説明

建設機械のフレーム構造体

【課題】 破損したサイドフレームを補修するときの作業性を高める。
【解決手段】 左サイドフレーム24を構成する外壁板25と内壁板26とのうち内壁板26に、外壁板25を補修するための補修孔30を設ける構成とする。これにより、左サイドフレーム24の外壁板25が、周囲の障害物等に衝突することによって衝突痕等の凹み31を生じたとしても、例えば内壁板26に設けた補修孔30を通じて左サイドフレーム24内に補修用の工具Wを挿入することにより、この工具Wを用いて外壁板25の内側(内壁板26側)から外壁板25の凹み31を叩き出して補修することができる。このため、破損した左サイドフレーム24を補修するときの作業性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等に好適に用いられる建設機械のフレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成され、この作業装置を俯仰動させることにより土砂の掘削作業等を行うものである。
【0003】
また、上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームと、該旋回フレームの左前部に配設され運転室を画成するキャブと、旋回フレームの後端部に配設され作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、該カウンタウエイトの前側に配設されエンジン、油圧ポンプ等の搭載機器を収容する建屋カバーとにより大略構成されている。
【0004】
ここで、旋回フレームは、底板及び該底板上に立設された左,右の縦板を有するセンタフレームと、該センタフレームを挟んで左,右に配設された左,右のサイドフレームとを備え、これら左,右のサイドフレームは、旋回フレームの外周面を形成している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−14252号公報
【特許文献2】実開平6−79851号公報
【0006】
ところで、上部旋回体が旋回動作を行うときに、油圧ショベルの周囲に存在する障害物等がサイドフレームに衝突することにより、サイドフレームの外周面に部分的な衝突痕等の凹み(破損)を生じてしまうことがある。この場合には、油圧ショベルの外観美を保つため、衝突痕等の傷跡を補修する必要がある。
【0007】
これに対し、特許文献1による従来技術では、サイドフレームを、センタフレームに溶接等によって固着される前側のフレーム部材と、該フレーム部材にボルトを用いて着脱可能に取付けられる後側の分割フレーム部材とにより構成している。これにより、分割フレーム部材に衝突痕等の傷跡が生じたとしても、当該分割フレーム部材を新しいものと交換して前側のフレーム部材に取付けることにより、分割フレーム部材の補修を容易に行うことができる。
【0008】
一方、特許文献2による従来技術では、サイドフレームの前側のコーナ部(角隅部)に、ボルトを用いてコーナカバーを着脱可能に取付けることにより、コーナカバーが障害物に衝突して衝突痕等の凹みを生じたとしても、新しいコーナカバーをサイドフレームのコーナ部に取付けることにより、破損したサイドフレームのコーナ部を補修することができる構成となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1による従来技術は、破損した分割フレーム部材に代えて、新たな分割フレーム部材をボルトを用いてフレーム部材に容易に取付けることができるものの、サイドフレームの前側を構成するフレーム部材は、センタフレームに溶接等によって固着されているため、その補修作業が困難である。
【0010】
一方、特許文献2による従来技術は、破損したコーナカバーに代えて、新たなコーナカバーをボルトを用いてサイドフレームのコーナ部に容易に取付けることができるものの、サイドフレームはセンタフレームに溶接等によって固着されているため、サイドフレームのうちコーナ部以外の部位が破損した場合には、この破損箇所の補修作業が困難である。
【0011】
このため、センタフレームに溶接等によって固着されたサイドフレームの外周面が、衝突痕等の凹みを生じた場合には、通常、例えばサイドフレームの外周面のうち破損した部位を切取った後、この切取った部位に補修用の板材を溶接等の手段を用いて固着することにより、サイドフレームの補修作業を行っている。この結果、破損したサイドフレームを補修するときの作業工数が多くなり、補修作業の作業性が低下してしまうという問題がある。
