説明

建設機械の旋回装置

【課題】ハウジングの周囲の機器、部材に対するグリスによる汚染を招くことなく、旋回出力軸を保持する第2軸受にグリスを供給できる建設機械の旋回装置の提供。
【解決手段】旋回出力軸4の遊星減速機構部3から遠い部分を保持する第2軸受8にグリスを供給するグリス供給部が、旋回出力軸4に設けられ、一端に旋回出力軸4の端部に開口する第1開口を有し、他端に第2軸受8にグリスを供給可能な第2開口を有する管路部と、この管路部の第1開口に取付けられるグリスニップル16とから成り、前述の管路部は、旋回出力軸4の軸心方向に延設され、第1開口17を有する第1管路18と、この第1管路18に連通するとともに、旋回出力軸4の軸心方向と交差する方向に延設され、第2開口19を有する第2管路20とから成る構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、クレーンなどの旋回体を有する建設機械に備えられ、旋回出力軸を保持する軸受箱を有する建設機械の旋回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。この図6に示すように、油圧ショベル60は、走行体61と、この走行体61上に旋回輪62を介して配置される旋回体63と、この旋回体63に上下方向の回動可能に設けられ、掘削作業等を行う作業機64とを備えている。旋回体63の前側位置には運転室65が備えられている。また、旋回輪62と噛み合うことによって旋回体63を旋回させる旋回装置66が備えられている。
【0003】
上述した旋回装置66の従来技術として、例えば特許文献1に示されるものがある。図7は、この特許文献1に示される従来の旋回装置を示す要部断面図である。
【0004】
旋回装置66の構成要素である油圧モータ67の出力は、モータ出力軸68から遊星減速機構部69へと伝えられ、減速及び増トルクされ旋回出力軸70へと伝えられる。旋回出力軸70の回転は、旋回輪62を介して旋回体63の旋回へと伝えられる。
【0005】
油圧モータ67とリングギヤ71の上面部とは互いに結合されている。リングギヤ71とハウジング72の上面部とは互いに結合されている。ハウジング72はフランジ部73において、旋回体63と互いに結合されている。
【0006】
遊星減速機構部69は2段の遊星減速機構で構成され、油圧モータ67の出力はモータ出力軸68により1段目の太陽歯車74に伝わり、遊星歯車75はハウジング72と一体に形成されたリングギヤ71と、太陽歯車74の間で自転しつつ公転を行う。この遊星歯車75の公転は、遊星歯車75を支持するキャリア76を介し、2段目の太陽歯車77の自転として伝えられ、遊星歯車78はリングギヤ71と太陽歯車77の間で自転しつつ公転を行う。遊星歯車78の公転は、遊星歯車78を支持するキャリア79を介し、軸受箱80の旋回出力軸70へと伝えられる。
【0007】
ハウジング72に装着され旋回出力軸70の遊星減速機構部69に近い部分を保持する第1軸受81と、ハウジング72に装着され旋回出力軸70の遊星減速機構部69から遠い部分を保持する第2軸受82とにより、旋回出力軸70は回転自在に支持されている。第1軸受81、第2軸受82は、自動調心ころ軸受から成っている。
【0008】
第1軸受81と第2軸受82との間には、ギヤオイルをシールするためのオイルシール83が配置されている。遊星減速機構部69及び第1軸受81は、ギヤオイルにより潤滑されている。第2軸受82は、インナーとアウターの間に充填されたグリスにて潤滑されている。
【0009】
ハウジング72には、グリス供給側の端部がこのハウジング72の表面に開口するグリス供給用管路84が設けられており、このグリス供給用管路84の開口には、グリスニップル85が取付けられている。これらのグリス供給用管路84とグリスニップル85は、第2軸受82にグリスを供給するグリス供給部を構成している。
【0010】
また、ハウジング72には、ギヤオイル排出用管路86が設けられており、このギヤオイル排出用管路86にはストップバルブ87が設けられている。
【0011】
