説明

建設機械の開閉カバー用接続器具

【課題】 カバーの着脱作業が1人で行え、さらに部品点数を減少させることができ、かつ接続器具が外れるおそれも減少させることができる建設機械の開閉カバー用接続器具を提供しようとする。
【解決手段】 開閉側カバー3または固定側カバー2のそれぞれに固着される二の接続体10,16よりなる開閉カバー用接続器具1である。そして、一方の接続体10は、開放端側に固定用ピン孔を有した軸体14を備え、他方の接続体16は、前記軸体14が挿通されて回転しうる挿通孔を有し、一方の接続体10の軸体14を、他方の接続体16の挿通孔に挿通させて、軸体14先端の固定用ピン孔に抜け止めピン20を嵌め込むことで、両接続体10,16が相互に回転自在に接続される構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設機械の開閉カバー用接続器具に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械においては、一般に車体がカバーで覆われており、エンジン等の機器のメンテナンス時には、カバーを開けたり、外したりする。カバーの開閉式構造としては、例えば小型の油圧ショベルにおいては、図4に示すような、開閉側カバー3上端(図ではエンジンフードカバー)にヒンジ6等の接続器具を固着し、下端を外方に持ち上げて開閉する構造が多い(特許文献としては、特開2003−27818号の図3乃至9、特開2003−239327号の図6及び図7など)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−27818号(図3乃至9)
【特許文献2】特開2003−239327号(図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒンジ6が用いられる図4に示すようなエンジンフードカバー3を着脱する場合、エンジンフードカバー3を持った状態において、ヒンジ固定用のボルト4,7を締めたり、外したりする作業となるため、エンジンフードカバー3を持つ人間と、ボルト4,7の締め外しをする人間の少なくとも2人の作業者を要していた。
【0005】
また、図4及び図5に示す開閉式構造の場合、接続器具として、ヒンジ6と、ボルト4,7を各2本、それに対するナット9を4個とで合計9つの部材が必要となるが、近時の部品点数の削減の要請からすると、もっと部材点数の少ない機構が望ましい。
【0006】
さらに、近時のカバーは、従来の薄板金属板から樹脂製のものに変わってきているが、樹脂製のカバーでは、従来の薄板金属製のものと比較して開閉時に歪みが大きく、両図に示すようなボルト4,7でヒンジ6を固着する構造では、カバー3側のボルト7に緩みが生じるおそれがあった。
【0007】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、カバーの着脱作業が1人で行え、さらに部品点数を減少させることができ、かつ接続器具が外れるおそれも減少させることができる建設機械の開閉カバー用接続器具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、この発明に係る建設機械の開閉カバー用接続器具は、開閉側カバーまたは固定側カバーのそれぞれに固着される二の接続体よりなる開閉カバー用接続器具であって、一方の接続体は、開放端側に固定用ピン孔を有した軸体を備え、他方の接続体は、前記軸体が挿通されて回転しうる挿通孔を有し、一方の接続体の軸体を、他方の接続体の挿通孔に挿通させて、軸体先端の固定用ピン孔に抜け止めピンを嵌め込むことで、両接続体が相互に回転自在に接続されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る開閉カバー用接続器具は、二の接続体よりなり、一方の接続体が開閉側カバーか固定側カバーのどちらかに、他方の接続体が残りのカバーにそれぞれ固着される。それぞれのカバーに固着される状態において、一方の接続体の軸体を、他方の接続体の挿通孔に挿通させて、軸体先端の固定用ピン孔に抜け止めピンを嵌め込むことで、両接続体は相互に回転自在に接続され、これにより、いずれかの接続体に固着された開閉側カバーは、残りの接続体に固着された固定側カバーに対して、軸体を中心に開閉自在に取り付けられることになる。
【0010】
本発明に係る開閉カバー用接続器具の着脱は、抜け止めピンの嵌脱作業と、軸体の挿通孔への挿脱作業だけとなるので、各接続体が固着された、開閉側カバーの固定側カバーへの着脱作業は次のようになる。まず、装着作業は、両手で開閉側カバーを持ち、一方の接続体の軸体を他方の接続体の挿通孔へ挿通するように開閉側カバーを移動させ、挿通したら、片方の手で開閉側カバーを支えながら、他方の手で抜け止めピンを軸体のピン孔に嵌め込めば良い。開閉側カバーの取り外し作業は、まったくその逆の作業を行えば良く、片方の手で開閉側カバーを開けながら、他方の手で抜け止めピンを外し、両手で開閉カバーを持って、軸体を挿通孔から抜くようにカバーを移動させる。軸体が挿通孔から抜ければ開閉側カバーは外れる。したがって、開閉カバーの着脱はいずれも1人の作業で行える。
【0011】