【0012】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、破損したサイドフレームを補修するときの作業性を高めることができるようにした建設機械のフレーム構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため本発明は、底板及び該底板上に立設された左,右の縦板を有するセンタフレームと、該センタフレームを挟んで左,右に配設された左,右のサイドフレームとを備えてなる建設機械のフレーム構造体に適用される。
【0014】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記サイドフレームは、前記フレーム構造体の外周面を形成する外壁板と、該外壁板との間に閉断面空間を形成する内壁板とからなる中空なフレーム体として構成し、前記サイドフレームの前記内壁板には、前記外壁板を前記内壁板側から補修するための補修孔を設けたことにある。
【0015】
請求項2の発明は、前記サイドフレームは、略C字状ないし横U字状の断面形状をなす前記外壁板と、上,下方向に立上がる平板状の前記内壁板とを接合することにより略D字状の断面形状をなす中空なフレーム体として構成し、前記外壁板の少なくとも上端側には、前記内壁板の上端部から前記センタフレームに向けて内向きに突出する庇部を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、中空なフレーム体として構成されたサイドフレームの外壁板が、周囲の障害物等に衝突することによって衝突痕等の凹み(破損)を生じたとしても、例えば内壁板に設けた補修孔を通じてサイドフレームの閉断面空間内に補修用の工具を挿入することにより、この工具を用いて外壁板の内側(内壁板側)から外壁板の凹みを叩き出して補修することができる。
【0017】
従って、例えば外壁板に衝突痕等の凹みが生じた場合に、当該凹み部分を切取った後、この切取った部位に補修用の板材を溶接等の手段によって固着する補修作業に比較して、作業工数を削減することができる。この結果、破損したサイドフレームを補修するときの作業性を大幅に向上させることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、外壁板の上端側に、内壁板の上端部からセンタフレームに向けて内向きに突出する庇部を設けることにより、例えば外壁板の上端側に雨水、洗浄水等が落下したとしても、この雨水等が外壁板の上端側に接合された内壁板に沿って下方に流れるのを、内壁板から突出した庇部によって抑えることができる。これにより、雨水、洗浄水等が、内壁板に設けた補修孔を通じてサイドフレーム内に侵入するのを抑えることができ、サイドフレームの寿命を延ばすことができる。
【0019】
また、外壁板の上端側と内壁板の上端部とを溶接によって接合する場合に、庇部を設けた分だけ溶接脚長を増やすことができる。これにより、外壁板と内壁板との接合強度を高めることができ、サイドフレーム全体の強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る建設機械のフレーム構造体の実施の形態を、油圧ショベルの旋回フレームに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示し、この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回輪3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前部側に俯仰動可能に設けられたオフセットブーム式の作業装置5とにより大略構成されている。
【0022】
そして、油圧ショベル1は、例えば超小旋回型の油圧ショベルと呼ばれるもので、下部走行体2上で上部旋回体4が旋回動作を行ったときに、作業装置5と上部旋回体4とが下部走行体2の車幅内に収まるように構成されている。
【0023】
ここで、上部旋回体4は、ベースとなる後述の旋回フレーム11と、該旋回フレーム11の前部左側に配設され、運転室を画成するキャブ6と、旋回フレーム11の後端側に配設され、作業装置5との重量バランスをとるカウンタウエイト7と、該カウンタウエイト7の前側に配設され、エンジン、油圧ポンプ等の搭載機器類(図示せず)を収容する建屋カバー8とにより大略構成されている。
【0024】