前述した第2軸受82には、グリスシール88が設けられており、このグリスシール88によってグリスが漏洩しないように密封されている。また、第2軸受81と旋回出力軸70の出力歯車89との間には、環状のプレート90が挟み込まれる形で配置されている。このプレート90は、旋回出力軸70の出力歯車89と旋回輪62との噛み合いによる、旋回装置66内へのグリスや異物の侵入の軽減と、第2軸受82を潤滑するグリスの漏洩を防ぐために設けられている。出力歯車89と旋回輪62の噛み合い部の潤滑にはグリスが用いられ、走行体61にはグリスバス91が設けられている。なお、上述した旋回装置66とほぼ同等の構成を有する旋回装置が特許文献2,3に開示されている。
【特許文献1】特許第3565775号公報
【特許文献2】特開2000−110197号公報
【特許文献3】特開2006−207184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した特許文献1〜3に示される従来技術、例えば特許文献1に示される従来技術は、第2軸受82にグリスを供給するグリス供給管路84の端部が、ハウジング72の表面に開口し、その開口にグリスニップル85を取付けてあることから、グリスニップル85を介してグリスを供給する際に、グリスが漏れてハウジング72の周囲の機器、部材をグリスで汚染させてしまう懸念がある。このようなグリスによる汚染を生じたときには、ハウジング72の周囲の機器、部材に対する煩雑な汚染グリスの除去作業が必要になる。
【0013】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、ハウジングの周囲の機器、部材に対するグリスによる汚染を招くことなく、旋回出力軸を保持する第2軸受にグリスを供給できる建設機械の旋回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために、本発明に係る建設機械の旋回装置は、旋回体を有する建設機械に備えられ、油圧モータと、この油圧モータに接続された遊星減速機構部と、この遊星減速機構部によって回転する旋回出力軸と、この旋回出力軸を保持する軸受箱とを有し、上記軸受箱は、ハウジングと、このハウジングに装着され、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部に近い部分を保持する第1軸受と、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部から遠い部分を保持する第2軸受と、これらの第1軸受と第2軸受との間をシールするオイルシールと、上記第2軸受にグリスを供給するグリス供給部とを備え、上記油圧モータの駆動による上記旋回出力軸の回転によって、上記旋回体を旋回させる建設機械の旋回装置において、上記グリス供給部は、上記旋回出力軸に設けられ、一端に上記旋回出力軸の端部に開口する第1開口を有し、他端に上記第2軸受にグリスを供給可能な第2開口を有する管路部と、この管路部の上記第1開口に取付けられるグリスニップルとから成り、上記グリスニップルから上記管路部を経て、上記第2軸受を潤滑するグリスを供給するようにしたことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、旋回出力軸を保持する第2軸受にグリスを供給する際には、旋回出力軸の端部の第1開口に取付けられるグリスニップルからグリスが供給されるので、このグリスの供給時にグリスニップルからグリスが漏れることがあっても、漏れたグリスを旋回出力軸が収容されるハウジング内に留めておくことができる。すなわち、ハウジングの表面側にグリス供給時におけるグリスが漏れることがない。したがって、ハウジングの周囲の機器、部材に対するグリスによる汚染を生じさせることなく、第2軸受にグリスを供給することができる。
【0016】
また、本発明に係る建設機械の旋回装置は、上記発明において、上記管路部は、上記旋回出力軸の軸心方向に延設され、上記第1開口を有する第1管路と、この第1管路に連通するとともに、上記旋回出力軸の軸心方向と交差する方向に延設され、上記第2開口を有する第2管路とから成ることを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係る建設機械の旋回装置は、上記発明において、上記第1管路の上記第1開口を、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部から遠い側に位置する端部に形成したことを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係る建設機械の旋回装置は、上記発明において、上記第1管路の上記第1開口を、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部に近い側に位置する端部に形成したことを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係る建設機械の旋回装置は、上記発明において、上記旋回出力軸の上記端部に凹部を形成し、この凹部の底面に上記第1開口を形成したことを特徴としている。