本発明において、二の接続体のうち、他方の接続体は、挿通孔を有した形状であれば足りるから、例えば実施形態例の図3に示すような単純なブロック状で良く、このため、この他方の接続体は、固着されるカバーに埋設するような形態も可能となる(この点も実施形態例に示す)。すなわち、そのような態様の場合、他方の接続体については、ボルトで固定されることが不要となるので、ボルト2本分の部品点数の削減が可能となる。また、そのようなブロック状の接続体を、樹脂製の開閉側カバーに固着した場合、従来のボルト締着構造の場合に生じたネジの緩みというような問題がないので、その開け閉めの際に開閉側カバーの歪みが大きくなっても、開閉側カバーが外れるおそれもない。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本願に係る発明によれば、カバーの着脱作業に2人を要することなく、1人で十分行えるものとなる。また、ボルトによる締着を不要とする態様を採ることもできるので、その態様では、ボルトの数分だけ部品点数を減少させることができ、かつ接続器具が外れるおそれも解消する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の具体的実施形態の一例を図面に基づき説明する。なお、以下の形態例は本発明を具現化した一例に過ぎず、本発明がそれに限定されるものではないことは当然である。
【0014】
図1は建設機械としての油圧ショベルのエンジンフードカバー3に本発明が用いられた一例である。エンジンフードカバー3は、上端を基軸として、下端側が外方に開く開閉式のカバーであり、その内部にはエンジン(図示なし)が搭載されている。このエンジンフードカバー3の開閉機構に用いられるのが本形態例の接続器具1であり、接続器具1は、図示のように、1個の接続片10と、2個のブロック体16とから構成される。なお、エンジンフードカバー3及び固定側カバー2を含めたカバーは、本形態例では、いずれも樹脂製であることを前提とし、一方接続器具1は金属製であることを前提としている(もちろん、これらが他の素材であっても良い)。
【0015】
接続器具1のうち、接続片10は、図2に示すように、ボルト孔12が穿設される固着部11と、該固着部11の両端から起き上がりながら延出する腕部13とからなり、各腕部13の裏面の同じ箇所には、その軸心方向が腕部の延出方向と直交するように軸体14がそれぞれ固着されている。各軸体14は一端側が固着され、他端側は開放端となり、開放端の先端側には、それぞれピン孔15が穿設されている。接続片10は、図1に示すように、その固着部11を固定側カバー2に当接したうえでボルト4で固着される。このため、この接続片10を固着する固定側カバー2には、ボルト締着用ナット(図示なし)を取り付けている。
【0016】
一方ブロック体16は、図3に示すように、基台17とその上方に突出する突出部18とから形成される2段のブロック状よりなり、該突出部18には、前記軸体14が挿通でき、挿通状態で回転しうる挿通孔19が貫通して穿設される。各ブロック体16は、その基台17がエンジンフードカバー3の上端側に埋設されて固着される。固着位置は、固定側カバー2に固着された接続片10の各軸体14に対応する位置であり、固着状態では、両ブロック体16の挿通孔19は同一軸線上に位置することになる。
【0017】
前記接続片10とブロック体16とは、前者の各軸体14を後者の各挿通孔19に挿通させた後、各軸体14のピン孔15に抜け止めピン20を嵌め込んで接続され、各軸体14が各挿通孔19内で回転自在となることで、相互に回転自在となる。図1に示すように、接続片10は固定側カバー2に、ブロック体16はエンジンフードカバー3の上端にそれぞれ固着されているので、両者の接続状態においては、固定側カバー2に対して、エンジンフードカバー3がその上端を基点として回転自在に、すなわち下端側が外方に開く開閉自在な構造となる。
【0018】
上述のように、本発明は以上の形態例に限定されるものではなく、例えば、本形態例における接続片10が固定側カバー2に、ブロック体16がエンジンフードカバー3にそれぞれ固着される態様であっても良いし、また固着されるブロック体16が2個ではなく、3個以上でも、あるいは1個のみでも良い(ただし、その数に対応する軸体14の形態が必要となる)。また、エンジンフードカバー3以外の開閉カバーの開閉機構(左右方向に開閉するカバーでも)に適用されてももちろん良い。
【産業上の利用可能性】
【0019】
この発明は、建設機械の開閉機構を要するカバー部に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本形態例の説明図であり、(a)は開閉カバー全体の説明図、(b)は(a)中のA部の拡大図である。
【図2】接続器具を構成する接続体の一例の説明図である。
【図3】接続器具を構成する他方の接続体の一例の説明図であり、(a)は取り付けられる全体の説明図、(b)は(a)中のB部の拡大図である。
【図4】従来のヒンジの説明図であり、(a)は開閉カバー全体の説明図、(b)は(a)中のC部の拡大図である。
【図5】従来のヒンジが取り付けられるカバーの固着部の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 接続器具
2 固定側カバー
3 エンジンフードカバー(開閉側カバー)
4,7 ボルト
10 接続片(接続体)
14 軸体
15 ピン孔(固定用ピン孔)
16 ブロック体(接続体)
19 挿通孔
20 抜け止めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉側カバーまたは固定側カバーのそれぞれに固着される二の接続体よりなる開閉カバー用接続器具であって、一方の接続体は、開放端側に固定用ピン孔を有した軸体を備え、他方の接続体は、前記軸体が挿通されて回転しうる挿通孔を有し、一方の接続体の軸体を、他方の接続体の挿通孔に挿通させて、軸体先端の固定用ピン孔に抜け止めピンを嵌め込むことで、両接続体が相互に回転自在に接続されることを特徴とする建設機械の開閉カバー用接続器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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