また、作業装置5は、後述する旋回フレーム11の前部側に回動可能にピン結合されたロアブーム5Aと、該ロアブーム5Aの先端側に左,右方向に回動可能にピン結合されたアッパブーム5Bと、該アッパブーム5Bの先端側に左,右方向に回動可能にピン結合されたアーム支持体5Cと、ロアブーム5Aとアーム支持体5Cとの間を連結するリンクロッド5Dと、アーム支持体5Cに俯仰動可能にピン結合されたアーム5Eと、該アーム5Eの先端側に回動可能にピン結合されたバケット5Fと、ブームシリンダ5G、オフセットシリンダ5H、アームシリンダ5I、バケットシリンダ5Jとにより大略構成されている。
【0025】
11はフレーム構造体としての旋回フレームで、該旋回フレーム11は、上部旋回体4のベースとなるものである。ここで、旋回フレーム11は、図2に示すように、左,右方向の中央部に位置して前,後方向に延びる後述のセンタフレーム12と、該センタフレーム12の左,右両側に配設された左,右のサイドフレーム24,32等とを備えて構成され、強固な支持構造体をなしている。
【0026】
12は旋回フレーム11の左,右方向の中央部分を構成するセンタフレームで、このセンタフレーム12は、底板13と、該底板13の上面左側に立設された後述の左縦板14と、底板13の上面右側に立設され左縦板14と左,右方向で対面した後述の右縦板15とにより大略構成されている。
【0027】
ここで、底板13は、センタフレーム12のベースとなるもので、厚肉な鋼板等を用いて前,後方向に延びる略長方形状の板体として形成されている。そして、底板13の上面側には、左縦板14と右縦板15とが固着して設けられ、底板13の下面側には、旋回輪3が取付けられる構成となっている。
【0028】
14は底板13の上面左側に立設された左縦板で、該左縦板14は、後述の右縦板15と左,右方向で対面しつつ底板13上を前,後方向に延びている。そして、左縦板14の前端側は、底板13から山形状に隆起した作業装置取付部14Aとなり、左縦板14の後端側はカウンタウエイト取付部14Bとなっている。
【0029】
15は底板13の上面右側に立設された右縦板で、該右縦板15は、左縦板14と左,右方向で対面しつつ前,後方向に直線状に延びている。そして、右縦板15の前端側は、底板13から山形状に隆起した作業装置取付部15Aとなり、右縦板15の後端側はカウンタウエイト取付部15Bとなっている。
【0030】
そして、左,右の縦板14,15の作業装置取付部14A,15Aには、作業装置5を構成するロアブーム5Aの基端側が回動可能にピン結合され、左,右の縦板14,15のカウンタウエイト取付部14B,15Bには、カウンタウエイト7がボルト等を用いて固定される構成となっている。
【0031】
16は左縦板14の前端側と右縦板15の前端側との間に傾斜した状態で接合して設けられた前縦板で、該前縦板16の上面側にはシリンダブラケット16Aが突設され、該シリンダブラケット16Aには、作業装置5を構成するブームシリンダ5Gのボトム側が、回動可能にピン結合される構成となっている。また、左,右の縦板14,15間に位置する底板13の後部側には、複数(例えば4個)のエンジン取付部材17,17,…が配設され、該各エンジン取付部材17によってエンジン(図示せず)を支持する構成となっている。
【0032】
18は底板13の左前側に配置された左下板で、該左下板18は、上方からみて円弧状に湾曲しつつ前,後方向に延びた狭幅な平板からなり、後述の左張出しビーム20,21を介して底板13の左側方に配設されている。そして、左下板18の上面側には、後述する左サイドフレーム24が溶接等によって固着される構成となっている。
【0033】
19は底板13の右前側に配置された右下板で、該右下板19は、上方からみてほぼ台形状をなす平板からなり、底板13の右前側の角隅部に溶接等によって固着されている。そして、右下板19の上面側には、後述する右サイドフレーム32が溶接等によって固着される構成となっている。
【0034】
20,21はセンタフレーム12から左側方に張出して設けられた前,後の左張出しビームで、前側の左張出しビーム20は、基端側が底板13に溶接等によって固着され、先端側が左下板18に溶接等によって固着されている。一方、後側の左張出しビーム21は、基端側が底板13及び左縦板14に溶接等によって固着され、先端側が後述の左サイドフレーム24に固着される構成となっている。また、後側の左張出しビーム21の左,右方向の両端側は、マウント部材(図示せず)等を介してキャブ6の後側を支持するキャブ支持部21A,21Aとなっている。
【0035】
22,23はセンタフレーム12から右側方に張出して設けられた前,後の右張出しビームで、前側の右張出しビーム22は、基端側が底板13及び右縦板15に溶接等によって固着され、先端側が後述の右サイドフレーム32に固着される構成となっている。一方、後側の右張出しビーム23は、基端側が底板13及び右縦板15に溶接等によって固着され、先端側が右サイドフレーム32に固着される構成となっている。