このように構成した本発明は、第2軸受にグリスを供給する際にグリスニップルからグリスが漏れることがあっても、漏れたグリスを上記旋回出力軸の上記端部に形成した凹部内に留めておくことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る建設機械の旋回装置は、軸受箱に備えられ、旋回軸受を保持する第2軸受にグリスを供給するグリス供給部を、旋回出力軸に設けられ、一端に旋回出力軸の端部に開口する第1開口を有し、他端に第2軸受にグリスを供給可能な第2開口を有する管路部と、この管路部の第1開口に取付けられるグリスニップルとによって構成してあることから、第2軸受へのグリスの供給時に、グリスニップルからグリスが漏れることがあっても、漏れたグリスを旋回出力軸が収容されるハウジング内に留めておくことができ、ハウジングの周囲の機器、部材に対するグリスによる汚染を招くことなく、第2軸受にグリスを供給することができる。これによって、従来におけるようなハウジングの周囲の機器、部材に対する煩雑な汚染グリスの除去作業が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下,本発明に係る建設機械の旋回装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0022】
以下に述べる各実施形態も、例えば前述した図6に示す旋回装置66と同様に、建設機械の一例として挙げた油圧ショベルに設けたものである。したがって、必要に応じて図6に示した符号を用いて説明する。
【0023】
図1は本発明に係る建設機械の旋回装置の第1実施形態を示す要部縦断面図である。この図1に示す第1実施形態に係る旋回装置1は、最上部に油圧モータ2を有し、この油圧モータ2の下側に、油圧モータ2のモータ出力軸と係合する遊星減速機構部3を有し、この遊星減速機構部3の下側に遊星減速機構部3によって回転する旋回出力軸4を保持する軸受箱5を有している。
【0024】
軸受箱5は、外殻を形成し、旋回体63に固定されるハウジング6を備え、このハウジング6内には、ハウジング6に装着され、旋回出力軸4の遊星減速機構部3に近い部分を保持する第1軸受7と、旋回出力軸4の遊星減速機構部3から遠い部分を保持する第2軸受8と、これらの第1軸受7と第2軸受8との間をシールするオイルシール9とを配置してある。
【0025】
また、ハウジング6内には、旋回出力軸4に螺合して、第1軸受7を押圧可能な、すなわち第1軸受7と第2軸受8に予圧を付与可能なナット10を収納させてあり、ハウジング6の下端部には、第2軸受8に供給されたグリスの外部への漏洩、及び外部からハウジング6内への異物の侵入を防ぐプレート11を配置してあり、このプレート11とハウジング6に形成した環状溝12との間にはリップシール13を配置してある。
【0026】
走行体61には、グリスが収容されるグリスバス14を設けてあり、走行体61と旋回体63との間に介在される旋回輪62の内歯車と旋回出力軸4の出力歯車15とが噛み合うように、この旋回装置1を旋回体4に固定してある。
【0027】
この第1実施形態に係る旋回装置1は、第2軸受8にグリスを供給するグリス供給部が、一端に旋回出力軸4の端部に開口する第1開口を有し、他端に第2軸受8にグリスを供給可能な第2開口を有する管路部と、この管路部の前述した第1開口に取付けられるグリスニップル16とから成っている。
【0028】
前述した管路部は、例えば旋回出力軸4の軸心方向に延設され、第1開口17を有する第1管路18と、この第1管路18に連通するとともに、旋回出力軸4の軸心方向と交差する方向に延設され、第2開口19を有する第2管路20とから成っている。第1管路18の第1開口17は、旋回出力軸4の遊星減速機構部3から遠い側に位置する端部に設けた凹部21の底面21Aに形成してある。
