内部スペースの有効利用を図ることができる。
【0047】
図7は変形例3に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法におけるカバーを装着した状態を示す斜視図である。
【0048】
上記実施形態では、メインフレーム30の一部を大きく突出させてステップ33を形成している一方、上記変形例2では、カバー11を凹ませることでメインフレーム30を全く突出させることなくステップ33を形成しているが、両者を組み合わせることもできる。
【0049】
その場合には、図7に示すように、前記カバー11の凹部45で露出したメインフレーム30部分がさらに外側に延長されているので、上部旋回体2の内部スペースの有効利用を図りつつ、ステップ33の強度を確保できる。
【0050】
なお、上記実施形態及び変形例1,2,3では、いずれも機械室10を旋回フレーム2の後方に向かって左側に設けている場合であるので、それに対応してステップ33も左側に形成しているが、機械室10を旋回フレーム8の後方に向かって右側に設けている場合であれば、それに対応してステップ33も右側に形成する必要がある。
【0051】
また、上記実施形態では、上段のステップ数を3段とし、上記変形例2,3では、ともに2段としているが、このステップ数についてはカバー11の高さ等に応じて適宜を設定する必要がある。
【0052】
また、上記実施形態及び変形例1,2,3では、いずれも建設機械として油圧ショベルを例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ハイブリッドショベルやクレーン等の建設機械に適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】クローラ式油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法を示す図であって、一枚板構造の底板周りを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法を示す図であって、サイドデッキを付設した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法を示す図であって、カバーを装着した状態を示す斜視図である。
【図5】変形例1に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法におけるサイドデッキを付設した状態を示す斜視図である。
【図6】変形例2に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法におけるカバーを装着した状態を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は左側の断面図である。
【図7】変形例3に係る油圧ショベルのステップ構造の組み立て方法におけるカバーを装着した状態を示す斜視図である。
【図8】従来の一例における油圧ショベルのステップ構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1 下部走行体
2 上部旋回体
8 旋回フレーム
10 機械室
11 カバー
30 メインフレーム(底板)
31,32 縦板(補強フレーム)
33 最下段のステップ(ステップ)
34 センタセクション
35 サイドデッキ
36,37,38 凹部
39,40,41 上段のステップ
45 凹部
46 作業灯
47,48 上段のステップ
49 コントロール弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に上部旋回体が旋回自在に搭載され、この上部旋回体の旋回フレームを構成する底板の一部が該上部旋回体の昇降用のステップを構成していることを特徴とする建設機械のステップ構造。
【請求項2】
前記上部旋回体の旋回フレームの底面全体が底板で構成されており、その底板の一部が前記旋回フレームの周縁部に取り付けられたサイドデッキより外側に張り出すことにより、前記ステップを形成していることを特徴とする請求項1記載の建設機械のステップ構造。
【請求項3】
前記上部旋回体の旋回フレームの底面のうち補強フレームで区画されたセンタセクションが底板で構成されており、その補強フレームに取り付けられ前記旋回フレームの周縁部を構成するサイドデッキより外側に前記底板の一部が張り出すことにより、前記ステップを形成していることを特徴とする請求項1記載の建設機械のステップ構造。
【請求項4】
前記底板の一部の張り出し方向は、上部旋回体の前側であることを特徴とする請求項2又は3記載の建設機械のステップ構造。
【請求項5】
前記上部旋回体に搭載された機器の一部を覆うカバーが前記底板上に設けられ、そのカバーのうち底板と接する部位の一部が凹んでおり、その凹み部分で露出した底板部分が前記ステップを構成していることを特徴とする請求項1記載の建設機械のステップ構造。
【請求項6】
前記カバーの凹み部分の上部が作業灯の設置スペースになっていることを特徴とする請求項5記載の建設機械のステップ構造。
【請求項7】
前記カバーの凹み部分で露出した底板部分からさらに外側に当該底板が延長されていることを特徴とする請求項5記載の建設機械のステップ構造。
【請求項8】
前記ステップの寸法は、上部旋回体の後端の旋回半径内に収まるように設定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の建設機械のステップ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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