【0036】
次に、本実施の形態の要部である左サイドフレーム24と右サイドフレーム32について説明する。
【0037】
まず、24は左サイドフレームで、この左サイドフレーム24は、センタフレーム12を挟んで左側に配設されている。ここで、左サイドフレーム24は、図2ないし図4に示すように、上方からみて円弧状に湾曲しつつ前,後方向に延びた左曲げ枠部24Aと、該左曲げ枠部24Aの前端部に溶接等によって接合され、センタフレーム12に向けて左,右方向に延びた左前枠部24Bとにより大略構成されている。
【0038】
そして、左曲げ枠部24Aは、左下板18に固着されると共に各左張出しビーム20,21の先端側に固着されている。一方、左曲げ枠部24Aに接合された左前枠部24Bの先端部は、センタフレーム12の底板13等に固着されている。また、左曲げ枠部24Aと左前枠部24Bとの間には、左キャブ支持ブラケット24Cが配設され、左前枠部24Bとセンタフレーム12の左縦板14との間には、右キャブ支持ブラケット24Dが配設され、これら左,右のキャブ支持ブラケット24C,24Dによって、キャブ6の前側を支持する構成となっている。
【0039】
ここで、左サイドフレーム24を構成する左曲げ枠部24Aは、図3ないし図5に示すように、略C字状、横U字状、あるいは略コ字状の断面形状を有し旋回フレーム11の外周面を形成する外壁板25と、上,下方向に立上がる平板状をなし外壁板25に接合された内壁板26とにより、全体として略D字状の断面形状を有し、内部が閉断面空間27となった中空なフレーム体として形成されている。また、左曲げ枠部24Aの長さ方向の両端部は閉塞されている。
【0040】
この場合、左曲げ枠部24Aの外壁板25は、薄肉な鋼板材等を略C字状、横U字状、あるいは略コ字状に折曲げることにより形成され、図5に示すように、上,下方向に立上がる立上り面25Aと、この立上り面25Aの上端側から内壁板26に向けて水平方向に折曲げられた上面25Bと、立上り面25Aの下端側から内壁板26に向けて水平方向に折曲げられた下面25Cとからなっている。
【0041】
一方、左曲げ枠部24Aの内壁板26は、外壁板25とは別部材からなる厚肉な鋼板材等を用いて上,下方向に鉛直に立上がる平板状に形成されている。そして、図5に示すように、内壁板26の上端部が外壁板25の上面25Bの先端側に溶接され、内壁板26の下端部が外壁板25の下面25Cの先端側に溶接されることにより、全体として略D字状の断面形状を有し、外壁板25と内壁板26との間に閉断面空間27が形成された左曲げ枠部24Aが構成されている。
【0042】
また、外壁板25の上面25Bの先端部は、内壁板26の上端部からセンタフレーム12側に突出する上側庇部25Dとなり、外壁板25の下面25Cの先端部は、内壁板26の下端部からセンタフレーム12側に突出する下側庇部25Eとなっている。このため、外壁板25の上面25Bと内壁板26の上端部とを溶接する場合に、上面25Bの先端部に設けた上側庇部25Dの分だけ溶接脚長を増やすことができ、外壁板25の下面25Cと内壁板26の下端部とを溶接する場合に、下面25Cの先端部に設けた下側庇部25Eの分だけ溶接脚長を増やすことができ、外壁板25と内壁板26との接合強度を高めることができる構成となっている。
【0043】
次に、左曲げ枠部24Aと共に左サイドフレーム24を構成する左前枠部24Bも、左曲げ枠部24Aと同様に、立上り面28A、上面28B、下面28C、上側庇部28D、下側庇部28Eからなる外壁板28と、この外壁板28に接合された内壁板29とにより、内部が閉断面空間となった中空なフレーム体として形成されている。そして、左前枠部24Bの長さ方向の両端部は閉塞されている。
【0044】
30は左曲げ枠部24Aを構成する内壁板26に形成された1個の補修孔で、該補修孔30は、例えば図5中に二点鎖線で示すように、左曲げ枠部24Aの外壁板25が衝突痕、陥没痕等の凹み31を生じたときに、この凹み31を補修するための工具W等を挿入し、当該工具Wによって外壁板25の内側(内壁板26側)から補修を行うことができるようにするものである。
【0045】
このため、例えば図5に示すように、補修孔30の直径Aは、内壁板26の高さ寸法Bに対して約1/2程度の値に設定され、補修作業を行う作業者が、補修孔30を通じて外壁板25と内壁板26との間の閉断面空間27内に容易に手を挿入することができるように構成されている。