【0029】
図2は図1に示す第1実施形態におけるグリス供給時の状態を示す要部断面図である。この図2に示すように、第2軸受8へのグリスの供給作業は、例えばナット10を回転させて第1軸受7及び第2軸受8に予圧を付与する作業時に同時に行うようになっている。
【0030】
第1軸受7及び第2軸受8への予圧の付与に際しては、旋回出力軸4の出力歯車15を出力軸ストッパ22で回転不能に保持させ、ハウジング回転軸23のアーム部24の下端のピン25の先端を、ハウジング6に形成されたねじ穴部26に螺合させ、ナット回転軸27の下端に取付けたソケット28の下端のピン29を、ナット10の穴30内に挿入させた状態にする。この状態において、ナット回転軸27を、第1軸受7を締付ける方向に回転させるとともに、ハウジング回転軸23をナット回転軸27とは逆方向に回転させ、ハウジング6のトルクを検出する。このハウジング6のトルクが所定値に至ったことが検出されると、ナット10によって第1軸受7及び第2軸受8に所望の値となる予圧が付与されたことになる。
【0031】
第2軸受8のグリスの供給に際しては、例えば図示しないグリス供給器に備えられる先端ノズル31をグリスニップル16に取付けた状態にし、前述の第1軸受7及び第2軸受8への予圧の付与作業の間に、グリスの供給を行う。先端ノズル31から吐出されたグリスは、第1管路18に導かれ、さらに、この第1管路18に連通する第2管路20に導かれ、この第2管路20の第2開口19から第2軸受8に供給される。
【0032】
なお、油圧モータ2の駆動によって、遊星減速機構部3を介して旋回出力軸4が回転し、この旋回出力軸4の出力歯車15と旋回輪62との噛み合いを介して走行体61上に配置された旋回体63が旋回する。
【0033】
このように構成した第1実施形態に係る旋回装置1によれば、旋回出力軸4を保持する第2軸受8にグリスを供給する際には、旋回出力軸4の端部の第1開口17に取付けられるグリスニップル16からグリスが供給されるので、このグリスの供給時にグリスニップル16からグリスが漏れることがあっても、漏れたグリスを旋回出力軸4が収容されるハウジング6内に留めておくことができる。すなわち、ハウジング6の表面側にグリス供給時におけるグリスが漏れることがない。したがって、ハウジング6の周囲の機器、部材に対するグリスによる汚染を招くことなく、第2軸受8にグリスを供給することができ、ハウジング6の周囲の機器、部材に対する煩雑な汚染グリスの除去作業が不要となる。
【0034】
特に、旋回出力軸4の下側の端部に凹部21を形成し、この凹部21の底面21Aに第1管路18の第1開口17を形成してあることから、第2軸受8にグリスを供給する際にグリスニップル16からグリスが漏れることがあっても、漏れたグリスを旋回出力軸4の端部に形成した凹部21内に留めておくことができる。
【0035】
また、この第1実施形態は、ナット10を回転させて第1軸受7及び第2軸受8に予圧を付与する作業の間に、第2軸受8に対するグリスの供給作業を実施するようにしたので、軸受箱5の製作、すなわち旋回装置1の製作のために要する作業時間の増加を招くことなくグリスの供給作業を実施でき、旋回装置1の製作作業効率を高めることができる。
【0036】
図3は本発明の第2実施形態を示す要部断面図である。この第2実施形態に係る旋回装置32も、グリス供給部を構成する管路部が、軸受箱33のハウジング6内に収容される旋回出力軸34の軸心方向に延設され、第1開口35を有する第1管路36と、この第1管路36に連通するとともに、旋回出力軸34の軸心方向と交差する方向に延設され、第2開口37を有する第2管路38とから成っている。また、第1実施形態とは異なって、第1管路36の第1開口35は、旋回出力軸34の遊星減速機構部3に近い側に位置する端部に形成してある。その他の構成は、前述した第1実施形態と同等である。
【0037】
この第2実施形態も、油圧モータ39の駆動によって、遊星減速機構部3を介して旋回出力軸34が回転し、この旋回出力軸34の出力歯車40と旋回輪62との噛み合いを介して走行体61上に配置された旋回体63が旋回する。
【0038】
図4は図3に示す第2実施形態におけるグリス供給時の状態を示す縦断面図である。この第2実施形態も、例えば図4に示すように、第2軸受8へのグリスの供給作業は、ナット10を回転させて第1軸受7及び第2軸受8に予圧を付与する作業時に同時に行うようになっている。
【0039】
第1軸受7及び第2軸受8への予圧の付与に際しては、第1実施形態と同様に、ハウジング回転軸23のアーム部24の下端のピン25の先端を、ハウジング6に形成されたねじ穴部26に螺合させ、筒形状のナット回転軸41の下端のピン42を、ナット10の穴30内に挿入させた状態にする。この状態において、ナット回転軸41を、第1軸受7を締付ける方向に回転させるとともに、ハウジング回転軸23をナット回転軸41とは逆方向に回転させ、ハウジング6のトルクを検出する。このハウジング6のトルクが所定値に至ったことが検出されると、ナット10によって第1軸受7及び第2軸受8に所望の値となる予圧が付与されたことになる。
【0040】
第2軸受8のグリスの供給に際しては、例えば図示しないグリス供給器に備えられ、ナット回転軸41内に挿入された先端ノズル31を、グリスニップル16に取付けた状態にし、前述の第1軸受7及び第2軸受8への予圧の付与作業の間に、グリスの供給を行う。先端ノズル31から吐出されたグリスは、第1管路36に導かれ、さらに、この第1管路36に連通する第2管路38に導かれ、この第2管路38の第2開口37から第2軸受8に供給される。
【0041】
このように構成した第2実施形態も、第1実施形態と同様に、旋回出力軸34を保持する第2軸受8にグリスを供給する際には、旋回出力軸34の端部の第1開口35に取付けられるグリスニップル16からグリスが供給されるので、このグリスの供給時にグリスニップル16からグリスが漏れることがあっても、漏れたグリスを旋回出力軸34が収容されるハウジング6内に留めておくことができる。すなわち、ハウジング6の表面側にグリス供給時におけるグリスが漏れることがない。したがって、ハウジング6の周囲の機器、部材に対するグリスによる汚染を招くことなく、第2軸受8にグリスを供給することができ、ハウジング6の周囲の機器、部材に対する煩雑な汚染グリスの除去作業が不要となる。
【0042】
また、この第2実施形態も第1実施形態と同様に、ナット10を回転させて第1軸受7及び第2軸受8に予圧を付与する作業の間に、第2軸受8に対するグリスの供給作業を実施するようにしたので、軸受箱33の製作、すなわち旋回装置32の製作のために要する作業時間の増加を招くことなくグリスの供給作業を実施でき、旋回装置32の製作作業効率を高めることができる。
【0043】
図5は本発明の第3実施形態を示す要部縦断面図である。この第3実施形態は、旋回出力軸43の上側の端部に形成した凹部44の底面44Aに、管路部を構成する第1管路46の第1開口47を形成してある。その他の構成は、前述した第2実施形態と同等である。
【0044】
この第3実施形態に係る旋回装置48も、第2実施形態と同様に、グリス供給部を構成する管路部が、軸受箱49のハウジング6内に収容される旋回出力軸43の軸心方向に延設され、第1開口47を有する第1管路46と、この第1管路46に連通するとともに、旋回出力軸43の軸心方向と交差する方向に延設され、第2開口50を有する第2管路51とから成っている。また第1管路46の第1開口47は、旋回出力軸43の遊星減速機構部3に近い側に位置する端部に設けた凹部44の底面44Aに形成してある。
【0045】
この第3実施形態にあっても、油圧モータ51の駆動によって、遊星減速機構部3を介して旋回出力軸43が回転し、この旋回出力軸43の出力歯車52と旋回輪62との噛み合いを介して走行体61上に配置された旋回体63が旋回する。
【0046】
この第3実施形態は、第2実施形態と同等の作用効果を奏する他、旋回出力軸43の上側の端部に凹部44を形成し、この凹部44の底面44Aに第1管路46の第1開口47を形成してあることから、第2軸受8にグリスを供給する際にグリスニップル16からグリスが漏れることがあっても、漏れたグリスを旋回出力軸43の端部に形成した凹部44内に留めておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る建設機械の旋回装置の第1実施形態を示す要部縦断面図である。
【図2】図1に示す第1実施形態におけるグリス供給時の状態を示す要部断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す要部断面図である。