【0046】
また、補修孔30は、左サイドフレーム24のうち左下板18に固着された部位、即ち、左サイドフレーム24の左曲げ枠部24Aと左前枠部24Bのうち、左下板18に固着された左曲げ枠部24Aの内壁板26にのみ形成されている。これにより、内壁板26に補修孔30を形成した場合でも、左サイドフレーム24の強度を確保することができる構成となっている。
【0047】
一方、左曲げ枠部24Aを構成する外壁板25の上面25Bの先端部は、内壁板26の上端部からセンタフレーム12側に突出した上側庇部25Dとなり、補修孔30は、この上側庇部25Dによって上方から覆われる位置に配置されている。これにより、例えば外壁板25の上面25Bに雨水、洗浄水等が落下したとしても、この雨水等が外壁板25の上面25Bから内壁面26に沿って下方に流れるのを、内壁板26の上端部から突出した上側庇部25Dによって抑え、内壁板26に設けた補修孔30を通じて雨水等が左曲げ枠部24A内に侵入するのを防止できる構成となっている。
【0048】
次に、32は右サイドフレームで、この右サイドフレーム32は、センタフレーム12を挟んで右側に配設されている。ここで、右サイドフレーム32は、図2、図6及び図7に示すように、上方からみて円弧状に湾曲しつつ前,後方向に延びた右曲げ枠部32Aと、該左曲げ枠部32Aの前端部に溶接等によって接合され、センタフレーム12に向けて左,右方向に延びた右前枠部32Bとにより大略構成されている。
【0049】
そして、右曲げ枠部32Aは、右下板19に固着されると共に各右張出しビーム22,23の先端側に固着されている。一方、右曲げ枠部32Aに接合された右前枠部32Bの先端部は、右下板19等に固着されている。
【0050】
ここで、右サイドフレーム32を構成する右曲げ枠部32Aは、図6ないし図8に示すように、略C字状の断面形状を有し旋回フレーム11の外周面を形成する外壁板33と、上,下方向に立上がる平板状をなし外壁板33に接合された内壁板34とにより、全体として略D字状の断面形状を有し、内部が閉断面空間35となった中空なフレーム体として形成され、長さ方向の両端部は閉塞されている。
【0051】
この場合、右曲げ枠部32Aの外壁板33は、薄肉な鋼板材等を略C字状に折曲げることにより形成され、図8に示すように、上,下方向に立上がる立上り面33Aと、この立上り面33Aの上端側から内壁板34に向けて水平方向に折曲げられた上面33Bと、立上り面33Aの下端側から内壁板34に向けて水平方向に折曲げられた下面33Cとからなっている。
【0052】
一方、右曲げ枠部32Aの内壁板34は、外壁板33とは別部材からなる厚肉な鋼板材等を用いて上,下方向に鉛直に立上がる平板状に形成されている。そして、内壁板34の上端部が外壁板33の上面33Bの先端側に溶接され、内壁板34の下端部が外壁板33の下面33Cの先端側に溶接されることにより、全体として略D字状の断面形状を有し、外壁板33と内壁板34との間に閉断面空間35が形成された右曲げ枠部32Aが構成されている。
【0053】
また、外壁板33の上面33Bの先端部は、内壁板34の上端部からセンタフレーム12側に突出する上側庇部33Dとなり、外壁板33の下面33Cの先端部は、内壁板34の下端部からセンタフレーム12側に突出する下側庇部33Eとなっている。このため、外壁板33の上面33Bと内壁板34との間の溶接脚長を増やすことができ、外壁板33の下面33Cと内壁板34との間の溶接脚長を増やすことができ、外壁板33と内壁板34との接合強度を高めることができる構成となっている。
【0054】
次に、右曲げ枠部32Aと共に右サイドフレーム32を構成する右前枠部32Bも、右曲げ枠部32Aと同様に、立上り面36A、上面36B、下面36C、上側庇部36D、下側庇部36Eからなる外壁板36と、この外壁板36に接合された内壁板37とにより、内部が閉断面空間となった中空なフレーム体として形成され、長さ方向の両端部は閉塞されている。
【0055】
38,38は右曲げ枠部32Aを構成する内壁板34に形成された2個の補修孔で、該各補修孔38は、右曲げ枠部32Aの外壁板33が衝突痕、陥没痕等の凹み(破損)を生じたときに、この破損箇所を補修するための工具(図示せず)を挿入し、当該工具によって外壁板33の内側(内壁板34側)から補修を行うことができるようにするものである。
【0056】
39は右前枠部32Bを構成する内壁板37に形成された1個の補修孔で、該補修孔39は、上述の各補修孔38と同様に、右前枠部32Bの外壁板36が衝突痕、陥没痕等の凹みを生じたときに、この破損箇所を外壁板36の内側(内壁板37側)から補修を行うことができるようにするものである。