【図4】図3に示す第2実施形態におけるグリス供給時の状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示す要部縦断面図である。
【図6】建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図7】従来の旋回装置を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 旋回装置
2 油圧モータ
3 遊星減速機構部
4 旋回出力軸
5 軸受箱
6 ハウジング
7 第1軸受
8 第2軸受
9 オイルシール
15 出力歯車
16 グリスニップル〔グリス供給部〕
17 第1開口
18 第1管路(管路部)〔グリス供給部〕
19 第2開口
20 第2管路(管路部)〔グリス供給部〕
31 先端ノズル
32 旋回装置
33 軸受箱
34 旋回出力軸
35 第1開口
36 第1管路(管路部)〔グリス供給部〕
37 第2開口
38 第2管路(管路部)〔グリス供給部〕
39 油圧モータ
40 出力歯車
43 旋回出力軸
44 凹部
44A 底面
46 第1管路(管路部)〔グリス供給部〕
47 第1開口
48 旋回装置
49 軸受箱
50 第2開口
51 第2管路(管路部)〔グリス供給部〕
52 出力歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体を有する建設機械に備えられ、
油圧モータと、この油圧モータに接続された遊星減速機構部と、この遊星減速機構部によって回転する旋回出力軸と、この旋回出力軸を保持する軸受箱とを有し、
上記軸受箱は、ハウジングと、このハウジングに装着され、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部に近い部分を保持する第1軸受と、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部から遠い部分を保持する第2軸受と、これらの第1軸受と第2軸受との間をシールするオイルシールと、上記第2軸受にグリスを供給するグリス供給部とを備え、
上記油圧モータの駆動による上記旋回出力軸の回転によって、上記旋回体を旋回させる建設機械の旋回装置において、
上記グリス供給部は、
上記旋回出力軸に設けられ、一端に上記旋回出力軸の端部に開口する第1開口を有し、他端に上記第2軸受にグリスを供給可能な第2開口を有する管路部と、
この管路部の上記第1開口に取付けられるグリスニップルとから成り、
上記グリスニップルから上記管路部を経て、上記第2軸受を潤滑するグリスを供給するようにしたことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の旋回装置において、
上記管路部は、上記旋回出力軸の軸心方向に延設され、上記第1開口を有する第1管路と、この第1管路に連通するとともに、上記旋回出力軸の軸心方向と交差する方向に延設され、上記第2開口を有する第2管路とから成ることを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械の旋回装置において、
上記第1管路の上記第1開口を、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部から遠い側に位置する端部に形成したことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項4】
請求項2に記載の建設機械の旋回装置において、
上記第1管路の上記第1開口を、上記旋回出力軸の上記遊星減速機構部に近い側に位置する端部に形成したことを特徴とする建設機械の旋回装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の建設機械の旋回装置において、
上記旋回出力軸の上記端部に上記旋回出力軸の上記凹部を形成し、この凹部の底面に上記第1開口を形成したことを特徴とする建設機械の旋回装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−13805(P2010−13805A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172383(P2008−172383)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】