【0057】
この場合、各補修孔38の直径は、内壁板34の高さ寸法に対して約1/2程度の値に設定され、補修孔39の直径も、内壁板37の高さ寸法に対して約1/2程度の値に設定されている。また、各補修孔38は、右サイドフレーム32のうち右下板19に固着された右曲げ枠部32Aの内壁板34に形成され、補修孔39は、右下板19に固着された右前枠部32Bの内壁板37に形成され、これら補修孔38,39を形成した場合でも、右サイドフレーム32の強度を確保することができる構成となっている。
【0058】
一方、右曲げ枠部32Aを構成する外壁板33の上面33Bの先端部は、内壁板34の上端部から突出した上側庇部33Dとなり、各補修孔38は、この上側庇部33Dによって上方から覆われる位置に配置されている。また、右前枠部32Bを構成する外壁板36の上面36Bの先端部は、内壁板37の上端部から突出した上側庇部36Dとなり、補修孔39は、この上側庇部36Dによって上方から覆われる位置に配置されている。これにより、雨水等が各補修孔38を通じて右曲げ枠部32A内に侵入するのを上側庇部33Dによって防止でき、雨水等が補修孔39を通じて右前枠部32B内に侵入するのを上側庇部36Dによって防止できる構成となっている。
【0059】
本実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き旋回フレーム11を有するもので、この油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場まで自走した後、上部旋回体4を旋回させつつ作業装置5を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0060】
ここで、油圧ショベル1の掘削作業時に上部旋回体4が旋回動作を行うときに、旋回フレーム11を構成する左,右のサイドフレーム24,32の外周面が、油圧ショベル1の周囲に存在する障害物に衝突することにより、衝突痕,陥没痕等の凹み(破損)を生じることがある。
【0061】
これに対し、本実施の形態による旋回フレーム11は、破損した左,右のサイドフレーム24,32を補修するときの作業性を高めることができるように構成されており、以下、この補修作業について、左サイドフレーム24の左曲げ枠部24Aを例に挙げて説明する。
【0062】
まず、左サイドフレーム24(左曲げ枠部24A)の外周面を構成する外壁板25が、障害物等に衝突することにより、図5中に二点鎖線で示すように、外壁板25の一部は、内壁板26との間に形成された閉断面空間27内に衝突痕、陥没痕等の凹み31を生じる。
【0063】
この場合には、作業者は、例えば旋回フレーム11の下面側にもぐり込み、旋回フレーム11を下側から覆うアンダカバー(図示せず)を取外す。そして、作業者は、左曲げ枠部24Aの内壁板26に形成した補修孔30を通じて、閉断面空間27内に補修用の工具Wを挿入し、閉断面空間27内に凹んだ外壁板25の凹み31を工具Wによって外壁板25の内側(内壁板26側)から叩き出す。
【0064】
このようにして、閉断面空間27内に凹んだ外壁板25の凹み31を、補修孔30を通じて閉断面空間27内に挿入した工具Wによって、外壁板25の内側(内壁板26側)から叩き出すことにより、破損した外壁板25を図5中に実線で示すように補修することができ、左サイドフレーム24の外観美を保つことができる。
【0065】
かくして、本実施の形態によれば、左サイドフレーム24を構成する外壁板25と内壁板26とのうち内壁板26に、外壁板25に生じた凹み31を補修する工具Wを挿入するための補修孔30を設け、右サイドフレーム32を構成する外壁板33,36と内壁板34,37とのうち内壁板34,37に、外壁板33,36の凹みを補修する工具を挿入するための補修孔38,39を設ける構成としている。
【0066】
これにより、中空なフレーム体として構成された左サイドフレーム24の外壁板25が、周囲の障害物等に衝突することによって衝突痕等の凹み31を生じたとしても、例えば内壁板26に設けた補修孔30を通じて左サイドフレーム24内に補修用の工具Wを挿入することにより、この工具Wを用いて外壁板25の内側(内壁板26側)から外壁板25の凹み31を叩き出して補修することができる。
【0067】
また、これと同様に、右サイドフレーム32の外壁板33,36が衝突痕等の凹みを生じたとしても、内壁板34,37に形成した補修孔38,39を通じて右サイドフレーム32内に工具を挿入することにより、この工具を用いて外壁板33,36の内側から凹みを叩き出して補修することができる。
【0068】
従って、例えば従来技術のように、外壁板の凹み部分を切取った後、この切取った部位に補修用の板材を溶接等の手段によって固着する補修作業に比較して、作業工数を削減することができる。この結果、左,右のサイドフレーム24,32が破損した場合でも、これら左,右のサイドフレーム24,32を補修するときの作業性を大幅に向上させることができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、左サイドフレーム24の左曲げ枠部24Aを構成する外壁板25の上面25Bの先端部を、内壁板26の上端部からセンタフレーム12側に突出する上側庇部25Dとし、外壁板25の下面25Cの先端部を、内壁板26の下端部からセンタフレーム12側に突出する下側庇部25Eとしている。
【0070】
このため、例えば外壁板25の上面25Bに雨水、洗浄水等が落下したとしても、この雨水等が外壁板25の上面25Bから内壁面26に沿って下方に流れるのを、内壁板26の上端部から突出した上側庇部25Dによって抑え、内壁板26に設けた補修孔30を通じて雨水等が左サイドフレーム24(左曲げ枠部24A)内に侵入するのを防止できる。
【0071】
また、外壁板25の上面25Bと内壁板26の上端部とを溶接する場合に、上面25Bの先端部に設けた上側庇部25Dの分だけ溶接脚長を増やすことができ、外壁板25の下面25Cと内壁板26の下端部とを溶接する場合に、下面25Cの先端部に設けた下側庇部25Eの分だけ溶接脚長を増やすことができるので、外壁板25と内壁板26との接合強度を高めることができ、左サイドフレーム24全体の強度を高めることができる。
【0072】
これと同様に、右サイドフレーム32の右曲げ枠部32Aを構成する外壁板33の上面33Bの先端部を上側庇部33Dとし、外壁板33の下面33Cの先端部を下側庇部33Eとし、かつ、右サイドフレーム32の右前枠部32Bを構成する外壁板36の上面36Bの先端部を上側庇部36Dとし、外壁板36の下面36Cの先端部を下側庇部36Eとしている。
【0073】
このため、内壁板34に設けた各補修孔38を通じて雨水等が右サイドフレーム32(右曲げ枠部32A)内に侵入するのを上側庇部33Dによって防止することができ、内壁板37に設けた補修孔39を通じて雨水等が右サイドフレーム32(右前枠部32B)内に侵入するのを上側庇部36Dによって防止することができる。
【0074】
しかも、右曲げ枠部32Aの外壁板33と内壁板34とを溶接する場合に、外壁板33に設けた上側庇部33D、下側庇部33Eの分だけ溶接脚長を増やすことができるので、外壁板33と内壁板34との接合強度を高めることができる。また、右前枠部32Bの外壁板36と内壁板37とを溶接する場合に、外壁板36に設けた上側庇部36D、下側庇部36Eの分だけ溶接脚長を増やすことができるので、外壁板36と内壁板37との接合強度を高めることができる。これにより、右サイドフレーム32全体の強度を高めることができる。
【0075】
なお、上述した実施の形態では、左サイドフレーム24を左曲げ枠部24Aと左前枠部24Bとを溶接することにより構成し、左曲げ枠部24Aの内壁板26にのみ1個の補修孔30を形成した場合を例示している。
【0076】
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図4中に一点鎖線で示すように、左前枠部24Bの内壁板29にも補修孔41を設ける構成としてもよい。また、左曲げ枠部と左前枠部とが一体形成された左サイドフレームを用い、この左サイドフレームの内壁板に1個または複数個の補修孔を設ける構成としてもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態では、右サイドフレーム32を右曲げ枠部32Aと右前枠部32Bとを溶接することにより構成し、右曲げ枠部32Aの内壁板34に2個の補修孔38を形成し、右前枠部32Bの内壁板37に1個の補修孔39を形成した場合を例示している。
【0078】
しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば内壁板34,37のうち一方にのみ補修孔を設けてもよく、また、右曲げ枠部と右前枠部とが一体形成された右サイドフレームを用い、この右サイドフレームの内壁板に1個または複数個の補修孔を設ける構成としてもよい。
【0079】
また、上述した実施の形態では、オフセットブーム式の作業装置5を備えた油圧ショベル1の旋回フレーム11に適用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図9に示す変形例のように、スイング式の作業装置を備えた油圧ショベルの旋回フレームにも適用することができる。
【0080】
即ち、図9において、51はスイング式の作業装置を備えた油圧ショベルで、該油圧ショベル51は、下部走行体52と、該下部走行体52上に旋回輪53を介して旋回可能に搭載された上部旋回体54と、該上部旋回体54の前部側に設けられたスイング式の作業装置55とにより大略構成されている。ここで、スイング式の作業装置55は、上部旋回体54を構成する旋回フレーム56の先端側に設けられたスイングポスト57に、左,右方向に揺動可能に設けられている。そして、本発明を油圧ショベル51の旋回フレーム56に適用してもよい。
【0081】
さらに、上述した実施の形態では、クローラ式の油圧ショベル1の旋回フレーム11に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルの旋回フレームに適用してもよい。さらに、油圧ショベル以外にも、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、トラクタ等の他の建設機械のフレーム構造体にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態による旋回フレームを備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】旋回フレームを単体で示す平面図である。
【図3】旋回フレームの左サイドフレーム、左下板、左張出しビーム等を示す一部破断の斜視図である。
【図4】左サイドフレームの左曲げ枠部、左前枠部、補修孔等を示す分解斜視図である。
【図5】左曲げ枠部の外壁板、内壁板、補修孔等を図2中の矢示V−V方向から拡大してみた断面図である。
【図6】旋回フレームの右サイドフレーム、右下板、右張出しビーム等を示す一部破断の斜視図である。
【図7】右サイドフレームの右曲げ枠部、右前枠部、補修孔等を示す分解斜視図である。
【図8】右曲げ枠部の外壁板、内壁板、補修孔等を図2中の矢示VIII−VIII方向から拡大してみた断面図である。
【図9】変形例による旋回フレームを備えたスイング式の作業装置を有する油圧ショベルの正面図である。
【符号の説明】
【0083】
11,56 旋回フレーム(フレーム構造体)
12 センタフレーム
13 底板
14 左縦板
15 右縦板
24 左サイドフレーム
24A 左曲げ枠部
24B 左前枠部
25,28,33,36 外壁板
25A,28A,33A,36A 立上り面
25B,28B,33B,36B 上面
25C,28C,33C,36C 下面
25D,28D,33D,36D 上側庇部(庇部)
25E,28E,33E,36E 下側庇部(庇部)
26,29,34,37 内壁板
27,35 閉断面空間
30,38,39,41 補修孔
31 凹み
W 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板及び該底板上に立設された左,右の縦板を有するセンタフレームと、該センタフレームを挟んで左,右に配設された左,右のサイドフレームとを備えてなる建設機械のフレーム構造体において、
前記サイドフレームは、前記フレーム構造体の外周面を形成する外壁板と、該外壁板との間に閉断面空間を形成する内壁板とからなる中空なフレーム体として構成し、
前記サイドフレームの前記内壁板には、前記外壁板を前記内壁板側から補修するための補修孔を設ける構成としたことを特徴とする建設機械のフレーム構造体。
【請求項2】
前記サイドフレームは、略C字状ないし横U字状の断面形状をなす前記外壁板と、上,下方向に立上がる平板状の前記内壁板とを接合することにより略D字状の断面形状をなす中空なフレーム体として構成し、
前記外壁板の少なくとも上端側には、前記内壁板の上端部から前記センタフレームに向けて内向きに突出する庇部を設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械のフレーム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−143303(P2009−143303A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320879(P2007−320879)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】